僻地医療の自爆燃料を語る68

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118卵の名無しさん
 仏壇に添えられた写真の中で、優しそうなY医師が微笑み、その周りには子供達の手紙が飾られていた。
 Y医師の長男F医師は、医師になったものの放射線科に進んだ。それはY医師自身のアドバイスが大きい。
「父は、根拠のない診療報酬改定に振り回される保険医では先は見えないと言ってました。
 ですので、私はアメリカ留学のつてで、アメリカの病院からの読影委託で収入を得ています
 父には悪いのですが、父は早く臨床をほどほどにするべきでした。日本の保険診療下では臨床医は負け組なんです」
 そう言うS医師は、週2日休日が保証され、夜間休日に働くことも無く、趣味のオーケストラ活動に打ち込む日々を送っている。
 S医師に、医院を継ぐ意志を尋ねたが、明確に否定された。医院はまもなく取り壊されマンションが建てられる予定だ。
 開業医の多い筈のN市は、しかし今では閉院の張り紙を貼られた診療所の方が多い。
 3歳の子供を持つOさんは実状をこう語る。
「頼れるベテラン先生のところが、軒並み閉院になってしまいました。
 それどころか、ビルで開業していた若い先生も、オーストラリアに行くって閉院になってしまって。
 去年までは10分も歩けば診療所に行けたのに、今では歩いて30分かかるところで、5時間待たないと診察してもらえないんです」
 小児科は乳幼児助成制度があり、利益が固い診療科のはずだった。
 だが7年前、厚生労働省による開業医の休日夜間診療への誘導を目的とした診療報酬改定が行われた。