奈瀬明日美とほのぼのしない?

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814オリバー物語
「ちょ、ちょっとぉ……、んん、どぅした……のぉ」
明日美は、いつも以上の快感を戸惑いながらも受け入れている。
「なんか……、すごいよぉぉ、あ、んんっ」
僕はもう、割り切っていた。
ただれた関係だなんて、思っちゃいない。
明日美は僕を感じているんじゃない。僕は単なる道具でしかない。
彼女が求めているのは――塔矢名人。
だけど、塔矢名人は妻子ある身。それに、立場だってある。
どう考えたって、明日美の想いが届くはずなんかない。
明日美だって、認めるつもりはないのだろうけど、わかってるはず。
「せん……、せぇ、ああっ、うっ、あああぁぁぁ……」
頂点に達した明日美が、急に大人しくなる。
僕も、同時に果てていた。
明日美は、動かない。わずかに体が痙攣しているだけだ。
よっぽど満足できたのだろう。
僕の心を、たった今得られた快感と同じ大きさの虚しさがよぎる。
明日美を抱いているのは、僕だけど、僕じゃない。
そんなことを考える理性なんか、捨ててしまいたい。
そうすれば、快感だけを、感じていられるのに。
明日美の様子が、いつもと違う。ようやく気がついた。
快感の余韻に浸るにしては、ちょっと長すぎる。
それに、両腕を組んで、顔を隠していた。
わずかに、押し殺した声が聞こえる――泣いている?
「うぅ、うっ……」
こんなこと、初めてだ。明日美の頬を、涙の滴が伝う。
「……ゴメンね」
どうして? どうして謝るんだよ? 僕なんかに?
「ゴメンね、ゴメンね、ゴメンね」
やめてくれ、謝ったりなんか、しないでくれ。
僕は、ただの道具になりたいんだ。
心なんか持ったら、辛くなるじゃないか……。

――つづく