奈瀬明日美とほのぼのしない?

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915オリバー物語
とうとう、最後の来訪者が現れてしまった。
部屋の中にいるのは、薄ら笑いを浮かべる緒方と慌てて服を着る椿。
そして、ほとんど裸の、犯されたばかりの明日美。
皆の視線は、入口に立つ来訪者に注がれている。
塔矢名人。
明日美を狂わせてしまった、張本人だ。――無論、本人に自覚はないだろうけど。
「どういうことだっ、あんた……」
椿が取り乱しながら叫んだ。
緒方は何事もなかったようにスーツを着ている以上、
たった今現れた塔矢名人には、椿だけが明日美を犯しているようにしか見えない。
「私をこんな所に呼び出したのは、何のためなんだ、緒方君」
「ご覧の通りです。
 彼女は、勝ち星のためならこういうことを平気でするのですよ」
ひどい嘘だ、いや、事実よりはマシかもしれない。
明日美の気持ちと、そのために犯してしまった罪よりかは。
そしてそれは、椿にとっても同じことだ。
「な、なんだって? オマエ、そういうつもりだったのか? だ、騙されたぜ」
椿は見え透いたな嘘で調子を合わせた。
どうしようもなく下手な嘘だけど、明日美は否定できないだろう。
「そうなのか?」
訊くなよ、そんなこと。
明日美ははだけた胸を隠そうともしないで、顔を伏せて震えている。
緒方が、自分の上着をそっと明日美にかけた。この偽善者が。
「さあ、君は今日は帰った方が良い。処分は追って……」
「触らないで!」
椿に監禁されて以来、単なる性処理のための人形でしかなかった明日美が、
初めてはっきりと自分の意志を持って声を出した。
その眼には、すべてを吹っ切った覚悟があった。

――つづく