【政治】 普天間のツケをTPPで払うな 外交の失政は取り返しつかない…自民・稲田朋美衆院議員
TPPは全てのモノの関税を原則即時撤廃し、サービス、貿易、投資、労働などを自由化することを
目標とし、現在9カ国が交渉中だ。当然ながら、交渉参加国それぞれに思惑がある。例えば、米国は、
アジア太平洋地域への輸出と国内雇用の拡大、地域でのリーダーシップの強化を狙っている。
≪なし崩し的な譲歩必至の交渉≫
では、日本の戦略は何なのか。イメージ先行で抽象的な決め付けではなく、冷静かつ戦略的な見極めと
判断が必要だ。「バスに乗り遅れるな」と推進派は言うが、バスは乗り遅れるかどうかよりも、「行き先」
が重要である。「行き先」が分からない、しかも間違いに気づいても途中下車できないバスに国民を乗せて
はならない。
TPPが、将来の日本の国柄に重大な影響を及ぼすことは明らかで、交渉に参加するなら、国会での
十分な議論が不可欠だ。だが、どうやら衆院予算委員会で1日だけ集中審議し、12日からのAPEC
(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合で野田佳彦首相が交渉参加を表明するらしい。外務委員会で
玄葉光一郎外相に質(ただ)したが、参加決定手続きは未定、最終的には首相判断という曖昧答弁だった。
もともと、民主党は、昨年の参院選のマニフェスト(政権公約)でも全くTPPに言及せず、菅直人前首相
の昨年10月の所信表明で突如浮上してきた。しかも、今に至るまで、交渉参加の原則的な方針すら決まって
いない。コメにかける関税をどうするのか。輸入食品、医薬品、化粧品の安全基準はどうなるのか。海外の
弁護士や外国人労働者の規制なくして、国民の生活や雇用は大丈夫なのか。
農業をスケープゴートに議論を矮小(わいしょう)化せず、ISD条項(投資家と国家間の紛争条項)に
よる司法権、立法権の侵害の問題や最大の非関税障壁とされる国語は守れるのかという文明の危機の問題
として議論しなければならない。正確な情報も発信されず、交渉に参加すべしとか、ルールを作るとか、
途中で脱退できるのできないの、と抽象的な議論に終始しているようでは、全てをなし崩し的に譲歩する
ことになるのがオチである。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111107/plc11110703160000-n1.htm >>288 ≪日本独自の対外発信の放棄だ≫
TPPは米国の輸出拡大と雇用創出のためにある。普天間で怒らせた米国のご機嫌を取るために交渉に入る
とすれば、政権維持のために国を売る暴挙だ。これ以上の失政の上塗りはやめるべきだ。
日本は中国でも米国でもない「道義大国」として独自の価値観を世界に発信する責務がある。だから、
日米同盟は重要だが、「中国を囲い込む」という理由で、米国に同化するわけにはいかない。米国で今、
大きな社会問題になっているウォール街占拠デモは、米国の強欲資本主義の歪(ゆが)みによるもので、
ある種の共感を覚える。
日本は一握りの極端に裕福な人と多数の貧しい人の国ではなく、額に汗し努力した人が報われる、
頑張りながら報われなかった人も助ける社会を目指すべきだ。日本型資本主義は、富を創出し、社会を豊かに
した人が豊かになるものでなければならない。コンピューターを駆使した不公正な株取引や法の不備をついて
巨額の富を得ることが称賛されることなく、「不道徳」と指弾される国である。
日本は「儲(もう)けたもの勝ち」「何でもあり」を是正し、カジノ資本主義を正す責務がある。
TPP参加は、そういう役割を自ら放棄することになる。なぜなら、TPPは米国の基準を日本が受け入れ、
日本における米国の利益を守ることにつながるからだ。それは、日本が日本でなくなること、日本が目指すべき
理想を放棄することにほかならない。TPPバスの終着駅は、日本文明の墓場なのだ。(いなだ ともみ)