「東京ER・墨東」と小児科
関一郎*
平成13年11月に新しく救急体制の確保のために, 墨東病院に
「東京ER・墨東」が整備された. ER は evergency room の略で,
新設の救急診療科と救命救急センターで構成され, 救急外来
診療・入院・緊急手術・救命措置などトータルな救急医療を提供
することが目的である. 東京発医療改革の一環として「いつでも
・だれでも・さまざまな症状」をもつ「救急患者」に対応する
制度である.
総合診療科の中に内科系・小児科・外科系の 3系列を新設し,
各系列ごとに専任の医師が診療に当たる. 加えてコーディネー
ター医師が救急診療科の責任者として, また ER と既存科の調整
者として存在する. 午後5時から翌日午前9時までは ER 診療医
が外来診療を担当し, 入院患者は病棟担当医師が対応する.
1. 体制
小児科の常勤医師7名, 非常勤医師2名と, ER 専任常勤医師
2名で構成される. ER 専任非常勤医師6名も定数化されている
が, 応募者がなく実質6名のマイナスで稼働せざるをえない.
そのため, 小児科では医師11名で365日2人当直体制(ER 当直と
病棟当直)を敷いている. 小児科のみならず, 内科系も外科系も
常勤も非常勤も医師の定数が充足されていない.
2. 現状と問題点
(1) 受診患者数:ER 開始前の小児科の救急患者数は1当直当
たり20〜25人であったが, ER 開始後は50〜60人と倍増した. 当
直医師は2人体制であるが, 患者数に追いつかず1〜2時間待
ちがほとんどとなる.
(2) 受診患者:ER の対象は救急患者であるが, 「いつでも・
だれでも・さまざまな症状をもつ」が先行して, コンビニ医療そ
のものである. ほとんどが新患であり, 軽症者である. このため,
二次救急患者の診察を断り, 一次患者に対応するという, 本末
転倒な現場となっている.
(3) 地域医療・連携医療:ER 受診の翌日は, かかりつけ医を
受診するか, 当院外来を受診するかを指示するが, 振り分けに納
得せず当院受診を希望し, 小児科外来は予約患者・予約外患者と
翌診患者でパンク状態であり, 地域医療の確立は困難である.
(4) 小児科医師当直:平日当直は2人制, 休日は日勤3人当直
2人制を組むため, 小児科医師数不足とあいまって当直回数は月
平均8回(最大10回)となっている. さらに当直翌日も通常勤務
である.
(5) ER での電話対応:救急外来への受診相談の電話が数多く,
これに小児科医師が対応すると診察が滞ってしまうため, コー
ディネーター医師が対応する. 医療機関や救急車からの依頼も
小児科の状況を判断して対応する.
(6) 後方病床が未確保:病院全体の病床数が増加していない
ために, 入院ベッド探しが大変である. 平日の日勤帯は医事課医
療連携部で協力してもらえるが, 夜間・休日は当直医自ら探さな
ければならない.
いろいろな問題点を抱えているが, 改善案を検討しながら「東
京ER・墨東」は成長している.
---
*せき・いちろう:東京都立墨東病院小児科部長. 昭和47年日本大学医学部卒業. 昭和47年日本大学医学部小児科. 昭和55年東京都立墨東病院小児科医長. 平成4年現職. 主研究領域/小児救急, 小児循環器.
---
日医雑誌 第128巻・第5号/平成14(2002)年9月1日
370 :
卵の名無しさん:02/11/09 23:05 ID:oU60kMOP
371 :
訂正:02/11/09 23:09 ID:oU60kMOP
×ER は evergency room の略で,
○ER は emergency room の略で,