【2・5日本武道館 G馬場七回忌追善興行 観戦記】
試合開始1時間前の16時に現地入りしたけれど、駐車場には余裕で
止められた。帰りも建物から出るにも混雑はなく駐車場から車を出す
のも容易かった。日本武道館前の食堂でカツカレーを食べたんだが、
食堂も満卓状態のNOAH日本武道館に比べると半分の入りくらいで
ゆったりした感じで過ごせた。
ダフ屋は田安門側に10人ほど居たそうな。チケットは後方3列目ま
でと謳っている2階自由席3,000円を購入。大会パンフレットが売って
いたが売店を覗いていないのでグッズ関係のことはわからなかった。
客入りは、アリーナ8割、1階スタンド席6割、2階スタンド席4割。
大型モニターをアリーナに2台、2階スタンド席後方の座席を潰して
2台。花道はG馬場の描かれた幕からの入場。リングは全日本のもの
を使用した模様。
客層は、女性費は全体の5%くらいで、NOAHの常連客は見当たら
なかった。しかし全日ファンと思しきファン層という雰囲気も少なく
、何処のファンというよりは色んな団体のプロレスファンが集った
武道館はプロレスファンの雑居房といった感じだった。
集まりが悪く試合開始よりも若干遅めに会が始まった。まずは花道の
G馬場の垂れ幕入場ゲートの前で、ハヤブサ(素顔)がギター弾き語
りによるバラード調の歌で大会がスタート。その後に本日の試合カード
が木原リングアナ(全日本)が発表され、第一試合となった。
【平井土方vs相島GOEMON】
試合数が少ないのか動きがぎこちない相島を平井がスイカボトムで
やや唐突感の残る勝ち。
【荒谷石狩vs嵐奥村】
久しぶりの奥村の登場で若干の期待を込めた声援が送られるが、
ロープの反動を利しての後方へのでんぐり返しのしょぼさや、
石狩にチョップ合戦で打ち負けるくらいの不調ぶりだった。この
でんぐり返しは、海野レフェリーの後方回転のほうがはるかに
上手だったのでいただけない。試合は嵐が決める。
【望月成晃、横須賀亨、K−ness. vs ドラゴン・キッド、堀口元気、斉藤 了】
実は、純粋なドラゲーの選手による試合を観るのははじめてだった。
キッドは噂以上に小さかったがアクロバティックな動きも良く会場を盛り
上げていた。望月の蹴りはいい音がしてハードヒッティングの課題をクリアー
していた。堀口のハゲキャラとしての定番ムーブがあることも確認。ドラゲー
の試合は何パターンものお約束ムーブの連続コンボで試合を構成していって
客を乗らせていって、ワンツーゲームの繰り返しで勝敗を決するという感じ。
NOAHジュニアとの違いは、基本がルチャであることであることから受身
の種類が異なるということから、技の掛け手と受け手の間合いとハードヒッテ
ィングの具合が異なるということかな。
【ブッチャー後藤vs人生本間】
ターザン後藤を生で観るのはDスバーンとやったIWAジャパンの川崎球場大会
以来だろうか。動きも巨体に似合わず良かった。人生はブッチャー相手に拝み渡
りを成功させる。本間は後藤相手に椅子や机による攻防を展開してハードコアの
片鱗を見せ、終始動いて試合を作っていた。
ブッチャーはおそらく生で観るのは、これで最後なんじゃないかと思わせるくらい
太っていて動きも散漫で切なさを感じた。年齢を考えたら元気なんだろうけれどね。
後藤のゴーストバスターからブッチャーの毒針で予想通りのフィニッシュで幕。
試合後にお約束の「ババ!ブッチャー!ババ!ブッチャー!」のマイク
の後にブッチャーが後藤に一緒にやるように促すが、後藤が拒否して
英語で何やらアピールをして一人で引き上げていった。実は翌日、仙台で
ブッチャーと後藤がシングルマッチを行なうわけだが、そのことに気付い
ていた者はほとんどいなかったようだ。
【G馬場七回忌セレモニー】
聖歌隊の『上を向いて歩こう』と讃美歌がリング上で唄われる。高山の入場
テーマにこの日一番の盛り上がりを見せ高山はトップロープを跨ぎ入場。続いて
『燃えろ荒鷲』で坂口征二が入場、つづいて名勝負がモニターで流され米国国歌
でザ・デストロイヤーが入場、『サンライズ』でSハンセンが入場。続いて、
リング下にレスラーが集う。そこにはSウィリアムスの姿があった、できれば、
ウィリアムスもリングに上げて欲しかったんだが叶わなかった。そこには
天龍も川田も大森も居た。マスコミ関係者各位がリング上に呼ばれる、ターザン
山本が上がったときだけはブーイングがチラホラ。ちなみにターザンは試合中
ほとんど寝ていた。最後に武藤が呼ばれる。
花道から『王者の魂』のスローバージョンで遺影を京平ともう一人は誰だか
わからないが抱えられながらG馬場の入場。馬場元子はその遺影の後ろから
リングイン。元子はコメント途中で涙で読めなくなることもあったが、独特な
語り口で馬場さんを讃え、来場者に感謝の言葉を残した。
【マイク・バートン、ジム・スティール、ジョージ・ハインズ vs ジャマール、チャック・パルンボ、ロドニー・マック】
全日分裂時に活躍した外国人選手とWWE離脱組の6人タッグ。声援は一部
熱狂的なハインズファンが数人来ていてあちこちから声援が聞こえていた。
試合感が鈍っている印象のスティールだが、バートンはコンデションは良さそう。
WWEからの新参者二人には大きくて均整が取れている以外とくに印象は残
らなかった。
【武藤佐々木ハヤシvs小島大森馳】
小島のテーマ、武藤のテーマでそれぞれが入場。例によって目立ちたがる馳、
蛍光イエローのパンツがやたらと眩しい。日焼けをしてグッドシェイプをして
さすが虚業の馳先生といった感じか。ジャイアントスイングはハヤシの前振り
に後押しされて43〜44回転と何時もよりも多く回していた。昨年の三沢と
のタッグ結成の際に嫌な思いをした武藤は意図して馳を敬遠していたように見
えた。健介だが相変わらずパワフルなんだがこの6人の中に入ると、粋のいい
若手レスラーに見えてしまい風格など微塵も感じない。体格の小ささはどうに
もならないか・・・。小島は気心の知れた武藤との対戦時間が長く、最も多く
技を受けていた選手でもある。ハヤシはこの中では如何せん小さい。さて大森
だが、随所でいい動きをしていた。馬場殺法であるランニングネックブリーカー
ドロップの6連装は二番手に繰り出し、6連発という競演動作を生んだ。一流
どころに囲まれると本領を発揮できる過保護レスラー大森隆男は健在だった。
試合後に馳が花道脇の観客席に雪崩れ込んでファンとの交流を深めていたが、
武道館に来る時に馳後援会御一考のバスを見かけたんだが、あの集団は馳後援会の
“さくら”なんだろうね。馳先生を応援するためのセミファイナルはこうして
幕を閉じた。
【川田モスマンvs天龍渕】
モスマン、渕、天龍、川田の順で単独テーマというNOAHチックの入場。
序盤戦の10分は渕が散々甚振られる展開。ロープを利したショルダータックル
で何度も倒され起き上がってくるという攻防が延々と続き、やや間延びした空気
が蔓延する。渕が反撃に転じバックドロップの連発で、漸く、ワンサイドマッチ
から攻防の試合になり会場も暖まる。フチチャチャチャコールも飛び出す。
先日のNOAH武道館で三沢対天龍とダブらせてみてしまう、天龍と川田の攻防。
三沢にはグーパンチを叩き込められなかったんだが、川田にはボコボコとグー
パンチを叩き込んでいた。三沢と川田の5年間の違いは天龍によって証明された
格好になった。逆に言えば、今度のNOAH武道館で天龍と対峙する秋山もこの
川田戦と比較して見ることになる。天龍の身体を経由して三沢、川田、秋山の
辿って着たこの5年間を時を同じくして武道館で見られるというのは感慨深い。
天龍は不恰好なトペスイシーダとランニングネックブリーカーとジャイアント
バックブリーカーと馬場直伝技を披露。モスマンは最も動いていて試合を作って
いた。川田は無難にそつなく普段着の試合をこなしていた感じ。
試合後にリングに上がった馬場元子と天龍、川田、渕、京平、ケアで客席四方に
一礼をしてG馬場の垂れ幕に深々と一礼。敗者の渕は堂々と花道を去って行くの
に対して、試合に負けた天龍はリングを降り一人花道ではない出口から去ってい
ったのは天龍の意地とか誠意を感じた見事なコントラストを醸し出していた。
大会後には『上を向いて歩こう』が流されて閉幕。
【総括】
全日本分裂を引き起こす契機となったG馬場の死から丸6年が経過した。
この日はG馬場七回忌追善興行と謳っているが、ファン・関係者にとっては、
NOAHを旗揚げする原因であり、新生全日本とて危うく転覆させるような
事態までに至らせ、NOAHと全日本の交流の障壁ともなった馬場元子の
実質的な引退式でもあった。個人的にはこの5年間の禊(悪いとは思ってないが)
という意味合いもあり、また、馬場元子の荒ぶる魂を鎮めるために会に参加
したとも言えた。王道女神などとも言われた馬場元子のマット界における最期
を見届けることに、何らかの意義を感じていたのだと思う。
「私怨を棄てろ」ということが昨年からのマット界のキーワードだと位置付けてい
る者としては、この場に敷居の高さを感じていてはお話にならない。
この日から全日系のファンにとって胸の片隅にあったどこか後ろめたい気持ち
、巧く表現できないが、喪に服することから解放された感じだろうか。禊(みそぎ)
がすんだというべきだろうか。武道館を出た時には普段とは違った風景が見えた
ような気がした。昔の全日本らしい風景の日本武道館大会はこの日で最期だろう。
大会終了後の『上を向いて歩こう』はG馬場というよりも馬場元子への鎮魂歌。
G馬場、馬場さんについては不思議とこの日そんなに想う気持ちはなかった。
三沢は「馬場さんを思う気持ちは人それぞれで思っていれば良い」との主旨の
ことを述べた。恩師G馬場の遺影の前に立つことの許されない三沢の言葉であ
るが、その言葉の意味を噛み締めたい。
この日、日本武道館の片隅に三沢光晴がいた。
了
追記
馬場元子「さて、みなさん次はG馬場十三回忌追善興行でお逢いしましょう」
(^∀^メ)キャー☆