続き
鉄橋設計を担当する鉄道第三勘察設計院集団有限公司のスウェーデン籍技師は言う。制限重量が厳しく、高い設計・製造技術が求められる黄河特大橋に、中国最高の橋梁建設技術が生かされている。
とりわけ、主塔から斜めに張ったケーブルを橋桁に直接つなぎ支える構造の斜張橋(しゃちょうきょう)の長さ(中央径間)で、世界トップ10のうち7本も誇る設計建設能力を擁する中国のレベルが比較的に高い。
高速鉄道建設と高水準の橋梁架設に、多くの中国製架橋機械や橋体運搬機械が使用されていることに大きな意義がある。中国製造業全般のレベルアップを測る指標としても、大型機械設備の国産化の進捗具合が注目されている。
思えば、すでに中近東や東南アジア地域などでも、中国の道路・橋梁建設企業が多数進出し、近代的なプロジェクトにおいて、中国の技術と設備を生かした競争力が発揮されていることが近年しばし伝えられている。
中国製建設重機や架橋機械の性能と競争力について、筆者の耳に正反対の評価が届いた事実が示唆的である。青島の高速列車製造現場では、ある日本人の中年技術者が中国の高速鉄道技術開発に独創的なものも
多々あると認めるのに対し、同じ現場に居合わせた日本の経済紙ベテラン記者が「すべてが日本技術のパクリ」と酷評したのである。それぞれの根拠を問いただしてみたら、「独創説」の技術者が
車輪部図面の細部を指さしながら指摘してくれたが、日本人記者の方は自ら執筆した古い新聞記事(北京石景山公園のディズニー模造品キャラクターを報じたもの)のコピーだけを渡してくれた。
ミッキーマウス紛いのネズミ人形から、北京天津間のCRH2−300型高速列車へと、中国企業は知的財産権無視の違法模造から、国際公開入札による企業間契約での技術導入へと進歩を遂げた。
また、世界最大級の「JQ900B型架橋機」に見られるような近代的架橋機械の独自開発に成功し、これから中国企業はおそらくもっと大きな技術的進歩を成し遂げていくだろう。高速鉄道建設関連の
テーマを終えようとする今回の連載執筆において、筆者は自らの見聞を披露するとともに、実は一方ではさらなる大きな課題を抱えるようになったのである。
次回からは、済南特大橋建設現場に近いショッピングセンターの家電売り場で見た「家電下郷」キャンペーンの様子を紹介する予定である。
(執筆者:王曙光 拓殖大学教授)
サーチナ 2009/07/31 09:31
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0731&f=column_0731_002.shtml