飛行機のドクターコール Part 2 

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103かんた
>>79 
>機内での治療開始の前に患者から免責契約を取り付けるのは「公序良俗に反する」
>行為で無効とされるでしょうが、乗り合わせた医師と航空会社との間で、その都度、
>業務委託・賠償肩代わり・訴訟全面支援の契約が結べるなら、医師も安心して応需
>できるように思うのですが、
>1 このような契約の合法性(公序良俗面も含めて)

日本の民法の大原則が私的自治です。つまり,当事者間での取り決めが法律に優先し,
取り決めがない場合に法律が適用されます。敷金返還請求事件などの裁判で
契約書の内容が吟味されるのはそのためです。しかしながらご指摘のように,
民法90条公序良俗に反する契約は無効とされます。航空会社と緊急時に名乗り出た
医師との業務委託・賠償肩代わり・訴訟全面支援の契約は
有効です。
104かんた:02/01/28 05:10 ID:NKhegORZ
現に,日本航空と全日空は医師に対する損害賠償を
補填すると公表していますし,日本航空については弁護士費用まで
保険から出すとしています。私個人としては,契約という形にしてしまうと
通常の医療現場と同じく善良なる管理者としての注意義務という
もっとも厳しい注意義務が課されてしまうので,あくまでも
航空会社が勝手に損害賠償を補填すると公言し,医師は
契約の概念など念頭にないまま治療したとする立場の方が
いいと思います。医師以外の方も見ているのでついでに
書いておきますが,当然のことながら医師が機内で急病人を診るときは
善管注意義務を守ろうとしています。しかしながら,様々な制約があるため
病院ほどの診療は無理です。そこへ善管注意義務を課すのはあまりに
不公平だと思います。実際の判例はありませんが,学者の意見では
通りがかりの医師の善意によるボランティア治療は民法698条
緊急事務管理に当たり注意義務が軽減されています。
105かんた:02/01/28 05:11 ID:NKhegORZ
尚,前スレに出しましたがMedical Tribuneの2000年11月2日号にある
航空各社に緊急の要請に応えて医療処置を行う医師の責任を保障するか
どうかたずねたアンケート調査の結果を再掲します。
♪保障する♪
エールフランス国営航空,ルフトハンザ・ドイツ航空,コンドル航空,
ブリティッシュ・エアウエイズ,LTU航空,フィンランド航空,ハバクロイド航空,
南アフリカ航空,

?保障しない?
中華航空,アメリカ・ウエスト航空,全日本空輸(ただし全日空は
同誌12月7日号で「保障する」と訂正),

×回答なし×
シンガポール航空,タイ国際航空,USエアウエイズ,
アエロフロート・ロシア国際航空,アリタリア航空,KLMオランダ航空,
アメリカン航空,デルタ航空,カンタス・オーストラリア航空,トルコ航空
106かんた:02/01/28 05:11 ID:NKhegORZ
>2 このような契約を結んだ役員(又は委任を受けて締結した管理職機長)に
>対する株主代表訴訟の可能性と役員側勝訴の見込み

このような契約は医師と会社の間で締結され,会社の社員はあくまでも
法人の履行補助者となるので,直接株主から請求されることはないと思います。
訴訟を起こす側もキチンと金をもらうのが目標なのでもしかしたら
借金まみれかも知れない一社員に起こすというのは考え難いです。
契約自体は会社に損害を与えるものとは言い切れないので
株主代表訴訟が起きる可能性は皆無に近いと思います。

>3 それでも医師個人を訴えるDQNからの防衛の見込み

法律家は公平な視点がないと勤まらないので,善意無過失もしくは
善意軽過失の医師が訴訟に負けることはないと思います。
しかしながら,皆様ご指摘の通り訴訟に巻き込まれる鬱陶しさは
付きまといます。
107かんた:02/01/28 05:12 ID:NKhegORZ
>4 アメリカではこのような契約を乗り合わせ医師と航空会社との間に
>結ぶ動きはないのか。ないとすれば、それはそのような契約に何か
>(法的経営戦略的倫理的な面で)問題があるからか、それとも良き
>サマリア人連邦法で十分と考えられているからなのか。

そのような動きはないと思います。少なくとも私は文献上でも
シンポジウムでもそのような討論がなされたことを知りません。
これは米国人に聞かないと正確には答えられませんが,
恐らくは良きサマリア人法があるからではないかと思います。
108かんた:02/01/28 05:12 ID:NKhegORZ
>>85
>>94
>自分が具合悪くなった時、しかも非常時に診てくれた方を
>誰が訴えるというのです??そんなに、そんなに我々はドキュソな
>国民ですか???

多くの国民は85=94のようにマトモです。しかしながら,
医療現場にいると数々のDQNに会います。前スレが消えたので
再度記しますが,歯科医師と患者の感情のもつれから
「無事故訴訟」が起こされ最高裁まで争われた判例があるのです。当然
患者は敗訴し,裁判所は「原告の供述は信用できない」とまで
断じています。この患者は日本歯科医師会や厚生省に対しても
訴訟を起こしていました。当然,弁護士などついていませんでしたが,
訴状の書き方を知っていれば誰でも訴訟を起こすことが出来るため,
このようなDQNがのさばるのです。そして,この手のDQNが医療現場には
多いのも事実です。医療現場には,ろくな資産がなく医療費を踏み倒しているのに
酔っ払って暴れて何度も受診する真性DQNが沢山います。
109かんた:02/01/28 05:13 ID:NKhegORZ
このような損失は全て病院もちです。消費者金融やクレジットカード会社
あるいはNTTなどは料金の踏み倒しがあるとすぐにサービスを停止して
支払わないと訴訟を起こします。しかしながら,病院では数百万円単位で
医療費を踏み倒されていても訴訟を起こせません。マスコミが面白おかしく
書き立てて病院が悪者になるからです。だから損をしても黙っているのです。
医師側の患者不信を煽る投書が先日の朝日新聞にありました。
内容を一言で言うと,「医療費の高騰は医師の人件費が高いためである」
というものでした。医師の人件費は昭和50年代から横ばいで実質
低下しています。このようにきちんとした事実の把握もなく感覚だけで
考えて行動するDQNが沢山いるから不信がつのるのです。
私はドクターコール推進派ですが,「人道的立場から支援をしましょう!」と
一度も呼びかけたことがないのは医療の現場にいて,暴力団組員や
地方議会議員よりもさらにたちの悪いDQNを多数見ているからです。
110かんた:02/01/28 05:13 ID:NKhegORZ
>良きサマリア人法・・誰かが音頭をとればすぐに可能ではないかと
>思ったんですが。国民にとっても先生方にとっても有意義な法ではありませんか。

その通りですが,現時点においてそのような議論はほとんど
なされていません。一般市民対象の良きサマリア人法については
検討されたことがありますが,結論は現行法規(民法698条緊急事務管理)で
対応可能というものでした。私に言わせるととんでもない結論です。
善意の第三者が過失もないのに訴訟に巻き込まれること事態
防がなければならないと思います。この手の訴訟が起きれば,三重県の隣人訴訟と
同じくマスコミで大々的に取り上げられ,妬み混じりで医師が攻撃されるのは
目に見えています。ですから,新規立法が必要だと思います。
私が法律を一から勉強した理由の一つが,法律行政関係者の意識は
医療現場と乖離しており,彼らを動かすためには法律用語で
語らなければ無理と痛切に感じたからです。
111かんた:02/01/28 05:13 ID:NKhegORZ
>>90
>まあ今までは対外的なことは病院事務がやって
>くれているのですが、これも数年後には「自分持ち」にすると
>理事長から通告されています

これまではほとんど行われていませんでしたが,過失割合に応じて
医療機関が医師個人に損害賠償請求の補填を求めることができます。

>>102
>その後、その女性からの挨拶もなく、ま、
>それはいいとして、その航空会社から礼状と一万か1,5万の商品券が来た
>だけでがっくりしました。べつにお金が欲しくてやったのではないですよ、
>断じて。

謝礼としては弾んだ方だと思います。スリッパだけなんてのもありますから。
普通は本人からの挨拶かお礼がありそうなものですが,
あのような場では本人もパニックに陥っているので挨拶は
ないものと思っていた方がいいかも知れません。