ZOROの名門−沢井製薬バンザ〜イ! part11

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742卵の名無しさん
*ジェネリック産業の将来を考えるために、アメリカの現状を
考えてみましょう>ALL

特集 海外医療事情報告
米国における老年医療の現況
道場信孝((財)ライフ・プランニング・センター顧問)
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はじめに:
 訪問施設の選択と訪問の実施
老年の終末医療:HRCAにて
慢性期の老年医療(1):MAHにて
慢性期の老年医療(2):Youville Hospital and Rehabilitation Centerにて
痴呆の老年医療:BACにて
老年病の外来医療:BIDMCにて
急性期の老年医療:BIDMCにて
慢性期の老年医療(3):Burke Rehabilitation Hospitalにて
補論:ケースマネジメントとは
まとめ


はじめに:訪問施設の選択と訪問の実施
 今日わが国における老人問題は単に医療行政上の課題にとどまらず,より広く,より深
く,「いかによく生きるか」という「人の生き方」の原点に立ち返って考える哲学的思考
と,それに基づく心身の健康,社会的交流の維持,そして生活へのたくましい意欲を背景
にしたサクセスフル・エイジング(成功加齢)の考え方が次第に強い社会的支持を得てき
ている。今回,私は米国の老年医療の実情を視察する機会を得たので,ここに報告したい
と思う。

743卵の名無しさん:02/09/17 08:26 ID:ZZVeklHj

 訪問先は,日野原重明ライフ・プランニング・センター理事長の助言により,ボストン
市とニューヨーク市に限定し,前者はHarvard大学関連施設,後者はCornell大学関連施設
とした。ボストンでのスケジュールはHarvard Medical SchoolのDr. Mitchell T. Rabkinに計画
を立てていただき,ニューヨークのスケジュールはCornell Medical CollegeのDr. Tong H. Joh
教授にBurke Rehabilitation Hospitalの訪問を依頼した。

 訪問時は当初2001年9月中旬を予定していたが,米国における同時多発テロ事件発生
のため延期し,同年12月9日から19日に実施した。

老年の終末期医療:HRCAにて 【12月10日】
 HRCA(Hebrew Rehabilitation Center for Aged)にDr. Lewis Lipsitzを訪問した。
 Dr. LipsitzはHarvard Medical Schoolの内科学教授であり,Harvard Division of Gerontologyの
統括責任者でもある。
 この施設のDivision on AgingはResearch and Training Instituteでもあり,Harvard Medical
Schoolのみでなく,HSPH(Harvard School of Public Health),VAMC(The Veterans Affiars Medial
Center),BWH(Brigham and Women's Hospitals),SRH(Spauling Rehabilitation Hospitals),MGH
(Masachusett General Hospitals),MAH(Mount Auburn Hospital),BIDMC(Beth Israel Deaconess
Medical Center),HRCAなど多数の周辺医療機関との連携において「老年医学」の中心的
役割を果たしている。HRCAでは老人の終末期医療について視察した。

 この施設はいわゆるナーシングホームであるが,医学生を含めた医療者の教育と訓練,
そして研究なども行なわれている点では大きく異なっている。725床を有し,入居者はす
べてJewish Peopleである。うち20床は術後や急性疾患のために用いられているので,急
性期のリハビリテーションが行なわれているが,ほとんどが社会復帰を目的とするリハビ
リテーションの概念とは異なり,この施設で人生の終末を迎えることになる。89%に
Medicareが適用されており,費用は平均200ドル/日である。男女比は1:3で,種々の理
由から家庭ではケアができなくなった老人が入居しており,個室と2人部屋に分かれている。
744卵の名無しさん:02/09/17 08:27 ID:ZZVeklHj

 Physician-In-ChiefのDr. Muriel Gillickは,自身も40床を受け持っており,非常に多忙に
見えた。入居者の実例について説明を受けたが,実にさまざまな病態を抱えた老人の集団
で,例えば虚血性心疾患,高血圧,糖尿病で悪性リンパ腫を合併しているアルツハイマー
病といったような,まさに老人の終末期治療が行なわれている。

 Dr. Ann Fabinyは老年病の専門医で,Harvard Geriatric Fellowship Programのディレクター
でもあるが,彼女の説明によればこのような終末期医療ではケアの目標がproductiveでな
く,若い医師にとって魅力に欠ける分野であるという。Early exposureで医学生がこの施設
に配属された時,始めは興味を示しても,その後,臨床実習が始まるとすぐ興味をなくし
てしまうことを嘆いていた。このような終末期でも身体訓練は有効であり,現状の維持か,
もしくは進行を遅らせる目的で訓練室ではトレーニングが行なわれていた。この施設での
平均寿命は4年とのことだった。

 HRCAでは老年医学に関する多くの研究が精力的に進められている。Dr. Kielは脳循環
と転倒,脳循環と自律神経機能,転倒の機序と防止など,またSuzanne LeveilleはFrail Older
Adultsの疾病予防と慢性疾患の管理の疫学的研究などに数多くの業績を上げている。

 最老年の終末期医療は医学的には実りの少ない分野であるかもしれないが,それでも人
生の終末における,より適切なケアを心理・社会的な面も含めて合理的に実施することは
医療に課せられた責務であり,その意味でも患者の評価をMinimum Data Set(MDS)など
一定の基準に従って行なうことの重要性を実感させられた。

 また,家族との関わりはきわめて大切であり,経管栄養や心肺蘇生などを含めたケアに
おいて,どのような選択をするかを教育的に支援していく役割にも大きな意義があると思
われた。
745卵の名無しさん:02/09/17 08:28 ID:ZZVeklHj

慢性期の老年医療(1):MAHにて
【12月11日】 Mount Auburn Hospital(MAH)を訪問。
 「慢性期のComprehensive geriatric service」に含まれるのは,(1)プライマリ・ケアとして
の健康評価,(2)慢性疾患(腹痛,痴呆,関節炎,腰背痛,気管支炎,慢性閉塞性肺疾患,
糖尿病,歩行障害,心疾患,高血圧,高コレステロール血症,記憶障害,骨粗鬆症,肺炎,
排尿障害など),(3)プライマリ・ケア医からの紹介に対する対応,(4)往診によるホーム
・ケア,などである。

 これらのサービスはすべてチーム医療として包括的に統合されて行なわれており
(Multidisciplinary Team),プログラムディレクターはいわゆるコーディネータであって,
ナーススペシャリストがその役割を果たしている。

 MAHには「老人のためのMental Health Service」があり,Geriatric Psychiatristのディレク
ターとナースのプログラムディレクター,老年科内科医,Psychiatric Social Workerからな
るMultidisciplinary Teamで行なわれている。数多くあるサービスの中で,今回は「house calls」
と「Mental Health Service」を中心に視察した。

 8時15分に同院の老年病科の医局を訪れると,Dr. John AndersonとDr. Cherie Noeを中心
にして2人のスタッフとレジデント2人を含めた朝のカンファレンスが行なわれた。まず,
レジデントの1人が事前に準備してきたテーマについて30分ほどプレゼンテーションし
たが,老人の転倒に直接関わる視力障害について要領よくまとめられていた。内容は,初
めに加齢による視力の変化,そして視力障害を来たすmacular degeneration,glaucoma,cataract,
diabetic retinopathyの順に定義,疫学,危険因子,病因,症状・徴候,経過観察の要点,治
療について最新の知見を交えながら述べられた。スタッフは適宜質問したり,コメントし
たりしながら進められたが,一般内科とは明らかに異なった特殊な分野であることが実感
された。その後,午前中に実施されるhouse callsに対する情報交換が約15分で終わり,
それぞれ受け持ちの患者宅へ向かったが,私はDr. Noeについて2人の患者宅を訪問する
ことになった。
746卵の名無しさん:02/09/17 08:30 ID:ZZVeklHj

 車で20分ほど雪の道のりの郊外で,最初に訪問したのは老人用の公的な居住地域内の2
階建てアパートの一画に住む83歳のアルメニア人の女性だった。胆石症から胆嚢炎とな
り,在宅でドレーンが入れられており,極期は過ぎて安定はしていたが,常に悪化のリス
クを伴う状態であった。その他,高血圧,糖尿病,慢性関節炎,軽度の痴呆があり,種々
の職業的な社会的資源としてのケアは受けているが,娘が定期的に通って身の回りの世話
をしていた。身体的には内科医が中心となっていたが,その他にも外科医が適宜コンサル
トしており,ケアの中心はケースマネジャーとしてのコミュニティナースであって,相互
の連絡は所定のチャートに基づいて行なわれていた。40分ほどでhouse callsが終わり,再
び雪道を駆って次の訪問宅へ向かった。

 次の患者は79歳の女性で,痴呆がかなり進み,Dr. Noeをかろうじて識別できる程度で
あった。Lewy's body cerebropathyが背景にあり,そのための痴呆とパーキンソン様症状が
生活上の問題であり,特に後者には多くの制約があるため自費で行なわれているとのこと
であった。たまたまPTが居合わせたが,家人は不在であった。この患者の場合には皮膚
疾患や下腿の顕著な浮腫などの他に栄養上の問題や,polypharmacyによる服薬コンプライ
アンスの問題など多くのケア上の困難があるように見えた。2名のhouse callsを終了して,
11時30分にMAHに帰院し,老人科医のDr. John R. Andersonと精神科医のDr. Halbert Miller
から,院内にあるThe Wyman Centerの「老人のためのMental Health Service」について説明
を受けた。

 彼らの説明によると,サービスは統合されたチームケアでケースマネジメントの方式が
取られており(後に詳述),その理念はコミュニティ,ならびに家族との協力において,
可能な限り速やかに高齢患者の機能を適切なレベルに回復させることを目標に,最新の
intensive psychiatric evaluationと治療を供給することにある。