新型インフル大流行、沖縄では…特定病院に受診集中、6時間待ちも
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/if90913a.htm?from=tokusyu この夏、沖縄県では全国でも突出して早く新型インフルエンザの流行が進んだ。最も多
い週には県内58の定点医療機関だけで2686人(定点あたり46・31)と、例年の
季節性のピークに近い患者数に達した。医療現場は、どんな状況になったのか。現地で取
材した。(科学部 萩原隆史)
●2病院で300人超
「あっという間に患者が倍々に増えた。(受診数の)天井が全く見えず、毎日のように
新しい対策が必要になった」。那覇の新都心・おもろまちの近くに立つ那覇市立病院。宮
城とも・副看護部長はそう振り返る。
沖縄では7月下旬から患者が増え、8月15日に全国で最初の死者が出た。受診が急増
したのは、その翌日の日曜からだ。夜間休日診療を受け持つ市立病院には206人が訪れ、
一般の急患を合わせると計300人以上であふれ、最高6時間待たされた人もいた。
県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町)にも98人が受診し、一般を
含めると計220人が来て3時間待ちの状態。
次の日曜の23日にはさらに増え、両病院だけで計353人がインフルエンザ症状を訴
えて受診した。市立病院は、感染防御のため専用の臨時待合室も設けた。
(続く)
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●選べる受診先あだ
問題は、余裕のある病院や診療所がほかにあるのに、両病院を中心に一部施設への集中
が続いたことだ。那覇市立病院はモノレールの駅にも高速道路にも近く、交通の便がいい。
南部センターは「専門医の多い大病院で子どもを診てもらいたい」という“親心”が主な
理由らしい。
5月の兵庫・大阪での流行のあと、政府は特定施設に受診を限る方式をやめ、広く一般
の医療機関での診療を認めた。それでも事前に電話してから受診するのが原則だが、受診
先を自由に選べることが、特定の病院への集中につながった。
県医師会は22日以降、近隣の開業医を土日に2〜3人ずつ両病院へ応援に派遣。全診
療所に平日の診療時間の延長を求めた。県看護協会も26日から看護師を両病院へ派遣し、
電話相談対応に無報酬で協力した。南部センターの大久保和明院長は「まずは近くの診療
所へ、といくら呼びかけても集中に歯止めがかからなかった。今後、全国で問題になるだ
ろう」と言う。
●「軽症」見極め困難
医療機関が機能不全に陥るのを防ぐには軽症者が外来受診を控えたほうがいい。しかし
県内の重症者9人(死亡1人)のうち、6人は慢性疾患などのリスク要因がなく、ふだん
健康な人だった。現場の医師らは「電話相談で軽症と判断しても、責任を持って『受診を
控えて』とは言えない」と口をそろえる。
県医務課は、県内の子どもの心臓手術を一手に担う南部センターがマヒしないよう、小
児用の人工呼吸器を持つ10病院の使用状況を毎日調べ、小児患者を割り振るシステムを
構築。もし集中治療室が満床になれば、琉球大病院がバックアップする体制も整えた。
県医師会の宮里善次・感染症担当理事は「だれがいつ重症化するのか、特徴がわからず、
多くの人を受け入れざるを得ないが、軽症者への対応に振り回されてはいけない。診察は
少々待ってもらってもいい。大切なのは死者の最少化。重症者が手遅れにならないよう、
医療機関の役割分担、受け入れ態勢を整えておくことが肝心だ」と強調した。
(2009年09月13日 読売新聞)