【テクノポップユニット】Perfume 2591【ドーム先行はまだか】
【その5】
間髪を入れず、最近のシングルのうちの注目曲、「Magic of Love」が続く。
正直に言うと、スクリーンの映像はほとんど見ずに、
3人の踊る姿ばかり見ていた。それ用の特別な映像が流れていたのか、
覚えていない。スマン。ついで3人は、少し後ろにさがり、
「レーザービーム」が始まる。緑のレーザーの束が点滅し、回転し、
音楽のリズムに合わせ、会場のすみずみにまで達する。
ファンにはおなじみのダンスは、レーザーの移動にぴったり合致する。
このうえなく見事な効果。さらに、次の曲の出だしの音が聴こえてくると、
観客はトランス状態だ。「ポリリズム」は、とりわけディズニー/ピクサー・
スタジオのアニメ「カーズ2」により、まちがいなく一番有名な曲の一つだ。
私も立ち上がっていっしょに踊りたかったが、動くスペースがなくて
できなかった。残念。
会場の照明がつき、最初のMCの時間。日本語とフランス語の自己紹介。
フランス語を少し発したあと、NocchiとA-Chanは一次的にステージを離れ、
Kashiyukaだけが観客の前に残る。Kashiyukaは、観客の熱い反応に
心を動かされているようだ。すぐにNocchiが戻ってくる。
二人は、 「Perfume fans France」のメンバーがステージ前の
安全用の鉄柵に掲げた「France Loves Perfume」の垂れ幕と、
自分たちに浴びせられる喝采に驚いているようだ。
二人は、ドイツはすごかったと言って私たちを刺激する。
「パリはアメイジングですか?」とKashiyukaがたずねる。
それへの反応は、彼女たちの予想をはるかに超えていたようだ。
それからNocchiとKashiyukaは、記憶に残るシーンを見せてくれた。
NocchiはKashiyukaの美しい髪の毛の話をし、それに触りつつ、
髪の毛がうねるように回ってと頼む。そして「触りたいですか?」
とたずねる。観客の反応を見てもっと煽る。結局Nocchiは、
いたずらっぽく「ノー」と返し、観客をおちょくるようにKashiyukaの
髪の毛を撫でる。Nocchiがこんなにいたずらっぽいとは、予想外。
【その6】
A-chanがステージに戻ってきて話し始める。
3人はステージの近くにいる観客の誰かに気づいたようだ。
その人を知っているようで、マイクを手渡す。
この人物が、3人の言葉を英語に訳すことになる。
この若者の通訳により、ライヴが始まる前に歓声が
聞こえてきたときの、3人の思いが観客に伝えられた。
驚きと喜びの入り交じった気持ちで、気合が入ったという。
A-chanは、観客を1階と上の二つに分けようとする。
1階の人だけ、上の人だけ、全員いっしょにと、応答のテストをする。
そのときはまだ、これがあとでも使われるとは分からなかった。
ふたたび照明が落ち、「Spring of life」が始まる。
最近の曲のなかで、私の好きなものの一つだ。
ここでも、ダンスを追うのは大変だった。後ろのスクリーンには、
PVのパソコンと同じようなテキストと図形が表示される。
統制された演出のなか、3人はスクリーンの真下で、
ロボット的な動きで順に息を吹き返すPVのシーンを再現する。
ステージが近いので、ASCIIアートのテキストと図形が
スクリーンに表示されると、PVのなかに没入したような気分だ。
「SEVENTH HEAVEN」になると、少し落ち着く
(Kalafinaというグループの曲とは別物)。
この曲をあまり評価しない者もいるが、私は、連続的で流麗な動き
からなるこの曲のダンスが好きだ。それまでほど強烈ではない曲を
はさむことで、やっと一息つける。というのも、会場の息苦しいほどの
熱気では、ずっとかぶりつきでいるわけにもいかない。
【その7】
「第七天」のあとは、とてもスパイシーな「スパイス」
(みなさんも、この曲を期待していたと思いますけど)。
観客が熱さで参りそうになっても、3人は生き生きと元気よく踊り続ける。
曲のリズムに合わせた優美な動きから、視線をそらすことができない。
とはいえ、やはり休息は必要なので、3人はステージから一時的に退き、
PVのようなものが流される。
メンバーの写真とオフィシャル・サイトからの映像のミックスだ。
この中休みのあと、3人は新しい衣装で登場し、ダイナミックな
「だいじょばない」(「未来のミュージアム」のカップリング)が続く。
スクリーンには、蛍光色のサイケデリックな映像が映し出されるが、
3人のダンスの方がいっそう注目に値する。引きずり込む曲のリズムと
3人のパフォーマンスにより、すでに熱くなった観客がさらに熱くなる。
でも、その次の曲でいっそう温度があがる。
今回のライヴではもっとも古い「エレクトロ・ワールド」だ。
多くの観客は初期の曲も期待していたと思う。
そうした曲のなかでもこの曲は、大きな喜びをもたらした。
鉄線状の3Dの映像が、スクリーンに映し出される。
ややレトロな雰囲気と映像は、曲にぴったり合っていると思う。
そろそろまた休憩の時間。今晩2回目のMC。「Perfumeとの交流」
とでも言うべき時間。というのも3人は、観客の参加を求めたからだ。
ジョー・ダサンの「シャンゼリゼ」からクイーンの「We will rock you」まで、
観客がアカペラで参加するようにうながす。
Tokyo Brass Styleのライヴに行った者なら、クイーンの曲で私が
「デジャヴュ」の印象を持ったことを理解してくれるだろう。
それ以外の人は、彼らのライヴのレポを読んで欲しい。
つぎに3人は、あとでいっしょにするためのちょっとしたフリを教える。
「アウト-イン、アウト-イン、アウト-イン、アウト-イン」……。
覚えられたら、の話だが。
【その8】
この小休止のあと、とてもダイナミックな「FAKE IT」が続く。
残念ながら、PVのようなカメラの効果にあずかることはできないが、
ダンスだけでも満足だ。
!!!警告、警告、警告!!!
とても重要な曲、神話的な「Dream Fighter」の番だ。
出だしの音が聴こえてきたとき、どれほど私が「歓喜」の状態だったか
言葉にできないほど。この曲の人気をスタッフは知っているようで、
曲に合わせて歌詞のフランス語訳がスクリーンに表示される。
みんなが「さーきまで」のところを、いっしょに声を出して歌った。
この曲を聴き、3人が生でダンスし、観客がユニゾンで声を合わせる
さまを見るのは、私にとって、この夜の最高の瞬間だった。
楽しくて陽気な曲「チョコレイト・ディスコ」で、少し緊張がゆるむ。
なぜだかうまく言えないけど、曲とダンスの組み合わせが
とてもかわいいと私は思う。
終わりが近づき、3人はこれが最後だと告げる。
あらためて、観客の反応がどれほどうれしいかを
述べたあと、A-chanは次の曲のサビのフリを教える。
「waku waku, ichi, catch, san, ni, ichi….」。
よくわからないけど、こんな感じ。
【その9】
告げられた最後の曲は、「MY COLOR」だ。みんなが、
今学んだばかりのフリと、2回目のMCで学んだフリをやろうと
するのを見るのは、とても楽しくて感動的だ。観客はまさに、
彼女たちに最後までついていきますと、示そうとしていたのだ。
このすばらしい時間が終わり、3人は喜びに満ちてステージを去った。
でも、観客はアンコールのため、熱心に3人を呼び戻す。
しばらくすると願いは叶い、3人がステージに帰ってくる。
1曲のアンコールが与えられ、観客がそれを選ぶことになる。
ねぇ
GLITTER
love the world
私の個人的な好みは「love the world」だが、みんなが好むのは
「ねぇ」だと予想。賭ければよかった。予想どおり、
この記念するべきライヴの締めくくりは、「ねぇ」となりました。
この曲の信じがたいダンスのステップが実演されると、
観客はみな、狂ったような状態だった。
今度こそ、本当に終わり。ファンの歓声が示す愛情に感動して、
3人はステージをあとにする。
会場の照明がともり、3人が本当にいなくなってから、
一部のグループが「VOICE」の最初の歌詞を歌いだす。
まだ会場に残っている人々がまず、それに合流する。
すると突然、3人がマイクを通して、私たちといっしょにアカペラで歌いだす。
我が友たちよ、何て美しい瞬間だ。「Perfume fans France」のメンバーの
イニシアチヴによるものだ。彼らに感謝を!
【その10】
あっと言う間に終わってしまったけれど、私のライヴ経験の
もっともすばらしい思い出の一つであり続けることはまちがいない。
私たちは、バタクランをあとにした。
3人のドモワゼル(お嬢さん)の力強さが発散する強烈なエッセンスと
そのパフォーマンスは、夜の空気中に浮遊し続け、
私たちの頭のなかで、この狂気の夜のすばらしい思い出を
いまだゆさぶり続けている。
[セットリスト:省略]
[謝辞:省略]
「残存する香り」
最後の言葉は、シャルル・ボードレールの詩集『悪の華』の1篇、
「夕べのハーモニー」に託したい。会場を出たときの私の気持ちを、
よく表現しているからだ。
「夕べのハーモニー」[阿部良雄訳を土台に大幅に改訳]
今や時はおとずれ、おのおの茎の上に震え、
花々は、香炉の香りのように立ち消えていく。
もろもろの音と香りが、夜の空中をかけめぐる。
メランコリーのワルツよ、けだるいめまいよ!
花々は、香炉の香りのように立ち消えていく。
ヴァイオリンが、傷めつけられる心のように戦く。
メランコリーのワルツよ、けだるいめまいよ!
空は、大きな聖体仮置き台のように、悲しく美しい。
ヴァイオリンが、傷めつけられる心のように戦く、
広大で暗黒な虚無を憎む、柔らかな心のように!
空は、大きな聖体仮置き台のように、悲しく美しい。
太陽は、凝固する自分の血で溺れた。
広大で暗黒な虚無を憎む、柔らかな心は、
過去の光の名残りを拾い集める!
太陽は、凝固する自分の血で溺れた……
きみの思い出は僕のうちに輝く、聖体を顕示する台のように!