30 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :
ーーー本当は、自己板のみんなを助けたかったんだーーー
「・・・はっ!!」
ーーー動悸が荒い・・・。
「夢・・・か・・・。」
生々しい、妙にリアルな夢。
・・・それでいて、その光景は見た事もない。
まるで、これから起こる事の様な・・・。
「・・・馬鹿馬鹿しい。」
かつての『自己板エースコテ』まきひとは頭を振ってシャワーへ向かう。
熱いお湯を浴びて、頭を スッキリさせたかった・・・。
31 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:34:21 ID:8FT/mMBq0
>>30 まきひとが自己板の姫『風』の護衛兼大隊の自己板指揮官に就任して既に1年が経過・・・、
多忙な毎日を送っていた・・・。
何しろ、
「ヾ(・∀´・*)ゞこの案件は、私自身が見ておきたいんだお。」
「(。・∀・。)b今回の慰問については、私も同席するお。」
等という突発的な思いつきで行動する風に振り回されまくるからである・・・。
まきひとは一応とはいえ護衛長官も兼ねているので(人手不足の折、何でも やらなくてはならない。)神経の休まる暇も無い・・・。
(・・・胃が痛い・・・。)
護衛たる者、有事があってはならない。
完全主義者たるまきひとに、手を抜く 謂われは無い。
(最近、血オタアリスとも会ってないな・・・。)
新婚の妻、『血オタアリス』とお揃いのロケットを開くと、そこには仲睦まじい自分と『血オタアリス』の、
結婚直後の写真があった・・・。
嬉しそうに微笑む血オタアリス・・・、
それを見てやはり微笑むまきひと・・・。
あの日、あの時自分達がもっとも幸せだと思えた瞬間・・・。
32 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:37:08 ID:8FT/mMBq0
>>31 ・・・それが変わり始めたのは、いつからだろう。
何気なくまきひとが血オタアリスに『今日の仕事』の話をしていた時・・・
突然、 破局が訪れた・・・。
「・・・もうイヤですっ!!!」
ばあんと、血オタアリスがテーブルを叩いた。
豪華な料理がひっくり返り、高級 品のワインが床に落ちて転がる・・・。
「・・・何をするんだ!?」
まきひとも、語気が荒くなる・・・。
「いっつも、いつも・・・風、風、風!!何なの、ソレ!?今日
はやっと久しぶりに会えたんですよ!?一生懸命風様のために働いて、
やっと取れた休みなんですよ!?なのに・・・なのに、何なのよ!?」
33 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:39:20 ID:8FT/mMBq0
>>32 「何を誤解して居るんだ!?俺は仕事の愚痴をしてただけ・・・!」
「嘘!じゃあ何でそんなに楽しそうにしてるんですか!?私と居る時より嬉しそうにして・・・!」
血オタアリスは何時しか泣き出していた・・・。
狼狽えるまきひと。
「私を見てよ!私と居る時ぐらい・・・!」
そう言って、血オタアリスは駆け出す・・・。
「アリスっ!」
慌ててまきひとも追うが、アリスが自室に飛び込む方が早かった・・・。
ゲヘヘー ゴメン ゴメン
アウアウアー
(^q^)
わーおもしれえ(棒読み)
36 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:41:34 ID:8FT/mMBq0
>>33 どんどんどん、とドアを叩き続ける音がする。
「アリス、開けてくれ!誤解だ、誤解なんだ!」
まきひとの必死な弁明。だが、アリスには届かない・・・。
「何よ・・・何よ!風・・・みんな、持ってる癖に!
私に無いもの、みんな 持ってる癖に!!私には、何もないのよ!?もうシュウルも居ないのよ!?まきひとくらい・・・
良いじゃない・・・・・・。」
血オタアリスはシーツに丸まり、何かに怯えるかの様に震えていた。
37 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:45:45 ID:8FT/mMBq0
>>36 「アリス、開けてくれ!アリス・・・!」
まきひとは、まだ叩き続けていた。
爪が割れ、血が滲む。それでも構わず・・・。
「俺には、君が必要なんだ!・・・君だけなんだ、もう!」
ーーー 君ダケナンダ? ーーー
「俺は・・・俺は、自己紹介板の皆が好きだった・・・。
皆、元気があって、勢いがあって・・・好きだったんだよ。
俺にとって、皆大事だったんだ・・・。」
ーーー自己紹介板?ーーー
「ぼうしも、ブラザーも、しねよんも工藤はちぞうもハイヤーも運子も・・・君が大好きだったシュウルも、機械化から助けたかったんだ。・・・
俺が、みんなを感情の無い機械にしてしまったような様なもんだ。
・・・何が天才神コテだ。何が自己板エースコテだっ! 俺が、何を守れたっていうんだ!!??」
ーーーシュウル・・・?ーーー
38 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:47:46 ID:8FT/mMBq0
>>37 ーーーこの人は、馬鹿だ・・・。
自己紹介板で、目に映る人全てを助けようとしてたんだ・・・。
そんな事、出来る筈無いのに・・・。
それでも努力して、努力して、努力して・・・『報われない事』、『誰よりも』知ってるのに・・・。
・・・それでも『諦めきれない』んだ、この人は・・・。
その思いは、何故かーーー
血オタアリスには心地よく、理解出来るものだった・・・。
ーーーこの人の事は、私が一番理解出来るーーー。
39 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:49:45 ID:8FT/mMBq0
>>38 ・・・何時間、経ったろうか。
不意に、まきひとと血オタアリスを隔てていた扉が開く・・・。
まきひとは、がばっと身を起こした・・・。
疲れ切って、しゃがみ込んでいたのだ・・・。
血オタアリスは、まきひとのそばにより、両手を伸ばす・・・。
「まきひと・・・。」
「血オタアリス・・・。」
二人とも、しばし無言でーーー自然にキスをした。
40 :
まきひと ◆zeDiWCcgGk :2009/01/28(水) 14:52:01 ID:8FT/mMBq0
>>39 ややあって、血オタアリスが口を開く・・・。
「・・・ねえ、まきひと。私、貴方のために平和な自己紹介板を創ってみせるわ・・・。
誰も 泣かないで住む板を創ってみせる。・・・そのためなら私、何でもするわ。
風様のやり方じゃ、平和な板は創れない。・・・時間が掛かりすぎるのよ。
・・・見ててね、まきひと。貴方のために平和な自己板を創ってみせるわ・・・。」
血オタアリスの瞳は、何処かまきひとと違うものを見ていた・・・。
だが、まきひとにもこれだけは理解出来た。理解出来てしまった。
(・・・この子は、ああ、この子は・・・俺の『歪み』を・・・。)
この瞬間、ようやくこの二人は『新婚夫婦』になった・・・。
だがそれは同時に、男女として、永遠の別れを表していた・・・。
ーーーこの日、『自己紹介板の魔女』と呼ばれる女性が生まれたーーー