そんなことがあったのは3年前。地元に3ヶ月1回ぐらいのペースで帰り、
亜矢乃とは普通に接するようになった。
新しい生活というのはいつか新しくなくなるわけで、
俺はもうこの生活にだいぶ慣れていた。
月1回おくってくる親からの米や味噌、そして少しの金。
高校生のときからもらっている小遣い「月1万円」、
両親は成人になっても送ってくれた。その中にはいつも、
亜矢乃が焼いたお菓子が入っている。料理教室をやったりしているおばさんに似て、
亜矢乃はすごく料理が上手だ。いろんな菓子屋で高い菓子を買っても、
亜矢乃が作るものに勝る菓子には出会ったことが無い。
お礼のメールをいれることはあったけど、俺から何かお返しすることはなかった。
地元に帰っている間も、
その間も特に何かしてあげるっていうことはなかった。
変に期待を持たせてまた傷つける、それだけは絶対にしたくなかったからだ。