横浜高校Part206

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718 ◆38E1IlV.D2
ヒマラヤにも連なる山脈の中腹にあるルーナが住むその村に俺が初
めて訪れたのは2007年のことだ。青いあまりにも青い空と真っ白の空。
視野にめくるめく広がる山々。
来た日の夜俺をもてなすために集落内の殆どの人で宴を催してくれた。
家屋の割には人は少ない。そしてみな年長者ばかりだった。
人民解放軍の度重なる侵入が放牧の妨げになっている一方、インタ
ーネットをはじめとする情報化の波もまた若者が村を離れる理由だっ
たという。
長の娘の客だからなのか?珍しい異国人の来訪だからなのか?
野外の宴の注がれるままに乳臭い酒を飲むうちに酔った。
俺の心を読んだかのようにあらかた配膳をすませ横に寄り添ったルー
ナが答えてくれたその答えは斜めすごく上だった。
719 ◆38E1IlV.D2 :2014/07/10(木) 11:35:19.81 ID:R/9gTbgd0
「みなが歓迎するのはあなたの魂がこの地で生まれたことがみんなに
わかるからなのよ、おかえりなさい、アゲハ。」
ルーナとは2chで知り合ったブータンの娘だ。知り合った当初彼女は日
本の大学で生物学を学んでいた。ルーナはコテハン。本名を知った後
もそして実際横浜でデートするようになった後も一緒に寝た後も俺にと
って彼女はいつもルーナだった。そして俺はいつもアゲハと呼ばれた。
ルーナは美しい女だ。ふざけて2ch経由で画像をUpさせたときはどこか
の拾い画像だと思った。日本人と少しも変わらぬ風貌。というかポニテ
にすると俺が属していた高校野球部のマネそっくりなんだよなぁ。イッコ
下のあのマネなんていっただろう?
そういえば奴の嫁さんも似てるんだよ?俺とサードのポジ争ってた脳外
科医の嫁さん。
720 ◆38E1IlV.D2 :2014/07/10(木) 11:38:09.64 ID:R/9gTbgd0
なあ、ぢャーマン。俺の昆虫の趣味とか仕事とかのことは小説の題材に
してもいいがルーナことは触れないでくれないかなあ?彼女は2chの気
持ち悪いオッサンたちの頭ん中に登場するには純真すぎるんだよ?
おまえこの間、あの決勝でのゲッツーフライのこと書いただろ?ゲッツー
今でも悩んでるんだぜ?一時は悩みぬいた末に弟として生まれ変わった
ことにしてやっと立ち直ったんだぞ。あぁ、ゲッツーってあだ名つけたのも
おまえだったな。立ち直らせるためだとかテキトー言って。
しかも機関士とかブータンて、俺と絡ませてゲッツーのキャラ作りあげたの
は頂けないよ?
あとKのことはもう書くなよ?
死者だけは貶めるな。
721 ◆38E1IlV.D2 :2014/07/10(木) 11:39:41.81 ID:R/9gTbgd0
「俺の魂はここで生まれたのか?」
驚いて聞き返した俺にルーナは微笑むだけだった。
ただしばらくして夜空を見上げこういった。
「アゲハ、日本とブータンでは星座がちがうね。星は同じところにあるのに。」
そのとき一緒に見上げたブータンの星空に俺の酔った意識は解けた。
ブータンでは時間の流れ方も空間の距離感もまるで違って感じる。
あの夜まるでわからなかったルーナの斜め上に感じた言葉が何度かブー
タンを訪ねるうちに違和感なく解けてゆく。何かに合点するのではなく彼女の
言葉が解けてゆくのだ。
 
                                 勿論続く