BLOOD+ 戦争への欲望告発 高校生の主人公が活躍
「BLOOD+」は、高校生・音無小夜が主人公。日本刀を片手に吸血鬼「翼手」と戦います。
謎の組織を追い、イラク戦争や世界の紛争が交錯する大胆な物語が展開します。
沖縄の上空を米軍の爆撃機が飛び交う。そんな日常の場面も描きます。
企画した竹田青滋プロデューサーは14年前の湾岸戦争のとき、ニュースの編集を担当していました。
そこで「悪者イラクの攻撃から耐えるイスラエルという一面しか結果的に見せていなかった。
事実は多面的に見る必要があると思います。」「日本では沖縄に米軍の問題を押しつけて、
イラク戦争を他人事のように思っている人々もいます。でも実際は思いやり予算という
税金で米軍を雇い、派兵し、遠いところの戦争にも巻き込まれているんです。」と話します。
アニメでは、戦争や紛争を根絶やしにできないアメリカ社会の問題をとらえています。
「戦争を続けたがる欲望が渦巻いているということを、訴えていきたいですね」と竹田さん。
アニメに携わって4年。竹田さんは「起動戦士ガンダムSEED」や「鋼の錬金術師」を生み出しました。
「結論は与えなくていい。今ある現状でモノを考えるきっかけを与えたいんです」と言います。
竹田がIGでかました講演概略
2002年10月、イラク戦争の10ヶ月ぐらい前に初めてアニメーション制作に携わることになった。
昔、湾岸戦争時代に記者として湾岸戦争を報道していた際、情報の偏り
(湾岸戦争は毎日報道されるが、イスラエル軍によるベイルート攻略による
犠牲者についてはほとんど報道されない、等)に疑問を持ったという事もあり、
アニメーションで戦争ものをやるのであれば、徹底的に“本当の戦争”を描きたい、と思った。
過激な表現等も出てくるが、文脈上必要であれば割愛せずに放映したい、とも思った。
視聴者からのクレームに関しては、「その場面だけ見て言わないでほしい。物語全体を見てほしい」と
応えている。ただし、遠慮はする必要は無いが、当然配慮はしなければならないとは思っている。
実際に戦争を経験した人が少なくなる現代、今回のイラクへの派兵等、
議論もなしに進んでしまっていて、大変危険と感じる。
戦争体験者の方々の体験談を、もう一度見直さなければならないと思う。
私たちは、議論しないまま、安易に子供たちに対して戦争を伝えてはいけない。
自分としては今後も、アニメーション作品に投影する形で伝えていきたいと思っている。
また、“戦争”に加え、遺伝子操作された人間・DNA・ゲノム等の問題を、
作品を通してのテーマ、あるいは世界観とした。
“遺伝子を置き換えることで、将来病気にならないですむかもしれない”
“全部の遺伝子を正常に置き換えた人間を作ってみたらどうなるか”...等。
制作する上で、“遺伝子操作”について確信を持って描いて欲しいという気持ちから、
ゲノムセンターで働く専門家のところに、監督・ライターと共に見学に行き、
いろいろな話を聞きにも行った。 先端の研究所では、ほぼ人間と同じDNAを持つ
マウス等を使用した遺伝子組み換え実験が行われており、
近い将来マウスの全DNAデータベースを持つことも可能とのこと。
このまま進むと、研究に携わる研究者達が、“その研究自体が倫理的に
かなっているかどうか”を考えることが出来なくなってしまう可能性もあると感じ、強い恐怖を感じた。
テクノロジーの暴走は非常に恐ろしいということ、あるいは文明の進歩に伴うリスクについて、
アニメを通して子供たちに伝えたかった。
以前、監察医の制度に興味を持っていた。
これが一つのきっかけとなって「脳死・臓器移植」について興味をもつようになった。
ゲノムについてもそうだが、このような倫理の問題は非常に大きなテーマだと思っている。
特に「意識とは何か」という問題が大きい。
ここで、『何故このような難しい問題を子供たちに教えるの?』という意見も出てくるかもしれない。
しかし、それは伝える側の意欲の問題、伝える内容の問題であり、
子供だましで済ませようと思うのは一番良くないことだと思っている。
毎年、指揮者の佐渡裕氏と共に「子供のためのコンサート」を開催している。
そこではどんな曲でも構わない、難しい曲でも、子供たちにきちんと設定説明をして
聞かせると、子供たちは感動し、一生懸命聞くものである。決して子供はだまされない。
今回、「TV series BLOOD」の話をもらって感じたのは、例え戦闘シーンが無くても、
もっと戦争について考えさせられるものが出来るのではないか、ということ。
I.Gと一緒に、きちんと子供たちの心に残るものを作っていきたい、と思っている。