社説
■医療費負担増――凍結は問題の先送りだ
この4月から、サラリーマン本人の医療費自己負担が、現行の2割
から3割に引き 上げられる。昨年の国会で成立した改正健保法で
決まっていたことだ。
ところが、ここに来て野党が引き上げの凍結を求め始めた。自民党
支持のはずの日 本医師会も野党に同調している。
確かに負担増は痛い。不況で給料が下がっている会社員は、おちおち
風邪をひくこ ともできないと思うかもしれない。
しかし、野党の姿勢を見ると首をかしげざるを得ないのである。
「負担増の前に医療制度の抜本改革を優先させるべきだ」と野党は
いう。では、野 党は具体的な改革案と実現の手順を一致して示したか
というと、そうではない。
対案なき反対なのである。負担増の凍結という甘い話ばかり振りまく
のでは、自民党の族議員と同じではないか。
社説2/3
3割負担の議論が白熱した1年前、自民党の厚生族議員が「抜本
改革をしてから3割負担を」と主張したことがある。
このとき小泉首相は、何もしないための「逃げ口上」だと一蹴
した。厚相を務めた経験から首相は、抜本改革を唱えるのは、改革
を先送りする族議員の常套手段だと見抜いているのだろう。
健保や国保などの厳しい財政見通しを考えると、3割負担はやむを
得ない。首相は予定通り実施すべきである。
野党や医師会は保険財政にはまだ余裕があると主張している。小泉
首相の「三方一両損」によって、診療報酬が昨年春から引き下げられ
たことで医療費が減少しているので、負担増は当面必要ないともいう。
だが、ここで負担増という「緊急手術」を先送りして、保険財政の
悪化がのっぴきならない状態になってから負担増を打ち出せば、痛み
はもっと大きくなる。
厚生労働省によると、3割負担を実施すると、中小企業が加入する
政府管掌健保の財政はとりあえず維持できるが、それも数年間に過ぎ
ない。この小康期間を利用して抜本改革を実現させるべきだ。
改正健保法の付則には、今年度中に抜本改革の基本方針をまとめる
ことが盛り込まれている。改革案として坂口厚労相案と自民党案が出
されている。野党も対案を示し、政府と国会で議論を詰めてほしい。
もちろん、保険制度の改革だけで、問題が解決するわけではない。
国民に負担増を求めるときに、社会保険庁などの保険の運営側や政府
が、医療に充てるために国民から集める保険料や税金を無駄遣いする
ことは、あってはならない。医師も検査漬け・薬漬けなどの医療費の
無駄をなくすのは当然だ。
社説3/3
ない。この小康期間を利用して抜本改革を実現させるべきだ。
改正健保法の付則には、今年度中に抜本改革の基本方針をまとめる
ことが盛り込まれている。改革案として坂口厚労相案と自民党案が出
されている。野党も対案を示し、政府と国会で議論を詰めてほしい。
もちろん、保険制度の改革だけで、問題が解決するわけではない。
国民に負担増を求めるときに、社会保険庁などの保険の運営側や政府
が、医療に充てるために国民から集める保険料や税金を無駄遣いする
ことは、あってはならない。医師も検査漬け・薬漬けなどの医療費の
無駄をなくすのは当然だ。
負担増が実施されるなら、患者はそれに見合ういい医療を受けたいと
思うだろう。治療の内容や、その値段をわかりやすく示すため情報開示
を進め、医療の質の向上をはかることも忘れてはならない。