ツンデレにこれって間接キスだよなっていったら0.7

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1ほんわか名無しさん
◆このスレは何?
ツンデレの妄想でひたすら萌え続ける場です。どんな形でもいいのでアナタのツンデレ妄想を垂れ流してください。
◆前スレ
ツンデレにこれって間接キスだよなっていったら0.6
http://nozomi.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1384561770/
◆過去ログ置き場
http://www.tndr.info/
◆Wiki(過去ログ置き場以前の過去ログ・更新停止中のまとめ等もwiki参照)
http://www45.atwiki.jp/viptndr/pages/1.html
◆ツンデレにこれって間接キスだよなって言ったら 専用掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/computer/21510/
◆うpろだ
http://tunder.ktkr.net/up/
http://www.pic.to/ (携帯用)
◆お題作成機
http://masa.s23.xrea.com/
http://maboshi.yh.land.to/tundere/
◆規制中の人向け、レス代行依頼スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/21510/1275069975/
2ほんわか名無しさん:2014/04/12(土) 13:17:04.89 0
◆ツンデレって何?
「普段はツンツン、二人っきりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃつく」ようなタイプのキャラクターのこと。
◆このスレでよく使われる人物設定
男:デフォルトネームは別府タカシ。ツンデレに色々したりされたりする。
アッパー:デフォルトネームは椎水かなみ。感情表現豊かな基本形。
ダウナー:デフォルトネームはちなみ。ローテンションで「……」を多用して喋る。
お嬢:デフォルトネームは神野りな。お嬢様口調。というかお嬢様。
老成:デフォはまつり。「纏」と書く。わしは?じゃのう等、古風かつジジ臭い言い回しをする。
尊大:デフォはみこと。「尊」と書く。自信に満ちあふれたような、偉ぶった言い回しをする。
関西:デフォはいずみ。関西弁で喋る。
ボクっ娘:ボクっ娘ツンデレ。一人称「ボク」。デフォルトネームは決まっていない。
勝気:気の強い男勝りツンデレ。デフォルトネームは決まってい(ry
無表情:無表情ツンデレ。デフォルトネームは決まっ(ry
中華:中華系ツンデレ。「??アル」といった言い回しをする。デフォルトネームは決(ry
幽霊:幽霊ツンデレ。憑依したりする。アッパーだったりダウナーだったりする。デフォルトネームは(ry

山田:クラスメイトとして使われることが多い。いわゆる友人A。なぜかVIPPER口調で描かれがち。
友子:クラスメイトとして使われる事が多い友人B。好奇心が強かったり世話好きだったりいろいろ。

※名前の由来などについてはまとめサイト参照

・上記の名前や設定はあくまでデフォルト。
・投下許可は求めなくていいですが、長編SSについては、投下前に宣言をしていただけると他のSSとのごちゃ混ぜ防止になるのでスレに優しいです。
・書き上がってから一斉投下してね。 書きながら投下はイクナイ。
・感想レスは励みになるので大歓迎。
・投下のタイミングは自分で見計らおう。投下直前にはリロードを心がけよう。
・もしスルーされても泣かないこと。
・投下後に殊更に感想を求めたり、レスが付かないからって自虐したりすると、ツンデレに嫌われます。
・みんなも多少のことは大目に見てスルーしよう
3ほんわか名無しさん:2014/04/12(土) 13:51:46.25 0
誰よりも早くいちおつ
4ほんわか名無しさん:2014/04/12(土) 15:45:31.99 0
いちおつ
5スロータ・ウルフ:2014/04/12(土) 20:49:57.93 0
べ、別にアンタと間接キスしたいだなんて思ってないんだからね!
6ほんわか名無しさん:2014/04/12(土) 20:59:46.60 0
>>1
乙ンデレイドバスター!!
7ほんわか名無しさん:2014/04/13(日) 10:50:47.69 i
前スレが書き込めなくなったか
81/2:2014/04/13(日) 11:08:13.95 0
・ツンデレと新歓の準備

『ハァ……』
「かなみちゃん。そこの赤いペンキ取ってくれる?」
『…………』
「かなみちゃん」
『ふぇっ!? な、何ですか別府先輩。いきなり大声出さないで下さい』
「いきなりじゃないって。さっきから呼んでも返事ないからさ。何ポーッとしてるんだよ?」
『ああ。すみません。つい鼓膜が耳障りな雑音を遮断してしまったようです』
「耳障りな雑音ってなあ…… 俺の声は超音波かなんかかっつーの」
『冗談です。ちょっと考え事をしてました』
「しっかりしてくれよ。今日中に立て看作るの終わらせなくちゃならないんだからさ。人
手もないんだし、かなみちゃんが頼りなんだからな」
『先輩に偉そうなこと言われたくありません。こんなギリギリのスケジュールになったのっ
て、全部先輩のせいじゃないですか。春休みほとんど、バイトと遊びばっかりで』
「バカ言うな。バイトも立派な新歓準備だって。先立つ物がないと、何にも出来ないから
な。3年は俺一人なんだし」
『私だってアルバイトくらいしてます。その上でちゃんと、ビラやポスターのデザインも
やって来てるんですから。先輩だけです。のんびりしてるのは』
「俺は時間があるとついダラダラしちゃうからな。どうせ結局最後に焦るなら、最初から
ギリギリでスケジュール組んで一気に追い込んだ方がメリハリ付くと思って」
『先輩が一人で作業するならどういうスケジュール組もうが勝手ですけどね。私まで頭数
に加えた上でのギリギリは止めて下さい。私は前もって余裕のあるスケジュールで動くタ
イプなんですから。巻き込まるのは迷惑です』
「何だよ。かなみちゃん、いっつも俺と二人きりだなんて憂鬱だー、とか言ってたじゃん。
それも考えて出来る限り共同でやる時間減らそうと思ったのに」
『……もう、いいです。なんかやる気出ないんで、ちょっと休憩して来ていいですか?』
「うん? まあいいけど…… もしかして体調悪いとかじゃないだろうな? それだった
ら無理する事ないぞ」
『違います。先輩に心配されるいわれなんてありませんし。戻って来る時、飲み物買って
来ます。先輩はコーヒーでいいですよね? ルーツのアロマブラックで』
92/2:2014/04/13(日) 11:09:49.98 0
「ああ。じゃ、ちょっと待って。はい」
『はい、って……何ですか、これ?』
「何って、ドリンク代。かなみちゃんの分もね」
『いりません。私は先輩に施しを受けるほど、落ちぶれてはいませんから』
「お前な。前もそう言って我を張ってさ。結愛先輩に言われたろ。先輩がおごってくれるっ
て言う時は素直に受けといた方がいいよって」
『うっ…… じ、自分の言葉じゃなくて結愛先輩の言葉を出すなんて卑怯です』
「卑怯も何も、実際俺が言ったことじゃねーし。まあ、俺も賛成だけどな」
『……だって』
「だって、じゃなくてさ。だらしない先輩だからこそ、こういう時くらい先輩面させてく
れって。な?」
『自分でだらしないって分かってるなら、もう少し自覚持ってくれたらいいのに』
「ハハ。それはなかなか難しいけどな。まあ、上から受けた恩は、新しく入って来る後輩
に返してやれ。な?」
『…………』
「ん? どうした?」
『な、何でもないです。じゃあ、ちょっと行ってきます』
「ああ。ゆっくりしてきていいからな」


『ハァ……』
『もうすぐ……終わっちゃうんだな…… 先輩と……二人きりでの部活……』
『もちろん……新入部員を入れなきゃ、部の存続だっておぼつかないってのは……それは、
分かってるんだけど……』
『でも……後輩が出来たら……そっちの面倒見るのでいっぱいいっぱいになっちゃうし……それに……』
『もし……可愛い女の子とか入って来たら…… それで、先輩が世話して、それでそれで
……良い雰囲気とかになっちゃったりしたら…… あああああっ…… 私みたいに素直に
なれない子ならまだしも、万が一積極的な子だったりしたら……』
『分かってるわよ…… 新入部員が入って来なきゃ、部そのものが危ないっていうのは……
だけど……ハァ……』

まずは新スレの景気づけに、と思ったが、ちょっと重いか
10ほんわか名無しさん:2014/04/13(日) 11:29:15.07 0
いちおつん
11ほんわか名無しさん:2014/04/15(火) 19:39:24.94 0
友ちゃんってショタ好きそう
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2844.jpg
12ほんわか名無しさん:2014/04/16(水) 02:33:20.65 0
お題
つ・ついつい夜更かししちゃうツンデレ
13ほんわか名無しさん:2014/04/16(水) 09:10:19.90 0
>>11
山「おいタカシそこどけ」
14ほんわか名無しさん:2014/04/18(金) 10:54:33.55 O
お題
つ・色々とゴタゴタしていて男がツンデレに会えていなかったら
15ほんわか名無しさん:2014/04/18(金) 22:25:37.15 O
べっかんこが不安定過ぎる

お題
つ・不安定なツンデレ
16ほんわか名無しさん:2014/04/19(土) 10:08:22.66 0
すっかり時期外れになったけど、前スレのホワイトデー話の続きを投下し始めようと思う。

とりあえず前スレ分はこちら
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2845.txt

5レス投下です
171/5:2014/04/19(土) 10:08:53.65 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ 〜その3〜

「委員長。今日の放課後、時間ある?」
 休み時間に静花の席のそばに寄ると、タカシは小声で彼女を誘った。チラリと目線だけ
でタカシを見てから、静花は冷静に答える。
『いいけど、何の用かしら? くだらない用事ならさっさと済ませて欲しいものだわ』
 そう答えつつも、静花は自分の声が若干上ずっているのを感じないわけにはいかなかっ
た。そう。今日はホワイトデーなのだ。実はバレンタインデーの時と同様に、静花はすっ
かり忘れていたのだが、朝から盛り上がる友人たちの会話で思い出し、それ以来タカシの
動向が気になって仕方なかったのだった。
「それがさ。出来ればその……今日の午後いっぱい、丸々時間取って欲しいんだけど……」
『は?』
 意外なタカシの申し出に、静花は怪訝そうな声を上げて彼を見上げた。
『ちょっと待ってよ。ホワ……じゃなかった。それって、そんなに時間掛かる事なの?』
 てっきりお菓子かプレゼントでも返されると思っていた静花は、一瞬出掛けたホワイト
デーという言葉を飲み込んだ。既にお返しを期待してワクワクしていたなんて知れたらみっ
ともないにもほどがあるからだ。しかも、この間の一件以来、若干彼とは冷戦状態が続い
ているというのに、だ。
「ああ。その……だからさ。一度家に帰って、昼を食べてから着替えてさ。駅に二時集合っ
て事にしたいんだけど、いい?」
『えーっと…… うん。まあ…… でも、何なのよ』
 するとタカシは、身をかがめて顔を近づけると、そっと小声を出した。
「この間の答え。今日、教えるから」
 ハッと目を見開く静花を制するように、タカシは手の平を彼女の顔の前にかざした。
「それじゃ、オッケーってことでいいよね。それじゃ、そういうことで」
 軽く手を上げて、タカシは自分の席に戻って行った。自分の期待とタカシの言葉が結び
つかず、静花は残りの時間を悶々と過ごすことになってしまったのだった。
182/5:2014/04/19(土) 10:09:24.56 0
 既に卒業式も終わり、その後すぐに行われた学年末試験も終わった。今日からは答案の
返却とレクリエーション授業しかないため、午前中で学校は終わってしまう。
『いいんちょさ。ホワイトデーのお返し、貰った?』
『いいえ。まだよ』
 帰り際に、友人の英子に聞かれたので首を振って答えると、彼女は呆れた声で男子の方を見た。
『えーっ? 別府君てば、行動遅くない? 今日、もう終わりだってのに』
 すると横から友子が口を挟んで来る。
『多分これからなんじゃない? さっき、休み時間に別府君が傍に寄ってたもの。何か約
束してるんでしょ』
『よく見てるわね、本当に。人のゴシップとなると本当に鼻が効くんだから呆れるわ』
 そう突き放しつつも、静花は一瞬、友子の態度が気になった。いつもならもうちょっと
貪欲に突っ込んで来そうなのに、何かちょっと悟った風な態度に見えたのだ。しかし、そ
れはすぐに英子の話にかき消されてしまう。
『マージーでーっ? もしかして、デートの約束とかしてたりとかした? 意外と別府君
てばムードを大事にする方だったりしたとか。人気の無い綺麗な海沿いの公園でさ。はい、
これ……委員長に。とかって。うわーいいなー。このリア充め!!』
『うっとうしいわね。別府君にそこまでの甲斐性はないわよ』
 シッシッと手で払いつつも、そういうことも有り得るかも知れないと、内心浮き立つの
を静花は自覚せずにはいられないのだった。


 静花が駅の待ち合わせ場所に着くと、既にタカシは来ていて手持ち無沙汰そうにスマー
トフォンを弄っていた。
『別府君。お待たせ』
 傍に寄って声を掛けると、タカシは顔を上げて静花に笑顔を向けた。
「よお、委員長。いや、大丈夫。まだ時間まで5分あるし。ちょっと時間持て余したから
早く家出ただけで」
 気をつかって言い訳するタカシに、静花はフン、とつまらなさそうに鼻息をつく。
193/5:2014/04/19(土) 10:09:55.55 0
『気にしないでいいわ。別に悪いと思って言ったわけじゃなくて、単なる挨拶みたいなも
のだから。むしろ別府君こそ、いつもこうやって早く行動してくれれば助かるんだけど』
 チクリと嫌味を言うと、タカシは苦笑する。
「いや。今日はさすがに俺が誘ったわけだし、先に来てないとマズいよなって思ってさ。
それより委員長さ。今日の服も可愛いよね。何か春らしい色だし、よく似合ってるよ」
『だから、そういうお世辞はやめてよね。この間も言ったかもしれないけれど、そんな事
で普段の失態を取り返そうって言ったってそうはいかないんだから』
 ラベンダー色のニットにレースの白い花柄のミニスカートは彼女なりに真剣に考えて合
わせたものだけに、褒められるとくすぐったいような嬉しさがこみ上げてくる。懸命に否
定しないと、彼の前でみっともない顔を見せてしまいそうだった。
「お世辞なんかじゃないって。そんな事ないって分かった上で言うけど、もしこれが俺の
ためにオシャレして選んでくれたんなら、そんな嬉しいことはないし」
 タカシは彼なりに何とか静花の機嫌を良くしてもらおうと照れくさいのを我慢して褒め
てみたのだが、静花は片手でそれを払いのけた。
『もうやめて。気持ち悪くて聞いていられないから。それより一体私を呼び出した理由は
何? そっちの方が早く聞きたいわ』
 彼女の心を解きほぐせなかったと思い、タカシは小さく諦めの吐息をつく。しかしすぐ
に気を取り直して一枚のICカードを取り出すと静花に差し出した。
「はい、これ。委員長の分」
『何よ、これ?』
「何って、Suicaだけど。委員長、もしかして使ったことないとか?」
『そっ……それくらいは知ってるわよ!! 一体どういう意図でこんなのを差し出したの
かって、そういう意味で聞いてるの。バカにしないでよ』
 憤慨した静花を、タカシは慌ててたしなめた。
「ゴメン。この間委員長の家に行った時も切符だったしさ。もしかしたら使わないのかなっ
て思って」
『確かに普段ほとんど電車に乗ることなんてないし、こういうのって使い過ぎるような気
がするから持ってないけど、それと知ってる知らないは別の話よ』
204/5:2014/04/19(土) 10:10:26.58 0
 差し出されたカードをひったくるように受け取ると、静花は確かめるかのように裏と表
を手で返しつつ眺めた。
『こんなの渡して、どうするつもりなの? 最初に聞いたのも、そういう意味合いのつも
りだったんだけど』
 怪訝そうな彼女に、タカシは改札の方を指して見せる。
「そりゃ、駅でSuica渡すってことは、普通これから電車に乗るって思わない? 一応、
今日使う分くらいはチャージしてあるからさ。お金のことは心配しなくていいよ」
『そんな当たり前みたいに言わないでよ。電車に乗るって…… 一体どこに連れてくつもりなの?』
 さすがに困惑を隠しきれず問い質す静花に、タカシは軽く肩をすくめつつ、安心させる
ように微笑んでみせた。
「ゴメン。それはまだちょっと秘密なんだ。けど、絶対について来て損するような気分に
はさせないからさ」
『秘密って…… 一体どういうことなの? やめてよね。そういう気持ち悪いことするの』
 静花にしてみれば、いくらタカシの案内だとはいえ、どこに行くかも分からずについて
行くのには抵抗感があった。するとタカシは、彼女の方に向き直って近寄ると、真顔で静
花をジッと見つめて聞いた。
「俺を信じられない?」
 その問いに、静花は思わずドキリとしてしまった。何だか分からないが、焦りのような
不安のような、そんな変な感情を抱いて顔を背けると慌てて答える。
『し……信じるとか信じないとか、そんな問題じゃなくて…… 単に嫌なだけよ。行き先
も分からないままに連れられるのが』
 するとタカシはちょっと無理やりにも見える笑顔を見せた。
「大丈夫。よくミステリーツアーとかあるじゃない。終着点がどこになるか分からないパッ
ケージ旅行みたいなの。ちょっとドキドキした気分が味わえると思ってさ。気軽に構えててよ」
 そしてタカシは、そっと静花の手を取って握った。
215/5:2014/04/19(土) 10:12:33.93 0
「まあ、ここで話しててもしょうがないからさ。ほら、行こう」
『え? あ、ちょ、ちょっと!! 手……』
 手を握られたことそのものよりも、ちょっと積極的なタカシにどぎまぎしつつ指摘する
と、タカシはそのまま振り返った。
「いくら付き合ってるフリをしてるだけだって言ってもさ。たまには俺からも彼氏らしい
ことさせてくれよ。今日は3月14日なんだしさ」
『あ……』
 これで少なくとも、タカシの行動がホワイトデーに絡んだことだと静花も確信が持てた。
「分かったわよ。もう……貴方に任せるけど、私の時間を無駄にさせるような程度の事だっ
たら承知しないわよ」
 ため息混じりに承諾すると、タカシはホッとした様子を見せた。
「一応、今日は俺もいろいろと考えてるからさ。少なくとも、それだけはないって断言するよ」
 果たして彼の自信はどこから来ているのだろうか? 内心首をひねりつつ、静花はタカ
シに身を委ねて手を引かれるがままにホームへと導かれたのだった。


続く
2chはゴタゴタしてるけど、淡々とツンデレに萌え続ける
22ほんわか名無しさん:2014/04/19(土) 13:31:39.50 0
委員長乙女で可愛いのう
23ほんわか名無しさん:2014/04/20(日) 12:22:27.25 O
お題
つ・思い通りの展開にならなくて苛立ちを隠せないツンデレ
 ・ツンデレがティッシュ、ティッシュって焦っていたら
24ほんわか名無しさん:2014/04/23(水) 00:38:04.49 0
>>21の続き投下します
251/4:2014/04/23(水) 00:39:03.49 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ 〜その4〜

『ねえ。本当にどこまで行くわけ?』
 最寄り駅から電車に乗って40分少々。電車は都内に入り、そろそろ終点に着こうとして
いる。ここまで当たり障りのない日常的な会話をポツポツと交わしつつイライラを我慢して
きた静花だったが、ついにこらえ切れずにタカシを問い詰めた。
「もうすぐ。終点で降りるからさ。駅出たら、歩いてすぐだし」
『本当にもうすぐ分かるんでしょうね? いい加減そろそろ焦らされるのも限界なんだけど』
 苛立ちを隠そうともしない彼女に、タカシはちょっと気まずそうな笑顔で返すしかなかっ
た。すると、外の景色が急に真っ暗になる。地下鉄に乗りなれていない静花が一瞬周りを
気にするのと同時に車内アナウンスが響いた。
[まもなくー 終点。上野。上野に到着致します]
「ふう…… 何か、やっと着いたって感じだよ……」
 タカシは席を立つと、網棚の上に置いた静花の荷物を取り、彼女に渡す。
『それはこっちのセリフだわ。どれだけ気を持たせられたと思ってるの』
 バッグを受け取ると、静花はそのまま立ち上がった。まだ駅に着くまで少しあったが正
直、やっと場所が分かると思うと、気が急いて落ち着いて座ってなどいられなかった。
「申し訳ない。でも、気を持たせた分の価値は多分あると思うからさ」
『随分と自信があるのね。そこまで言うからには、がっかりはしなくても期待外れだった
時は覚悟しなさいよ』
 静花の脅しに、タカシは一瞬ウッと気が怯む。しかしすぐに気を持ち直して頷いた。
「いや。その点は大丈夫だと思うよ。俺だってちゃんとそれなりの根拠はあって、今日の
コースを決めたんだから」
 彼の言い方に、静花は引っ掛かるものを覚えて首を傾げた。コース、というからには目
的地は一つだけじゃないのだろうか? しかし、それを問い質したい気持ちをグッと抑え
る。恐らく聞いたところで彼は答えてはくれないだろう。今日は珍しく頑固だったからだ。
262/4:2014/04/23(水) 00:39:34.99 0
「委員長。こっち」
 電車を降りると、タカシは再び静花の手を取って彼女をエスコートする。今度は静花も、
大人しく手を握られるがままになっている。それよりも、これから行く場所が果たしてど
こなのか、その方に気持ちが向かっていた。
――あれ?
 その行き先に静花が思い当たったのは、通路に掲示されている出口の案内板を見たときだった。
――まさか……別府君の連れて行ってくれる場所って……あそこ、なの?
 そんなバカな、と静花はドキドキしつつも内心首を振る。
――そんな訳ないわ。だって、別府君には……ううん。クラスの誰にも話していないはずなのに……
 首をひねりつつも、タカシの進む先は彼女の記憶にあるその場所に向かって一歩一歩進
んで行った。


「お待たせ、委員長」
 その、やや明治を思い出させるような古めかしい建物の前で、タカシはちょっとわざと
らしく迎え入れるかのように片手を広げてみせた。静花はその建物を見て、小さく呟く。
『やっぱり……』
 その呟きに、タカシは首をひねって問い返す。
「あれ……? 驚かせようと思ってたんだけど……もしかして、バレてた?」
 静花は首を振った。
『気付いたのはついさっきよ。出口を示す案内板にここの名前もあったから、もしかして
と思って』
「そっか…… 出口の案内板に書いてあったかあ…… 確かに、有名な建物だしな、ここ。
まさかそれでバレるとは気付かなかった」
『ツメが甘いのよ。別府君って。いつも』
 わざと厳しく突き放すように言ってから、静花は建物を仰ぎ見る。そして、フォローを
するかのように言葉を継ぎ足した。
273/4:2014/04/23(水) 00:40:07.95 0
『それでも、十分驚いたけどね。一体何で、私をこんな場所に連れて来ようなんて思った
りしたの?』
「いや。だからそれが、この間の質問の答え」
『え?』
 一瞬戸惑ったが、静花の頭にすぐに去来するものがあった。
『って……もしかして、友子と会ったのって……』
 タカシは頷いた。
「ああ。誰にも内緒にしてると思うけど、委員長って恐竜とか古代生物の化石が大好きな
んだって言われてさ。バレンタインチョコのお返しに何がいいかって相談したら、いっそ
デートに連れて行って一日中委員長に好きな時間を過ごしてもらえばってアドバイスされたんだ」
『それで博物館に…… そもそも友子ってばよく私の好みに気付いてたわね……って、デート!?』
 静花は驚いた声を上げてタカシを見つめ直した。するとタカシは、ちょっと照れ臭そう
にうなずいてみせる。
「いやぁ。そう言われてみればさ。委員長と付き合ってる、っていう事にし始めてからさ。
実は一度もちゃんとデートらしいデートしてないなって。俺もだったらこの機会にちょう
どいいんじゃないかって思って」
『だっ…… だからって、それでデートだなんてそんな…… そ、そんなこと私が喜ぶと
でも思ってるわけ?』
 内心慌てふためきながら、静花はそれでも努めて冷静さを装ってみせる。ここで素直に
恥らってでもみせれば可愛いのだろうが、彼女の性格上もちろんそんな事は出来ない。
「もちろん、喜ばせてみせるつもりだよ」
 珍しくハッキリした物言いでタカシはうなずいた。
「そりゃ、俺とデートすることで委員長が喜ぶなんて思ってないさ。だから委員長がひそ
かに興味を持っているっていう古代の生物の化石がたくさん展示されてるこの博物館に来
たわけだし」
 静花は、建物とタカシを代わる代わる見つめた。
284/4:2014/04/23(水) 00:51:24.66 0
『でも、何だって友子がそんな事を…… 誰にもそんな話してなくて、知ってるのは家族だけ
のはずなのに……』
 するとタカシは、ニコッと微笑んでみせた。
「中学の時に、見学でここに来たことがあったんだって?」
 タカシに言われて、静花はハッとした顔つきになった。タカシはコクリとうなずく。
「吉仲、言ってたよ。男子はともかく、女子なんて大概飽き飽きしてて全然関係ない話題
に花咲かせてたのに、委員長一人で興味津々で見つめてたって。本人は何かごまかしてた
けど、ちょっと注意してればすぐバレるのにって」
『そんなに興味ある風になんて見てなかったのに。真面目ぶって、授業で来てるんだから
ある程度キチンとノートに取ってるって、そういう体でいたつもりだったのに』
 憮然とした顔つきで静花は言い訳をする。それにタカシは慰めるようにフォローを返した。
「まあ、アイツは普通のヤツとは視点が違うからな。常に何か、記事やらネタになること
探してるし。だからごまかそうったって、なかなかごまかしきれるもんじゃないし」
『まさか。勘が鋭いってのは確かだけど、超能力者じゃあるまいし。そうそう人の心を読め
るわけないわ。期待や願望で予想したのがたまたま当たったってだけでしょ』
 静花は表面上は冷静にそれを否定しつつ、内心ヒヤリとしていた。まさか、いくら友子と
はいえ、自分の本心まで見抜けてはいないだろうと思いつつも、それを否定する材料は一
切ない。
「そうかな? 結構記事とか読んでもいい点突いてること多いし。だからこそ、俺もアイツ
に相談持ちかけたわけだし」
 タカシが友子を持ち上げるのも気に食わなかった。これ以上この話題を続けていると、
彼の前でボロを出しかねない。そう危惧して静花は話を切り上げることにした。
『と…… とにかく、もう行きましょうよ。貴方が何でこんな場所に連れて来たのかは分
かったし、入り口で無駄話しててもしょうがないわ』
 静花はさっさと身を翻し入り口へと歩き出した。展示を見始めてしまえば話題もそっち
に移って、変な勘ぐりをされることもないだろうと。
「あ、待ってくれよ。今チケット取ってくるからさ」
 自分がエスコートしなければならない立場を思い出し、タカシは慌てて後を追ったのだった。

続く
29ほんわか名無しさん:2014/04/23(水) 01:37:05.85 0
博物館デートか…いいなぁ
30ほんわか名無しさん:2014/04/23(水) 01:55:05.24 0
いいねいいね
いい雰囲気だね
31ほんわか名無しさん:2014/04/23(水) 12:35:51.29 0
シャープが妹ツンデレ掃除機を開発したとか何とか
32ほんわか名無しさん:2014/04/26(土) 02:14:58.89 0
とりあえず>>28の続き6レス行っとこうか
331/6:2014/04/26(土) 02:15:44.24 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ 〜その5〜

「……えーと……あのさ」
『何?』
 邪魔をされて不快、とばかりに横目でジロリと睨み付けられて、タカシは一瞬ひるんだ。
しかし、グッと気を取り直して彼は疑問を口に出す。
「委員長さ。あの……楽しんでる?」
『別に。退屈はしてないけど』
 素っ気無い返事に、タカシは聞こえないようにため息をつく。
「一応確認しておくけど、委員長って昔の生物とかって好きなんだよね? 化石とか見るのがさ」
 彼の問いに、静花はしばしためらってからコクリとうなずく。
『ええ。それはその通りよ。何でいちいちそんな事を聞き返すのよ?』
 警戒するように彼を見る静花に、タカシは首をひねってみせた。
「だってさ。その割にはさっきから無言だし、顔もしかめっ面だしさ。見てるこっちとし
ては何か不安になるんだけど」
 すると静花は、不愉快そうに顔をしかめてみせた。
『悪かったわね。私はこういう顔しか出来なくて。どんな顔していようが、貴方に文句を
言われる筋合いはないはずだわ』
「文句なんて言ってないって。逆に気にかけているんだよ。もしさほど楽しめてないんだっ
たら、早めに場所変えなくちゃいけないからさ」
 タカシの言葉に、静花は厳しい表情はそのままに首を傾げた。
『何で場所を変える必要があるの?』
「だって、これってホワイトデーのプレゼントなんだぜ。楽しめてないんだったら意味ないじゃん」
 その問いに、静花は体が若干熱を帯びるのを感じた。少なくとも、彼が一生懸命考えて
バレンタインのお返しをしてくれている事には応えなければならない。
『……大丈夫よ。ちゃんと、楽しんではいるから』
342/6:2014/04/26(土) 02:16:21.71 0
 自己表現の下手な彼女にしては正直に告白した方だったが、タカシはいささか納得行か
ない顔つきを見せる。
「そうなの? それだったらいいんだけどさ。さっきからあんまりにも無言で無表情なも
んだから……」
『じゃあ逆に聞くけど、どうすれば楽しんでいるように見えるわけ? はしゃぐなんて私
には無理だわ』
 苛立ちを見せる彼女に、タカシは慌てて首を振る。
「そんな無理して楽しんでるフリをする必要はないって。ただ、もしかしたらだけど…… 
もし、逆に自分を抑えてるんだとしたら、それも必要ないと思うんだけど」
『抑える? 私が何を抑えているって?』
 責めるように聞きながらも、静花はドキリとしていた。まさか、タカシに自分の心を見
透かされてしまったのではないかと。そしてそれは的中していた。
「だって、隠してたって事はさ。自分で変わった趣味だって思ってるってことだろ? だ
から、本当はもっと夢中になって見たり自分の知識を話したりしたいのに、そうすると俺
から呆れられたりするんじゃないかって怖がっているんじゃないのかなって、そう思った
んだけど」
『私は別に……』
 別府君からどう思われようが関係ない、という言葉は、静花の口からは出なかった。口
先だけで嘘をついたところで、タカシに信じてもらえるとは思えなかった。
『怖がってはいないわよ。っていうか、一体何でそんな風に思ったわけ? 別府君から見
た私がどうだったのか、逆に教えてもらいたいくらいだわ』
 一瞬間を置いた後、すかさずタカシの言葉尻をとらえて、静花は言葉を言い換える。そ
れにタカシはちょっと考えるような仕草を見せる。
「うーん…… 何て言うかさ。半分俺の方に気が入ってる気がするんだよな。いや。変な
意味じゃなくてさ。本当はもうちょっと見ていたいのに、こっちの様子うかがって俺が飽
きる前に先に進んだり、普通の人が見てさほど興味なさそうなものは眺める程度でスルー
したり。むしろ俺なんていないものと思って楽しんでいいんだぜって」
『それはある程度は当たり前じゃない。人と一緒に来てるんだもの。気ぐらい遣って何が
悪いのよ』
353/6:2014/04/26(土) 02:16:56.80 0
「だって、これは俺からのホワイトデーのプレゼントなんだぜ。好きなら目一杯楽しんで
もらわなきゃ、俺の気だって済まないよ」
 断固たる態度で主張するタカシを、静花は睨み付けた。挑戦的な態度であごを上げ、両
手を腰に当てる。
『本当に自由にしていいの? 言っておくけど、絶対後悔するわよ。絶対退屈するし、絶
対私の話にうんざりすると思う。後から文句言ったって、聞かないんだからね』
「退屈はするかもしれないし、委員長の話についていけないこともあるかもしれない。け
ど、後悔だけは絶対しない。委員長が楽しそうな顔してくれれば、俺はそれでいいんだから」
 負けじとタカシは睨み返す。二人はしばし無言で睨み合いを続けた。静花はその間にタ
カシの表情から彼の気持ちを読み取ろうとしたが、そのどこにもカッコつけや嘘偽りに思
えるようなものは見えなかった。
『じゃあ、こっち』
 静花は、タカシの手首をつかんで引っ張った。唐突の行動に、タカシが付いていけず戸
惑いを見せる。
「ちょっと。委員長、どうしたんだよ?」
 順路を戻ろうとする静花に意図を問い質そうとすると、静花はまだ渋い表情のままで振
り返って答えた。
『好きにしていいって言ったでしょ? だったら、まだ見足りない展示があるの。一緒に
見るわよ』
 それを聞いて、タカシは顔をほころばせた。
「了解。好きなものを好きなだけたっぷり見てさ。俺がイヤになるくらい話聞かせてくれ
よ。いつもの委員長じゃ考えられないくらい饒舌にさ」
 その言葉に、静花の胸がキュッとすぼまるような変な感じを覚えた。急に体がこそばゆ
くなって、思わずうつむいてしまう。しかしすぐに気持ちをグッと抑え込むと、プイと顔
を背け、タカシの手を引いたまま再び歩き出す。
『分かったわよ。こうなったら……ホントに呆れるくらいに夢中になって見学して、絶対
に後悔させてあげるんだから』
364/6:2014/04/26(土) 02:17:27.98 0
「いや〜…… 濃かったなあ……ホントに」
 全ての順路を網羅し、博物館から出た時には既に夕方になっていた。タカシはうーん、
と唸って両手を組み、思いっきり伸びをする。
『…………』
「でも楽しかったよ。意外と委員長の話、飽きなかったし。むしろ恐竜とかガキの頃好き
だったのに、知らないこと多すぎでさ」
 タカシの感想に、静花は無言のまま恐縮するように身を縮み込ませた。
「それに、大昔の大量絶滅の話とか、恐竜とかより遥か太古の海で繁栄していた生物の話
とかさ。何かもっと調べて、色々話したくなったし」
『やめてよ。私は別に……別府君とそんな話しようなんて思わないし……』
 一瞬、そんな光景を頭に思い浮かべつつ、静花はためらいがちにそれを否定する。しか
しタカシは面白そうな、ちょっとからかうような口調でそれを退けた。
「でも、今日の調子だとさ。俺が一つ話題振ったら、それだけで2、30分は語り尽くすん
じゃね? ホント、そんな勢いだったじゃん」
『それはだって、別府君が遠慮するなって言うから…… プレゼントなんだから、気を遣
うことなくじっくり見学して好きなだけ語ればいいって言うから……』
 今日の自分を思い出すと、静花はたまらなく恥ずかしくなる。三葉虫やオーム貝や古生
代の軟体動物の化石を延々と眺め続け、タカシの感想に文句をつけ、彼の知識のなさを詰
りつつ自慢げに知識を披露するなどあり得ない事をたくさんやってしまったのだ。
「で、どうだった? 楽しかった?」
 静花の気持ちを推し量ることなく、ぶしつけに聞くタカシをちょっと忌々しくも思いつ
つ、静花はうなずいた。それもまた、正直な気持ちだったから。
『まあ…… 楽しかったし、すっきりしたわ。こんな風に太古の地球や生き物について語
りつくすなんて、滅多にないことだから……』
「これからは、俺が相手になるよ。委員長にバカにされない程度には勉強もするし」
 共通の話題が出来れば話も色々広がるし、何よりも今の微妙な関係から一歩進めるかも
しれない。そんな期待をタカシは胸に抱いたりもしたが、静花はあっさりと一蹴してしまった。
375/6:2014/04/26(土) 02:18:11.89 0
『別にいいわよ。無理して興味ある風なんてしなくたって。でなければ、今はにわか的に
興味持ってるかもしれないけど、数日もすればすぐ忘れてるだろうし。調子に乗ってあん
まり適当なことを言わないほうがいいわ』
 もし、本当にタカシが興味を持って一緒に話が出来るならと、静花自身期待しないこと
はなかった。だけど、期待は裏切られるものだ。それだったら、最初から期待なんてしな
いほうがいいと、静花はそう思って言ったのだ。後からガッカリすることほど、つらいこ
とはない。
「まあ、今は確かに疑われても仕方ないよな。正直、委員長の話し相手になれるような知
識はまるでないし。だから、これ以上は言わない。次に話を振るときは、相応の知識を得
てからにするさ」
 今日の態度を見ていれば、自分さえちゃんと興味を持って取り組めば、絶対に静花は応
えてくれるはずだ。タカシはそう確信を持っていたから素っ気無い態度にもめげなかった。
静花はそれにため息で返す。
『ハァ…… 期待もしないし、待ってもいないけどね』
「そこは期待しないで待ってるわ、じゃないのかよ!!」
 ガクッと膝を軽く折ってズッこけるような仕草をしつつタカシがツッコミを入れる。し
かし静花は肩をすくめて冷静に切り返した。
『だって、期待しないんだから待つ意味もないじゃない。そういうのは、例えばプレゼン
トに何をくれるかとか、そういう事に使うものじゃない? 私が別府君からのホワイトデー
を全く期待していなかったようにね』
「全く期待してなかったのかよ!! ちょっとは期待しててくれよ。一応彼氏……役なん
だしさ。ちゃんとしたの用意するさ」
 さすがに憮然とした顔のタカシに、静花は顔を背けた。確かにバレンタインデーの時は
ちょっと期待したけど、一月経った頃にはすっかり忘れていたのだから自分の言葉に嘘は
ない、と彼女は内心そううなずく。しかし本当なら好きな男子からのプレゼントなら期待
して当然なのにそういう意識が希薄なのは、やはり自分は変わっているのだろうかと、彼
女は同時に若干不安になったりした。
386/6:2014/04/26(土) 02:19:31.10 0
「で、とりあえずどうだったのさ。博物館見学は」
 タカシにそう問われ、静花は彼に視線を向けた。ちょっと考えてから、コクリと小さく
うなずく。
『そうね。楽しくはあったし……少なくとも期待以上ではあったわ。もともと期待なんて
なかったんだから、不愉快な思いをしない限り低くなりようがないけどね』
 静花の手厳しい評価にも、タカシはうなずいた。少なくとも一定の評価は貰えているし、
静花が素直に褒めてくれるなどあり得ないと、彼は骨身に沁みて知っていた。
「よし。じゃあさ。次はソラマチ行って甘いもの食べに行こうか。地下鉄ですぐだし」
『へ……? ちょっと待って。まだ次があるの?』
 驚いて静花が聞く。てっきり、博物館だけで終わりだと勝手に自分で思っていたのだ。
それにタカシは真面目な顔でうなずくと、逆に質問を返して来た。
「委員長さ。一人暮らしだから、門限なんてないよね?」
 質問の意図が分からず、静花は首をひねる。しかし今は答えるしか選択肢がなく、彼女
は疑問を顔に貼り付けたままでうなずいた。
『それは、そうよ。親からはたまには夜遊びで心配させるくらいしなさいなんてめちゃく
ちゃな事言われるくらいだし』
 何となくタカシの雰囲気が変わって意図が読み切れなかったので、静花は自虐的に茶化
すことで空気感を変えようとした。しかしタカシはそれに乗って来ず、一歩前に出て静花
との距離を縮めると、小さく、しかしはっきりと言った。
「俺…… 今日は委員長を帰さないから」
 その言葉に、静花は胸がドン、と跳ねるのを自覚した。


続く
そしてもうすぐツンデレスレは10年目に突入です
39ほんわか名無しさん:2014/04/26(土) 15:56:45.55 0

もう十年か、、、
401/3:2014/04/27(日) 01:07:03.60 0
【ツンデレに独り言を聞かれたら】

 昼休み。飯も食ったので存分にげふーと呼気を大気に混ぜ合わせる作業をしつつ窓から外を眺める。いい心地だ。
「はー。そういや最近ジャッジメントお化け見ないなあ。成仏したのかなあ」
「……まさかとは思いますが、わたくしのことを言っているのですか?」
「む。なんとなくつぶやいた独り言に反応されると、どうにも恥ずかしいですよね。いやゆる面映いというやつですね。照れくさいというやつですね。もうすぐ春ですね」
 くるりと振り向くと、そこに件のお化けがいた。
「わたくしはリナですわっ! ジャッジンメントお化けではないですわっ! 百歩譲ってジャッジメントまではいいとして、どうしてお化けなんですの!?」
「キーキー騒ぐない。あまりキーキー言うとオス猿の野郎がメス猿がいると勘違いして尻を赤く発光させてモテアピールを開始するぞ」
「どこからつっこめばいいんですのっ!?」
 今日もリナはうるさいなあ。
「はぁはぁ……」
 荒く肩とおっぱいを上下させて呼吸するリナ。おっぱい。
「あ、そういや忘れてた。こほん」
 居住まいを正し、リナに向き直る。
「? なんですの?」
「ジャッジメントですのっ!」ズビシッ
「…………」
 今日も例の超かっこいい黒子ポーズでリナのご機嫌をうかがう。
「どうだ」
「ばーか」
「ちくしょう」
「はぁ……口を開くと馬鹿な事ばかり。もう少しマシなことを言えないんですの?」
 呆れた様子でリナは髪をかき上げた。今日もドリルもみあげの調子は抜群のようだ。
「言えないことはないが、それだとちっとも愉快じゃないじゃないか」
「わたくしはちっとも愉快じゃないですわっ!」
「では聞くが、どういう時が愉快だと言うのだ? 今後の参考にさせてもらおう」
「えっ? そ、それはもちろん、その……」
「?」
 何やらこちらを意味ありげにチラチラ見ている。……まさかっ!
412/3:2014/04/27(日) 01:08:31.96 0
「俺の超かっこいいジャッジメントですのポーズを見ている時か! なんてセンスのいいおっぱいなんだ! 褒美をくれてやろう! 俺の一円玉貯金をくれてやる! たぶん400円分くらいはあるはず!」
「違いますわっ! 一円玉で貰っても使いづらいですわっ! おっぱいって言うなっ!」
「大きいじゃん。おっぱい」
「お、大きいとか言わないんですのっ!」ポカポカ
「あいたた。はい、すいません」
 可愛い感じでポカポカされ、思わずご機嫌になったので素直に謝罪してしまう。
「まったく、どうしてそんなにアホなんですの……?」
「いやはや。余談だが、俺はこうやってリナと馬鹿やってる時が最高に愉快です」
「うぐ」
「?」
「……そ、そうなんですの。すっごくつまらない趣味ですのね、貴方」
「なんで俺から90度顔を逸らして喋っているのですか。そっちは壁ですよ」
「か、壁を見るのがトレンディーなんですの! 今はこっちの方角が吉なんですの!」
「ヤベェ、風水だ! 溶ける!」
「なんでですの!?」
「宗教アレルギーなんだ」
「アレルギーで溶けるって聞いたことないですの! ……あと、風水って宗教ですの?」
「違う」
「じゃあ二重で間違ってますの!」
「マイナスをマイナスでかけるとプラスになるし、つまりはそういうことだ」
「今日も適当ですの!」
「わはは。……んで、もう風水とやらは大丈夫なのか?」
「へ?」
「や、普通にこっち見て話してるし」
「あ……」
「そしてェ!」ガシッ
「ふにゃっ!?」
 リナの頭を両手で抱え込み、固定する。
「これで俺から顔をそむけることはできまい。ふはははは! 存分に苦しむがいい!」
「ちちちちち近い近い近いですのっ!?」
423/3:2014/04/27(日) 01:10:30.34 0
「終末の日が? あれ、リナって預言者属性あったっけ」
「そんな属性はないですのっ! 顔ですのっ、顔が近いですのっ!?」
「そういやベヒモスは終末の日まで草を食い続けるらしいが、そんなに草ばっか食べてて飽きないのだろうか。マヨネーズでも差し入れてあげたいよ」
「超知りませんのっ! いっ、いいから顔を、顔が!?」
「む、俺の顔を食べたいと申すか。残念ながら俺の顔には餡が詰まっていないので、食べてもおいしくないうえに俺が死ぬという大きなリスクがあるのだが、それでも食べたいと言うなら考えないでもない。……いや、やっぱり嫌だ。なぜなら死ぬから」
「顔を、遠ざけるですのーっ!!」
 いい加減限界なのか、リナは顔を真っ赤にさせて大きく叫んだ。
「はいはい。ごめんよ」
 素直に手を離してリナを解放する。素早くあとずさると、リナは肩とおっぱいを上下させて大きく呼吸した。おっぱい。
「よ、よくもこんな辱めを……!」
「人聞きが悪い! もうちょっと言い様の工夫を!」
「あ、貴方なんかにこんなことされるなんて、華を散らされたも同義ですの!」
「ほう。その隠語の詳しい意味の解説を願いたいものだ」
「ふぇ?」
「いやなに、無学なものでよく分からないんだ。どういうことか詳しく教えてくれないか?」
「え、えと……そ、その。……お、おしべと、め、めしべが……」
「おしべとめしべが」
「〜〜〜〜〜っ! む、無知なのが悪いんですのっ! 教えてなんてあげないんですのっ! べ、別に恥ずかしいとかそういうんじゃないんですのよっ!?」
「恥ずかしいことなのか」
「貴方わざとおっしゃってませんこと!?」
「このおっぱい察しがいいなあ」
「うー! うー!」ズビシズビシ
 涙目でチョップを連打されたが、その度に目の前でおっぱいがぽよんぽよん弾むので、むしろご褒美ですよ、と声を大にして言いたい。

「本気で馬鹿なんですのっ!?」
 ので言ったら、さらにチョップが増した。たんこぶできた。
43ほんわか名無しさん:2014/04/27(日) 05:24:53.24 0
おっぱい!!
44ほんわか名無しさん:2014/04/27(日) 14:36:48.45 0
素晴らしい。おっぱい。
45ほんわか名無しさん:2014/04/28(月) 12:55:43.67 0
友ちゃんをくんかくんかし続けてもう10年か…

・付き合い始めて10年の男とツンデレ
・結婚して10年の男とツンデレ
46ほんわか名無しさん:2014/04/29(火) 15:54:42.68 0
>>38の続き投下します

今回でラストです
471/5:2014/04/29(火) 15:55:20.59 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ 〜その6〜

『な……』
 とっさに言い返そうとしても、何も言葉が出ない。それくらい彼女は驚き、動揺してい
た。胸がドクドクと鳴りっぱなしで、体温が一気に5度くらいも上昇したように感じる。
『何をバカなことを言ってるのよっ!!』
 搾り出すようにして、彼女は叫んだ。周囲にまばらにいた人の視線が集まるのも構わず、
取り乱して一気に言葉を炸裂させる。
『帰さないって…… 何考えてるのよ貴方はっ!! いくら私に門限がないからって、何
をしてもいいって訳じゃないわ。私たち、高校生なのよ? まだ未成年だし、そんな……
そんな不謹慎なことして良いわけないでしょう? 分かってるの? 大体私たち本当に付
き合ってるわけでもないのに、調子に乗らないでよねっ!!』
 静花がしゃべりつくして落ち着くまで、タカシは黙って見守っていた。言おうと思って
いたセリフの後に静花がどういう反応を示すか、色んなシミュレーションをしていたが、
一番予想通りでベタな反応におかしみすら覚えつつ、とぼけたように答える。
「委員長を帰さない、とは言ったけど、何をするかなんて一言も言ってないんだけど?」
 ワザとらしいその言葉に、静花は自分が早とちりさせられたと気付いてパッと口を押さ
えた。恥ずかしさでよりいっそう体が熱くなるが、同時に苛立ちを覚えて彼女はタカシを
睨みつける。
『ミスリードを誘ったのね。最低だわ、別府君って。私が取り乱すところを見て楽しんで
いたんでしょう。本当に意地悪』
「別にそういうわけじゃないって。言葉の意味自体は本当のことだから。まさか委員長が、
あの一言でそこまで妄想を飛躍させるなんて思ってないし」
 澄まして弁解しようとするタカシだが、おかしみが我慢出来ずに、つい口の端が緩んで
しまう。無論それを静花が見逃すはずもなかった。
『嘘よ。口がちょっと笑ってるもの。私を引っ掛けて何が楽しいって言うのよ。ああ、も
う……ホント、さいっていの大バカ!! 死んじゃえばいいのに!!』
 タカシは肩をすくめた。我ながら嘘が下手だなと若干呆れてつつ、本当の言葉に言い直す。
482/5:2014/04/29(火) 15:55:52.32 0
「ゴメン。本当は勘違いするかもとは思ってた。けど、それを期待してたわけじゃないよ。
委員長を引っ掛けるのが目的じゃないし。というか、言葉自体は本気だし」
 本当は一番期待する展開だったが、半分以上は本当のことだったので今度はタカシも真
顔で弁解することが出来た。静花は半分涙目でタカシを睨み付けたまま、詰問を開始する。
『じゃあ一体どういう意図で言ったのよ? 私を帰さないって……一体私をどうするつもりなの?』
「めいっぱい楽しませる」
 即答されて、静花は驚いてタカシをマジマジと見つめた。ポカン、と空気に穴が出来た
ような間が二人の間に出来る。しばし無言の時間が流れた後、恐る恐るといった様子で静
花が質問を続けた。
『めいっぱい楽しませるって……何よ? 一体、どういう意味で言ってるの? 楽しむっ
て言うなら、ここでもたくさん楽しんだわ』
「でもまだ、笑顔は見せてない」
 タカシに指摘されて、静花はまたドキリとした。彼女の緊張を和らげるかのように、タ
カシが笑顔を見せる。
「委員長ってさ。俺がこういうこと言うと怒ると思うけど、照れ屋で感情表現が不器用で
さ。外から見るとしかめっ面っていうか、本当に楽しんでるのかどうか分からないことあ
るじゃん。俺に対してだけじゃなくて、吉仲なんかと一緒にいる時もさ」
『大きなお世話だわ。ええ。そういうことを別府君から言われるのは非常に不愉快。言わ
れた通りかも知れないけど、そんな事を貴方にいちいち注意されたくもないし』
 機嫌を損ねる彼女に、タカシは慌てて弁明した。
「いや。欠点を指摘してるとか注意してるとかじゃなくて、その……事実の確認、ってヤ
ツ? 実際みんなでわいわいやっててもあんまり笑わないのは自覚してる?」
『悪かったわね。無愛想で……』
 正直、静花は今まで自分が無愛想だからといって、そんなに困ったことはなかった。友
達が出来にくい損な性格なのは分かっていたが、それでも友子のようなおせっかいは大体
傍にいるし、一人でいるのも全く平気だったからだ。実は今、タカシと知り合って初めて
自分の性格に嫌気が差していたが、それだけに当の本人から欠点を指摘されれば面白くもない。
493/5:2014/04/29(火) 15:56:24.61 0
「いや。別に無理して変える必要はないし、それが委員長の個性なんだからそれはそれで
いいと思ってる」
 タカシが首を振る。それに静花は苛立った声を上げた。
『じゃあ、何でわざわざ人の欠点をあげつらうのよ。一体何が言いたいの? 貴方は』
 タカシは少しためらったが、落ちつかなげに首を手でさすってから一つため息をついて
気を入れ直した。顔を上げ、再び真面目に静花を見つめる。
「俺が言いたいのは、どんなに感情表現が下手な人だって、本当に楽しければ自然と笑み
がこぼれるんじゃないのかなってこと」
『は?』
 何か返事がズレているような気がして、静花は思わず変な声で聞き返す。それにタカシ
は軽く首を振って言い直した。
「つまりさ。委員長はさっき、博物館を楽しめたって言ったけど……それを表情に出すの
を性格が邪魔してるようじゃ、まだまだだなって思って。バレンタインデーにあれだけ最
高のチョコを貰えたのにさ。委員長が楽しさのあまり笑顔の一つもこぼさないようじゃ、
お返しとしては全然足りないんじゃないかって」
 その言葉に、静花はどう反応したらいいか分からなかった。自分の手作りチョコを最高
のチョコだなんていう賛辞を送られたのは嬉しかったし恥ずかしいし、かといってそれを
表に出すのはもっと恥ずかしい。かといってタカシ自身の感想を否定しても個人の感想だっ
て言われればなすすべもなく褒められっぱなしの責めを味わうことになる。大人しく黙っ
ていると、タカシは言葉を続けた。
「だから、委員長が誰が見ても分かるほど楽しそうにしてて、自分の心の枷が外れてるの
にも気付かないくらいにならないとって。無理に作る笑顔じゃなくて、本当に心からの、
自然の笑みが出るまで楽しんでもらわないと。その為なら、時間も金も惜しまないから」
 静花は息を呑んでタカシを見つめた。最後まで言い切ってホッとしたのか、タカシは照
れ臭そうに目をそらしてしまう。しかしそれが、彼が本気であると彼女に伝えていた。
『そんなの……』
504/5:2014/04/29(火) 15:56:56.22 0
 自分の過去の、彼に対する態度を思い出す。いつも不満げで、文句ばかり言っていて、
笑顔なんて見せたことがないような気がする。いや。彼だけじゃない。友人や家族を前に
してだって、ポジティブな感情を表に出すことはほとんどなかった。そんな自分が、心か
らの笑顔なんて見せられるだろうかと自問自答する。
『無理だわ。絶対。笑顔なんて、無理して作ろうと思えば作れるけど、中学時代のどの写
真を見ても無愛想な顔しか残ってない私に、出せるわけがない』
「でも、さっきの博物館での委員長は、ちょっと輝いてた」
 タカシの言葉に、またしても静花は驚き、それから急に恥ずかしくなって顔を背けた。
『それは…… だって、別府君が自由に楽しめって言うから……』
 言い訳をする静花に、タカシは否定するように首を振る。
「何も悪くないんだから、素直に認めればいいのに。俺はああいう委員長、いいと思うし」
 褒められて、また静花は恥ずかしさで言葉が出なくなってしまう。
「だけど、まだ足りないなって。だから、委員長の好きな美味しいものを食べて、色んな
お店見て回ってさ。笑顔が無理ならせめて、日が変わるまで目一杯楽しんでもらえればっ
て…… 大丈夫。終電は0時過ぎてもあるから」
 ここに来て、静花はようやくタカシの言葉の真意を全て理解できた。タカシは、恐らく
自分がどれだけ努力しても、静花が自然な笑みをこぼすまでには至らないだろうと思って
いるのだ。だから、満足が行くまで楽しませようと思ったら、恐らく日を越すだろうと。
『……つくづく、自分の損な性格が嫌になるわ』
 ポツリ、と静花が呟く。その意図をつかみ切れず、タカシは首を傾げる。
「え? それって……何で?」
 すると静花は、タカシに向き直ると自嘲気味な笑みを浮かべて見せた。
『だって、そこまで言われたら……普通の女の子だったら好き放題やるわ。もう、美味し
いもの食べ歩いて、お店回ってショッピングしておねだりして、夜景の綺麗なとこ連れて
けって駄々こねて、お台場の観覧車とか乗って、目一杯楽しむのに…… 私ってば、性格
が損だから、どうしても遠慮がちになるし……』
515/5:2014/04/29(火) 15:58:16.91 0
「なるほどね。確かに委員長なら、甘いものでも食べようかって言ったら、太るからとか
今はお腹空いてないとか言うし、ショッピングも貧乏で甲斐性なしの別府君なんて当てに
してないからってほとんど物を買わないだろうしね」
 タカシも笑って言うと、静花は拗ねるように口を尖らせた。否定したくとも、まさに彼
の言うとおりだと思ってしまう。
『覚悟しなさいよ』
「え?」
 キョトンとするタカシに、静花はクルリと反転して背中を見せた。それから両手を後ろ
で握り、首を回してタカシの顔を見ながら、意識して半ば甘えたような声で言った。
『そこまで言うからには…… 今日は遠慮なく、好き勝手に楽しむからね。いつもなら絶
対しないようなこと……たくさんするんだから。今日はまだまだ時間、たくさんあるんだ
から……私が自然に笑みがこぼれるまで、ね。あなたが言ったんだから、ちゃんと実行してよ』
 静花は顔を正面に向けると、うつむいた。自分で言ったことなのに、急に恥ずかしくな
る。するとその背に、タカシがそっと声を掛けた。
「分かってるよ。何だったら、シティホテルに泊まるくらいの勢いで、時間も惜しくなる
くらい楽しめるようにするからさ」
 しばし間を置いて、静花はコクリとうなずき、そして小さく、精一杯の努力で一言呟いた。
『……うん。期待……するからね……』


終わり
52ほんわか名無しさん:2014/04/30(水) 01:06:16.87 0
これで終わりだなんて殺生な!
夜のデート編がないとは言わせないぞ!このGJ野郎め!
53ほんわか名無しさん:2014/05/01(木) 11:37:00.96 0
これは末永く爆発しろ
541/2:2014/05/02(金) 10:34:40.19 0
そんなことよりちょっと俺の話聞いてくれよ

涼しいと感じられるようになった風が吹く青空で、俺はツンデレに告白したの

というのも俺どもりでさ

今までも女の子に対して苦い思い出しかなくて

そんでツンデレに優しくされて勘違いした訳

ツンデレは、俺といると落ち着くって甘い言葉で近づいてきてさ

俺もそんなこと言われたことないから舞い上がってね

喋るのが下手くそなの愛想尽かさずに聞いてくれるし

日に日にツンデレのこと強く思うようになって

すればあれだけ強かったどもりも直ってきてさ

自分に自信がついたのは彼女のおかげだし勇気出してツンデレに好きって伝えたの

そしたら緊張で前以上にどもりまくってさ

終わった、って後悔してたら向こうからも好きって言ってくれてさ、俺思わず抱きついちゃったの

して我に返ってから慌てて離したらツンデレ笑って許してくれてさ

いきなり抱きついたのに気持ち悪がらないとか、彼氏彼女の関係って凄いと思った、って話
552/2:2014/05/02(金) 10:35:54.71 0
そんなことよりちょっと私の話聞いてほしいんだけど

涼しいと感じられるようになった風が吹く青空で、私はアイツに告白されたの

というのも私恋愛ゲーム好きでさ

今まで数々のイケメンに告白された勇士なの

そんで自分モテるって勘違いして実行に移した訳

でも現実の男って怖いからアイツを標的に絞ります

アイツはちょっとどもりがあって弱気な子なのね

だから最初は何をどう喋っても大丈夫だよって事を彼に教えたの

そしたらアイツ私にだけは素の顔見せてくれてさ

腹に溜めてるモン吐いたり冗談なんかも言うようになって、一気に仲良しになっていったの

ならアイツ二人っきりになった時、内緒話があるみたいに私を手招きしてさ

何も考えずに耳寄せたら、あああああ愛してる、って告白されてね

耳元で吐息くすぐったいし不意打ちの告白にゾクゾクきて、ありがとう、言いました、震え声で

したらアイツ嬉しすぎて抱きついてきてさ

私も好き、とは一言も言ってないんだけど、アイツの喜びよう見てたら、まぁいっか、って思えたの、って話
56ほんわか名無しさん:2014/05/02(金) 14:24:27.97 0
いいなぁ
57ほんわか名無しさん:2014/05/05(月) 14:11:34.46 0
一ヶ月遅れの新歓ネタ
長いの行きます
581/7:2014/05/05(月) 14:12:44.36 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その1〜

「さあ。いよいよ今日から新歓だ!! お前ら、気合入れて行くぞ」
『おーっ!!』
 新幹事長になった朝比奈さんの号令に、野上さんやら広上さんが威勢のいい掛け声で応
じる。すると僕の耳元で、同じ学年の音羽さんがボソッと耳打ちをする。
『……あの…… 何だって先輩たち、あんなにテンション高いのかな……?』
「音羽っ!!」
『ひゃ…… はいっ!?』
 声が聞こえたことはないと思うけれど、いいタイミングで名指しされた音羽さんがビッ
クリして居住まいを正す。
「お前が一番大人しいからな。新入生は訳も分からずいきなり見ず知らずの人の輪に連れ
られて来て緊張してるもんだ。しっかり盛り上げて、楽しい部活だってアピールしないと
いけないから、いつもみたいに後ろの方で大人しくしてるなよ。特に人見知りしそうな女
子とかには積極的に話しかけていけ」
『わっ…… 分かりましたっ!!』
 思わず敬礼のポーズを取る音羽さんにうなずくと、次に朝比奈さんが視線を送ったのは、
先輩だった。
「あと椎水な。お前は最初、勧誘は上のやり方よく見てからにしろ。勝手に前に出張ると
ロクな事しなさそうだし」
『ロクなことしないってどういう意味ですかっ!! 失礼なこと言わないでください。ちゃ
んとレクチャーだって受けましたし』
『かなみちゃんは去年、大立ち回りを演じかけたからねー。通君たち、危うく強制勧誘で
訴えられるところだったし』
 先輩が新入生だった去年、音羽さんを勧誘する朝比奈さんたちをナンパと間違えて猛然
と助けに入った恥ずかしい過去を掘り返されて先輩は真っ赤になる。
『もう…… 今年は大丈夫ですってば。サークルの勧誘がどんなのか、大体分かりました
し。それより真似って……莉緒先輩と一緒に回るんですけど、あれを?』
『何? かなみちゃん。今更あたしと回るのがイヤだなんて言わないわよね? それとも
あたしの勧誘方法に何か文句でも』
 ジロリ、と広上さんにすごまれ、先輩はたじろいだ。
592/7:2014/05/05(月) 14:13:45.85 0
『あ、いえ。莉緒先輩と回るのがイヤなんじゃなくて、莉緒先輩の真似をするのが、ちょっ
と難しいかなと……』
『だから、かなみちゃんは肩を抱く役目だって散々言ったじゃない。腕を組むのがあたし
の役目なんだから』
 ボソボソと打ち合わせの内容を確認する広上さんに、朝比奈さんが呆れたように声を掛けた。
「りっちゃん。逆セクハラ、今年は禁止な」
『えーっ!! 何でよっ!! つーかセクハラじゃないし。立派な勧誘活動だし。あれや
ると別府君みたいなクソ真面目ーなタイプも釣れるのにーっ!!』
「広上さん。僕がまるで胸に釣られて入ったように思われるからやめて下さい」
 確かに去年、いきなり腕を掴まれ、胸を押し付けられて動揺したが、その隙に他の女子
からも脇と背後を固められ、完全に身動きできない状況までされなければ、釣られたかど
うか分からないというのに。
『別府君てさ。絶対ムッツリよね。澄ました顔で気取ってるけど、絶対頭の中はエロい妄
想で満たされてるんだから』
 ここぞとばかりに先輩が攻撃側に回る。そんなに周りの女の子に僕の心象を悪くしたい
のかと思うくらい、事あるごとに人の会話の端に乗っかって毒を吐いてくるので困る。
「一回別府の頭の中も覗いてみてーよな。コイツって下ネタとかも自分からは振って来な
いしさ。どんなエロっちい事考えてるのか見てみたいし」
 同じ二年の脇谷君がニヤついた顔で僕を肘で軽く小突く。僕はちょっとうっとうしく思っ
て、手で払う。
「別に普通だって。単に口に出すのが苦手ってだけで、話題について来れてない訳じゃないし」
『あ。でもそーゆーのって興味あるよね。男子だけの時ってどんな会話してんのかとかさ。
特に酒飲んでるときとか』
 野上さんが興味津々な顔で話題に乗ってくるのを朝比奈さんがパン、と両手を叩いて抑える。
「脱線ストップだ。多少のスキンシップはありだけど、変な誤解持たせるとあとが厄介だ
しな。それに、去年広上のやり方見てた他の女子から文連にクレーム入ってたって佐倉さ
んから引継ぎで聞いたし。だから、男相手にするときは気をつけろよ。いいな?」
 二年の時は不真面目そうなイメージだった朝比奈さんだが、やっぱり幹事長という責任
ある立場になると変わるらしい。広上さんもそれに憮然としつつうなずいた。
603/7:2014/05/05(月) 14:15:16.00 0
『はーい…… あー、もう。どーせ会計学とか歴研とかあの辺よ。文連とやたら繋がって
るし。別に単に腕組んでるだけなんだから文句言われる筋合いないってのに……』
 同じ文化連合系のサークルでも、予算だの新入生だの取り合いになることは結構多いの
で、どうしても仲の良くないサークルが存在してしまう。特に代々執行部に人を輩出する
ことが多い会計学研究会とかは、予算削減を食らったサークルから恨まれることも多いらしい。
「さて。そろそろ一年が体育館から出て来る頃だな」
 朝比奈さんが時計を見る。お昼休みが新歓では重要な時間だ。僕も先輩も捕まったのは
お昼のときだったし。それで遊びに連れて行かれて、結局午後のガイダンスに参加出来な
かった。もっともその代わりに、涼白さんというとっても美人な副幹事長の先輩にレクチャー
を受けたわけだが。
「それじゃ各自、しっかりな。とりあえず目標は30人。テメーら、きばってくぞ!!」
「『おーっ!!』」
 今度は僕らも参加して、鬨の声を上げる。そして、新入部員獲得という、過酷なサバイ
バルレースに僕らは乗り出したのだった。


『あ、ゴメンなさい。私たち、もう入る部活とか決めてるんでー』
『そうですか。それじゃあ、大学生活、楽しんでくださいね』
 声を掛けた一年生を愛想笑いで見送ってから、あたしはハーッとため息をつく。その肩
に、ポンと手を置かれた。
『頑張って。声掛けてついて来てくれるのなんて、10回に1回くらいなんだから。断られ
るのに慣れなきゃダメよ』
 莉緒先輩に慰められ、あたしはガクッと肩を落とす。
『そうなんですか。高校の時も新歓ってやりましたけど、何か全然勢いが違うって言うか……』
 あたしが自分から声を掛けた新入生は3組。全部女子で、全部振られた。
『最初は男の子からやるといいよ。男子はやっぱり女の子に声掛けられると警戒心薄いし
さ。大人しそうな子とか、狙い目だよ。ほら。あーいう子』
 莉緒先輩が指したのは、いかにも大人しそうな感じの男子だった。一人で歩いてる姿が
所在なげなところからも、大学の雰囲気にまだ戸惑ってるらしい。
『じゃ、あたしが見本見せるからね。ねーねー、そこの君さー。一年生でしょ? 良かっ
たらおねーさんといい事しない?』
614/7:2014/05/05(月) 14:16:37.25 0
『莉緒先輩っ!! 何の勧誘ですかあっ!!』
 ビックリしてる男子を前に、あたしは慌ててツッコミを入れる。
『アハハ。ゴメン。今のはさすがに冗談。あのさ、君……どっかサークルに勧誘されたりした?』
「いえ。まだ、その、これから見て回ろうかなって……」
 さすがにいきなり声を掛けられて戸惑っている様子が見える。ちょっとイントネーショ
ンが訛っていて、地方から出てきたばかりなのだろうと察する。莉緒先輩は相手が戸惑っ
ている隙にこっちのペースに巻き込もうと一気に畳み掛け始めた。
『じゃあさ。あたしらと一緒にやらない? お昼まだでしょ? ご飯、ご馳走してあげるし』
「いや。そんな、会ったばっかりじゃないですか。そんなこと出来ませんって」
『気にしない気にしない。色々学校のこととか教えてあげるよ? 学部どこ? 商学部?
マジで? じゃああたしと同じじゃん。よし、おねーさんが手取り足取り……』
『莉緒先輩っ!!』
 この人は放置しておくとどこまでも危険な方向に走りかねない。通衣先輩が普段どれだ
け抑えてくれてるか、あらためて理解した気がした。私は仕方なしにフォローに入る。
『ゴメンね。びっくりしちゃったでしょ? この先輩はウチでもちょっと特殊だから。け
ど、他にも女子はいっぱい……ってほどでもないけど、みんな可愛いし一緒にいて楽しい
人たちばっかりだし、男子もいい人たちばかりだから。これから約束とかなかったら、ちょっ
と見においでよ。もし友達と約束してたら、その子たちも一緒にさ。これ、ウチの部のビ
ラ。どう?』
 あたしは何とかイメージを挽回しようと精一杯頑張った。これでも高校時代は部長やっ
たりしていたので、下級生の勧誘の仕方は経験がある。こういう時に別府君がいればいい
のに。そうすれば莉緒先輩のフォローから何から何までやってくれるのに。
「そうですね。あの……ついて行ったから必ず入らないといけないってわけじゃないんですよね?」
 ちょっと迷ってる風の彼に、あたしは営業スマイルでうなずいた。
『もちろん。色んなサークル見て回る上での参考って感じで。でも、ウチだけじゃないけ
ど、外から見てるだけじゃ分からないことっていっぱいあるから』
625/7:2014/05/05(月) 14:18:30.04 0
 ちょっと前向きそうな雰囲気を察して、あたしは彼を安心させようと頑張る。何か久し
ぶりにすごい真面目だ。
「あ……じゃあ、そうですね。ちょっとだけ、お邪魔しちゃおうかな、なんて」
『おー。おめでとう、かなみん。初ゲットじゃん』
 あたしの交渉を大人しく見守っていた莉緒先輩が拍手する。
『やめてくださいっ!! そういうの、何か営業の勧誘みたいじゃないですか』
『アハハ。部が部だけに、ついね』
 考えてみれば、あたしのフォローは全部別府君がやってくれたっけ。と、あたしは我が
身を省みて思う。いや。現在進行形だけど。立場を変えると、大変なんだなあと思ってみ
なくもない。もっとも、別府君に対してのスタンスを変える気は全くないけど。
『それじゃあさ。コツも掴んだところで、かなみちゃんは勧誘続けててよ。あたしはこの
子をウチの部まで案内して来るから』
 早速一年生の腕をしっかりと抱きしめた莉緒先輩に、あたしはびっくりした声を上げて
しまった。
『ちょっと待ってください!! いきなり一人ですか? そんなの無理ですって。彼はあ
たしが連れてきますから。莉緒先輩一人じゃ何するかわかんないですし』
 うっかり口走って、一年の子が思わずビクッと莉緒先輩を見つめたのに気付き、あたし
は自分の失言に気付く。
『失礼ね。大丈夫だってば。かなみちゃんってば大げさなんだからさ。大切な一年生に何
かするわけないし』
 その言葉も何か引っ掛かる気がする。新入生は狩りの獲物かなにかかと。
『とにかく、あたし一人じゃ無理ですって。まあ、莉緒先輩野放しってのもどうかと思い
ますけど……』
 しかし莉緒先輩は、新入生から離れてあたしに向き直ると、ポンと両手をあたしの肩に
置いてニッと笑った。
『頑張れ。かなみちゃん』
 その行動に一瞬唖然としているうちに、莉緒先輩は再び新入生の傍に寄ると、肩を軽く
抱いていざなった。
636/7:2014/05/05(月) 14:19:24.55 0
『安心して。めっちゃ楽しいサークルだから。それにね。大学で生徒向けに広報するポス
ターとか色々作るから、デザインとか写真とかも覚えられるし、あとモデルもやったり出
来るんだよ? しかも女の子とペアで』
「マジですか? 自分、男子校であんまり女の子に縁なかったものですから、そういうの
経験、ないんですけど」
『ほほう? もしかして結構ウブなほうだったりとか? アハハ。これはお姉さん、可愛
がっちゃおうかなあ』
『莉緒先輩!! 新入生からかっちゃダメですってば!! ダメよ。この人は男を惑わす
悪魔だから。でも、他にもいい子いっぱいいるからね? みんな性格いいし、気楽に付き
合えるよ。あたしなんかも高校の時より全然男子と遊ぶ機会増えたし』
 正直、部の活動よりも女の子で釣る勧誘もどうかとは思うけれど、まずは数を集めるこ
とだと、これは先輩達みんなが口を揃えて言っていた。朝比奈さんなんかは、完全に女の
子目当てで釣られてきたと自慢げに言っていて、通衣先輩に蹴っ飛ばされていたけど。
「何か楽しそうっすねえ? ちょっといいかなあって思えてきました」
 彼の気分が前向きになったところで、莉緒先輩がちょっと抑えつつも巧みに誘う。
『まあ、やること多くて忙しいから遊んでられるばっかりじゃないんだけどね。でも、み
んなでワイワイモノづくりするって楽しいからさ。まずはしばらく一緒に遊ぼうよ。ね?』
 さすがは上級生。スキンシップだけが能じゃない。と、うかうか感心してるうちに、自
分が置いてけぼりになったことに気が付いた。
『あ!! ちょっと待ってくださいってば!! 莉緒先輩!! あー…… もう!!』
 一人で何をすればよいというのか? あたしはげんなりした気分で周りを見た。お昼前
で浮き立つ構内は、新入生と勧誘の上級生であふれ返っている。
『仕方ないわね、もう。実績だけでも作るか』
 諦めて気合を入れ直した時だった。背後から、男の人の声で呼びかけられる。
「椎水さん」
 それが同じ学年の山田の声だったので、あたしはパッと振り向いた。
『山田? お疲れ。どう? 首尾の方は』
 そう聞くと同時に、彼が横に見知らぬ女の子を連れていることに気付く。
『へえ? もしかしてその子、山田がゲットしたとか? やるわねーアンタも』
647/7:2014/05/05(月) 14:20:56.33 0
 一年前はただただ大人しい印象しかなかった山田が随分進歩したものだと感心するも、
彼は首を振った。
「いやいや。声掛けたのは野上さんだから。僕も頑張って声掛けてるけど、やっぱり先輩
たちみたいには上手く行かないし」
『そっか。エスコートか。莉緒先輩なんてあたし残して一人で新入生連れてっちゃうしさ。
あたしも通衣先輩が良かったなー』
 ちょっと愚痴ってから、あたしは新入生を話題から置いてけぼりにしていることに気が
ついた。慌てて声を掛ける。
『びっくりしたでしょ? いきなり声掛けられて。何か悪い商法かなんかと間違っちゃうよね』
『いえ。そんなことは、ありませんけど』
 ゆったりとした口調で答えて、彼女は顔を上げた。そしてスッとメガネを外す。その顔
を見た瞬間、あたしは凍りついた。
 なぜならその女の子は、高校時代にあたしが入っていた創作文芸部の二年下だった、静
内瞳美だったからだ。


続く。
65ほんわか名無しさん:2014/05/05(月) 22:31:40.75 0
これは期待
66ほんわか名無しさん:2014/05/07(水) 05:50:59.84 0
続きサクッと7レス行きます
671/7:2014/05/07(水) 05:51:40.93 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その2〜

「どうかした? 椎水さん」
 凍りついたあたしを訝しく思った山田に聞かれ、あたしは慌てて首を振る。瞬時にあた
しは、今この場で何をしなければならないか気が付いた。
『な、何でもない。は、初めまして…… 良かったらゆっくり見ていってね。楽しいサー
クルだからさ』
 すると、静内さんがわずかに小首を傾げて呟く。
『初めまし……て……?』
 彼女がおしゃべりな子でなくて良かったとつくづく思う。なぜならあたしは、別府君と
高校時代同じ部活に入っていたことを隠しているからだ。無論、後輩である彼女はそれを
知っているから、いきなり関係をバラされたらとんでもなく面倒なことになる。
「まあ、ここで立ち話もしょうがないしさ。とりあえず行こうか」
 山田が彼女をうながして先に行こうとする。一瞬あたしは、何の説明もせずに彼女と別
れていいのか迷った。しかしすぐに結論が出る。部のブースでは別府君がガイダンス担当
だし、あいつが上手いこと説明してくれるだろう。
『そうね。戻ったら……色々おしゃべりしよ。あたしはまだ勧誘あるし。それじゃ』
『待って、ください』
 戸惑いがちに、しかしはっきりとした声で静内さんが制止した。あたしたちは二人とも
その言葉に魔法が掛かったように止まる。
『あの、こちらの、男性の先輩には、申し訳ないんですけど』
 その時あたしと、多分山田の脳裏にも、彼女が勧誘を拒むのではという予感が過ぎった。
あたしにはもう一つ、そう考える根拠がある。なぜなら静内さんは、高校時代やたらとあ
たしに対してキツい物言いをする子だったから、あたしがいるから拒否するというのは十
分理由になる。
 しかし、その予感はあっさりと外れた。
『できれば、その…… 連れて行って、貰えるのでしたら、女性の方の方がいいかなって。
もし、入部することを考えたら、同性の目線の方が、参考になるかもと思って』
 横で山田が安堵の吐息を漏らすのが聞こえた。
682/7:2014/05/07(水) 05:52:33.27 0
「良かった。断られるんじゃないかって思ってドキドキしたよ。もし連れて行く最中にお
断りされたりしたら、僕が君に変なことしたんじゃないかって絶対疑われるからね」
 それに静内さんがフルフルと首を振る。
『そんなこと、ないです。ただ、女の人からの方が、同性の目線から、部の楽しさとか聞
けるのかなって、そう思って』
 山田は頷いて穏やかに微笑んだ。
「そうだね。それじゃあここは椎水さんに任せて、僕は勧誘に戻るよ。野上さんたちもま
だ頑張ってるし」
 軽く手を上げる山田に、静内さんはペコリとお辞儀をした。
『すみません。まだ、入るかどうかは、全然決めていませんけれど、少なくとも、今日は
お世話になりますので、また後ほど』
「そんな、しゃちほこばらなくていいよ。体育会系みたく上下関係もそこまで厳しくはな
いしさ。ウチの部に行けば多分同じ一年生の女子もいると思うからさ」
『はい。ありがとう、ございます』
 二人のやり取りを、あたしは何だか遥か遠い場所からの傍観者のような、そんな気分で
眺めていた。


『先輩』
 静内さんに声を掛けられて、あたしはハッと気を取り直した。そして自分の今やるべき
ことを思い出す。ここで下手を打って彼女をとり逃すなんてことがあったりしたら、山田
や野上さんなどから猛烈なバッシングを受けること間違いなしだ。
『え、えーと…… とりあえず行こうか』
 ゆっくりと歩きつつ、何を話せばいいのか考えてみたが、ちょっと頭が混乱してあたし
は上手く言葉が出て来なかった。高校時代の後輩なのだから、もっとフレンドリーに話せ
ばいいのだが、同じく後輩の別府君との関係を部のみんなに内緒にしていることもあり、
どこから話をすればいいのか頭を必死に巡らせていると、先に彼女から先制のジャブが来た。
『私のこと、忘れたわけじゃありませんよね? 椎水先輩』
693/7:2014/05/07(水) 05:53:30.04 0
 冷たく刃のような鋭い声に、あたしは背筋を思わず伸ばしてしまったが、そこは気を取
り直して笑顔を見せる。
『も、もちろん。久しぶり。静内さん』
 しかし彼女はニコリともせず、ジッとあたしをまっすぐに咎めるような視線のままで口
を開いた。
『どうして、椎水先輩がここにいるんですか?』
『どっ……どうしてって……』
 あたしは思わず口ごもった。高校時代は二こ下だった後輩に完全に気おされているのを
自覚する。
『そ、そりゃあちゃんとこの学校受験して、合格したからじゃない。で、まあその……広
告研究会に入ったのはさ。ちょっとまあ、複雑な事情があって……多分、誰かが面白おか
しく脚色して話すとは思うけど……』
 その経緯は自分から口に出す気になれなくて、あたしはごまかした。しかし静内さんは
怒ったように首を振る。
『そんな事を、聞いているんじゃありません。別府先輩が通っているはずの大学に、何で
椎水先輩までいるんですかと。別府先輩が入っているはずの、広告研究会に、何で椎水先
輩がいるんですかと。そういう事を聞いているんです』
 まっすぐにぶつけられた質問に、あたしは背中の辺りにイヤな汗がしみ出ているのを感じた。
『……そんなの……決まってるじゃない』
『決まっている?』
 あたしの言葉に、彼女はわずかに首を傾げる。あたしは気持ちを落ち着けようと、一つ
深くため息をつく。そこに、わざとうんざりしているような雰囲気を付け加えた。
『偶然よ、偶然。たまたまあたしの受けた第一志望の大学に別府君も合格して、入学して
からだって全然顔を合わせなかったのに、連れて来られたサークルに別府君もいた。それだけよ』
『そんな偶然、あり得ないと思います』
 あたしの答えを、彼女は間髪入れずに一刀両断に否定した。しかし、前者はともかく後
者は全く嘘偽りない事実なのだから仕方がない。
704/7:2014/05/07(水) 05:54:02.14 0
『ホントよ。何だったら後で別府君に聞いてみればいいじゃない。新入生相手にガイダン
ス役やってるから』
 肩をすくめてみせる身振りで、言葉に信憑性を持たせてみせる。それからあたしは、逆
にこっちから質問をぶつけてみた。
『それより、静内さんは何で別府君がうちの大学で広告研究会に入ってるって知ってたの?』
『そんなの、決まってます。別府先輩が、教えてくれたからです』
 つまらなさそうに、彼女は簡潔に答えた。
『別府先輩は、卒業後もたまに、顔を出してくれましたから。大学生活のこととか、色々
と聞いたんです。参考にと思って』
 横を歩く彼女から見えないように顔を背けつつ、あたしは渋い顔をした。別府君てば、
あたしの知らないところでそんな事を静内さんにしゃべっていたのかと。何となく面白く
ない気分でいると、横で静内さんがボソリと付け加える。
『もっとも、私が一年生の頃の部長さんは、卒業後一度も顔を出さなかったですけど』
 そのイヤミに、あたしはうぐ、と思わず呻いてしまう。
『だ、だってしょうがないじゃない。あたしはほら。一浪したしさ。浪人生の分際でほい
ほい遊びに行けるわけないし。予備校だの模試だので大変だったんだから……』
『安心してください。来て欲しかったわけじゃ、ありませんから』
 サラリと毒を吐く彼女を、あたしは横目でチラリと見る。高校時代から表情に乏しい子
ではあったが、あたしの前だとともすれば仏頂面とも取れる表情を見せていた。今もそれ
が何となく窺える。
『そ、それにしてもすごい偶然よね。同じ大学……ってのはまだしも、静内さんまで同じ
サークルに勧誘されるなんてさ。別に別府君から誘われて……とか、そういうことがあっ
たわけじゃないんでしょ?』
 何か話題は、と思ってあたしは思いつきを口にする。本当はストレートにうちの大学を
受けた理由とか知りたかったけれど、口にするのがはばかられたのと、答えを聞くのが少
し怖かったので、婉曲に理由が知れれば、という思いもあった。
『偶然…… といえば、偶然ですね。こちらから探さなくても、広告研究会の先輩に、勧
誘されるなんて。おかげで、色々と助かりました』
『え? それってどういう意味?』
715/7:2014/05/07(水) 05:55:10.21 0
 最初からうちの部に入る気でした、と言わんばかりの返事にあたしは驚いて聞き返す。
しかし彼女はそれを無視し、逆にあたしに質問をぶつけて来た。
『そんなことより、椎水先輩。さっき、山田先輩……でしたっけ。その人と一緒にいた時、
私と知り合いだと言う事を、ごまかしてましたよね? それって、何でですか?』
 こちらに向けられた視線は、特に非難しているとかそういう風には感じられなかった。
しかし視線の鋭さは答えないことは許さない、と物語っている。どのみち、別府君と会う
前に彼女にも協力してもらわなければならない事だ。
『……実はさ。あたしと別府君が高校時代同じ部活だったっての、みんなに内緒にしてるんだ』
『何で、ですか?』
 当然のように、彼女は理由を問うて来る。あたしは一つため息をついた。
『だって、高校時代二年間同じ部で、今また同じサークルに入った、なんてなったら絶対
仲を疑われるわよ。何にもないのにそういうの、イヤだし。いちいち説明するのも面倒だ
から、お互い初対面だったってことにしようって決めたの。だから、さっき静内さんに知
らない人のフリをしたのも、とっさにヤバいなって思って。気に障ったなら、謝る』
 ただでさえカップリング扱いされることが多くてうっとうしいのに、と内心で付け加え
た。もっとも、キスまでしている男の子との仲を何にもない、とは普通言わないだろうが。
『なるほど。卑怯者の、椎水先輩らしい、考え方ですね』
『は?』
 さすがにあたしも今の言葉にはイラッと来て口調が荒っぽさを帯びた。あたしに対して
はやたらと物言いの厳しい彼女だが、さすがにそこまで直接的な表現を使われては、相手
が後輩の女子といえど、怒りの感情が表に出るのは抑えられなかった。それを感じたのか、
静内さんから謝罪の言葉が返って来る。
『申し訳ありません。本当のこととはいえ、先輩に向かって、言う言葉ではありませんでした』
 どうやら彼女は、自分の言葉を否定するつもりは全くないようだった。これでは謝られ
た意味が全くない。
726/7:2014/05/07(水) 05:56:18.58 0
『卑怯者ってのはよく分からないけど。でもこれは別府君も納得してることだし。だから、
その…… 静内さんにも、協力して欲しいんだけど…… お、お礼なら何でもするからさ。
出来る範囲で、なら』
 不愉快な気分を押し込め、先輩であるというプライドも捨てて、あたしは頭を下げてお
願いした。ここで彼女に機嫌を損ねられてバラされたりしたら、隠していたことも含めて、
確実に別府君とあたしは恋人同士扱いされるだろう。
『分かりました。その話、受けます』
 意外とあっさり、素直に静内さんはコクリとうなずきながら承諾してくれた。
『マジで? ありがとう。助かるわあ』
 安堵するあたしを、静内さんは厳しい目つきで睨み付けると、素っ気無い口調で切り返した。
『椎水先輩のためじゃ、ありません。別府先輩が、あなたなんかと、恋人扱いされるのは、
見るに耐えないからです』
 またしても失礼な物言いをされて、再度あたしは頭に血が上りそうになった。いくらな
んでも、あなたなんか扱いされるほど自分がヒドい人間だとは思わない。しかしここで怒っ
ては色んな意味でマズいので、今度はあたしもグッとこらえることが出来た。正直、自分
でも随分と大人になったとは思う。
『と、とにかくさ。感謝はしてるから…… お礼、何がいい?』
『椎水先輩からは、何もいりません』
 好意の申し出は、冷たくつっぱねられてしまった。高校の時もこんな風に扱いにくい子
だったと、あたしは昔を振り返って思う。あたしにこういう態度を取り始めたのはいつか
らだったか? 結構最初っからこうだったように思う。
『これって、別府先輩も、望んでやってるんですよね?』
 静内さんからの確認に、あたしはうなずく。
『望んでかどうかはともかく、納得はしてるわ』
 それで分かったというように彼女はうなずき返した。
『そうですか。それならお礼は、別府先輩から頂きます。別府先輩のために、私はこの話
を、受けたんですから』
737/7:2014/05/07(水) 05:57:16.75 0
『ちょ、ちょっと待ってよ。確かにあたしと別府君の間の約束事だからって、頼んでるの
はあたしなのに別府君からお礼を貰うってのは筋が違うんじゃ――』
 静内さんが別府君に何を要求するのか、ちょっとイヤな予感がしてあたしは慌てて引き
止めた。しかし彼女はあっさりと正論で突き放してくる。
『椎水先輩って、自分でやるべきことを、しょっちゅう別府先輩に、押し付けてたじゃな
いですか。だったら、この場合も、それが成立するんじゃないですか? アンタが同じ部
に入らなければ、いちいちこんな苦労をする事もなかったんだから、彼女へのお礼もアン
タがしなさいよねって』
 いかにもあたしが言いそうなことを、静内さんは口真似で言って来た。しかし今回ばか
りは簡単に飲むわけには行かず、あたしは食い下がろうとした。
『でも、別府君にだってお願いしてるのはあたしからなんだし……』
 彼女のうんざりしたような目つきが、あたしの言葉を消し飛ばした。
『椎水先輩。お礼って言うのは、貰う側が嬉しくないと、意味がないんです』
『そ……そりゃそうだけど……』
 気おされつつもなお納得行かない私に、彼女は畳み掛ける。
『私は、別府先輩から、貰えるお礼が嬉しいんです。椎水先輩に望むのは、一つだけです』
『あたしに望むものって…… 何よ?』
 何か聞いちゃいけないような気がしつつも、あたしはつい口に出してしまった。すると
彼女はジッと真顔であたしの顔を見つめて、言った。
『私の、邪魔を、しないでください』
 あたしが思わずたじろいだ隙に、静内さんはクルリと背を向けてから、あたしに向かっ
て振り向いた。
『行きましょう。先輩も、忙しいんですよね? もう、話は、済んだはずです』
 静内さんの言葉からは、明確にこの話題は打ち切りだという意図が感じられた。
『あ…… う、うん……』
 釈然としないままあたしはうなずいた。果たしてこれからどうなるのだろうか? 先の
ことを考えても、どうせ悪いことしか思い浮かばないような気がして、あたしは考えるの
を放棄したのだった。


続く。
連休終わってしまった……
74ほんわか名無しさん:2014/05/08(木) 02:05:11.57 0
何かドギツイ後輩出てきたな
つづき楽しみ
75ほんわか名無しさん:2014/05/09(金) 20:10:49.17 0
お題
つ・ツンデレは太いのが好きらしいです
76ほんわか名無しさん:2014/05/09(金) 20:14:44.12 0
乙!!続き気になる!
77ほんわか名無しさん:2014/05/10(土) 17:30:06.05 0
>>73の続き行きます
781/5:2014/05/10(土) 17:31:12.99 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その3〜

 彼女、がやって来たのは、ちょうど僕が勧誘されてきた同じ学科の男子のガイダンスを
終えた時だった。
『別府君』
 先輩の声に顔を上げた。休む間もないのかとちょっと乗らない気分で先輩と、その隣に
いる女の子を見た瞬間、僕は凍りついた。
『別府、先輩』
 その女の子は僕の高校時代、部活の一年後輩だった静内瞳美という子だったからだ。
「静内……さん?」
 思わず彼女の名が口を突いて出る。すると彼女はコクンとうなずいた。
『はい』
 僕らのやり取りを見た先輩が、絶妙なタイミングで割り込んでくる。
『ちょっと、何? あんたたち、知り合いなの?』
 それに彼女が振り向いてうなずく。
『はい。別府先輩…… 高校時代、同じ部の一つ先輩だったんです』
『うっそぉ? マジで!? ちょ、ちょっとちょっと!! 聞いた今の?』
 先輩が、僕の横で同じように新入生のガイダンス役をやっていた二年の音羽翠という女
の子に振る。しかし、ワザとらしい。
『え? あ、うん。ちょっとびっくりだよね。別府君、誘ってたとかそんな雰囲気じゃな
いみたいだし。偶然……なの?』
 音羽さんの質問に、彼女はフルフルと首を振った。
『いえ。前に別府先輩が、遊びに来てくれた時に、大学とか、サークルのこととか、色々
と、伺いましたから』
『え…… じゃあ、その……もしかして……』
「ちょっと待って。今、音羽さん変なこと考えてない?」
 僕は慌てて彼女の考えをストップさせた。明らかに誤解を生むこの展開に、出来る限り
素早く対処しなければならない。しかし僕が何か言うよりも早く、静内さんが助け舟を出
してくれた。
792/5:2014/05/10(土) 17:31:48.91 0
『私、人見知り、なんです』
『え?』
 唐突に話し出した静内さんを音羽さんが少し驚いた顔で見る。すると静内さんはいかに
も話しづらい、といった雰囲気でボソボソと続ける。
『えっと…… 別府先輩の、大学の話とか、聞いた時に…… 楽しそうだな、とは、思っ
たんです。だけど、一人で、その、全然知らない大学とかだと、友達も、あまり作れない
んじゃないかって。だから、その、別府先輩と同じ大学で、同じサークルに入れば、別府
先輩から、人間関係を広げていけるんじゃないかって……』
 恥ずかしげに語る彼女の様子に、若干僕は違和感を覚えた。静内さんはあまり感情を表
に出すタイプではなく、一見内気に見えるが、これでかなり芯はしっかりしていて、自分
の意見を言うときは常に相手の顔を見てハッキリ物を言うからだ。とはいえ、確かに社交
性があるとは言えないので、それを否定するだけの材料も僕は持っていなかった。
『へぇ〜。そうなんだ。別府君、頼りにされているんだね』
 横で音羽さんが感心した声を上げる。しかし、額面どおりに信じてくれているかどうか
は別問題だが。
『……高校のときに、声を掛けてくれたのは、別府先輩でした。別府先輩がいてくれたか
ら、先輩後輩、友人たちとの、素敵な関係が、持てたんです』
『うんうん。何となく分かるわ。私も内気で、人と話すの苦手だったけど…… でも、今
こうして新入生相手のガイダンスとかしてるのって、この部に入ったからだし』
 音羽さんがしきりに同意してみせるのは、共感を呼ぶことでうちの部に引き入れようと
いう作戦なのだろうか? もっとも、言葉自体に嘘はないけれど。
『そういう訳ですので、別府先輩。また、お世話になります』
 ペコリと頭を下げる静内さんに、僕は恐縮して手を振った。
「そんなかしこまることないってば。とりあえず、単位の取り方とか、先生達のこととか
話して、その後でうちの部の事を説明するから。正式な部員になるまでは、君達はお客様
だからね。上級生にそんなに気を遣わなくていいから、ゆっくり楽しんで行くといいよ」
803/5:2014/05/10(土) 17:32:36.24 0
 もはやうちの部に入ることを決めているような口調の彼女に、僕はちょっと抑えるよう
な言い方で返す。そして、ふと先輩のことが気になった。視線だけを静内さんの後ろに向
けると、案の定厳しい顔でこっちを見つめている。怖いなあ。
『あ、そうだ』
 その時先輩が、まるで僕の視線に呼応するかのように声を上げた。
『別府君がその子をちゃんと扱えるかどうか心配で見てたけど、莉緒先輩にホントは待っ
てるように言われてたんだった』
 パッと携帯を取り出し、画面を確認すると先輩はいかにもヤバッという顔をした。
『うわ。超怒ってる。早く戻らないと。それじゃ別府君。アンタが失敗してその子が入ら
なかったら、あたし達の苦労が水の泡になるんだからね。しっかりやんなさいよ』
「分かってるって。といっても、僕なんて無難な対応しか出来ないからね。そう心配しな
いでも大丈夫だって」
 先輩は、フン、と若干ため息の混じった息を漏らす。
『ま、そうよね。静内さん……っと。それじゃあ、また後でね』
『はい。よろしくお願いします』
 一切余分なことを言わない先輩と、珍しくしおらしく先輩に接する静内さんに僕は違和
感を覚えずにはいられなかった。普段の先輩なら、もう二言三言僕を謗るようなことを言
うだろうし、静内さんも高校時代はこっちが見ててハラハラするほど先輩に対して厳しい
ことばかり言っていた。恐らく何らかの口裏合わせがあったのだろうけれど。
『別府君』
 先輩が立ち去るのと同時に、横から音羽さんが声を掛けて来た。
『私、今手持ち無沙汰なんで、ちょっと休憩ついでに一年生とおしゃべりしてくるね。誰
かが勧誘して来たら、また戻るから』
「うん。それじゃあ宜しく」
 僕が同意すると、彼女はヒラヒラと手を振ってから席を立ち、その場を離れていった。
『あの先輩の人。私達に、気を利かせて、くれたんでしょうか?』
「へっ!?」
 静内さんの言葉に、僕は思わず変な声を上げて彼女に向き直った。いつの間にか静内さ
んは、長テーブルの上に両腕を置き、ちょっと前のめりになっている。そのせいで、顔の
距離がちょっと近い。
814/5:2014/05/10(土) 17:34:04.00 0
「い、いやその……そんなんじゃないと思うよ。まあ、音羽さんは控えめな性格だから、
知り合い同士の会話に口を挟むのも悪いかなとか、そういう意味では気を遣ったと思うけど」
 間違っても、付き合ってる仲と勘違いしているわけじゃないと、僕は願望も込めてそう
主張した。
『そうですか。でも、ありがたいです。先輩と、二人きりでお話出来るのは』
 顔をうつむかせ、視線だけ上目遣いに僕を見つめる。静内さんのそんな仕草が僕の心臓
を自然とドキドキさせた。そんな気持ちを僕は会話でごまかそうとする。
「えーとさ。その…… 先輩――って、椎水先輩とはさ。話ついてるの?」
 さっきのやり取りで何となく推測はついているものの、僕は確認の為に聞いた。すると
静内さんはあからさまにつまらなさそうな顔をする。
『はい。あの人のためだけだったら、そんなの、お断りですけど。でも、別府先輩も困る
だろうと思ったので』
「ハハ…… ありがとう」
 いつもの静内さんが出たことで、僕は複雑な気分で笑った。正直、静内さんが先輩に厳
しい態度を取ることを快く思っているわけではない。しかし、表向きの理由はもっとも過
ぎて、言い返せないわけだけど。
『それに、私にとっても、今の状況は、好都合ですから』
「え?」
 その言葉の意味が分からず、僕は聞き返す。すると静内さんは顔を上げた。その表情が
わずかに微笑んでいる。
『だって、私の方が、別府先輩と過ごした時間が長い、ということですから。あの人より
も。だから、私がいくら別府先輩の傍に寄っても、何も言わせません。たかが、一年程度
の付き合いで、知った風な口は、利かせません』
 その物言いがちょっと怖くて、僕は思わず絶句してしまった。そんな僕の気持ちに気付
いたのか気付かないのか、彼女は無言でメガネを手に取り、スッと掛ける。そして、丁寧に
お辞儀をした。
『それじゃあ別府先輩。ガイダンスのほう、宜しくお願いします』
「あれ? 静内さんって、メガネなんてしてたっけ?」
 僕の問いに、彼女はわずかに肩をすくめる。
825/5:2014/05/10(土) 17:38:12.29 0
『もともと視力は、あまり、良くなかったんですけど。受験勉強で、悪化したので、作り
ました。似合いますか?』
「うん。綺麗だと思うよ」
 大人びた静内さんには可愛いというより綺麗という形容詞の方が合う気がしてそう答え
る。すると彼女は、珍しく嬉しそうに微笑んだ。
『ありがとう、ございます。正直、別府先輩には、そう言って欲しくて、頑張って選びま
した。実際に、褒められて、すごく嬉しいです』
 どんな男でも、彼女みたいな綺麗な女子から言われたら恐らく胸を打ち抜かれるような
衝撃を受けるだろう一言は、僕の心にも衝撃を与える。
「と、とにかく始めようか。説明会で貰った資料あるよね? それ、出してくれる。見な
がら説明するから」
『はい』
 極めて事務的に説明を進みつつ、嬉しそうな彼女を前にして僕は、これからの大学生活
に不安を禁じえないのだった。


続く
次回は新歓コンパ偏
83ほんわか名無しさん:2014/05/12(月) 19:42:27.31 0
お題
つ・ツンデレが代表に選ばれたら
84ほんわか名無しさん:2014/05/13(火) 22:12:40.21 0
海外組のツンデレとか
85ほんわか名無しさん:2014/05/14(水) 14:54:04.05 0
ツンデレと一緒にサッカー観戦がしたい
細かいルールが分からないツンデレにあれこれ教えてあげてウザイって罵られたい
応援してるチームがゴール決めて、抱き合って喜びたい
86ほんわか名無しさん:2014/05/15(木) 07:19:11.39 0
>>82の続きいきます
871/8:2014/05/15(木) 07:20:45.30 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その4〜

『ほら。別府君、こっちこっち』
「何ですか、広上さん。トイレから帰ってくるなりいきなり拉致らないでくださいってば」
 広上さんお得意の、肩を抱いて胸を当てつつ、それで無抵抗にされた男が連れて行かれ
た先は、ひたすら酒を注がれる修羅場という。新歓くらいはゆっくり一年生の相手が出来
るとばかり思っていた僕は、うんざりする気分で連行されていた。
『あ、莉緒せんぱーい。お疲れ様です』
 手を振っているのは、僕と同じ二年の調ちゃんだ。というか、いつもなら酒豪の上級生
が群れる席のはずが、面子を見ると広上先輩以外は同学年だ。あと、もう二人ばかり借り
てきた猫のようにチョコンと座っている女の子がいた。一人は、今日初めて会った一年の
女の子で、もう一人は――静内さんだった。
「よう、別府。お前、ここな。ほら、座れって」
 脇谷君という同学年の男が、静内さんの隣を指す。まさに、用意されたようにその席が
空いていた。
『さてと。まずは自己紹介よね。千種ちゃん、お願い』
 静内さんを挟んで反対にいた女の子が立ち上がった。
『あの、私、小牧千種っていいます。宜しくお願いします』
 ショートボブの目がクリッとした可愛い感じの女の子だなと思った。ミリタリー系ショー
トパンツにゆったりした袖なしのTシャツを着て、上からカーディガンを羽織っている。
なかなか活発そうなイメージを受けた。
「別府タカシです。とりあえず今日はゆっくり楽しんでいって、良かったら明日もぜひ顔出して」
『はい。ありがとうございます』
『じゃ、ま。とりあえず別府君来たから乾杯しとこうよ。静内さんも』
『あ、はい』
 静内さんがグラスを手に取る。中に入っているのはソフトドリンクのようだ。多分。一
方で小牧さんは明らかに黄金色の泡立つ飲み物が入っている。僕の視線に気付いたのか、
彼女はちょっと照れたように笑った。
『あ。私、一浪なんで気にしんといて下さい。誕生日も四月だもんで。まあ、ちょっとフ
ライングですけど』
882/8:2014/05/15(木) 07:21:30.61 0
 果たしてそれが本当なのかどうかは分からないが、ここで突っ込むのは野暮というもの
だ。ちなみに、新入生に関しては数年前から酒を無理に勧めるのはご法度ということになっ
ているらしい。
『ほんじゃ、まあ行きますか。ここで出会った縁にかんぱーい!!』
『「かんぱーい」』
 一応現役最上級生の広上さんが音頭を取りみんなが唱和する。さすがにコンパも大分進
んでいるだけに、一気に干したのは広上さんと脇谷君だけだった。
「んだよ。別府、トイレ行ってきたばかりだろ? グーッといっとけよ。広上さんだって
飲んでんのに」
『そーそー。とりあえず飲んどいたほうがいいわよ。これからのこと考えたらね』
 広上さんが何か意味ありげな事を言う。
「一気飲みばかりやってたら、一年生がそういう部活だって萎縮しちゃうかもしれないだ
からさ。一応周りは気にした方がいいと思って」
「はい。言い訳はいいから、やり直しな。千種ちゃんと静内さん、悪いけど付き合ってく
れる? 今から別府が男見せるから」
 一年の、しかも女子二人を乾杯に引き出すなんて、脇谷君もズルいと思う。引くに引け
なくなり、僕は二人にグラスを向けた。
『別府先輩。私は、別に無理されなくても、いいですけど』
 静内さんが心配そうな目を向けて小声で言う。僕は安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だって。まあ、いつもの事だから」
『ほらほら。それじゃあ今日の出会いに、かんぱーい』
 調ちゃんが調子に乗って乾杯の音頭を取る。考えてみたら、上級生で飲み干してないの
はこれで彼女一人だけなのにと、若干恨めしく思いつつ僕は二人にグラスを向けた。
「かんぱーい」
『かんぱーいっ!!』『かんぱい』
 並々と注がれたビールを多少無理やりに喉に流し込む。フーッと大きく息を吐くと、小
牧さんが立ち上がって傍に寄り、瓶ビールを差し出す。
『お疲れ様でした、別府さん。カッコ良かったですよ』
「あ、ありがとう」
 注がれたビールを今度は軽く口だけつけて、僕は席に座る。顔を上げたところで、静内
さんを除く周りの目が、一斉に僕に注がれているのに気がついた。
893/8:2014/05/15(木) 07:22:29.38 0
「はい? な、何ですか?」
 その異様な雰囲気に思わず問い質すと、調ちゃんが好奇心を満々にたたえた顔でうなずく。
『また。何ですか? じゃなくてさ。全く空々しい。分かってるくせに』
「えーと……」
 よくよく見てみると、他の二人はもちろん、会ったばかりの小牧さんまで同じような表
情で僕と静内さんを囲んでいる。何となく予感はしていたが、僕はあえてとぼけることにした。
「分かってるくせにと言われても、何のことだかサッパリなんだけど」
「とぼけんなよ。静内さんって、お前と高校の部活が一緒だったらしいじゃん。でもさ、
本当にそれだけの関係なのかって、お前の口から聞こうと思ってさ」
『まさか、静内さんを問い詰めるわけにも行かないしねぇ。でも、別府君なら遠慮なく尋
問出来るし。はい。まずは一献』
 広上さんが怖いことを言いながらビールを差し出す。女子の先輩からのお酌を断るなん
て無謀なことは出来ず、僕はグラスを空にしてから両手で差し出す。ビールが注ぎ終わる
のを待ってから、脇谷君が口火を切った。
「あのさ。静内さんに聞くんだけど、コイツってどんな先輩だったとか、教えてくれる?」
『とても、頼りになって、しっかりした先輩、でした。尊敬出来る人だと、思います』
 彼女特有のゆったりした、しかしハッキリした口調で静内さんが答える。すると調ちゃ
んがからかい気味に僕を褒めてきた。
『すっごーい。別府君、尊敬されてんだ。どうなの? こんな可愛い後輩からこんな風に
思われてるのって』
「いや。そりゃまあ、嬉しいですけど」
『何かちょっと新鮮よね。別府君って、純朴そうで可愛くてついイジメたくなっちゃうイ
メージだったんだけど、後輩から見るとまた違うんだ』
 ニヤニヤ笑いつつ、広上さんが手を伸ばして僕をつつく。
「やめて下さいってば。その指の動きもなんかイヤらしいです」
『別府君てさ。ちょっとスキンシップすると、すぐ赤くなっちゃうんだよ? ホント、可
愛くってさ』
 楽しげな広上さんを、静内さんがまっすぐに見つめている。表情は特に浮かべていない
だろうが、僕には何となく、彼女が面白くない気分でいると察することが出来た。
『じゃあさ。別府君は静内さんのこと、どう思ってみてたの? 高校の時とか』
904/8:2014/05/15(木) 07:23:29.71 0
 調ちゃんが今度は僕に質問を振って来た。
「いや。真面目だし、素直でいい子だなと思ってました。あと、大人しそうですけど芯は
しっかりしてるので、僕の後に部長を任せましたし」
「別府。何、優等生な発言してんだよ」
 脇谷君が呆れたようにツッコミを入れて来た。
「俺らが聞きたいのはそーいうことじゃねーだろ。女の子として、どう見てるかって話で
さ。聞くところによると、お前追っかけてウチの部まで来たって話じゃん」
『いえ。あの、野上さんに誘われなければ、一人だと多分、来られなかったと、思います。
別府先輩に、この学校に来ることも、連絡してなかったですし』
 脇谷情報を静内さんが若干訂正する。実際、新歓の時の部の雰囲気は活気に満ち溢れて
いて、静内さんが自分から声を掛けてくるのは難しかっただろうと思う。
「でも、別府がいるからウチの学校来たっつーのはマジなんだろ? 声掛けられなくても、
昼に一人で外にいたら、勧誘されるかもとか、そーいう期待はなかったの?」
『いえ、あの……』
 静内さんが困ったようにチラリと僕を見る。彼女にしてはこういう戸惑いを見せるのは
珍しいと思うが、やはりあからさまな恋バナに戸惑いを隠せないのだろうか?
『コラ。静内さんを困らせるんじゃない!!』
「あいてっ!! す、すいません」
 広上さんに水平チョップを首に食らい、脇谷君は顔をしかめて頭を下げる。
『全く、もう。せっかく入部が濃厚な子なのに、悪い印象持たれちゃったらどーすんのよ。反省!!』
 ビール瓶を出され、脇谷君がビールを一気に飲み干す。それを脇で見つつ、調ちゃんが
再度僕に質問を振る。
『で、どうなのよ? 別府君としてはこれだけ慕われてればやっぱり気になるものなんじゃ
ないの? それともただの後輩としてしか見てないとか?』
 こういう質問は非常に困る。無難な答えというものが皆無に等しいからだ。
『うーん…… そりゃ、僕だって男ですから、女の子の後輩に慕われれば嬉しいとは思い
ますけど』
『けど、何?』
 広上さんに先を促されたものの、これ以上何と答えればいいのか。下手なことを言えば
まるで告白してるみたいになってしまうし、逆にフッてしまうことになる。僕が答えに窮
していると、脇谷君が焦れて文句を言ってくる。
915/8:2014/05/15(木) 07:25:04.92 0
「あー、もうハッキリしない奴だな。優柔不断なとこ見せてると、彼女に嫌われるぞ。つー
か飲め。酔えば口も回るだろ」
 その言い分にはちょっと抗議したくもあったが、グダグダ言い合いしていると飲む量が
増えるだけなので、僕は大人しくグラスをあおる。
「で、どうなんだよ? 素直に嬉しいなら嬉しいでいいじゃん。何か困ることでもありそ
うな雰囲気だぞ? さっきの言い方じゃ」
「いや。別に困ることなんてないけどさ。変に勘違いしたくないっていうか……口にする
の難しいんだよ」
 男同士なら分かって欲しい、と願いつつ僕は返事をごまかそうとする。出来れば、ここ
でうかつな事を言って却って彼女に嫌われたくないと僕が思っていると勘違いしてくれる
といいのだが。尊敬は必ずしも恋愛感情とは違うのだから、もし僕が静内さんを普通に好
きだとしても、やはりうかつな事は言えないと思う。
『あの、この話は、もういいでしょうか?』
 唐突に、静内さんが切り出した。みんなが驚いて彼女を見つめる。広上さんが代表して
即座に謝罪した。
『ゴメン。もしかして不快だった? それなら謝るけど』
『いえ。私は、構いませんけど、別府先輩が、困られているみたいなので。私との関係を
聞かれることで、別府先輩に迷惑が掛かっていますから』
 言い終えると彼女はグラスに残っていたソフトドリンクを一気に飲み干した。冷静なが
ら断固とした口調だったが、静内さん的には口にするのにかなり緊張したようだった。
『そっか。じゃあまあ、この話題はいったんおしまいにしよ。考えてみたら小牧さんは全
然関係ない話題だし。ごめんね。何かほったらかしみたいで』
『あ、いえ。あたしは全然構わんですけど。何かやり取り見とったら、仲良さげでええなーっ
て感じに思いましたし』
 若干はにかむような笑顔で、小牧さんが首を振る。それを見て、広上さんがポンと手を叩く。
『よし。それじゃ、ちょっとなんかゲームとかやろっか? 古今東西ゲームとかさ』
『何かそれ、合コンのネタっぽくないですか? ていうか、莉緒先輩また行って来たでしょ?』
 調ちゃんのツッコミに広上さんが不満げに口を尖らす。
『いーじゃない。また難しいお題とか仕入れてきたし。男は仕入れられなかったけどさ』
926/8:2014/05/15(木) 07:25:51.19 0
 広上さんが愚痴交じりに言うと、何か消化不良だったのか、脇谷君が恨めしそうに僕を
見て言う。
「にしてもうらやましーよな。今度はクールな美人後輩かよ。何で別府の周りって、何か
と女が集まるんだろうな」
『コラ。その話題はもうおしまいって言ったでしょ?』
「あいてっ!!」
 軽く広上さんに拳で頭を叩かれて、脇谷君がうめき声を上げた。しかし懲りずに話を続ける。
「ってぇ〜。聞くのはもうやらないっすよ。じゃなくて、何でコイツはやたら女に囲まれ
るんだろうなって話で」
『別府先輩って、そんなに、女の人に、モテるんですか?』
 その話題にはさすがに気を引かれたのか、静内さんが即座に乗ってきた。得たりとばか
りに脇谷君がうなずく。
「そーそー。モテるっつーのか、とにかく女といることが多いっていうのか、広上さんだっ
て、一番別府にくっ付くしさ」
『え? だって別府君って、胸とか押し付けると困った顔するのが可愛くて』
 いたずらっぽく広上さんが舌を出す。
「ようするに、無害っぽいってことですよね? それって、男としてはあまり嬉しくない
ような…… 僕みたいなのが実はスケベだった、なんてなってもキモがられるだけだし」
 ため息交じりの愚痴に、すかさず静内さんがフォローをくれる。
『いえ。男の人でしたら、程度の差はあれ、エッチなのは仕方ないかと思います。私は、
別府先輩が、仮に部屋にエッチな本とか、DVDを、溜め込んでいたとしても、幻滅したりしません』
『へえ。静内さんみたいなタイプって結構潔癖症かと思ってた』
 感心したような調ちゃんに、静内さんはちょっと恥ずかしくなったのか、うつむき加減になる。
『理解は、しています。それに、男の人に、そういう感情がないと、種として困りますし』
「グハーッ!! ホント、よく出来た後輩じゃん。もう片方とは正反対だな、全く」
 脇谷君の言葉に、またも静内さんが即座に反応する。
『もう片方って、どういう意味、ですか?』
 それには今度は調ちゃんが説明に回る。
937/8:2014/05/15(木) 07:26:37.83 0
『えっとね。あたしたちと同じ二年にかなみちゃんって女の子がいるんだけどさ。別府君
とは学科も一緒だから必修なんかで授業も一緒になる事が多くて、帰りの駅も一緒らしい
のよ。それで何かと一緒にいることが多いんだけど』
 その瞬間、静内さんの表情がわずかに強張ったように感じた。
『性格は正反対っていうか、事あるごとに別府君を悪く言ってばかりでさ。そのくせ文句
ばっかいいながらも、しょっちゅう一緒に組むんだけど』
「好きで組んでるわけじゃないわよ!! 男のクセにノート取るのとか綺麗だから、仕方
なく見せてもらってるだけなんだからーってか」
 先輩の口真似をして、脇谷君がニヤニヤ笑う。一方、静内さんは無表情なままだ。
『後で連れてこよっか? 多分、静内さんの別府君に対する人物評聞いたら、まなじり逆
立てて否定するから』
 調ちゃんは何も知らないだろうけど、そんなコブラの檻にマングースを放すような真似
は止めて欲しい。というか、争いに巻き込まれて食べられるのは僕だ。
『それには、及びません』
 静内さんの一言が、僕を窮地から救ってくれた。
『椎水さんでしたら、私を案内してくれた人ですから、多少は、知ってます。多少、ガサ
ツそうではありましたけど、親切な人かと』
 僕は驚きと新鮮さをもって静内さんの言葉を聞いていた。彼女が先輩を褒めるなんて初
めて聞いた。もっとも、今の彼女は先輩と出会ったばかりであり、その時の印象だけだと、
そう答えざるを得ないのかもしれないけれど。
『それに、感じ方は、人それぞれです。私には、別府先輩の、どこに問題があるのか、さっ
ぱり分かりませんけれど』
 彼女の答えに、脇谷君がハーッと感心したため息をついた。
「そこまでキッパリ言えるのって、スゲーよな。でもなんか、椎水の方がどう答えるのか
聞いてみたくはあるけどな」
『そうやって面白がってると、また静内さんに不快に思われるわよ。まあ、あたしも多少
聞いてみたくはあるけど……』
 たしなめるつもりで、広上さんがポロリと本音を漏らすのが聞こえた。チラリと横を見
ても、静内さんは別に不快そうでもなく、大人しくつまみに置いてあるお菓子を一つ手に
とって食べている。
948/8:2014/05/15(木) 07:27:10.07 0
『さてと。それじゃあゲーム始めるわよ。負けたら罰ゲームだからね』
 話が一段落したのを見て、広上さんがさっさとゲームに場を持っていく。それに脇谷君
が抗議の声を上げる。
「マジで? 汚いっすって。人酔っ払わして、頭回らなくしてから始めるなんて」
『うるさいわね。負けなきゃいーのよ。負けなきゃ。つかワッキー、先輩に抗議した罰で
一杯飲んどけ』
「ぐふっ!! ちきしょー」
 一気飲みする脇谷君を静内さんたちはどう見てるだろうかと、チラリと視線を走らせる。
すると彼女もまた僕に視線を送っていて、僕と目が合ったのを感じてわずかに笑顔を見せ
た。僕も笑顔でうなずいてから、視線を戻して静かに深いため息をついた。
 果たして、これからどうなるのだろうかと。


続く
95ほんわか名無しさん:2014/05/16(金) 21:23:22.46 0
板が重い


お題
つ・最近体重が増えたツンデレ
96ほんわか名無しさん:2014/05/16(金) 23:45:14.65 0
胸を増量すべくやけ食いしたが栄養は胸にはいかずお腹に行ってしまうちなみんかわいい
97ほんわか名無しさん:2014/05/17(土) 01:40:24.94 0
最終的にはタカシに胸を揉んでもらうしか……
98ほんわか名無しさん:2014/05/17(土) 12:10:31.33 0
お題

・貧乳で悩むツンデレ

・貧乳をからかうタカシ

・ツンデレの反応が可愛くてタカシは毎日ツンデレをからかっていました

・キレたツンデレ

・タカシの手を自分の胸に押し当てて
「あるもん!ちゃんとおっぱいあるもん!ほら!ほら!!」
 とタカシをまくし立てる貧乳ツンデレ

・予想外のツンデレ行動に呆然と胸を揉むしかないタカシ

・小さいながらに柔らかい胸に次第に興奮してきたタカシ

・タカシとは対照的にドンドン冷静になって恥ずかしくなるツンデレ

・タカシの興奮が限界に達する前に母が帰宅してお互いに生殺し状態

・翌日からまともにお互いの顔が見れなくなりました

・2人の様子を見て、(ついに一線を越えたな)と感じる友子を中心に
 女子に色々と質問されてアワアワするツンデレ

・2人の様子を見て、(こいつ裏切ったな)と感じる山田を中心に
 男子に色々と追いかけ回されるタカシ

・なんやかんやあって幸せな家庭を築いたとかなんとか
99ほんわか名無しさん:2014/05/17(土) 13:03:42.13 0
久々のお題レスGJ
100ほんわか名無しさん:2014/05/17(土) 13:34:12.23 O
>>98
お題なのにGJとしかいいようがねえwww
101ほんわか名無しさん:2014/05/17(土) 20:00:23.32 0
>>94
続き行っときます
1021/6:2014/05/17(土) 20:01:17.05 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その5〜

「それじゃお疲れ様です」
『お疲れ様。別府君。今日もかなみちゃんのこと宜しく』
 いつもの駅のコンコースでの別れ際。野上さんの言葉に先輩が激しく反応する。
『今日は大丈夫ですってば!! 全然酔えてないし、こんな奴に頼る必要もないんですから』
 ブーたれる先輩に、野上さんがまあまあとたしなめる。
『酔ってなくても、夜道に一人じゃ危ないんだから。こういう時は別府君がいることに感
謝しないと。男がいるってだけでも魔除け程度にはなるのよ』
『わ……分かってますけど、コイツってホント、役に立ちそうもないくせに変に説教くさ
いことばかりしゃべってうっとうしいんだから……』
 不満げな先輩をチラリと見てから、僕は向かいあう女の子三人に向けて肩をすくめた。
普段はここで分かれるのは野上さんと広上さんだけなんだが、今日はもう一人、小牧さんがいる。
『明日も早いからね。頑張って起きて来るのよ。まあ、一番心配なのはコイツだけど……』
 野上さんがチラリと広上さんを見る。小牧さんに抱きついたまま、広上さんはにらみ返
して文句を言った。
『大丈夫だってば!! 今日は千種ちゃんだっているんだもの。寝坊して遅刻したら、そ
れこそ通君に何言われるか分からないし』
『むしろそれが心配なのよ。帰ってからまた二人でお酒飲んで騒がないようにね。むしろ、
千種ちゃんにコイツの世話をお願いしたいくらいだわ』
 帰りが遅くなったので、一人暮らしの広上さんの部屋に小牧さんを泊めることになったらしい。
『ホントにいいんですか? 今日初めて会ったばかりなのに泊めて貰うなんて……』
『気にしない気にしない。むしろ囲い込み? みたいな』
 ムギュー、と抱きつく広上さんに、小牧さんが半分困った顔をする。
『ほら、莉緒。彼女困ってるから離れなさいってば!! それじゃ二人とも、また明日ね』
『お疲れ様です。椎水さんも別府さんも』
『お疲れーっ!! 気をつけてねー』
「お疲れ様です。それじゃ、小牧さん。明日も宜しく」
『こちらこそ、宜しくです。今日はホント、楽しい思いさせてもらいましたもんで』
『うん。じゃあまた明日ね』
1032/6:2014/05/17(土) 20:02:07.78 0
 代わる代わる挨拶を済ませると、僕らは互いに背を向けてそれぞれのホームへと歩き出
す。僕はホッと安堵のため息をついてから、横の先輩をチラリと見て話しかけた。
「何か、懐かしいですね。去年は僕らが、新入生であの二人にここまで送って貰ったこと
を思い出すと」
 広告研究会に入ってもう一年。後輩が出来たことが何だか変にこそばゆく感じる。今の
ところ30人近い新入生が参加してくれたけれど、明日には何人かはいなくなっているだろ
う。また明日も勧誘して、また次の日には何人かが抜けて、最終的には何人が残るだろう
か? 僕らの代は7人だったから、一人でも多く残ればいいなとそんな事を考えていると、
先輩がボソッと言った。
『何のん気に感傷になんて浸ってんのよ』
「は?」
 ちょうどその時、僕らは階段を降り切ってホームに立った。すると先輩が僕の手を引き、
反対側のホームから見えない場所に引っ張る。
「ど、どうしたんですか? 先輩」
『どーしたんですか、じゃないわよこのバカ!! どーすんのよ!!』
 急にいきり立つ先輩に、僕は困った顔で首を傾げた。
「どーすんのよって…… 何がですか?」
 僕の問いに、先輩がますます厳しい顔つきになる。
『何がですか、じゃないわよ!! だからあの子よ!! っと……静内さんっ!!』
 名前を出す時に先輩は慌てて声を小さくした。恐らく反対側にいる野上さんたちに見ら
れないように階段の陰に隠れたのに、声が聞こえたら意味がないことに気付いたのだろう。
「彼女のことですか? どーすんのよって言われても……」
 僕は答えに困る。正直、対処のしようなんてあるわけがない。
『全く、すっとぼけた顔して。いい? あたしらが高校の時から部活で一緒だったことを
隠すのに協力してもらってるってことはね。言ってみれば弱みを握られてるも同然なのよ。分かる?』
「別に、彼女は快く協力してくれてますし、今のところ見返りを求めてもいないようです
から、大丈夫だと思いますけど」
 すると先輩は、憮然とした顔で僕をにらみ付けて来た。
『そーよね。アンタはあの子に何故か好かれてるもんね。一体どうやって手なずけたものやら』
「手なずけたなんてとんでもない。普通に勧誘しただけですよ。先輩が、僕にしたようにね」
1043/6:2014/05/17(土) 20:03:04.33 0
 もう3年も前。初めて会った時の静内さんはいかにも消え入りそうな感じだった。本当
に入部してくれるかどうか心配だったけど、読書好きが幸いして入ってくれて、一年も経
たないうちに非常にしっかりした性格を見せてくれるようになったのを覚えている。
『あたしのようにやってたら、追いかけて同じサークルにまで入ったりしないわよ。てい
うかアンタ、知ってたんじゃないでしょうね?』
「と、とんでもないですって。僕だって、先輩が連れて来たときビックリしたんですから」
 先輩に仲を疑われて、僕は即座に否定した。しかしそんな一言だけで先輩は納得しない
ようだった。
『どーだかね。だって彼女には教えてたんでしょ? どこの大学に入ってどんな学校生活
を過ごしてるかって。静内さんから聞いたわよ?』
 こういう時は変に隠し事をするよりも、正直に告白した方がいい。中途半端にごまかし
てうっかり矛盾したことを言おうものなら、余計に疑いを深めるだけだ。
「僕は何度か、卒業後も遊びに行きましたからね。後輩との会話で大学のことを話すのは
自然なことだと思いますけど。やっぱりみんな、自分の将来もあるし気になることじゃな
いですか。別に彼女にだけ特別に話すとか、そういうことじゃありません」
 しかし、先輩の顔から疑いの色は消せなかった。もっとも僕も、この程度で先輩が納得
するとも思っていないけれど。
『フーン。でもさ。静内さんからも聞いたけど、何度か遊びに行ってたらしいじゃない。
それってやっぱり、自分が指名した後継の部長さんが気になったからじゃないの? しか
もあたしに内緒で』
 既にもう感情が先走ってしまい、本来話さなければならない問題から大分ズレているこ
とに先輩は気づいていないようだった。そろそろ軌道修正させるべきだろう。
「それは、やっぱり後輩のことは気になりますよ。先輩は浪人時代もしょっちゅう僕と会っ
ていたから、遊びに行かなくても部の事を色々聞けていたから心配なかったんでしょうけ
れど。あと、別に内緒になんてしていません」
『ウソ。あたし、聞いてないわよ。アンタが高校の部活に遊びに行ってたなんて』
 僕は小さくため息をついた。人間、記憶を自分の都合のいいように改ざんするなんて良
くあることだけど、先輩はちょっと多いように思う。
1054/6:2014/05/17(土) 20:03:57.48 0
「一番最初の時、ちょっと話ししましたけど。ちょうど僕らが広研に正式に入部して落ち
着いた頃に、ちょっと気になるし顔出しましょうかって聞いたら、先輩はもう独り立ちさ
せたんだから変におせっかい焼かないほうがいいし却って煙たがられるわよって。だから、
先輩には声を掛けずに行ったんです」
『それは違うじゃない。あたしの意見無視して黙って行ったってだけでしょ? いつ行っ
たとかどんな話ししたとか聞いてないし。やっぱり内緒にしてたじゃん』
「いや。先輩も僕に行くなとは行ってませんでしたから。というか、それって嫉妬ですか?」
 ついに切り札のカードを切ってしまった僕に、先輩は語気を荒げた。
『は? な、何言ってんのよアンタ。誰が、誰に嫉妬してるって言うのよ』
 さすがに駅のホームだけあって声は抑えているが、明らかに怒っている。もっとも、そ
れは想像通りだが、ここからの対応を誤ると、自爆しかねない。
「あくまで客観的に見れば、ですけれど、一人の女性が、男性に対して別の女性と会って
いたことを詰るっていうのは普通そう言いませんか?」
『だってあたしはアンタのことが好きなわけでもないし、ましてや恋人同士でも何でもな
いじゃない。だ、だからそれは当てはまらないわよっ!!』
 ここで理詰めで問い詰めたいところだけど、そうすると先輩はへそを曲げてしまう。だ
から僕は、ちょっと違うアプローチを試みる。
「だったら、もう少し冷静になってください。確かに気になる気持ちは分かりますけど、
そんな風に感情的になると、僕だって勘違いしちゃいますよ?」
 わざと、ちょっと嬉しそうにニコッと笑ってみせると、先輩は驚いたように目を見開い
た。それから慌てて僕に詰め寄る。
『か……勘違いするなあっ!! い、言ったじゃない。好きでもなんでもないって。あた
しはその……単に、忠告無視して勝手に行ったことを怒ってるだけで…… ひ、一言言い
さえすれば、別にその……アンタが静内さんに会おうがなんだろうが、一向に……構わないし?』
 その動揺がとっても可愛かったりするなんて、先輩には口が裂けても言ってはいけない。
あとついでに、先輩が僕に忠告めいたことを言ったなんて、僕が言うまで忘れてたでしょ、
なんて矛盾も突いてはいけない。
1065/6:2014/05/17(土) 20:07:30.62 0
「先輩に気を遣ったんです。僕からすれば、静内さんも可愛い後輩の一人ですけど、何故
か先輩とはあまり上手く行ってなかったみたいなので、気にされるかなと思って」
 これも本心ではある。僕と静内さんが会ってたと知れば、先輩は多分ずっとモヤモヤし
た感情を抱えて過ごすことになっていただろうと、僕は推測していたから。もっとも、期
待半分ではあるけれど。
『フン。余計なお世話だわ。言ったでしょ? アンタが静内さんといくら会おうが、知っ
たことじゃないって。むしろ、内緒にしてたって知った方がよっぽど腹が立つわよ』
 確かに、気持ちは分からなくもない。先輩からしてみれば、やましい気持ちがあるから
密会していたと取っても不思議じゃないし。
「まあ、行ったといっても、新歓明けと夏休みと、あとは文化祭の時の三回ですし。で、
まさか静内さんがうちの部に来るなんて思ってもみませんでしたから。そうでもなければ、
先輩がそのことを知る機会なんてなかったわけですし」
『ようするに、上手く隠し通せると思っていたわけよね?』
 さっきちょっと照れていたのに、また不機嫌モードに戻ってしまう。しかしここで呆れ
たり疲れたような素振りを見せれば、それがより加速するだけだ。ここは辛抱強く話を進
めていくしかない。
「先輩が知ってもどうにかなる話でもないですし、もし変に気にされることがあってもマ
ズいかなと思いまして」
『あ、あたしが何を気にするって言うのよ。だからさっきからアンタと静内さんがどうだ
ろうと関係ないって言ってるでしょ?』
「先輩が関係なくても、僕には関係があります」
 僕の一言に、先輩がキョトンとした顔をした。そして、次の瞬間、顔がカアッと赤くなる。
『へ……? ななななな…… 何言ってるのよアンタわ!! あああああ、アンタに一体
なんの問題があるって言うのよ?』
「だって、僕と静内さんの仲を先輩が何とも思ってなかったとして、もし変に誤解された
ら、休日に僕の家に来たり、二人で出掛けたりするのを遠慮したりとかしませんか?」
 僕の問いかけに、先輩は一瞬黙り込んだ。少し考え込んでから、ためらいがちに答える。
1076/6:2014/05/17(土) 20:12:43.69 0
『そ……そりゃあ…… ご、誤解っていうか、アンタと静内さんがそういう仲になったっ
ていう確信が持てたら、ね。彼女でもないのにアンタと一緒にいたら、し……静内さんが
気を悪くするだろうし。まあ、ちょっと会ってたってくらいで誤解なんてしないけど? だっ
て、静内さんみたいな綺麗な子がアンタに惚れるなんて……あ……あり得ない……訳だし……』
 どんどんと言葉に自信が無くなっていくように聞こえるのは、恐らく気のせいではない
だろう。部の他の仲間だって、静内さんの事情を聞いて僕を慕って追いかけて来たって、
結構盛り上がってたし。もっとも、静内さんは恋愛感情には言及しなかったけれど。だか
ら先輩だって自分の言葉を信じられなくて当然なのだ。
「まあ、いずれにせよ、先輩には普段どおりでいて欲しかったから、あえて言わなかったっ
てだけです。それと、今ので分かったでしょう? 僕が本当に、静内さんがウチの大学に
入って、ましてやウチの部に来るなんて僕も知らなかったってことが」
 そもそもの先輩の疑いが、これで晴れただろうと思って僕はそう口にした。隠し事があ
るのなら、静内さんとは口裏を合わせて先輩にその事を知られないようにするはずだから。
『……まあ……ね。まだ釈然とはしないけど、とりあえず納得はしてあげる。確かに、用
意周到なアンタなら、こんな風に秘密がバレるなんてあり得ないし』
 一体先輩は僕をどう見ているのだろうか? それはちょっと気になったけど、ようやく
話がまとまったわけなので、混ぜ返すわけには行かない。
「それで…… 彼女の扱いをどうするかって、そういう話でしたっけ? そもそもは」
 ようやく話の軌道を元に戻すと、先輩はコクリとうなずき、責めるように僕を見た。
1087/6:2014/05/17(土) 20:13:42.95 0
『そうよ。その…… 静内さんはさ。あたしとアンタが高校時代からずっと同じ部で一緒
だったって知ってるわけじゃない。彼女は秘密を守ることに同意はしてくれたけどさ。で
も…… いつ何時、その気持ちが変わるか分からないし……』
 先輩が困るのは、分からないでもない。彼女はいつの頃からか、先輩に対して厳しい言
葉を投げかけるようになっていたからだ。最初は暗に。それから徐々に公然と。しかも、
それが正論だったりするから、周囲もたしなめるくらいしか出来なかったのだ。しかし、
かといって今更それらをどうこう出来る訳じゃなく、僕は導き出せる唯一の答えを口にした。
「まあ、どうするもなにも、普通にするしかないんじゃないですか?」


続く
ほの板は容量制限がキツいというか、1レスにつめ過ぎる自分が悪いというか。
109ほんわか名無しさん:2014/05/18(日) 00:54:46.40 0
乙乙。あぁもやもやする……
110ほんわか名無しさん:2014/05/18(日) 12:45:02.30 0
GJ!
続きが気になりますなあ
111ほんわか名無しさん:2014/05/20(火) 00:31:27.69 0
>>108の続き行きます
1121/3:2014/05/20(火) 00:31:59.93 0
・先輩ツンデレにライバルが出現したら 〜その6〜

『普通にって、どういう意味よ?』
 意味が分からず苛立ちを見せる先輩に、僕はうなずいて繰り返す。
「だから、与えられた状況から見て、普通にです。僕は静内さんとは高校時代からの旧知
ですから、そのように。先輩は、初めて会った他の新入生と同じように扱えばいいんです。
静内さんも納得してくれているんですから、しばらくは先輩のことを他の先輩と同じよう
な態度で接すると思いますよ」
 僕の見立てでは、彼女はそうすることが出来る子のはずだ。
『……そ、そうね。静内さんだって…… うん。だから最初のうちはそうしてくれると思
うけど……』
 何かを思い出したように彼女の名前を口にして、先輩は途中で言葉を切った。何となく
だけど、僕と会う前に先輩から秘密の共有を持ち出しているわけだから、その時にあった
会話のことだろうと推測する。しかしそれよりも、先輩が何をためらったのか、そちらの
方が気になった。
「けど……って、何なんですか?」
 僕の問いに、先輩はあからさまに失敗したという顔つきをした。しかし、ごまかしてう
やむやにするような言葉は、先輩の口からは出なかった。少しためらった後、珍しく本気
で心配するような顔で、先輩が僕を見つめて聞いてきた。
『ねえ? どうしよう? あたし、今まで通りにアンタに接していいのかな? また、高
校の時とおんなじようになっちゃわないかな? 高校の時は先輩後輩でしかもあたし、部
長だったのに、アンタの扱いについて散々言われたのよ? 今はただの同級生で…… ま
た、容赦なく叩きのめされるんじゃないかな?』
 どうやら、静内さんに対する先輩の苦手っぷりは半端ないらしい。もしかしたら、僕ら
のいないところでも相当にチクチク言われていたのかもしれない。普段はその横暴ぶりに
手を焼く先輩だけど、こんな弱いところを僕に見せるのも、随分と仲が深化した証拠なの
かもしれない。
1132/3:2014/05/20(火) 00:34:13.27 0
「でも、先輩が僕への態度を変えたら、今度は他のみんなが怪しみますよ? 僕らの仲に
何かあったのかって。もしかして、ライバルの出現でかなみちゃんが焦りだしたんじゃな
いかとか、調ちゃんあたりに勘ぐられたらどうします? 脇谷君とかも好きですよ? そ
ういう話題」
『うぐっ…… そ、それはその……そうだけど…… けど……』
 弱々しくうなずきつつも、一向に不安が消せない先輩に、普段は感じない可愛さを覚え
てしまい、僕は断りもなしに先輩の肩を掴んでグイッと引き寄せ、抱きしめた。
『ちょっ……!? 何するのよ? ここ、駅――』
「シッ……」
 動揺する先輩の耳元で、僕は小さく先輩に大人しくするよう合図した。それで言葉が途
切れたのを気に、僕は安心させるようにささやく。
「大丈夫ですよ。もし彼女が何か言っても、僕がちゃんと言い聞かせてあまりひどい事を
言わないようにさせますから」
 高校の時は、僕も初めての後輩だったから、どう対処していいか分からなかったけど、
今は部長も経験して、大学でも人間関係の幅を広げた。静内さんの性格もより理解出来て
いるし、だから僕は自信を持って言うことが出来た。
『でもそんなの…… 今まで通りになんてやってたら、絶対文句言われるに決まってるし……』
 大人しく抱かれながら、それでもまだ不安を口にする先輩の後ろ頭に手を当て、艶やか
な髪を撫でる。先輩が大学に入って変わったことの一つは、以前よりおしゃれが上手になっ
たことだ。そこらへんは特に3年の女子がうるさいので、先輩とか調ちゃんとかも大学に
入った当初より服装も髪や肌の手入れもレベルアップしている。
「大丈夫ですよ。多分調ちゃんなんかは、あれで僕らは言葉のスキンシップしてるだけだっ
て、僕らへのからかいも込めて言うだろうし、ああいう生真面目な子は広上さんの絶好の
イジり対象ですからね。高校の時と違って今の部の人たちはやっぱり確実に人あしらいは
上手いですから。だから先輩もいつもどおり、真っ赤になって僕との仲を否定していれば
いいんです」
1143/3:2014/05/20(火) 00:35:20.98 0
 そう言ってなだめた途端、わき腹にドン、という衝撃と痛みが走った。
『誰が真っ赤になったってのよ。そ、そりゃあその……あんまりしつこい時は怒るときも
あるし、そういう時は怒りで興奮して赤くなってるかもしれないけど…… アンタが考え
てるような、そんなんじゃないんだから』
 やっといつもの強気な先輩が戻ってきて、僕はついニヤッとしてしまった。先輩が見た
ら、絶対問い詰めるのだろうけど。弱気な先輩も可愛かったけど、やはり先輩は先輩らし
いのが一番だ。
「ちょっとは元気が出ましたか?」
 僕は背中に回した手を緩める。その気になれば、先輩が自分から離れられるように。
『……うん。まあ……先輩達もいるって思ったら、少しは』
 そこで僕の名前を出さないのが、先輩の強がりなのだろう。
「じゃあ、そろそろ行きますか?」
 先輩が離れないので、僕は背中を押すように言葉を投げかけた。しかし、それは逆に作
用してしまったようで、先輩の方が、今度は僕の背中に腕を回してギュッと抱きしめて来
てしまった。
『……まだ……もうちょっとだけ、いいでしょ?』
 どうやら、甘えっこモードのスイッチを入れてしまったようだ。
「最初、嫌がってたのは先輩ですよ? 駅だからって」
『だってもう、ここまでされたら一緒だもの。今止めようが、変わりないわよ。どうせ、
あまり人には見えない位置なんだし』
 先輩から体を押し付けられると、自分で抱いてたよりも胸とか脚の感触を意識してしま
う。エッチな感覚を意識しすぎると大変なことになるので、僕は必死で自制しつつ、さら
に先輩にそうと悟られないようにもう一度僕も抱く腕の力を強めつつ、冷静に念を押した。
「終電までですよ。抱き合ってるうちに電車なくなってタクシー代僕持ちなんてダメですからね」
『分かってるわよ。まだ全然時間あるでしょ? あとちょっとだけ……なんだから……』
 ギュッと胸に顔をうずめて来る先輩を、僕は結局、終電の時間まで撫でてあげ続けたのだった。


終わり
というか、また一つ何か始まったというか
115ほんわか名無しさん:2014/05/20(火) 00:47:39.49 0
ふぅ……乙!
116ほんわか名無しさん:2014/05/20(火) 01:12:13.91 0
あな素晴らしや
1171/2:2014/05/21(水) 00:57:13.88 i
『なぁタカシ、うち思うんやけどな、うちの名前”いずみ”っておかしない?』
「まんだよ、いきなり。てか発言がギリギリすぎるだろ」
『まぁ聞き、うちキャラ付けは関西やん』
「そうだな」
『けど口調は完璧に大阪弁やんか』
「地域で考えれば広いはずなのに、なぜか細かい話に聞こえるな」
『こまこーないって、それにあれやん、”いずみ”って大阪府の旧国名”和泉”が元ネタやろ』
「はっきりとは知らねーけど、多分そうなんじゃねーの」
『けどうちの口調って、どっちかって言うと摂津弁やん』
「さらに細かくなったな、関西圏どころか近畿の人間しかわかんねー話だろ」
『大事な話やって、泉州と摂津は完全に別の国やん』
「たしかに違うけどさ、じゃあ、あれか、お前の名前は”せっつ”だったら納得するのか」
『そんなソフトバンクのピッチャーみたいな名前いやや』
「おいコラァ!!摂津を馬鹿にすんな!!」
『あんたの沸点どこにあんねん!第一あんた野球詳しいないやろ!』
「フォアボールの少ないピッチャーが好きなんだよ、悪いか」
『知らんわ、そんなん』
「はぁ、で、お前は何が言いたいんだよ」
『うちの出番が増えたらええなーって』
「あー確かに、ほの板に移行してからは全くと言っていい程見てないな」
1182/2:2014/05/21(水) 00:58:50.17 i
『せやろ、vipのときは多くはないけど、ちょこちょこ顔出してたやん』
「ほの板から見始めた人には分かり難いのかもな、口調とかノリとかが」
『フィーリングでどうにかなると思てたけど、無理やったな』
「まぁ俺自身が河内の人間だから、そう思えたのかもな」
『せやからもう自分で書き込んで出番増やすわ』
「oh…」
『けどうち、いまいち妄想がはかどらへんねん』
「だめじゃねーか」
『せやからこうやって、関西はこんな感じですよーって書き込みをして、他の人に頑張ってもらうわ』
「つまるところ、関西が好きだけどネタが思い浮かばないから後は頼んだ。ってことか?」
『まぁそんな感じやな。最初の名前のくだりは、ただのつかみやし、忘れてくれてええよ』
「そこはツンデレスレ的に”ちょっ何いきなり好きとか言ってんねん、あほー”とか言うべきじゃね?」
『から、その辺を他の人に頼んでんねん』
「テキトーすぎだろ」
『(”出番が増えたらタカシと沢山話せるしなー”とは言わぬが華、なんかな)』
「なんだよ、人の顔をジロジロと」
『なんもないよー、出番増えたらええなーうち』

〜終われ〜
119ほんわか名無しさん:2014/05/21(水) 08:19:02.22 0
いずみん頑張れwww
120ほんわか名無しさん:2014/05/21(水) 13:04:13.07 0
いずみん頑張れwww
1211/5:2014/05/22(木) 00:18:38.40 0
・見た目と違ってお馬鹿な委員長ツンデレ〜前編〜

『委員長、委員長。ちょっとここ、教えてくれよ』
『何よ。どこなの?』
『この問い3のとこ。何の単語が入るのかさっぱり分からなくてさ』
『これ? これはね。whichでしょ。この場合は、この単語が目的語で引っ掛かってくるか
ら、そこから判断して考えるの。そんなに難しい文章じゃないんだから、しっかり読めば
解けるわよ』
『サンキュー。全く、花房ったら嫌な性格してるよな。抜き打ちでいつも小テストぶつけ
てきてさ。いつテストを出されてもいいようにしっかり予習しとけ、とか言うし。それで
いて成績悪けりゃ補習だし』
「俺なんて、最初っから補習受ける気満々だぜ。どうせ、いい点取ろうと思ったら勉強し
なくちゃならないんだろ? 使う時間が一緒なら、花房ちゃんの指導付きの方が分かるし。
性格キツいけど、美人だからな」
「それでコイツ、怒られてやんの。教師ってのは忙しいんだから、家庭教師みたいに使う
んじゃありませんって」
 ドッと笑い声が起こる中、会話から外れた私は一人ため息をつく。
『ふう……』
 気を緩める間もなく、別の男子が声を掛けてきた。
「委員長さ。ここ、なんて訳すのか教えてくれよ。夕べ勉強したんだけど分からなくてさ」
 彼の出す教科書の問題をジッと見つめて、私は彼にそれをつき返した。
『却下』
「えーっ!! 何でだよ。委員長ならこの程度、スラスラ訳せるんじゃないの?」
『私じゃなくたって、誰だって訳せるわよ。何だったら、近場君に聞いてみたら』
 すぐ傍にいる男子生徒を名指して私は指名する。呼ばれた彼が振り向いた。
「え? 俺がどうしたって?」
 すると、私に質問してきた男子が、彼に教科書を見せた。
「ここだよ、ここ。お前、分かるか?」
「あーん? 何だよお前、こんなのも分かんねーのかよ? いくら英語苦手ったって、そ
りゃヤバいだろ?」
1222/5:2014/05/22(木) 00:19:38.88 0
 近場君がそう言ったのを幸い、私はすかさずその言葉に乗った。
『ほら。近場君だって分かるじゃない。悪いけどその程度の問題なら、彼に教えて貰って』
 そう拒否したところで、後ろの席に座る女子が興味深げに話しかけてきた。
『委員長ってさ。ホント、簡単な問題聞いてきた奴には冷たく突っぱねるよね。あれ、何で?』
 振り向いて私はいささかうんざりした口調で答える。
『だって、少し勉強すれば分かる問題にまで親切に教える気にはならないわよ。ただでさ
え、私を頼ってくる人が多いんだから。多少は選別させてもらわないと、扱いきれないわよ』
『あっはは。そりゃそーだわ。さっすが、人気者だけあって大変よね。マネージャーやっ
たげようか? もちろんバイト代貰うけど』
 冗談めかしてからかうその女子を、私は睨みつけた。
『いらないわよ。それに人気者って言ったって、テスト前だけの話じゃない。くだらない』
『いーじゃんいーじゃん。テスト前だけだろうがなんだろうが、それだけ頼りにされるっ
て事はさ』
 たしなめる彼女に背を向けると同時にチャイムが鳴った。慌てて席に戻るクラスメート
を見つつ、私は深いため息をついた。そして、内心密かにこう呟いた。
――どうやら、今日も何とか無事に乗り切れたわ……


 放課後、自分の住むマンションに着いた私は、自分の家がある8階ではなく9階のボタ
ンを押した。エレベーターが静かに上に向かって動き出し、やがて目的の階に止まる。一
つため息をつくのとドアが開くのが同時だった。既に通いなれた通路を通り、私は目的の
ドアの前にたどり着く。呼び鈴を押さずにドアレバーを下げると、抵抗無くドアが開いた。
『……お邪魔するわ』
 誰にとも無く声を掛けると、私は靴を脱いで廊下に上がる。声を掛けても誰も出ないの
は分かっていた。この家の住人は夫婦とも働いていて昼間は留守なのだ。リビングに顔を
出すが、そこにも誰もいない。という事は、彼は今、部屋にいるのだろう。そう思って私
は彼の部屋のドアの前に立ち、ノックした。
『タカシ? 来たわよ。いるんでしょ? 開けていいの?』
「よお。委員長」
『ひゃあっ!?』
1233/5:2014/05/22(木) 00:20:23.61 0
 唐突に背後から声を掛けられて、私は思わず悲鳴を上げて飛び上がった。バッと勢い良
く振り向くと、そこにはこの家の一人息子で私の幼馴染である、別府タカシがいた。
「また見事な驚き方するね。いたずらした甲斐があったよ」
『ふざけるんじゃないわよ!! まさか、私が来るのを見計らっておどかすために隠れて
たの? 信じられないわ。最低』
「いや。たまたまキッチンで飲み物探してたらさ。委員長が来たから咄嗟に思いついたっ
てだけで。いちいち委員長をおどかすためだけに隠れてるような、時間を無駄にするよう
な真似はしないって」
『そう言われると、それはそれでムカつくわね。あと、その他人行儀な呼び方止めなさい。
人の目がある訳じゃないんだし』
「了解、玲香。とりあえず部屋に入って落ち着こうか」
 私の好きなオランジーナのペットボトルを掲げてみせつつ、彼は涼やかな笑いを浮かべ
たのだった。


「で? 今日の首尾はどうだった?」
『いちいち聞くまでもないでしょ? 見てたくせに』
 乾いた口を潤そうと、一口オランジーナに口をつける。うん。美味しい。果汁入りの炭
酸飲料って、今までなかっただけについついはまってしまう。
「まあね。僕が教えたこと。ちゃんと頭の中に入ってたじゃん」
『やかましいわね。上から目線で偉そうに言わないでよ』
「あれ? 誰のおかげで玲香が今日も委員長としての体面を保てたのかなあ?」
 意地悪な顔でニヤニヤと私の文句を受け流す。そう。私はタカシには頭が上がらない。
何故ならタカシが、私の家庭教師役なのだから。
『うるっさいわね。感謝はしてるけど、私だって努力はしているんだから。そうも全部、
自分のおかげなんて顔されると腹立つのよ』
「フーン。だったら玲香もそろそろ独り立ちしてみる? もちろん、分からないところは
教えてあげるけどさ。簡単な問題くらい、自分で勉強して身につけないとね」
『それが出来ればわざわざ貴方のところになんて来ないわよ!! そもそも、一人で勉強
したって分からない所だらけで結局進まないんだから』
1244/5:2014/05/22(木) 00:21:59.01 0
「それ以上に集中力も持続力もないしね。すぐに休憩だっていってはゲーム始めて、それ
に没頭しちゃうんだから」
『ふぐ……』
 図星を突かれて、私は言い返す言葉もなく呻いた。そう。私は実は、勉強が大の苦手な
のだ。今の高校に入れたのだって、タカシが付きっ切りで勉強を教えてくれた上に、たまたま
前日に詰め込んだ箇所が高得点で配置されるという奇跡にめぐり合えたからに他ならない。
「大体、覚えた所だってすぐ忘れちゃうでしょ? 試しに昨日教えたところの復習、やってみる?」
『やめてよ。そんな時間無いんだから。出来なかったらまた罰とかいってイタズラする気
なんでしょ? そんな事までやってたら、明日みんなに教えられなくなっちゃうじゃない』
 ちなみに、どんな罰が与えられるかは、とても口に出せたものではない。
「やれやれ。普通はさ。人に教えると身につくのが早くなるものだけど。覚えておけるの
はせいぜい一日で、ほとんどが次の日の夜には抜けてっちゃうって、どんだけ記憶力ないんだが」
『その愚痴はもう聞き飽きたわよ。それより明日は古文の小テストでしょ? 人に教えれ
ばそれだけ身につくっていうなら、貴方が頭いいのは私のおかげでもあるんだから、早く人
に聞かれそうなポイント教えてよね』
「そういう屁理屈だけは一人前だよね。玲香は。まあ、教えるのはいいけどさ。その前に
とりあえず、前金分のご褒美を貰っとこうか」
『うくっ!!』
 思わず絶句する私を前に、タカシはちょっとイヤらしくニコリと笑ってみせる。
『そ…… それは、成果報酬って奴じゃダメかしら……? 教えて貰っても、全然的外れ
だった時は意味がない訳だし』
「意味があろうがなかろうが、僕が玲香に勉強を教えること自体は変わりないだろう? 
それとも、成果報酬を別にくれるから前払い免除して欲しいっていうなら、昨日の分の成
果報酬を貰おうか?」
『きっ……昨日はっ……』
「前払い、貰ってなかったよな? 今日は無事、役に立ったみたいだし。ほら。どっちに
する? 前払いか、成果報酬か。玲香の好きな方でいいぞ」
 正直な話、タカシと理論で言い争って私が勝ったためしはない。多少矛盾してようが、
理論立てて言われると、おバカな私が言い返せるわけないのだ。
1255/5:2014/05/22(木) 00:23:15.48 0
『……一つ聞くけど…… 成果報酬って……やっぱり、アレ?』
 直接口になんて出せなくて、私は濁した聞き方をするが、タカシにはちゃんと伝わったようだ。
「普通にアレじゃつまらないだろ。それは勉強教えたご褒美と同じだし。もう少し…… そ
うだな。俺の好きにさせてもらわないと」
『一体何をする気なのよっ!!』
 冷静な雰囲気が却って危険に感じ、私は背筋を怖気させつつ聞いたが、彼はニコッと笑っ
ただけだった。
「それは秘密。玲香が前払いより成果報酬を望むって言うなら、教えてあげるけど」
『やっぱり前払いでいいわ。何されるか分からない成果報酬なんかよりは、こっちの方が
幾分かマシよ』
 結局、私は前払いで折れさせられてしまった。万が一仮に今、成果報酬から逃れられた
としても、明日みんなにちゃんと難問を教えられれば、結局その時支払わなければならないのだ。
「それじゃ、玲香。こっち来て」
 体ごと私の方を向いてタカシが手招きしつつ、あぐらをかいた自分の脚を指で示す。そ
こに座れという支持だ。
『い……いちいち、そんなところに座らせるつもりなの? この変態』
 悪態をつくが、タカシには逆らえない。結局のところ、私がクラス委員長として威厳を
保てているのは、タカシのおかげなのだ。実は勉強が苦手だなんて知れたら、あっという
間に私の立場は地の底に落ちてしまう。
「好きなくせに。ほら。早く」
 渋々、といった体で私はあぐらを掻いたタカシの脚の上に、真正面から向かい合ってま
たがるように腰を下ろした。こんな体勢、死ぬほど恥ずかしい。
「素直でいいね。それじゃ、前払い分貰っとこうか」
 自然に、彼の手が私の背中と頭の後ろに回り、ゆっくりと、しかし抵抗できない力強さ
で引き寄せられる。
『……手っ取り早く、済ませてよね』
 視線を落とし、わざと不満げに言って私は目を閉じる。
「雰囲気ないなあ。もうちょっと嬉しそうな顔すれば、こっちもその気になるんだけど。
まあ、しちゃえば関係ないか」
 タカシの片手がしっかりと私の頭を押さえつける。そして唇に熱い微かな風が触れたか
と思った次の瞬間、タカシの口が私の唇を覆うように重ねられた。
126ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 00:24:31.64 0
後編に続く
127ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 00:39:27.41 0
委員長だからって頭がいいとは限らないってリアルだわwww

続き全裸待機
128ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 00:49:07.51 0
これは全裸待機せざるを得ない
129ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 00:56:16.34 0
・食べちゃうぞ


男「あーヒマだなー……」

女「……」パラ

男「なーかなみー、超ヒマなんだけどなんかすることねーの?」

女「うるさいわねぇ、ちょっと黙ってなさいよ」

男「へいへーい」

女「……」パラ

男「……かなみー」

女「なによ?」

男「食ーべーちゃーうーぞー」ガォー

女「……は?」

男「……いや、なんでもない」

女「なんとなく」

女「……あっそ」
.
130ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 00:58:06.13 0
ミスったすまん

・食べちゃうぞ

男「あーヒマだなー……」

女「……」パラ

男「なーかなみー、超ヒマなんだけどなんかすることねーの?」

女「うるさいわねぇ、ちょっと黙ってなさいよ」

男「へいへーい」

女「……」パラ

男「……かなみー」

女「なによ?」

男「食ーべーちゃーうーぞー」ガォー

女「……は?」

男「……いや、なんでもない」

女「何、今の」

男「なんとなく」

女「……あっそ」
.
131ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 01:01:32.08 0
女「……」

男「……」

女「……」チラッ

男「……ん?」

女「……た、食べられちゃうぞー」ボソッ

男「……!?」

女「……///」ポッ

男「た、食べられちゃうのか……そうか……」

女「な、なによそのリアクションは!ちょっと乗っかってあげただけじゃない!」

男「いや、超可愛かったなと思って」

女「……ふんっ!」

男「……」

女(……言うんじゃなかった///)

おわり.
132ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 03:41:41.12 0
「……た、食べられちゃうぞー」

これ可愛いwwww
133ほんわか名無しさん:2014/05/22(木) 19:48:46.03 0
据え膳食わぬはなんとやら
134ほんわか名無しさん:2014/05/24(土) 03:39:27.41 0
>>125の後編行きます
1351/4:2014/05/24(土) 03:39:55.43 0
・見た目と違ってお馬鹿な委員長ツンデレ〜後編〜

『ん…… んん…… ふぁぷっ……』
 私は軽く唇を触れ合わせるだけで済ませよう。そう思っていたのに、彼は口を重ねるな
り舌で私の唇を舐ってきた。たまらず口を開けるとぬるりとタカシの舌が口の中に入り込
んでくる。
『ふぁぁ…… ふぁぶっ……』
 私の喘ぐような吐息と、チュプチュプというような唾液と唾液の交わる音だけが聞こえ
てくる。タカシの舌はすぐに私の舌を捕らえ、絡みつく。私も逃げられずにそれに応え、
しばらく私の口の中で互いの舌を求め合う。
『ふぁーっ…… ハア…… ハア……』
 やがて息が苦しくなり、私は口を開けたまま空気を求めて喘ぐ。するとタカシは一度口
を離してからもう一度、今度は私を上むかせ、かぶせる様に舌を入れてきた。唇の裏。歯
と歯茎。そしてさらには舌をもう一度ねっとりと舐めつくしてから上あごへと。私は口を
大きく開けたまま、今度は舌も動かすことなくただ彼のされるがままに口の中を蹂躙され
ていた。口の中が全て性感帯になったみたいで、タカシの舌に舐められたところがジンジ
ンしびれて感じてしまっている。口の奥の奥までたっぷりと舐められてから、ようやくタ
カシは私を解放した。
「全く。玲香はこのキスが大好きだよね。嫌がってるのは最初だけで、舌を入れたらもう
ねだってくるし」
 ティッシュで口を拭い、まだキスを受け入れた姿勢のまま半ば呆然としている私の口の
周りも、丁寧に綺麗にしてくれる。
『う……るさいわね…… ね……ねだってなんか……いないってば…… タカシが……も……
求めてくるから……大人しく……してただけ……よ……』
 まだ体がカッカと火照っていて、ビリビリと痺れている。特に、神経が集中して敏感な
場所が。体を固くして鎮めてみようと試みるが、却って意識してしまい、疼きが酷くなっ
てしまった。
1362/4:2014/05/24(土) 03:40:23.43 0
「さて。それじゃ、勉強の方を始めようか。ご褒美の前払いを貰ったからには、少なくと
も明日も玲香が委員長としての尊厳を保てる分はしっかりと教えてあげるから、覚悟して
おくんだね」
『ま……待って……』
「何?」
 体の疼きに負けて、つい彼を制止してしまったが、その先を言うのは急に恥ずかしくなっ
た。どう考えても、女の子が口にするのには恥じらいがなさ過ぎる。だけどタカシは、こ
ういう時に空気を読んで優しくしてくれたりなんて絶対にない。だから、どんなに恥ずか
しかろうと自分で言わない限り、先には進めないのだ。
『……あの、さ。どうせ……ここまでやったんなら…… 全部払ってからにしちゃいたい
んだけど…………ダメ?』
「何? もしかしたら、キスだけで興奮して体の疼きが止まらなくなっちゃったとか?」
 正確に言い当てられて、ますます熱が高まってくる。否定することも、素直にうんも言
えず、私は顔をそらしてうつむくと、だんまりを決め込んだ。
「全く、玲香ってホント、エッチな女の子になったよね。いや。元から頭の中はエロ妄想
でいっぱいだったっけ」
『だっ……誰が……エッチよ!! こんな体にしたのは……貴方なのに……』
 私の体に刻まれた感覚は、全部タカシによって教え込まれたものなのに、そんな事を言
われるのは理不尽過ぎると思う。
「そんな事はないでしょ。ご奉仕ポーズとか、僕がわざわざ教えなくても知ってたし。元
から素養があったんだよ」
 タカシが体を寄せて来て、私は体を緊張させた。早くこのもどかしい感覚を何とかして欲しい。
『ち……違うわよ…… だからこそ……責任取ってもらわないと……困るんだから……』
 すると、おもむろにタカシが手を出すと私の胸の頂点を正確に指で突いた。制服の上か
らではあったが、それゆえに早く解放して欲しいと願っている胸の先端をぐっと押され、
引っかくようにくすぐられて私は耐え切れず体をのけぞらせて恥ずかしい声を上げる。
『ふぁっ!? やっ……やあっ!! ダメェ……ん……クンッ……』
1373/4:2014/05/24(土) 03:40:58.36 0
「玲香ってさ。このエロい体以外何の取り得もないよね。運動もダメ。勉強も出来るよう
に見えて実力は赤点レベルだし。読書家に見えて、読んでるのはラノベや漫画だけ。深夜
アニメとゲームのやりすぎで夜更かしして、俺が起こしてあげないと寝坊して遅刻するし」
『やめ……てっ…… イジメないで……ふぁんっ!?』
 最後にグッと強く押されて、私はあられもない声を上げてしまう。タカシは指を離すと、
ニッコリと笑顔を見せた。
「でも、ダメだよ。ご褒美はちゃんと、勉強が終わってからにしないとね」
『何でよ? わ……私がいいって言ってるのに……』
 恥ずかしさに身もだえしそうになりながらねだったのに、拒絶されて私は愚弄されたよ
うな気分になる。
「だって玲香ってば、夢中になり過ぎて体力全部使っちゃうじゃない。前に一回、失敗し
てるでしょ? すぐに舟漕いじゃって、全然頭に入っていかなくてさ。玲香の物覚えが悪
い頭に詰め込むのにどれだけ苦労したか」
『でも、このままじゃ……』
「疼いてしょうがないんでしょ? でも大丈夫。しっかりノルマをこなさない限りご褒美
なしってなったら、玲香も必死になって覚えようとするでしょ?」
『うううううっ……』
 悔しいが、私は完全にタカシの手の平の上で弄ばれている。つつかれた乳首がまだ勃起
して痛いほどなのに、勉強が終わるまでお預けだなんて拷問過ぎる。
『この……ドSの変態…… 私が、体の疼きに悶えながら必死で勉強するのを見て……楽
しむんでしょうが……』
「それは結果的にそうなるかもしれないけど、玲香が自分で体をしっかりコントロールし
て勉強すれば、それはそれで言うことないよ」
『ぐっ…… 詭弁ばっかり……』
 自分で私の体を昂ぶらせておいて、と苦々しく思うが、タカシは頑固だから何と言って
も自分の言葉を翻したりはしないだろう。
「それにしても、最近はどっちのご褒美か分からなくなってるな。勉強教えてあげたご褒
美を貰うんじゃなくて、僕が勉強頑張った玲香にあげるご褒美みたいだよ。これじゃあ」
『なっ……!? ち、違うわよ!! 絶対違う!! 私、望んでこんなことしてる訳じゃ――』
1384/4:2014/05/24(土) 03:42:20.12 0
「じゃあ今日は、勉強のご褒美は違うものを貰おうかな。玲香お手製のガトーショコラと
か。ああ。そういえばお菓子作りも取り柄だっけ。といっても、自分で甘い物食べたいか
らってだけで、料理はまるでダメだけど」
『う……うるさい!! それより、ご褒美にケーキだなんてダメよ。だって、最初に教え
て欲しいってお願いしたときに決めたじゃない。契約なんだから、それに従ってもらわないと……』
「なんだかんだ言って、したいんでしょ?」
『――――っ!!』
 恐らく、誰が見ても分かるほどに私は顔を紅潮させてしまった。そしてそれが同時に、
タカシの言葉を肯定しているとも。
「素直に認めれば、僕ももちろん、玲香の体は大好きだから遠慮なく貰うけど。したくな
いって言われたらご褒美とはいえ、無理矢理じゃ萎えちゃうしな」
『…………うっ………… わ……私も……したいから……お願い…… ちゃんとご褒美……
貰って……』
 とうとう根負けして、一番恥ずかしいおねだりまで言わされてしまった。実際の行為そ
のものよりも、心を丸裸にされるほうが遥かに恥ずかしくて、私はこの場から消えたくて
たまらなかった。
「はい。それじゃあ勉強、頑張ろうか」
『うぐぅ……』
 ポン、と頭に手を乗せられ、撫でられると私は降参してうなずいた。こうなったら勉強
を死ぬ気で頑張るしかない。
「しかし、いつもと同じじゃやっぱりご褒美って気がしないな。ちょっと趣向を変えようか」
『変えるって、何をよ?』
 教科書やら参考書やらを開きながら、まるで普通の会話のように受け答えすると、タカ
シはまた、あのいやらしい笑みを浮かべた。
「玲香は褒美をあげる方だからね。いっそ、縛って全く身動きできないようにして、完全
に僕の玩具にするとか、どう?」
『どうって……そんな変態的な質問をさりげなく聞くなバカッ!! 死んでよもうっ!!』
 罵りつつも、体のどこかがそれを期待して、また敏感な箇所が疼くのを私は自覚せずに
はいられないのだった。

終わり。
カガクチョップ読んでバカないいんちょもありだなって思って妄想しただけなのに……どうしてこうなった?
139ほんわか名無しさん:2014/05/24(土) 13:00:51.12 0
エロい
可愛い
素晴らしい
140ほんわか名無しさん:2014/05/24(土) 18:30:28.97 0
外と内とで上下関係が逆転するのとか良い
141ほんわか名無しさん:2014/05/24(土) 21:34:45.84 0
うらやまけしからんGJ


http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2847.jpg
昨日キスの日だったので久しぶりに落書き
142ほんわか名無しさん:2014/05/24(土) 23:11:00.66 0
相変わらずキュートなツンツン頭と乳だ
143ほんわか名無しさん:2014/05/25(日) 11:12:30.64 0
>>141
けしからんおっぱいにGJ!!
144ほんわか名無しさん:2014/05/25(日) 11:34:33.66 0
あ、今気づいたけど誤字がある
これでは肘とか膝にキスすることになってしまう
145ほんわか名無しさん:2014/05/26(月) 00:06:49.30 0
転んで擦りむいちゃった友ちゃんの膝にキスしたい
146ほんわか名無しさん:2014/05/26(月) 23:36:06.81 0
お題

・幼なじみツンデレと家が隣同士で、部屋の窓も向かい合わせな男

・よく窓越しに勉強を教えたり教えてもらっありする2人

・ある時、勉強しつつも下半身を露出させると興奮することに気付いた男orツンデレor2人
147ほんわか名無しさん:2014/05/27(火) 00:32:09.54 0
一年半くらい放置していたツンデレ会長さんが男とデートする妄想の続きを再開します。

過去の分はこちらで
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2848.txt
『あ…… 美味しい……』
 思わず、感想が口から漏れてしまうほどの美味しさだった。新鮮でみずみずしいタコ
は歯ごたえもプリプリしていて私好みだ。分厚く切られたマグロのトロも、フワッと口
の中でとろける様だ。
「どう? 少なくとも大げさな演技じゃなかったろ?」
 ちょっと得意気に別府君が聞いて来た。今日、初めての成果にようやく気を取り直し
たと言ったところか。
『そうね。確かにここはお世辞抜きで美味しいわ。こんな豪華なのをウチの近くで食べ
ようと思えば、倍くらいは払わないといけないでしょうね』
「だろ? 良かったよ。会長の口に合ってさ」
 嬉しそうに頷き、別府君も海鮮丼を掻き込む。しかし、ここでどうにも私の悪いクセ
が出てしまう。
『でも、だからと言って、貴方の演技の不味さがフォロー出来る訳でもないし、料理が
美味しいのは、このお店の人たちのおかげであって、貴方が得意がる事は何一つとして
ないんだけどね』
 私の言葉に、別府君の顔が不愉快そうに歪んだ。
「でも、俺が探し出した店なんだし…… そこはちょっと認めてくれたっていいんじゃないか?」
 不満気な彼の意見を、私はばっさり切り捨てる。
『単にネット見て、上位のお店を探すだけなら誰だって出来るわよ。本当にキチンと調
べて、確証を持って美味しいお店を探したならまだしも、ネットの評価が高いというだ
けで、本当に美味しいかどうかは来てみて初めて分かったんじゃない。そんなの、誇れ
る事じゃないわ』
 淡々とそう言うと、私はうにを少量のご飯に乗せて食べる。濃厚な風味と甘さが口の
中にパアッと広がり、満足げな気分で私は頷く。チラリと別府君を見ると、少しの間箸
を休めて不満気に何か考えていたようだったが、やがて一つため息をつくと、箸を動か
して一口、ぶりを乗せた大量のご飯を食べる。ゆっくりと咀嚼して飲み込み、今度は満
足気な吐息をつくと、私の顔を見ずに、目線を下に向けたままで言った。
「まあ、どうでもいいか。会長と二人のデートで、美味い飯が食えたっていうその事だ
けでさ。これでこの後も十分楽しめるし」
 あっさりと気持ちを切り替えた別府君に、私はちょっとだけ感心した。もうちょっと、
グダグダと不満を持つかと思ったのだが、意外と彼も大人らしい。
 これ以上の文句は、逆に私が負けたような気になってしまうので、私は頷いて同意した。
『そうね。確かにここのご飯が美味しいのは事実だわ。それに、もしもお昼があまり美
味しくなかったら、不愉快さの余り、ここで打ち切って帰っちゃったかもしれないし』
 すると彼は、思わず小さく呻いて顔をしかめた。
「何だよ。もしかして、エスコート失敗して会長を不機嫌にさせたら、その時点でデー
ト終了とかだったんか?」
 彼の問いに、私は無表情のまま甘エビを加えて尻尾の中の身までしっかり引き抜いて
味わいつつ頷いた。口の中の物を全部飲み込んでから答える。
『冗談よ。ちょっと脅してみただけ。そもそもこれは私の為じゃなくて貴方へのお返し
として付き合ってあげてるんだから、つまらなかろうがなんだろうが、我慢して最後ま
で一緒にいてあげるわよ』
 それを聞いて、別府君がホッとした顔を見せた。
「良かった。エスコートが下手くそで女の子から途中でデート打ち切りにされたなんて、
一生残る心の傷になっちまうからな」
『あら? でも、帰らないってだけで、容赦なく批判はするかも知れないわよ? 私に、
楽しくもないのに楽しんでいるフリをするような演技力まで期待されても困るから』
 本当なら、私が頑張って別府君を楽しませなくちゃいけないし、その為に最大限の努
力を払わなくちゃいけないとは、分かっている。だけど、他の人に対してそれは出来て
も、彼の前だとどうしても、猫かぶりの演技は出来ないのだった。
「ちぇっ。分かってるよ。それに、俺だって会長にちゃんと楽しんで貰いたいからな。
だから、どっちかといえばつまらないならそう言ってくれた方が有難いかも」
 その言葉を嬉しく思いつつも、私は関心なさそうに小さくフン、と鼻息を漏らし、一
言、こう答えた。
『それについては私がとやかう言える問題じゃないわ。私を楽しませることが貴方の望
みに叶うのなら、せいぜい頑張ることね』
 突き放したような態度にも怯むことなく、別府君は頷いた。
「ああ。とりあえず、飯が成功したことで自信も少し付いたしな。頑張らせてもらうよ」
 その言葉を、何故か頼もしく思いつつも、私はついつい反対の事を口に出してしまう。
『あら? さっきの下手くそな料理レポート見た限りだと、あながち手放しで安心出来
る状況とも思えないけどね』
 すると、予想通り別府君が苦い顔をした。
「あんなのは会長の無茶振りだからノーカウントだろ。俺が自分から思いついた訳じゃねーし」
『突発的な状況に的確に対応するのも、能力のうちよ。全部計画通りに物事が進むんだっ
たら、誰だって上手く行くわよ』
「はいはい。会長のご高説、誠にごもっともだと思いますよ」
 肩をすくめ、うんざりしたような口調の彼に、私はそれ以上突っ込むことを止め、無
言で食事に意識を戻した。丼の中には、まだ半分近い量のご飯と刺身が残っている。も
う一つ、ぶりと少量のご飯を一緒に口に運びつつ、私は考えた。
――どうしようかな、これ…… 結構量あるけど……
 意識を自分の胃袋へと移す。まだ満腹という訳ではないし、食べようと思えば完食も
出来る。とはいえ、普段の昼食の倍くらいの量を食べ切ることにはいささか抵抗もあった。
――体重増えるのも嫌だし、満腹のお腹でデート続けるのも苦しいし、それに……
 チラリと別府君の食べ姿に視線を送る。
――大食いだって思われるのも、ちょっとヤダしな……
 普段の食事はかなり意図的に制限しているので、決して私は小食なわけではない。し
かし、これまで別府君から抱かれているイメージとはかけ離れているかと思うと、それ
を壊したくはなかった。
――やっぱり残そうかな。だけど、外で出されたものを残すっていうのもな……
 別府君を見ると、そろそろ全部食べ終えようとしていた。その余裕のある食べっぷり
からして、まだお腹に入る余地はありそうだ。
――そうね。食べ切れなかった分は彼に食べて貰おう。そうすれば、少なくとも、もっ
たいないなんて事はないわ。
 そう決めた時、おあつらえ向きに別府君が私を気に掛けてくれた。
「ん? どうした、会長。何かさっきから食事進んでないみたいだけど」
『人の器を覗き込まないでよね。イヤらしい』
 彼の視線が丼の中を窺っていたので、咄嗟にそれを隠しながら、私はつい文句を言っ
てしまった。それから彼が余計なことを口にしてこの機会を逸する前に、慌てて答える。
『……さすがにちょっと量が多かったからね。お腹いっぱいになって来たかも』
「なら、無理しない方がいいんじゃないか? 別に残したって構わないんだし」
『ダメよ』
 何の気なしに言った彼の言葉を、私は即座に否定した。
『食べるものは粗末にしないように、出されたものは全部食べなさいって、別府君はそ
う教わらなかったの? 少なくとも、私はそう躾けられて来たけど』
「そりゃ、子供の時の話だろ? いや。確かに食べ物を大切にするのは大事な事だけど
さ。けど、そういう意識をちゃんと持った上で、でも食べ切れない時は残すのもしょう
がないじゃん」
 彼の主張に、私は難しい顔で丼に残ったご飯を見つめた。
『けれど、やっぱり残すのは抵抗あるのよね……』
「だったら、ゆっくりでも食べ切るか? 別に俺は、それまで待っていてもいいけどさ」
 彼の提案に、私は小さく首を振った。
『いいえ。そんな時間ももったいないし、それにちゃんと、ご飯を粗末にせずに済む方
法も……あるにはあるよね』
 考え込むような仕草で呟く私に、別府君がちょっとうんざりしたような声を上げた。
「何だ。解決策があるなら早く言ってくれよ。会長も結構もったいぶるよな」
 その言葉を待っていましたとばかりに、私は丼を別府君に差し出す。
『そう。なら、残りはお願い』


続く
今度は休みなしで最後まで行く予定
152ほんわか名無しさん:2014/05/27(火) 06:18:31.58 0
待ってました!期待してます!
153ほんわか名無しさん:2014/05/28(水) 01:25:46.37 0
正直ずっと待ってた
154ほんわか名無しさん:2014/05/29(木) 03:35:52.36 0
嫌な時間に起きたついでに久しぶりにお題
・最近、怖い夢ばかり見るツンデレ

もー妄想に昇華でもせんとやってられへんっちゅーねん
155ほんわか名無しさん:2014/05/29(木) 11:26:11.15 0
お題
つ・ツンデレにお別れの挨拶に行ったら
1561/2:2014/05/30(金) 01:50:09.78 i
『なぁ、うち思うんやけどな』
「あぁ、なんだよ」
『うち関西弁と思われている、摂津弁で話すやん』
「細かく言うと、河内の人間が想像する摂津弁だな」
『そんでな、なんでタカシは訛ってないんかなーって思って』
「あー、差別化?じゃないか」
『うちは訛ってんのに、あんたは訛ってない、どんな状況なん、これ?』
「転校か引っ越しか、大穴で旅の芸人一座、とかか」
『じゃあ、それでいこか、うち今から旅の芸人一座の娘やるわ』
「面倒くさいキャラ設定だな」
『うち、もう次の街に行かんとあかんねん、お別れやな』
「開始早々別れのシーンかよ。えーと、お前がいなくなると寂しくなるな」
『好きって言ってくれて、ほんまに嬉しかってんで、けどいっしょにおられへんし』
「ストップ。一回やめよう」
『どしたん、えーシーンやん』
「なんで俺はお前に告白してんだよ、しかも断られてるし」
『いずれ去りゆく旅一座、ここでおうたは何の因果か、抱いた気持ちは恋心、
 思えど実らぬこの気持ち、流す涙は嬉しさから悲しさからか、二人の思いは嗚呼』
「俺の話聞いてる、なんか朗々と語っているけどさ」
1572/2:2014/05/30(金) 01:51:21.46 i
『状況の説明やん、あんたはうちのことが好きやけど、うちはもう行ってしまう
 そんな少し探したらいくらでもある使い古されたシーンやん』
「自分で使い古されたとか言うなよ」
『このキャラ設定で他になんか思いつくか?』
「………ごめん、思いつかない」
『せやろ、このルートしかないやろ。けどなんか人に言われたらイラっとくんな』
「そいつは失礼、やりなおすか」
『いや、もうええわ、時間もつぶれたし』
「てきとーだな、まぁこういうのは設定だから楽しめるもんだよな、
 いずみと話してる時間は好きだし、いなくなるのは寂しいしな」
『そーいうのは、いちいち口に出さんでもええよ、言わぬが華、やで』
「そーいうもんか?」
『そーいうもんや(まぁ、同じこと考えてたんがわかったのは、めっけもんやけどな)』

『で、結局なんでうちは訛ってんのかな?』
「その辺は他人に任せるのがお前のやり方だろ、俺も知らないぞ」
『そやな、またテキトーに妄想してもらうわ』

〜終われ〜
158ほんわか名無しさん:2014/05/30(金) 20:29:29.06 0
摂津弁ていうのかー。勉強になるなー

GJ
続き5レスほど行きます
「はい?」
 思わず目を丸くして丼を見つめた彼に、私は淡々と告げる。
『良い考えだと思わない? これなら、私も無理してご飯を食べ切る必要もないし、食
べ物も粗末にしなくていいもの』
「うぐぐ。けど、俺だって結構腹膨れてるし、これ以上っつーのはちょっと……」
 どうも乗り気でない彼に、私は頼む側としては有り得ないくらい高飛車な態度で押し
切りに掛かった。
『それにしては、随分と軽々と食べ切ったように見えたけど。それに、さっきは私を心
配して、色々と声掛けてくれたんじゃないの? それとも、あの心配は形だけのものだっ
たのかしら』
 そして、一旦言葉を切り、顔を俯かせて上目遣いに彼をジッと見つめながら、一言こ
う付け足した。
『それとも、私の食べかけなんて食べるのは御免だとでも言うの?』
 この一言が決め手になったようだった。別府君は、ウッと困った表情になり、視線を
逸らす。しかし、そのままジッと彼を見つめる私に、とうとう根負けしたかのように言った。
「分かったよ。俺が残りを片付ければいいんだろ? ほら」
 渋々といった様子ながら、片手を出し丼を要求する。
『はい。じゃあ、後は宜しく』
 受け取った丼の中を見て、咄嗟に彼が文句を言ってくる。
「何だよ。残すって、ホントにご飯だけなのかよ。ちゃっかり刺身の部分だけ全部食っ
てんのな」
『ちゃっかりって、随分な言いようじゃない? 食べられる分だけ食べたらこうなった
だけなんだもの。それに、せっかくの美味しい海鮮丼なんだもの。お刺身の分だけは全
部食べなきゃもったいないわ』
 言い訳しつつ、私は何だか自分が食い意地の張った女のように思えてきてちょっと嫌
になった。これならいっそのこと、多少無理してでも全部食べた方が良かったかも、と
少し後悔する。
「そりゃまあ、気持ちは分かるけどさ。残りがご飯だけって、ホント罰ゲームみたいな
もんだな」
『ごちゃごちゃ文句が多いわよ。男なら一度食べると決めたなら黙って食べなさい』
 これ以上彼の愚痴を聞かされる前に、無理矢理強気な態度で押し通すと、彼は小さく
舌打ちした。
「分かったよ。黙って食えばいいんだろ。ちくしょう」
『頑張ってね。ザンパンマン』
 半ばやけくそにご飯を掻き込む彼を見つつ、私は心の中で自嘲気味に思う。
――こんなので、間接キスだなんて言ったって……雰囲気もへったくれもないわよね。
意識してる私が、何だか馬鹿みたいだわ。


『ありがとうございましたあっ!!』
 元気の良い店員さんの声に送られて、食事を終えた私たちはお店を出た。
「うぐぅ……さすがに食い過ぎた……腹が苦しい……」
『だらしないわね。確かに無理矢理食べさせた私が言うのも何だけど、せっかくのデー
トなんだから、女の子の前で格好付けるくらいの事は出来ないの?』
 私の要求に、別府君は首を横に振って拒否する。
「無理。つーか、大食いをアピールしたって別段カッコ良くもないと思うんだけどな」
『あら? せめて平気そうにしていれば、頼もしく見えるかも知れないじゃない』
 そう言い返すと、別府君はバイクの前でしゃがみ、下から私を見上げて聞いて来た。
「じゃあさ。ここで平気そうな態度を取ったとして、会長は俺が頼もしく見えたりするわけ?」
『そんな訳ないでしょう? たかだか、人よりちょっと多くご飯が食べられるくらいで
頼もしいって思うなら、私は大食い大会のチャンピオンと結婚するわよ』
 即座に答えると、それを聞いた別府君が不満そうな顔を見せた。
「ほれみろ。そもそも無理して頑張ったのに、感謝の言葉一つ無しとかじゃ、虚勢張る
気にもなれねーって」
 言われて気付いたが、そういえば私は確かにお礼の言葉もねぎらいの言葉も掛けては
いなかった。確かにお願いしておいて何も無しというのも確かに失礼に当たる。とはい
え、普段から彼に対してお礼なんて言ったことのない私が、しかも指摘されて言うなん
て何か少し悔しかったので、ついついワザとクールな態度を取ってしまった。
『あら? お礼が欲しかったの。じゃあ、言ってあげるわ。食べてくれてありがとう。
これでいいかしら?』
 淡々とした私のお礼に、別府君は諦めたように首を振った。
「いや、もういいよ。とりあえず次に行こうぜ。すぐ近くだし、出来る限り時間は多い
方がいいだろ?」
 それには特に反論すべき余地は見当たらなかったので、私は頷いた。
『そうね。こんな座る場所も日を遮る屋根も無いところで、グダグダと貴方と言い合い
をしているなんて不毛なだけだし』
 私の言葉を合図に、彼はややしんどそうに立ち上がる。キーを差込み、セルを回して
エンジンを掛けた。私はもはや、ほぼ自分専用ともいえるヘルメットを被ると、彼がバ
イクにまたがるのを待ってからタンデムシートにまたがる。そしていつものように、両
腕で彼の体にしっかりと抱きつくと、別府君が慌ててこっちを向いて叫んだ。
「ちょっと、会長。そんなしっかり腹を締め付けられたら、マジ吐くから!! もちょっ
と緩めてくれって!!」
 それがあまりにも情けなく見えたので、私はちょっとムッと来て、一度腕を離すとわ
き腹を力を入れて小突いた。
「あいてっ!! 何すんだよ……」
『別に。貴方の態度が見ていて見苦しかったから、少しイラッと来ただけよ』
 果たして彼は、恋人とデートに来たとしても、こんな風に情けないところを見せたり
するのだろうかと、私は疑問に思わずにはいられなかった。しかし、少なくとも私は望
んでデートの相手に選ばれる女性なのだ。だとしたら、もう少しヤセ我慢してくれたっ
ていいのにと思ってしまう。
「見苦しいって……大体、会長のご飯の残り全部食ったからこんなになってるって言うのに」
『黙りなさい。もうこれ以上さっきの件で文句も愚痴も一切禁止。でないと……』
 思わせぶりに途中で言葉を切ると、別府君は恐らく私の望んだ通りの事を推測したの
だろう。慌てて遮って言った。
「わ、分かったよ。もう言わないから、せめてもう少し腕の位置を上げてくれよ。そう
すれば少しは楽になるから」
『全く、本当に貴方ってばヘタレなんだから。情けないわ本当に』
 ブツブツと文句を言いつつ、腕を胸の下辺りまで上げてから抱きしめる。
「よし。それじゃあ出るよ」
 私に合図してから、別府君はスロットルを回す。軽快なエンジン音を立てて、ゆっく
りとバイクは走り出した。


 目的地の水族館までは10分と経たずに到着した。
「お疲れ様、会長」
 入り口のところでバイクを止め、別府君が声を掛けて来る。降りろという合図だと察
して、私は別府君の体から腕を解き、慎重にバイクから降りて地面に立つ。
「俺はちょっと、バイクを止めて来るからさ。ここでちょっと待っててくれよな」
『早くしなさいよね。待たされるのは好きじゃないから』
 私の言葉に、彼は軽く肩をすくめる。
「了解。分かってるってば」
 片手を挙げて答えると、私が乗っている時よりいささか乱暴にバイクを発進させて、
彼は行ってしまった。
『さて……と』
 待ち時間を無駄にするのももったいないから、先にチケットでも買おうかと思って財
布をバッグから取り出してから、私は彼にお金を預けてしまってるのを思い出した。
『しまったわ。こんな事なら、お金預けなくても良かったんじゃないかしら』
 仮にお昼をご馳走になったとしても、私の方で入場券を買ってしまえば、金額はとも
かく立場的には対等になるはずだったのに。おまけに時間も節約出来ていいことずくめ
だったのに、言い争いで時間を無駄にするわ、結局待ち時間も無駄にするわでいい事ない。
『全く……変なところで意地っ張りなのも問題よね。彼も、私も』
 自嘲交じりに一人ごちりつつ、仕方なく大人しく待っていると、やがて彼が走って戻って来た。
「ゴメン。ちょっと駐輪場の場所探すのに時間掛かってさ。待った?」
『別に。何もわざわざ息せき切って走ってくることもなかったのに』
 本来なら、気遣いを見せて言うべきことを、私はつい、素っ気無い口調で言ってしま
う。案の定、彼は言い訳めいた答えを返してくる。
「いや。せっかく目的地に着いたのにさ。外で待ちぼうけじゃ悪いなって思ったから」
 逆に、彼に気を遣わせてしまう。しかし、この時私は、それよりも何だか自分が早く
水族館に入りたいと思われているんじゃないかと勝手に思い、しかもそれが何だか気恥
ずかしく思えて、さらに否定するような事を上乗せして言ってしまった。
『……そんな、5分やそこらの事で気を悪くしないわよ。大体、水族館に行くって決め
たのは貴方であって、私じゃないんだからね』
 不機嫌そうに顔を背けてしまうと、彼は少し無言で私を見つめていたようだったが、
やがて聞こえないくらいごく小さなため息が漏れるのが聞こえた。それから、私に促す。
「分かってるよ。それより、中入ろうぜ。せっかくの時間を無駄にしたくはないからさ」
 そのまま別府君は返事を待たずに歩き出す。私も、答えることなく彼の後に付いて、
入り口へと向かった。


続く
165ほんわか名無しさん:2014/06/01(日) 01:57:24.56 0
しかし、この会長エロい
付き合ってもないのに男との距離感が近すぎw
鼻かむの手伝わせてたりしてたしw
166ほんわか名無しさん:2014/06/01(日) 19:13:58.82 0
>>30
今回の新曲耳に残るメロディーで好き
167ほんわか名無しさん:2014/06/01(日) 19:14:43.16 0
誤爆しましたすいません
1681/7:2014/06/02(月) 23:29:58.45 0
・本当はニーソを履くことに憧れてたツンデレ

『おい』
 ドスッ!!
「アイタッ!! 何すんだよ、美琴」
『何すんだ、じゃない。お前、今何を見ていた?』
「何って…… いや。別に何も見ちゃいないってか、普通に前見て歩いてただけだけど?」
『フン。白々しくウソを付くな。私の目がごまかせると思うなよ』
「意味が分かんないんだけど…… 逆に聞くけど、美琴は俺が一体何を見ていたって言うんだよ?」
『全く…… とぼけるのもいい加減にしろ。イヤらしい目付きで今すれ違った若い女性の
下半身をジロジロと見ていたクセに。お前には道徳心というものはないのか?』
「ああ。あの、ニーソ履いてた子か。いや。俺さ。ニーソ履いた女の子が好みでさ。視線
に入るとつい、目で追っちゃうんだよなぁ」
『そういう犯罪行為はパソコンの中だけにしておけ。お前に見られる女の子からすれば、
果てしなく迷惑だろう』
「迷惑って…… 別にそばに寄って見つめてるわけじゃなし。ちょっと視線送っただけで
気付かないだろ。普通」
『そんなのはお前の勝手なエゴだ。女は結構敏感だからな。視姦されてる側からすれば、
気持ち悪いに決まっている』
「そうか? ニーソなんて最近じゃ、いちファッションとして確立してるし、そもそも他
人が見て可愛いと思われたいから、そういう格好してるんじゃないの? お堅い美琴さん
には分からないかも知れないけどさ」
『誰が堅物だ!! 人を小馬鹿にするのもいい加減にしろ。ジャニーズとかにいるような
イケメンに見られるならともかく、お前のようなブサメンに見られれば、不快に決まって
いる。もう少し己を自覚して、行動を慎め』
「はーん…… なるほどね」
『何がなるほどなんだ? 変な目付きで私を見るのはやめろ』
「美琴、もしかして嫉妬しているな?」
1692/7:2014/06/02(月) 23:30:32.89 0
『んなっ!? だ、誰が誰に嫉妬しているというのだ。下衆な勘繰りをするな』
「だって、隣にいる男が他の女の子に目を奪われているのを怒るってのはそういう事だ
ろ? いや。ゴメンな。美琴。俺はニーソに目を惹かれただけで、その女の子に浮気した
わけじゃないからさ」
『バカなことばかり言うな。私はお前がスケベったらしい顔をしていると、一緒にいる私
まで常識を疑われるから注意したまでだ。お前が、どこのどんな女に興味を持とうが……
わ、私は一向に構わん』
「何かさ。顔が無理してますって言ってるぞ」
『言ってないっ!! 勝手な妄想をするな。全く…… 呆れて物も言えないな』
「なあ、美琴」
『何だ? 真面目な顔をして』「お前も、たまにはニーソ履いてみたら?」
『は? な、何をバカなことを言っている。何を好き好んで、お前のスケベたらしい視線
を浴びるためにそんな格好をしなければならないんだ。バカげている』
「でも、脚もスラッとしてキレイだしさ。俺ばっかりじゃなくて、人目を惹くと思うし。
レギンスもいいけど、どうだろう?」
『バカバカしい。上手いコトを言って、私の太ももやあわよくばスカートの中を拝みたい
と思っているだけだろう? お前の魂胆など分かっているぞ。この変態が』
「まあ、個人的には至高はミニスカだけどさ。でも、ショートパンツにニーソもいいと思うぞ」
『私にあんな活動的なファッションが似合うわけないだろう。もういい。お前のふざけた
会話にこれ以上付き合っていられるか』
「あ、おい美琴。ちょっと待てって」
『うるさい。ついて来るな。このドスケベの変態が。お前みたいな恥ずかしい奴と知り合
いだと思われたくな――わわっ!!』
 ベチャッ!!
「お、おい。大丈夫かよ。思いっきりコケたけど」
『ううううう〜〜〜〜〜っっっ!! った〜〜〜〜〜っ!!』
「全く…… 焦って急に駆け出すからだろ。ほら。手、出せよ」
『う、うるさいっ!! お前の助けなどいらん!! 一人で起き上がれる』
1703/7:2014/06/02(月) 23:30:58.88 0
「顔、打ってないか? 腕や脚は? 擦りむいたりしてないか?」
『だからこの程度、平気だと言っているだろう。服が汚れた程度だ。腕も多少擦った程度
で血も出ていないし、脚だって――っっ!?』
 バッ!!
「大したことなくたって、雑菌が入って化膿したり、後からアザになったりするかも知れ
ないだろ。どっか入って応急手当てくらいした方がいいんじやないか?」
『そんなこと、お前が気に掛ける必要はない!! それよりも、お前…… 見たな?』
「は? 見たって、何がだよ?」
『何がって、スカートの中に決まっている!! スケベなお前のことだ。見逃すはずがない!!』
「美琴の感覚からすればスケベなのは認めるけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない
だろ? 怪我の手当ての方が先だっての」
『私にとってはこっちの方が重要だ!! 言え。否定しないということは見たんだろう?
どこまで見た? まさか……』
「安心しろ。パンツまでは見えてないから。多少スカートがめくれた程度だって。まあそ
の……心配するな」
『もしそこまで見られたなら、今すぐお前の首を絞めて殺してやるところだが。しかし私
が言っているのは、もう少し下の、その……ひ、膝上の……ふ、太ももというか……こ、
この辺だ……』
「うーん…… 聞かなきゃ、むしろ触れずに済んだと思うんだけど、何でわざわざ自分か
ら地雷原に飛び込むようなことするかなぁ?」
『やかましいっ!! もしかして見られてたんじゃないかと、モヤモヤした気持ちのまま
でいられるかっ!! そういうことは……やはりお前……見たんだなっ!!』
「いや。そりゃあレギンスではあり得ない白い太ももが露になれば、ニーソフェチとして
は見ないわけにはいかないだろ」
『何を得意げに語っているんだこの変態がっ!! 消せ!! お前が見たもの全てを記憶
から消し去れ!! 出来ないと言うなら、私がお前の目から指を突っ込んで脳を掻き回し
て壊してやる!!』
「怖いこと言うなよ。つか、目が本気だし」
1714/7:2014/06/02(月) 23:33:13.36 0
『私は本気だっ!! うううううっ…… よりによってタカシに見られるなど……不覚に
も程がある……』
「むしろ俺で良かったんじゃないか? 友子あたりに見られたら、根掘り葉掘り聞かれた
あげくに次の日にはクラス中にその事実が広まってる事になってただろうし」
『ふぐっ!! だがそんなことはあり得ん。アイツと会うのにニーソなんてわざわざ履く
か。タカシだから…… い、いや。何でもないっ!! 忘れろ!!』
「は? 何取り乱してんだよ。変な奴だな」
『やかましい。不可抗力とはいえ、お前にこんな格好見られたんだから、私だって動揺く
らいする』
「それにしても、ニーソ履くならミニスカなりショートパンツなり履いて見えるようにし
た方が良かったんじゃないか? 俺からすればもったいないことこの上ないぞ」
『黙れスケベ。誰がお前を喜ばせるために履くか。こ、これはだな。母様が洗濯物を溜め
てしまっていて、他に履く靴下がなかったから仕方なく履いたまでだ』
「俺を喜ばせるためなんて、そんなうぬぼれた事は思ってないけどさ。ただ、だったら何
でニーソなんて買ったんだ? まさかそれも母親のとか言わないだろうな」
『そ、それは……と、友子に勧められて……押し切られただけで、決して私が自分から買っ
たわけじゃ……』
「あれ? 友子は知ってたのか? さっきの態度からてっきり誰も知らないものだとばか
り思ってたけど。じゃあ話しても問題ないかな?」
『わああっ!! 止めろっ!! わざわざクラス中に広めるような真似するな!!』
「その焦りっぷりから見ると、友子から勧められたってのはウソだろ?」
『ふぐぅっ……!! な……何故そんな事を言える。根拠もなしに……』
「だってそもそも友子なら、買ったら絶対履いて見せてって言うじゃん。それなのに友子
に話したり見られたりするのを拒否するようなことを言うなんて矛盾してるだろ? てこ
とは、ウソだろなって。どう?」
『むっく…… こういう時だけいらない知恵を働かすな。バカはバカのままでいればいいのに……』
「俺の知的好奇心が疼くんだよね。特に美琴のこととなると。このまま美琴が隠すのは自
由だけど、そうするとやっぱり友子に相談して探るってことになっちゃいそうでさ」
1725/7:2014/06/02(月) 23:33:45.09 0
『それはダメだ!! 絶対にダメだ!! ああああ……アイツはその……余計なことまで
探り当てるから…… アイツにもし話したりしたら、お前達とは縁を切る!! 二度と出
会わないところまで逃げてやるからなっ!!』
「その逃げるってのが逆に美琴らしくてリアルだなあ。叩きのめす、とかじゃないんだ」
『お前はともかく、友子は逃げるのも神的に上手だからな。私の全てを丸裸にされた上で
ネット上に広げることなど造作もなくやるだろう』
「でもさ。それじゃあ美琴の知らない間に、知り合い中に美琴が実はニーソ好きだって噂
が広まる可能性もあるけど、それでもいいのか?」
『誰がニーソ好きだっ!! お前が…… いや。何でもない。と、とにかくだ。友子にだ
けは絶対にしゃべるな。分かったな?』
「まあ、それも美琴次第なんだけどね。今ここで、俺にニーソを買った理由を説明してく
れれば、聞かずに済む話なわけで」
『ぐっ…… ふぬぬぬぬ…… 人の弱みに付け込んで、恥部を漁ろうとはこの鬼畜め。お
前のような奴はきっと地獄に落ちるぞ』
「そんな恥ずかしいことなのか? 今時、アニメキャラやアイドルだけじゃなくて、普通
にファッションとして定着しているのに」
『恥ずかしいに決まっているだろう!! 自分で言うのも何だが、この堅物な性格の私が、
実はそういう可愛いファッションに憧れていたなどと……』
「へえ。なるほど。美琴って実はそういう趣味があったんだ」
『――――っ!!!! うっ……ううううう…… お前に知られるなど、一生の不覚だ……
そもそもお前が他の女に目を奪われたりしなければこんな事にならなかったのに。お前の
せいだぞ!!』
「いいじゃん、別に知られたって。むしろ俺も、美琴の可愛らしい格好した姿とか見たかっ
たんだよね。どうせ知られたならさ。いっそ、俺にそういう格好して見せてくれない?」
『何で私がそこまでしなくちゃならないんだっ!! 理由はちゃんと話しただろう。それ
以上の義務はない!!』
「確かに、そこまでする必要はないんだけどさ。このままだと、何とかして美琴の可愛い
格好を見たいなって思うあまり、誰かにしゃべっちゃいそうなんだよね」
1736/7:2014/06/02(月) 23:35:20.83 0
『ひ、ひ……卑怯者があっ!! どこまで私を嬲れば気が済むんだ!!』
「嬲るとか、そんな酷いことしてる覚えはないけどなあ。むしろ美琴もそういう格好に憧
れてるんだろ? 勇気を出すきっかけ作りをしてあげてるだけなんだけど」
『お……お前に強制されてまで着る気はない!! わ……私だって勇気を出せば、誰も知
り合いのいない町とかなら……』
「それはむしろ危ないな。美琴って可愛いし、変な男にナンパされちゃうかもしれないし。
虫除けに俺を隣に置いといたほうがいいと思うよ。美琴って男慣れしてないから、そうい
う時アワアワしちゃうだろうし」
『やかましいっ!! どちらにしろ、私がそういう格好しなければ友子に話すつもりなん
だろう? どのみち選択の余地を無くしておいて、よくそんな事が言えるな』
「まあ、だってせっかくのチャンスだし逃す手はないなって。そうだな。今度一緒に出掛
ける時に着て来てよ。今日は一度戻って着替えるほどの時間はなさそうだし」
『どのみち今日は絶対無理だ。その……ニーソを買うには買ったのだがな。実はその……
合う服を買いに行っていなくて……だな。あの日はニーソだけで、いっぱいいっぱいだったし……』
「じゃあさ。いっそ、今日の用が済んだら二人で美琴の服買いに行かないか? ニーソに
似合いそうな服なら、俺も一緒に選んでやるよ」
『なっ――!! ダダダダダ…… ダメだダメだ!! じ、時間もないし第一そんな持ち
合わせもない!!』
「せっかくだし、俺が払える分は払うよ。美琴のニーソ姿見られるだけで、プレゼントす
る価値は十分にあるし。服買ったらさ。早速着替えて、どっか回ろうぜ」
『そんなの無理に決まっているだろう!! 人前でそんな格好で歩き回るなど出来ん。み……
見せるなら、せめて家に帰ってからにしろ。お……お前だけにしか……いや。お前だけに
なら……何とか、我慢は出来るが……』
「家で、二人きりで……かあ。俺はいいけど、美琴にとってはむしろ危険なんじゃないかと思うぞ」
『な、何が危険なんだ? まさかお前……い、いやらしい妄想をしているんじゃないだろ
うな? それは絶対ダメだ!! 服を着て見せるだけだからな』
1747/7:2014/06/02(月) 23:36:55.30 0
「ああ。安心してくれ。そういうお子様に見せられないようなことじゃないから。ま、い
ずれにしても服を買ってから、着て見せてくれるのは決まりな?」
『ううううう…… まさかこんな事でタカシに見せる日が来ることになるなんて……』
『(もともとはタカシがニーソ好きだと知って……思わず買ってしまったなんて……さす
がにそれは知られるわけに行かないからな……)』

〜帰宅後〜

『わああっ!! お……お前、今何をしたっ!?』
「何って、スマホで写真撮っただけだけど」
『だけだけど、じゃない!! 誰が写真まで撮っていいと言った!! 消せ!! 今すぐ消せ!!』
「安心しろって。ネットにアップしたり誰かに見せたりはしないからさ。せっかく美琴が
こんなエロ可愛い格好してるんだし、記念に撮っとかないと損だからな」
『何が記念だ!! 写真でまで視姦されるなど耐えられん。さっさと消せ』
「俺さ、まだスマホの扱い慣れてなくて、画像削除しようとして、うっかり誰かにメール
で添付して送っちゃうかもしれないけど、いい?」
『いい訳がないだろうっ!! い……今のも脅しか? お前がそんな卑怯な人間だとは思
わなかったぞ』
「だから二人っきりだと危険なことになるよって警告したのに。そうこうしてるうちに、
もう3枚ほど撮っちゃったし」
『止めろ!! お、お願いだからもう撮るな!! 恥ずかしくて死にそうだ……』
「もう覚悟決めてさ。可愛いポーズ取って撮らせてよ。絶対誰にも秘密にするから」
『出来るかそんな事があっ!!』

 だが、結局は丸め込まれて、タカシに大量のニーソ写真を撮られることになってしまっ
た美琴さんであった。
175ほんわか名無しさん:2014/06/02(月) 23:38:51.80 0
みこちん可愛すぎwww俺も美脚すりすりしたいお……
176ほんわか名無しさん:2014/06/04(水) 13:49:26.01 0
お題
つ・ツンデレにジャスミン茶って美味いの?って聞いたら




個人的にはイマイチ美味しさが分からない……
177ほんわか名無しさん:2014/06/04(水) 18:39:55.96 0
つまりこういうことだな
つ・ツンデレがジャスミン茶まみれになっていたら
つ・ツンデレにジャスミン茶を飲ませ続けたらどうなるの?
つ・ジャスミン茶ができました
178ほんわか名無しさん:2014/06/04(水) 18:57:23.17 0
全く意味がわからない……
ツンデレ会長さんが男とデートする話の続き行きます
「はい、これ。入場券」
 さほど待つことも無く、彼は入場券を買って戻って来た。差し出されたチケットを見
て、私はふと、疑問に思ったことを口にする。
『何で、こういう所の入場券とかって、こう無駄にサイズが大きいのかしら?』
 チケットを両手で持って顔の前に翳してみる。すると別府君が、至極一般的な答えを
返してきた。
「いや。そりゃやっぱりチケットの半券自体が記念になるからだろ? サイズ大きくし
て、きれいな写真を印刷しとけばさ。あとから思い返すこともあるかも知れないじゃん」
『思い出なんて、自分の心の中に仕舞っておけば、それで十分よ。大体、ほとんどの人
がボロボロにした挙句、最後には燃えるゴミになってるんでしょうから、領収証のよう
なものがあればそれで十分だわ』
 文句を言いつつ、私は仕舞い場所のないチケットを、仕方無しに折りたたんで財布の
お札入れに入れておく。レシートなんかもそうだけど、大抵は見もせずにゴミになって
いくものばかりだ。
「まあ、何て言うか会長らしい意見だよな」
 そう答える別府君が、何だか面白がっているように見えて、私は不機嫌そうに顔をしかめた。
『何よ、その言い方。バカにしているの?』
「いや。何というか合理的っていうか、夢も希望もバッサリ切り捨てているあたりが、
いかにもって感じでさ」
 訳知り顔の彼に、私はますますもって不満を覚えた。つい、ムキになって反論してしまう。
『失礼なこと言わないでよね。私だってそれなりに夢も希望もあるわよ。ただ、無駄な
だけのところに無理矢理ロマンを見出すような趣味は無いってだけ。大体、私の何も分
かってないくせに、らしいなんていうの止めてよね』
「わ、悪かったよ。そう怒るなって」
 ちょっと戸惑った様子を見せつつも、彼は素直に謝ってくる。私はもうひと睨み、彼
を睨み付けてから、ぶつくさと小声で文句を続ける。
『全く……ちょっと生徒会で一緒に仕事した程度で、何もかも知ったように私の事を語
られたくないわよ。あんなのは私のほんの一面でしかないのに』
 仮に他の人に言われたとしたら、こんな風に感情的に反論したりしないだろう。だけ
ど、別府君には本当の私をもっと知って欲しい。この時は意識していなかったが、内心
のそんな思いが私の不満を増幅させていた。
「だから、謝ったじゃん。まあ、それならそれで、今日のこの機会にもう少し会長のこ
とを知れると嬉しいけどな」
 自分でもキザったらしい事を言った自覚があるのか、言い終えると同時に彼は、ちょっ
と照れ臭そうな仕草を見せる。
『冗談言わないでよ。貴方なんかに、私の事を知られたくなんてないわ。それにこんな……
たった一日限りのデートで知られるほど底の浅い人間でもないし』
 出来る限りクールに拒否したつもりだったけど、内心の動揺が顔や仕草に現れてはい
なかっただろうか? 不覚にも、彼の言葉に胸が時めいてしまっただなんて知れたら、
恥ずかし過ぎて自殺ものだ。
「まあ、そう言われるとは思ったけどな。でも、考えようによっては便利だぜ。会長の
性格が良く知れれば、それだけ先んじてお役に立てるかも知れないし」
『その言葉には一理あるけど、貴方じゃ無理ね。たとえ私が何を求めているか知っても、
怠け者の貴方だったら、面倒事を押し付けられる前にとっとと逃げるでしょうから』
 普段と同じようなやり取りをしつつ、彼の様子を窺うが、どうやら私の動揺がバレて
いる気配はなさそうだった。
「うげ。もうちょっと信用してくれてもいいのに。不肖の部下だけど、これでも俺なり
に会長を支えてきたつもりなんだけどな」
『だったら日頃から、口じゃなくて手をもっと動かしなさいよね。貴方のせいで、出来
る後輩二人の仕事までが止まるんだから』
 もちろん、別府君がずっと私を支えてくれたことなんて分かり切ってる。だけど、そ
れを口に出して言われると、つい反論したくなるのだ。それに実際、彼のおしゃべりで
仕事が止まることもあるのだ。とはいえ、それを止める事を私が本心から望んでいるか
といったら、それは嘘になるけれども。
「いや。それは俺ばっかりが悪いんじゃないだろ。ていうか、きっかけは大体文村とかが……」
 そう言いかけて、彼は不意に言葉を途切れさせた。
『何?』
 私の問いに答えずに、彼は何を思ったのか、急に薄く笑いを浮かべて俯いた。あまり
見た感じ気持ちのいい笑い方ではなかったので、私は顔をしかめる。
『何なのよ。急に一人で笑い出したりして。薄気味悪いわね』
 そう咎めると、別府君は首を振り、両手で顔をこすって、笑いを収める。
「いや。何ていうか、せっかくこんな所まで来てるのに何で俺たち、いつもの生徒会室
と変わらない会話してんだろうなって思ったら、何だか急におかしくなってさ」
 言われてみれば確かに馬鹿げているとは思うが、かといって別におかしくなる要素な
んてどこにもないと思う。果たしてどこが別府君の笑いのツボを突いたのか、私には理
解出来なかった。
『それは貴方が単に会話のボキャブラリーが貧困なだけでしょう? そんな事でおかし
くなるなんて、全く分からないわよ』
 そのまんま、思ったことを口に出すと、別府君はまだおかしみを湛えたままの表情で
私を見る。その目には何だかからかうような様子が見える。
「それは会長だって同じだろ。別に話題がなかったわけじゃなくて、自然な流れでいつ
もと同じ会話になったんなら、会長の話題の持って行き方もそうだってことじゃん」
 彼の指摘に、私は思いっきり不愉快そうな顔をしてみせた。何気に的を射ていること
に、私自身が気付いているからこそ、余計に面白くなかったのだ。
『そう思うんだったら、貴方の方こそ少しは楽しくなるような話題を提供しなさいよね。
大体、私は普段からおしゃべりでもないし、今更面白がってからかうような事でもない
じゃない。ええ、どうせ私はつまらない女だわ。ごめんなさいね』
 ひがみっぽく自虐してみせると、別府君は無言でジッと私を見ていた。その視線に私
が気付き、彼を見たので視線が交錯する。すると彼は、首を軽く横に振ると、奥を指し
て促した。
「まあいいや。とりあえず、中入ろうぜ。ここで立ち話続けてるよりは、面白い話も出
来そうだし」
 そして返事も待たずに、クルリと身を翻すと私が追いついて来れるようゆっくりとし
た歩調で歩き出す。一瞬呆然とした私は、慌てて彼の後を追い掛ける。
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ』
 すぐに彼の横に並び彼を制止するも、別府君は歩調を緩めずに私の方を見て聞き返して来た。
「何?」
『貴方ね。一緒にいる女の子が気分を害しているって言うのに、何のフォローもなしな
の? それは何? 私がつまらない女だって事に同意しているって事?』
 確かに私は自分で自分をそう評したが、何も別府君にそう思いたがって貰いたかった
訳ではない。自分では決して認めたくはないが、要は彼に甘えているのだ。しかし、別
府君から返ってきたのは実にあっさりした答えだった。
「いや。ただ、俺がそう思ってないって言ったって、どうせ会長は信じてくれないだろ
うからさ」
 さも当然のような解答に、私の不機嫌さがたちまち掻き消える。考えるまでも無く、
私の性格なら別府君がどんなにフォローして私を褒めようがそれを素直に信じる事はあ
りようがなかった。
『……そうね。貴方の上っ面だけの言葉なんて空気よりも軽いもの。私でなくても、そ
んな言葉を真に受ける人なんて世の中にいるとは思えないし』
 やや毒を含んだ物言いで同意すると、別府君はちょっと複雑そうな表情を見せたが、
すぐにそれを消すと、処置無しと言った感じで肩をすくめる。
「ほら。それどころか、下手に褒めると虫唾が走るとか気持ち悪いとか、何故か悪口ま
で言われるだろうからさ。だったら、俺の言葉なんかより、さっさと珍しい海の生き物
とか見た方が、会長の心は癒されるんじゃないかと思って」
 なるほど。彼の言い分はごもっともだった。少なくとも、彼の立場からすれば下手な
いる。しかし、元来ひねくれ者の私は、だからと言って、それに素直に納得したくはなかった。
『あら? そうでもないわ。貴方と話をしていても、気分が良くなることはあるのよ』
「へえ。会長からそんな答えを聞けるとは思わなかったな。俺との会話が楽しいだなんて」
 興味深げに、そしてちょっと嬉しそうに彼は食い付いてきた。私は真顔で頷くと、彼
を見つめてその後を続けた。
『ええ。徹底的に貴方を追い詰めて、一言も言い返せない状況まで追い込んだ時の貴方
の絶望的な表情を見るのは、いい憂さ晴らしにはなるのよ。本当に』
 すると、たちまちのうちに彼の顔が絶望的な表情になる。申し訳ないが、その何とも
言えない表情が、本当に面白いのだ。いや、もちろん彼とのおしゃべり自体を楽しんで
もいるのだが、この困惑と悲嘆が交じり合った顔を、一日に一回は見ないと物足りない。
「いや、いいよ。どうせそんな事だろうと思ったさ。一瞬でも何がしか期待した俺が間
違ってたんだ」
 諦めたような顔で誰ともなしに呟いて、彼は深いため息をついた。もちろん、その期
待もあながち間違ってはいないとか、そんな慰めを口にするような私ではない。
『理解してくれたようで何よりだわ。でも、もう十分。さあ、行きましょう』
 たちまちのうちに元気をなくした彼を急き立てて、私達は水族館の見学コースを歩き出した。


続く。

>>165
花粉症の話とか何年も前なのによく覚えていらっしゃるな

まあ、会長がエロいのは基本ですので。
185ほんわか名無しさん:2014/06/06(金) 19:27:27.78 0
186ほんわか名無しさん:2014/06/06(金) 19:44:02.63 0
この季節になると恒例ですな。
そして最後の一枚wwwww
187ほんわか名無しさん:2014/06/06(金) 20:33:05.31 0
ゴンさんのインパクトに全て持っていかれるw
>>184の続き行きます
「どうする? 順番どおり回って行く?」
 壁にしつらえてある大きな館内マップを前に、別府君が私に聞いてくる。
『どういう意味?』
 彼の質問の意図がちょっと解せなくて、私は聞き返した。すると彼は見学コースの先
を指で指してみせる。そこは水辺に棲む珍しい生き物達を展示しているコーナーだった。
「いや。会長ならさ。普通の魚よりこっちの方が好みじゃないかと思って」
 どうやら、別府君は私が早く好みの生き物たちを見たいと、そう思っているようだっ
た。確かに一人だったらそうしていただろう。しかし、ここはせっかくのデートだし、
綺麗な魚たちを見ながら彼のくだらない話に突っ込みを続けたい気持ちもあった。
『まあ、一番の興味はそこだけどね。でも、せっかく来たんだし順路どおり見ましょうよ』
 すると別府君は特に意外そうな顔をするでもなく、ごく素直に頷いた。
「ん。まあ、会長がそれでいいって言うならいいけどさ」
 順路を歩いて行くと、やがて広い円形の広場のような場所に出た。その中央に、円筒
形の巨大な水槽があり、その中を大量の魚が回遊して泳いでいた。
『ふうん……まあ、見事なものよね』
 水槽の高さは3メートルくらいはあるのだろうか? 私の背の高さより遥かに高い水
槽を見上げつつ、私は感想を口にする。大小様々な魚の群れがいる。時折巨大な影が横
切るのはエイだ。
「このくらい巨大な水槽ともなると壮観だよな。お? あそこ、サメも泳いでる」
『どこ?』
「ほら、あそこ」
 別府君の指差した方を見ると、確かに見た目はしっかりとサメの姿形をしているもの
の、思ったよりも小型なサメが悠然と泳いでいるのが見て取れた。
『何か、随分と小さいのね。ジョーズとかディープブルーに出て来るサメみたいに巨大
なのかと思ったけど』
 ワザと期待外れのように言うと、別府君が面白がるように突っ込みを入れて来る。
「そりゃあいくらこの水槽だって無理だろ。中の魚は軒並み食べられちまうだろうし、
下手したら会長まで食っちまうかもよ? こんなでかい口でさ。ガブッと」
 両手でサメの巨大顎を表現する別府君に、私は事も無げに答えを返す。
『平気よ。そうなる前に、貴方を餌に差し出して逃げるもの』
 たちまちのうちに、別府君がいささかげんなりした顔つきになる。
「会長さ。今、即答したろ? 全く、迷い無く言い切ったよな?」
 そう聞く彼を前に、私はキッパリと首を縦に振ってあげた。
『ええ。だって、そんな場面に遭遇したとしたら、それくらいしか貴方に存在価値はな
いものね』
「そんな事ないだろ? もしかしたら、会長とサメの間に立ち塞がって、果敢に銛で立
ち向かうかも知れないぜ」
 両手で銛を持って突くようなポーズをしながら抗議する彼に、私は特に考えるまでも
無く、思いつくままに答える。
『それでも貴方を盾にして逃げる事には変わりないもの。後は貴方が大人しく餌になる
か悪あがきをした挙句に餌になるかだけの違いでしかないわ』
 それを聞いて彼は顔をしかめたが、いささか面白がるようにも見えるのは、話が突飛
過ぎるからなのだろう。
「全く、会長はロマンって物がないよな。美しいヒロインがピンチになるのを主人公が
果敢に立ち向かうってのは、ハリウッドなんかでは昔からの王道だってのによ」
『だって貴方見てると否応無しに現実を思い浮かべるもの。そもそも貴方なんて主人公
の柄じゃないし、私だってヒロインに相応しいほど美人でもないわよ』
 すると別府君は、私をまじまじと見つめるので、私は咄嗟に厳しい顔つきで睨みつけ
てしまった。
『何? 無言で人の事見つめたりして。イヤらしい』
 そう聞くと、彼は首をひねりつつ答えた。
「いや。俺がハリウッドの主人公なんてのは冗談だけどさ。会長ならジャパニーズヒロ
インとして十分やっていけるだけの容色はあると思うんだけどな」
 真顔で、さも当たり前のように褒め言葉を言われ、さすがの私もドキリとせざるを得なかった。
『バ……バカ言わないでよね。べ、別にそんなに怒ってる訳でもないんだから、変な弁
解する必要ないわよ』
 これはあくまで別府君が弁解の意味を込めてお世辞を言ったのだと、そういう事にし
ておこうと思ったのに、彼は人の気も知らずにサラリとそれを否定してきた。
「いや。そればかりは俺だけじゃなくて他の男子に聞いても同じ答えが返って来るって。
まあ……いや、間違いないと思うよ」
 そんな事まで言われたら、ますますこそばゆい感覚が湧き上がって来てしまう。これ
以上こっちから否定しても、墓穴を掘るだけだと知り、私は無言で彼にプイと背を向け
て歩き出した。
「あれ? 会長、どこ行くんだ?」
『べ……別にアジやマグロの群れなんて、見ていてそう楽しいものでもないわよ。それ
よりあっちに巨大エイの水槽があるみたいだから、それを見てるわ』
「あ、待ってくれよ。俺も行くから」
 別府君が慌てて追い掛けてくるのを一顧だにせずに、私はエイの水槽の前に立つ。近
海の巨大水槽と違って、何匹かの大きなエイが悠然と泳いでいる地味なもので、ほとん
どの人は、長く立ち止まる事は無く、写真を撮ったりしたらさっさと行ってしまう。
――全く、真顔であんなこと言われたら、どんな態度取ったらいいか分からないじゃない。バカ。
 心の中で毒づきつつ、私はエイの姿を見て何とか心を落ち着かせようとした。大きな
エイが通路に腹を見せると、何だか黄色いニコちゃんマークの顔を思い出してしまい、
背中のグロテスクさとのギャップが何だか面白く感じる。
「やっぱり会長って、何かちょっと変わった生き物の方が好きなんだな」
 いつの間にか隣に並んでいた彼が、私の方を見ながらそんな事を言った。そんな知っ
た風な口を利く彼を睨み付け、私は弁解するように答える。
『だって変わった形の方が見ていて面白いじゃない。泳ぎ方だってそうだし、あの器官
は一体何なんだろうって想像したり。そう思わない?』
「いやいやいや。別に文句つけてるわけじゃなくてさ。単なる感想ってだけで。それに、
会長の言っていることも分かるし。うん」
『そんなの、私には判別付かないわよ。ご機嫌取りに話を合わせてるだけかも知れない
じゃない』
 今までだって、あまり私の好みを理解してくれた人はいなかったもの。昔の事を思い
出して、私はため息をついた。グロテスクな魚や両生類を見ていると、必ず親や先生は
もっと普通の人が好みそうな魚のところに連れて行ったり、こういうのが好きだと言え
ば、友達は変わり者扱いしたものだった。果たして彼はどうなのだろうと、そっと横顔
を窺いつつ考える。もし、本当に私の好みを理解してくれて、一緒に話をしたり出来れ
ば、それはきっと楽しいことなのだろうが。
「会長。次のブース行かないか? 深海に棲む魚とかがいるらしいぜ」
 私の言葉に返事をする事無く、彼は振り向いた私に先の通路を軽くあごでしゃくって
示した。私は小さくため息を一つつくと、さっきの話題を引っ張る事無く頷いた。
『そう。なら、そっちに行きましょうか。さすがにエイばかりじゃ見飽きて来るしね』
 最後に、悠然と泳ぐエイを一目見て、私は順路を先へと歩き出す。その時、一瞬別府
君の顔を見ながら私は考えた。彼が途中で話題を変えたのは分かる。だって、絶対別府
君はフォローしてくるし、私は意固地になって別府君の言葉を否定する展開が容易に想
像できるから。
 そう、結局のところ私は彼に甘えているのかも知れない。ワザと自虐めいた事を言っ
て、彼に褒めて欲しいだけなのかも。
 そんな事を考えつつ、半ばボーッと歩いてると、別府君が声を掛けて来た。
「あ、会長。ちょっとストップ」
『何? 次の展示ブースってまだ先じゃないの?』
 私の問いに頷きつつ、彼は案内板を指し示す。
「ほら。ここクラゲの展示があるらしいからさ。ちょっと見て行こうぜ」
 どうやら私は通路だけを見ていて、周りに全く気を配っていなかったようだ。クラゲ
のあのほわほわしたフォルムは結構好みなのに見逃すとは。しかも私の好みを知った上
で呼び止められたのだから、多分彼も私が気に入ると思ったのだろう。
『いいわよ。せっかく入場料払ってるんだもの。見れるところは見ておきましょう』
 彼のご期待に添えることは嫌だったので、あくまで冷静に私は答えた。それでも彼は、
微笑んで頷くと水槽を指して私を促す。
「じゃ、行こうぜ。何か、結構珍しいクラゲもいるみたいだから、見て楽しいかもよ」
 それには答えず、無言で彼の後に付いて最初の水槽を覗き込む。
『へぇ……』
 小さく、私は感嘆の声を漏らした。中にいたのは大きな傘を持つ小型のクラゲだった。
私の目を引いたのは傘から何本もの細い触手が伸びているのだが、その色が鮮やかな赤
に染まっていることだった。
「何か、こうやって照明に照らされて水の中を泳いでる姿って、ちょっと幻想的に見えるよな」
 つまらない感想を述べる別府君を、横目でジロリと睨む。柔らかな体をくねらせなが
ら水の中を漂うクラゲの姿は、幻想的なんて一言で片付けられるようなものではない。
『あの触手って、何であんな赤色をしてるのかしら?』
 別に誰ともなしに疑問を呟くと、私の横で彼が首を捻った。
「さあ。毒があって触れると痺れるとか、そんなんじゃね?」
 誰でも思いつきそうなその答えに、私はちょっと厳しい目付きでチラッと彼を見てか
ら、小さくため息が出た。毒があると何で赤い色になるのかとか、そこまで踏み込んだ
答えを期待していた訳ではないのだが、さすがにちょっとつまらなく思ってしまったのだ。
『全く。小学生でも思いつきそうな答えよね。それって』
 辛らつに答えつつも、私の視線は悠然と泳ぐクラゲを追っている。軟体動物の動きを
見ているだけで、ちょっと心を躍らせてしまう自分が、かなりおかしい部類に入ってい
るのは分かるが、そうなってしまうのだから仕方が無い。
「偉そうに言うけどさ。会長だって分からないから聞いたんじゃないのか?」
 自分の意見が一蹴された事に不満気な別府君に、私はクラゲから視線を外して彼に向
き直った。
『別に私は単に心に浮かんだ疑問を口にしただけで、貴方に答えを求めていた訳じゃな
いもの。それに私なら、例えば食べているエサの影響で色素が変化したのかとか、エサ
を惹きつけやすい色だったからそうなったのかとか、或いは外敵への威嚇の為かとか、
色々考えて答えは出せないわ。別に別府君の答えがダメと言うよりも、安易な答えでご
まかそうとした、その姿勢の方が頭に来るわね』
 興奮気味に言い返すと、さすがの別府君も気圧されてしまい、思わず身をちょっと引
いてから、両手で私を制する仕草をした。
「ご、ゴメン。悪かったからさ。ちょっと落ち着いてくれよ。別に俺も何となく思いつ
きで口にしただけで、それ以上の深い事は何にも考えてなかったから、ごまかそうとか、
そういうつもりはなかったんだけどさ。スマン」
 彼の態度に、私は自分がついうっかり興奮し過ぎた事に気付く。彼にしてみれば悪気
は全く無い訳だし、そもそも、私自身も知識の無い事なのに、偉そうに考え方の浅はか
さを説教するだなんて、身の程を知らないのは私の方だろう。
 しかし、それに気付いたからとって、素直に謝罪する事はどうしても私には出来なかった。
『別にいいわよ。そもそも、聞く相手が間違っていたんだし、期待した方が悪かったわ』
 謝罪ではなく、むしろ相手を卑下する言い方になってしまう。案の定、別府君は半ば
落ち込み、半ば不満そうな表情で、言葉を返す事も出来ずに私から離れて他の水槽のク
ラゲを見に行ってしまう。その様子を見て、私は自虐的なため息をついた。
『……そういえば、別府君へのお礼として企画したのよね。このデートって……』
 彼には聞こえないように、そっと小さく一人ごちる。本当なら、彼をもっと楽しませ
るように頑張らなくちゃいけないのに、どうしてか逆へ逆へと進んでしまう自分の性格
の悪さが恨めしく思ってしまう。
「会長」
『え?』
 別府君の声で、私は現実に引き戻された。意識しないうちに、自分の考えに沈み過ぎ
ていたらしい。
「こっちの水槽、見てごらんよ。何か、綺麗だからさ」


まだまだ続きます
195ほんわか名無しさん:2014/06/10(火) 02:38:01.76 0
グッジョブ
無理せず続けてくれると嬉しい
196ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 08:56:43.83 0
お題
つ・ツンデレにちょっと半月くらいは構ってやれないかもって言ったら




ツンデレスレが出来てから3度目のW杯開幕
197ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 17:57:16.51 0
お題

・スカートの下にスパッツを穿いているため、「見られても恥ずかしくない!」とドヤ顔をキメるツンデレ

・むしろ余計に興奮して、ツンデレのスパッツを着用した下半身を舐めるように見るタカシ






・ブブゼラちなみん
198ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 18:13:15.97 0
おかしいな、4年前見た気がするお題が
199ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 18:44:27.18 0
今年はカシローラちなみんやね
200ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 21:42:54.02 I
うんこ
201ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 21:56:18.30 0
・スカートの下にスパッツを穿いているため、「見られても恥ずかしくない!」とドヤ顔をキメるツンデレ
 ――IN自室。
あ「あぢぃ〜〜〜! なんでこんな暑いんだよ〜〜〜〜!!」
俺「夏だからな」
あ「むむっ! ちょっとそっけなくない?」
俺「喋りたくねーんだよ。暑いから」
あ「けっ! 態度ばっか冷たいでやんの。……あ〜づ〜い〜〜〜。あ、そうだ!」
(スカートばっさばっさ)
あ「えへへ〜、ちょっと涼しい〜〜」
俺「おいっ! 何やってんだお前!!」
あ「へっへ〜ん。残念でした〜、スパッツ履いてるもんね〜! だから全然恥ずかしくないよ!! 何々? もしかしてボクのパンツ見たかった?」
俺(イラッ)
あ「でーも見れませ〜〜ん!! まったらーいしゅう〜〜〜〜」(ばっさばっさ)
俺「あ、そういう八つ当たりするんだ? 暑いからって? へぇ〜〜」
あ「な、なんだよ……。別に八つ当たりじゃないよ! 君がエッチなこと期待してたのが悪いんだろ! 変態! 変態! Do変態!!」
俺「ふ〜ん……。確かさっき、恥ずかしくないとか言ったな? じゃあめっちゃ見させてもらうわ。恥ずかしくないならいいよな!?」
あ「へ? あ、あう……」
俺(ジィ〜〜ッ)
あ「パ、パンツじゃないから恥ずかしくないだけであって……だから、その……」
俺「お、汗で蒸れてる……コレはコレで」
あ「って、これはこれでなんだよ!! やっぱ変態じゃん!!」
俺「うるせーー!! っつーかこのクッソ暑いのになんでスパッツ履いてんだよ! だから暑いんだろ!!」
あ「ハッ!?」
俺「天然かよ!!」
あ「う、うるさいよ!! ボクが何着ようが勝手だろ!!」
俺「んだとー!? 一々八つ当りされるこっちの身にもなってみろ!! もういい、そんなもん脱げ! オラ、脱げ脱げ!!」
あ「にゃあああああ!! やめろぉおおお!! やっぱり変態だああああ!! バカ! バカ! バカぁぁぁっ!!」

この後めちゃくちゃセックスした。
202ほんわか名無しさん:2014/06/13(金) 22:11:07.53 0
久しぶりのあずさん可愛い
203ほんわか名無しさん:2014/06/14(土) 13:48:30.42 0
お題
つ・みんなから判断の間違いを非難されてるツンデレ
 ・ツンデレが男に惨敗したら
204ほんわか名無しさん:2014/06/15(日) 20:33:23.81 0
・ブブゼラちなみん
 ワールドカップ初戦。悔しいかな、敗北を喫してしまったサムライチームに涙を飲む俺。
 そんな中、この感情をここぞとばかりに逆なでする変人美少女が俺の眼の前にいる。
『ブー! ブーブブー!!』
「えーと……それは?」
 サッカー日本代表のユニフォームを身にまとい、ブブゼラを口元に騒音をまき散らすちなみさん。
『ブブー!! ブブブブー!!』
 正直何を伝えたいのか全く分からない。
『ブブブー!』
 不満感を露わにするフーリガンだが、こっちこそ不満だ。
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
『ぶぶぶぶっぶーーーーーー……!』

 ごめんあとは自分で続き書け。
205ほんわか名無しさん:2014/06/15(日) 21:02:49.05 0
投げんなwwwwww
206ほんわか名無しさん:2014/06/15(日) 21:19:58.94 0
ちゃうねん、新手のお題やねん
207ほんわか名無しさん:2014/06/15(日) 21:49:06.85 0
野「野生ツンデレなのだ!!」
忍中「忍び中華でござるアル!」
嬢「お嬢ですわ!」
男「出たな、マイナー三姉妹!」
嬢「ちょ、どういう事ですの!? 他の二人はさておき、私(わたくし)をマイナーだなどと心外もいい所でしてよ!!」
忍中「さておきってどういうことでござるアルか!!」
野「そうなのだ!!」
嬢「おだまりなさい!! 正直ここ数年どころか一発ネタではありませんこと!?」
忍中「むぐぐ……でござるアル……」
野「言い返せないのだ……」
嬢「ふふん! ほら御覧なさい!」
男「あの……俺もしゃべっていかな?」
忍中「いたでござるアルか」
野「忘れてたのだ!」
男「酷い……じゃなくて! 正直お嬢、お前もどっこいどっこいだぞ?」
嬢「ど、どういう事ですの!?」
男「いや、どうもこうも……最近のお前は中華とか幽霊クラスの……」
野「や、やめるのだ!!」
忍中「それ以上はイカンでござるアル!!」
嬢「あ、貴方達……」
野「同じマイナー仲間として、それ以上責めるのは許さないのだ!!」
男&嬢「へ?」
忍中「全くでござるアル!! いくらお前とて言っていいことと悪いことがあるでござるアルよ!!」
男&嬢「いや、あの……」
野「お嬢もここぞとばかりに言ってやるのだ!!」
嬢「そ、それなら貴方方も……!」
忍中「そ、そうでござるアルか?」
野「だ、だったら……こ、この三人からなら……!」
忍中「誰を選ぶでござるアルか!?」
嬢「男らしく決めなさい!!」
男「へ? あれ……!?」
この後メチャクチャ脱臼した。
208ほんわか名無しさん:2014/06/15(日) 22:17:48.77 0
>>207
男哀れwwww
GJ!!
>>194の続き行きます
 手招きする彼に従って、他よりも小さな水槽の円形の窓を覗き込んで見る。同じく円
形の水槽の中に幻想的なライトが当てられ、中で小さなクラゲが何匹も漂っていて、何
だか一つのアートのようになっていた。
『へえ、確かに綺麗よね。まあ、光の演出でそう見せてはいるんだろうけど』
 つい、今まで落ち込んでいた事も忘れ、彼の言葉に素直に頷きつつ、私は水槽の中を
見入ってしまう。しかし、彼はすぐに別の水槽へと行き、私を呼んだ。
「あとさ。こっち」
『何? ちょっと、急ぎ過ぎじゃない?』
 まだ見足りない私は、ちょっと不満気に文句を言うが、彼は構わず私を手招きした。
「いいからさ。これ、ちょっと見てみろよ」
 まあ、まだ先に行くわけじゃないからいいかと自分に言い聞かせ、ここは彼に従う事
にする。そして、覗き込んだ水槽の中では、まるで米粒を少し大きくしたようなクラゲ
が漂っていた。
『ふうん。変わった形のクラゲよね』
 さっきのような幻想的な演出はないが、その奇妙な形は、やはり興味をそそられてしまう。
「それだけじゃないぜ。ほら」
 彼の言葉に呼応するかのように、クラゲの中がパパッと光った。まるで体の中に小さ
な電飾があるように、体の中を光らせる。
『へぇ…… どうなっているのかしら……』
 クラゲなんて今まで興味を持つ事はなかったけど、こうやって展示されている色んな
形のクラゲを見ていると、ちょっと興味をそそられてしまう。それにやはり、私はこう、
うねうねと動く軟体動物系の生き物の方が好きなのだと自覚する。
「あ、これって自分で発光しているんじゃないんだ。何か光を反射して、ネオンのよう
に光るんだって」
 さっき私にキツく言われたせいだろう。今度は軽率に自分の思い付きを口にせず、別
府君は水槽の近くにある案内板の記事を見て答えた。そうなると、こちらとしても頷か
ざるを得ない。
『なるほどね。でも、同時に光るんじゃなくて順番に光って行くのって不思議よね』
「ま、確かにな」
 そう頷くと、彼はチラリと順路の先を見た。一通りクラゲの水槽を見て回ったところ
で、そろそろ先に行きたいと思っているのだろう。しかし私はまだ見足りない気分で、
幾つかの珍しいクラゲの水槽に戻って眺めていた。
「会長、せっかくだしさ。写真でも撮っとけば?」
 不意に彼がそんな提案をして来た。
『え? 写真……って、ここで?』
 ドキリ、として私が聞き返す。すると彼が頷きつつ水槽を指差して言った。
「ああ。クラゲのをさ。気に入ったんなら一枚や二枚、記念に残した方がいいと思って」
『……あ、そう。そう……よね。せっかくだし……』
 私は何を勘違いしたのだろう。写真と撮ると言われた途端、彼と私の事しか一瞬頭に
浮かばなかったのだ。全く、気持ちが浮付き過ぎているとしか言いようがない。
『でも、私、カメラとかって持って来てないのよね』
「携帯のでいいだろ? 最近のなんてそこそこ性能いいし、むしろ会長ならお手軽に見
れていいんじゃないか?」
『その言い方。なんかバカにされたみたいで気分悪いわ。どうせ私には、デジカメなん
て使えないだろうって。そんな事ないわよ』
 正直、私はさほど機械に強い訳ではない。生徒会の仕事の時も、ちょっと複雑な操作
が必要な機械などは別府君をはじめ、男子に任せてしまう事も多かった。かといって、
そこまでバカにされるほど機械オンチでもないと思っているので、ちょっと憤慨すると、
彼は慌てて首を振った。
「ああ、違う。そういう意味合いじゃなくてさ。いちいちパソコンにデータ落としたり、
カメラ引っ張り出してみるより自分の携帯の方がお手軽でいいんじゃないかなって。そ
れにほら。これなんて綺麗に撮れば待ち受けにもなりそうだし」
 さっきの、紫色の光にたゆたう幻想的なクラゲの水槽を指して彼が言った。確かに、
ちょっとしたアートのようにすら見える。
『でも、綺麗に撮れれば、でしょう? 正直言って、私は携帯のカメラなんて一度たり
とも使った事がないわ』
 携帯なんて電話とメールが出来ればいいと考えている私にとって、その他の便利機能
なんて時計とアラーム以外は使った事もない。秀美ちゃんなんかは、綺麗に飾ったりし
ていて、最近ではスマートフォンとやらが欲しいとか言っているが、私には無用の長物だ。
「いいじゃん。この機会に一度くらい使ってみればさ。ちょっと携帯出してみなよ」
 彼の勧めに、私は些か渋りつつも携帯をバッグから出す。自分に上手く撮れるのだろ
うかという疑問はあったが、クラゲ自体を写真に収めるのはやぶさかではないし、別府
君にこのまま機械オンチの烙印を押されるのも癪だった。
『大丈夫よ。偉そうに指導しようとしなくたって。私だって写真の撮り方くらい知ってるわよ』
 ご親切にカメラの絵のついたボタンがあるので、私はそれを押した。途端に画面が切
り替わって真っ暗になる。自分がカメラのレンズを手で塞いでいるのだと気付き、持ち
方を変えて顔の前にかざすと、レンズから見える景色を画面に映し出す。
『こんな感じ……かしら……?』
 向きを変えてクラゲの水槽へとレンズを向ける。しかし、映し出された画面は思った
より小さくて、肉眼で見るような雰囲気が出て来ない。
「もうちょっと画面いっぱいにした方がいいんじゃないか? ほら。ここにズームって
あるだろ? それ使ってさ」
『ちょ、ちょっと!! 勝手に人の携帯を覗き込むんじゃないわよ』
 画面を見られたことより、その距離の近さに動揺して私は彼に文句を言った。ちょっ
とでも頭を動かせば触れてしまいそうなほどで、私の胸がドクンと高鳴る。
「ああ、ゴメン。何かちょっと納得行ってない顔してたからさ」
 謝ったものの、彼は私から離れようとはしなかった。私が言われたとおりにズーム機
能を使うのを、傍でジッと見守っている。
『……あんまりジロジロと見られていると、やりにくいんだけど』
 画像を調節して、大きさを画面にぴったり収まるよう調節しつつ、横目で彼を睨み付
けて文句を言う。すると彼は、慌てて手を振って他意はないという態度を示して来た。
「いや、その……申し訳ない。やっぱりちょっと気になってさ。いや、会長は理解力高
いし飲み込みも早いから、ちゃんと出来るとは思ってるけど……」
 慌てて弁解する彼に向けて、私は少しうんざりといった感じでため息をつく。
『画像見て、修正したいところがあったら、私の方から聞くわよ。だから悪いけど、少
し離れててくれる?』
「わ、分かったよ」
 ちょっと残念そうな様子で頷きつつ、彼は私から離れようとして、最後に一つ付け加えた。
「あとさ。このボタンでサブメニュー開くとさ。明るさ補正とかも出来るから、ちょっ
と暗いかなと思ったら、それ使うと良いと思うぜ」
『え? これ?』
 言われたとおりに操作をすると、別のメニュー画面が開く。彼に画面を見せて示すと、
彼は頷いた。
「そうそう。じゃあ、俺はちょっと離れたところで別の魚とか見てるからさ。上手く撮
れないか、撮り終わったら声掛けてくれよ」
『そうするわ』
 簡潔に答えて、私はもう一度クラゲを画面の中に収める。しかし、より大きく拡大す
ると、今度は画像がボケてしまい、私は再びサイズを小さく戻す。よく考えてみれば、
ズームなど使わなくても、自分で動いてサイズを調節した方が楽なのではないだろうか。
まあ、彼が少しはいい所を見せたいと思う気持ちは分からないでもないが。
『うん…… この辺ね』
 画像がボケずに何とか画像一杯に水槽を収めると、私は構えたままシャッターボタン
を押した。
『うーん……』
 撮れた画像を見て、ちょっと私は首を捻った。ちゃんとしっかり、構えて撮ったはず
なのに何故か残像が走ったような画像になってしまっている。
『簡単に撮れるかと思ったけど、意外と難しいものね』
 そう一人ごちて、その画像を保存せずもう一度私は携帯を構え直す。今度は、携帯を
構えた手に、片手を添えてやってみた。が、やはり若干ブレてしまう。出来上がった画
像に首を捻ったところで、別府君が唐突に声を掛けて来た。
「どう? 上手く撮れた?」


続く
214ほんわか名無しさん:2014/06/19(木) 01:48:20.62 0
友「ふー、これでよしと。山田、編集終わったわよ」
山「…」コックリコックリ
友「ありゃ、寝ちゃってる。おーい、やまだー、寝てんじゃないわよ」
山「…ん」こてん
友「ひゃっ!?ちょ、ちょっと、もたれかかってくんじゃないわよ!重いっつの!」
山「すー…すー…」
友「…こ、こら…起きろ…」
山「ん…とも…ちゃん…」
友「…ぁぅ…寝言で名前呼ぶとか…反則だっつの…」
215ほんわか名無しさん:2014/06/20(金) 01:13:06.73 i
『やっぱりなぁ、この口調が問題やと思うねん』
「キャラ付けを全否定する台詞だな、いきなり」
『いやな、他は大体みんな標準語に近い言葉でしゃべるやろ』
「そうだな、訛ってるのはお前くらいだな」
『それでや、日本語で口語と文語が同一のものになったんは明治以降や』
「急に専門的な話になったな」
『それまでの日本は話し言葉と文字言葉は完全に別物やったんやけど、明
 治になって中央集権国家を造るにあたって、明治政府は当時の東京の一
 部で話されていた言葉を”標準語”として口語と文語の同一化を進めた
 んや、ここまではええな?』
「いいも悪いも、つまり何が言いたいんだよお前は」
『方言は文章におこしにくいって話や。基本的に現代の文語は標準語にし
 か対応してへんから訛を表現しにくいんよ。文字で見たときに違和感が
 あるんが、うちの出番の少ない理由かなー思てな』
「確かに見たときに、”あれっ?”って思う文章は書き込まないかもな」
『なー、難儀してんでーうち』
「まぁ文章にしないだけで皆の脳内では元気にやってんじゃねーの」
『所詮は脇役、やな。あー出番欲しいわーうち悲しいわー』
「俺の場合は脳内だけじゃなく元気だから、今回はそれで納得してくれ」
『なんやさくっと恥ずかしいこと言うなぁ。』
「少しは恥ずかしがってくれ、じゃないとこっちが恥ずかしいだろ」
『今が夕暮れでよかったわ、これで十分やろ』
「んん?どういう意味だよ、てか少し歩くの早くないか?」
『そこから先は、言わぬが華。ってやつや』
「おーい、なんなんだよー」
『なんもないよー出番増えたらいいなーうち』

〜終われ〜
216ほんわか名無しさん:2014/06/20(金) 16:04:09.09 0
ぼやきいずみん可愛いなぁ
2171/2:2014/06/20(金) 21:27:22.80 0
そんなことよりちょっと俺の話聞いてくれよ

空に暗雲立ちこめる梅雨真っ盛り、俺はツンデレを家に連れ込んだの

というのも俺とツンデレご近所さんで帰り道一緒でさ

どしゃ降りな夕立に打たれたから俺ん家で雨宿りしてもらった訳

そんで女の子濡らしたまま風邪引かしたら悪いで風呂入らせたの

したらさ、本来なら俺の着替えを着たツンデレにドキドキするイベントが発生する所だけど

家には何着かツンデレの服が置いてあるから何事もなく冷えた体を温めてもらえます

それからは雨がやむまでじゃんけんして時間つぶしててさ

パーで勝った時ふざけてツンデレの手包んだら冷たいままでね

気使ってカラスの行水だったのかな、ツンデレの両手を取り俺の体温を分けました

したら俺の脂ぎった手と違ってツンデレの手しっとりサラサラ

それで夢中になって触ってたら、下心見え見えなんですけど、言われてさ

ツンデレに嫌われたくないんでやんわり覆う感じに持ち替えたの

そしたらツンデレ今度は俺の手で触られるの気持ちいいって囁いてきてさ

落としてから上げる悪女感に俺メロメロにされてもた、って話
2182/2:2014/06/20(金) 21:28:52.23 0
そんなことよりちょっと私の話聞いてほしいんだけど

空に暗雲立ちこめる梅雨真っ盛り、私はアイツん家に逃げ込んだの

というのも私とアイツご近所さんで帰り道一緒でさ

どしゃ降りな夕立に会ったからアイツん家に緊急避難した訳

そんでアイツ、レディファースト、って先にシャワー浴びさせてくれたの

したらさ、本来ならアイツの大きめの服を着て男の匂いにドキドキするイベントが発生する所だけど

何着か私の着替え置いてあるから気の利かないアイツは私の服しか用意してくれません

それからは雨がやむまで暇もてあましてじゃんけんしててさ

チョキで勝った時ふざけてアイツの手切るマネしたら何か心配されてね

オマエの手冷たい、って両手を包んで温めてくれます

したら私の乾燥肌と違ってアイツの手ふっくらモチモチ

なら妙にスリスリしてくるもんだからちょっと気持ち悪くてね

そういうの嫌、言ったら自分の欲望のまま触るのから豆腐を持つように優しくなってさ

大きい声で言うの恥ずかしいから内緒話であったかくて気持ちいいって伝えたの

なら雨やむまでの三十分間、ずっと耳元で私の手の方が気持ちいい言われてさ、口から心臓吐き出そうになったった、って話
219ほんわか名無しさん:2014/06/20(金) 21:49:05.92 0
甘いなぁ、砂糖吐く
GJ
220ほんわか名無しさん:2014/06/21(土) 01:34:42.97 0
お前これお前……最高すぎだろうが!
GJ!
221ほんわか名無しさん:2014/06/21(土) 22:06:07.53 0
お題

・かつみん美味しく食べるならモッミモミ
222ほんわか名無しさん:2014/06/21(土) 22:12:16.51 0
懐かしいというか古いwwwwww
223ほんわか名無しさん:2014/06/22(日) 16:20:10.80 0
勝気即落ち2コマシリーズ
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2852.jpg
224ほんわか名無しさん:2014/06/22(日) 16:23:41.10 0
ずいぶんとかわいいパンツでらっしゃる……
225>>221:2014/06/26(木) 01:15:36.35 i
「かつみ〜ん美味しく食べるなら〜もみもみ〜もみもみ〜」
『……おい、何やってんだ』
「うわっ!ちょっえっ!?何でいるんだよ、不法侵入か!」
『普通に玄関から入ったんだよ、おばさんに許可は貰ってる』
「あぁ、そうだったのか。まぁゆっくりしていけよ」
『おい、スルーすんな、何やってたか聞いてんだよ!』
「何って唐揚げ作ってたんだよ、鶏肉揉み込んでただけだ」
『ふざけんな!何だあの意味わかんねー歌はセクハラだろ!』
「胸を揉んだら怒られるから鶏肉で我慢しようと思って」
『あ、そうか、うん…なんか、悪かったよ、ごめん』
「露骨に引かないでくれ!怒られた方がまだ精神的に楽だから!」
『いや、お前も男だしな、あははは……』
「そ、そうなんだよ、うん、あはははは……」
『帰る』
「………ごめん」
『あやまんな、別に悪いことじゃねーしな』

--------------------------------------------------

『あーもう、明日から顔会わせづれーな、どんな顔して会えばいい
 んだよ。けどこのデカいだけで邪魔な胸にも役に立つことがある
 んだな、こいつを使えばタカシを…って、違う違う。あいつにそ
 んな感情なんてねーから、これは気の迷いだ、間違いだ、…多分』

----------------------------------------------------

「おおお!鶏肉よりも水を入れた風船のほうがそれっぽい。本物を
 揉んだことないけど!おおお!おおおお!!!」

〜終われ〜
226ほんわか名無しさん:2014/06/26(木) 07:20:44.45 0
なんだよこれwwwwww
227ほんわか名無しさん:2014/06/26(木) 11:20:27.89 O
>>225
男がアホだwwwww
228ほんわか名無しさん:2014/06/27(金) 19:50:46.65 0
お題

・暑くなってきたのに、キッチリとしたメイド服を着るツンデレ

・ミニスカートのメイド服を勧めると、「あれはただのコスプレです」と、表情を変えずに怒っていました

・そこでタカシはインターネットでツンデレが満足して、なおかつ涼しくなりそうなメイド服を探しました

・見つかりました

・届いたメイド服をさり気なくツンデレに渡すタカシ

・これにはポーカーフェイスで評判のツンデレも頬が緩みます

・それを悟られないように1日の仕事を終え、自室で袋を開封しました

・高級生地でしなやかな肌触り、身体にフィットしつつも自らの動きを妨げない計算された機能性、シックで上品なデザイン

・それは完璧なまでに作り込まれた、エッチなプレイ用のメイド服でした

・所々透けてたり、外せたりします

・気付かずに、言い訳を呟きつつタカシに見せに行くツンデレ

・恥ずかしそうに新メイド服を披露するツンデレ

・自分のプレゼントがとんでもなくエロい衣装だったことに初めて気づいたタカシ

・タカシの様子で透けてることに気づいたツンデレ
229ほんわか名無しさん:2014/06/27(金) 19:59:12.08 0
お題短編乙!
メイドさんエロいよメイドさん
230ほんわか名無しさん:2014/06/28(土) 11:20:35.44 0
>>228
これは良いお題妄想だwww
GJ!!
231ほんわか名無しさん:2014/06/29(日) 01:15:39.87 0
お題

・喧嘩したタカシとツンデレ

・いつもの痴話げんかだと、放置するクラスメイト

・面白いことが起きそうで、ワクワクしながら二人を観察する友子

・ツンデレの言葉に、聞こえないふりをして対抗するタカシ

・これに怒ったツンデレが、「耳の穴かっぽじってよく聞きなさいよ!」と言いました

・これを聞いた友子がアレコレと二人を言葉巧みに誘導しました

・なんということでしょう、ツンデレがタカシの耳掃除を、膝枕してあげつつ行うことになりました

・赤面したツンデレをニヤニヤと観察する女子たち

・幸せが顔からあふれ出ているタカシに「爆発しろ?」「もげろ?」と呟く男子たち

・今日もいつもどうりの教室の風景になりましたとさ
232ほんわか名無しさん:2014/06/29(日) 02:31:07.78 0
お題

・普段は仲良く、ほほえましいツンデレたち

・しかしタカシの事となると、お互いを牽制しあって、近寄りがたい雰囲気を作り出すツンデレたち

・だけども心の中では、各ツンデレ優越感をもってました

・なぜなら結婚の約束を、幼い頃にタカシとしたからです

・ある日、一人のツンデレが「今まで黙ってたけど?」とタカシと結婚の約束をしていることを
 「しかたないわー、けど約束しちゃったからなー、不本意だけど結婚するしかないわー」

・などと言いながら、他のツンデレたちに言い放ちました

・そこから、タカシが全員と結婚の約束をしていたことが判明しました

・タカシを問い詰めるツンデレたち

・結婚の約束を、すべて忘れていたタカシ

・しばらくの間、タカシの周りにツンデレたちは近寄りすらしませんでした
233ほんわか名無しさん:2014/06/29(日) 21:50:42.00 0
>>232

・ツンデレズから鉄拳制裁を受けて顔面を腫らすタカシ

・いくら自業自得とはいえ、子供の頃の安易な約束で怒られてはたまったものではありません。

・とはいえ舌戦でタカシが勝った試しはないので、ツンデレたちの怒りを鎮めるために何か策はないか考えているようです。

・一計を案じたタカシは、山田と友ちゃんを通じてツンデレたちに自分の家へ集まってくれるよう頼みました。

・ぶつくさ言いながらも山田と友ちゃんの頼みとあっては断りきれず、結局タカシの家へ集まるツンデレたち。

・そこで見たものは、道路に面する自宅のバルコニーから、全裸で謝罪するタカシの姿でした。

・あまりに突拍子ない謝罪の方法に呆然とするツンデレ。通行人も何事かとバルコニーを見上げます。

・タカシは許してもらえるまでこのまま謝り続けると言い放ち、そのままの勢いで道路まで飛び出してきそうです。

・これにはツンデレたちも驚き呆れ、仕方なく今回は許してあげることにしました。

・その後しばらくツンデレたちの間で、タカシサイズという名の謎のソーセージを弁当に入れるのが流行ったそうな。

.
234ほんわか名無しさん:2014/06/29(日) 21:53:26.72 0
でかいのかちいさいのか
235ほんわか名無しさん:2014/06/30(月) 00:36:19.24 0
お題

・家がクリーニング店を営んでいるツンデレ

・布団のクリーニングも始めました

・タカシが試しに布団を持ってきました

・クリーニング前の汚れなどの確認をツンデレが担当することになりました

・布団を動かすたびに、タカシの濃い匂いがします

・お楽しみ中

・数日後、タカシに布団を返却しました

・新品のようになった布団にタカシは大満足です

・そう、それはまるで買ってきたばかりのような布団でした

・ツンデレの布団も、たまたま最近変わったらしいです
236ほんわか名無しさん:2014/06/30(月) 07:21:25.68 0
GJ!
さてお楽しみの様子を詳しくだね…
>>213の続きを投下します
 彼が近寄ってきた事に気付かなかった私は、驚いて体を僅かではあるが震わせてしま
う。もちろん、心臓の動揺はそれ以上だったが、動じない性格が幸いしてか、それ以上
みっともなく取り乱す事無く、私はただ、不満気に彼を睨み付けた。
『いきなり声を掛けて来ないでくれる? すぐ傍で、予告無しに気持ち悪い声が響くのっ
て、あまり気分のいい物じゃないから』
 余計な悪態を加えつつ彼を非難すると、別府君は怒ったような困ったような微妙な顔
つきで弁解する。
「別に、普通に声掛けただけだけどなあ。まあ、集中してたところだったから、驚かせ
ちゃったかも知れないけどさ。けど、いい加減毎日聞いてるんだし、そろそろ俺の声も
聞き慣れてくれてもいいと思うんだけどな」
『毎日聞いていようがたまにだろうが、気持ち悪いものは気持ち悪いのよ。心構えが出
来てる分にはある程度我慢出来るけど、今みたいに突発的だとやはり不快になるわ』
 一度言ったことを撤回する気は毛頭ないので、多少強引にでも主張を押し通そうとす
ると、別府君は呆れたように小さくため息をついた。
「じゃあ、今度からは会長が気付くまで黙って傍に立ってることにするよ。それより、
写真の方はどうなった? 上手く撮れた?」
 投げ遣りのような答えを返してから、彼は私の写真の出来映えを聞いて来た。正直、
自分の出来の悪さを披露するのはみっともなくて嫌だったが、ごまかしようもなく事実
は事実なので、私は仕方なく撮った写真を彼に見せた。
『はい。こんな感じよ』
「ありゃ? 何かちょっとブレてないか?」
 万が一にも、別府君の目がおかしくてブレに気付かないんじゃないかと期待したが、
全くそのような事はなかった。仕方なく、私はしかめつらしい顔をして頷く。
『そうなのよ。一度撮って、今度は携帯を持った手をしっかり押さえて撮ったつもりな
んだけど、どうしても少し画像がブレちゃうのよね』
「ああ。携帯で綺麗な画像を撮ろうと思うとなかなか難しいんだよな。この携帯って、
手ブレ防止機能とかって……分かんないよな?」
 さも機械オンチのように聞かれて、私はムッとして突っ掛かった。
『バカにしたような言い方しないでよ。今まで携帯で写真撮ろうなんて思った事なかっ
たんだから仕方ないじゃない。そういう便利な機能があるなら、何で最初から教えてく
れなかったの?』
 元々別府君には何の責任もないはずだったけど、腹立ち紛れにさも彼のせいであるよ
うに責めると、私に怒られ慣れているせいか、彼もつい普段のように弁解してしまう。
「いや、だって会長の携帯だと多分付いてないだろうなっていうか、そもそもそこまで
気を回してなかったし……」
 あまり彼を責めるのもお門違いなので、私は諦めてため息をついた。
『もういいわよ。貴方が気の利かない人だってのは分かってる事だしね。で、その機能はどれ?』
「うーん…… ちょっと、携帯貸して」
 差し出された手に頷き、素直に私の携帯を彼に渡す。別府君は機種が違うので、いさ
さか勝手が違う感じながらも携帯をいろいろと弄ってから、私に返しつつ首を捻った。
「ゴメン。やっぱり付いてないみたいだ。まあ、この時代の機種だと、カメラに特化し
た携帯でもないと、付いてないだろうからな」
『何なの? 全く……期待させるだけさせておいて、最悪だわ』
 またしても謂れのない非難を彼にぶつけると、別府君は素直に頭を下げた。
「ゴメン。でも、まあしっかりブレないように持って撮れば、多分ちゃんと撮れると思うよ」
 彼の提言に、私はムッとして言い返す。
『だから、それがなかなか出来ないから苦労しているんじゃない。何か良い方法はないの?』
 すると彼は困った顔で首をひねった。
「うーん……何か支えになるような物があれば別だけど、普通携帯で写真撮るのなんて
外だからそんなのない場所ばかりだし…… まあ、一番いいのはあまり極端に気にしな
い事だな。さっきの写真でもブレなんてほんの僅かだし。会長がむしろ完璧を求め過ぎ
てると思うけどなあ……」
 しかし、私は別府君の言葉を最後まで聞いていなかった。支えになるような物があれ
ばと彼は言った。もちろんこの場所を見回しても、そんな都合のいい物は無い。しかし、
明確ではないが、何か心に引っ掛かっていて、それが私にその考えを固執させた。そし
て、もう一度周囲を見て、別府君へと視線を戻した時、唐突にその答えが閃いた。
『そうだわ。別府君が私の腕をしっかりと支えてくれれば、ブレずにしっかり撮れるん
じゃないかしら?』
「は? 俺が?」
 驚きつつ自分を指して聞き返す彼に、私は頷いた。
『ええ。だって私一人じゃまた失敗するかもしれないけど、貴方が傍でしっかり持って
いれば、さすがに腕も固定されると思うんだけど』
「まあ……確かにそうだけどさ。けど、携帯で写真撮るのに、そこまでする人ってあん
まいないような……」
 キョロキョロと人目を気にするように周りを見る別府君を、私は睨み付けた。
『別に変な事する訳じゃないんだし、人の視線なんて気にしてたら何にも出来ないわよ。
そもそも写真を撮る事を勧めたのは別府君なんだから、最後まで自分の言葉には責任を
持ちなさい』
 逃げ道を塞ぐように、手厳しい口調で言うと、まだ戸惑った顔でチラチラと周囲を気
にしつつも、別府君は同意してくれた。
「分かったよ。とにかく、会長が写真撮れるまで腕を支えていればいいんだろ?」
『ええ。全く、私がお願いした時に素直に承諾してくれれば、無駄な時間使わなくて済
んだのに』
 彼の言葉に頷きつつ、愚痴めいた事を言うと、ほんのわずかだが別府君の表情に不満
の色が浮かぶ。しかし、表情とは裏腹に、彼は素直に謝ってくる。
「悪かったよ。まあ、そう言うならさっさと終わらせて次、行こうぜ。大分ここで時間
使ったし」
 それ以上の非難はゴメンだとばかりの言葉だったが、私も別段グチグチといつまでも
彼を責めるつもりは無かったので、同意する代わりに携帯を操作してカメラを起動しなおした。
『えーと……こんな感じかしらね』
 画面を覗き込んで大きさを確認しつつ独り言を漏らすと、彼がすぐ傍で相槌を打った。
「うん。まあ、そんなものじゃないか?」
 それが私にとって不意を突いた出来事だったので、私は思わず体を捻りつつ一歩引い
て、彼を非難した。
『ちょ、ちょっと。いきなり傍に来て画面覗かないでよね。ビックリするじゃない』
 心臓がちょっとドキドキしているので、左手でそっと胸の下を押さえる。別府君はま
た、さっきのように困った顔を浮かべつつ弁解を始めた。
「いや、その……傍に寄らないと、腕、支えられないじゃん。まあ、驚かせたって言う
なら、それは謝っとくけど、でもそんな唐突でもなかったと思うけどな」
 そう言われれば、彼の言い分ももっともである。そもそも自分から支えるように言っ
ておきながら、近寄ってきた事に気付きもせずにそれを非難するのは全くのお門違いと
言うものだ。
『だからって断りもなしに画面覗くのはマナー違反だと思わない? まあ、これ以上誤
られるのもうっとうしいから、もういいけど。でも、今度からは気をつけてよね』
 分かってはいても、性格が邪魔をして私は結局自分の態度を変えることが出来ず、言
わないでもいい注意をしてしまう。しかし、そんな私の性格は十分承知とばかりに、彼
は片手で制する。
「もう分かったから。気を付ける。で、俺はどうすればいい?」
 彼の質問に、私は首を傾げた。
『どうすればって……腕を支えてくれないと困るわ。やり方は任せるわよ』
「じゃあ、こんな感じでいいか?」
 彼は私に寄り添って立つと、やや姿勢を低くして右手で、携帯を構える私の右腕を支
えた。彼の顔が私の顔のすぐ真横に近づき、思わず意識してドキリとしつつ、小さく文
句を返した。
『何だかこれじゃあ、支えて貰っているんじゃなくて、手取り足取り教えてもらってい
るみたいじゃない。たかが携帯のカメラなのに』
「じゃあ、持ち方変えるか? 出来れば指示出してくれた方がありがたいけど」
 私はそれには首を振って拒否をする。
『いいわよ、別に。すぐ済む事なんだし』
 照れ隠しで文句を言っただけで、別に嫌な訳じゃない。それにもう、後は携帯のボタ
ン一つを押すだけで終わってしまう事だし、と私は画面に集中した。しかしどうしても、
すぐ真横にある彼の息遣いに意識が行ってしまう。それを振り払って、私は腕がしっか
りと支えられているのを僅かに動かして確認してから、シャッターのボタンを押した。
「どう? 上手く取れた?」
『そんなの見てみないと分からないわ。急かさないでよね』
 彼を振り払うように手を振って、私は撮れた写真を確認する。まあ、お世辞にも綺麗
な写真とは言えなかったが、少なくともブレてはいない。それから、まだ気になる様子
で私の方を窺っている別府君に、携帯の画面を示してみせた。
『ほら。こんな感じになったわよ。どう?』
 まるで自棄になったかのような口調で聞くと、彼はそれを見てすぐに頷いた。
「うん。まあ綺麗に取れてるじゃん。あと、待ち受けの設定の仕方は分かるよね?」
『バカにしないでよね。それくらい知ってるわよ』
 彼の問いに強気で答えてみせたものの、実は私は待ち受け画面も初期設定から変えた
ことはなかった。ここで変えてまたたどたどしいところを見せてはみっともないだけな
ので、私は携帯を閉じてバッグにしまう。
『とりあえず、後でゆっくり変えるわよ。今は先に行きましょう。もうクラゲも見飽きたわ』
 そう促すと、別府君はまるで、全て承知という感じの笑顔を見せて頷いた。
「了解。もし、分からないところがあったら、遠慮なく聞いてくれていいからさ」
『そんなところ、ある訳ないわよ。バカにしないでってば』
 からかわれて半ば頭に来つつ、半ば素直じゃない自分に呆れつつ、私は先に立ってそ
の場を後にした。


まだまだ続きます
243ほんわか名無しさん:2014/07/04(金) 00:40:15.24 0
乙!うぶなツンデレかわいいなぁ
244ほんわか名無しさん:2014/07/05(土) 01:44:11.74 0
お題

・お昼休みに上司にかつ煮の美味しいお店に連れて行って貰ったタカシ

・ワクワクしながら注文すると、直前で完売になってました

・ショックを受けたタカシは、晩御飯に作ってもらおうと、新妻かつみんに電話しました

・「今日はかつ煮が食べたい、いや かつ煮しか食べない」とタカシは言いました

・「今日はかつみが食べたい、いや かつみ しか食べない」と聞こえた かつみ

・うろたえるツンデレに、「お腹いっぱいになるまで食べるから準備しといて」と伝えて電話を切るタカシ

・お腹いっぱいの意味を考えて赤面するかつみ

・仕事を終えて帰ると、そこには精いっぱいセクシーな衣装を着て、準備万端の赤面かつみんがいました

・食欲が性欲に変わるタカシ

・いろいろ落ち着いてきた朝方に、かつみの聞き違いだったことが判明しました

・真っ赤になって布団で顔を隠すかつみ

・その姿を見て、回復したタカシ

・1年後、家族が無事に増えましたとさ
245ほんわか名無しさん:2014/07/05(土) 06:06:21.09 0
なんかもういろいろワロタ。GJ!
246ほんわか名無しさん:2014/07/07(月) 05:42:56.50 0
お題

・一年に1日しか会えないのにツンツンしちゃうツンデレ

・そんな自分が大嫌いなツンデレ
247ほんわか名無しさん:2014/07/09(水) 08:22:49.08 0
お題
つ・歴史的大敗を喫したツンデレ
 ・ツンデレが非難の的に晒されていたら
 ・誕生日なのにツンデレの1日は普段と変わりなく過ぎて行ったら
248ほんわか名無しさん:2014/07/11(金) 08:58:07.69 0
お題
つ・台風が来るとなぜかテンションが上がるツンデレ
249ほんわか名無しさん:2014/07/12(土) 23:47:16.40 0
・七夕が終わって


男「気づいたら七夕が終わっていた。なんということだ」

纏「……主ゃあ少々頭が足りておらぬのではないか?七夕からじきに一週間経とうと言うに」

男「まぁ今年は天気良くなかったし、仕方ないわな。織姫と彦星もスカイプで話でもしてんだろ」

纏「何故そこだけ現実的なのじゃ……夢も素っ気もないではないか」

男「でもオレ昔から不思議だったんだけどさぁ、なんで七夕って織姫と彦星がカップルのシンボルみたいになってるんだ?」

纏「それはお主、年に一度しか会うことの出来ぬ悲恋の話だからではないか」

男「でも昔オレが読んだ本だと、あいつら仕事サボってイチャイチャしてたから、天の帝に年イチしか会えなくされたらしいぜ?」

男「オレが帝なら、そんなことされたら一生会えなくしてやるけどなぁ」

纏「全く、主は女を分かっとらんのう……それは仕事を怠けてでも会いたい人間がおるということではないか」

男「えー、でもそれで会える回数制限されたら本末転倒だろ?それに目の前でイチャイチャされたら正直うっとうしいし」

纏「恋は盲目とよくいうじゃろが。主に会いたいと一度でも思ってしまえば、その気持ちは止められぬものなのよ」

.
250ほんわか名無しさん:2014/07/12(土) 23:48:33.87 0
.

男「……ん?」

纏「なんじゃ?」

男「纏、いま『主に会いたい』って言わなかった?」

纏「……!?」

男「え、つまりそれはオレに対する纏の実感ってことでよろしいんで?」

纏「しょっ、しょんっ……そんなことあるはずなかろうが!!ばかたれ!!」

男(噛んだ!)

纏(噛んだ!)

男「……ま、まぁその、なんだ。ドンマイ」

纏「……〜〜〜ッッッ///」

.
251ほんわか名無しさん:2014/07/13(日) 00:30:33.75 0
うっかりまつりんカワユス
252ほんわか名無しさん:2014/07/13(日) 12:57:15.04 0
噛んだまつりんはかわいいなあ(*´д`)
253ほんわか名無しさん:2014/07/14(月) 06:28:49.36 0
>>56
ネイマールの耳って特徴があるな
引っ張ったら取れそう
254ほんわか名無しさん:2014/07/14(月) 06:29:20.68 0
誤爆
255ほんわか名無しさん:2014/07/14(月) 08:52:35.36 0
ツンデレさんの耳ぺろぺろとな
256ほんわか名無しさん:2014/07/14(月) 09:46:33.60 0
お題
つ・ツンデレにお前の耳って特徴あるよなって言ったら
257ほんわか名無しさん:2014/07/17(木) 19:58:56.11 0
お題

・ツンデレの名前の前に「俺の」を着けるようにした男

・ツンデレが慣れてしまったタイミングで、ツンデレを苗字で呼ぶようにした男
258ほんわか名無しさん:2014/07/18(金) 20:10:45.41 0
俺の携帯の予測変換が「ちなみ ぐちゅぐちゅ」という単語を吐き出して止まらないんだが

どうすりゃいいんだ……
259ほんわか名無しさん:2014/07/18(金) 20:28:14.86 0
花粉症かな?
260ほんわか名無しさん:2014/07/18(金) 21:21:43.31 0
ゼリーをぐちゅぐちゅとかき回すちなみん
2611/3:2014/07/18(金) 23:42:15.86 0
【ツンデレに甘食を食べさせたら】

 登校中、ふとコンビニに立ち寄ったら甘食なる品を発見した。
「甘食……ふむ」
 とあることを思いついた俺は、にやけながらレジまでその商品を持っていったらバイトのお姉さんの顔があからさまに引きつったので申し訳ないと思った。
 そんなわけで学校。鞄の中に入れたブツに思いを馳せながら、時が過ぎるのを待つ。
 待った。待ちに待った。待ちに待った昼食の時間だ。俺は鞄を持つと、脇目も振らず目的の人物の元へ走った。
「あーっ! こらっ、廊下を走っちゃダメですよ? 先生、めってしますよ? せーのーっ……めっ!」
 果たして、目的の人物と遭遇した。ちっこい身体に無限の勇気、僕らの大谷先生だ。わかりやすく言うと合法ロリ。
「おっす、先生」ナデナデ
「先生への対応ではないですっ! まず挨拶が違いますっ! おはよーございますって言うのですっ! あと手! これが一番の問題ですっ! なでなでなど目上の人物への対応として論外中の論外ですっ!」
「じゃあ次からおはようございますって言う」
「そうです。それでいいのです。……あんまり素直だと、逆に不安になりますね……」
 先生は俺をあまりまともな生徒だと思っていないようだ。
「昼でも夜でもおはようございますと言い続け、そのため自分がまるで業界人になったかのような錯覚を覚え、それでもおはようございます生成装置として生きていくうち、
 とうとう自己暗示が名人の域まで達し、その力で実際に業界人になってしまい、先生をモデルにAVを撮ってしま……あっ、先生だと発禁で発売中止になっちゃうかな?」
「今日も無茶な言いがかりをつけますねっ、別府くんはっ! あと、先生は超大人なのでえっちなビデオに出ても発禁とかになんないですっ!」
「いいのっ! やった、言質は取った! 今度個人用に撮ーろおっと! やったぜ合法ロリ!」
「よ、よくないですよくないです、とっても困りますっ! あと合法ロリってなんですかっ! 先生はロリとかじゃないですっ! 大人ですっ、ちょーないすばでーですっ!」ワタワタ
「いいや、そんなことはないよ。……現実を見ないと、先生。イカ腹だよ」ナデナデ
「イカ腹!? ああもうっ、今日も別府くんのいじわるは名人の域まで達してますねっ! 別府くんのいじわる虫っ!」
「虫……?」
2622/3:2014/07/18(金) 23:43:30.24 0
「ふーっ、ふーっ……。それで、何の用ですか? いじわるをしにきたのですか?」
「それも悪くはないが、今日は別件だ」
 そう言いながら、鞄の中から例のブツを出す。
「なんですか、これ?」
「甘食。食え」
「食え……って、先生が?」
「大丈夫。何も仕込んでない」
「そんなの言われたら余計に不安になりますよぅ……」
「大丈夫。存分に仕込んだ」
「だからってそれじゃあ誰も食べませんよ。……ふふふ、別府くんって案外頭悪いんですね?」
「後で超犯す」
「ひぃ!? せ、先生ですよ!? 先生で、ここは学校ですよ!?」
「萌えるシチュエーションだね!」(イイネ!)
「良くないです良くないですっ! なにがイイネですかっ! 今日も別府くんは頭おかしーですっ!」
「頭が正常な奴と、頭がおかしい奴……果たしてどちらが先生を襲う率が高いか、聡明な先生ならわかると思いますがねェ……?」
「……べ、別府くんは今日もとっても真面目でいーこですねっ♪ で、ですから、先生を襲うとかナシですよ? ね? ねっ!?」ブルブル
 小動物みたいに震えだしたので、この辺にしとく。充分楽しんだし。
「では、この甘食を食べたらナシにしてやろう」スッ
「ほ、ほんとーですか? 嘘とかだったら怒りますよ? 先生の怒りはとっても怖いですよ? ぷんぷんってなりますよ?」
 恐怖の要素が全くと言っていいほど見えないが、先生なりの怒りの表現なので、乗っかってやろう。
「ひ……ひぃぃぃぃ!? た……助けっ、誰か助けてくれェ!」ガクガクガク
「怯えすぎですっ!」
 ちょっとやりすぎた。さじ加減が難しい。
「……でも、ちゃんと怖がられたの初めてかもかも。……えへー♪」
 そしてなんかこっそり喜んでる。変な人。
「こ、こほん! ぷんぷんってされたくなかったら、先生を襲うのはダメですからね?」
「あーもういいからちゃっちゃと食え」
「もがっ!?」
 茶番は大好きだがいい加減疲れてきたので先生の口に甘食を突っ込む。
「もぎゅ、い、いきなり何を……あ、おいひー」
「飲み物もあるぞ。牛乳といちご牛乳、どっちがいい?」
「いち……っ! ……っ、……っ! ……ぎ、牛乳で、お、お願いします……」
2633/3:2014/07/18(金) 23:44:20.64 0
 先生内部で壮絶な葛藤があったのか、ものすごい懊悩としながら、最後に肩を落として牛乳を選択した。
「先生は子供なんだからいちご飲んどけ、いちご」ポイッ
「子供じゃないですっ! 何回言ったら別府くんは分かるのですかっ! ……ま、まー、いちごの方もらっちゃったから、今回だけは特別にこっち飲んであげますけど。で、でも特別なんですからね! 普段は牛乳飲んでるんですからねっ!? 甘くない方をっ!」
「なんで牛乳でツンデレやってんだよ……」
「ごくごく……はぁぁ、おいひい……♪」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、先生はご満悦でいちご牛乳を飲んでた。
「それで、だ。先生、甘食食べて」
「ん? はい」モグモグ
「両手で甘食持って」
「はい?」
「で、上目遣いで」
「……?」キョト
「……よし。思った通り幼女感が高い! 流石先生、そこらの小学生より可愛いぞ! できれば袖の余った長袖の服の方が萌えるが、これだけでも充分にオカズになる!」
「はああ!? 何を言うですか! 先生は20歳を超えてるですよ!? ありえないですっ! 絶対にそこらの小学生の方が可愛いに決まってます! それに、どちらかと言えば先生は綺麗系ですから!」シャラーン
「何言ってんだ馬鹿。シャラーンって何だ」ペチペチ
「馬鹿!? 言うに事欠いて先生に馬鹿!? 明らかに別府くんより賢いのに!? なぜなら先生だから! いっぱい勉強したから! 大学とかで! あと、頭ぺちぺちしないでくださいっ!」
「超うるせえ! このままではあまりのうるささに心神喪失状態に陥って先生を犯しそう! そしてその場合心神喪失なので無罪もしくは減刑&少年法で俺の未来は明るいまま!」
「明らかに計画犯罪ですっ! 録音です、録音しますっ! ろくおん……えーっと、……どしたらいいのかな」
 先生はスマホを持ったまま、困ったように液晶を見つめていた。
「…………」
 そして、視線をこちらに向ける。
「はぁ……貸してみ」
「む、むずかしーので仕方ないですよね? ねっ?」
「簡単です」
「仕方ないことなのですっ!」
 しょうがないので先生に出鱈目を吹き込む俺だった。後でばれて大変叱られた。
264ほんわか名無しさん:2014/07/18(金) 23:54:05.75 0
大谷先生きたぁぁぁぁぁぁ!!!ペロペロしてぇぇぇぇぇ!!
265ほんわか名無しさん:2014/07/19(土) 01:05:17.32 0
大谷先生のクセにスマホ持ってんのかよwwww


> 絶対にそこらの小学生の方が可愛いに決まってます!
あと、この発言は犯罪ですからwwww
266ほんわか名無しさん:2014/07/19(土) 18:25:08.77 0
ツンデレにこれって間接キスだよなって言ったら673
http://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1405761813/

久々に立てた
267ほんわか名無しさん:2014/07/19(土) 18:39:10.23 0
おまwwwwちょうど今日の仕事終わりにでも立てようと思ってたのにwwww

ナイスタイミングすぎるwwww
268ほんわか名無しさん:2014/07/20(日) 00:12:51.72 0
落ちたか。久々に楽しかった
269ほんわか名無しさん:2014/07/20(日) 00:13:57.49 0
意外と人居るもんなんだね。近いうちに俺も建ててみるか
2701/6:2014/07/20(日) 13:26:55.51 0
・やたらとモテる男と、そんな男からのアプローチを断り続けてるツンデレ

『それじゃ、椎水さん。あとはこのゴミを捨てて来てくれる?』
 今日は月に一度の部室の大掃除の日。文芸部に所属している私は、部長からゴミ袋を差
し出された。
『はい。分かりました』
 うなずいて受け取ると、部長はよろしく、という様子で笑顔を見せる。
『本河さんは古雑誌をね。資源ごみも焼却炉の横だから、椎水さんと一緒に行って。他の
子は、二人が戻ってくるまでに後片付けをするわよ。終わったらみんなでミスド行きましょ?
働いた後は甘い物が欲しくなるしね』
『はーいっ!!』
 ドーナツを食べに行くと聞いて、俄然やる気のある声をみんなは出した。部員十名弱の
部活とはいえ、女子ばかりだけに一気に騒がしくなる。
『いこっか。かなちゃん』
 両手に雑誌の束を持ち、私と同じ学年の本河好子が誘ってきた。
『うん。早く戻ってくれば、それだけ早くドーナツだもんね』
 私もみんなと同じように甘い物は大好きなので、大きくうなずく。やや急ぎ足で私たち
は、校舎裏にあるゴミ捨て場へと向かった。


『おーもーいー…… 手が痛いよぉ〜』
『頑張れ、好子ちゃん。ゴミ捨て場まであともう少しだから』
『そんな事言っても、紐がわたしの柔肌に食い込んで痛いの。お願い、かなちゃん。持つ
の変わって〜』
『わたし、重いの持つの苦手だもの。古雑誌の処分は好子ちゃんが命令されたんだから、
頑張らないとドーナツ無しになるよ』
 ぶっちゃけ、文芸部なんて入ってる女子に、体力自慢の子などいない。
『お願い〜。じゃあちょっと休もうよぉ。手の痛みが引くまででいいからさあ。このまま
だと、わたしのお手手に一生消えない痣が残っちゃうよぉ』
2712/6:2014/07/20(日) 13:27:20.59 0
『ダメよ。わたしたちが遅れると、その分みんながドーナツ食べに行く時間も遅れるんだ
から。我慢しよ。あとでさすってあげるからさ』
『無理。かなちゃんの優しい愛撫でも、この食い込んだ紐のあざは消えないわ。まあ……
優しく舐めてくれたら、痛みも引くかも』
『誰がするかっ!!』
 一応言っておくが、わたしたちは別に百合な関係ではない。好子ちゃんの冗談にゴミ袋
を振りかぶる構えをすると、好子ちゃんは腕で防御しつつ身を翻して逃げようとする。
『うわ。かなちゃん怖いよー』
『待てコラ。この変態』
 ふざけあいながら追いかけようとしたその時、好子ちゃんがいきなり驚いた声を上げた。
『わわわっ!!』
 同時にいきなり後ろ向きに戻ってくる。追いかけてたわたしは、止まることが出来ずに
その背中に衝突してしまった。
『んきゃあっ!?』
『はぶっ!!』
 わたしは反動でしりもちを突き、好子ちゃんは前のめりに転びそうになったところを雑
誌で地面を押さえて辛うじて踏みとどまる。
『あいったぁ〜…… 何で急に戻ってくるのよ』
 背中に鼻をぶつけてしまい、手で押さえる。幸い鼻血は出なかったようだ。
『ゴメン。だってさぁ…… お、パンツ見えてる』
『きゃあっ!! どこ見てんのよ。好子ちゃんのエッチ』
 慌てて股を閉じ、スカートを押さえて睨みつける。
『ゴメン。かなちゃんのあられもない格好にドキドキしちゃったから、つい』
『つい、じゃない!! それより何があったのよ。危ないじゃない』
 抗議の声を上げると、好子ちゃんは人差し指を唇に当てて、静止の声を出した。
『しーっ…… 静かにして、こっち来て』
『何よ……?』
『あれ、見て』
 校舎の影から、好子ちゃんは頭を半分だけ出す。わたしも真似して、地面に膝をつくと
同じようにした。
2723/6:2014/07/20(日) 13:27:47.69 0
『あ……』
 視線の先にあったものに、小さく声を上げる。一組のカップルが、向かい合って立っていた。
『ね、ね? あれって、別府君よね?』
 頭上から、小声で好子ちゃんが聞いてくる。
『……うん。だよね』
『また告白されてるのかな? モテるよね、彼』
『……だね』
 わたしたちの視線の先にいる男子は、別府タカシという。目鼻立ちのはっきりした、ちょっ
とさわやかな感じのイケメンで、当然女子人気は高い。
『彼、何人目からの告白なのかな……?』
『さあ? そういうのは友ちゃんにでも聞いて』
 わたしは素っ気無くゴシップ好きの友人の名を挙げる。新聞部の彼女は、クラスでも情
報通で名を売っているから、きっと知っているだろう。
『また、かなちゃんは興味ない風を装って。ホントは好きなくせに』
 からかうような口調で問い詰めてくる好子ちゃんはロマンス小説が大好きだ。もっとも、
彼女の場合お話と妄想の世界ならいくらでも語れるのだが、いざガチの恋愛となるとあがっ
てしまって全くダメなのだが。
『わたしは恋愛より推理小説の方が好きだもの。スパイスとしてはいいけど、本題そっち
のけにされて主人公とヒロインがいちゃつくようなのは合わないし』
『まーた、そんなクールを装っちゃって。今だって実は興味津々なんじゃないの?』
『そんな事ないってば……』
 確かに、視線は釘付けだが。しかし実は理由はそんなことではない。もっとも好子ちゃ
んにそれを言う気はないが。
『あ、修羅場った』
 相手の女の子の声が大きくなるのとほぼ同時に、好子ちゃんが小さく声を上げた。わた
しは、耳に神経を集中させて、二人の会話に聞き入り始めた。
2734/6:2014/07/20(日) 13:29:10.87 0
『なにそれ? 君とじゃあ無理って……どういう意味なんですか?』
 女の子の言葉は、言葉遣いこそ丁寧だが、声にはかなり刺々しさが感じられる。しかし、
別府タカシは一向にお構い無しの様子で冷静に答えていた。
「だから言葉通りの意味だよ。君と付き合うのは無理だよって、そういうことだね」
『何でですかっ!! 無理って……理由を教えてください!! 時間だったら先輩に合わ
せます!! 無理にデートとかしてくれなくたって構いません。先輩の会える時だけだっ
て我慢します』
 彼女は、別府タカシに何か事情があって付き合えないと考えたのだろう。しかし、別府
タカシはあっさりと首を振った。
「そういう意味の無理じゃなくてさ。別に理由があって付き合えないんじゃないよ。俺は
別に部活もやってないし、どっかのアイドルみたいに恋愛禁止されてるわけでもない。何
にも縛られてなんかいないよ」
『じゃあ…… 何が無理なんですかっ!! それじゃあ全然分かりませんっ!!』
 詰め寄る女の子に、別府タカシは困ったような顔でちょっとためらって、それから諦め
たように、小さく首を振った。
「まあ……正直に言うとさ。俺。君に興味が全くないから。だから付き合うのは無理ってわけ」
『そんな……』
 愕然とした顔をする女の子。もっとも、好きな相手からあそこまでバッサリと言われれ
ば、女の子としてはショックだろう。
「これでいいかな? それじゃ、悪いけど俺はそろそろ帰らせてもらうけど」
『待ってください!!』
 しかし、女の子はなかなか精神的にタフなようで、帰ろうと振り向きかけた別府タカシ
を大声で引き止めた。
『興味がないって……そんなの、先輩からすれば今日初めて会ったんですから当たり前じゃ
ないですか!! まずは私のことを知ってください。それで…… それでも、私に興味が
湧かなかったら、その時フッてください。こんな、何も知らないままで断られるのなんて
納得行きません!!』
2745/6:2014/07/20(日) 13:29:46.67 0
「知るも何も、そもそも君に興味が湧かないんだから知りたいとも思わないんだけど。正
直言えばね」
『そんな……』
 別府タカシのその言葉に、頭上の好子ちゃんが反応して呟いた。
『うわ。バッサリ過ぎる…… あれ、マジでキツいわぁ……』
 声には出さなかったが、私も好子ちゃんと同意見だ。フラれるにしても、あそこまで言
われたら、女子としてのプライドはズタズタだろう。ましてや、彼に告白するってことは、
相当自分に自信がある子なんだろうに。
「こう言っちゃなんだけどさ。興味のない子からしつこく自分アピールされるのって、セー
ルスと変わらないんだよね。こっちからしてみたら、しつこくされるだけ貴重な時間浪費
されるだけでさ。君も、俺なんかにこだわるより、早く別の人を見つけた方がいいと思う
よ。せっかく可愛いんだからさ」
 可愛い、と言われても相手の女の子の愕然としたような表情は変わらなかった。それは
そうだろうと思う。告白を押し売りなんかと同一にされたら、そりゃショックだろう。
『……ひっど……』
 女の子は微かな呟きと同時に顔を覆ってしゃがんでしまった。恐らく泣いてしまったの
だろうが、別府タカシはそんな彼女を冷めたような顔で見下ろしただけで、慰める様子は
微塵も見せなかった。
「もう話すことはないよね。それじゃあ、俺はもう行くから」
 彼が去るのを見届けてから、私と好子ちゃんは体を引っ込めると校舎の陰に身をひそめ
るようにして、ボソボソと話し始めた。
『うわー。噂には聞いていたけどさ。ホント、別府君ってヒドい断り方するよね』
『でもさ。それって女子の中じゃ有名な話じゃん。それでも敢えて果敢に挑戦するってい
うんだから、ある程度の覚悟はしてるんじゃないの?』
 すると好子ちゃんは、ちょっとからかうような意地悪な目つきで私を見た。
『あれ? かなちゃんって別府君をかばうの? もしかして、かなちゃんもちょっと気が
あるとか?』
2756/6:2014/07/20(日) 13:31:29.85 0
『まさか。大体わたしなんかじゃ相手にもされないって。さっきフラれてた子ってアイド
ルみたいで可愛かったのにダメだったし。それに、あそこまで冷たく言われたら立ち直れ
る自信ないからさ。好きとか嫌いとか以前に、お互い対象にならないよ』
『わかんないよ? クラスでは結構かなちゃんにも優しいじゃん。もしかして、別府君っ
てちょっと変わった好みなのかもしれないよ?』
『それは好子ちゃんにもでしょ? 別に普段は誰に対してだって気安く接してると思うよ?』
 フラれた女子のグループからは評判の悪い彼だけど、クラスでは女子とも上手くやって
いておしゃべりも上手で誰に対しても優しかったりするので、特に女子が集団で避けて悪
口とかを言うなんてことはない。
『まーね。まあ、わたしらは対象外だからってことなのかも。じゃなきゃ、容姿に自信の
ある子の態度が嫌いなのかもね』
『あー。あるかもね。自信満々ってところがイヤなのかも』
 勝手に噂話をして二人でクスクス笑い合っていたら、ポケットに入れてあった私のスマ
ホが鳴った。
『あれ? 何だろ?』
 ポケットから取り出して画面を見ると、そこには部長の名前が表示されていた。その途
端、私は現実に立ち返る。
『やっば!! 部長だ』
『あーっ!!』
 好子ちゃんも思い出して口を真ん丸く開いて大声を上げる。しかし出ないわけにはいか
ないので、私は仕方なく画面をタッチした。
『あの……もしもし。椎水ですけど……』
『かなみちゃん? 一体……ゴミ捨てにどれだけ時間掛けてるのかしら? みんな待って
るんだけど……』
 抑えた低い声は、彼女の怒りを感じさせるに十分なものがあった。


続く
久々に最新の妄想を投下してみる
また長いけど
276ほんわか名無しさん:2014/07/20(日) 21:04:59.22 i
男からしてもえげつねぇ振り方だなwwwwww
どうなるか期待
277ほんわか名無しさん:2014/07/20(日) 22:07:39.46 0
文芸部
続き楽しみ
おつんでれ
278ほんわか名無しさん:2014/07/21(月) 11:15:11.92 0
では引き続き>>275の続き投下します。
2791/6:2014/07/21(月) 11:16:12.14 0
・やたらとモテる男と、そんな男からのアプローチを断り続けてるツンデレ〜その2〜

『お邪魔しまーす』
 勝手知ったる幼馴染の家に、私は呼び鈴に相手が出るのも待たずに玄関のドアを開ける
と、靴を脱いでかまちに上がった。そのまままっすぐリビングを抜け、奥の部屋のドアを
ノックする。
『入っていい? タカシ』
「ああ。構わないよ」
 ドアを開けると、軽快なロックが耳に飛び込んでくる。幼馴染の別府タカシは、カーペッ
トの敷かれた自室の床に寝転がり、私が来たのにも構わずマンガを読んでいる。私はつか
つかと部屋の中に足を踏み入れると、そのまま足で彼の腰を踏み、グリグリと押した。
『なに、優雅にマンガなんて読みふけってんのよ。このバカ』
「あいててて。入ってくるなり何すんだよ」
 顔をしかめてマンガ本を置き、首を上げて私の方を見る。と、その視線が一点に止まり、
そのままジッと見つめる。
『何?』
 訝しく思って聞くと、タカシは真顔のまま私の顔に視線を移して聞いてきた。
「あのさ。そのポーズだとパンツ見えそうなんだけど。覗き見していいか?」
『なっ…… ダ、ダメに決まってるでしょ!! このバカ!!』
 ゲシッと一回腰を強く踏みつけて、私はタカシの足元に回る。この距離ならさすがにス
カートの中は覗けまい。
「いってぇ…… 何だよ。わざわざ教えてやったのに。何だったら見てからにすれば良かっ
たかな? 何か超損した気分なんだけど」
『もし見たら、アンタの目潰すから。大体、わたしのパンツなんて見て楽しいのか』
 おそらくやりようによっては、私なんかより遥かに可愛い彼女作って見放題に見れるで
あろう幼馴染は、ニコッと笑ってうなずいた。
「そりゃあ、もう。かなみの下半身ほど色っぽいものは、そうそうないからな」
 その言葉に、私は急に恥ずかしくなってスカートを押さえつつ睨みつける。
『またいけしゃあしゃあとそういうウソつくし。だから嫌いなのよ。アンタってば』
「ウソじゃないよ。まあ、お金払ったって見れるものじゃないっていうのが、余計に惹か
れる理由かもしれないけど」
2802/6:2014/07/21(月) 11:17:08.13 0
 タカシは腕に力を入れて下半身を引きながら体を起こす。タカシの言い草に内心ドキド
キしつつ、騙されちゃいけないと自分を戒めながら、私もその場にペタンと腰を落とした。
『わ……わたしのなんて、実際見たら大したことないって思うだけよ。それよか、今日ア
ンタに告白してた一年の女の子の方が、よっぽどそういう魅力あるんじゃないの?』
 どうしてもタカシの言っている事が信用出来なくて、わたしはわざと今日の子を引き合
いに出してみた。しかしタカシはあっさりと首を振る。
「あんな子…… 自分から媚を売ってくるような女なんて、いくら可愛くてスタイルもい
いからって興味湧かないって。つーか、かなみ。見てたのか?」
 別に隠すつもりはないので、わたしは正直にタカシの問いにうなずいた。
『ええ。もう、アンタの無慈悲な断り方を、一から十までしっかり見届けてあげたわ。あ
れじゃあ女の子が傷つくのも無理ないわよ』
 呆れたように感想を述べると、タカシはちょっと意味ありげな笑みを浮かべて、私の方
ににじり寄った。
「そんな事言って、実は俺がその子の告白を受けるんじゃないかって気になって、不安で
ドキドキしながら見てたんじゃないの?」
『なっ……何でわたしがそんなことで不安に思ったりするのよ。バッカじゃないの?』
 冷たく突き放すように答えつつ、私はその時の自分の気持ちを思い返してみる。確かに
私は、全く不安なんて感じていなかった。何故なら、タカシがあの子の告白を受けるとい
う可能性を、微塵も感じていなかったから。
「そうなんだ。それはちょっと残念」
 肩をすくめるタカシを、私は厳しく睨み付けた。
『そうだ。そのせいでヒドい目に遭ったんだからね。謝りなさいよ』
「は? 俺が告白を断ることで何でかなみが酷い目に遭うんだよ。学校じゃ単なるクラス
メートって関係以上には接点ないし、文句言ってくる女子なんていないはずだろ?」
 タカシの思い付きを、私は慌てて首を振る。その誤解はちょっとマズい。
『そうじゃなくって。アンタの告白見てたせいでゴミ捨てから戻るの遅くなって、部長や
部のみんなにめちゃくちゃ怒られたんだから。おまけに後からみんなにドーナツおごらさ
れたんだからね。その分弁償しなさいよ』
2813/6:2014/07/21(月) 11:18:10.52 0
 本当は好子ちゃんと折半の上、部長も内緒で援助してくれたので、大した金額にはなら
なかったのだけれど、そこはわざと大げさに言ってみた。
「ちょっと待てよ。覗き見してたのはかなみの勝手だろ? それを俺のせいにするなんて、
ちょっと話がズレてないか?」
 無論、正当性はタカシの方にあるわけだけど、私はその抗議を突っぱねる。
『焼却炉に行く途中のあんな場所で告白受ける方が悪いのよ。ほら。早く弁償』
 おねだりのように手を出すわたしに、タカシは不満げにそっぽを向く。
「あそこ、別に途中じゃねーし。確かに通りがかれば見える位置だけどさ。好奇心丸出し
で人の告白シーン見てる方がどう考えたって悪いっての」
『そりゃあ、噂に名高い別府タカシの断りっぷりを生で見られる機会だもの。逃す手はな
いわよねえ』
 ちょっと意地悪くニヤついて見せると、タカシは憮然と呟く。
「ったく…… 見せもんじゃねーっての。こっちからすればいい迷惑なんだから」
『何人目だっけ? これでコクられたのって』
 詳しく知っているわけじゃなかったので、興味本位で聞いてみる。女子同士の間じゃか
なりの噂になっているが、わたしは学校ではそうしたネットワークには参加していなかった。
「えーっと……今年っつーか……二年になってからは三人目かな? 去年の分合わせると、
もう忘れた」
 投げやりな態度のタカシに、私は呆れた目線を送る。
『よくそんなにフることが出来るわよね。一体どうしてアンタみたいなのがモテるんだか、
わたしには分かんないわよ』
 本当は十分すぎるほど分かっている。何といっても顔がいいのだ。あとスタイルも。お
まけによく気が利いて女の子に優しい。会話もウィットに飛んでいて話していて楽しいし、
知識も豊富だ。運動も勉強も特に秀でているわけではないが、ちゃっかり美味しいところ
を持っていく上にちょっとしたミスすらも人気につなげている。
「ま、見た目に騙されてるって感じだろ」
『自分で言うか。バカ』
 得意げなタカシを軽くこぶしで小突くと、タカシはいたずらっ子のような笑みで返す。
「あとは、俺と付き合うことがステータスみたいになってんだろ? さすがに同学年じゃ
チャレンジする奴はいなくなったけど、一年が入って来たからなぁ……」
2824/6:2014/07/21(月) 11:19:30.60 0
 小さくタカシはため息をつく。その様子から、本人的には全く楽しめていないことが窺える。
『今日、告白してきた子もすごい可愛かったじゃん。アイドルみたいでさ。いっそ試しに
付き合っちゃえばいいのに。何であんなに無下に断るかなあ?』
 半分意地悪で冗談っぽく言ってみたのだが、意外にもタカシは真顔になり、むしろちょっ
と険しいとすら思える目つきで私をジッと見つめた。
「お前ってさ…… 結構残酷なこと言うよな」
 その声色に、私は結構ドキリとした。気を悪くさせたことは間違いがない。
『や……やだな。そんなマジになんないでよ。ちょっとした冗談……っていうか、好奇心
だってば。あんだけ告白してきた子がいるなら、一人くらい気に入る子がいてもいいはず
なのに何でって思っただけだから』
 ちょっと焦って弁解すると、タカシは険しい表情は収めたものの、うんざりした様子は
変わらずにまた一つため息をつく。
「最初の頃はともかくさ。最近じゃ容姿に自信のある奴がこれみよがしに売り込んで来て
るだけだからな。結局アイツらって、俺と付き合いたいんじゃなくて俺と付き合うことで
女としての自尊心を満足させたいだけだろ。くだらねえ」
 タカシはまるで汚らわしいとばかりに吐き捨てた。確かにタカシの言うことにも一理あ
るのは、前にチャレンジしようと意気込む女の子の話が聞こえたことがあるからだ。
『それにしたって、一生懸命告白してきた子に対して、よくあんなに冷たい態度が取れる
わよね。相手の子が傷ついて立ち直れなくなったらどうすんのよ?』
 すると、またタカシが真面目な顔で私をジッと見つめた。
「よく、お前がそういうこと言えるよな」
『え?』
 その言葉に私が反応すると、タカシはすぐに何でもないとばかりに首を振った。
「だって、キッパリ断っとかねーと、向こうに変な期待抱かせるだけだし。ああいう女は
ちょっと優しくするとすぐ図に乗るからな。セールスと同じだって。お断りします、興味
はありませんってしっかり言わないとな。大体、そんな事で傷つく玉じゃねーし、アイツ
ら。ちょっと経てばすぐに別の彼氏見つけるなんて、そんな程度ってことだろ?」
2835/5:2014/07/21(月) 11:21:54.95 0
 私は、自分が聞いた噂話を思い返してみた。みんながみんなではないが、確かに告白し
たと聞いた女子のうちの何人かはさっさと別に彼氏を作っているようだった。
『でも、それって単に切り替えが早いってだけじゃないの? フッた相手がいつまでも付
きまとって来るよりはマシでしょうが』
 何となく流れで相手の子を擁護するようなことを言うと、タカシはちょっと不満そうな
顔をしたものの同意した。
「まーな。つか、そうならないようにあえてキツい言い方で断ってるわけだし。まあでも、
今のトコそのせいでトラウマ抱えたりしてる奴とかなんていないだろ? いたら集団で俺
を責めに来るだろうし」
『わかんないよ? 普段は平気そうにしてても、断られるのが怖くなって告白出来なくなった
子とかいるかもしれないじゃん』
「しらねーよ。まあ、俺のトコに告白に来るような女なら大丈夫だって。自分から告白し
なくたって、男の方から言い寄ってくるのがたくさんいるからさ。すぐに自信取り戻せるだろ」
 肩をすくめるタカシに、私は呆れた視線を送る。
『ホント、他人事なんだから。そんな態度じゃ、そのうちタカシに言い寄る女の子なんて
いなくなっちゃうよ? いいの? そうなっても。せめて会話くらいして、好みに合いそ
うな子か見定めてでも断るのは遅くないんじゃないの?』
「別にいいよ。それよか、俺の付き合いたい子が一向に色よい返事をくれないことの方が
よっぽど問題なんだけどな」
 あまりにも自然に言われたので、わたしは最初その意味について考えずに流してしまった。
『そんな恋愛なんてそうそう都合よく行くはずないでしょ。ていうか、アンタの付き合いたい
子なんて、そんな子って……』
 自分で言ってることのが混乱してきて、わたしは言葉が続かなくなってしまった。それ
を見て取ってか、すかさずタカシが言葉を継いでくる。
「いるだろうが。今、俺の目の前に」


続く
5レスで収まってしまった。
ちょっとPCが入院するので間が空きますが申し訳ない
284ほんわか名無しさん:2014/07/21(月) 15:04:52.30 0
いいねいいね期待大
285ほんわか名無しさん:2014/07/22(火) 00:58:36.78 0
>>283
良い
実に良いシチュエーションだ
wktkしながら待ってるぜ
286ほんわか名無しさん
弱気だと思ったらかなみんだったか