ジャイアンはデスメタル

「おれがこの手で皮をはいでやる。」
「これからずっとおまえはおれのどれいだ。」
　さわやかな朝の挨拶が、嵐が近づく空にこだまする。
　タケシット様のお庭に集う漢達が、今日も堕ちた天使のような笑顔で、鋼鉄の門を
なぎ倒していく。
　敗北を知らない心身を包むのは、オレンジ色の制服。
　ギターの調弦は5音下げ、ドラムは5バスで、ずっしり
と演奏するのがここでのたしなみ。もちろん、アコギで弾き語るなどといった、はしたない
生徒など存在していようはずもない。
　私立ジャイアン音楽学院。
　２０××年創立のこの学園は、もとはタケシットを神と崇める漢たちのためにつくられたという、邪悪なる
グラインド/デス系音楽学校である。
　東京都下。土管置き場を兼ねる空き地を未だに残している緑の多いこの地区で、邪悪なる神に見守られ、幼稚者か
ら大学までの一環教育が受けられるデスメタルの園。
　時代は移り変わり、ジャイアンメイデンのメンバーがオリジナルから三回も改まった今日でさえ、十八年通い続ければ
地下室育ちの純粋培養デスメタラーが箱入りで出荷される仕組みが未だ残っている貴重な学
園である。