強調したいのは医療の安全の確保だ。最近の医療事故の頻発は目に余る。坪井栄孝・日医
会長も「医療事故や医療に対する不安、信頼の喪失は私自身も経験したことがないもので、
放置できない」という。
医療事故は高度な医療にチームで取り組んでいる大病院で目立つ。報酬見直しにあたっては、
診療所よりも病院に医療費をもっと手厚く配分する必要があろう。
日本の医療は、人口あたりの医師や看護師の数は欧米とほぼ同じ水準なのに、病床あたりで
見ると半分から3分の1になってしまう。これは人口あたりのベッド数や入院日数が欧米の
2〜3倍もあるためだ。医療事故の背景に、日本に特有の大病院の人手不足があるのは間違い
ない。
診療報酬の改定で、医療の構造を欧米なみの「集約的な医療」に誘導していくことを考えて
ほしい。ベッド数を減らして医師や看護師に余裕を持たせる。そうした病院を経営的に支える
診療報酬になれば、患者本位の医療につながっていくだろう。
国民医療費は30兆円を超え、人口の高齢化で膨張の圧力が続く。医療の質の向上がなければ、
負担増はとても理解されまい。診療報酬をテコにした医療改革を進め、「患者本位の医療」「無
駄のない効率的な医療」の実現をめざしてもらいたい。
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