ZOROの名門−沢井製薬バンザ〜イ! part11

このエントリーをはてなブックマークに追加
751卵の名無しさん

従って,入院と同時にすべてのプロセスは直線的に平行して進行し,患者の同意の上で家
族,医師,その他の医療者が互いに連絡を取り合い,この最初の介入によって,患者の身
体的,心理的に有用な情報が得られるので,迅速かつ効果的な治療が開始できることになる。

 治療効果を高めるためには,家族はもちろん,日常のケアに関わっている人の支援を得
ることが必須であるが,入院の際に患者は身体的,精神的評価の他に,生活上の社会的背
景を含め心理・社会的,理学・作業療法的な評価がなされ,統合されたケースマネジメン
トによって問題の解決が図られている。退院計画は患者自身を含めて家族や直接ケアに関
わるすべてが加わり,患者の需要に応じて綿密に立てられる。
 サービスの主なものは,精神的評価,老人医学的評価,向精神薬評価,心理・社会的評
価,家族評価と支援計画,作業療法・理学療法評価,栄養評価,社会的支援,退院後の支
援,などである。

752卵の名無しさん:02/09/17 15:56 ID:W/l6+kBb

慢性期の老年医療(2):
Youville Hospital and Rehabilitation Centerにて 【12月12日】

 午前8時15分に,Youville Hospital and Rehabilitation Centerを訪問し,Dr. Joel Baumanに会う。
 MAHと同規模の総合病院だが,MAHが精神科を主体としたケアシステムであるのに対
して,この病院は老人のあらゆる慢性疾患のケアが中心で,ベッド数は52床(20private
rooms,16semi-private rooms),平均在院日数は23日ということであった。これは1984年に
定められたDRGの基準によるものであり,平均25日までの入院が認められ,適応となる
のはChronic Hospital,Pediatrics,Rehabilitation,Long-term Care Facilityなどである。

 あらゆる疾患はこの基準となる時間内でケアされ,その後は自宅なり老人の施設に戻り,
わが国で見られるような社会的適応による長期入院は存在しない。この病院ではうっ血性
心不全,皮膚疾患,栄養障害,術後の多くの併存病を有する高齢者が対象となり,男女比
は1:2,そしてすべての患者は何がしかの認知障害を有している。内科専門医でかつ老人
病専門医が5名,ナースプラクティショナーが2名,ナーススペシャリストはケースマネ
ジャーとしてチームをコーディネートしている。病院死亡率は4%とのことであった。
 99%がMedicareでまかなわれるが,このような病院はボストン周辺50マイル四方で5
施設あるとのことであった。

 この病院では退院時に社会的な生活が支障なく送れるよう,入院中に種々の生活訓練が
行なわれる。例えば,通常の歩行や筋力・持久力トレーニングはもとより,生活援助のた
めの設備として室内歩行における段差や路上歩行の障害を想定したスペース,車の乗り降
りのための自動車,キッチン,銀行,そしてミニ・ショッピングセンターまであり,買い
物やそれに伴うお金の支払い,銀行での金銭出納まで訓練できるようになっている。
753卵の名無しさん:02/09/17 15:57 ID:W/l6+kBb

 午前9時30分よりチャート回診が始まったが,老年病のナーススペシャリストがコー
ディネータとして司会しながら進められた。やはり型どおりのチーム医療であり,基本的
には医師,ナース,OT,PTが基本単位であり,栄養士,薬剤師,MSW,チャプレンは必
要に応じてすべての患者に関わっている。医師が疾患に関するプレゼンテーションを行な
い,ナースが全体としてのケアの状態を説明し,OT・PTは身体機能評価と社会復帰へ向
けての訓練状況を述べるといった中で,心理・社会的な問題が提起されれば,それぞれの
立場からの提案がなされ,ケースマネジャーが最終的に判断して行動目標が決定される。

 もちろんレジデントにとっては研修の場であることから,指導医から知識,技術的な面
での教育もなされる。慢性期のケアにおいてはOT・PTの役割がきわめて大きく,どの症
例についても診断や治療方針,そして経過の状況が詳しく語られていることは印象的であった。

754卵の名無しさん:02/09/17 15:58 ID:W/l6+kBb
痴呆の老年医療:BACにて
【12月12日】
 午後からBAC(Boston Alzheimer Center)でのDr. Catherine Dubeauの診療を視察した。痴
呆は高齢化社会において主要な健康障害の1つであり,今後増加していくことは避け難い
社会的事情である。
 痴呆は認知と情緒機能における進行性の低下を特徴とし,それによって日常生活の自立
性とQOLが損なわれる。従来,痴呆には多くの併存病があるとされてきたが,今日では
痴呆者の併存病率はむしろ低く,かつ薬物使用も少ないことが示されており,それにもか
かわらず延命率が低いことから,痴呆は独立したリスク予測因子と見なされている。
 BACはボストン市の中心からやや離れてはいるが周辺には多くの教育病院があり,約
12000 m2(3エーカー)の敷地に建てられた64室を有する痴呆者のための瀟洒なALR
(assisted living residence)である。もちろん,community day programもあり,かつ痴呆に関
する情報センターとしても機能している。
 痴呆は痴呆と診断された時点で適切な対応が必要であり,そのタイミングと対応の仕方
が問題への取り組みの核心(コア)である。痴呆は進行性であり,大きな治療効果を望む
ことはできないが,適切な対応によってその進行を遅らせ,患者の自立と尊厳性を可能な
限り維持させることは意味のある取り組みと思われる。
 痴呆のケアは家庭から始まるが,さらに進行してくれば適切な施設においてケアするこ
とが必要になる。
 そのタイミングは,(1)患者が着替え,入浴,トイレ,摂食など身の回りのことを自立
して行なえなくなる。(2)患者が規則的に食事をとることが困難になる。(3)服用している
薬物の管理が困難になる。(4)家庭での生活の安全性が保証できない。(5)社会的な交流が
途絶えて刺激がなくなる。(6)興奮,不眠,徘徊などの異常行動によってケアが困難とな
った場合。(7)患者が多くの制約のために混乱したり,怒ったり,うつ状態になったりす
る場合。(8)規則的な運動が有用と思われる場合。(9)ケアをしている人たち自身の情緒や
身体の健康に問題が生じた場合などであり,これらの基準を満たせばALRでのケアの適
応となる。