僻地医療の自爆燃料を語る68

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119卵の名無しさん
 前述の播磨医師はこう嘆く。
「通常時間帯の診療報酬も下げて、休日夜間診療報酬を減らせば、人を雇う余裕もなくなります。
 今では夜間休日に開けるよりも、閉院して、駐車場やマンションにしてしまうほうがよほどましなのです。
 開業して日が浅い医師達すら、理不尽な診療報酬に従うよりも海外で働く方がマシだと感じ始めたのです」
 開業医の一年あたりの報酬は2400万円と騒がれたときもあったのになぜかと訊いてみた。答は明快だった。
「それは粗利益ですし、一部の稼いでいる医療機関により数字が底上げされているのです。
 そこから税金や人件費や機械のリース料、院内に置く救急薬品の購入費などを差し引いたのが実収入です。
 多くの診療所では実年収1000万円切るでしょう。休日夜間診療をしなければ、もう少し多くなるのですが
 まあ、医師が医業をするより不動産業をするほうが確実な時代なんですね」
 そう言うと播磨医師は寂しく笑った。

 そして開業医による夜間休日診療システムが崩壊した地区の人々は、救急病院に行かざるを得なくなる。
 だが、その病院でも鳴り物入りで導入された診療看護師制度が危機に瀕している。
「同期ですか? 30人はいましたけど、今残っているのは5人くらいでしょうか? 私も辞めようかと思っていますけどね」
 診療看護師に第一期合格したMさんは、そういって自嘲するような笑みを浮かべた。
「確かに少しだけ給料は良いです。だけど、医師じゃないってことで、患者さんの態度が全然違うんですよ。
 怒鳴られることなんて当たり前で、殴られた人も知っています」
 Mさんの話によると、診療看護師が出てくると、露骨に不審な顔を見せるのは良い方だという。
 何を言っても医者を出せとわめく患者、誤診したら訴えるとすごむ母親、希望が通らないと暴れる患者はざらだという。
「救急での初診というのはとても難しいのですが、それを患者様は理解してくれません。
 後で医者にかかったらこの薬では駄目だと言われたとか、緊急入院になったとかで、クレームは当たり前です。
 幸いにして私はありませんが、医療ミスだと言われて訴えられている診療看護師は、かなりいます。
 訴訟になったら病院は守ってくれませんし、皆、嫌気がさしているのです」