産科医絶滅史20巻〜地雷を踏んだらサヨウ奈良〜

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63卵の名無しさん
動物園では相変わらずパンダがいじめられていましたが、
他の動物たちへのお客さんの態度も少しずつ変わり始めていたのです。
石を投げたり、「餌ばかり食べやがって。動物のくせに」と罵声を浴びせたり。
中には、動物園の入場料を払わずにショーを見て、動物を蹴飛ばして帰る人もいました。
こういう人たちが来ても、あとで村長さんが代わりに餌を持ってきてくれたので、
なんとか動物たちは我慢してショーを続けていたものです。

ある日、動物園では子供に人気のあったゾウがテレビをつけると、
画面の中ではミノムシがいっぱいぶら下がって話をしていました。
「動物園のショーのプログラムは、ひゃくパーセントねつぞうです」
「ショーが気に入らずに怒るお客さんがいますが、すべて動物の手抜きのせいです」
「動物は、餌ばかり要求してお客さんのことなんか考えていませんよ」
ゾウはくやしくて泣きました。
いつの間にかテレビの周りに集まっていたトラ、ライオン、シロクマ、イタチ、ゴリラも、
みんなみんな泣きました。涙が枯れても、泣き続けました。

その夜、ゾウが檻を壊して逃げました。
それを見たパンダも、ようやく腰を上げて走り出しました。
他の動物も、みんなみんな逃げました。

朝になって飼育員が動物園に来たら、もうそこには何も残っていませんでした。
お客さんは「ショーを、見せろ。俺たちは、ショーを見るけんりがある」と怒りました。
ミノムシも「村のための動物園なのに、動物は責任感がない」と叫びました。
でも、次の日になっても、次の年になっても、もう動物たちは戻ってきませんでした。