しみじみ別館 ハピのごみ箱

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1ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 10:34 ID:Q7+aM9Iy
最近会社でやることが減ったので、
こっちで物語でもつづってみようかと思う。
2透@会社:03/07/30 10:35 ID:???
ヒマなのですか、うらやましい。
3ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 10:47 ID:Q7+aM9Iy
報告を始める前に、まずは”カード”についておさらいしておこう。
なに、ものがものだけにきちんとした事を知らない人間のほうが多いんだ。
今じゃタブロイド紙だってたまにしか取り扱わないしな。
でもな、これは君のためなんだ.しっかり聞いて欲しい。

ある日突然、一枚のカードが誰かのところに届く。
赤い”ろう”でしっかりと封印された封筒、差出人はもちろん不明だ。
クリーム色の上等な紙で、たぶんVIPとかの晩餐会の招待状があんな感じだろうな。
カードにはこう書かれている。
「あなたの願いを一つだけかなえてさし上げます。」
馬鹿馬鹿しいだろ?信じるわけ無いよな?ほとんどの人間がそのままダストシュートに投げ込むはずさ。
1983年11月20日、CNNのトップニュースを見るまでは、誰だってな。
4ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 11:10 ID:Q7+aM9Iy
そもそもの発端は、テキサスの田舎町のラジオだった。
1983年8月29日放送の「ジルのポップスタイム」という番組で、一通のリクエスト葉書が紹介された。
【ヘイ、ジル。俺のリクエストを選んでくれてありがとよ。
 そういや昨日俺のところに奇妙なカードが届いたんだ。
 すごく上等なカードで、あなたの願いを一つだけかなえてさし上げますと書いてある。
 最近都会じゃこんなくだらないジョークが流行ってんのかね?】
差出人はウィル:パーキッツと言う34歳の男で、職業はジュースの自動販売機の補充員をやっていた。
仕事中トラックの中でラジオを聞くのが好きで、リクエストの葉書は毎晩書いていたようだ。
田舎町だからリクエストが少なく、現にウィルの葉書はよく読まれていた。
普段ならこんな話は聞き流されていたんだが、一人の男がこの話に軽い興味を覚えた。
ウィルの住む町で、小さなビデオ製作会社を営んでるガストン:レプリアがそいつさ。
5ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 11:28 ID:???
ガストンはウィルがリクエストしたイーグルスのホテルカリフォルニアを聞きながら、おばあちゃんの昔話を思い出した。
ガストンの一家は昔からこの地に住んでいる貧乏農家だったんだが、ガストンの母親が嫁いで2年後
ガストンが母親の腹を目立たせ始めた頃に、突然ニューヨークのとあるレストランから食材仕入れの専属契約の話が持ち込まれた。
ガストンの親父はすぐにその話を取り次げた。そのレストランは徐々に有名になり、勢力を拡大していった。
今じゃ高級ホテル6軒に支店を構えるまでに成長している。
レプリア家の収入もそれに伴って増えていき、隣近所の農家4件を従えるようになった。
12歳になったガストン少年はある日おばあちゃんに聞いたらしい。「どうして家はこんなお金持ちになれたの?」
おばあちゃんも始めは「パパが一生懸命良い野菜を作りつづけたからよ。」と答えていたが、そのうちこう言った。
「そういえば、奇妙なカードに願い事をしたんだって、あの子言ってたわね・・・」
6ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 11:53 ID:???
その話を思い出したガストンはラジオ局にいる知り合いのディレクターに電話してウィルの連絡先を聞いた。
もしかしたら本物かもしれない・・・親父は何も言わないが、多分・・・いや、確実にカードを使ったんだ。
家みたいな田舎の農家の事なんて、ニューヨークの奴らが知ってるはずもねぇ。
そんなコネも必然性も何処にも無かったはずだ。それでも、現実に契約は交わされた。
もし、ウィルとか言う奴のカードが本物だったら、俺にもチャンスが回ってきたって事だ!!
こいつをビデオに収めれば、俺だって有名になれるはずだ!!
夜を待って、ガストンはにやけながらメモした番号を回した。
今日ジルの番組のあんたのリクエストを聞いたんだが、どうせならそのイタズラに乗ってみないか?
もちろんあんたの名前は隠すし、報酬もそれなりに用意する。な、頼むよ。
ウィルは承諾しなかった。ガストンを都会のテレビ局の人間と思ったらしく、そんな恥を晒すのはごめんだと叫び電話を切った。
ガストンは諦めず何度も電話した。4度目の電話でウィルはやっとガストンの話を聞き始めた。
ガストンはウィルの疑いを晴らすため、今は弟に全てを任せている自分の家の成り立ちを話した。
ウィルもまたこの地で生まれ育っているため、レプリア家の名前と業績は知っていた。
2日後、ウィルはガストンに承諾の連絡を入れた。こいつが今じゃ伝説になっているビデオ「Will's Legend」の生い立ちだよ。
7ナナシサソ ◆LzsN6y2/6M :03/07/30 12:40 ID:LG4KBjbz
長いんで3行に省略してくれ
8デビルマソ ◆OUJA.2TMGk :03/07/30 13:06 ID:???
龍騎の話じゃないのか・・・
9ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 14:11 ID:???
>>7 サソ
最大で3000行しか書けんやんけ

>>8 かんさん
考えてみたんですが、はっきし言って無理です。
あの世界複雑すぎ・・・
10ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 14:35 ID:Q7+aM9Iy
ガストンはその週の土曜日から撮影を始めた。
ウィルは街から離れた場所に中古のトレーラーハウスを借りて住んでいた。独身で婚暦は無く一人暮らし。
車で15分走ったところに実家があり、月末の土曜日だけは帰って母親の食事に付き合うそうだ。
後に出版されたガストン自信の回想録によると、
「34にして額は頭頂部近くまで上がっており、髪に艶が無い。落ち着きが無く、目線が常に定まっていない。
自分はプライドとレベルが高いと言う事を誇示しようとして、不遜な口調で話すが、こちらが少し強い口調で尋ねると
すぐにおびえ始めた。手足は普通だが、腹だけが異常に出ていて、出来そこないの縫いぐるみのようだ。
調べたところ、彼が童貞をささげた相手はハイスクールの同級生の中でも一番の不細工で、
70ドルを支払ってやっと事を済ませることが出来たと言う。自信や成功と言った言葉はけしてイメージが出来ない人物だ。
案外こういう男のほうがカードを手にしやすいのかも知れない。神様による平等思考って奴かな?
親父にしても人並みの野心はあったそうだが、自分の能力を勝手に見限り、家族にしか強くあたれない人間だったそうだ。」
11ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 14:57 ID:Q7+aM9Iy
次にガストンはカードの撮影を求めた。ウィルはまたも渋った。取り上げられると思ったのだろう。
しかし、ガストンが少し口調を強めると、いじけた表情でウィルはカードを取り出した。
「まるで腐りかけのネズミだよ。自分が生き物として害悪しか与えている事に気付かずに、それでも生の主張をしている。
けして自分が悪いとは思わないんだ。その原因すら考えない。とにかく不快だったけど、俺は我慢する事にしたよ」
後にガストンはそのときのことをそう語った。何故あんな奴にと言った口調だったそうだ。
ウィルが取り出してきた封筒はとても上等で綺麗で、ウィルの全てを否定していた。
薄汚れたトレーラーハウスの中でその封筒だけが明らかに異質だったが、
そんな環境こそが異質であるとその封筒は断定しているようだった。
もったいぶるような手つきでウィルが取り出したカードは、封筒よりも圧倒的な何かを発しており、
ガストンの脳裏からウィルの存在を完全に消し去ってしまった。
カードは綺麗なクリーム色で、たかが紙切れでしかない筈のそれが、何よりもまして美しく見えた。
ガストンはカードを受け取ると、そこに書かれている文字をゆっくりと目で追った。
12ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/30 15:28 ID:???
教科書でしかお目にかかれないような美しい筆記体で書かれた内容は、以下のようなものだった。

あなたの願いをひとつだけかなえてさし上げます。
このカードを手にしてから半年以内に、願い事をひとつだけこのカードの裏に書き込み、火をつけてください。
ただし、何でもと言うわけではありません。
叶えられない願いの場合、書き込まれた内容のみが消え去り、カードは燃えません。
カードが全て燃え尽きた時点で、願いが叶います。

この内容は後に報告されたどのカードでも同じだ。それを受け取った人間が常用している言語と文字で書かれている。
文字が違うだけで後は何の飾り気も無い。だが、無条件に美しいと思える不思議な紙だ。
あれがウィルのトレーラーハウスじゃなく、どっかの大富豪の豪邸だとしても、そう思えるだろうな。

ガストンはウィルに尋ねた。何を願うんだ?と
ウィルの返答はガストンをさらに不快にさせた。ウィルは何も考えていないと答えたのだ。
当然と言えば当然だ。イタズラに付き合うのは確かに馬鹿馬鹿しい。だが、それほどの労力ではないのだ。
ボールペンを取り出し、願い事を書いて、灰皿などの上で火をつけるだけ。たったそれぐらいの事を何故やれないのだろう?
すでに恥でしか構成されていないのに、これ以上恥が増える事をおそれる必要が何処にあるのだろう?
ガストンのストレスは高まっていったが、俺が思うに多分それは嫉妬なんだよ。
誰だってそのカードは欲しいはずなんだ。真偽は別としても、チャンスなんだからね。
ウィルはプライドなんて最初から無い人間だ。全てに自信を持ち合わせてないからな。
だが、そんな自分が恥ずかしいから自分で無理やりプライドに似たものを作り上げる。
その事こそが恥じである事を知らずにな。
その恥以外の何者でもない偽者のプライドが、カードを信じる事を否定していたんだろう
・・・話がそれたな。俺の私見は忘れてくれ。
13ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/31 14:25 ID:???
ともかくも験してみる必要がある。チャレンジの回数に制限はないようだし。
損をする事なんて何も無いんだ。ガストンはやさしく促した。
ウィルはここでも難色を示したが、結局ガストンが口調を強めると、腐りかけの目を歪めて従う事にした。
だが、何を願おう?ウィルは悩んだ。
もし彼に夢があるならば、オールスターゲームに選ばれるような大リーガーやハリウッドトップスターを目指していたら
それを願えばよかった。だが、ウィルはそれらに興味が無い。幼い頃からなんに対しても自信が無い彼は
娯楽や文化、学術への興味は無駄だと考え、ただその日を暮らしてきただけなのである。夢など持ちようも無い。
もし彼が救済を求めていれば、癌やエイズなどの病に侵されていたり貧困にあえいでいたりしていたら
それを願えばよかった。だが、ウィルは肥満の傾向が見えるだけで、不健康と言うわけでもない。
経済的にはけして潤っているとは言えないが、その日の食事に困る事など無かった。
14ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/31 15:00 ID:0u8zGJnO
ウィルにあるのは願望だけだ。これは誰だって持っている。
安定したい、楽をしたい、楽しくなりたい、気持ちよくなりたい。
大きくカテゴライズすればそれぐらいだが、その下には無数の願望がある。
ウィルはその数の多さに悩まされている。

「なあウィル、君は今願いを決めかねていると思うんだけど、いっその事願いの数をふやしてもらうってのはどうだい?」
ガストンの考えは、アラジンと魔法のランプを知っている人間なら誰しも一度は思うことだ。
「で、でも・・・カードにはひとつだけって書いてあるよ。」
「叶えられなければ、カードに書いた文字が燃えるだけだろ?それでカードがなくなることは無いんだ。
もし叶えられれば、そのたびに同じ事を願えば良い。そうすりゃずっと願いを叶えつづけられる。」
「だ、だけど・・・」
この時のウィルほど不快感を覚えるものは無かったとガストンは語ったそうだよ。
ガストンが書いた回想録「伝説の真実」に、そのあたりのことが手厳しく書いてある。
夢も希望も願望も欲も持たず、はっきりとした意志を持たない人間を状況の奴隷と呼ぶ。ウィルがまさにそうだ。
彼らは自分以外の者に依存する事で、責任から逃れ、夢や希望を捨てる事で、傷から逃げようとする。
だが、相互依存の状況はある日突然破綻を来たし、彼らはそれに耐えられない。
そうして出来た傷を彼らは直すどころか見ようとせず、自分以外の何かに対してそれを責め続ける。
そうすることで痛みを忘れようとするが、傷はけしてなくなる事は無く、悪化し、本人をさらに深く痛めつける。

・・・ガストンにしたってそれほどでかい口を叩けるわけじゃないのにな。
後に出された「Truth Of Gaston's Legend」を読めば彼だって立派な状況の奴隷なんだが、
彼にとってそのときのウィルはよほど不快だったんだよ。
「Will's Legend」にそのときの様子がおさめられているが、確かにあれは不快感を感じるものだ。
恐らくその原因は嫉妬によるものだと思うけどね。
さて、話を元に戻そう。
15ハヽ(`Д´)ノピ ◆Moog8/RwxU :03/07/31 15:24 ID:0u8zGJnO
業を煮やしたガストンは、ウィルからカードを取り上げ、持ってきた鉛筆で何かを書こうとした。
しかし、カードには何も残らない。ガストンは別の紙を取り出して鉛筆の不備を確かめたが
鉛筆自体に問題は無かった。
やはりこう言ったたぐいのものは持ち主を特定しているらしい。
ウィルはその様子を見て小さく笑ったようだ。
極度の不快感に晒されたガストンは、立ち上がるとウィルに向かって怒鳴りつけた。
「良いから書け!!願い事の数を100に増やして欲しいとな!!これはお前のために言っているんだ!!
何故お前は書こうとしないんだ?そんなに変化が怖いか!!
なら俺がこのカードをどこか遠くの場所に持っていって封印してやるよ!!」
・・・ガストンもよくこんな自分の醜態をカットせずに販売したよな。だが彼も必死だったんだよ。
田舎町でやっとつかめそうなチャンスなんだものな。そしてもちろん嫉妬だよ。
ビデオには残念ながらガストンの顔は映ってないが、恐らくこの時の彼の形相はすさまじかっただろうね。
ウィルは泣きそうな顔で鉛筆を受け取って、カードにガストンの言うとおりに書いた。
そしておびえた瞳でカードを見つめながら、ライターの炎にカードをくべた。
・・・カードは燃えなかったそうだ。ウィルの書いた汚い鉛筆の文字だけが赤く燃え出し、消えただけだ。
その一部始終をおさめた例のビデオを家の職員が徹底的に調査したが、合成なんかの加工は認められなかったそうだよ。
つまり、その映像は限りなく事実に近い・・・と言う事になる。
カード自体にはすすもつかず、相変わらず高貴な雰囲気をかもしつづけたそうだ。
まったく映画の話だよな、ここまで来ると。
16山崎 渉:03/08/02 01:12 ID:???
(^^)
保守