TQCとは何だったのか
http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2780/tqm/tqm2.htm つまり、日本では「全社員の参加と協力によって実施される品質管理」がTQCであるのに対し、ファイゲンバウム氏は
「全社員が実施する品質管理(品質の維持と改善)を、総合的に調整して有効に働かせる」のがTQCであると云っています。
何気なく読むと、どちらも「全社員が品質管理を実施する」ことには変わりはないのですが、このふたつの定義をよくよく眺めると、
日本のTQCが「全社員に品質管理を実施させること」が目的になるのに対して、ファイゲンバウムのそれでは
「全社の品質管理を総合的に調整すること」が目的になると云う、根本的な主旨に違いが見られます。
冒頭で紹介した徳丸氏の「日本的経営の興亡」では、「TQCによる過労死、自殺」「デミング賞受賞企業の倒産」など、TQCにまつわる数々の問題点を、
歴史的事実の掘り起こしと云う格好で指摘していますが、実は、この”TQC精神”の取り違えにこそ、根源的な問題があったのではないでしょうか?
TQCを導入した日本の経営者は「総合的に調整する」と云う経営上の責任(義務)を忘れて、
「全社員に品質管理を”やらせる”」ことに躍起になっていたのではないでしょうか?
こうした誤った指導が、「全社的に品質管理を実施している」こと、更には「QC発表会などで、その活動を”格好良く”まとめて”上手く”アピールできる」
ことが経営の評価に繋がると云う誤解を生み、結果的に、徳丸氏が指摘するような「TQCの弊害」が日本中に蔓延したと考えられます。
1996年に、日本のTQCを推進してきた財団法人日本科学技術連盟(日科技連)が、
TQM宣言と題して、”Total Quality Control”から”Total Quality Management”への呼称変更を宣言しました。
しかし、この時、日科技連が発行した冊子「TQM宣言−”存在感”を求めて−」では、TQMの理想論を展開しながらも、結果として
「この新たなTQMの枠組みは、基本的には従来のTQCの概念・方法論を継承するもの」
と位置づけられており、数々の問題をはらんだ「TQCからの決別」と「新たな理念の創造」と云う方向性は示されなかったばかりか、
「これまでのTQCの一層の充実を図ろうとするものである」と続いています。
TQCの問題を真摯に受け止めその根本にある”TQM精神”の誤解を払拭することなく、
「アメリカをはじめヨーロッパでも総合的な品質管理をTQMと呼ぶことが普及して、TQCという呼称はますます国際的に通用しなくなってきている」
ことを呼称変更の第一の動機とする安易な発想は、21世紀のTQMにとって、必ず大きな禍根を残すことになるでしょう。
大野精工検索
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