中国の新幹線総合スレッド

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162名無しの車窓から
中国・「製造大国」の表と裏(8)―北京・上海高速鉄道の「特大橋」

済南市の北郊外に流れる黄河。その水面が済南市中心部のビルよりも高いと言われるほど、昔から水害の危険にさらされている済南住民は恐怖の目で黄河を見つめている。土砂の沈殿で河床が年々高くなり、川水が溢れるのを防ぐための
堤防がどんどん高く作られた結果、黄河は悪名高き天井川(てんじょうがわ)になっている。いつか、行き場を失った川水が氾濫し、町を飲み込んでしまうのではないか。済南人の目には、黄河の姿が恐ろしい「害河」と映っている。

この黄河に最初の鉄橋ができたのは1909年頃。ドイツ人が建設した当時中国最長の鉄道専用鉄橋が古き町・済南の一大景観になっていた。1982年に完成した済南黄河大橋
(当時のアジアで中央径間の最も長い吊り橋)は、典型的な人海戦術の成果であり、筆者も当時建設現場での「義務労働(無給労働)」を余儀なくされていた。

上記二本の橋より黄河上流の方向に目を移すと、両岸を大きく膨らませたように巨大な臨時建築物群が、ほこりを立てながら黄土の広がる広野に構えている。全長5143メートルにも及ぶ「済南黄河特大橋」の建設工事は、いまや昼夜問わず急ピッチで進められている。

済南市政府の公用車から黄河南岸の工事現場入り口前に降りた瞬間、異様な匂いが来訪者の列を襲いかかってきた。土砂が発散した乾いた匂いに交えて、
排気ガスの重く淀んだ臭いが鼻を強烈に刺激した。酷暑の済南に慣れたはずの筆者も、この工事現場に溢れ出るさまざまな熱さに息が詰まった。

済南特大橋の工事現場には、かつて筆者が義務労働者として体験していた橋造りの現場とはまったく異なる雰囲気が漂っている。革命歌謡曲の音楽放送もなく、騒々しい政治的なシュプレヒコールも聞こえない。
耳に注がれたのは各種機械が出した騒音のみである。フル交代で稼働する建設機械や慌ただしく往来する輸送車両の音が、黄河河畔のすべての空間を支配している。

工事現場の奥に向かってしばらく進むと、架橋機械などが多く設置されている吊り橋の主塔らしきものが目前に迫ってきた。施工企業「中鉄一局集団」の案内者の説明によると、中国企業の独自開発による
900トン級の架橋設備が主力として活躍しているという。なるほど、「JQ900B型架橋機」という銘板が付けられる大型機械が全長32メートル、重量が900トンにも達する橋梁ユニットを軽々と吊り上げている。

続く