【死の宣告】
俺は一度、神様に見放されてる。
生まれつき肺と気管支が弱かった俺は、小学校に上がる前に一度、医者に死の宣告を受けている。
肺炎が悪化してそこにインフルエンザが重なり高熱が出てしまい、薬でも下げようが無かったそうだ。
「もう駄目かもしれません。」 と言われたらしい。
俺は小さな箱に押し込められ、周り中を氷で囲まれ、人工呼吸器を取り付けられ、生死の境をさまよった。
かなり後になってから聞いた話だが、両親も一度は俺の死を考えたようだ。
生まれた時代がちょっとでも早かったら、俺はあっけなく死んでいただろう。
『おまえは要らない。』 と世界から、神様から言われた。
入退院を繰り返し、無駄に本ばかり読んでガキの割にませた思考だった俺は、
その時の事を幼心にそんな風に捉えてしまった。
自分は達観したようなつもりでいた。ひねくれたガキ。その頃の俺を俺は大嫌いだ。
「生き残った事を喜べ。」 と怒りたくなる。
でも今、信じられないほど健康になり、時には生きる事を楽しむ事さえ出来るようになり、
まったくの五体満足な生活をしていても、未だにどこかに必ず引っかかっている。
一度は見放された、という想い。
そんな考え方は何も生まないし、ペシミスティックに過ぎる。鬱を助長するだけだ。そんな事はわかってる。
でもこれは・・・生まれた時から健康そのものに育った奴には絶対わからない心のキズだ。
おそらく一生付き合っていかなければならないんだろう。