■《天声人語》 10月18日
手術件数が一定数に満たないと、保険から病院に支払われる手
術代が安くなる。こういう制度が4月から始まっている。手術の腕は、
数をこなさなければあがらない。件数の少ない病院は、技術が十分磨
かれていないと考えられるから支払いを減らす、という理屈だ。
例えば心臓のバイパス手術は年間100件が基準とされた。これを満
たさない病院は6割にのぼる。病院関係者からは改革への反対論が
こぞって出された。理由の一つは「件数を満たそうと不要な手術が行
われるようになる」というものだった。患者のためにならないと心配する
声は、今も聞かれる。
おそろしいことだ。制度改革が、ではない。お金のために不要な手術
もありうると当たり前のように考える日本の医師たちが、である。
バイパス手術を年に200例以上執刀する南淵(なぶち)明宏さんは
今回の改革を支持する一人だ。脳や心臓などの難しい手術について
は、安全性を高めるため各県に1カ所程度に集中させるのが望ましい
と考える。それが世界の常識だとも話す。
「医療不信とは患者が病院を信用しないことだけれど、より深刻なの
は医療者どうしの相互不信ではないか」と南淵さん。専門医がほかの
専門医を信用していない。それだけではない。あちこちの病院を訪れ
てみて、看護師や臨床工学技士らと医師の間に信頼感が欠けている
と実感することが少なくないという。
不要な手術への懸念が出るのも医師が医師を信頼していないからに
ほかならない。患者側としては「医療者よ、しっかりして」と叫びたくなる。
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