ZOROの名門−沢井製薬バンザ〜イ! part11

このエントリーをはてなブックマークに追加
757卵の名無しさん

 アルツハイマー病に対するALRは日常生活の中でリハビリテーションのプログラムを
提供するものであり,わが国においてもそのような施設は数多く存在するので,特に新し
いものでないとしても,このような施設における医療のあり方には学ぶべき点が多い。
 家庭と同様な雰囲気の中で,多くの人たちとの関わりを共有しながら生活することは,
この疾患の初期,あるいは中等症の状態にとって有用とされている。日常生活の基本的要
因である入浴,排泄,更衣,整髪,摂食を援助するが,最も重要なことはそれぞれの患者
の能力に応じて行なわれるべきであり,参加者がそれによって最高の機能が発揮されるこ
とが期待される。
 このようなケアはアルツハイマー病の進行を遅らせるとともに,譫妄や不安に対しても
有効であると考えられており,また身体的,知的に疾病が進行性であったとしても情緒的
なwell-beingが改善され,患者も前向きに対応するようになる。これらの対象者にその他
の併存病があったり,あるいは入所中に他の疾患を発症することが多いので,一般の健康
管理も常時行なわなければならない。
 Dr. Dubeauは内科専門医であり,同時に老人病の専門医でもあるが,このBACの住人
の健康管理を行なっている。この施設ではナースプラクティショナーが医師とまったく同
じ医療行為を行なっており,検査や薬物の処方は医師のサインなしでも必要に応じて実施
される。従って,患者や家族との医療内容の契約においては,医師のカウンター・サイン
は必要であるが,それは事後の処理として行なわれている。
 ただし,心肺停止に際して蘇生術を施行するか否かについては,事前に医師のサインが
求められている。この施設においてはナースプラクティショナーがきわめて重要な役割を
果たしており,医師が常時いるわけではないので,すべての患者の情報はナースプラクテ
ィショナーによって把握されている。

758卵の名無しさん:02/09/17 17:49 ID:piuzAeMZ

 ナースプラクティショナーの病歴と身体所見の採り方は医師以上に綿密であり,また医
師の診察には必ず陪席して意見を述べるとともに,情報の共有に努めている。アルツハイ
マー病では特に家族とのコミュニケーションが重要であり,その意味からも家族教育を含
めて,ナースプラクティショナーがケースマネジャーの役割を果たしている。数人の患者
の診察に立ち会ったが,86歳の女性の譫妄状態が高じ,また感染症を伴っていたため
psychiatric careを専門とする高次医療機関へ転院となった。このようなケースでは医師が
不在であればナースプラティショナーが医師に連絡をとり,医師が出先から転院の手続き
をとることになる。

 BIDMCにはこのような患者が多く入院しており,ほとんど5日以内にもとの施設へ戻
っているが,ナースプラクティショナーは入院先へ出向いて病状について情報を得ること
ができるので,医療の継続性が保たれる。このような場面においてもケースマネジメント
の有用性が実感された。

759卵の名無しさん:02/09/17 17:50 ID:piuzAeMZ

老年病の外来医療:BIDMCにて 【12月13日】
 午後2時よりBIDMCの老年病外来を見学した。Dr. Lews Lipsitzが責任者で,当日はDr.
Lipsitzを含め4人の医師が外来担当であった。ほとんどが紹介患者で,診断や治療に関す
るコンサルテーションであるが,中にはセカンドオピニオンを求めて受診するものも見ら
れた。
 老年病の医療では,老人に特有の生物学的加齢,多くの併存病,そしてfrailであり
vulnerableであるといった状況を背景に,身体,心理,精神,社会的問題を抱えた患者を
対象にすることから,特殊な知識や技術が必要であり,内科医が片手間に老人の診療をす
ることは,小児科医が成人の診療をする以上に不都合である。特に米国においては,言語
上の問題,貧困,低い教育レベルといったわが国とは別の診療を阻害する要因があって,
老人医療を複雑に困難化している面があるように思われた。
 わが国での外来診療とは異なって,1患者に30分以上はかけて診察するので,診療の
質は格段に高いが,Dr. Lipsitzを中心に4人の医師が相談しながら診察を進めており,教
育的にも魅力のある外来診療であった。
 若い医師が英語を話せない83歳の老女の新患を診るのに陪席させてもらった。英語が
話せる娘と孫が取り次ぎながら問診,診察を進め,そして検査のプランを立て,インフル
エンザのワクチンの注射をするまでつき合ったが,診察に看護職が付くということはなく,
注射の準備から注射をするまで,すべて医師が1人で行なっていた。

760卵の名無しさん:02/09/17 17:50 ID:piuzAeMZ

 主訴は労作性呼吸困難,夜間のせき,下肢の浮腫で,高血圧,糖尿病,慢性気管支炎な
どのcomorbidityはあるが,身の回りのことは自身で行なえ,ADLには問題がない。しか
しIADLの評価は中程度障害と思われた。今回の受診は患者が高齢化したため,これまで
のバハマでの独居の生活からボストンに住む娘の元に引き取られてきたため,今後の医療
をどのようにするかということであった。診断について意見を求められたので,心不全の
鑑別に内頚静脈の怒張とギャロップリズムの記載がないことを指摘すると素直に受け入
れ,それらがないことを確認して後で伝えてくれた。
 また,Dr. Lipsitzがもう1人の医師と対診していた78歳の男性について,脊椎管狭窄と
閉塞性動脈硬化症の鑑別のため上肢/下肢の血圧比を診ることになったが,実際の測定法
には両医とも経験がないらしく,私が実施の仕方を教え,カットオフ値が0.9であること
を告げると率直に感謝され,大変すがすがしい思いをした。
 複数の医師で複数の患者を診ることはいろいろな意味で有用であり,わが国の外来診療
もこのような余裕のあるものであれば,医師への負担も軽くなるばかりでなく,よい経験
を積むという意味でも教育的に好ましいと思われた。