とうとう、最後の来訪者が現れてしまった。
部屋の中にいるのは、薄ら笑いを浮かべる緒方と慌てて服を着る椿。
そして、ほとんど裸の、犯されたばかりの明日美。
皆の視線は、入口に立つ来訪者に注がれている。
塔矢名人。
明日美を狂わせてしまった、張本人だ。――無論、本人に自覚はないだろうけど。
「どういうことだっ、あんた……」
椿が取り乱しながら叫んだ。
緒方は何事もなかったようにスーツを着ている以上、
たった今現れた塔矢名人には、椿だけが明日美を犯しているようにしか見えない。
「私をこんな所に呼び出したのは、何のためなんだ、緒方君」
「ご覧の通りです。
彼女は、勝ち星のためならこういうことを平気でするのですよ」
ひどい嘘だ、いや、事実よりはマシかもしれない。
明日美の気持ちと、そのために犯してしまった罪よりかは。
そしてそれは、椿にとっても同じことだ。
「な、なんだって? オマエ、そういうつもりだったのか? だ、騙されたぜ」
椿は見え透いたな嘘で調子を合わせた。
どうしようもなく下手な嘘だけど、明日美は否定できないだろう。
「そうなのか?」
訊くなよ、そんなこと。
明日美ははだけた胸を隠そうともしないで、顔を伏せて震えている。
緒方が、自分の上着をそっと明日美にかけた。この偽善者が。
「さあ、君は今日は帰った方が良い。処分は追って……」
「触らないで!」
椿に監禁されて以来、単なる性処理のための人形でしかなかった明日美が、
初めてはっきりと自分の意志を持って声を出した。
その眼には、すべてを吹っ切った覚悟があった。
――つづく