ステージ・トゥール
「宗教儀式のような華厳さ」
-こういう書き方をすると語弊があるかもしれないが、まるで
生け贄を捧げる為の儀式のようだと思った。メンバー4人が殆
ど立ち位置を変えずに、おのおのの演奏に没頭しつつ、それで
も一つの大きなうねりを編み出していく様子は、時に宗教的で
さえあり、荘厳な雰囲気を漂わせるもの。日常生活とは明らか
に異なる空間を描こうとする彼等の美意識が伝わってくる。
本国アメリカでは驚異的な驚異的なセールスを記録するロサン
ゼルスの4人組が、単独としては初となる来日公演を実現させた
その重厚なサウンドゆえにヘビーロックと言われる事も多いよう
だが、変拍子をものともしない高度な演奏スタイルとシアトリカ
ルな演出性には、どちらかと言えばプログレッシブロックとの共
通性が見られる。陰と陽、濁と美、硬いと軟と言った、一見相反
するものを、切れ味の鋭い演奏でコントラストをつけながら表現
するのがうまい。地獄の底からねっとりとはい出してくるような
不気味なボーカルも、さすがはキャリア12年、思いのほか表情豊
かだ。
背後のスクリーンに写る、特殊メークやCG処理を施した映像効果
もあり、何度も内蔵をえぐりとられそうな感覚に襲われる。映像
のスピードが落ちていくのと呼応するように、演奏もゆるやかに
フェイドアウトしていくエンディングは終末感も感じさせる。し
かし、後味は決して悪くない。ステージ終盤になると不思議と心
地よさへとすりかわっていく。むしろここから何かが始まるのだ
、というポジティヴな気持ちにさせられた。脚をリズミカルに乗
せたり感動させたりするだけがショーではない。これもまた一つ
のエンターテイメントなのだ。(岡村詩野・音楽評論家)-