西崎義展総合スレッド5

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471名無しさん名無しさん
 今年(昭和五十四年)もまた「ヤマト」の夏がやって来た。六年前のテレビ初放映
から一昨年の劇場映画に続いて、昨年の『さらば宇宙戦艦ヤマト』(阿久悠作詞、宮川
泰作曲)、そして今年はテレビ用映画『ヤマト・新たなる旅立ち』と書きに書き、たまり
にたまったスコアは高さ五十センチを超えて積み重ねられ、毎度の音楽録音のキツさがなつかしく思い出される。

 もう、こんな疲れる大仕事は二度とやるまい。あんなわがまま、強引なプロデューサー
の顔は一生見ないぞ、と堅く心に誓ったはずなのに、また今年も引き受けてしまったと
毎年後悔しながらも、作業が始まると無我夢中で没頭してしまうのだ。また、そうなら
ざるを得ないように自分のペースに巻き込んで、仕事を完成させる西崎義展氏の情熱と
手腕は見事であり、頭にも来る。

 彼ほど音楽に自分を生かそうとする、あるいは自分の音楽を作詞、作曲、編曲、歌唱
「録音などの作業過程の中で、強引に、絶対に具現させようとするプロデューサーは空前絶後だろう。

 語例@A『さらば宇宙戦艦ヤマト』の「ヤマト」のテーマで初め出て来るミ・ド・レ
(ヤ・マ・ト)のメロディーは、譜例@Bの高いファ・ミ・レ(ヤ・マ・ト)と高揚して、
この曲のラストを締めくくるのだが、同じヤマトの三文字を初めは低く抑えて、二度昌は
宇宙へ高く舞い上がらせろ、と命令されたのには参った(でも、それがよかったのだ)。
472名無しさん名無しさん:2012/08/19(日) 09:37:02.55
 譜例Aの劇伴音楽のメロディーは〃ヤマトの艦橋から見た遠かなる地球″のシーソの
メロディーなのに、彼は、これを大宇宙の中で、ちっぽけな人間たちの愛と戦いのドラマ
が人間らしく展開して行くさまを、哀しくも温かく包み込む、無限に広がる大宇宙のテーマ
と採用した。そして、このメロディーはヤマトの主題歌と並んで、ヤマトの全作品にこの
作品の精神を表わす名曲として、大好評となった(さすが!!)。

 七月三十一日放映の「新たなる旅立ち」の中で、(スターシャ)がわが子(サーシャ)
を想う唄『サーシャ・わが愛』(阿久悠作詞、宮川泰作曲)に、彼は島倉千代子を起用した。
最初は冗談か? とみな耳を疑ったが、いや絶対彼女以外にこの内容をうたい切れる歌手は
いない!!と彼女に挑戦させ、情感細やかにうたい上げさせた。

 譜例Bのメロディー、終わりの「サーシャ」は原譜では下の音符、ファ・ミ・レ・レ・
ド・シとさがっていたのを「サーシャ、サーシャと呼びかけるのだから、ここは母親の
気持ちをもっと表現するため、ファ・ミ・ファー・ファ・ミ・レーと、同じ音を二度くり
返したらどうですか?」と変更させられて、結局、正解となった。本来なら、そこまで
おれの分野に立ち入るなら、手前で何でもやれ!!と憤然席をけって……となるのだが。

 毎度、言う通りになっちまう自分に腹も立つが、どうも企画、原案、総指揮の大肩書が
デスラーの大マソトのごとく、おどかしにかかるのでやむを得ない。当分、この希有の
スーパー・プロデューサーとけんかしいしい、印税の入るのを唯一の慰めとしつつ、仕事
をせざるを得ないのだ。