【テクノポップユニット】Perfume 2367【夏はソーメン。】
その言葉を聞いてハンマーで脳天をド突かれたようなショックを受け、
下世話な自分が恥ずかしくなると同時に、
なぜ彼女達と話しているのが楽しかったのか分かったような気がした。
彼女達には、自分をカモにしようという意識が全くないのだ。
ただ純粋に自分に楽しい時間を過ごして欲しい、という思いのみで自分に向き合ってくれていたのだ。
というのを実感し、その商売っ気のなさに脱帽すると共に彼女達の力になりたい、と切に思ってしまった。
ここまでが戦略だとしたら大したモンである。
「じゃあさ、のっちとかしゆかも呼んでみんなで話そうよ。」と若干酔いの回った頭で提案してみる。
「えぇ!?そんなええよ、指名料とかかかってしまうんよ!?」と遠慮するあ〜ちゃんを押し切り、
のっちとかしゆかを指名して4人で話したい、と無表情なボーイさんにお願いする。
「あ〜ちゃんさんの分を含めて、3人分の指名料がかかりますがよろしいですか?」と確認されるが、
「大丈夫です。悔しいけど僕も男なんです。」と答えるとボーイさんは少し微笑み、
「かしこまりました、少々お待ち下さい。」とテーブルを後にする。
あ〜ちゃんと話しながらしばらく待っていると、かしゆかとのっちが連れ立ってテーブルにやって来る。
「えぇ!?2人と一緒なん?どしたん?」とビックリしているのっち。
「ゴシメイ、アリガトウゴザイマシュ」と笑みを浮かべるかしゆか。
「この人がね、みんなと話したいゆうて、お金かかるのに指名してくれたんよ。」と何故か泣きそうなあ〜ちゃん。
三者三様の反応にそれぞれの性格の違いが顕著に見えて、なんだかほっこりする。
いい感じに回ってきた酔いもあり、気も大きくなっていたので
「なんでも好きなもの頼んで良いよ!」と宣言すると、
「じゃあ一番高いのって何だっけ?」と物騒な事をサラッと言ってのけ、
こちらがギョっとすると「やだぁ、真に受けてるぅ」と悪戯っぽく笑うかしゆか。
「あ〜ちゃんはフルーツの盛り合わせが好きなんれす!」
と自分そっちのけであ〜ちゃんの好みを教えてくれるのっち。
そんな2人を優しく叱りつけながらあ〜ちゃんは
「それじゃあ悪いけど、日本酒を頼んでもいいかねぇ?」と遠慮がちに尋ねる。
なんでも震災で被害を受けた東北の酒蔵から日本酒を取り寄せており、
その売り上げの1部を寄付しているのだという。
何となくしんみりした気持ちで、注文した日本酒を飲みながら4人で話をする。
聞けば3人は同郷で、少し前までは別の店で一緒に働いていたが、3人の夢を叶える為に
こちらの店に移籍してきたらしい。
「前の店の方にはホンマにお世話になって・・・。」と涙ぐむあ〜ちゃんを
優しく慰めるかしゆかとのっち。あぁ、本当に仲がいいんだな〜としみじみ感じる。
3人の夢とは、自分達のお店を出す事だそうだ。場所などの目処もある程度ついており、
もう少しでその夢も実現できそう!と語る3人は本当に輝いており、こちらまで元気をもらえる様な気がする。
そんな会話を楽しんだ後、いい加減酔いも回りきったのでお冷やを貰い店を後にする。
店を出るときには3人が見送りに来てくれ、エレベーターのドアが閉まるまで
「ありがとうございました!」と深々とお辞儀をして見送ってくれた。
最後までいい気分のまま店を出て家に向かう道すがら、
激務でたまったストレスが全て消え明日への活力が沸いてくるのを感じる。
これもあの3人のおかげなのだろう。
「小料理屋かほりか・・・。開店したら通いそうだなぁ・・・。」
とボーっとした頭で考えながら、少し弾んだ足取りで家に向かう道を歩いた。