俺「亜矢乃!!!!」一瞬俺のほうを見て、パッと背を向けた。
亜矢乃は結構薄着だったので、ガタガタと震えていた。
俺「ほら、そんなかっこしてねぇで・・・」と、腕を引っ張りあげる。
亜矢乃「やだ!!!」と、俺を拒否した。顔は涙で濡れていた。
俺「何いってんだよ!早く帰るぞ、風邪ひくといけないから」
亜矢乃「・・・・・ねぇ、なんで言ってくれなかったの?
高校入ってバイトしたら、サマソニも、ソニマニも、
絶対一緒に行こうねって言ったじゃん!バンド組んで、
○○(ライヴハウス)一緒に立とうって約束したじゃん!!
忘れちゃったの!?・・・ずっと一緒に居られると思ったのに、・・うそつき!
賢ちゃん酷いよ、酷すぎるよ、ずっと好きだったのに!!!」
俺の胸あたりを握りこぶしでガンガン叩きながら、
亜矢乃は俺に言葉をぶつけてきた。
亜矢乃はバスケで鍛えてるだけあって、その一発一発がめちゃめちゃ重い。
突き刺さる言葉も、重くて痛い。
痛いけど、俺はそれを受け止めるしかなかった。
俺は、負けないぐらいの力で亜矢乃を思いっきり抱き締めた。
雪も降ってきて、人通りが少ない。亜矢乃の嗚咽だけが響いていたと思う。
でもやっぱり別れなければならないときは訪れるもので、
俺は真希と哲也と一緒に、 新幹線のホームに立っていた。
もうすぐ哲也の後輩になる亜矢乃と真希、制服ぐらい見たかったと思ったけど、
すぐ手伝って欲しいとのことで、引越しが早まってしまったのだ。
ドラムセットは自分の部屋に組みなおして、
「3人で好きなように使えよ」と言って残した。
マンションで叩いたら、出てけっていわれるにきまってるし。(笑)
亜矢乃は来てくれなかった。
酷いことをしたってものすごく後悔したけど、仕方が無い。
哲也「これ、亜矢乃から預かったんだけど・・・」可愛い便箋を差し出す。
俺「あ、おう。」
ホームに入ってきた新幹線、発車を知らせる放送が聞えた。
哲也「・・じゃぁな、まぁ、さっさと免許とって、ちょくちょく帰ってくるから。」
そういって、俺は新幹線に乗り込む。
ドアがしまって、ゆっくり動き出す。
哲也と真希に手を振り、見えなくなったのを確認して
自分の指定席を探し、座った。
さっきの手紙を開けて、ゆっくり中を読んだ。
『DEAR⇒賢ちゃん こんにちは。こないだは困らせちゃってゴメンね。
頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃって、賢ちゃんの気持ち考えられなかった。
よく考えたらサマソニもソニマニも、
会場近くなるから新しい賢ちゃんちのほうが便利なのにね(笑
ちゃんと言うつもりだったのに、勢いで好きって言っちゃったし。
あとで考えて、めっちゃ恥ずかしかったよ・・・。
でも、ホントにずっと思ってたコトだよ。ドラム叩いてるときの賢ちゃんが一番好き!
優しいとこも、面白いとこも、全部大好きだよ。
○○に行ったら、楽器やってる人もいっぱい居るだろうし、
良いメンバー探して、バンドやってね!絶対見に行くから。
-----中略。(笑)-----
今まで迷惑ばっかりかけてごめんね。ずっと応援してるから、新しい生活がんばって。
寂しくなったらいつでも戻ってきてね。
待ってるから。 本当にありがとう。さようなら。 FROM⇒あやの☆』
自然と涙が出てきた。唇かみ締めて、声が出ないように泣いた。
やっぱ俺にも不安ってもんはあるわけで・・・、
「いつでももどってきてね」っていうのはすごい心強いし、嬉しかった。
亜矢乃に酷いことをしてしまったという後悔が押し寄せたが、
窓から俺を照らす春の日差しがなんとも温かくて、俺を穏やかな気分にさせた。