ツンデレにこれって間接キスだよなっていったら0.6
◆ツンデレって何?
「普段はツンツン、二人っきりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃつく」ようなタイプのキャラクターのこと。
◆このスレでよく使われる人物設定
男:デフォルトネームは別府タカシ。ツンデレに色々したりされたりする。
アッパー:デフォルトネームは椎水かなみ。感情表現豊かな基本形。
ダウナー:デフォルトネームはちなみ。ローテンションで「……」を多用して喋る。
お嬢:デフォルトネームは神野りな。お嬢様口調。というかお嬢様。
老成:デフォはまつり。「纏」と書く。わしは?じゃのう等、古風かつジジ臭い言い回しをする。
尊大:デフォはみこと。「尊」と書く。自信に満ちあふれたような、偉ぶった言い回しをする。
関西:デフォはいずみ。関西弁で喋る。
ボクっ娘:ボクっ娘ツンデレ。一人称「ボク」。デフォルトネームは決まっていない。
勝気:気の強い男勝りツンデレ。デフォルトネームは決まってい(ry
無表情:無表情ツンデレ。デフォルトネームは決まっ(ry
中華:中華系ツンデレ。「??アル」といった言い回しをする。デフォルトネームは決(ry
幽霊:幽霊ツンデレ。憑依したりする。アッパーだったりダウナーだったりする。デフォルトネームは(ry
山田:クラスメイトとして使われることが多い。いわゆる友人A。なぜかVIPPER口調で描かれがち。
友子:クラスメイトとして使われる事が多い友人B。好奇心が強かったり世話好きだったりいろいろ。
※名前の由来などについてはまとめサイト参照
・上記の名前や設定はあくまでデフォルト。
・投下許可は求めなくていいですが、長編SSについては、投下前に宣言をしていただけると他のSSとのごちゃ混ぜ防止になるのでスレに優しいです。
・書き上がってから一斉投下してね。 書きながら投下はイクナイ。
・感想レスは励みになるので大歓迎。
・投下のタイミングは自分で見計らおう。投下直前にはリロードを心がけよう。
・もしスルーされても泣かないこと。
・投下後に殊更に感想を求めたり、レスが付かないからって自虐したりすると、ツンデレに嫌われます。
・みんなも多少のことは大目に見てスルーしよう
いちおつ〜
いちおつちなみんのおっぱい
これはポニーテールでなんちゃら
『兄さん、いつまで起きているんですか? 寝坊しても私は知りませんよ』
「……zZzZ」
『……寝てます? ……に、兄さん! こたつで寝ないで下さい! 自分の部屋で寝て下さい!』
「……zZzZ」
『起きて下さい、兄さん! どうなっても私は知りませんからね!』
「……zZzZ」
『…………そんな所で寝てたら……風邪引いちゃうよ、お兄ちゃん……』
「……んんっ……敬子?」
『――っ!! い、今のは違うんです! い、今のはっ、あれで、その――』
「今のって何の事だ?」
『……え? 聞いてなかったんですか?』
「話が読めないんだが――っと、もうこんな時間か。もしかして俺、こたつで寝てた?」
『そ、そうですよ! 起こす手間を取らされる私の身にもなって下さい! ……聞かれてなかったみたいですね』ボソボソ
「はっはっはっ、起こしてくれてありがとうな、敬子。お兄ちゃんは部屋に戻って寝る事にするよ、風邪引かないように、な」
『ええ、そうして下さ――なっ、ななっ! やっぱり聞いていたんじゃないですか!
さ、さっきのは間違いっ、間違いなんです! 早く忘れて下さい!!』
「えー? すぐには忘れられそうには無いなー、あんな可愛らしい敬子の姿は」
『う゛ーー……兄さんは本当に悪趣味な変態です……』
俺コタツで寝てたけど起こされなかったんだが
敬子ハァハァ……可愛すぎる!!
>>8 最近コタツを出した俺にはタイムリーなツンデレ
GJ
友ちゃんに変態って罵られたい
>>13 「友ちゃん、写真取ってきたよ」
『ご苦労。ふふふ、良く撮れてるわ、さすが私ね……うへへ』
「何だか変態っぽいよ、友ちゃん」
『変態……好きなように呼ぶと良いわ! これは親友である私の使命なのよ――って、何よ、これ!?』
「あ、それ? 友ちゃんが寝てる時に、僕もカメラの練習してみたんだ。可愛く撮れてるでしょ?」
『〜〜〜っ! 何で私を撮るのよ! この変態!!』
「えー……」
撮るときは平気な顔してるのに獲られたら真っ赤な顔して慌てる友ちゃんかわいい結婚しよう
前スレも埋まったし、こっちのスレでも友ちゃんぺろぺろ
17 :
ほんわか名無しさん:2013/11/22(金) 01:47:48.64 0
ちなみんかわかわ
19 :
1/6:2013/11/22(金) 03:13:17.79 0
・ツンデレと男に嘘のラブレターが届いたら 〜その4〜
放課後になった。
敬子は、重い気分でゆっくりと教室を出る。さっさと部活に行ってしまった友子が、出
際に肩を叩き、親指を立てて励ましのポーズを立てていった事が、余計に彼女にプレッシャー
を掛けている。
『行った方がいいんですよね……』
小さく、誰にも聞こえない程度に呟くと、敬子はバッグを手に持ち教室を出た。そのま
ま、昇降口ではなく反対側に向けて歩き、さらに階段を上に上る。この上は屋上だから、
放課後に生徒が上って行く事はまずない。辺りに人がいない事を確認すると、敬子はスカー
トのポケットから手紙を出して広げた。
【どうしても、音無さんに直接会ってお話したいことがあります。ご迷惑だとは思います
けど、今日の放課後に特別棟の裏に来て下さい】
手紙の、その部分を読み返して彼女は目を離し、壁に体を預けるとハァと深いため息をついた。
――どんな人……なんだろう? この手紙を出した人って……
今日一日、ずっとそんな事を考えていたせいで、敬子はほとんど授業にも身が入らなか
った。そんな中、何故かクラスメートの別府タカシの存在だけがやたらと気になって、時
折視線を泳がせては慌てて離して、そんな事を繰り返していた。
――何で、私……別府君の事があんなに気になっていたんだろう……? 罪悪感……?
そんなの思うなんて、変……だよね? だって私……別府君とは何でもないのに……
友子に言われるまでも無く、自分の心の中に彼をほのかに慕う感情があることに敬子は
気付いていたが、それは自分の一方的な思いで、それを裏切ったとしても、別に彼を裏切っ
た事にはならないはずなのに。
と、その時に午後4時を知らせるチャイムが鳴った。
『いけません。もう行かないと…… 多分、待ってるはずですから』
敬子は慌てて階段を駆け下りると、そのまま昇降口へと向かう。靴を履き替え、外へ出
た。急ぎ足で呼び出された場所に向かいつつ、彼女は心の中で念仏のように唱える。
20 :
2/6:2013/11/22(金) 03:14:30.65 0
――大丈夫。キチンと……誠意を持ってお断りすれば……理解してくれるはずだから……
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
しかしそれでも、いざ特別棟の裏に回りこもうとすると、足が止まってしまった。不安
で足が竦んで動かない。
――もし……万が一……騙されてて……危ない目に遭ったりとかしたら……
それも、彼女が不安に思っていた可能性の一つだった。地味で控えめで、特別男子の噂
になる事もなく、かといって同性からいじめの対象になっている訳でもなく、自分が誰か
に酷い目に遭わされる事は想像が付き難かったが、それでも用心に越した事はない。敬子
はまず、周囲の様子を窺った。しかし、辺りに他人の気配はない。
――ちょっとだけ……どんな人だか、見てみよう…… もし……ちょっと怖そうな感じと
かだったら……止めよう……
そう決意して、そっと校舎裏の様子を窺う。さほど遠くないところに、一人男子生徒が
壁にもたれてスマートフォンを見ていた。どんな人だろうと意識を顔に集中させた時、彼
女は自分の目を疑った。
――え?
一度、顔を引っ込めて校舎の壁に体を預ける。心臓が、ドクンドクンと音を立てていた。
『嘘……ですよ、ね……? まさか……』
そう呟き、もう一度顔を出して男子生徒の姿を捉える。しかし、どう見てもその姿は、
自分と同じクラスで、彼女が時折会話を交わす事が出来るほぼ唯一の男の子にしか見えな
かった。バッグからメガネケースを取り出し、本を読む時くらいしか掛けないメガネを掛
けてじっくりと見ても変わらなかった。
――本当だ…… まさか、本当に、こんな事が……
考えるよりも早く、敬子は物陰から飛び出した。僅かに駆け寄って少し距離を置いて立
ち止まると、掠れた小さい声で彼に声を掛ける。
『……あの……』
壁に寄りかかっていた男子が、敬子の方を向き視線がその姿を捉えた。一瞬遅れて、彼
は体を起こすと彼女に向き直り、まるで信じられないような顔で呟いた。
「お……音無さん……? マジで?」
彼の態度に、敬子は僅かに疑問が浮かぶ。しかし、それ以上に、別府タカシが目の前に
いる事が信じられない思いだった。
『やっぱり……別府君だったんですね…… 本当に……』
21 :
3/6:2013/11/22(金) 03:15:28.84 0
まるで夢のような出来事を事実と認識出来るようにと、彼女は確認する。しかしその言
葉に、タカシが首を傾げるのが見えた。
「……は?」
疑問符のついたような響きで聞き返され、敬子の心に不安が過ぎる。まさか、何かの間
違いだったのだろうかと。たまたまここにいただけで、この手紙とは何の関係もないのか
と。そんな偶然があるとも思えなかったが、とにかく不安を解消する為に、彼女はもう一
度、確認をした。
『私に…… 私を、呼び出したのって…… 別府君、だったんですよね……?』
タカシは呆然と立ち尽くしていた。
――ちょっと待ってくれよ。音無さん、何言ってるんだ? 呼び出したのはって……
状況がよく飲み込めなかったが、とにかく今は彼女の問いに答えなければならない。そ
う思って、彼は首を振った。
「いやその……俺は……音無さんを呼び出したりは、してないけど?」
『え?』
さっきよりも、ハッキリと驚いた顔で敬子がタカシを見つめた。何故か、自分が酷く悪
い事をしているような不思議な気分に囚われつつ、タカシは自分の言葉を肯定しようと頷く。
「つーか、俺も呼び出されて来たんだけどさ。ここに。だからてっきり、音無さんがその
相手だって思ったんだけど……」
ポリポリと、タカシは指で頬を掻いた。もしかしたら、自分の好きな相手が彼女だった
んじゃないかと期待した事が、今となっては恥ずかしく思える。しかしその思いは一瞬で
破られた。敬子が、まるで怒ったように彼に詰め寄ってきたからだ。
『ちょ、ちょっと待って下さい!! 一体どういう事なんですか? 誰かに呼び出されたっ
て……誰なんですか?』
「い、いや。それが分かってれば苦労はないよ。音無さんだなんて勘違いもしないだろうしさ」
タカシの答えに、敬子はフッと何か違和感を感じた。明確な答えではないが、何かが分
かりかけている。そんな感じに駆られて、彼女は再び追及を続ける。
『分からないって……一体、じゃあどうやって呼び出されたんですか?』
22 :
4/6:2013/11/22(金) 03:16:23.52 0
タカシは、答える前にポケットから封筒を取り出した。いささか気の引ける思いではあっ
たが、聞かれた以上答えるしかない。
「この封筒がさ。教室の俺の机の中に入ってたんだよ。宛名も俺になってたから、中の手
紙を読んだらさ。放課後ここに来いって書いてあったから……」
『女子の字で……ですか?』
「まあ……うん。そうだけど……」
奥歯に物の挟まったような言い方で、タカシが頷く。その答えに、敬子は周囲を窺った。
しかし、他に誰も来たような気配はない。
「えっと……音無さんはさ。どうやって呼び出されて来たの?」
敬子が何の答えも返さないので、間が持たなくなってタカシが聞いた。敬子はパッとタ
カシの方に向き直ると、顔だけを背ける。
『わ……私ですか? えっと、その……』
敬子は、答えるのに躊躇した。しかし、彼に同じような質問をして答えてもらった以上、
自分も答えないわけにはいかないと覚悟を決めて、たどたどしく言葉を続ける。
『その……私も、手紙で……です。今朝、昇降口で……靴箱の中に入っていて……』
「ふうん…… でも、こんな偶然ってあるのかなあ? 二人して同じ日に同じ時間に同じ
場所に呼び出しを受けるなんて」
タカシの疑問に答えようとして、敬子は違和感の正体に気付いた。同時に、激しく首を振る。
『そんな事、普通あり得ません!! あり得るとしたら……誰かが仕組んだ時だけです』
「仕組んだって、まさかそんな……」
笑顔で否定しようとするタカシに、敬子は首を振る。
『私には、心当たりがあります。別府君にはありませんか? 手紙を見つけた時に、都合
良く声掛けて来た友達とか』
敬子の脳裏に浮かんだのは、今朝の友子の笑顔だった。手紙をしまおうとした途端、タ
イミングよく声を掛けて来たのも、今思えば、最初から知っていたからなのだ。そしてタ
カシも言われて気が付いた。手紙を見つけたと同時に、山田に声を掛けられた事を。
「……そういや、山田が声を掛けて来たタイミングも絶妙だったよな。そん時は思わなかっ
たけど、今思い返すと、マンガみたいだ」
『やっぱり、山田君でしたか』
23 :
5/6:2013/11/22(金) 03:26:41.19 0
友子と山田が同じ新聞部員で、取材の時も編集の時もいつもつるんでいるのは少なくと
もクラスで知らないものはいない。恐らく発案者が友子で、山田は指示通りにしただけな
のだろうと、頭痛に似た感覚を覚えつつ敬子は頭を振る。
『それに、おかしいですよね? もうホームルームが終わって30分以上も経つのに、お互
い呼び出した相手が来ていないなんて。別府君の方は相手の子が遅れて、来た時には私が
一緒にいたから声を掛けられなくなった、なんていう可能性もごく僅かにはありますけど、
私を呼び出した男子でしたら、別府君がいても姿くらいは現すはずです』
「うーん…… 確かにそうだよな……」
考えつつ同意して、タカシも周囲を窺った。今になっても誰の気配も無い。
「じゃあやっぱり……俺ら、騙されたって事?」
敬子は、コクリと頷いた。
『もう、まず間違いないと思います。お互い、手紙で呼び出されて、しかも後押しをする
かのように計ったタイミングで声を掛けられているんですから。ここまで来てもし偶然じゃ
なければ、それは奇跡です』
タカシは深く、ため息を吐き出した。ガリガリと音を立てて後頭部を掻く。
「それにしたって、何でこんな時に騙すような真似するんだよ。山田の奴、問い詰めてや
らないと」
『無駄ですね。どうせ仕掛けたのは友子の方ですから。それに、私には心当たりもありますし』
さっきのやり取りを、敬子は反芻する。どうりで別府君の名前が出て来たはずだ。最初
から仕組んでいるのだから、意識させる為にワザと話題に出したのだろう。
「心当たりって?」
疑問と好奇心がない交ぜになって、タカシは聞き返す。それに敬子はハッと物思いから
覚めたように顔を上げると、タカシを不満気に睨み付けた。
『そこまでは答えられません。女子同士の事ですから。とにかく、友子には私からしっか
りとお灸を据えますので、別府君は……天災にでも遭ったと思って諦めて下さい』
24 :
6/6:2013/11/22(金) 03:28:04.86 0
「分かったよ。まあ、期待を裏切られたって事と、ちょっと時間を無駄にした以外、実害
はなかった訳だしな。ハァ……」
特別イケメンでもない自分にも春が訪れたかもと期待していただけに、ついタカシはた
め息を漏らしてしまった。それが敬子の耳に入った時、彼女はハッとある事に気が付いて
タカシを見つめた。
『ちょ……ちょっと待って下さい。期待を裏切られたって……どういう事ですか?』
続く
やはりちょっとだけはみ出してしまったか
続きwktkせずにはいられない!
期待
友ちゃんに抱っこ要求されたい
29 :
1/5:2013/11/23(土) 18:49:36.80 0
・ツンデレと男に嘘のラブレターが届いたら 〜その5〜
「え?」
タカシが驚いたように敬子を見返した。何か自分がマズい事を言ったかとドキリとしつ
つ、変にごまかすような事を言ってもボロを出すだけだろうと思い、タカシは正直に思い
を口に出すことにした。
「いや……そりゃあさ。まあ、一応俺だって男だからさ。もし好きになってくれる女子が
いれば、とりあえず悪い気はしないさ。好みのタイプかどうかは別にしてもさ。それが嘘
だって分かったら、やっぱりちょっとはがっかりするじゃん」
同意を求めるような事を言われて、敬子は逆にタカシを睨み付けた。彼女自身も不思議
な事だったが、苛立ちのような怒りのような、そんな感情に駆られて抑えることが出来なかった。
『じゃあ…… じゃあ、別府君は、自分を好きになってくれる女の子なら誰だっていいと、
そういう事なんですか? 別府君って、そんなに節操のない男子だったんですか?』
何故自分が詰られるのか、タカシはイマイチ理解出来なかったが、少なくとも間違った
事を言われて黙っている訳には行かなかった。
「まさか。気持ちは嬉しいけど、その子を好きになるかどうかはまた別問題だよ。もしか
したら、相手だって俺の事を誤解して好きになってるかもしれないし、その……見た目の
問題だってもちろんあるしさ。まあそっちはそんなに高望みする訳じゃないけど、とにか
く誰でもいいって訳じゃないから」
『じゃあどんな女の子ならいいなって思ってたんですか?』
反射的に質問してしまって、敬子は咄嗟に口を押さえた。すぐに失礼な質問だったと後
悔する。うつむきつつ、チラリと上目遣いにタカシの様子を窺うが、困ったような難しい
顔をしてはいたが、怒った様子には見えなかった。
「それ……答えなくちゃいけないかな? 何かさ。男の妄想を曝け出すみたいで、結構恥
ずかしいんだけど……」
正直な話、タカシは困惑していた。というのも、こればかりは素直に答えた場合、彼女
に当て嵌まりそうなことがかなり多かったからだ。これで気持ち悪いとか思われたら、相
当ショックを受けるだろうと我が身を省みても想像には難くなかった。しかし彼にとって
は幸いな事に、敬子はうつむいたまま小さく首を振った。
30 :
2/5:2013/11/23(土) 18:50:22.62 0
『いえ、その……咄嗟に、好奇心から口に出てしまっただけで、そこまでは……い、言わ
なくていいです……』
途切れ途切れに答えつつ、内心タカシがためらった事で敬子自身もホッとしていた。彼
の好みがどんな女の子なのか知りたいと思う反面、自分と全くタイプの違う子だったらと
思うと、同じくらい恐怖も湧き上っていた。それはつまり、自分に対する芽は無いといわ
れるのと同じだったからだ。
「そっか。まあ、助かったけど……音無さんでも、人の好みのタイプがどんなとか、知り
たいって思うことがあるんだ」
『それ……どういう意味ですか?』
ポロッとタカシが口に出した言葉に、敬子は即座に反応した。それが咎めるような響き
に聞こえて、タカシはすぐに弁解の言葉を口にする。
「ああ、いや。音無さんって人の恋愛とかにあんまり興味を持つようなタイプに見えなかっ
たからさ。そうやって聞いて来ることが、ちょっと意外かなって思っただけで、別に悪
いとかそういう事じゃないから」
『私だって、人並みにそういう事に好奇心を持つことくらいあります。ただ、その……友
子みたいに調べて回ったりだとか人にそういう事を聞くのは、はしたないなって思ってる
だけで……ですから、今のはその、ちょっとうっかり口に出してしまっただけですから』
言い訳みたいな事を言って顔を背ける敬子を見て、タカシはドキリとしてしまう。もし
かしたら、普段は抑えている好奇心がうっかり出てしまうほどに自分に興味があるんじゃ
ないかと、つい期待を抱いてしまったりもする。
「じゃあさ。俺も一つ、失礼かもしれないことを質問してもいいかな?」
『え?』
敬子は驚いて顔を上げた。僅かに不安が心を過ぎる。例えタカシ相手とはいえ――いや。
むしろタカシだからこそ、知られたくない思いがたくさんある。もし、そういった思いを
僅かでも知られてしまったらと、心臓がドキドキする。
「いいよ。俺も答えなかったし、答えたくなかったらそれでも。ただ、質問させてくれる
だけでも」
タカシは、安心させるように微笑みかけてみせる。お互い騙された結果ではあったとは
いえ、せっかくの二人きりの機会を出来る限り長引かせたい。そんな欲求から、タカシは
慎重にではあったが、とにかく会話を途切れさせたくなかった。
31 :
3/5:2013/11/23(土) 18:51:04.58 0
『それは……別に、構いませんけれど……』
逃げ道を作ってくれた事に、敬子は感謝した。やっぱり彼は優しいと、そう思うと温か
さを心に感じられる。
「ありがとう。それと、もう一つ。もし、俺の質問に答えてくれたらさ。さっきの音無さ
んの質問に、俺も少しだけ答えることにするよ」
『そ、それって交換条件……って、ことですか?』
咄嗟に聞き返す敬子に、タカシは首を振る。
「ううん。元々答えなくていいって話だったじゃん。だけど、音無さんが質問に答えてく
れるなら、俺も礼儀として少しは答えなくちゃいけないかなって、そう思っただけで。答
えなくても、失うものがある訳じゃないんだし」
『……まあ、そうですけど……』
でも、彼が好みのタイプの女の子がどんな子なのか。それをヒントになるような事でも
教えてくれるのなら、やっぱり答えなくちゃいけないのではないか。でもそれでもし自分
の彼に対する思いを仄めかすような結果になってしまったらどうしようかと、そんな葛藤
に敬子は頭を抱える。
「それじゃあ……質問しても、いいかな?」
『えっ!? はい……どうぞ……』
唇を噛み、体を緊張で強張らせて敬子は質問に構える。そんな彼女を見て、まるで勝負
事に挑んでいるようだなというような印象を受けつつ、タカシは出来る限り気さくな態度
で口を開いた。
「えっと…… 音無さんはさ。もし、今日……ラブレターが本物で、来た男子から告白さ
れたとしたら、どうするつもりだった?」
『断わろうと思いました』
「えっ?」
あまりにも素早い回答に、タカシは驚いて聞き返す。敬子は相変わらず、睨み付けるよ
うな目でタカシをジッと見つめている。
「その……断わろうと思ったって……相手も分からないのに?」
『はい』
敬子はコクリと頷く。正直、答えられる内容で良かったとホッとしていた。
32 :
4/5:2013/11/23(土) 18:51:42.50 0
「あのさ。音無さんって……好みのタイプの男子とかっていないの? いいなって思える
ような。それとも、男嫌いとか?」
『違いますっ!! べ、別に男子が嫌いとか、そんな事はありません』
敬子は咄嗟に首を振る。よりにもよってタカシにそんな誤解をされたままだったとした
ら、この先ずっと後悔する。
『ただ……私の方に、男の子と付き合う心構えが出来ていないと言うか…… だから、も
しその……ちょっとカッコいいなって思えるような男子だったとしても、そう断わって、
時間を貰うつもりでした……』
考えながら答えつつ、敬子はもし告白してきたのがタカシだったらと夢想する。本当は、
彼に答えたのは真実ではなくて、自分がいいなって思えるのがタカシしかいなかったから
だなんて、口が裂けても答える訳には行かなかったからである。
「そっか。まあ、音無さんみたいな女子にしてみれば、男子と正式にお付き合いするって
勇気が要ることかも知れないもんな。まあ、人にもよるだろうけど」
『それって私が臆病だって、そういう事ですか?』
普段、友子ら友人達にちょっとでもいいなとか思ったら試しに付き合ってみればいいの
にと散々言われているせいか、敬子はつい、タカシの言葉を否定的に捉えてしまう。それ
に気付き、タカシはすぐに誤解を解こうとした。
「違う違う。臆病と慎重なのは別だと思うし。いいんじゃないのかな。その……男と付き
合うのなんて、慎重なくらいでさ。軽い奴だと、単にやりたいだけの奴もいるかも知れないし」
隠語とはいえ、直接的なタカシの表現に、そういう話題に慣れていない敬子は言葉を失
う。しばし沈黙が続いた後で、彼女はボソリと呟いた。
『どのみち……全部、仮定の話ですから関係ありません。私に告白したいと思う男子なん
ていなかった訳ですし』
「でも、今回はその……騙された訳だけど、もしかしたら今後本当に告白される事あるか
も知れないじゃん。逆に言えばさ。そういう事がもしあった時に備えて、いい心構えが出
来たって前向きに考える事も出来るし」
卑屈な態度を取る敬子を慰めようと、タカシは敢えてプラス思考を口に出してみる。し
かし彼女はブンブンと首を振った。
33 :
5/5:2013/11/23(土) 18:53:12.08 0
タカシが優しくしてくれるのは嬉しかったけど、彼も単に騙されてここに来ただけ成り
行き上、自分と話をしてくれているだけだと、敬子はやっぱり卑屈な気分になる。どうせ
友子が余計なお節介で、二人きりにすれば話が進むだろうとか考えてやったのだろうけれ
ど、臆病な自分が積極的にアピール出来る訳もなく、ましてや彼にその気が無いのなら、
話なんて進む訳が無いと。
しかし、タカシは意外なことを口にした。
「……俺は、音無さんみたいな子。結構好みのタイプだけどな」
続く
乙
イイネ!
俺もタイプです
山田のタイプの女の子はっと…
山田の好みは肉付きの良い眼鏡っ娘だな
『あれ? どうしたの友子。眼鏡なんか掛けて』
『へ!?な、ななななんでもないわよ!ほ、ほら、いいんちょが眼鏡してるでしょ?それってどんな感じなのかなーって思って。それだけ!』
編集作業してる時だけメガネしてる友ちゃん可愛い
そんな友ちゃん独り占めしてる山田羨ましい
私が山田のものなんじゃなくて、山田が私のものなの!って言い張る友ちゃんかわいい
前の車のナンバーに「ち」が入ってるだけでニヤニヤできるほどダウナーさん好きだよ俺は。
茅ヶ崎でTSUNAMIを聞きながらチアガ姿のちなみんと茶を飲みたい
山田を怪しい薬の実験台にしまくる友ちゃんかわいい
ちなみんのほっぺふにふにしたい。胸とどっちが柔らかいか比べたい
47 :
ほんわか名無しさん:2013/11/29(金) 21:06:44.79 0
線路のツンデレ=天使に萌えた
ツンデレさんの熱測るのにおでここつんしたいね
50 :
1/3:2013/11/30(土) 12:20:46.48 0
・ツンデレと男に嘘のラブレターが届いたら 〜その6〜
『へ……?』
キョトンとした顔で、敬子がタカシを見つめる。それにタカシは照れ臭くなって視線を
逸らした。
「あー…… えっとさ。さっき、言ったじゃん。音無さんが質問に答えてくれたら、俺も
音無さんが最初に聞いた事に答えるって。いや、もちろん他にも好みのタイプはいるけど
さ。清楚な感じで、メガネ掛けてて文学少女然とした感じの子もいいなって、待ってる間
考えてたから」
正直なところ、タカシから見て彼女の一番の欠点は自分に自信を持たなさ過ぎなところ
だと思っていた。控えめなのは長所でもあるが、それも過ぎると少し陰気なイメージになっ
てしまう。だから、恥ずかしさを堪えて自分の好みを敢えて教えることで、少しでも自
信を得る助けになればと思ったのだ。
『う……嘘です。私が変に自虐したりしたから、慰めようとして言ってるんですよね? 別
府君は優しさだと思ってるのかも知れませんけれど、見え透いた嘘は却って白々しく思え
るだけです』
「慰めるって言うか……自信持ってもらおうとは思ったけどさ。嘘はついて無いよ。そりゃ、
元気で活動的な女の子の中にも好みの子はいるけどさ。けど、大人しい子だって全然いい
と思うし」
『嘘です。それじゃあ、もし……仮に……仮に、ですよ? 別府君にラブレターを出した
のが私だとしたら、別府君は承諾するっていうんですか?』
ムキになる敬子に、タカシは何か挑戦に応えるような気分で頷いた。
「そりゃあ受けるよ。音無さんは見た目的にも可愛いしさ。もちろん、付き合ってみてダ
メだなって思ったら最終的には断わるかも知れないけどさ。最初から拒否する事は絶対無
いし、それに音無さんだったら委員会や班の活動で何回か一緒にやっておしゃべりもして
るじゃん。話も合わない事無いしさ。問題ないと思うよ」
『そっ……それじゃあっ……!!』
51 :
2/3:2013/11/30(土) 12:21:17.92 0
そのまま勢いで言葉を発してしまいそうになって、敬子は慌てて言葉を切った。このま
まだと何かとんでもない事を言ってしまいそうになる自分に気付いた瞬間、ハッと我に返
る。顔だけじゃなくて体中が熱に浮かされたみたいに熱くて、心臓もドキドキしている。
――私……何、言おうとして…… あのまま行ってたら、告白までしちゃってたかも……
その可能性に気付き、敬子はハッとなる。
――別府君は、私が告白したら受けてくれるって言った。だったら、今私がここで正式に
告白したら……
ドックンドックンという鼓動が響いて、左胸が痛い程だ。口の中がカラカラに乾いてい
て、ガサついて気持ちが悪い。
――ダメだ…… 先に答えまで聞いているのに……それでも、言う勇気が出ないなんて……
私ってば、どれだけ臆病なんだろう……
この期に及んでなお、自分の心を曝け出す事が出来ない自分に、敬子自身が歯痒くてな
らなかった。同時に、この機会を逃したらもう、タカシと付き合うキッカケなんて永遠に
来ないんじゃないかと思うと、それもまた怖くて堪らなかった。
「じゃあ、俺も仮定の話で聞くけどさ。もし、音無さんにラブレターを出したのが俺だっ
たとしたら、それでもやっぱり断わった?」
『えっ?』
自分の考えに埋没していた敬子だったが、突然のタカシの質問に顔を上げて彼の顔を見
つめる。タカシは顔を背けたい欲求に駆られたが、今度ばかりはグッと我慢して敬子の顔
を正面から受け止め続ける。
「いや。俺もその……仮定の質問に答えたからさ。ちょっと聞いてみたくなったって言う
か……もし、答えたくなかったら、それでもいいけど……」
タカシにとって、これは賭けだった。彼女が自分をどう思っているのかを知るキッカケ
になると思ったし、もし反応が良ければ勇気を振り絞ってこの場で思いを伝える事も出来
るかもしれないと。しかし、もし答えを拒否されたり、真っ向から否定されるようであれ
ば、かなりのダメージはあるとはいえ、ストレートに告白して振られるよりはマシに思えたのだ。
『えっと……』
52 :
3/3:2013/11/30(土) 12:21:51.46 0
敬子は、答えを口ごもる。これは、チャンスなのだと自分に言い聞かせた。勇気の無い
私に、別府君は敢えて答えやすい状況を作ってくれているのだと。今ここでそれを拒否し
たら、二度と彼に気持ちを伝える機会はないだろうと。それでも怖くはあったけど、片想
いをしている全国の女子で、今の自分ほど有利な立場にいる子はそうそういないのではな
いかとすら思えた。敬子は、しっかりとその情景を想像して、口を開く。
『その……やっぱり……断わったとは、思います……』
「そっか……」
敬子の答えに、諦念に似た感情が広がると同時に、タカシは小さく呟いた。しかし、そ
の感情が広がりきる前に、敬子が慌てて言葉を継ぎ足して来る。
『ま、待って下さい!! その……断わるとは言っても、私がその……男の人とお付き合
いをする勇気が無いからというか、その準備がまだ出来て無いからで…… だっ……だか
らその……慣れるためって言うか……だから、時々二人でお茶したり、帰りにどこかに寄っ
たりとかだったら……それくらいなら、してもいいと思いますけど……』
勢いで一気にしゃべってから、敬子はうつむき顔を背ける。その照れた仕草に、タカシ
は胸が締め付けられるような感じを覚えた。
「そっか。お付き合いするってことは、恋人同士になるって事だもんな。友達同士からな
らオッケーって事で、いいのかな?」
彼女の意図を確認するタカシに、敬子は首を振った。
『友達同士って言うか……単なる知り合いより、ちょっと親しい程度なら、です。あ、当
たり前じゃないですか。だって、お互い人となりだって分かってないのに……つ、付き合
うなんて、出来る訳ありませんから……』
その言葉にはタカシは同意しかねた。何故なら、普段は大人しくて積極的に前に出て行
くタイプではないけど、自分の心には正直で正しいと思ったら頑なに主張し、話さえ合え
ば、楽しそうに自分の好みを語っては、途中でそれに気付いて照れる。それだけでも彼女
の人となりは随分見えた気になっていたからだ。しかしそれを言っても彼女は認めないだ
ろうけれど。
タカシは、心を決めた。ここまで敬子が話してくれて、行かないなんて男じゃないと。
「それじゃあ……音無さん。お願いします」
タカシは右手を出し、頭を下げた。
続く
次回でラストです
動物とじゃれあってる山田かわいい…かわいい…けど…おもしろくない
…ばか。私とも、じゃれあってよ
GJ
>『そっ……それじゃあっ……!!』
のあたりが最高でした
たったの15分で落ちるとは…
不覚…
VIPは10分くらいで落ちるからなぁ
>>53 うおおおおおおおお
続きかわ気になるうううううう
かわってなんだorz
山田のベッドでぬくぬく
64 :
1/4:2013/12/01(日) 23:28:52.25 0
・ツンデレと男に嘘のラブレターが届いたら 〜その7〜
『え……っ!?』
敬子がタカシの行動にビックリして声を上げる。それも見越した上で、タカシはさらに
言葉を重ねて行った。
「……ここまで音無さんに言わせておいて、こんな事言うのは卑怯かも知れないけど……
でも、さっきも言ったけど音無さんは結構好みのタイプだし、だから、ズルいとは思うけ
ど、友達同士の付き合いからって事で…… さっき、そのくらいならしてもいいって言っ
てたよね?」
頭を下げているから、敬子の顔は見えない。もしかしたら、こんなやり方で交際を申し
込んだから嫌われたかな、と不安に思いかけたところで、敬子の答えが返ってきた。
『……本当に……ズルいです』
胸が激しく高鳴るのを感じつつ、敬子はタカシの意見に同意して詰る。タカシがビクッ
と体を動かしたが、何も言わなかったので彼女は言葉を続けた。
『仮定の話だって振っておいて……私の答えを聞いてからこんな事言い出すなんて……』
ここでもう一度言葉を切ったが、やはりタカシは無言のまま、頭を下げて片手を出した
まま動かない。敬子は、自分が答えを出さなければならない事に気付いた。まるで、自分
の体が自分の物でないようにフワフワしていて、熱で溶けてしまいそうなほどに熱い。そ
れを必死で制御して、彼女は一歩前に踏み出した。
『今ここで断わったら……私が、嘘つきになるじゃないですか……』
言葉と同時に、彼女は差し出された手を、両手でギュッと握った。タカシが顔を上げる。
「ホントに……? マジで、いいの?」
タカシの問いに、敬子はコクッと頷く。握られたその手は熱くて、だけどもの凄く柔ら
かくて感触がいいように思えた。
『ほ……本当にその、お茶とかするだけですからね。休みの日にデートとかまで、期待し
ないで下さいよ。私達、別に恋人になったりとかそういう訳じゃないんですから。ただちょっ
と、クラスメートより少しだけ親しくなったってだけで……か、勘違いしちゃダメですからね!!』
65 :
2/4:2013/12/01(日) 23:29:45.34 0
恥ずかしげにうつむきながら念を押す敬子を、つい可愛らしいなと思ってタカシは微笑
んでしまった。
「分かってるよ。たださ。たまたま、二人とも見たい映画があったりとかしたら……その
時はどうする?」
タカシの問いに、敬子はビクッと大きく体を震わせた。タカシを見上げて、少し呆然と
した様子を見せたかと思うと、次の瞬間彼女は激しく顔を背けた。
『そっ……そんな事、実際にその時になってみないと分かりませんっ!! 今、そういう
質問をして言質を取ろうだなんて、やっぱり別府君は卑怯です!!』
「ゴメン。ちょっと焦り過ぎちゃったな。まあとりあえずは、放課後時々一緒にどっか行
くとかで…… 今日はこれから、大丈夫かな?」
いきなりのタカシの誘いに、敬子は驚いて聞き返す。
『きょ、今日早速……これから、ですか!?』
タカシはコクリと頷く。
「いや、その……出来ればさ。早いうちに、俺らを騙した奴に仕返しをしたいなって思っ
て。その作戦会議なんてやりたいなって思ったから。それとも、日を改めた方がいい?」
『そ、そういう事なら大丈夫ですっ!! 全く友子ってば……本当に、人の気も知らない
で勝手にお節介ばかり焼いて、ホント、迷惑なんですから……』
もっとも今回はおかげでタカシと付き合えることになった訳だが、それとこれとは別だ
と敬子は憤って思った。この結果は、タカシが上手に言質を引き出してくれたおかげであっ
て、下手をすれば大失敗に終わっていたかもと思うと、やっぱり許せない。
「それじゃ、あまり時間も無いし早速行こうよ。駅前じゃクラスの奴に見られるかもしれ
ないから、国道沿いのファミレスにしようか?」
タカシの提案に、敬子は戸惑いを覚えた。
『で、でも……学校からじゃ、ちょっと遠くないですか? 行けなくもないですけど、私
の足に合わせたら20分くらい掛かるかも知れませんよ?』
するとタカシは、この答えが分かっていたかのように頷く。
「俺、チャリだからさ。それなら10分も掛からず着くと思うけど……ダメかな?」
『わ、私は駅から歩きで来てますから、自転車は――』
66 :
3/4:2013/12/01(日) 23:30:20.58 0
途中まで言いかけて、敬子はタカシの言葉の意味に気付いた。ダメかな、というのが、
何を意味しているのかを。
『そ、それって……二人乗りで行こうって、そういう事ですか?』
確認のために聞くと、タカシはちょっと照れたような笑みを浮かべて頷いた。
「ああ。まあ……音無さんがもちろんいいって言うなら、だけど……」
さすがに敬子は少し迷った。友達同士のお付き合いからと思っていたのに、いきなり自
転車に二人乗りなんて、仲を進展させ過ぎではないかと。しかし、彼の背に体を預けて、
その温もりを感じる事を想像したら、断るという選択肢は敬子の頭から雲散霧消してしまった。
『……ほ、本当はその……あんまりしたくありませんけど、でも……仕方ないですよね。
誰かに見られる危険性を考えたら……そっちの方がリスクは低いですから……』
コクリと頷くと、タカシは嬉しそうに頷いた。
「よし。じゃあ決まりな。でさ。その……手、そろそろ離してくれるとありがたいんだけど……」
若干惜しいとは思いつつ、タカシがお願いすると、敬子は今気が付いたとばかりに驚い
て手を離した。
『へっ……? あ、ご、ごめんなさい!!』
汗とかで変に気持ち悪くしてしまわなかっただろうかと心配しつつ、敬子は頭を下げる。
しかしタカシはそれを笑って退けた。
「いや。いいよ。正直言えば、手を握って貰える事自体は嬉しいんだけどさ。このままじゃ
移動出来ないから」
素直な気持ちを伝えると、敬子は不機嫌そうな顔で睨み付けた。
『そ……そういう変な事言わないで下さいっ!! 気持ち悪いですっ!!』
ついうっかり暴言を口にすると、タカシもさすがに失敗したというような顔つきになっ
た。
「ご、ゴメン。つい…… やっぱ引くよな。そういうのって。今度から気を付けるよ」
そう言われると、敬子は逆に不安になった。もしかしたら、もう二度と手は握って貰え
なくなるかも知れない。その気持ちが、僅かに彼女を大胆にさせた。片手をタカシの方に
動かし、手の甲を彼の手にコツンと軽く当てる。
67 :
4/4:2013/12/01(日) 23:32:18.77 0
『で、でも……私の手に握られたいって言うのなら……手ぐらいなら、たまには貸してあ
げてもいいですけど……』
その言葉と仕草が可愛らしく思えて、タカシはいっそギュッと抱きしめたいくらいの衝
動に駆られた。しかしそこはグッと自制する。今、欲望に負けてしまえば、このまま彼女
を失ってしまいかねない。
「それじゃあ…… 自転車置き場まで、借りさせて貰います」
そう前置きをしてから、彼女の手の平に自分の手の平を合わせる。すると彼女の手が、
キュッと優しく包み込んでくれた。
『私には……よく分かりません。この程度の事で喜ぶなんて……別府君の考えている事っ
て、不思議です』
「そっかな? まあ、そのうち分かって貰えればなって思うけど、とりあえずはいいや」
苦笑するタカシに、敬子は小さく罪悪感を覚えた。
『(すみません…… 本当は多分、別府君より私の方がずっとずっと喜んでいるのに……こ
んな事を言ってしまって……)』
「それじゃ、行こうぜ。暗くならないうちにさ」
『はい。それじゃあ、言った手前仕方ありませんから、付き合ってあげます』
強がりを言いつつ、内心感じた事もない高揚感を抱きながら、敬子はタカシに手を引か
れて自転車置き場に向かったのだった。
その夜、話し込み過ぎてしまい初めて夜遅く帰宅した敬子は、母親にたっぷり怒られた
のだとか。
以上で終わりです
長々とお付き合いありがとうございました
青春だなぁ……!!GJ!!
うおおおgjです!
GJ
俺もこんな学生生活を送りたかった…
友ちゃんに看病されたい
友ちゃんを看病したい
友「あ、あたしに風邪をひかせてどうするつもりよ?」
お題
つ・鍋の味付けでケンカするツンデレと男
>>74 そりゃもう食事の世話から汗かいた身体を拭いてあげるところまで…
汗ばんだかなみんの全身ペロペロしたい!!
ペロペロ!ペロペロ!うっ……ふぅ
とか言う友ちゃんに無償の愛を教えたい
やんでれ
友ちゃんぺろぺろ!!!!!!!!!!!1
友ちゃん可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
友「な、何よこのスレ!!私はツンデレじゃないっての!!山田のことなんてなんとも思ってないし、山田の写真を隠れて撮ったりなんてしてないんだから!!」
まぁ実際アッパーツンデレさんだよな、普通に。
スレが友ちゃんの流れになっている隙にちなみんはいただいていこう
お前はそこで(性的な意味で)乾いてゆけ
約6年前にこのスレのちなみんに出会って俺の趣味は変わった
詳しく語れよ
俺も似たような奴の話は聞きたいな
6年前にツンデレへの興味が湧いてググったらこのスレとまとめサイトに辿り着いて読み漁ったらちなみんがドストライクだったんだ
それ以来ダウナージト目ロリ系キャラが大好物になったのよ
ちなにー
ツンデレさんぺろぺろしたいよぉ
友ちゃんでもいいからぺろぺろしたいよぉ
ドSちなみんに性的にいじめられたい
95 :
1/3:2013/12/06(金) 22:27:15.39 0
【たぬきちなみん】
「……おっすおらたぬき。……いっちょやってみっか。……ぽんぽこ」
極めて久しぶりに、俺の部屋に変なのがいる。
「なんだか久しぶりですね」ナデナデ
「……たぬきをなでるとは何事か」
「ダメですか」ナデナデ
「……ダメとは言ってない。……これだからタカシはダメなんだ」
「ややこしい。つまり……どういうことだってばよ?」ナデナデ
「……たぬきをなでることは法律で禁じられているが、ちなみをなでることは禁じられていないので、特別に許可する、ということ」
「俺の知ってる法律と違う」
「……んふ」
ちなみはよっこらしょっと言いながら俺のベッドにあぐらをかいた。
「若いんだからよっこらSHOTを撃つな」
「……たぬきだから仕方ない」
「便利な免罪符を手に入れたようだな」
「……ぽんぽこ」
ぽんぽこじゃねえ、と思いながらちなみの頭をなでる。可愛いので仕方がない。
「……ん。……さて、たぬきです」
「はぁ」
「……昔話によると、たぬきは大抵たぬき汁にされている」
「あー……まあ、そうかも。結構な割合で悪者ポジションにいますよね」
「……と、いうことは。……たぬきちなみんも汁物にされておいしくいただかれるの?」
「知らん。お前はおいしくいただかれたいのか」
96 :
2/3:2013/12/06(金) 22:27:51.20 0
「……やれやれ。隙あらば性的な話へ持って行こうとする。これだから童貞は困る」
「テメェが先に話を振ったんだろうがっ!」
「……たぬきなのでよくわからない」
シレーっと、コイツは……。
「言っとくが、別にたぬきは万能じゃないぞ」
「……ぽこー」
「あと、ぽんぽこは鳴き声じゃない」
「……平成狸合戦に騙された」ションボリ
「まあ、いいや。結局どうしたいんだ」
「……まあまあ。結論を急ぐな、若人よ」
「うるせえ同い年」
「……ここはひとつ、たぬきの腹鼓を聞いてはどうかぽんぽこ」
「だからぽんぽこは鳴き声じゃないと……あと、腹鼓と言うが、今日の着ぐるみは全身を覆ったものではなく、耳としっぽを付けただけの簡易包装のようだが、どうやって鼓を打つんだ?」
「……こう」
ちなみの奴が普通に服をまくり上げた。柔らかそうな可愛らしい腹が映る。
「……あの。もう少し恥じらいというか、そういうものはないんですかねェ……?」
「……?」
不思議そうな顔で小首を傾げられた。ないらしい。
「……じゃあ、ぽこー」
自称たぬきの鳴き声を奏でながら、ちなみは自身の腹を叩いた。ぺち。
「……むぅ。ぽんぽこ鳴らない」
二度、三度と打つが、ぺちぺちと鳴るばかり。そりゃそうだ。
「……鳴んない。……タカシ、やって?」
「俺がやっても鳴らないと思うが……」
97 :
3/3:2013/12/06(金) 22:28:22.57 0
まあ、やれと言われたからやるが。とはいえ、女性を打つなんてできないので、軽く触る程度に抑える。ふに。
「予想を遥かに通り越して柔らかいですね!」フニフニ
「……うう。叩けと言ったのに、タカシのやろう、私のお腹をすべすべふにふにと触りやがる。確実に欲情してる。このまま一気に犯されるに違いない。エロ同人みたいに」
「しねェよ! あと、エロ同人とか言うな」
「……たぬき相手だから、これも獣姦になるの?」
「コスプレは含まれません」
「……よかった。……はっ、しまった。……これで初体験が獣姦でないと安心したタカシは、鼻息荒くして改めて私に襲いかかってしまう」
「お前は襲われたいのか」
「……んんん。ぜんぜん」
やはり馬鹿にしてるだけかコンチクショウ。
「……じゃあ、ぽんぽこ鳴るまで頑張るので、手伝うように」
「無茶を言いやがる」
ちなみは俺をベッドに座らせると、その上に乗った。
「この態勢は?」
「……私とタカシが同時に腹鼓を打つことにより、共鳴してぽんぽこ鳴る可能性に掛けてみた。……この態勢は、同時打ちに適した態勢なので嫌々行っている。別にタカシの膝に乗りたいわけではないので、誤解すると奇病で謎液体をまき散らして死ぬので、誤解しないように」
「怖っ!? 何、謎の病原体を打たれるの!?」
「……ぐだぐだ言ってないで、手伝う」
とても怖いのでちなみの腹を打つ……のは嫌なので、すべすべする。なめらかすべらかで、非常に気持ちいい。
「うう……やはり欲情してるに違いない。おしりになんか固いの当たってるし」
「や、まだまだこんなもんじゃないですよ!?」
「ま、まだおっきくなるの!?」
混乱するのはよくないなあ、と思いながらはわはわしてるちなみの腹をすべすべしました。
なんだこれは。意味不明な勃起を禁じ得ない。
山田でも良いからぺろぺろしたいよぉ
ちなみんのお腹なでなでしたいよぉ……
GJ!!
そろそろまた長いの行きますか
最初、4レスから
102 :
1/4:2013/12/08(日) 23:18:55.41 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その1〜
『あ、先輩。またここの帳簿の仕訳間違ってるじゃないですか』
「え? マジで? どれどれ」
テーブルの向かい側に座って書類作成をしていた先輩が、立ち上がって私の方に回り込
んで来ようとする。それを私は慌てて止めた。
『だあっ!! 何でこっちに回り込んで来ようとするんですかっ!! 席に座ったままで
もちゃんと見せますからっ!!』
指摘した帳簿を反対に見せようとするも、先輩は構わずに私の傍に寄って来てしまった。
「この方がかなみちゃんも指摘しやすいだろ? で、どこが間違ってるって?」
『うううううっ…… 先輩が傍に寄って来るのイヤなんですけど…… 私の周囲の空気が
汚染されそうで』
「相変わらず酷い事言うよな。俺はこんなに可愛がってやってるっていうのにさ」
言葉と同時に、先輩の手が私の頭を押さえ、グリグリと撫で繰り回した。
『止めて下さいっ!! 頭が腐りますっ!!』
咄嗟に手で払いのけてから、私は反対の手で胸を押さえた。心臓がドクドクドクドクと
激しく鼓動している。
「いつもやってるんだから大丈夫だろ。毎回同じ事言われるけどさ。ちょっとでも髪が傷
んだりとかした事あったか?」
『物の例えですよっ!! それくらい不快だって事です。大体、女の子の頭を気安く撫で
回すとかどれだけ失礼な事か分かってるんですか先輩は』
恥ずかしさを隠そうと怒ったフリをして睨み付けると、先輩は困ったような笑顔を浮か
べ、両手の平を私の前にかざすと、抑えて抑えてと小さく前後に動かす。
「分かったよ。そんなに怒らなくたっていいじゃん。可愛い後輩と親睦を深めようとした
だけでさ」
『絶対先輩って私の事、子ども扱いしてますよね。私だって年頃の女の子なんですから、
ちゃんとそれらしく扱ってくれないと困ります』
103 :
2/4:2013/12/08(日) 23:19:26.57 0
私は俯いて自分の体格を確認してみる。低い身長。細い体に薄い胸。どう考えても色っ
ぽいなんて言えない。水着だってビキニなんて似合わないし、文句は言ったもののこれじゃ
あ子供扱いされて当然かも、と自虐的な気分に陥る。
「そんな事ないってば。ただ、かなみちゃんを見てるとどうしても可愛がってあげたくなっ
ちゃってさ。でも、それで気分を害するっていうなら、今度から自重するさ」
『当たり前ですっ!! 大体、生徒会への半期の会計報告提出が明日なのにずっとサボっ
てて、泣きつかれたから仕方なく手伝ってあげてるのにこんな扱いじゃあ割りに合いません』
「泣きついてはいないけどな。暇そうだったからお願いはしたけど」
『暇そうって、失礼な事言わないで下さいよっ!! ちゃんと私は文化祭の展示物制作の
為の下調べをしてただけで、暇でネット見てたわけじゃないんですから。そういう事言う
と、もうお手伝いしませんからね』
怒ったフリで先輩を詰ってみせるが、自分からお手伝いしましょうか?なんて可愛い事
が言い出せなかったので、部活動に係る事をやってるフリをしつつ、先輩から手伝ってく
れってお願いされる事を期待していただけに、先輩の言う事も間違いとは言い切れないのだ。
「分かった分かった。で、どこが間違ってたって?」
先輩が話題を元に戻したので、私もこれ以上文句を言えずに帳簿を指した。
『ほら。ここです。この仕訳は雑費じゃなくって――』
選択授業で簿記を取った経験を生かして、先輩にミスを指摘しようとしたその時、先輩
のスマートフォンが軽やかなメロディーを奏でた。
「悪い。ちょっと待っててくれ。メール確認するだけだからさ」
先輩は立ち上がると、私に背を向けてスマートフォンを操作し、メールの文面を確認す
る。すると、パッとこっちを向いたかと思うと、いきなり拝むように両手を合わせて頭を下げた。
「ゴメン、かなみちゃんっ!!」
104 :
3/4:2013/12/08(日) 23:19:57.57 0
『はい?』
いきなり何で謝られたのか分からなくて、私はキョトンとした。しかしすぐに先輩はそ
の理由を続ける。
「ちょっと急用でさ。行かなくちゃならない所があるんだ。あと少しだけ、お願い出来るかな?」
『はいいいいっ!?』
私は思わず素っ頓狂な叫び声を上げてから、先輩に食って掛かるように問い質した。
『ちょっと待って下さいっ!! 自分の仕事ほっぽり出して、どこ行くって言うんですかっ!!
大体あと少しだけ頼むって、何で私が先輩の放り出した後始末しなくちゃならないんです
かっ!! 私会計でも何でもないのにさっぱり意味が分かりませんっ!!』
「いや、頼むって言っても、やりかけの帳簿のチェックがあったじゃん。それだけやっと
いてくれればいいから。後は戻って来てから俺がやるから、かなみちゃんは帰っていいよ。
間違いがあれば付箋つけて指示出しておいてくれれば修正するからさ」
『だからって、いいってもんじゃありませんっ!! 一体どこ行くって言うんですかっ!!』
せっかく先輩と二人っきりで部室でお仕事なんて、ちょっと幸せなシチュエーションを
体験していただけに、私は不満気に追求する。しかし先輩は首を振ってそれをかわそうとする。
「いやその……ちょっとクラスの友達に呼び出されてさ。もしかしたら少し戻って来るの
が遅くなるかも知れないし、だから本当にかなみちゃんは帰っていいから。手伝ってくれ
てありがとう。じゃあもう行かなきゃ」
『あ、ちょっと待って下さい!! 先輩!! 先輩ってば!!』
私は必死で引き止めようと声を掛けたが、先輩は私を無視して部室を出て行ってしまっ
た。誰もいなくなり、がらんどうの部室で私は一人呟く。
『……嘘だ……』
グッと拳を握り締め、うつむきながら唇を噛む。そして、もう一度。私は呟いた。
『……先輩……私に、嘘を……ついた……』
105 :
4/4:2013/12/08(日) 23:20:46.35 0
実は、私は覗き見してしまったのだ。先輩のメールの文面を。といっても、文章まで正
確に読めた訳じゃないが、差出人が誰かは分かってしまった。平仮名でななみ、と書かれ
ていたのは間違いなく、長田菜々美先輩だ。私と、別府先輩と同じ部で、美人で清楚で、
同じ女子としても憧れてしまう存在である。そしてついでに言えば、別府先輩とは幼馴染なのだ。
『長田先輩…… 何でわざわざ別府先輩をメールで呼び出したりしたんだろう……?』
そこに私は、何となく不自然さを感じてしまう。二人が小学校時代からずっと一緒だと
いうのは知っていた。恋人同士ではないと言いつつも、疑われるくらい仲がいい事も。で
も、だからこそいちいち呼び出したりしないで、普通に部室で会えばいいのだ。
『誰かに……見られたくない事をする、とか……?』
私の心が不安で澱んだ。もし、長田先輩が別府先輩と幼馴染としての線を越えてしまう
ような事があれば、私じゃ到底太刀打ちできない。私は深く考えるよりも早く、別府先輩
を追って教室を飛び出して行った。
続く
ちなみにネタはお題作成機より「後輩・公園・スカート」です。
おぉ、乙乙
ツンデレと幼なじみが別々って結構珍しいよな
ん、友ちゃんのおっぱいってこんな小さかったっけ…
あ、友ちゃんだと思ったらちなみちゃんだっt
お巡りさんこいつです。
109 :
ほんわか名無しさん:2013/12/10(火) 19:53:29.24 O
透明ツンデレか……
とーめーにんげんちなみんです…すけすけー…
とーめー…なので…こっそり…タカシの衛星掃射砲を…むふふ…
スケスケというからにはお召し物も透けてるんですよねグヘヘ……
PCをいじくりながらコーヒーを飲む。不意に誰かの気配を感じた。――奴かっ!
『フフフ……気づかれてしまいましたか……。これぞ、透明ちなみんです……。すけすけ〜』
「それだとセクシー衣装っぽいんですけど」
『うわ……変態的発想……だ。きっと君はいつも、脳内で私にそう言う服を着せて楽しんでいる……セクハラ』
俺以外誰も居ないはずの部屋から、いつものアホガールの罵声が聞こえる。
透明ちなみんとか言っていたが……。
「透明って、冗談だろ? どっかそこら辺にスピーカーでも仕掛けたか?」
『む……。信じていない……』
当たり前だ。本当にそんな事ができたらノーベル賞ものだろうが。そう思いながら、俺は自室を調べまわってみる。だが……。
「それらしいものが見当たらない……」
『当然……。私はここにいる……。その証拠に、ほら……』
「ひょええぃっ!?」
突然首筋に息を吹きかけられたような感触を覚え、変な声とともに飛び上がってしまう俺。
「ななな!? ど、どこだよ!? おい、なんのトリックだ!?」
想像の範囲を超えた事態に、俺は半ばパニックになりキョロキョロと首を振る。だが、もちろん周りには誰もいない。いないようにしか見えない……!
『ぷ……。みっともない……』
「うるせー!! 」
『クスクス……。ほれ、ほれ……』
「のわっ! ちょっ! やめっ! おおぃっ! ちょっと洒落にならんぞ!!」
どうやら調子に乗ったちなみさんが、脇腹やら耳やらをつついてくる。
「くっ! おま……」
とここで、ふと思いついた事があった。
「ま、マジで透明ってことは……お前今全裸か?」
『…………っ!?』
いたずらが止まると同時に、息を呑むような声が聞こえた。ほほう……。
「なるほどなるほど。じゃあちょっと想像しちゃおっかなぁ〜? こんな感じか? それともこんなかな〜?」
『あ、う……! や、やめろ……! ばか、変な想像するな……っ!!』
何やら恥ずかしそうな声が辺りからするが、もちろんやめてやらないのであった。
『ばか……! やらしい顔するな……! ばかぁ……っ!!』
数分後、効果が切れて丸見えになったエピソードは省略されました。すべてを読むにはここをクラッシュして下さい。
いつもいいとこで止めやがってこの寸止め野郎が!!
早くちなみんとの濡れ場を書くんだ!!
116 :
1/4:2013/12/11(水) 01:58:43.21 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その2〜
『ハア……ハアッ……ハア……』
一度別府先輩に追いついた後も、何故か先輩はあちこち訳の分からない道を辿り、その
度に私はまかれそうになっては必死で先輩を見つけるという事を何度も繰り返す羽目になっ
てしまっていた。
『何で別府先輩ってば、わざわざ裏道とか民家の脇とか…… まさか私、気付かれてる訳
じゃないよね……?』
愚痴を小さくこぼしながら、私は先輩を見張りつつ考えた。先輩はまた立ち止まると、
スマートフォンを弄っていたが、やがてそれをズボンのポケットにしまうと、急ぎ足で歩き出す。
『というか……何だろう? 何か、先輩も何かの指示に従ってるような……』
疑問に思いつつ先輩を追い掛けていると、やがてそこそこ広い公園の入口にたどり着い
た。そこで先輩は一度立ち止まり、周囲を気にしてから中に入る。
『やっと……目的地かぁ……』
ちょっとした疲労感を覚えたが、これからが本番だ。私は先輩の姿を見失わないよう、
急いでその後を追って公園の中に足を踏み入れた。
『こんな所で……長田先輩と会うのかな? やっぱり……二人だけで内緒の話を……でも、
それだったら家でだって……』
何となく、嫌な予感が胸をざわつかせる。自分の思いに囚われかけて、私はそれをグッ
と押し止めた。
『ダメダメ。まだ……何も決まった訳じゃないんだし。それより、後追わないと』
気が付けば別府先輩の姿は見当たらない。だけどこの公園の中にいるのは間違いないの
だから、遊歩道を歩いていけば見つかるはずなので私は焦らなかった。小走りに、公園の
中を窺いながら外周を回る遊歩道を進んで行くと、やがて別府先輩ともう一人、うちの学
校の制服を着た女子の姿が見えた。
『やっぱり……長田先輩……』
胸が早鐘のように打ち始めて痛みすら覚えていたが、私は足を止めることなく二人に近付いた。
117 :
2/4:2013/12/11(水) 01:59:14.51 0
『どこか、隠れられるところ見つけないと……』
これ以上近付くと、二人に見つかる危険があった。それじゃあ二人が何の話をしようと
していたのかが分からなくなってしまう。ゆっくりと、二人の様子を窺いながら周囲を見
回していると、ちょうどおあつらえ向きに、二人が話している近くに、つつじの植え込み
があった。あそこに潜り込めば、見られることなく話が聞けるに違いない。
『ううう……何か覗きみたいで気が咎めるけど……』
しかし、迷いは無かった。私は植え込みに近付くと、潜り込める隙間を探した。すると、
ちょうど、私程度の大きさなら入り込めそうな隙間が見つかる。
『ここなら……位置もちょうどいいし』
私は四つん這いの姿勢から更に頭を低くして植え込みの中に突っ込んで行った。奥行き
はそんなに深くなく、すぐに反対側に出る。するともう、ほんの4、5メートル先に二人の
姿が見える。
「じゃあ、もうそろそろ本題に入らせてもらうけど……いいよな?」
『ええ。貴方をからかって心の準備も出来たし、いつでもいいわよ』
見た感じは二人の様子はいつも通りだ。長田先輩に弄ばれて怒る別府先輩と、それを楽
しむ長田先輩。だけどその様子には、幼馴染だからこそ醸し出せる馴れ合いのような雰囲
気がある。私はいつも、羨ましくて、そしてちょぴっと妬ましくも思っていたのだ。
「フゥ…… それじゃあ、行くぞ。下手くそだからって笑うなよ。一応、真面目にやるつ
もりだからな」
『大丈夫よ。こっちも一応、それなりに本気なんだから』
一体何をやるつもりなんだろう? まるで、勝負でもするような話の雰囲気だ。しかし、
向かい合った二人からは、さっきまでの幼馴染的な雰囲気が無くなっていた。また、嫌な
予感が脳裏を占める。
――やっぱり……もしかして……別府先輩……長田先輩に……
胸が苦しくて、私は心臓の辺りに手を当てると堪らず制服ごとグッと握り締めた。長田
先輩は美人で、頭も良くて、ちょっと性格は意地悪だけどとっても優しくて、私なんか比
較するだけでおこがましいと思うほど、女子として勝てる所が無い。そんな人と幼馴染で
ずっといて、今まで付き合って来なかったのが不思議なくらいなのだ。
「あのさ…… 俺……実はその……最近になって気付いたんだけど……」
118 :
3/4:2013/12/11(水) 01:59:45.87 0
――ダメ!! それ以上、言わないで……下さいっ!!
心の叫びは届くはずも無く、別府先輩は私を絶望に落とす言葉を口にした。
「実は……奈々美の事、好きだったみたいなんだ」
覚悟はしていたけれど、それでも頭をハンマーで横から殴られたような衝撃を覚えた。
唇を噛み、体を固く縮み込ませて、それでも私はまだ耐えていた。
――まだ……まだ……長田先輩の答えを聞くまでは……
確定して、二人が仲良く去っていくまで見届けて、それから思いっきり泣こう。ここな
ら誰にも見られないから。そんな気持ちで、必死で耳をそばだてる。
「だからさ。あの……今日からは、その……幼馴染としてじゃなくて……恋人として、傍
にいてくれないか?」
願わくば、私に向けて聞きたかった言葉は、今、違う人に向けられている。長田先輩も、
きっと分かっているのだろう。本気でって言っていたから、きっといつものようにからか
う事無く、受け入れるのだろう。その瞬間を、私は覚悟した。
『お断りだわ』
「は……?」
長田先輩の言葉が信じられなかった。私がこんなに好きで好きでしょうがない別府先輩
からの告白を、まるで街頭セールスを振り払うかのように、いともあっさりと、拒絶した。
その瞬間、驚きと憤りで、私は立ち上がって叫んでしまった。
『何でですかっ!!』
ガサアッ!!という大きな音に、二人が振り返る。私は勢いのまま、長田先輩を睨み付
けるように見つめながら、興奮して思いをそのまま口走ってしまう。
『何で……そんなあっさり……幼馴染なのに……別府先輩の事、一番良く知ってる人なの
に……何でそんな冷たくあしらえるんですかっ!!』
叫びの後には、沈黙が支配した。それが少し続いた後、呆然としたように、別府先輩が
私に問い掛けてくる。
「あのさ……椎水さん。何で……ここに……?」
『え……?』
その瞬間、私は自分が間違いを犯したことに気付いた。別府先輩の目の前で、覗きをし
ていた姿を堂々と晒してしまったのだ。その瞬間、私は羞恥心に塗れて真っ赤になってしまった。
119 :
4/4:2013/12/11(水) 02:00:42.42 0
『えと、その……あの……これはその……ちちち……違うんですっ!! じゃなくて、そ
の……し、失礼しましたっ!!』
いても立ってもいられなくなって、逃げ出そうとしたその瞬間だった。植え込みから飛
び出そうとした瞬間、スカートが何かに引っ掛かり、引っ張られるようにしてまくれ上がった。
『え……あ……きゃ、きゃああああああっ!!』
私は絶叫してスカートを抑えた。
続く+(0゚・∀・) +
善哉
友ちゃんのぱんつはむはむ
友ちゃんを守ってあげたい。友ちゃんを守ってケガしたら、それを友ちゃんに手当てしてもらいたい。傷をぺろぺろしてもらいたい。
『タカシー!! ちょっと教えろー!!』ドアバーン!!
「なんだよ」
『少子化ってなに!?』
「はぁ……あのな、梓。例えばここに夫婦が2組居るとするよな?」
『ふむふむ』
「で、それぞれに子どもが一人ずつ出来たとしよう。夫婦Aには男の子、夫婦Bには女の子だ。
やがて二人は成長して出会い、素敵な結婚をする。そしたらまた子どもが生まれる」
『そんでそんで?』
「それで終りだ。いいか。最初は2組の夫婦がいた。つまり4人の人間が居たんだ。
だが、子どもを一人ずつしか産まないと次の世代では1組の夫婦しかできない。
孫世代では結婚すら出来ない。兄弟姉妹は結婚できないのは知ってるだろ?」
『馬鹿にすんなよ! バカシの癖に!!』
「俺は高校生にもなって『少子化ってなに!?』とか言ってる奴の方が馬鹿だと思うが……。
とにかく、夫婦は最低でも2人は子どもを作らないと、将来の人口は先細りに減っていく。これが少子化だ」
『そっか、ボクたちも子どもは2人つくんないとダメなのかー』
「まぁ、色々と各家庭に個別の事情があったり、社会情勢なんかも絡むから、一人っ子が絶対にダメってわけじゃないんだがな」
『ふむふむ。(ピロリーン!)あ、メールだ……ごめん、お母さんから呼び出された。まったねー』
「そうか、気をつけてな』
(う、うわああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! なに!? つい『ボクたち』とか言っちゃったけど大丈夫だよね!?
バレて無いよね! ボクたちがまるで将来的に子作りするような、そんな言い草だったけどタカシニブちんだし、セーフだよね!
っていうかセーフじゃなかったら明日から一体どんな顔して、うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)
(……聞き間違いじゃないよな? 『ボクたち』って言ったよな、今……あー、びっくりした……)
ボクッ娘に種付け編はまだですか?
GJ
萌える(確信)
ボクッ娘に子作りの具体的なやり方について教えてあげたい
〜ある日の教室〜
[もう!また遅刻してきて、いい加減にしてください!]
「いやー最近は深夜アニメが面白くてさー。それで、つい。」
[つい、じゃないです。どんな生活リズムなんですか。学生の本分は勉強ですよ。]
「寝坊して遅刻を繰り返しちゃうけど深夜アニメが面白いから仕方ないよね。」
[そろそろ本気で怒りますよ、]
「すいませんでした」ドゲザ
『うらやましなぁ委員長、別府君とお話しできて。委員長怒ってるけど本気で嫌な訳じゃなさそうだし。』
『自分に世話を焼いてくれる女性に魅力を感じる男の人も多いらしいし。』
『よし、明日から世話焼きキャラで頑張ってみよう。』
〜翌日の教室〜
「ねみー、昨日委員長に怒られた手前ちゃんと来たけど眠い。深夜アニメ多すぎるだろ、いっそ規制しろ。」
『あら、別府君。』
「あー、おはよう水上さん。」
『別府君、あなた呪われているわよ。』
「……」
『……』
「ねみー、昨日委員長に怒られた手前ちゃんと『聞きなさい』
『最近、体が怠かったり、よく眠れないでしょう?呪われているからよ。』
「(帰りたい、それが無理なら眠りたい。深く深く眠りたい)」
『聞いているの?このままだとあなた死ぬわよ。』
「一応聞くけどさ、なんで俺呪われてるの?なんか恨みでも買った?」
『いえ、現世のあなたに罪はないわ。前世のあなたが犯した罪に対し神が天罰を下しているのよ。』
「ついていけねぇ。天罰下るレベルなのに実害倦怠感だけってどんなセコい神だよ」(超小声)
『早く解呪しないと死ぬわよ。前世のあなたは大罪人だから』
「あー、前世の俺はどんな人物だったんだ。盗賊の頭領でもやっていたのか。」
『いえ、前世のあなたは地方領主よ、何人もの女を妻にしていた男よ。』
「近くの村から誘拐してきて無理矢理妻にした罪か」
『それも違うわ。あなたの罪は、妻にした女性が全員最低Gカップの超巨乳好きだった。という罪よ。』
「意味わかんねーよ!前世の俺も、それが大罪になる理由も、二つの意味で意味わかんねーよ!」
『神の怒りに触れたのよ。こればかりは仕方がないわ、神は気まぐれだもの。』
「どんな神だよ!心狭すぎるだろ、何て名前だよそいつ!」
『…………真頭詞千霊都留蔕比売(マヅシチチツルペタヒメ)よ』
「……………」
『…………何か言いなさいよ。私は呪いを解く手伝いをしようとしているのよ。感謝の言葉があってもいいと思うのだけれど。』
「(まぁいいか、長引かせると更に面倒くさくなりそうだし)」
「ありがとう、俺一人だと絶対に気付けなかったよ。水上さんのおかげだよ。どうすれば呪いは解けるのかな?」(若干カタコト)
『ふふ、そうよね聞きたいわよね解呪の方法。真頭詞千霊都留蔕比売を喜ばせるには人に優しくすることよ。』
「そんなんでいいのか?えらく簡単だな。」
『真頭詞千霊都留蔕比売は基本的には優しい女神よ。むしろ怒らせるほうが難しいわ。』
「前世の俺ぇ…」
『特に胸のあたりが慎ましやかな、無駄な脂肪がついていない控えめな女性に優しくすると喜ぶらしいわ。』
「真頭詞千霊都留蔕比売ぇ…(あ、いつのまにか覚えてた)」
『あと、深夜に胸を揺らしまくる家電量販店の店員が出てくるようなアニメも見ないほうがいいわね。天罰が下るわよ。』
「ピンポイントすぎるだろ、最近の神様!」
『わかったら、早く実行に移しなさい。こうしている間も呪いは継続しているのだから。』
「へいへい、わーりやしたよ。優しくするよ、いろんな人に。んでもって深夜アニメも録画するようにするよ。」
『ええ、わかればいいのよ、わかれば。録画ではなく切ったほうがより効果的だということも忘れないで。』
〜その日の夜、水上家自室〜
『えへへぇ〜今日はいっぱい別府君とお話しできたな〜』
『別府君もアニメは録画するって言ってたから寝坊することもないだろうし』
『明日からは今日の事でまたお話しできるし、世話焼きキャラは大正解だ〜』
『体の調子が良くなったのは水上さんのおかげだよ。』キリッ(声マネ)
『なんて言われたら嬉しいな〜うぇへへへへ〜』
〜その日の夜、別府家自室〜
「まさか水上さんが電波だとは思わなかった。本格的になる前にどうにかしないとな。」
「委員長に相談してみるか。まぁ今日はもう寝よう。」
「(別に水上さんに言われたことが引っかかってるとかじゃないんだからね、)」
〜終われ〜
一途なあまりキャラが崩壊するツンデレさんかわいい
山田をショタ化しようと画策する友ちゃんかわいい
135 :
1/2:2013/12/15(日) 22:15:09.84 0
【ツンデレから幼女分を補給したら】
「幼女成分が足りなくなったので補給しに来ました」ナデナデ
「それでなんで先生のところへ来るですかっ!? 先生は幼女じゃないです、幼女じゃないです! 立派な大人です! せくしーです! うっふーん!」
廊下をトテトテ歩いてた小学生(大谷先生)を捕獲してなでたら、怒られた。……怒られた、か?
「それはともかく、二回言うな。カナ坊か」
「か、金棒?」
「そう、金棒」
イントネーションから何か勘違いしていることを感じ取ったが、そのまま推し進める。
「せ、先生は幼女だけじゃなく、金棒と思われているのですか? もはや無機物なのですか? ……あ、ロボットって思われてるのかな。が、がしゃーんがしゃーん?」
その結果、先生がオーパーツ化してしまった。奇怪なロボットダンスもどきを見せつけられる身になれ。
「かくし芸はともかく、幼女分が足りないのでもう少しなでさせろ」ナデナデ
「かくし芸のつもりなんてないですっ! というかですね、別府くんっ! 先生をなでても幼女分は補充されませんよ! そもそも幼女分ってなんですか!?」
「こういうぷにぷにした幼女を触ると補給される成分」ナデナデ
「また幼女と!? 先生はものすっごく大人だと何度言ったら! ええ、先生は大人なのでぷにぷにとかいう単語なんてちっとも似合わないのです! 肌だってガサガサしてるのです、お肌の曲がり角なのですっ!」
「ほう、では触って確かめてみよう」
「ふぇ?」
先生のほっぺを両手で包み込み、ゆっくりとさすったり押し潰したりする。……全身全霊でぷっにぷにだ。潤いも尋常ではない。ぷりっぷりでつやつやだ。
「んぅ、んー、はびゅ。べ、別府くん、先生のほっぺをふにふにしちゃダメです、ダメなのですよ?」
「……先生、太鼓判を押そう。先生は幼女だ!」
「がーん!? 先生は大人です、先生は大人です!」
「だから、二回言うなっての。カナ坊か」
「また金棒ですかっ!? 幼女なのかロボットなのかはっきりしてほしいですっ!」
「その場合どちらでも先生の望む大人には成り得ないのだが」
136 :
2/2:2013/12/15(日) 22:15:43.73 0
「う? ……あーっ、本当ですっ! どしてそういう意地悪をするですかっ!?」
「今回は俺のせいじゃないだろ……」
先生の頭をなでたりほっぺをふにふにできたので、幼女分の補給が完了した。大満足。
「よし。もう行っていいぞ」
「なんか別府くんが格上みたいなのが非常に不愉快なので行きませんっ! 先生はここにずーっといます!」
「どうしてもと言うなら止めはしないが、職務を放棄するのは大人としてどうかと思うぞ」
「い、意気込みの話ですもん。実際は授業しますもん。先生は大人ですからっ!」ドヤァ
「うるせぇ」グリグリ
「あううーっ!? つ、つむじを指でぐりぐりしてますねっ!? 見えないから分からないと思うでしょうが、先生は大人なので完全に理解していますっ!」
「はいはい」ポムポム
「うぐぐ……今度は頭をぽんぽんと、明らかに子供扱いです……! 次の授業はラッキーにも別府くんの教室です、ものすごく当ててやります!」
「先生が俺をえこひいきする」
「逆です、いじめてるんですっ!」
「なんだ。よく先生の授業では当てられるし、俺を率先して教えてくれてるんだと思ってた」
「うぐぐ……なんというポジティブシンキングですか。ちょっとはくじけてくだたいっ!」
「お、くだたいが出た。やーい幼女」ナデナデ
「むがーっ!」キーンコーンカーンコーン
「お、チャイム。よし先生、教室戻ろうか」ナデナデ
「最後までなでなでするとは、最早あっぱれです! 通知表を楽しみにしてくださいっ!」
「『今学期はいっぱいなでてくれて嬉しかったです。次学期もいっぱいなでなでしてくただいっ』と書かれているのだな?」
「そんなの書きませんもん! 別府くんのばか!」ポカポカ
「わはは。先生は俺相手でも面倒臭がらずに全力で相手してくれるので、非常に楽しいですね」ナデナデ
「こっちは必死なのに!? 別府くんのばか、ばーか!」ポカポカ
涙目でポカスカしてくる担任教師を連れて教室に戻る俺だった。
何だこの幼女密度は
久しぶりの幼女!もとい大谷先生もとい幼女!
相変わらず可愛すぎて困るZE
GJ!
貴重な幼女成分をありがとう
142 :
1/3:2013/12/16(月) 18:00:51.08 0
「あら、私が王様ね」
友子は先端が赤く塗られた割り箸を見せびらかした。
大学生の嗜み、王様ゲームです。
俺、山田、勝美、友子のいつものメンバーが忘年会と称して飲み会をしている内に、その場のノリで始まった他愛のない遊びだ。
ちなみに、勝美の猛烈な主張によりエロいの禁止令が出ている。どうも俺の日頃の行いが不安らしいが、俺だってこの場でそんな気は
ないですよ。舌打ちをしたあなた、そんなのAVだけですからね。
ただ人数が少ないってことは被弾率も上がるわけで、
「そんじゃーね……2番が1番を褒めること!」
ほら来たよ。俺2番。
1番は……。
「お、あたしじゃねぇか」
勝美さんでした。
「ふふん。さぁ、あたしを褒めろ。褒めちぎりやがれ!」
酒も入っているせいかノリノリで仁王立ちして俺を見下ろす勝美。褒める、ねぇ。
そうだな、まずは……。
「乳が」
「胸以外でな」
出鼻をくじかれた。
「なぜわかった」
「常日頃からセクハラ三昧だろうがお前。もっと別のことにしろ」
サンタさん、僕に信用を下さい。
しかし、褒めるか。改めて当人の目の前でとなるとなかなかに恥ずかしいな。友子の奴、なかなか罰ゲームのツボを抑えてやがる
。
勝美は確かに褒めるところが沢山ある。胸もそうだが、顔立ちも整っていて表情豊かだ。少々短気で大雑把なところはあるが、そ
の分動作はきびきびとしていて見ていてかっこ良い。弟が3人いるのが影響しているのか面倒見も良いし気も利く。そして無類の猫
好きでもある。今も、山田が王様になった際の『猫耳カチューシャをゲーム終了までつけておく』を実行中。勝美に猫耳とか心の友
よ。解ってる。そんなものを携帯していた件で女性陣から大層ひかれていたが、俺だけはお前の味方だからな。
「ほら、なにモタモタしてんだよ。早く褒めれ。勝美様の褒めるとこ沢山あんだろー、んー? ないなんて言った日にはどうなるか
解ってるよなぁ?」
勝美が指をポキポキ鳴らしつつ急かしてくるので、俺はシンプルに告げた。
「かわいい」
「ふにゃっ!?」
瞬間、勝美はフリーズした。
「かわいい」
二回言うと顔が驚きとともに見る見る紅潮し、肩がプルプルと震えだす。
「あ……うぅ……え……」
何か言おうと口をパクパクさせているが、意味のある言葉は出てこなかった。なので、続けることにする。
「俺のセクハラに拳で応える姿がかわいい。猫耳つけてる姿がかわいい。弟のことをけなしながらも笑顔で話すのが家族思いでかわ
いい。猫を撫でるときは赤ちゃん言葉なのがかわいい。携帯のストラップが意外とかわいいのがかわいい。」
「いや、待て、ちょっと待て」
「ゲーセンの縫いぐるみゲットしたくて悔しがりつつも結構な金額ぶっこむのかわいい。コーヒー派でも紅茶派でもなくてココア派
なのかわいい。でも猫舌だからココアめっちゃふーふーしてるのかわいい。寒がりでもっこもこに着膨れしてるのかわいい」
「待てっつってんだろ、おい!」
「夏にプールに行ったときの水着姿かわいい。祭りにいって金魚すくいで大漁だったときのドヤ顔かわいい。バレンタインに女の後
輩からチョコもらって戸惑ってるのもかわいい」
「いや、待って……ほんと、お願いだから……」
144 :
3/4:2013/12/16(月) 18:03:55.82 0
「手作り弁当を食べた俺のリアクションを伺っているのがかわいい。それで『美味い』と褒めると本当はめっちゃ嬉しいくせにぶっきらぼう
に見せかけようとして、でも口元がちょっとにやけてるのがかわいい」
「手作り弁当!? 別府君、そこちょっと詳しく」
「僕も初耳だお。いつの間にそんな仲に……」
「ち、違う! 違うぞ、誤解すんなよ! お前らが想像しているようなんじゃねぇから」
「あたふたしてる勝美かわいい」
「てめぇのせいだろうが!!!」
ついに襟を掴まれ、真っ赤な猫耳にがっくんがっくん揺さぶられる。
「なんなんだてめぇ! なっ、なんなの、ほんと? なぁ、なぁなぁなぁなぁってばよ!!」
視界いっぱいに広がった顔は涙目で怒っているような風だが、眉はハの字で口元は緩み気味であり、非常に複雑な感情を伺わせる。
怒りながら泣きながら困りながらにやけてる。
まぁ、俺はゲームの趣旨に従っただけだし、褒めろと煽ったのは勝美なわけだからある意味自分でまいた種と言える。
ただ、『カッコいい』や『凛々しい』といった言葉ならともかく、『かわいい』は予想外だったのだろう。男勝りでガサツで普段はジーパ
ンにスタジャンの自分が『かわいい』などと言われるなんて、思ってもいなかったに違いない。
それを踏まえて俺は言った。
「『かわいい』と言われ慣れてない勝美はかわいい」
「うぐっ、ぐぅ……でりゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あだっ!?」
一閃、俺の頭にチョップかました勝美は、怒りと混乱に任せて俺を突き飛ばすと追い打ちとばかりにどなり散らす。が、このときの彼女は最
早正常ではなかったに違いない。
145 :
4/4:2013/12/16(月) 18:05:38.90 0
「バカやろー! このっ、おまえなんか、もう弁当『あーん』してやんねぇし、あと一緒にお……うっ!」
慌てて口に手を当てたが、それで放たれた爆弾発言がなくなるはずもない。ぽかんとする友子・山田ペアの視線を受けると、
「いや、待て誤解だ……違う、そうじゃない! 違うんだって、な? タカシもなんか言えよ、おい!!」
と目を白黒させて慌てふためいた。滝のような汗をかいて、無意味にパタパタと手を動かす。
そんな彼女にかける言葉はこれしかない。
「「「かわいい」」」
全員で最終決議を下すと、
「う、うわああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
と奇声をあげて猫耳をつけたまま風呂場に逃げ込んだ。
「1時間立てこもってたけど、占拠されると困るトイレを選ばない咄嗟の気遣いがかわいい」
「うるせえよっ!! ドアホ!!!」
終
キルラキルをチラ見して思ったんだ。時代は勝気だって。
あと改行おかしくてすまんかった。
「かわいい」
これはかわいい
すごくかわいい
「一緒にお」は一緒にお風呂ですか?
その辺の内容を詳しく!
151 :
1/5:2013/12/18(水) 00:22:34.27 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その3〜
『いやっ!! 見ないで……見ないで下さい先輩っ!!』
混乱して状況も把握出来ず、首を振りたくり、スカートの後ろを必死で押さえながら外
れないかと引っ張っていると、傍で優しい声が聞こえた。
『落ち着いて、かなみちゃん。スカートの裾が枝に引っ掛かっちゃってるの。今外してあ
げるから、大人しくしてて。あと、タカシはこっち向いちゃダメよ。スケベなんだから』
「分かってるよ。だからこうして背中向けてるだろ」
長田先輩が私のスカートが引っ掛かってる所を指で確かめ、僅かにほつれていた糸が枝
に絡まっているのを見つけると、いともあっさりと外してしまう。
『ハァ……』
私はその場に力なくしゃがみ込んでしまう。すると長田先輩が、ポンと優しく肩を叩い
てくれた。
『もう大丈夫よ。で、私が何だって?』
そう問われた瞬間、私は自分の立場を思い出した。別府先輩が告白しているシーンを覗
き見していて、先輩がいともあっさりと振られたことに憤ってついうっかり立ち上がって
姿を晒してしまったのだと。瞬時に私は立ち上がった。
『いえその……何でもないですっ!! ほほほ……本当に、邪魔して申し訳ありませんで
した。失礼しまっ――!?』
身を翻して逃げようとする前に、私の手首が意外と強い力で握られた。驚いて長田先輩
の顔を見ると、握る手の力とは裏腹に、優しい笑顔を私に向けている。
『せっかく来たのにそんな、慌てて逃げ帰らなくたっていいじゃない。誤解もあるみたい
だし、少しゆっくり話しましょうよ』
『ひっ……!?』
私は小さく悲鳴を上げた。口調は穏やかだが、有無を言わさぬ強い言葉に、初めて恐怖
を感じてしまう。
152 :
2/5:2013/12/18(水) 00:23:05.21 0
「おい。奈々美。かなみちゃん、怯えてんじゃねーか。もう少し柔らかく言ってやれよ」
『えー? 私、脅してるつもりなんて全然ないわよ。ただ、ここで帰られると少し困っちゃ
うから、ちゃんと事情を説明したいって思ってるだけなのに』
二人の会話は、つい今しがた告白して決裂した関係のようにはまるで思えなかった。幼
馴染としての、平常運転の関係のように見える。
『じ……事情とか誤解とか……意味が分かりませんっ!! それ以上に、何で別府先輩は
そんな風に平然と長田先輩と話が出来るんですかっ!! い、今振られたばっかりなのに……』
すると別府先輩は、ちょっと決まり悪そうな顔で頭を掻いた。
「振られたって言うか……まあある意味、コイツにはとっくの昔に振られてるようなもん
だからな。だから別に今更断わられたからって何のダメージも無いってか……何も変わら
ないからな」
『あら? 失礼な事言わないでよ。私は一度もタカシを振った事なんて無いわ。むしろそっ
ちが勝手に私を彼女候補から外してるんじゃない。私はいつだって、タカシからの告白を
待ってるっていうのに』
「冗談言うな。一度だって俺を彼氏候補と見てないくせに。体よく遊べる玩具程度にしか
思ってないだろ」
『そんな事無いわ。タカシの事は幼馴染として大切に思ってるわよ。それとからかいやす
い対象であるっていうのは、全く矛盾していないわ』
「大切に思ってるなら、少しは俺のプライバシーとか人権とか尊重しろ。人の触れられた
くない所に散々突っ込んでおいて、よくそんな事が言えたもんだな」
『私だからいいのよ。これが好きな人とかにいきなり見られてドン引きされたら、それこ
そ自殺ものじゃない。むしろ優しさだと思って欲しいわ』
『あああ……あの……』
二人の口喧嘩にどう割り込んでいいものか分からず、私はとりあえず、恐る恐る声掛け
してみた。すると長田先輩が私の方を向き、微笑みかけてくれる。
153 :
3/5:2013/12/18(水) 00:23:37.98 0
『ゴメンなさい。タカシがあまりにも冷たい態度を取るから、ついかなみちゃんの方をほっ
たらかしちゃって。そうよね。こっちの方が重要なのに。で、何?』
何で私の方が重要なのかさっぱり分からなかったが、とりあえずそれもひっくるめて質
問してみることにした。
『……さっきから、先輩方の会話がさっぱり意味不明です。あの……別府先輩が、長田先
輩に告白して、あっさりと断わられたシーンを、私は確かに見たはずなんです。なのに、
二人とも何か完全にそんな事なかったかのように会話されてますし…… 全く状況が繋が
りません』
すると、何故か長田先輩はクスリと楽しそうに笑うと、制服のポケットから一通の封筒
を取り出した。
『ああ。それは、これよ』
プライベートの手紙だろうに、長田先輩はわざわざ中の手紙を広げて私に見せてくれた。
『……えーと……伝えたい事があるので、金曜日の放課後に時間を貰えませんか? もし
都合が付けられるなら、特別棟4階の視聴覚室に〜って、これってラブレターですか?』
『まあ、端的に言えばそうなるわね。わざわざ私を指定で呼び出しておいて、勉強を教え
て欲しいとか、他の用事なんて考えにくいもの』
長田先輩は自分の言葉に納得するように頷いた。それにしても、長田先輩のこの落ち着
いた態度は賞賛に値してしまう。やっぱり、告白とかされ慣れているからなのだろうか。
私なんて、例え興味のない男子からだったにせよ、こんな手紙を貰ったら動揺してしまうだろう。
『へえ…… さすが長田先輩。モテますよね…… しかもこれって、バスケ部部長の上田
先輩じゃないですか。ハーフでイケメンで女子に大人気って言う。これ、凄くないですか?』
差出人を見て、私は思わず唸ってしまう。しかも手書きなのに字も上手だし。しかし長
田先輩は困った顔で首を振った。
『私、こういう自分に自信を持ちすぎてる人ってあんまり好きになれないのよ。この手紙
だって、断る訳がないって雰囲気に満ち溢れてるんだもの。この名前の書き方すら嫌味っ
ぽくって、嫌いだわ』
154 :
4/5:2013/12/18(水) 00:24:36.99 0
『ハァ…… そういう物なんですか……?』
私は引っ込み思案で臆病だから、基本男の人は引っ張ってくれる人の方がいい。ただ、
完璧過ぎるのは確かにどうかとも思えるのも分かる気がする。多少だらしなかったりした
方がいいのだ。ちょうど、別府先輩みたいに。
『でも、今のラブレターと別府先輩からの告白を一蹴した事の繋がりが……さっぱり分か
らないんですけど。別府先輩に彼氏役を頼むとか言うならまだしも』
「冗談言うな。そんな事したら、俺が他の女子に殺されちまう」
結構本気で、別府先輩が拒否の態度を示す。上田先輩はファンクラブも出来るほどの人
気っぷりなのだ。
『まあ、確かに…… で、でも、さっきの話を聞いていると、長田先輩は交際の申し込み
を断るように思えましたけど……それじゃあ結局、二人ともファンクラブの女子を敵に回
しちゃうって事じゃないですか?』
私の危惧に、長田先輩は深々とため息をついた。
『だから迷惑なのよ…… 受けたら受けたで嫉妬の視線を浴びるし、断わったら上田君に
恥を掻かせたって嫌がらせを受けそうで…… しかもこんなのとの仲を勘繰られた挙句に、
他の部員にまで被害が及んだらたまったものじゃないわ。かなみちゃんにもね』
『うわぁ……』
その後の事を思うと、私は戦慄を覚えた。ただ、長田先輩も美人でおしとやかで男子の
人気は非常に高い。美男美女のカップルともなれば、アイドルの交際と同じで嫉妬はして
も同時に諦めの気持ちも覚えてくれるだろう。しかし振ったとなれば、憧れの人を傷つけ
たとファンからの憎しみを受けてしまうだろう。
「おまけにコイツは容赦ないからな。断わるとなれば、相手の心をへし折って再起不能に
するほど徹底的に否定するし」
別府先輩が口を挟むと、長田先輩がジロリと睨み付ける。
『失礼な事言わないでよ。私はただ、後腐れなくスッキリと終わらせたかったから思って
る事をそのまま告げただけなのに。あの程度で心が折られるなら、その程度の自信でしか
なかったって事でしょ』
155 :
5/5:2013/12/18(水) 00:26:54.91 0
「確かに変に優しさを見せて気を持たせたりすれば逆効果だけどさ。だからって少しは相
手の気持ちを慮れよ。貴方に男性としては魅力を一切感じないの、とか、女性に好かれた
いと思ったら最低限、直前に身だしなみを整えなさい。問題外、とかさ。まあ相手に問題
がある場合もあるけど、それでももう少し言いようって物がなくね?」
『ちゃんと優しく、笑顔でお答えしてるわよ。大体、いくら幼馴染だからって人の断わり
方にまで文句付けるなんてお節介もいいところだわ。保護者にでもなったつもり? 気持ち悪い』
「だったら俺に相談してくんな。お前だって自覚してるから、上田から告白された時に波
風の立たない断わり方を練習させて欲しいなんて言って来たんだろ?」
『仕方ないじゃない。今回ばかりは、相手が悪いんだもの。ファンクラブとか作ってるよ
うな頭が空っぽの女子達を敵に回さないようにする為には、さすがにいつものように断わ
る訳には行かないし』
いつものように周りの人間そっちのけで口喧嘩に入る二人だったが、その中で引っ掛か
る言葉が聞こえてきた。一瞬会話が途切れたところを狙って、私は割って入る。
『すみません、先輩方。あの……ちょっといいですか?』
恐る恐る手を上げると、二人の視線が一斉に私の方を向く。
『そんな怖がらなくても、普通に聞いていいわよ。で、何?』
別府先輩に対する時とは打って変わって優しげな声で、長田先輩が話に入れてくれる。
それで少し安心して、私は思い切って質問した。
『あの、今さっき別府先輩が言ってた、断り方の練習ってその……もしかして……』
私の推測を裏付けるように、別府先輩がコクリと頷いた。
続く
いいや振り向くね!
友ちゃんの足指吸いたい
ちなみんに猫耳メイドコスさせたい
誰も居ないなら友ちゃんは頂いていくぞ
160 :
ほんわか名無しさん:2013/12/21(土) 15:22:04.88 0
誰もいないと思った?
じゃあ誰がいようと友ちゃんは頂いていく
お題
・クリスマス当日に風邪引いちゃった友ちゃん
164 :
1/6:2013/12/21(土) 20:11:54.12 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その4〜
「ああ、そうだよ。金曜って明日だしな。穏便に済ます為にどういう断わり方をしようか
って、その為の練習に呼び出されたんだけど……何でこんな学校から離れた公園まで来な
きゃなんなかったんだよ。しかも、何度も暗号みたいなメールで指示出してきやがって。
おかげで超苦労したじゃねーか!!」
『だって、万が一にも他の生徒に見られる訳には行かなかったんだもの。ただでさえ、私
とタカシは恋人同士だって疑われてるところに、二人でコソコソなんかやってたら、また
新聞部辺りにゴシップを書き立てられちゃうじゃない』
「だったら家でやれば良かっただろが。何だって公園なんだよ。一番安全だろが」
『それじゃあ雰囲気でないでしょう? 練習とはいえ、出来れば本物に近い雰囲気が欲し
かったから。こういうあまり人気の無い公園なら、それっぽくなるし』
また際限なく二人の言い合いが始まりそうになったので、私は今度は躊躇なく割り込んだ。
『も、もう一ついいですか? でも、練習にしては、何ていうかその……他の誰かじゃな
くて、別府先輩自身が長田先輩に告白しているように見えたんですけど……』
私の中ではほとんど疑いは氷解していたけれど、まだそれだけが喉元に引っ掛かるよう
に残っていた。すると別府先輩が、ため息をついてジロリと長田先輩を睨む。
「それは菜々美の奴が、何を思ったのか一度本気で私に告白してみてくれって言うから。
下手くそな演技でされるよりも、その方が断わり方も気合が入るとか何とか」
『だって、一度タカシに告白されてみたかったんだもの。それでバッサリ断わるのとかっ
て最高にスッキリするでしょ?』
「いや。俺は今までお前に振られた野郎どもの気持ちが良く分かったぜ。下手に美人なだ
けに、魂を唐竹割りに切られた気分だな」
『あら? タカシが美人なんて褒めてくれるの初めてじゃない? 嬉しいわ。ありがとう』
「人にダメージ与えておいて、褒め言葉だけ拾って喜ぶとかどんだけチャッカリしてんだ
よ。しかも、その喜び方。結構ガチだろ?」
『ええ。だって、タカシにそう見られてるなんて思わなかったから。いつも文句言ってばかりで』
165 :
2/6:2013/12/21(土) 20:12:29.33 0
相変わらず、二人の仲の良さを目の前で見せられてはいたが、それでも私はちょっと――
いや、かなりホッとしていた。
――別府先輩の告白…… あれも、演技だったんだ……良かった……
正直、長田先輩とだったら仕方ないと思っていた。だけどやっぱり、別府先輩を目の前
で奪われるのも辛かったし、逆に大好きな人が傷つけられるのだとしたら、例え親しい長
田先輩であっても許せなかったから。
『……そっか。練習、だったんですね…… 二人ともいつも通りで……私ばっかり気が逸っ
ちゃって……ホント、バカみたいでしたね…… 笑って下さい……』
しかしこの時、私はすっかり忘れていた。別府先輩の告白をにべも無く断わった長田先
輩に憤って割って入ったことが誤解だった事の恥ずかしさより、もっと重大な事を。
『別にそんな事で笑ったりしないわよ。それよりも、私からも聞きたいことがあるんだけ
ど、いいかしら?』
『え――?』
聞きたいこと、と言われて私は顔を上げる。そして長田先輩の優しい微笑を見て、ハッ
と気付いた。
――し……しまった!! もし、何で私がこの場所に来ているのかって追求されたら……
ドクン、と心臓が鼓動を強く打ち始めた。
――どどど、どうしよう…… 別府先輩への気持ちをバラさずに言い逃れなんて……
こんなみっともない状況で、私の思いを知られたくない。だけど、質問を拒否なんてす
れば、余計に怪しまれてしまうかも知れない。正直、長田先輩に口で勝てるとは思えなかった。
『……ど……どうぞ……』
観念して私は頷く。こうなれば、グダグダになってもみっともなくっても、否定し続け
るしか無い。ギュッと目を瞑り、体を緊張させて長田先輩の質問を待った。
『ホントにいいのね? それじゃあ聞くけど――』
長田先輩は、質問の前に言葉を区切った。時間にすればほんの一拍程度だったかも知れ
ない。だけどその間にも私の心臓は早鐘のように鳴り続け、胸が息苦しくて堪らなくなる。
『かなみちゃん、さ。タカシにパンツ見られて、どんな気分だった?』
166 :
3/6:2013/12/21(土) 20:13:16.90 0
『――はい?』
予想外の質問に、頭の中が真っ白になる。そして、クリアになった頭の中に、突如とし
て記憶が蘇った。枝に引っ掛けたスカートを必死で抑えながらパニくっていた自分の事を。
そして、その瞬間、全身が燃え上がるように熱を帯びた。
『――って、何聞いてるんですか長田先輩っ!! そそそ、そんな見られてどうとかどう
とかなんて…… ていうか、見たんですか別府先輩っ!! 見たんですねっ!!』
別府先輩の前で醜態を晒していた自分を思いだし、恥ずかしさと自己嫌悪で一杯になる。
どうせ見られるならもっと色っぽい展開で見られたかったのに、あんなバカな見られ方す
るなんて、死んでしまいたい。
『聞くまでもないじゃない。私とタカシが注視してる中で枝にスカート捲り上げられちゃっ
たんだもの。私も見ちゃったからね。ピンク色の可愛らしいショーツを』
『わあああああっ!! 言わないで下さいっ!!』
スカートを押さえ、私はブンブンと首を振る。自分のパンツの色まで口にされて、現実
をより一層思い知らされる。
『事故なんだし、そこまで取り乱す事ないじゃない。タカシだってきっと喜んでるわよ。
このラッキースケベ』
「誰がラッキースケベだっ!! さっきから好き放題に言いやがって、人の感情まで勝手
に捏造して代弁するなっ!!」
『捏造とは心外な。誰よりもタカシの事を一番良く知ってる私の言葉に間違いは無いわよ』
『でも見たんですよね? 見たんですよね?』
長田先輩に食って掛かろうとする前に私に捕まり、別府先輩は一瞬怯む。しかし、すぐ
に首を振った。
「み、見てない!! いや。正確に言えば、見えたけど見てないから!!」
『何なんですかそれはっ!! いいい、意味が分かりませんっ!!』
なおも追及する私に、先輩はたじろぎつつも必死で弁解した。
「だからさ。かなみちゃんが逃げようとした瞬間にスカートが捲れ上がって、その瞬間に
中が見えたのはその……確かだけどさ。その後すぐ俺は後ろ向いたから。気付いた後も見
続けたなら見たって事になるけど、見えてすぐ視界から消したなら、事故の範疇だろ」
167 :
4/6:2013/12/21(土) 20:14:50.83 0
『嘘よ。背中向けたのは確かだけど、実際はチラチラ後ろを見てたくせに。ホント、ムッ
ツリスケベってこれだから性質が悪いわ。キモイってこういう人の事を言うのよ、かなみちゃん』
「だから何でお前がそこで否定出来るんだよ。お前はすぐにかなみちゃんとこ駆け寄った
じゃん。俺の事なんて気にしてる暇なかったろ」
『見なくたって分かるわよ。私のパンツだっていつも視界から外してるフリしてチラチラ
と見てるくせに。タカシはバレてないと思ってるんだろうけど、ちゃんとこっちは気付い
ているんだからね』
『し……信じられませんっ!! 長田先輩のパンツまで覗いてるんですかっ!! 幼馴染
にまで欲情してるなんて……最低ですっ!! ド変態ですっ!!』
「わあっ!?」
さっきまでのは恥ずかしさをごまかすために怒りに転嫁していただけだったが、今度は
本気になって怒ってしまった。長田先輩のパンツをスケベな視線で見つめる別府先輩なん
て想像したくない。
「お前何勝手なこと言って……違う違う!! 誤解だってば!!」
『あら? 私は嘘なんて一つもついてないわ。いい加減観念しなさい。この変質者』
『被害者がそう言ってるんですよ? スケベな事してその上嘘までつくなんて、許せませんっ!!』
詰め寄る私から後じさりつつ、別府先輩は首を振った。
「だから違うって!! 菜々美の言ってるパンツってのは、部屋に干してある奴で、スカー
トの中覗いたりした訳じゃないから!!」
『またそうやってごまかしてっ!! 一体何処の女子が部屋に下着を干したまま男子を部
屋に上げるんですかっ!! ねえ、長田せんぱ……い?』
振り返って見た長田先輩の表情に、私の語尾が自信なさげに消える。まるで私の言葉に
不満でもあるかのように、難しい顔をしていたからだ。
『あの、先輩…… もしかして?』
168 :
5/6:2013/12/21(土) 20:17:39.82 0
『いいじゃないの。幼馴染なんだし、部屋に下着くらい干しっ放しだったからって』
その瞬間、私の中で何かが失われたような気がした。美人で、聡明で、清楚で優しくて、
ちょっと口は悪いけど、人としても女性としても尊敬できる、憧れの長田先輩が、部屋に
下着を干したまま、男子を迎え入れるだなんて、信じられない。だが、私を置いてきぼり
にして、その事実は着々と埋められていった。
「よくねーよ!! ちゃんとノックまでして、入ってすぐに下着とご対面する俺の気持ち
になってみろ!! 一体どんな顔すりゃいいんだよっ!!」
『だって、その時のタカシの顔がいつ見ても面白いんだもの。本当は内心欲情してるくせ
に、わざと困ったフリして常識ぶった事ばかり言うのもね』
「欲情はしてねーよ。俺は下着フェチじゃねーし。姉や妹いる奴が、いちいち兄弟の下着
に欲情するか? それと同じだっての」
『嘘つき。大体私達、血の繋がりはないんだから、その例えはおかしいわよ。私が洗濯物
を畳んでる間とかも、見てないフリして横目で見てるのよ。どう思う?』
さも当然のように同意を求めるかのような質問だったが、私は断固として首を振った。
『それはさすがに長田先輩が無防備過ぎですっ!! 別府先輩がスケベだって分かってる
なら尚更じゃないですかっ!! み、み、み……見られたって文句は言えませんっ!!』
すると長田先輩は、こんな話題に相応しくないたおやかな笑顔を見せた。
『文句は言ってないわ。私はタカシにパンツ見られたって全然、平気だもの。何なら見てみる?』
「バカ止めろって!!」
スカートの裾を持ち上げようとする長田先輩を、別府先輩が慌てて制止する。
「正直、そういう事されても困るだけなんだって。頼むから、刺激するようなことすんな
よな、もう」
別府先輩は、本気で怒っているように見えた。すると何故か、長田先輩が寂しそうな顔
で別府先輩を見る。
『迷惑なの? 私がこんな事をしても、欲情しないの? 私って、タカシにとっては魅力
無い女なのかな?』
169 :
6/6:2013/12/21(土) 20:19:32.73 0
正直、これまでの会話の流れからいって、長田先輩が本気で言っているのか、からかお
うとしているのか区別が付かなかった。もしくは、別府先輩から何かを引き出す為に、敢
えて演技をしている可能性も。だから今は、口を挟まず見守っているしかなかった。
「そんな事……ないから困るんだって。菜々美がそうやってからかう度に、どれだけ自制
してると思ってるんだよ。幼馴染だろうが後輩だろうが、欲情くらいするさ。俺だって男
なんだし。だけど、それ表に出してたら、失うものの方がずっと大きいだろうが。お前は
人の気も知らないでそういう事するけどさ。一歩間違えば、お前だって傷付くんだぞ」
別府先輩の言葉の中に、自分が出て来たような気がして私は顔を上げて別府先輩の真剣
な顔を見つめた。
――今……確かに、後輩って言った……
別府先輩が長田先輩を大切に思っているのは分かった。そして、その中にもし私も含ま
れているのだとしたらと思うと、私の中に嬉しさが広がっていった。後輩としか見られて
いなくても、別府先輩が私も大事にしてくれているのなら、それは凄く嬉しい。
『まあ……ね。確かに、失うものの方が大きいかな』
肩をすくめつつ、いささか残念そうにも見えつつ、しかしクスリと笑って長田先輩が頷く。
『タカシの反応が可愛いから、ついついやっちゃうけど。でもタカシが私にそれを求める
事があったら、少なくとも今の居心地のいい関係は無くなっちゃうわね』
何というか、そこには微妙なバランスで成り立っている二人の関係性が垣間見えたよう
に思った。男と女で、単なる幼馴染っていう関係を続ける事は、実はすごく難しい事なん
じゃないだろうか。そんな事を思った瞬間、長田先輩がいきなり話に私を加えて来た。
『でも、私はそうかも知れないけど、かなみちゃんの場合はまた違うと思うわよ』
『へっ……? ど、どうしてですかっ!?』
せっかく別府先輩に長田先輩並に大切に扱われているんじゃないかと喜んだところを、
仲間外れにされたような気分で私は長田先輩に質問する。しかし、長田先輩は私を無視し
て別府先輩の方を向いた。
『じゃあ、タカシに質問。何で今、かなみちゃんはここにいるんでしょうか?』
続く
ツンデレさんのパンツ見たいよおおおお
友ちゃんのお腹なでなで
友ちゃんのお尻くんくん
173 :
ほんわか名無しさん:2013/12/25(水) 00:09:25.55 0
つ・ツンデレさんとクリスマス
つ・ツンデレさんにクリスマスプレゼントをあげたらどうなるの
つ・ツンデレさんにサンタコスで出会ったらどうなるの
つ・ツンデレさんにサンタコスを頼んでみた
サンタコスの友ちゃんぺろぺろしたい
お題
つ・ツンデレにアンタって寂しいクリスマス送ってるわよね〜って言われたら
177 :
1/5:2013/12/26(木) 00:02:17.18 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その5〜
『わああっ!! いいい、言わないで下さいっ!!』
私は両方の手をそれぞれの先輩の前に突き出して振った。そんな私を、長田先輩は面白
がるようにクスリと笑ってから頷いた。
『大丈夫よ。私は何のヒントも与えたりしないから。答えは別府君から聞きなさい。二人
きりで、ね』
『へ……?』
展開の速さに付いて行けず、キョトンとしている私を放っておいて、長田先輩は別府先
輩に向き直り、頷く。
『それじゃあ私は帰るから、後は宜しくね。ちゃんと私の質問に答えるのよ。でないと、
別府タカシは幼馴染の下着に欲情する変態説を学校中に広めて回るからね』
「待て待て待て!! それ、事実と違うだろが!! ていうか、俺がさっき言った事をお
前はどう聞いてたんだよ!!」
別府先輩のツッコミに、長田先輩は手をヒラヒラと振ってみせた。
『ちゃんと聞いてるわよ。でも、捏造であっても私の言葉と貴方の弁明と、みんなはどち
らを信じるでしょうね?』
クスリと悪魔のような微笑を浮かべる長田先輩を前に、別府先輩は歯噛みして唸った。
「クッソォ…… この猫かぶり娘が……卑怯者め。分かってるよ。かなみちゃんに、お前
の質問の答えを言えばいいんだろ?」
『ちゃんと答えるのよ? どうやって、じゃなくて何で、だからね。明日私からかなみちゃ
んに確認するから。自分の地位を貶めたくなかったら、真剣に考えることね。じゃあ』
「あ、おい!! そもそも練習はどうすんだよ? お前の返事の方は」
クルリと身を翻すと、長田先輩はさっさと歩き出してしまった。別府先輩が声を掛ける
も、一顧だにせずに。諦めた別府先輩は、ため息をつく。
「ハァ…… 何考えているんだ。アイツは……」
『そんな事言われても…… 別府先輩こそ、幼馴染なんだから、分かるんじゃないですか?』
しかし、別府先輩はとんでもないと首を振る。
178 :
2/5:2013/12/26(木) 00:02:49.56 0
「そりゃあ他の奴よりは断然付き合い長いからある程度は分かるけどさ。でも、何でも分
かってる訳じゃないよ。何たって、男と女なんだしさ」
『先輩で分からないなら、私にはもっとサッパリです。あの人って、同性の尺度では測れ
ないところがありますから』
不満そうな顔をする別府先輩を見つつ、長田先輩を思う。きっと長田先輩に聞いても、
同じような事を言うだろう。たっぷりと別府先輩への毒舌を混ぜながら。だけど、そんな
事を言い合えるのも、お互い分かり合う部分が多いからなのだろう。私なんかが吐く文句
なんかとは全然違う。
「アイツを自分の思考に当て嵌めて考えようとするのがそもそも間違いなんだ。価値観と
か基準とか、俺から見ても普通の女子とは全然違うからな」
『私も何か……今日、その一端を垣間見た気がしました…… 何か少し……怖いです』
いつもは別府先輩にしか向けられていないその矛先がこっちに向いた時、何をされるか
分からない。尊敬出来るのは変わらないけれど、ちょっと底知れないものを感じてしまった。
「だろ? いつも俺が犠牲になって抑えてるから、世間的にはいい評判だけで通ってるけ
ど、下手に野放しにしたらどうなるかってな」
『先輩はそれ以上に長田先輩に負ってるところが多いじゃないですか。自慢げに言えるこ
とじゃありません。単に幼馴染だからからかいのターゲットになってるだけなのに、そこ
を誇らないで下さい』
私のツッコミに、先輩は渋い顔をした。
「ちぇっ。俺が犠牲になってるからお前ら後輩に被害が飛び火しなくて済んでるのに。つ
か、俺がいなかったら、間違いなく次のターゲットはかなみちゃんだぞ? 色々隙が多い
奴ほどアイツは好んで餌にするからな」
『誰が隙が多いんですかっ!! 失礼な事言わないで下さい。あと、長田先輩をまるで肉
食のモンスターみたいに言うのも。ツッコミどころ満載で生きてる別府先輩にだけは言わ
れたくないです』
文句を言いつつも、私は何とはなしに片手でスカートの後ろを押さえた。あんなみっと
もない姿を見せてしまった今となっては、何を言っても説得力無く思える。
「……で、どうする?」
179 :
3/5:2013/12/26(木) 00:03:20.73 0
『え?』
別府先輩に急に話題を変えられ、私は付いて行けずに聞き返した。さっきまでのちょっ
と不満そうな顔が、今は真顔になっている。
『どうするって……何が、ですか?』
すると別府先輩は、露骨に眉を顰めてみせた。
「もう忘れたのかよ。菜々美の課題。かなみちゃんに、何故ここにいるのか、その答えを
俺が出せって奴」
『う…… そんなのがありました……よね……』
別府先輩に軽口を叩いていたせいで一瞬忘れていたが、私にとっては重大な問題だった。
長田先輩からのメールを盗み見て、後を付けて来たその理由を勘繰られてしまえば、私の
気持ちなんて簡単に暴かれてしまうだろう。
「どうしてかって言うなら、簡単なんだけどな」
『えっ!?』
気楽な口調の先輩に、私は驚いて声をあげてしまう。すると先輩は、小さく笑って肩を
すくめた。
「だって、俺の後を付いて来たから、だろ? だけどこんな解答じゃ落第だ。アイツの事
だし、きっと俺の額にバカって書くぜ。油性マジックで」
『アハハッ!! それ、見てみたいです』
別府先輩のおでこに落書きされてる姿を想像したら、つい笑ってしまった。しかし先輩
は、嘆息して肩を落とした。
「他人事だと思いやがって。でもまあ、かなみちゃんがそうして欲しいって言うなら、別
に甘んじて受けてもいいぜ」
『え……?』
私は笑いをおさめて、先輩を見返した。すると私の視線に、何故か照れ臭そうに顔を背
けてしまう。
「いやー……その、さ。付いて来た理由……もしかしたら、探られたくないんじゃないかっ
て。だったら俺は思考停止して、分からなかった事にしとく。菜々美に何されようと、
可愛い後輩が嫌がる事なんてしたくないし」
180 :
4/5:2013/12/26(木) 00:03:58.40 0
別府先輩の言葉が、私の胸を打った。先輩は、やっぱり優しい。だらしなくて、手の掛
かる先輩だけど、でもやっぱりいざって時はとても頼りになって、いつだって私を庇って
くれている。そんな先輩に私のせいで悪評が立つなんて、耐えられない。
『でも……それじゃあ、先輩が変質者になっちゃいますよ? もう校内の女子全てからゴ
キブリのように嫌われて、半径五メートル以内に近付くなとか、触ったら妊娠しちゃうと
か言われますよ? それでもいいんですか?』
「アイツ……容赦ねーからな。おまけに、こんな事言ったなんて知れたら全否定するぜ。
そんなのは優しさじゃなくて単なるヘタレだって」
『ダメですよそんなのっ!! 先輩がスケベだってのは事実ですけど、変質者だって言う
ほど酷くはありません。私のせいであらぬ誤解を掛けられるなんて、先輩が良くっても私
が良くありません』
ブンブンブン、と激しく首を振って私は拒絶する。そんなのは絶対ダメだ。しかもうっ
かり間違って先生の耳にまで届いたりしたら、それだけでは済まないかもしれないし。
「でも、いいのかよ? そうしたら、俺がかなみちゃんの気持ちまでを答えることになっ
ちゃうんだぜ? まあ、不正解で成立しないかもしれないけどな」
ここまで来て不正解って、わざとでもない限り有り得ないだろう。そのくらい私の行動
は単純でバカな事だったのだ。けれど私は首を振る。
『よくありません。よくありません……けど…… でも、先輩に悪評が立つって事は、同
時に私も色々酷い事言われるって事ですから。先輩一人が悪く言われるのは構いませんけ
れど、私まで巻き添え食らって悪く言われるのは我慢出来ません』
「は? 何でかなみちゃんまで悪く言われるんだよ? 菜々美の事だし、後輩には被害が
及ばないように徹底的にフォローは入れると思うぞ」
首を傾げる別府先輩に、私はもう一度首を振ってみせた。
『だって、先輩に悪評が立っても、私は変わらずに先輩の傍にいますから。先輩の半径五
メートル以内にだって入りますし、触ったりだってしまう。そうしたら、変質者と一緒に
いる女なんて同じ変質者じゃないかって噂立てられるに決まってます』
しゃべっているうちに、何だか酷く目が熱くなって来た。すると別府先輩が急に慌て出す。
181 :
5/5:2013/12/26(木) 00:05:15.35 0
「お……おいおいおい!! 何でそこで泣き出すんだよ。とりあえず落ち着け。これで涙
拭いて。な? な?」
『え……?』
言われて私は、初めて自分がボロボロと涙をこぼしている事に気が付いた。先輩が差し
出してくれたハンカチを受け取り、目に当てる。
『あれ……何で……だろ? 泣くところなんかじゃないのに……ヤダな、もう…… ちょっ
と待って下さい。すぐに治まりますから……』
そう言いつつも、なかなか涙は止まってくれなかった。一生懸命に気持ちを落ち着かせ
ようと、無心になってひたすら目の熱さがなくなるまでハンカチで目を押さえる。その間、
別府先輩は無言でずっと、待っていてくれた。
『……すみませんでした。もう、大丈夫です』
ハンカチを差し出して返すと、先輩は無言で受け取ってポケットにしまった。それから、
何故か不思議と申し訳なさそうな表情で私を見下ろす。
「じゃあ……答えちゃっていいのか? 何でかなみちゃんが俺の後を追いかけて来たのかっ
ていう、俺の考えをさ」
『……はい。お願い……します……』
続く
あと2回くらい
ツンデレさんに泣かれたら抱きしめざるを得ない
183 :
1/2:2013/12/26(木) 02:36:00.27 0
ち「サンタちなみんです…ほーほーほー…」
タ「…なにやってんの」
ち「今年も…一人さびしくクリスマスを過ごしてるタカシに…サンタちなみが…プレゼントをあげます…」
タ「ほほう、それは楽しみだな」
ち「それじゃ…はい…」ぽふっ
タ「…ちな、僕に覆いかぶさってどうしたの」
ち「プレゼントは…サンタちなみんを…今日一日可愛がることが出来る権利…」
タ「…はぁ?」
ち「ロリコンのタカシも…これには狂喜乱舞間違いなし…」
タ「僕がロリコンかはともかく、自分がロリ体型なのは自覚してるんだね」
ち「ぅ…そうやって…人の揚げ足を取るようなことしてるから…タカシはモテないのです…」
タ「うるせーやい。ま、とにかく今日はちなを好きに出来るんだね?」
ち「ま…まぁ…そういうことになるような気も…しないでもない感じ…」
タ「それじゃ…ちなのお望み通り、ロリコンの僕には大好物のロリ体型なちなを思う存分可愛がることにするよ」
ち「うぅ…ロリ体型に生まれついてしまったばかりに…ロリコンのタカシに襲われてしまう…」
タ「逆に言えば、ちながロリ体型なせいで僕がロリコンになってしまったとも言える」
ち「い、意味…わかんない…」
タ「…つまり、僕はちなが大好きなんだってこと」
ち「ぁぅ…!?…そ、そーゆーの…反則…」
タ「サンタコスもすごく似合ってる。可愛いよ」
ち「…そういうことばっか言ったら…だめ…」
タ「顔真っ赤になってる。ますます可愛いね。ちなは」
ち「はぅぅ…」
タ「あ、そうだ。僕もちなにプレゼント上げないとね」
ち「え…?」
タ「ていっ」むぎゅー
ち「ひゃぁっ…!?」
タ「今日はずっとこのままだ。サンタコスのちなをゼロ距離で堪能させてもらうよ」
ち「ぅぅ…タカシのばか…ロリコン…」
184 :
2/2:2013/12/26(木) 02:37:28.20 0
山「…甘い、甘すぎる。砂糖吐きそう」
友「ちなみんのサンタコス可愛いすぎー!」
山「確かに。上半身はもこもこだけど、下はミニスカニーソってのがたまらないね」
友「…あんたってそういう視点でしか見れないの?前々から思ってたけど、やっぱりあんたってむっつりよね」
山「…そうは言いますがね、友子さん」
友「な、なによ」
山「あなたもおんなじ格好じゃないですか」
友「!!だからこれは、その…」
山「いくら後で言い訳したって、最初に勢い良く部屋に入ってきて『サンタ友ちゃんよ!』なんて言ってた事実には変わりないわけで」
友「あーあーあー!!聞こえなーい!!」
山「でも、すごく似合ってるよ。ボクの好みに合わせてくれるなんて、嬉しいなぁ」
友「う、自惚れんな!たまたまこの衣装が家に有ったから着ただけだし!!」
山「…たまたまサンタコスがある家ってどんな家なんだ…」
友「…そ、それはどうでも良いの!!」
山「それより、ボクもサンタ友ちゃんからプレゼント貰っていいかな」
友「残念だけど、何も用意してないわよ?」
山「良いの良いの。ボクが欲しいのは、サンタちなみちゃんがタカシにプレゼントしたのと同じだから」
友「なっ…」
山「ボクに、今日一日サンタ友ちゃんを可愛がる権利をください」
友「…そ、そんなの…あげられるわけ…」
山「…友ちゃん」
友「そ、そーゆーときだけ…真剣な顔するの…ずるい…」
山「良いよね…?」
友「ぅぅ…は、はい…」
ちょっと今から菜々美ちゃんにハンカチ貸してくるわ
タカシも山田も爆発しろ。
お題
つ・職場の飲み会の帰りに偶然ツンデレとばったり出会ったら
189 :
1/3:2013/12/28(土) 17:22:21.76 0
【ツンデレに消しゴムを拾われたら】
英語の授業中。とても眠い。だが、最近寝すぎて先生に目をつけられているため、例えポーズだけでも起きていなければ。ああそれにしても眠い。
……そうだ、板書をノートに写して目を覚まそう。えーと、I am a pen、と。斬新なカミングアウトだな……あ、全然違う。寝ボケて見間違えたか。
消しゴムを筆箱から取り出そうとしたら、手が滑って床に落ちてしまった。慌てて腰を浮かしかけてると、隣の席の女子が拾ってくれた。
「あ、サンキュ」(小声)
「うるさいです殺しますよ」(小声)
はい、と俺に消しゴムを手渡し、なんでもない顔で授業に戻る女生徒。俺も黒板に向き直る。
「……いやいや、いやいやいや! 違うだろう! そりゃ拾ってくれたことには感謝しますがその感謝に対しうるさい殺しますよはないんじゃないですかねェ!? いやうるさいまでは100歩譲っていいとしても殺されるのはどうしても嫌だ! なぜなら死ぬのはとても怖いから!」
「別府うるさい。座れ」
「はい」
あまりの納得のいかなさのあまり思わず立ち上がって思いの丈をぶち撒けたら、普通に英語教師に叱られた。
「とてもうるさいです殺します」(小声)
そしてまた殺意をぶつけられた。睨まれもした。
「……あのさ、俺なんかしたか?」
このままでは大人しく授業を受けることなんてできやしない。こそこそっと例の女子に耳打ちしようと近寄ったら、その距離だけ離れられた。
「お、おい待て。逃げるな」
「悪臭がします。むしろ死臭です」
「あれ、俺死んでた?」
「はい」
「いつの間に!? 嫌だあ!」
「別府うるさい。座れ」
「はい」
知らず死んでいた恐怖に再び立ち上がって叫んだらまた怒られたので、座る。あと、よく考えたらこんなので騙される俺が悪い。が、それとこれは別。
「ええい、よくも騙しやがって、この……ええと、名も知らぬ女生徒!」ヒソヒソ
「私だって貴方の名前なんて知らないです」ヒソヒソ
190 :
2/3:2013/12/28(土) 17:22:54.53 0
「さっきから教師に名前を呼ばれてますが。口だけじゃなく耳まで悪いのか」
「う、うるさいです死にます死になさい殺します」
このお嬢さんはすぐに人を殺そうとするので怖いが、ちょっと頬が赤いので恐怖心が薄れた。
「すぐに人を殺そうとするな。それより、どうしてそんなに俺を殺そうとするんだ。アレか、実はお前は悪魔か何かで、俺の魂にすごく価値があるからそれを他の悪魔に奪われまいといち早く俺を殺して魂を取ろうとしているのか」
「邪気眼キモいです」
「…………」
「さらに言うなら、貴方の魂にそんな価値があるとはどうしても思えません。どれだけ自惚れてるんですか。自身を顧みたことないのですか。その上での発言ならもうどうしようもないです、一人で穴でも掘って永遠に埋まっててください」
「…………」
「最後に、授業中です。邪魔しないでください。とても迷惑です」
「うっうっうっ……」ポロポロ
「泣いたッ!?」
畳み掛けられすぎて思わず涙が出てしまった。そしてそれを大声で言われた。
「うわっ、マジだ! 別府の奴泣いてるぞ!」
「すげぇ、高校生でここまでマジ泣きしてる奴初めて見た」
「別府くんの泣き顔よ! レアよレア! 早く撮らないと!」パシャパシャ
「うわ、調教したい……」ハァハァ
周囲から聞こえてくる黄色い声に、自らの立ち位置を自覚して死にたくなる。ていうか最後のなんだ。
「どうした別府、お腹でも痛いのか? ほら、便所行って来い」
そういうわけではないが、ここで晒し者になってるよりマシだ。俺は逃げるように教室から出て行った。
「はぁ……」
数分時間を潰してから教室に戻る。先ほどの喧騒が嘘のように、教室は静寂を取り戻していた。だが、生徒たちの俺を見るニヤニヤとした顔が夢幻ではなく現実であると知らしめる。
ただ、ニヤニヤされて悔しいので俺なりの精一杯の愉快な顔をして対抗したのだが、全員一斉に真顔になったので一層辛い。
「ちくしょう」
さっき泣いたのとはまた別の理由で泣きそうになりながら着席する。今日は厄日だ。大人しく最初から寝てりゃよかった、とか思ってたらツンツンと肩をつつかれた。例の女がボールペンでつついている。
191 :
3/3:2013/12/28(土) 17:23:27.48 0
「なんだコンチクショウ。今の俺のは非常に傷心なので、これ以上死ねと言われたら実行しかねないので勘弁してくれると嬉しいです」
「さっきの顔はなんですか?」
真新しい傷に塩をたっぷり塗り込まれた。
「……なんでもない」
「そうですか。……あの、その。……さっきはごめんなさい。私が言わなかったらあんなことにならなかったですよね?」
……びっくりした。この殺します女に、こんな殊勝な態度を取れるとは。
「全くだ。土下座して謝れ。その際全裸でお願いします。支配欲が満たされそうだし、その大きなおっぱいが床でぐにゃりと押しつぶされる様をとても見たいです」
そこで、全力で大人げない態度をとる。
「…………」ジーッ
「嘘ですごめんなさい」
養豚場の豚を見る目で見られたので、思わず謝ってしまう。
「……いや違う、なんで俺が謝ってんだ。そうだ、お前が謝るんだ。酷いこと言って泣かせてごめんなさいと言え。あ、泣かせてはやっぱナシで」
「ちょっと言っただけで高校生を泣かせてしまい申し訳ありません」
「ちくしょう」
謝らせたはずなのに、心は晴れるどころかより一層重くなる。
「ところで、なんであんなので泣けるんですか? 何か秘訣があるのですか? 子供じゃあるまいし、あんなので普通泣けませんよね?」
「俺に恨みでもあるのか」
「はい」
「え? マジ? 何かしたの、俺?」ズイッ
「近寄らないでください真剣にキモいです死にます殺します」
「うっうっうっ……」ポロポロ
「また泣いた!?」
数十分前の繰り返しになったので割愛。
193 :
1/4:2013/12/29(日) 02:21:53.16 0
【ツンデレと黒板を消したら】
先日、そこらの鬼より口が悪い女と知り合ってしまった。だが、あんな奴百害あって一利なし。このまま知り合いという細い間柄で過ごし、これ以上仲を深めなければ最低限の被害で済むはず!
「早く黒板を消してください別府くん。何をぼーっとしてるんですか。どうせ想像の中で私をセクハラしているんでしょう死んでください」
──って思ってたんだけどなあ。なんだよ日直でコイツと一緒の当番って。
「はぁぁぁぁ……」
「なんですかそのウンザリした顔は。辛気臭いですこちらに顔を向けないでくださいついでに死んでください」
「鬼め。ああもういいや、とっとと終わらせちまおう」
適当に黒板を拭く。ん、大体おーけー。終わり終わり。
「待ってください。全然綺麗になってないじゃないですか。雑過ぎです。貴方が何事も雑に終えて人生の最後に路傍で朽ち果てるのは勝手ですが、仕事はキチンとしてください」
軽く手を払って戻ろうとしたら、黒板消しをこちらに向けた女に引き止められた。
「ああ、もう! 分かった、分かったからイチイチ攻撃するない!」
向けられた黒板消しを半ばひったくるように取り、乱雑に黒板を拭く。だが、黒板に黒板消しの白い軌跡が描かれるばかりで、ちっとも綺麗にならない。
「ええい、こんなのまで俺を馬鹿にしやがる。クリーナーってあったかな……」
キョロキョロと周囲を見回す。……あ、例の女の側にある。近づきたくないなあ。また死ね死ね言われそうだし。
「…………」
だが、女は自分の手を見つめたまま固まっている。なんだろう。
「お、おい。どした?」
「…………。い、いえ。……ちょっと、先ほど黒板消しを貴方に取られた際に、手が当たったもので」
「あ、悪い。大丈夫か? 痛かったか?」
「……い、いえ。大丈夫です。痛くないです」
む? てっきり『何を気遣ったふりして私の手を触ろうとしているんですかキモいです死にます死んでください殺します』とか言われると思ったが、普通の反応だ。
いつもそういう対応ならこちらも態度を軟化させるのだが、普段が普段だからなあ。なかなかに難しいね。
194 :
2/4:2013/12/29(日) 02:22:33.00 0
「……な、何を見ているのですか」
「あ、いや、なんでもない。その、そこのクリーナーを使いたいのだが、いいか?」
「ど、どうぞ。私の物ではないですから」
「そりゃそうだ。逆に私物だと言われたらびっくりするわ」
俺の軽口に反応することもなく、未だ手を見たり軽くさすったりしている女。……うーむ。
「あのさ、本当に大丈夫か? なんか手を気にしてるみたいだが……爪でも割れたか?」
「だ、大丈夫と言ってます。くどいです。なんですか、私は手を気にするのに貴方の許可がいるのですか。なんて横暴ですか許可を得る代わりに私の身体を貪るつもりですね死んでください」
1言放つと5、6発返ってきて辛い。もうさっきの普通の反応が懐かしいよ。
「すいません俺が悪かったです。……や、なんでもないならいいんだが、やけに手を気にしているようだからさ。俺の手が当たったのが原因で何かあったのなら悪いし、その」
「な、なんですか私の手がおかしくなったらどうすると言うのですか一生面倒を見るとでも言うのですかそのついでにえっちなことをする気ですね死んでください」
「なんという言いがかりを! ……ていうか一生面倒を見るって、その……」
「……じ、冗談に決まってるじゃないですか。何をまともに受け取っていますかユーモアのセンスぜろですか」
「そ、そうだよな。ははは」
「そ、そうです。は、はは」
ええい。なんだ、突然現れたこのむず痒空間は。
「……う、うぅ」
目の前の女も何か困ったように手をさすったりして、こっちをチラチラ見たりなんかしたりして!
何だ、何のフラグが立ったというのだ。いつの間に立ったというのだ。それとも全ては俺の勘違いなのか。
「か、勘違いしないでよねっ! 俺の勘違いを危惧しているだけなんだからねっ!」
「…………。近寄らないでください伝染ります」
明らかに後退りされた。シッシともされた。あとフラグが折れた気がした。
195 :
3/4:2013/12/29(日) 02:23:08.06 0
「違いますよ!? ちょっと混乱してたので落ち着こうとしたらツンデレ語が出ちゃっただけなんだからねっ」
「まだ残ってます」
「しまった。まあいいや、別に病気じゃなくてただのクセなので伝染るとか言うない」
「馬鹿が伝染ります」
「あー」
「何を納得してますか馬鹿ですか人に言われて納得する程度には馬鹿なんですか馬鹿は生きてる価値がないです死んでください」
この女はよく口が回るなあ。将来アナウンサーとかになるといいだろうなあ。とか思って現実逃避しないと生きることを挫けてしまいそうになるよ。
「……はぁ。ええと……女。クリーナーを使うからちょっとそこどいてくれるか?」
「嫌です」
「掃除できないのだけど」
「人を性別で区別するような方の言うことは聞きたくないです」
「あ……。い、いやその、名前を知らないんだ。おしえ……」
はっ。このパターンは『チミの名前を教えてくだたいっ♪』『絶対に御免です私の名前で検索してSNSを調べて個人情報を集めてストーカーの末に目を覆わんばかりの犯罪行為を働くつもりですねその前に死んでください世界のためです』とかいうアレ!
「きいろ」
「はい。え?」
「で、ですから。……篠原きいろ、です。……名前。私の」
「あ、ああ。きいろね、きいろ」
変な名前、と思ってたら、にわかに女……いや、きいろの顔色が変わった。
「な、馴れ馴れしいですいきなり名前で呼ぶとは何事ですか馬鹿ですか貴方は馬鹿なんですか」
なんかあわあわしながら俺を指さしてあわあわしてる。つまり、二回言っちゃう程度には慌てている。……ちょっと可愛い、とか思ってしまって悔しい。
196 :
4/4:2013/12/29(日) 02:23:41.13 0
「ええと。大丈夫か、きいろ?」
「また呼びましたねなんですか早くも亭主関白気取りですか片腹痛いです私はそういうの困りますし大丈夫ですええとても大丈夫です今日も私は元気です」
「なんか魔女の宅急便が混じってるし、とても大丈夫には見えないぞ。とにかく、なんだ。落ち着け」
「私はいつだって落ち着いてますそうです座右の銘にいつだって落ち着くとあるくらい落ち着いているのですむしろ貴方がもう少し落ち着いて色々思い出した方がいいです」
「待て、座右の銘が変なきいろ! ちょっと目が怖いです! と、とにかく一度落ち着いてだな……」
──その時。俺の脳裏になんか変な猫耳娘が現れ、『落ち着くにはなでなでが一番と先日の妹サミットで決まったんだよ、お兄ちゃん!』と囁いた。
気づいた時には手が動いていた。
「よしよし」ナデナデ
「…………」
「落ち着け」ナデナデ
「…………?」
不思議そうな顔で俺を見てるきいろ。一方、俺は俺で不思議に思いながらきいろをなでている。どうして俺はこんなナチュラルに今日初めて名を知った奴の頭をなでているのか。
「──っ!?」
ややあって、きいろの顔が赤一色で染まった。すごいバックステップで思い切り俺から距離を取り、物凄い速度で俺を指そうとしてるが目標が定まらないようで、一見北斗の拳系の技のよう。あべし。
「あ、あ、あ、あ、貴方は、何をーっ!?」
「いや本当に。その、訴訟しない方向で対処して頂けると何かと助かります」
「わ、わざとですか!? わざと私を辱めて楽しんでいるのですか!?」
「いや、辱めるて……いくらなんでも人聞きが悪すぎるだろ。ていうかいきなり女性の頭をなでた俺が全面的に悪いが、きいろはきいろで色々と問題があるかと」
「ま、また名前を!? そういうプレイなのですか!? いくらなんでも気が早過ぎると思いますよ!?」
「何の話だ!?」
俺の脳裏で『やれやれなのにゃ』と肩をすくめる猫耳娘だった。誰だお前。
198 :
1/6:2013/12/29(日) 09:36:49.15 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その6〜
恥ずかしくて、怖くて、逃げ出したくてしょうがなかった。けれど、私のせいで先輩に
恥辱を負わせるわけにはいかなかったから、両手をギュッと握って、足を踏ん張って耐え
る事にした。
「まあ……その……普通に考えたらさ。俺がどこに行くか……気になったから、だろ? 荷
物を置いて、仕事も放り出してさ。それはその……不思議に思ってもしょうがないと思う」
私はそれに首を振った。
『先輩の答えは……半分しか、正解じゃありません。でも、先輩の側からすれば、その答
え以上出せないのも仕方ない事ですけど……』
不思議そうな顔をする先輩に向かって、私は深々と頭を下げた。
『すみません。私……見ちゃったんです。誰のメールで呼び出されたか…… 文面までは
読み取れませんでしたけど……ななみって書いてあったのを……見ちゃったんです……』
プライベートのメールを盗み見るなんて、もし私が逆の立場だったら激怒しただろう。
多分別府先輩は怒ったりはしないだろうけど、それでも多分いい気分はしないはずだ。そ
んな先輩の顔を見たくなくて、私は下げた頭を上げられなかった。すると、先輩の手が、
私の頭の上にポン、と乗っかった。
「気にするな。わざと覗き見しなくたって、メールの中身なんて見えちまうもんだろ? あ
の時はかなみちゃんは俺に間違いを指摘しようとして後ろに立ってた訳だし、そんなもん、
事故みたいなもんだ。だから別にかなみちゃんは全然悪くないし、謝る必要も無いと思うよ」
先輩の手が頭から離れる。同時に私は体を起こした。先輩は穏やかな顔で私を見ていて、
不愉快そうな表情なんて、どこにも見られなかった。
『あの……あの…… ありがとうございます。そう言って貰えると……助かります……』
恐縮してお礼を言うと、先輩が何故かおかしそうにクスリと笑った。
「何か、随分としおらしいな。何だか、いつものかなみちゃんじゃないみたい」
何だかその言葉が私をからかっているように聞こえて、私はムキになって言い返した。
199 :
2/6:2013/12/29(日) 09:37:23.61 0
『あ……当たり前ですっ!! 今日はその……色々ありましたし…… 大体その言い方っ
て失礼です。何だか私が全然礼儀を知らない子みたいな言い方じゃないですか。私だって
間違いを犯せば謝るし、穏便に許して貰えれば、お礼くらい言います』
「アハハッ…… その方がいつものかなみちゃんらしいな。やっぱり元気が良い方が似合っ
てるよ、うん」
別府先輩が楽しそうに笑うので、私はますます不愉快な気分を募らせる。
『ほらっ!! やっぱりからかって!! もう……そういう別府先輩は嫌いですっ!!』
ブッと膨れてそっぽを向くと、先輩は素直に謝ってきた。
「ゴメンゴメン。ただ、かなみちゃんが元気な方がこっちとしては安心するしさ。もちろ
ん女の子なんだし、傷付いたり悩んだりする事もたくさんあるだろうけどさ。でも、個人
的な事を言えば、かなみちゃんはいつも明るくて元気でいてくれた方が、俺にとっても安
心するけど」
『べ、別に……先輩を安心させる為に、笑ったり怒ったりしてる訳じゃありません……』
先輩の言葉を拒絶するも、内心ではかなり嬉しかったりもする。好きな人からそうやっ
て自分の性格を気に入っているような事を言われれば、大抵の女の子は舞い上がってしま
うんじゃ無いだろうかと思う。
「……で、この先はどうしようか?」
『え?』
別府先輩の褒め言葉を反芻しつつ、嬉しさに負けないように必死で自分の感情を制御し
ていると、先輩が聞いて来た。
『この先って……どういう事ですか?』
逆質問をぶつけつつ、私は気付く。まだ長田先輩の問いに関する別府先輩の答えは、全
然完結していなかったのだと。
「いや。だって…… これじゃあまだ全然理由になってないしな。どうして俺の後を付け
てくる気になったか、その理由をちゃんと答えないと、菜々美に失格だって言われちゃう
し。それじゃあ意味無いだろ?」
『はあ。まあ……』
200 :
3/6:2013/12/29(日) 09:38:05.58 0
私は曖昧な表現で頷く。もしかしたら、これでも答えは答えなので悪い風評を学校中に
ばら撒かれる事態は避けられるかも知れないけど、別府先輩が酷い目に遭うのは間違いな
いだろう。
「だけど、俺の答えがもし合っていれば、それはもしかしてかなみちゃんが表に出したく
ない思いを探り当てる事になっちゃうかも知れないからさ。だから、断りを入れたんだ。
この先はどうしようかって」
私が躊躇したのは、ほんの一瞬でしかなかった。怖いとは思いつつも、もう後には引け
ないところまで来ているのを私は感じてしまっていた。
『どうぞ…… その……言っちゃって下さい……』
コクリ、と小さく頷く。その途端、また一段と心臓の鼓動が大きくなり、私はギュッと
体を緊張させてそれに耐えようとした。
「いいの? 本当に」
別府先輩が念を押す。それは先輩の優しさなんだろうけど、今は逆に時間を掛けられれ
ば掛けられるだけ却って辛くなる。だから私は視線を上げると先輩を睨み付けて怒鳴った。
『言っちゃって下さいって言ってるんだから、何度も聞き返さないで下さい!! 大体、
その……別府先輩に、わ……私の、その……繊細な気持ちが分かるとも限らないですし……』
自分で自分の気持ちを繊細だなんて、偉そうな事を言ってると思う。だけどこれが私の
最後の、精一杯の強がりだった。
「……それじゃあさ。答えるよ」
もう一度先輩が念を押したので、私は無言で小さく頷く。緊張して恥ずかしくて怖くて
逃げ出したいような気分なのに、足は地面に根を張ったようにピクリとも動かせなかった。
「えっとさ。最初はその……俺が逃げ出さないかとか、どっかでサボるんじゃないかとか、
そういう考えもあったんだけどさ。けど……菜々美に呼び出されたって知ってたら多分……
それは無いよな? 部の事だったら、アイツの事を一番に優先しなきゃならないし……」
『はい…… そんな答えだったら……その……0点です……』
201 :
4/6:2013/12/29(日) 09:38:37.37 0
私が、メールを盗み見たことをバラした為に先輩の答えにヒントを与えてしまった事に
気付いた。だけど不思議と後悔はない。もしかしたらその答え自体、先輩が遠慮をして、
逃げ道として用意していた答えだったのかも知れないし。
「だからさ。その……こっから先は、どっちかって言うと、答えって言うより俺の妄想を
言う事になっちゃんだけど、それでもいいかな?」
私はコクリと頷いた。
『もう……ここまで来たんですから、何だって聞きます。聞いた上でキモいって思ったら、
思いっきり罵りますから』
挑戦するように先輩を睨み付けると、別府先輩はクスリと笑った。今の私の言葉が、先
輩の勇気を後押ししたのかも知れないと思うと、少し嬉しかった。
「それじゃあ…… 俺が菜々美と会う事を知ってて……それで後を付けて来たって事は、
俺達がどうして別の場所で会うのか、気になったって事だろ? そこまでは合ってる?」
『はい…… 合ってます……』
「けれど、かなみちゃんはゴシップ的な興味で人の逢瀬を盗み見るような子じゃない。さっ
きメールを覗き見した事を謝ってた事からも、それは分かる。むしろ邪魔しないようにっ
て、遠慮するタイプだと思う」
『……わ、私は別に……ゴシップ的なうわさ話とか……そういうの嫌いですから。先輩達
の仲もしょっちゅう聞かれて……いい加減、辟易してますし』
別府先輩は、優しそうな視線で私を見つめて、頷いた。先輩が理解してくれている事に、
また嬉しさが募る。
「だよね。それなのに、後を付けて来た。しかも、菜々美の誘導は意地悪で目的地に簡単
には辿り着かないように複雑な謎解きのように、場所をにごして、あちこち俺を振り回し
たから、ちょっとでも遅れればすぐに着いて来れなくなったはずだ。だからかなみちゃん
は、躊躇なく俺の後を追いかけたって事になるよね?」
『……はい。間違い……ないです……』
途中で言葉を切っては、先輩は何度も私の答えを確かめる。別府先輩ももしかしたら、
自分の答えが不安でしょうがないのかもしれない。そう思うと、罵ったり出来なかった。
202 :
5/6:2013/12/29(日) 09:40:00.21 0
「そこまでして俺達の仲が気になったって事はその……さ…… 普段クラスも部も一緒で
家も近い俺達が何で呼び出してこっそり会うような真似をするのか、知りたくてしょうが
なかったんだよな? 好奇心はあるだろうけど、どっちかと言うと、不安的な意味でさ」
それには私は首を傾げる。間違った答えだとは思わないけれど、素直には頷けない。
『……どっちかといえば、いても立ってもいられなくて……だと思います。不安もその……
ありましたから、間違いではないですけど……』
今度は先輩がコクリと頷く。私の補足に、自分の推測が裏付けられたとばかりに。
「つまりそれって……俺達の仲が、かなみちゃん的にも重大な事だって事だよな? 単に
興味本位なんかじゃなくて、自分の人生の上で」
別府先輩の推測が、徐々に確信に迫ってくるのを感じ、胸がズキンと鳴った。少しずつ、
少しずつ、慎重に話を進めてくれているので、動揺して否定したりしないで済んでいるけ
ど、その時が来た時に私はちゃんと自分の気持ちに向き合えるのか、まだ不安だった。
『……人生でって言うほど……大げさな事かどうかは分かりませんけど…… 失礼なのを
承知で追いかけるほどには、重要だから……です……』
そこを認めてしまうと、もう答えは半分以上出してしまったようなものだ。だけど、こ
こまでの話の流れから言って、否定出来る要素なんて何処にも無かった。
「えーっと……て、ことはさ」
先輩も照れ臭いし緊張しているのだろうか。言葉が重い。なかなか気持ちが言葉になら
なくてもどかしいような、そんな風に見えた。
「それってやっぱり……特別な感情を持ってるって事で、いいのかな?」
また、間違ってはいない。だけど、まだ正解には到達していない。もどかしさが心を支
配する。私はギュッと唇を閉じた。ここまでは順序立てて話を進めてくれる先輩のおかげ
で心の準備が出来たけれど、事ここに至っては、苦しさを持続させるだけだ。耐え切れず、
私は口を開く。
『別府先輩……』
顔を上げて、睨むように上目遣いに先輩を見つめる。衝動に突き動かされるように、私
は言葉を吐き出した。
203 :
6/6:2013/12/29(日) 09:40:35.57 0
『もう……いいですから……遠回しな表現はやめて下さい。先輩のキモい願望でも何でも
いいですから、とっとと先輩の思ってる事を、ハッキリと口にして下さい!! もう……
いい加減、ダメです……』
何がダメなのか、自分でもよく分からなかった。一つ分かっているのは、この状態にも
う耐えられなくなっているという事だけだ。
「分かったよ。俺も、やっぱりその……口に出すのが怖かったからさ。もし軽蔑されたらっ
て思ったりもして…… だけどまあ、ここまで来たんだし、覚悟を決めて言うからさ。と
りあえず、大人しく聞いていてくれるか?」
私はコクリ、と無言で頷く。すると先輩は顔を逸らし、ちょっと照れ臭そうに微笑を浮
かべて冗談っぽく言う。
「全部聞いてから、外れてたら思いっきり罵ってくれていいからさ。それじゃあ……言うよ」
『はい』
もう何だか、自分がどんな状況なのかすら分からなかった。意識だけが飛び出て、先輩
と向かい合っているような、そんなフワフワした感じで、体の熱も心臓の鼓動も一切が感
じられなくなっていた。
「えーと……つまりさ。その……何でそんなに俺達の事が気になるかっていったら……そ
れは、その……もしかしたら、俺の事が好きだから……かなって、そう思ってみたりした
んだけど……」
続く
次回ラスト
GJ!つづきwktk
敬語ツンデレも可愛いけど遂にあのブログの妹が出てきちゃったw
ふおおおぉ!!
207 :
1/6:2013/12/30(月) 11:58:26.78 0
・男が幼馴染の女の子と逢引しているのをツンデレが覗き見したら 〜その7〜
遠慮がちな言葉が、却って別府先輩の気持ちを物語っていた。先輩がその答えが真実で
合って欲しいと期待している事が。しかし同時に、ほんのちょっとだけ、私の心にその期
待は単に、先輩がモテ願望を満たしたいだけなのではないかという疑いを持ってしまった。
だけど、すぐに思い直す。自信なさげな先輩の様子を見れば、そんな自尊心など、持って
いようはずもないと。
『う…………』
何か答えようと口を動かすが、それは言葉にならなかった。今ここで先輩の言葉を認め
てしまえば、晴れてお付き合い出来るかも知れないというのに、まだ私の素直になれない
へそ曲がった性格が、先輩の言葉を肯定させまいと邪魔していた。
「いや、その…… 外れてるなら外れだって言ってくれていいよ。こんなの、あくまで状
況から推測した俺の願望に過ぎないんだし…… それに、ここまで言って外れたとしても、
菜々美なら大笑いして済ますだろうから」
そんな事はないと、私は思う。確かに最初は笑ってからかうだろうけれど、もし先輩が
本気で振られたとすれば、長田先輩は真面目になって、別府先輩の事を勇気付けるだろう。
多分そんな事、別府先輩も百で承知なのだろうけれど。
「で、どうなのかな? その……あまり多くは話したくないかも知れないけどさ。正解か
どうかだけ教えてくれれば、それだけで十分だから」
とうとう、答えを出さなくちゃいけない時が来た。どうすれば、どういえば私は素直に
自分の気持ちを吐き出せるのか。しばらく私は俯いたままで、必死で自分の心と格闘した。
その間、別府先輩はこれ以上急かそうともせず、無言でジッと待っていてくれた。長い時
間を掛け、ようやく私はコクリと先輩の言葉に頷く。そして、少し間を置いてから顔を上
げ、ゆっくりと答えを、その口から吐き出した。
『……そんな訳……ないじゃないですか……』
その途端、別府先輩の体から、生気が抜けたように見えた。
208 :
2/6:2013/12/30(月) 11:59:17.94 0
「まあ……そっか。そんなもんか……いや、ゴメン。何ていうか状況が余りにこう……そ
んな感じなように思えたけど、やっぱりそんな都合良い事なんて……」
何とか冗談っぽく言おうとして、先輩は無理して笑顔を作っていた。私はその言葉を遮
ろうと、先輩の前に手を広げて翳した。
『待って下さい』
私が制止すると、先輩はちょっと驚いたように私を見たが、それ以上言葉を発しようと
はしなかった。私は、気を取り直そうともう一度最初から言い直す。
『そんな訳、ないじゃないですか…… いい加減でだらしがなくて、集中力が無くて勉強
も仕事もすぐサボって、冗談ばかり言って人のことからかって、私のこと怒らせてばかり
で、そんな短気な私に何くれとなく声掛けて来て、頼みもしないのに困った事があるのを
見抜いてあれこれとおせっかい焼いて来て、私が怒って先輩という立場の人に対して暴言
とも言える言葉を吐いても笑って受け止めてくれて、別府先輩が傍にいるといつも空気が
和んで、怒るような事されているはずなのに不思議と心が暖かくって……優しくて、親切
で、明るくて、時々カッコ良くって…………そんな先輩の出した答えを外れだなんて……
そんな訳、無いじゃないですか……』
これが、素直じゃない私が考え抜いて出した先輩の答えに対する返事だった。最初の言
葉は、外れなら外れでもいい、というその言葉に掛けたのだ。もちろん、先輩が誤解する
のを承知の上で。こうでもしないとちゃんと自分の気持ちを伝えられない自分に呆れる思
いだったが、最初に暴言を吐けば耐えられなくなって本当の気持ちを言えるようになる。
そのやり方は上手く言ったと言えるだろう。
『別府先輩…… こんな私ですみませんっ!! 生意気だし可愛げもないし、口は悪いし、
長田先輩に比べると女性としての魅力でも全然勝てないけど…… でも、思うだけなら自
由ですもんね。本当はこんな事……伝えたくなかったんですけど、でも私のせいで先輩が
悪評に晒される訳には行かないですから……』
私は必死になって訴える。この期に及んでなお、別府先輩の傍にはずっと女性として遥
かに高い位置にいる人がいた事を思うと、自分の不釣り合わなさが身に沁みてしまう。し
かし、そんな空気をぶち壊すかのように、先輩がヒョコッと手を挙げた。
209 :
3/6:2013/12/30(月) 12:00:16.08 0
「一つ……質問、いいか?」
『はい?』
その呑気な声が私の必死な気持ちを拍子抜けさせる。一瞬怒鳴りつけようかとも思った
が、謝った直後にそれじゃ意味が無いので、私は大人しく先輩に話を譲った。
『あの……どうぞ……』
「いや。そのさ。俺が菜々美に告白して、それを菜々美が一蹴した時……まああれは練習
前のデモみたいなもんだけど……何でかなみちゃん、何でですかって叫んで出て来た訳?
もしあれがガチだったとしたらさ。むしろかなみちゃんにチャンスが回ってくる訳で、本
当はホッとするところだったんじゃないのかなって」
『それは……』
あの時の事は思い返すも恥ずかしいし、咄嗟の行動だから考えがあっての事じゃない。
だけど、自分の事だから勘違いも含めて良く分かっていた。
『だって、別府先輩が真剣に長田先輩に告白したと思っていたから…… だから、嫌でし
たけど、でも長田先輩が断わるなんてあり得ないって思って……普段、あんなに意気投合
してるのに…… それが先輩の思いを無視するかのように無下に断わるのを見たら、その……
カーッとなっちゃって、それで……』
すると別府先輩は、私の頭にポン、と手を乗せた。
「ホント、優しいよな。かなみちゃんって」
そっと頭を撫でられる。いつもはくすぐったいような嬉しさに耐え切れずに拒んでしま
うけれど、今は大人しくされるがままジッとしていた。
「そこまで必死になって、俺の事を気に掛けてくれてさ。普段だって、口では文句ばかり
言ってるけど、何くれとなく俺の世話焼いてくれるし、部活でも分からない事は真っ先に
俺に聞いて、頼ってくれて……そんな子に、俺の事を好きだったなんて言われたら、嬉し
くてたまらないよ」
『せ……先輩っ!!』
感情を抑えることが出来ず、私は別府先輩に抱きついた。腕を背に回し、顔をギュッと
押し付ける。すると先輩も優しく私の体に腕を回してくれた。
210 :
4/6:2013/12/30(月) 12:00:53.47 0
『こんな私なのに、そこまで言ってくれて……ありがとうございます。ホントに……本当
にいいんですか? こんな私で……』
「ああ。俺もかなみちゃんが好きだよ。付き合ってくれるって言うなら……嬉しいと思う……」
『はい…… お願いします……』
こうなると、好きという気持ちが溢れて仕方が無かった。私は埋めていた顔を上げて先
輩を見上げる。
『先輩……』
すぐ間近に先輩の顔がある。私はキスを求めてあごを僅かに突き出し、目を閉じる。痛
いほど心臓がドキドキしたがそれもつかの間。私の唇に柔らかくて、熱いものが触れて、
強く押し付けられた。その瞬間、唇から熱が一気に広がり私の体を溶かしていったのだっ
た。
ファーストキスにしては情熱的な口づけをしばらく交わし、やがて唇を離してからも私
達は体を離さなかった。
「もしかしたら……仕組まれてたかな……?」
『え?』
先輩の言葉を不思議に思い、見上げると先輩は考え深げな顔をしていた。
「いや。菜々美の奴…… 最初からかなみちゃんが後を付けてくるだろうって見越して……
人の気持ちを読むことに関しては俺なんかより遥かに敏感だし、意地は悪いけど気は良く
回るからな。覚悟しろよ、かなみちゃん。俺の彼女になるって事は、もう可愛い後輩じゃ
なくて、いじられ対象だって事だからな」
『うわ…… 止めて下さいよそんなの。私の分まで、ちゃんと先輩が受け止めてくれない
と。むしろ私も先輩をイジる側に回りますから。あああああ……でも長田先輩がこっちに
ターゲットを向けてきたら敵わないし……』
頭を抱えてから、別府先輩と顔を見合わせる。そしたら何かおかしくなって私達は同時
に笑ってしまった。
「アイツも含めて、これから宜しくな。かなみ」
211 :
5/6:2013/12/30(月) 12:01:46.94 0
いきなり呼び捨てで呼ばれてドキリとしたが、全然嫌な気持ちじゃなくて、嬉しくてしょ
うがなかった。だから頷くと私もお返しにこう呼んだ。
『私の方こそ……宜しくお願いします。タカシさん』
すると先輩は照れ臭そうな顔をして視線を外すと、私の体を解放した。
「そろそろ学校戻るか。荷物とか置きっ放しだしな。鍵締められたらどうしようもないし」
『そう……ですね。先輩。学校とかでくっ付くの無しですよ。甘えるのは、その……二人
きりの時だけですからね』
一応念を押すと、先輩は苦笑して髪をクシャッとかき混ぜた。
「分かってるよ。かなみの性格は。学校では今までどおり。ダメな先輩と生意気な後輩の
ままで、だろ?」
それに私は何だか申し訳無い気持ちになりつつも、コクリと頷いた。
『すみません。こんな後輩で…… でも、その分二人きりの時は……たくさん甘えますか
ら。先輩が嫌がっても』
「嫌がるなんて無いさ。可愛い彼女が求めるなら、なおさらだよ」
そう言われると、またくっ付きたくなって、私は先輩の腕に縋り付いた。
『もうちょっとだけ。学校の近くまでは、こうさせてください』
「いいよ。かなみちゃんの……かなみの自由で」
『はい…… 先輩が言うんですから、遠慮なく……自由にさせて貰います』
今だけじゃない。これからもずっと、大好きな先輩とこうしていられる。多分これから
もずっと、別府先輩に文句を言い続けるんだろうけれど、それもこれからは恋人同士の馴
れ合いになる。そんな事を考えて私は幸せに満ちた気分で、先輩と寄り添って学校へと戻っ
て行ったのだった。
212 :
6/6:2013/12/30(月) 12:03:05.31 0
一方その頃の部室では、長田先輩が一人、ぶつくさと文句を言っていた。
『ハァー…… いいわね、タカシは…… とうとう彼女持ちか。まさかあの展開であそこ
まで言って、告白まで漕ぎ付かないって、タカシだけじゃなくてかなみちゃんもよっぽど
のヘタレじゃない限りないだろうし…… でないとこっちもお膳立てした意味無くなっちゃ
うし…… でもやっぱり羨ましいわ。あんな可愛らしい後輩の彼女なんてタカシの器量じゃ
なかなか出来ないのに、しかも向こうから惚れてくれるなんて。早く私にも良い男が見つ
かればいいのに……不公平よ。こうなったら、戻って来たらいっぱい苛めてウサ晴らしし
てあげるんだから』
部室に恐怖が待ち構えている事を、私達はまだ知る由もなかった。
以上で終わりです。
いつもいつも長々とお付き合いありがとうございます。
ふぃぃぃ!!gj!!!
で、いちゃラブ編はまだですか!?
214 :
1/3:2013/12/30(月) 22:06:50.76 0
【ツンデレとみかんを食べたら】
寒い。もう何もしたくない。こうしてコタツに入っていたい。永遠に。
「そう。永久に俺はここにいるのだ……」ブツブツ
「うるさい。さっきから何ブツブツ言ってるのよ。あと夏もコタツ入ってたら熱中症で死ぬわよ」
人がいい感じに超(すーぱー)☆コタツ引きこもり宣言をしていると、そのコタツの持ち主が冷たい声で俺を現実に引き戻す。
「だが冷たいのは声だけで、足は割合温かい。何故ならコタツに足を突っ込んでいるから」サワサワ
「あっこら、触るな馬鹿!」
「触ってません! 言いがかりだ! これが痴漢冤罪か! 皆さん、これが冤罪です、よく見ててください!」サワサワ
「だから、触ってるでしょ! せめて冤罪って言ってる最中は触るのやめなさい馬鹿!」ゲシッ
「あうちっ」
蹴られたので足を触るのを中止。ちなみに足で足を触ってました。
「だけど本当は手でしっかりと触りたかった。ふとももとか。勇気が出ない俺をどうか許してくれ」
「うるさい、変態。はぁ、なんで暇だからってこんなの呼んじゃったかなー……」
ウンザリした顔で、コタツの主であるところのかなみが卓上に手を伸ばした。なんとなく、みかんの入った器をかなみから遠ざける。
「…………」
「…………」
かなみの顔がゆっくりこちらを向く。視線が絡み合い、火花が散る。戦の合図だ。
「ちょっと。それこっちによこしなさいよ」
「分かった。では、輸送費としてみかんを5個いただきます」
「それじゃ全部なくなっちゃうじゃない! いいからよこせ、馬鹿!」
「みかん亡者ですね。痛っ、痛いっ!? すいません全部献上しますから!」
コタツの中でいっぱい蹴られたので全面降伏、器ごとみかんを差し出す。
「最初からそうしろ、馬鹿」
かなみはみかんの皮をむくと、実を口に入れた。
「ん〜♪ やっぱみかんはおいしいわね♪」
215 :
2/3:2013/12/30(月) 22:07:22.70 0
「俺も食っていい?」
「ダメ」
「丸ごと口に入れて実だけ器用にプププと吐き出し、かなみの口に直接入れる奇芸を見せるから」
「キモいっ! 妖怪かっ! ああもう、分かったわよ。アンタのバカ話も食べてる間は聞かなくて済むし」
「やったね」
手渡されたみかんをむく。かなみは白い筋も全部取ってるが、俺はそんなの気にせずそのままひょいぱく。おいしい。
「わ、筋取らないで食べた」
「んー、別に気にならないし、食物繊維が豊富と聞くし」
「んー……じゃさ、これだけ食べられる?」
そう言って、かなみは自分のみかんから取った筋を手に取り、俺に渡した。
「…………。まあ、食えなくはないが、決して楽しいものではないな」モグモグ
「わ、ホントに食べた! 変な奴〜!」
「失敬な。別に好んで食べているわけではないぞ?」
と認識を正しているのに、かなみの奴は既に次の白い筋を取りにかかっている。
「ほらほら、おかわりよ?」
「聞け。俺の話を聞け」
「ほら、あーん?」
「ちくしょう」
可愛い女の子にあーんと言われると、口を開けてしまう。悲しい男の習性を知り尽くしたかなみの策にしてやられ、再び食物繊維を摂取する羽目に。
「あははっ、また食べた」
「もういいからな。いらないからな。おいしいものじゃないからな」
「分かってるって」ムキムキ
「いいや、分かってないね! 何故なら既に次の白い筋を取りにかかっているから!」
「気のせいよ。……よし、むけた。はい、あーん?」
「ちくしょう。ちくしょう」
また食べさせられる。おいしくない。甘みがほしい。
216 :
3/3:2013/12/30(月) 22:07:54.24 0
「むぐむぐ……。ちっとも楽しくないのに口を開けてしまうのは俺が馬鹿だからか」
「そうよ、ばーかばーか。あははっ」
ケラケラ笑って、かなみは顔をコタツの天板に頭を乗せた。頬が重みでむにょりとゆがむ。かわいい。
「はぁ。あー……うー。あーもう、本当にコイツといると……」
「うん?」
「なんでもなーいっ。このこのー」ゲシゲシ
「痛い痛い」
コタツの中で軽く足を蹴られた。文句のひとつでも言ってやろうと思ったが、ケラケラと楽しそうに笑ってるのでまあいいや。
それに、今はかなみのツインテールで遊ぶほうが先決だ。かなみの髪を一房軽く掴み、毛先を軽く触る。
「うー。何すんのよー」
「体毛を触ってます」
「たいもーとか言うな、ばか」
「む、そりゃそうだ。頭毛を触ってます」
「あたまげ……」
嫌そうな顔をされた。
「かなみのあたまげは綺麗だな」
「褒められてるけどちっとも嬉しくない……」ムーッ
「女性はあたまげを褒められると喜ばれると聞きましたが」
「馬鹿には無理な芸当よ」
「なんと。なら仕方ない、諦めよう」ナデナデ
「うー。勝手に人の頭をなでるなー」
「嫌なら自爆して俺もろとも死ぬのだな」ナデナデ
「無茶言うなーこのーやめろーばかー」ニコニコ
「わはは」ナデナデ
俺にされるがままなのにニコニコしてるかなみは可愛いなあ、とか思いながらしばらくなでてました。
かなみさんかわいい。マジ天使。さすが俺の嫁
いや俺の嫁だけどな
可愛いのは認めるけど
俺同士で争うなよ俺たち
220 :
ほんわか名無しさん:2013/12/31(火) 03:16:56.66 0
ったくいつ俺が書き込んだんだよ
なんか懐かしい流れだな、俺!と思う吉宗であった。
お、規制解けてる
みんなかわいいよみんな
山田と年越ししたい
お題
つ・ツンデレとお別れしたら
これから実家帰るんだ
ちなみんあけおめ
友ちゃん、あけましておめでとう。今年もよろしくね!
・新年になり素直になろうと一念発起するツンデレ
・男から初詣に誘われるツンデレ
・そう簡単には変われず断ってしまうツンデレ
・自己嫌悪に陥るツンデレ
・友ちゃんから誘われ(誘導され)初詣にいくツンデレ
・待ち合わせ場所には山田と男もいました
・中略
・姫始めなツンデレ
お前ら明けましておめでとう。
228 :
【大吉】 :2014/01/01(水) 01:51:02.42 0
あけおめ。おみくじ神or女神ならツンデレさんと今年一年イチャイチャできる。
豚ならツンデレさんの奴隷になる。
あけおめ
いつの間にか規制解けてた
230 :
【大吉】 【372円】 :2014/01/01(水) 11:50:00.99 0
ちなみんとゴロゴロ
231 :
【大吉】 :2014/01/01(水) 14:28:56.78 0
お題
つ・おみくじで大吉を引いたツンデレ
・おみくじで凶を引いたツンデレ
・正月なのでツンデレとダラダラしたら
ツンデレさん達もツンデレ好きなお前らも明けましておめでとう
232 :
ほんわか名無しさん:2014/01/01(水) 14:44:34.57 0
TES
.
男「かなみー、遊びにきたぞー。かなみー!」
男「……おらんのか?勝手に上がっちゃいますよー。いいですかー?」
男「返事がないってことはおkってことだな。おじゃまんこー」ズカズカ
女「ふっ……ふぅっ……!!」ギシッ、ギシッ
男「……」
男(この年の瀬に汗だくで筋トレしてる……だと!?)
.
.
男(えぇー何この状況……恋人がマッチョマッチョしてるとことか見たくなかった)
男(しかもあのものぐさなかなみがめっちゃ頑張ってる……帰宅部のクセに!)
男(漂う汗のフレーバー……そしてほぼ下着同然な姿で喘ぐかなみ……)
男(……エロいな。もう少し観察してみるか)
女「あー疲れたぁっ!!」ドカッ
●=● ゴロン…
男(あの鉄アレイ……10kって書いてある)
男(こいつ、『箸より重たい物は持ったことがない』とか言ってたのに)
男(お前の使ってる箸何キロだよ!!)
男(下手すりゃ俺より筋力あんじゃねーか!!)
.
女「ふぅー……」ツカツカ
っ白 パクッ
女「……んっ、んくっ」ゴクゴク
男(あれは……牛乳?)
男(かなみ、牛乳嫌いだったはずじゃなかったっけ?)
男(……)
男(汗まみれで白濁液を飲み下すかなみ……)ゴキュリ
男(いかん、おっきしてきた)
女「あとワンセットか……けっこうキツいな……」
男(まだやる気ですか!?)
男(いかん!理由は知らんけどかなみは完全に女を捨てる気だ!)
男(男としてこれは止めねば!!)
男「かなみーーーーー!!それ以上はいかーーーーーん!!」ガチャドンッ
女「タカシ!?」ビクッ
.
.
男「かなみ、はやまったらいかんぞ!思いとどまるなら今のうちだ!」
女「ちょっ……タカシ、あんたなんでここにいるのよ!?」
男「いくらガサツで男みたいな性格してるからって、本当の男を目指してどうするんだよ!! 目を覚ませ!!」
女「はぁ?何言ってるか意味分かんないんだけど!?」
男「だからっ、無理な筋トレでただでさえ女らしさの欠片もない体を男に近づけるなと……」
女「……」
男「……お?」
女「せいっ」ボグッ
男「ぶべはっ……!!」カハッ
女「誰が男みたいだって?」
男「さーせんっした……」
.
.
女「いきなし人の部屋に乱入してきたと思ったら何!? 私のことバカにしてんの!?」
男「すまんこ。悪気はなかった」
女「あんたが普段私をどう見てるのか、よーく分かったわ」
男「これでもかなみの行く末を心配してたんだよ……」
女「余計なお世話よ!!」
男「……ところで、なんでこのクソ寒い季節に筋トレなんか?」
女「う……」ドキッ
男「あ、もしかしてダイエットか?冬場こもりがちになって贅肉が気になるお年頃?」
女「ま、まぁそんなとこかしらね……」
男「でもかなみ、全然太ってないぞ。むしろもう少しお肉つけた方がいいくらいだ」
女「うっさいわねぇ!あんたに関係ないでしょ!」
男「……?」
.
.
女「いいからもう帰ってよ!あんたなんか大っ嫌い!」
男「えぇっ!?筋トレの現場に居合わせただけでなんで!?」
女「黙れバカ!死ね!死んじゃえ!」
友「かなみーっ、私特性豊胸トレーニングの成果はどうー?」ガチャッ
女「あ」
男「え?」
友「……あらま」
友「お邪魔しましたー。おほほほほ……」スタタッ
女「……」
男「……」
.
.
女「……」プルプル
男「……あの、かなみ?」
女「……タカシ」
男「な、なんだ?」
女「あなた今、何か聞いたかしら?」
男「……何かと言いますと?」
女「『ほ』で始まって『グ』で終わる言葉……聞いてないわよね?」
男「聞いてないっす! 全然思い当たる節もございません!」
女「そう……良かったわね。もしあなたが今の言葉を記憶してたら、首から上がなくなってたところよ?」
男「ひいぃ……」ブルブル
女「人に喋ったら殺す。口にするだけでも殺す。思い出してニヤニヤしてたらぶっ殺す。いい?」
男「は、はい!!」
.
.
男「というかお前、豊胸なんかしたかったのか?」
女「だから言うなつってんでしょうがぶち殺すぞ!!」
男「ごめん……でも、今までそんなこと気にする素振りすらなかっただろ」
女「お、女の子にはいろいろあるのよ……悪い!?」
男「……」
男「俺はかなみくらいのおっぱいが一番好きだぞ?」
女「……!!」ビクーンッ
男「もしそれ以外に理由があるならすまん。けど、俺が巨乳好きだと思ってるなら間違ってるからな?」
女「だ……誰があんたなんかのために……」ゴニョゴニョ
男(あ、図星だコレ)
.
.
男「あのですね、かなみさん」
女「……なによ」
男「おっぱいが無くても、かなみさんは女の子らしくてちゃんと可愛いと思いますよ?」
女「さっきガサツで男みたいって言ってたのはどこの誰よ!!」
男「ガサツだけど誰よりも努力家で、男勝りだけど本当は優しい。そういうとこ好きになっちゃダメか?」
女「!!」ドキッ
男「だからもう無理な筋トレは止めとけ。汗かいて寒かろ?」
女「うぅー……だって、だって……」
男「だって、何?」
女「クリスマスプレゼントのつもりだったんだもん……」
男「……はぁ?」
女「私、おっぱい小さいから、少しでも大きくなったらタカシ喜ぶかなって……」
男「何その超理論」
.
.
男「どこぞのおっぱい星人じゃないんだから、乳の大小でかなみを好きになったりするかい」
「それはそうかもだけど……友ちゃんは実際ちょっと大きくなってたみたいだし……」
男「それ多分胸筋が発達しただけ」
女「わ、私だって少しは魅力的な女になりたいんだから!!文句あるの!?」
男「……」
男「かなみ」
女「何よ!!」
チュッ
.
.
女「ぎゃあぁぁっ!?あんた何してくれてんのよぉっ!?」
男「いや……なんかアホほど可愛かったから、つい……」
女「バッカじゃないの!!バッッッカじゃないのあんた!!」
男「ええ、バカですwwwwバカの相手はバカにしか勤まりませぬ、殿wwww」
女「わ、私はバカじゃないし……」
男「必死こいて無意味な努力してたのはわりとバカじゃね?」
女「あ゙?」ピキッ
男「まぁそういうおバカなとこも好きなとこだったりする訳ですが?」ニヤニヤ
女「……ッッ!!」
男「はっはっー!」
.
女「……わ、私も」
男「お?」
女「私もあんたのこと……き、だし……」
男「何ごちゃごちゃ言ってんだ?聞こえねーよ?」
女「だからぁっ!!……私もあんたのこと、好きだって言ってんじゃない!!」
男「……」
男「聞こえませんなぁ」
女「……好き」
男「もう一回」
女「……好きよ」
男「泣きの一回オネシャス」
女「……私は、タカシが大好きです」
男「……!!」プツンッ
男「うおおおおおおおおおおおおおおおかなみーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」ガバァッ!
女「キャッ……!!」
.
<カナミノチッパイペロペロオオオオオオオオ!!!!!
<ヤダ、ヤメテヨタカシ…アアンッ!!
<イヤヨイヤヨモスキノウチイイイイイイイイイイイ!!!!!
<アアッ、タカシ…ダイスキ!!モットシテェッ!!
隣人「……」
隣人「練炭っていくらくらいしたっけなァ……」
《おしまい。》
お題
つ・ツンデレに正月番組ってつまんねーよなって言ったら
規制解除されてたのか
みこちんといちゃついてて気付かなかったぜ!
ここに次元連結システムがあるじゃろ?
( ^ω^)
⊃ ○ ⊂
これを
( ^ω^)
⊃ ○ ⊂
こうじゃっ!
( ^ω^)
三⊃天⊂三
◎
◎ ◎ ティウンティウン
◎
◎ ◎ ◎ ◎
◎
◎ ◎
◎
ごめん誤爆
お題
・次元連結システムにより別次元からこっちの世界に飛ばされてしまったツンデレ
・ツンデレにティウンティウンって言わせたら
お題
つ・ツンデレにただいまって言ったら
去年の秋に書いたまま未投下のネタ行きます
253 :
1/6:2014/01/04(土) 13:40:45.40 0
・ツンデレと植物園に秋の草花を見に行ったら
『……天気……いいよね』
「ん? ああ、そうだな。ここんとこずっと雨続きだったから、ちょっとホッとするよな」
『……連休だし……行楽とか……もってこいの日……だよね……』
「ああ。さっきネットのトップで見たけど、高速道路とかめちゃくちゃ渋滞らしいじゃん。
何でも30キロとかさ。よく出掛ける気になるよな」
『……むしろ……こんな天気の日に……部屋でネトゲやってる兄貴の方が……理解出来な
いけど……』
「そうか? インしてる奴、結構いっぱいいるぜ。わざわざ混んでるところに行って疲れ
るだけより、家でゆっくりとネトゲしてる方が休みの使い方としてはよっぽど有効的だと
は思うけどな」
『……この……引きこもり…… だから……兄貴は……ダメ人間なんだ…… たまには……
太陽の光くらいは……外で浴びた方がいいと思う……』
「そんで、何の用だ? 俺の部屋に入ってくるなり天気の話題とか振ってさ。もしかして
アレか? 引きこもってばかりいて変な病気に罹ったりしたら家族中が迷惑するから、仕
方ないから私がデートに誘ってあげるんだからね、とかそういう展開か?」
『……キモい……どんな理由があろうとも……兄貴とデートとか……ありえないし……
マンガとかラノベの読み過ぎ……死んでしまえ……』
「違うのかよ。じゃ、何だ? 部屋の掃除しろとかそんなのなら今日は勘弁してくれ。ま
だ連休初日だしさ。疲労回復に当てたいんだよ」
『……違う。それなら……まだデートの方が……若干近い……』
「はん? どういう意味だ?」
『……これ……見て……』
「何だよ。スマホの画面なんか見せて。なになに? 美府自然公園で秋の草花イベント開
催中? 色とりどりの美しい野草の花を楽しむことが出来ますって……これがどうかしたのか?」
『……うん……だから……行ってみたいなって……思って……』
「誰か友達とか誘って行けば良かったろ? 時々うちに呼んでる子達とかさ」
254 :
2/6:2014/01/04(土) 13:41:16.48 0
『……連休だと……みんな……予定入ってるし…… それに……友子とかは……花の観賞
とか……興味ないから……』
「なるほどな。それでぼっちだから俺を誘ったわけだ。一人だと行っても寂しいし、仕方
ないからお兄ちゃん付き合ってって事だろ?」
『……またキモい妄想を…… 別に……兄貴となんか行かなくても……一人でだって十分
楽しめるし……むしろ……邪魔かも……』
「だったら別に俺に声掛けなくなって、一人で出掛けてくればいいだろ? わざわざ嫌味
言うために声掛けたのか?」
『……そんな事に……無駄な時間を掛けたりしない…… これを……見て』
「何? アクセスマップか?」
『うん。ここって……駅から遠いし……バスは出てるけど……昼間とか二時間に一本だし……
一人で行くには……ちょっと不便…… お金も掛かるし……』
「なるほど。しかもこれ見ると結構遠回りだしな。で、何が言いたいわけ?」
『……どうせ……暇してるなら……車出してよ……』
「ま、そんな事だろうとは思ったけどな。ただ、人に物を頼むのにどうせ暇ならとか、そ
ういう言い草はなくね?」
『じ……事実を言ってるだけなのに……何で……非難されるようなこと……言われなくちゃ
ならないの……?』
「いやいやいや。非難してる訳じゃなくてさ。ただ、お願いする側の立場としては、相手
をその気にさせるような頼み方しないと、動いてくれないと思うぜ」
『まさか……見返りを要求するとか……最低だ……』
「そこまでは言わないさ。確かに暇っちゃ暇だしな。ただ、気分が乗らないと出掛ける気
にはならないし、ちなみの言葉一つでその気にさせられる事が出来るなら、行ってもいい
かなって思ってるだけだよ」
『……妹に……萌えおねだりを要求するとか……兄貴の頭は腐り切ってる……死んでしま
えばいいのに……』
「別に言い方までは要求してないだろ? 俺をその気にさせる頼み方だったら、何だっていいよ」
255 :
3/6:2014/01/04(土) 13:41:48.01 0
『ううう……いっそ……エッチな本の隠し場所でも握っておければ……脅迫の材料に使え
たのに……デジタル時代のバカ……』
「残念だったな。いや、マジでエロに関してだけはいい時代になったとしか言いようがな
いな。隠し場所に四苦八苦しなくても、パソコンやタブレットの起動をパスワードでしっ
かり管理しておけばいいだけだし」
『……いつか暴いて……兄貴の変態っぷりを……衆目に晒してあげるから……』
「負け惜しみもそこまでにしろ。で、どうするんだ? 膝を屈して頼むか? それとも、
諦めて一人で出掛けるか?」
『その……ドヤ顔が……ものすごくムカつく…… い……今更諦めるくらいなら……最初
から頼んだりしないから……』
「ふうん。じゃあ、頑張ってお願いしてみるんだな。ま、連休初日でゴロゴロモードの俺
の心を動かせたら、だけど」
『そのくらい……簡単だから…… 今からお願いするから……ちゃんと聞いててよ……』
「はいはい。それじゃ、どうぞ」
『う……えっと……お……お兄ちゃん? 私……どうしても……お兄ちゃんの車で……植
物園に行きたいの…… だからお願い……連れて行って? お兄ちゃん……』
「…………」
『あの……お兄ちゃん?』
「ぐはっ!!」
『キャッ!? ど……どうしたの……ビックリするような真似は……止めて欲しいんだけど……』
「いや、まいった。まさかちなみがここまで全力モードで来るとは…… 何とか抵抗しよ
うと頑張ったが、お兄ちゃん攻撃には降参だ」
『死ぬほど……恥ずかしかった…… これでもし……兄貴が行かないなんて言い出したら
……絞め落として……記憶を欠落させるところだった……』
「止めてくれ。素人の首絞めなんて下手したら死んじまうぞ」
『それはそれで……好都合……過失致死だし……未成年だから罪に問われないし……』
「止めてくれ。お前、表情が乏しいからガチに聞こえるんだよ」
『安心して……ドライバーとしては……貴重だから……需要がなくなるまでは……生かし
といてあげる……』
256 :
4/6:2014/01/04(土) 13:42:19.13 0
「俺の生殺与奪が全てちなみに奪われてると思うとぞっとしないな。勘弁してくれよ。寝
込みを襲うとか」
『まあ……向こう一年くらいは……ないと思うから……安心して。着替えてくるから……
兄貴もさっさと……出掛ける準備……しといてね……』
「やれやれ。今日は一日ゆっくりしたかったんだけどなあ。まあ、いいか。ちなみとの兄
妹デートも久しぶりだしな。さっきみたいなしおらしくて可愛らしい所をもう少し見せて
くれれば、こっちも気が乗るんだけどなあ……」
「へえ。見事に咲き誇ってるものだな」
『何を……感心したように言っている…… 分かりもしないくせに……』
「確かに花の名前は分からないけど、これだけ色とりどりの花が咲いていれば、俺だって
愛でる気持ちくらい湧いてくるぜ」
『……嘘ばかり……妹の……風にはためくスカートの中ばかり……気にしてるくせに……』
「さすがにここでそれはないって。大体ちなみこそどうしたんだよ? やけに可愛らしく
めかし込んでさ。実は俺とのデートを楽しみにしてたとか?」
『……バカ言うな…… 別に兄貴とじゃなくたって……外に出掛けるならそれなりにオシャ
レくらいするし…… 兄貴みたいに……野暮ったい格好じゃなくて……』
「そか? 一応これでも俺なりに着こなしたつもりなんだけどな。まあ、ちなみの目に適
うとは思ってないけど、世間的に見て女の子と連れ立って歩くのに、相手を恥ずかしくさ
せないくらいの努力はしたと思うけどな」
『……それは認めてあげる…… そこまで酷かったら……5メートル以内に……近寄らせ
ないし……』
「だよな。だったらまあ、俺的には合格点って事でいいじゃん。な?」
『本当に兄貴は……オシャレに対して向上心がない…… だからモテないんだ……』
『(もっとも……本当にモテちゃったら……私が困るから……この程度の方がいいのかも
知れないけど……)』
257 :
5/6:2014/01/04(土) 13:42:55.85 0
「ま、俺の格好なんかいつまでも話しててもしょうがないだろ。ここには花を見に来たん
じゃないのか?」
『それは言えてる…… 確かに……兄貴の格好なんかで……目を腐らせてる場合じゃなかった……』
「ホント、ちなみってムキになると本来の目的すぐに忘れるんだから。それとも実は俺の
格好に見惚れてたとか?」
『バカ言わないで……兄貴なんて……このネナシカズラの100分の1の魅力すら……感じ
られないし……』
「うーん……これって、花なんか? 綺麗っていうより、ちょっと不気味な感じするけど。
食虫植物とか、こんな感じじゃね?」
『いいところ突いてる…… これは寄生植物っていって……他の植物に根を絡めて……養
分を吸収するの……だから、ほら。他の綺麗な花からは離れてるし……』
「こんなのも植えとくのか。珍しいっちゃ珍しいかもしれないけど、どっちかっつったら
不要じゃね?」
『秋の野草展だから…… それに、綺麗なのだけじゃ面白くないし……』
「ちなみらしい感想だな。可愛いけどとげとげしてるところは、この花とかちなみっぽく
ね?」
『とげとげするのは……兄貴がバカ過ぎるせいだから…… ついでに言えば、その花は
ノゲイトウって言うの…… 確かに先端は尖ってるけど……それで誰かを刺すわけじゃな
いし……』
「さすが、園芸部だけあって詳しいな。じゃあこのピンク色のふわふわした花は?」
『それは……ヨシノアザミ……葉っぱは尖ってて棘もあるから……こっちの方が痛いかも……』
「なるほど。触ると火傷する美人って事か。じゃあ、この釣鐘みたいな白い花を付けてるのは?」
『サイヨウシャジンっていう花で……花びらの先には細かい鋸歯があるから……』
「なんかどいつもこいつもギザギザみたいなの付いてなくね? 危なっかしくてうっかり
触れねーぞ」
『兄貴みたいな……触るだけで穢れるような生き物から身を守るためには……そういう進
化も必要だったと……』
258 :
6/6:2014/01/04(土) 13:43:52.50 0
「また俺の事を害獣扱いしやがって…… そういう生意気な妹にはこうだぞ」
ギュッ。
『……悪口にかこつけて……人の手を握るのは止めて……この変態……』
「お前が触れるだけで穢れるって言うからだろ? ほれ。嫌だったら振り払って逃げない
と、どんどん汚染されていくぞ」
『……私は……花よりは耐性があるから……帰ってからよく洗えば……大丈夫……』
「ちぇっ。まあ、ちなみが大騒ぎするとは思えないけど、もう少し嫌がるかと思ったのに」
『……思考が中学生過ぎて……困る。どっちにしても……そろそろ離して…… ベタベタ
して……熱いし……気持ち悪い……』
「分かったよ。ほれ。ちっちゃい頃はもう少し嫌がったものなのに、最近はつまんないよな」
『嫌がれば嫌がるだけ……兄貴の思う壺だし……それにいい加減……慣れた…… 兄貴の
方こそ……実は妹の手を握って愛でる変態なんじゃ……』
「バカ言うな。お前の手なんてガキの頃からもう何度も握ってるし、わざわざ愛でるほど
じゃねーだろ」
『……そうやって否定するところが……却って怪しいし…… ちっちゃくて……スベスベ
で……可愛らしいとか……思ってるんじゃないの……?』
「自分で言うか。むしろお前って、無理矢理俺の事を変態にしたがってるけどさ。そこま
でムキになるって事は、逆にお前の方が望んでるんじゃねーの? 俺に自分の手を愛でて
欲しいって」
『……冗談じゃない……誰が……兄貴になんて……妄想もいい加減に……してよね……』
「ほら。俺のことを怪しんどいて、今度は自分が一生懸命否定してるし。人の事言えないじゃん」
『……もういい……私は……他の花を見て回るから……付いて来ないで…… 兄貴と一緒
だと……せっかくの花が……穢されるから……』
「まあ、好きにしろよ。俺も適当に見て回ってるからさ。帰る時になったら携帯鳴らせば
いいしな」
『……分かった。じゃ……』
後編に続く
今日の深夜か明日昼頃に
259 :
1/2:2014/01/04(土) 14:34:11.05 0
クリスマスでさ
俺は例年通りツンデレに彼女になってもらったの
というのもこの時期なると異性と仲良くなって気持ちが浮つくからさ
心を律するためツンデレと恋人の予行演習しとくの
して身も引き締まる寒空で不純な行為が行われてないか見回りしてさ
人が集まってる所吸い寄せられるように近づいたらクリスマスツリーが光りだしたの
こんな催しあること知らなかったけど、とりあえずツンデレに、これを見せたかった、言っておきます
したらツンデレ俺に寄り添いもたれかかっててさ
正直そういうことするのやめてほしいよね、俺惚れっぽいんだから
すればツリーの照明落ちて人が散り始め、どうやら終わったみたいでさ
不良にとって夜はこれからなんだろうけど
俺ら未成年が深夜ふらつくのは風紀が乱れるから帰ろっかってなったの
ならツンデレは地面ばっか見て歩くスピードも落ちてさ
立ちっぱなしで疲れたなら余計に早く帰してあげないと、俺は慌てて家に送り届けたの、って話
260 :
2/2:2014/01/04(土) 14:35:59.54 0
クリスマスでさ
私は例年通りアイツから一日彼女に任命されたの
というのもこの時期なると私以外に女友達いないアイツ焦りだしてさ
皆の模範となるべくとか御託並べて、彼女になってくれ、って泣きついてくるの
して、俺彼女持ちだぞ、って見栄っ張りに付き合わされてこのクソ寒い中練り歩いてね
散々うろついて電気ついてないクリスマスツリーの前でアイツ立ち止まるの
それでね、もう私疲れたからアイツにもたれて休憩してたらツリーの下の方からブワーって電気ついてね
それに見惚れてたらアイツ、これを見せたかった、ってちょっと乱暴に肩抱いてきてね
正直そういうことするのやめてほしいよね、私惚れっぽいんだから
したらば電飾も人ごみも消えたころには私も女だからアイツ相手にドキドキしててさ
次のご予定はなんですか、ってぼんやりアイツの横顔伺ってみます
なら周りのカップルは夜から思い出を作るってのに、帰ろっか、言われてね
そんで少しでも長い時間いるために悪あがきで牛歩戦術とったんだけどさ
アイツ私の手をグイグイ引っ張ってさ、アカン、これアイツの虜になっちゃうパターンのヤツや、って話
はよ結婚しろや!
263 :
1/4:2014/01/05(日) 10:05:05.69 0
・ツンデレと植物園に秋の草花を見に行ったら 〜後編〜
『(いつだって……握るの、唐突なんだもん……お兄ちゃんは…… 心の準備が出来てれば……)』
ヒュウウッ!!
『キャッ!?』
『……もう……風さえなければ……良い天気なのにな…… ミニスカートだから……いち
いち気になっちゃうし……』
『(せっかく……お兄ちゃんとデートだから……おしゃれしたけど…… 結局……褒めて
貰えないし……バカみたいだったかも……)』
『……コスモス畑か……そういえば……コスモスの花言葉って……真心……だっけ……』
『(……お兄ちゃんに……素直な気持ちが伝えられたら……変わるのかな……私……)』
トボトボ…………ドンッ!!
「あいたっ!!」
『あ……すみませ……って……おに……何だ……バカ兄貴じゃない……通り道でボーっと
立ってると……邪魔なんだけど……』
「写真撮ってたんだよ。まあ、せっかく来たんだし、記念にさ。それに、俺から見ても結
構綺麗な花が多いからさ。お前こそ、ボーっとしてたからぶつかって来たんじゃないのか?」
『花を見てたから…… まあ、お互い様かも……』
「どうあっても俺に半分罪を被せたいのかよ。まあいいけどな。幸い、ぶつかったのが兄
妹だったから、揉め事に発展する事もないし」
『……それより……どんな花撮ってたの?』
「お? 興味あるのか。何なら見てみるか?」
『……まあ……腐っても花は花……だから……』
「その表現って、植物とか食い物に使うと比喩にならんよな。と……これとか、どうだ?」
『……へえ……』
『(お兄ちゃんから見ると……こういう風に見えてるのか……)』
「どうだ。結構綺麗に撮れてると思うけど」
264 :
2/4:2014/01/05(日) 10:05:43.20 0
『……オートフォーカスなのに……ピントがイマイチ……構図も悪いし……光の加減も最
悪……誇れるようなところなんて……ない……』
「お前、無理矢理難癖付けてないか? 写真とかそんな詳しく無いだろ」
『……素人目に見ても……下手くそ…… 他には……無いの?』
「待ってろ。それじゃこれなんかは……」
『……まどろっこしい……貸して……自分で操作するから……』
「へ……? い、いやその……失敗したのも結構あるからさ。デジカメだと適当に取りま
くれるし。だからその……何だったら後で厳選したのやるから……」
『……その焦り方……何か……隠し事がありそうに見える……』
「バ……バカ言うな。隠し事なんて、そんなもの無いに決まってるだろ」
『……じゃあ……拒む必要なんてないよね……? 早く……貸して……』
「ダメだって。大体ちなみじゃデジカメ使えないだろ。機械オンチで」
『失礼な……私だって……写真撮ったり……画像見る程度なら出来る……だから……早く
寄越せ……』
「無理矢理奪い取ろうとすんなって。ちょっと待ってろよ。せめてダメなの消すから」
『往生際……悪過ぎ……えいっ!!』
ギュムッ!!
「あいってててて!!!! 足割れる、割れる!!」
『……えい。奪取……成功……』
「お前な!! いくらカメラ貸してもらう為っていっても、足踏ん付ける事はないだ
ろ!! しかも踵で思いっきり!! 骨折するかと思ったぞ」
『……騒がないでよ……みっともない…… 周りの人に迷惑だし…… すぐ済むから……』
「いや。だからさっきのでダメ出しだったら他のはもっとダメだからって……あああ、画
像を再生させるなって」
『……どうせ……兄貴の写真だし……期待してないから…………ん……?』
「あっ……!!」
『……これは……何?』
「えっと……いや、だからその……何って言われても……」
265 :
3/4:2014/01/05(日) 10:06:14.33 0
『……これ……私……だよね? 何で……私が……写ってるの?』
「何でって……それはだな……えっと……お前を被写体に撮ったからだろ。見ての通り……」
『……妹を隠し撮りとか……キモい……最低だ……』
「か、隠し撮りってほどコソコソ撮ってねーよ。ただその……声掛けたら嫌がるだろうし
……そもそも、そうやって自然に花を愛でてる様子がさ。絵になるなって…… それに、
お前だったら身内だから犯罪にならないけど、他の子を被写体にしたらマズいだろ」
『……女の子なら……誰でも良かったの? 単に……私が身内だから……?』
「へ……? い、いや……誰でもって訳じゃ…… 花を熱心に見てるちなみがいいなって
思ったから……撮っただけで、他の子相手にそういう事したいって思ったことないし……」
『……そう……』
『(これが……お兄ちゃんから見た私なんだ…… 私の事を……花畑に似合うって……嬉
しいな……)』
「あの、だからさ。やましい気持ちで撮った訳じゃなくて、芸術的に見ても女性ってモデ
ルになること多いじゃん。つまりは純粋に写真の構図的にいいかなって思った訳で――」
『ゴチャゴチャ……うるさい……』
「いや、でも……誤解されて変態だって思われたらアレだからさ……」
『いい……もう……許す…… これでも……一応……記念にはなるし……でも……パソコ
ンに保存とかは……ダメだからね……このSDカードは……私が保管する……』
「分かったよ。でもその前に、整理だけはさせてくれよな。今日の写真だけじゃないから、
必要な物は俺のパソコンにデータ入れときたいから」
『その時は……私も立ち合うから…… 他にも……私を撮ったりした……?』
「ああ。まあ、ここそんなに広くないからさ。行き会うたびにいいショットが撮れそうだ
なって思った時は…… でも、とりあえず残りは帰ってから見ろよな。せっかく本物の花
が見れる機会なんだし」
『とりあえずは……一通りは見て回ったし……一応こっちも確認したいから……』
「いや。だから帰って整理が終わってからにしろって。失敗したのもあるからさ」
『しきりに……止めさせようとするのが……怪しい。見られたくないのが……あるのね?』
「そ、そんなのは無いけどさ。特にそこから先はあああああ!!」
『――――っ!?』
266 :
4/4:2014/01/05(日) 10:07:34.39 0
「だ、だから見るなって……別にそんなの撮る気じゃなかったけどたまたまその瞬間風が
吹いたってか……ふ、不可抗力だった訳で……」
『……ご丁寧に……連写モードだったけど……それでも……わざとじゃないって……?』
「グフッ!! そ、それはその……連写で撮って一番良い画像を残そうかなって……いや、
別に風でスカートがまくれたからとかそういうのを狙った訳じゃなくてそっちは偶然で、
あくまで写真としての質の問題で……」
『……お兄ちゃんの……スケベ……』
「うぐぅっ!!」
『変態……色情魔……妹に欲情するとか……恥を知れ……』
「ちょっと待て。パンツまでは写って無いんだし、そこまで言う事はないだろ。欲情とか
の問題以前で、男にとって女の子のスカートがはためく情景ってのは絵になるんだよ」
『たまたま……写ってなかっただけで……偉そうに主張しないで…… ていうか……写っ
てたら……犯罪者だし……リアルな意味で…… とにかく……お兄ちゃんにカメラは危険
過ぎるから……没収する……いいよね?』
「ハア……分かったよ。とにかく、ホントにパンチラ狙った訳じゃねーからな。単に風で
舞うスカートに苦労してる女の子の写真が撮りたかっただけで、そういう意味では見えて
ない方がいいんだから」
『いい加減……言い訳は聞き飽きた……私は……もう少し……花を見てるから……』
「俺は疲れたから……休んでるわ。出口の近くに休憩所があったから、そこにいる。帰る
時に声掛けてくれ」
『フン……』
『お兄ちゃん……私にトキメいてくれた…… 私の格好に…… やっぱり頑張って可愛い
服装選んで……良かった……エヘ……』
「……あれ? さっきアイツ……お兄ちゃんって言ってたな。基本おねだりする時か……
余程嬉しかった時以外使わないのに……何でだ?」
以上です。
ちなみんのパンチラ写真ぺろぺろ
友ちゃんと寝正月した挙句体重を気にした友ちゃんにダイエットに付き合わされたい
お正月ネタで投下します
また長いので、今回は前中後編に分けて
270 :
1/5:2014/01/06(月) 01:11:07.28 0
・お正月の晴れ着を着て心が浮き立っているツンデレ
「いや、疲れた……すげー人だったな」
ようやく参道の人ごみを抜けると、彼は背後を振り返った。普段は人もまばらな地元の
神社の参道だが、お正月の時期だけは初詣の人ごみとそれを目当てに路上に出す屋台でごっ
た返している。
『一体どこからこんなに人が湧いて来るのよ。あたしらの町なんてこんなに人いないじゃない』
同じように文句を言いつつ横を歩く彼女は、綺麗な晴れ着に身を包んでいた。足元は、
一昨日降った雪で半ば凍っており、歩くのに苦労している。
「俺は最初から、混むからよそうって言ったけどな。どうしても初詣に行きたいって言っ
たのはお前だろ?」
呆れた態度の彼を、彼女は不満気に睨み付ける。
『だって、せっかく晴れ着着たんだもん。どっか出掛けたいじゃない。うちに来る親戚の
挨拶に使うだけじゃもったいないしさ。それとも何? アンタ、あたしの晴れ着姿を見た
くなかったって言うの?』
すると彼は、逆にちょっと意地悪な顔で彼女に問い返す。
「そう聞くって事は何だ? お前、俺に晴れ着姿を見せたくて初詣に誘ったのか?」
途端に彼女の顔が真っ赤になる。咄嗟に顔をそらし、少しの間何かを堪えるようにうつ
むいていたが、やがてパッと顔を上げると、彼を怒鳴り付けた。
『そんな訳無いでしょ!! 何であたしがアンタに晴れ着を見せる為に、いちいち誘わな
きゃいけないのよ。有り得ないわよそんなの』
「いや。今の言い方だとなんかそんな風にも聞こえたからさ。まるで俺が晴れ着姿を見た
いの前提みたいな。てことは、お前も俺に褒められるの期待してたのかなって」
怒るのまで想定していた様子で軽くいなされた事が余計に腹が立って、彼女は歯を剥き
出さんばかりにいきんだ。
『アンタがあたしの晴れ着姿を見たいのと、あたしが見せたいかどうかは関係ないじゃな
い。褒められても別に嬉しくないけど、見たくないって思われるのは腹が立つのよ』
彼女の理屈に合ってるんだか合ってないんだか分からないような言葉に彼は首を傾げた。
自分に興味ないことに怒るんだったら、それってやっぱり興味を持って欲しいんじゃない
だろうかと。しかし、ここで言い返すと下手をしたら路上でケンカになりかねない。
271 :
2/5:2014/01/06(月) 01:12:09.04 0
「見たいも見たくないも、お前誘う時に晴れ着着てくるって言わなかったじゃん。それで
期待しろって言う方が無茶じゃね?」
驚かせようと思って敢えて会うまで秘密にしてた事を指摘され、彼女は一瞬怯む。しか
しすぐに気を取り直して巻き返しに掛かる。
『結果論での話でいいじゃない。見れて良かったとかさ。それに、お正月なんだし、言わ
なくてもちょっとは期待しないの? もしかしてかなみの奴、晴れ着着てきたりとかしな
いかなあ……なんてさ。アンタくらいの年頃の男子なら、そういう妄想でいっぱいなんじゃ
ないの?』
「晴れ着萌えってジャンルはあんまり無いと思うけどなあ……」
うかつに彼が口にした一言が、彼女の怒りを再点火させた。
『何よっ!! やっぱりあたしの晴れ着姿になんて興味なかったって言うわけ? 出て来
たのも単に後であたしからグチグチ嫌味言われるのが嫌だから、めんどくさいけど仕方な
かったって言いたいわけ?』
「いやいやいや。そこまで言ってないだろ。お前、いくらなんでも論理を飛躍させ過ぎだ」
彼は慌てて彼女の言を否定する。さすがに年の初めから彼女と喧嘩別れするような事態
だけは避けたかった。
『じゃー、どーゆー意味で言った訳? 晴れ着で萌えないって事はさ。とどのつまりは、
あたしの晴れ着姿見ても何とも思わないってそういう事じゃないの?』
腰に手を当て、彼女はねめつける様な視線を彼に送る。その横柄な態度はせっかくの晴
れ着姿に全く合っていないと彼は思ったが、さすがに口には出さなかった。
「お前が男ってそういう妄想するんじゃないのかって言うから、それを否定しただけだ。
女性の晴れ着姿って綺麗だけど、華やか過ぎてあんま妄想とは合わないし。まあ、俺の為
に着飾ってくれたって言うなら嬉しいけどさ。そういうのをお前に期待しちゃダメだろ?
だからまあ……綺麗だし、似合ってるとは思うけどさ。晴れ着だからドキドキする……と
か、そういうのはないかも」
272 :
3/5:2014/01/06(月) 01:12:52.54 0
彼女は口を尖らせたが、言い返そうと思っても文句が口から出なかった。自分の態度を
指摘されると、それも確かにその通りだったから。いっそ本当はせっかく着飾った姿を彼
に見せたくて――ついでに言えば、褒めてもらいたくて――初詣に誘ったと言ってしまお
うかと迷う。そうしたら、彼はどんな顔をするだろうか。しかし、そんな思いも彼女の心
を弄ぶだけで、実際に口に出せるほどの勇気は無かった。
『もういいわよ。そんな他人事みたいに似合ってるとか言われても嬉しくないし。タカシっ
てば、ホント気遣いがないんだから』
捨て台詞を吐くと、彼女は憤然とした態度でクルリと振り向き歩き出そうとした。しか
し、慣れない草履を履いている上に参道は凍った雪で覆われていた為、彼女は足を滑らせ
てバランスを崩した。
『きゃあっ!?』
「おっと」
咄嗟の機転で、彼は彼女の両脇を背後から抱え込む。彼の腕に支えられて、辛うじて彼
女は地面に尻餅を突かずに済んだ。
「あぶねーな。自分の格好考えずに歩こうとすんなって。たまたま支えられる距離だった
から良かったけど、せっかくの晴れ着が台無しになるぞ」
『うるさいわねっ!! 誰のせいでコケたと思ってんのよ!!』
人の多い参道でみっともない姿を晒してしまった事と彼に体を抱えられている恥ずかし
さをごまかそうと、彼女は理不尽な怒りを彼にぶつける。それを彼はあっさりと受け流した。
「そりゃ、自分のせいだろ? 腹立てた理由が俺にあるにせよ、足を滑らせた事自体は単
にお前の不注意とそそっかしさからだ。俺が押したとかならともかく」
『うーっ!!』
睨み付けて怒鳴り返そうとしても、彼に抱きかかえられている今の格好じゃまるで説得
力もないし、機嫌を悪くされて今放り出されたら、濡れた地面に尻を突いてしまい、せっ
かくの晴れ着を汚してしまう。仕方なく彼女は言い返すのは諦めた。
『と、とにかく早く立たせてよ。いつまで人の事抱えてるつもりなわけ?』
恥ずかしさだけが募り、彼女は彼を急かすが、彼は慎重だった。
「ちょっと待ってろ。慌てて立たせるとせっかくの振袖が着崩れるだろ? ゆっくりと引
き上げるから、お前も足の位置を動かしてバランスを立て直せ。じゃあ行くぞ」
273 :
4/5:2014/01/06(月) 01:13:34.34 0
彼は抱きしめる腕の力を強くしてから足場の悪い地面をしっかりと踏みしめ、グッと強
く力を入れる。
『ちょ、ちょっと!! 苦しいってば!! あと胸に当たってる!!』
彼の腕は、ちょうど彼女の胸の位置にしっかりと巻きついていた。もっとも、晴れ着の
上からだと胸の感触なんてほぼ感じることもなく、役得感は無かったが。
「ちょっとの間だし我慢してろ。それより早く足の位置変えてバランス取ってくれ。こっ
ちだって辛いんだし」
『その言い方止めてよ!! まるであたしが体重重いみたいじゃない!!』
「持ち上げ続けるには足元も体勢も悪いんだよ。文句は後でいくらでも聞いてやるから」
腰を落とし、何とか下半身を安定させてはいるもののちょっとした動きでバランスが崩
れる可能性もある。下から持ち上げるように支えていると、ようやく彼女は片足を動かし
て自分の体の真下に入れ、グッと力を入れる。すると彼の引き上げる力と連動して彼女の
体が上に動いた。
「よっしゃ。いいぞ。ゆっくりとな」
片足にしっかり力が入っている事を確かめつつ、残った足も体の真下に入れ、ようやく
両足の力で踏ん張ることに成功する。彼の支える力がしっかりとしていたので、彼女はバ
ランスを崩したり足を滑らせる事無く立ち上がることが出来た。
『ハァ…… 助かったぁ〜……』
ホッと深くため息をつく彼女に、彼も安堵して肩を落とす。
「全く……気をつけろよな。普段着とは訳が違うんだから」
『うるさいわね。さっきのはたまたま、アンタの言葉に頭来てたからってだけで、これか
らは気をつけるわよ』
彼の注意に文句を言いつつ、彼女はそっと彼に寄り添うとコートの袖を掴んだ。
「何やってるんだ? お前」
戸惑う彼に、彼女は仏頂面で見上げた。
『だから、気を付けてんの。こうすれば足を滑らせてもアンタにしがみ付けるでしょ?』
「まあ、そうだけど……」
言葉とは裏腹に、まるで彼氏に寄り添うような仕草の彼女を見て、彼はつい苦笑したい
気分に駆られてしまった。しかし、なるべく表情には出さないように我慢したつもりだっ
たのだが、彼女はあっさりとそれを看破してしまった。
274 :
5/5:2014/01/06(月) 01:15:24.30 0
『ちょっ…… な、何がおかしいのよ? いいでしょ別に。滑らないようにする為なんだから……』
つい今さっきまでの勝気な態度とは少し違って、どこか照れたような雰囲気が混じって
いた。彼は首を振り、今度は顔に出してちょっとからかうようにニヤッと笑ってみせる。
「別におかしくなんてないさ。何ならいっそ、腕にしがみ付いた方がもっと安全じゃね?」
しかし、彼のこの提案には彼女は猛然と拒絶した。
『い、いい!! そこまでする必要とかないから。それはその……転びそうになったら、
するかも知れないけど、今はいいから!!』
自分がかなり激しく動揺している事に気付いて、彼女は顔を朱に染めて俯いた。そんな
彼女の様子を見て彼も少し興奮してしまったが、逆にちょっと残念な顔で頷いてみせた。
「そこまで拒否する事もないと思うけどな。まあ、かなみが嫌なら仕方ないけど」
『あ……当たり前でしょ? 嫌がってるって言うか……単に幼馴染ってだけで、そこまで
くっつく意味が分かんないし。支えってだけならこれで十分なのに……』
恥ずかしくて彼の顔を見る事が出来ず、顔を背けたまま彼女は口を尖らせる。もっとも、
その仕草があからさまに照れていると彼に教えてしまっている事に、彼女は気が付いてい
なかった。
「俺はその方がしっかり支えられるかなって思っただけだよ。まあ、これでもさっきより
はマシだけどな。じゃ、帰るか」
『ゆ……ゆっくりと歩いてよね。アンタ時々、早足過ぎて付いていけない時があるから』
一緒に並んで歩いている時、大抵は彼が彼女の歩幅に合わせて歩いていた。だけど、急
いでいる時とか、早足になった彼に付いていけない時があり、そんな時彼女は、まるで彼
に置いて行かれるような寂しさを感じてしまう事があり、それが嫌だった。
「分かってるよ。かなみは足元に気をつけて。俺がリードするからさ」
二人は雪でデコボコした道をゆっくりと歩いた。彼女は時折足を滑らせ、その度に小さ
く悲鳴を上げては彼の腕にしがみ付く。そして悪態を吐きながら体を離すのだが、いつの
間にか裾を掴んでいた手は、彼の腕そのものをしっかりと掴んでいた。そんな彼女を彼は
無言でリードするように歩いて行った。
275 :
6/6:2014/01/06(月) 01:16:03.98 0
『ね。タカシさ。確か、デジカメ持って来てたよね?』
不意に彼女がこんな質問をぶつけて来た。彼は一度足を止め、彼女を見て頷く。
「ああ。さっきも境内とか撮ってたし。で、それがどうかしたか?」
再び歩き出すと、彼女は少し間を置いて答えを躊躇っていたが、やがてボソボソと小さ
く、彼に辛うじて聞こえる程度の声で答えた。
『えっとね。その……あたしを、撮って欲しいなって……』
続く
ちょっとだけはみ出てしまった
このまま続き行きます
277 :
1/5:2014/01/08(水) 01:07:08.61 0
・お正月の晴れ着を着て心が浮き立っているツンデレ 〜中編〜
「へ……?」
意外そうな声を出す彼に、彼女は慌てて彼の方を向くと、言い訳を始めた。
『だ、だってさ。その……せっかく晴れ着を着たんだし、記念に撮っときたいじゃない。
ホントは境内とかの方が良かったんだけど、何か人がいっぱいいると照れ臭くて……』
「むしろ、境内の方が写真撮ってる人がいっぱいいたから目立たなくて良かったんじゃね?」
彼の指摘に、彼女は目を剥かんばかりに睨み付ける。
『う、うるさいわね!! だって邪魔っぽかったし…… それに、知り合いにそんな姿見
られたら、どんな誤解されるか分かんないじゃない!!』
参拝した神社は、地元ではそこそこ人が集まる為に小学校や中学校のクラスメートと会
うことも珍しくない。二人は何だかんだで毎年一緒に参拝しているので、一緒にいる程度
では騒がれる事も無いが、境内で晴れ着の写真撮影をしている所を見られたら、変にから
かうネタを与えかねないし、何より静かな環境で取って欲しいと彼女は願っていた。
「別に今更ちょっとからかわれたところでどうってことなくね? まあ別に、かなみがそ
の方がいいって言うなら、拒否る理由ないけどさ」
『だったら、グダグダ文句言わずに素直にはい、とだけ言っときなさいよ。アンタはいつ
だって一言二言多いんだから』
それは彼女も同じだろう、というかむしろ彼女の方が多くないかと彼は思ったのだが、
口には出さなかった。
「はいはい。それじゃ、ちょっとした撮影会とシャレ込みますかね」
『さ、撮影会とかそんな大げさな言葉使わなくていいから!!』
「そこの杉の木あるだろ? その木をバックにとか雰囲気出て良くね?」
公園に入ると、彼は中央に植えられている杉の木を指した。
『……まあ、まかせるけど綺麗に撮ってよね。せっかくの記念なんだから、ピンボケとか
したりしたら許さないわよ』
278 :
2/5:2014/01/08(水) 01:07:41.90 0
「今時、ピントがズレるなんてあり得ないだろ。全部自動なんだし。それに撮った画像も
確認出来るから、何枚か撮って気に食わないのは消せばいいだけだし」
『だって、タカシの腕なんて全く信用出来ないんだもん。夜中だしさ。真っ暗で背景墨とか嫌よ』
「だからこうして映えるバックを選んだんじゃん。ごちゃごちゃ言ってると撮ってやらんぞ」
一度出したデジカメを仕舞おうとする彼を、彼女は慌てて押し止めた。
『わ、分かったわよ!! 文句は出来た写真見てからにするから、とりあえず撮ってよね。
偶然、ベストショットが撮れる可能性もあるんだからさ』
「失敗前提かよ。全く……これが頼む者の態度なんかね」
呆れる彼に、彼女はいたずらっぽく笑ってみせた。
『タカシだから、遠慮なく言えるのよ。さ、頑張って撮って。カメラマンさん』
クルリと背を向け、道路と同じように雪の残る不安定な地面と格闘しつつ、彼女はゆっ
くりと楡の方に向けて歩く。その後姿に不安を覚えて彼は声を掛けた。
「気を付けろよ。滑って転んだら元も子もないんだからな」
『分かってるってば!! あたし、そんなドジじゃないも――ひゃっ!!』
ズルッと足を取られつつも辛うじてバランスを保ち、落ち着いてから彼女は振り向いて
怒鳴り散らした。
『もう!! アンタが変な事言うから滑ったじゃないのよ!!』
それからすぐにまた楡の木に向けて歩き出す。そんな姿を見て肩をすくめつつ、彼は呟いた。
「全く…… 怒ったり悪口言ったりしてるかと思えば、甘えてきたりおねだりしたり……
ホント、ヤな奴だよ。アイツは」
デジカメをケースから出すと、彼もゆっくりと彼女の方に歩きだす。彼女はようやく杉
の木の真下に着き、こっち側に向き直った。
『ねえ。早く撮ってよ。寒いんだからさ』
「ちょっと待ってろ。えーと……こんなもんかな」
木全体を入れるのはさすがに無理なので、生い茂る葉の下の方だけを入れておく。もっ
とも、潅木も周りに生えているので、それなりに様になるというか、夜中のせいか液晶画
面で見る彼女の姿は、ちょっと神秘的な場所にいるようにすら見える。
279 :
3/5:2014/01/08(水) 01:08:13.27 0
『ねー。まだなのぉ? もう、いい加減にしてよね』
これ以上彼女を待たせると文句が多くなりそうなので、彼は手を上げて合図した。
「よし。じゃあ撮るからさ。ちょっとポーズ取ってみろよ」
『えーと…… こんな感じ?』
最初はシンプルな方がいいだろうと、彼女は立ち姿でバッグを両手で前に持ってみせた。
「よし。じゃあ取りあえず撮るぞ。はい、チーズ」
フラッシュが光り、画像がデジカメの中に収められる。
「このまま続けて撮るからな。思うままにポーズ取ってみてくれ」
『ん。分かった』
彼に写真を撮られている事に少しドキドキしつつ、彼女は可愛く、綺麗に撮れるように
とポーズを変えた。肘を曲げて両手を肩の位置に上げ、片足も軽く上げて笑顔で首を傾げ
てみたり、背を向けて振り向いたり、立ち姿でも様々に角度を変えてみたり。撮った写真
が20枚くらいになって、ようやく彼は声を掛けた。
「もういいだろ。記念っていうから5枚くらいかと思ったのに撮りすぎじゃね?」
『えー? もう終わりなの? いいじゃない。別にフィルム消費する訳でも無いんだしさ』
まだ物足りなさそうな彼女に、彼は首を振った。
「さすがに手がかじかんで来たんだよ。ほれ。確認してみろ」
彼の方から歩いて彼女に近付き、デジカメを差し出す。
『どれどれ? やだ。私ってば、結構綺麗じゃん』
「自分で言うか? 普通」
画像を見て感動する彼女の腕を、彼は肘で小突いた。すると彼女は不満気に彼を睨み付ける。
『いいじゃない。家で姿見でも見たけどさ。何かこっちの方がいい雰囲気出てるし。まあ、
カメラマンの技量じゃなくてモデルがいいからなだろうけどさ』
「ほら、また自分で自分を褒めて。アホくさ」
呆れる彼に、彼女はデジカメの画面を突き付けた。
『じゃあ、アンタはどう思ってんのよ。自分の撮った写真見て。感想、言いなさいよね』
彼は彼女からデジカメを受け取ると、画像のページを切り替えつつ確認する。
「まあ、綺麗だとは思うけどさ。ただ、女性なんて振袖着れば晴れやかに見えるもんだしな」
280 :
4/5:2014/01/08(水) 01:08:45.54 0
本当は、最初に見た時から彼女の振袖姿の綺麗さに時々見惚れてはいたのだが、彼女の
態度に意地でも褒めたくないという気分が彼の中に蔓延していた。とはいえ貶すと嘘にな
るので、ぼかしたような感想を言うと、彼女はますます苛立ちを募らせる。
『その言い方、超失礼なんだけど。素直に振袖姿のかなみは綺麗だって言えばそれでいい
じゃない。なのに、わざわざ女性一般みんな綺麗だとか言ってさ。まるで素材が悪いみた
いな言い方しないでよ』
「別にそこまで言ってないけどな。かなみ自身が綺麗だとかどうかは何とも触れてないわ
けだから」
シレッと受け流すように答える彼を、彼女は指でドスドスと突付いた。
『じゃあ、あたし自身も含めてどうなのか言え。卑怯な答え方しないで。ほら、早く』
「イテイテッ!! 止めろって。かなみが写真自体の出来がどうなのか感想を言ったら、
俺も言うからさ。それならおあいこだろ」
彼女の手首を握り、彼は彼女の攻撃から身を守る。すると彼女は苛立たしげに握られた
手を振り払い。シッシッと追い払う仕草を見せた。
『何よ。何でそんな交換条件みたいな事、あたしが受けなくちゃいけないわけ? 意味分
んない』
「だって、俺だって撮った写真を褒めて貰えりゃそれなりに嬉しいし。まあ、ダメ出しさ
れるなら、それはそれで諦めるけどさ。具体的な指摘もなく、カメラが良いからで誰でも
撮れるなんて言い方されれば嬉しくはないだろ」
『うー……』
彼女は唸って黙り込んだ。本当は、撮られた写真の構図だとか、背景の入れ方やズーム
の大きさなんかも自分好みですごく良いとは思っていたし、今日に限った事ではなくて、
自分を一番綺麗に撮ってくれるのは彼かも知れないなんて思ったりもしているのだ。しか
し、それを口に出すなんて恥ずかしい事出来る訳もなく、彼女は首を振った。
『じゃあ、もういい。どうせ私を怒らせないために、お世辞で褒めるんだろうし。そんな
嘘だかホントだかわかんない感想貰ってもしょうがないから、もう聞かない』
プイッとそっぽを向く彼女に、彼はまた呆れた声を出した。
「何だよそれ。そんなに感想言いたくないのかよ」
281 :
5/5:2014/01/08(水) 01:09:49.00 0
それについては彼女は答えなかった。理由についてはもう一つ。もし彼から褒めてもら
えたりしたら、お世辞でも動揺して表に出そうだし、万が一にも褒めてもらえなければ、
その場でいくら罵り倒そうが、ショックで寝込みそうな気がしたからだ。
『もういいって言ったでしょ? それより、家着いたら真っ先にパソコンに移し変えてか
らデータ送ってよ? 明日起きてからいい写真選別してスマホに入れるんだから。あと、
終わったら全部消してよね。パソコンからもデジカメからも』
「何だよ。そこまでしなきゃいけないわけ?」
彼女の注意に咄嗟に反論して、彼はパッと口を抑えた。すると案の定、彼女は疑わしげ
な視線を彼に向ける。
『何よ? アンタまさか、あたしの写真をそのままこっそり保存するつもりだったんじゃ
ないでしょうね?』
後編に続く
このかなみん、やることなすこと可愛すぎ
そりゃ地元で嫁認定されちゃいますよ
後編5レス投下
284 :
1/5:2014/01/11(土) 09:50:24.83 0
・お正月の晴れ着を着て心が浮き立っているツンデレ 〜後編〜
「バ、バカ。違うってば。そのうち消すつもりだったけど、お前からそんな事命令された
からつい反抗したって言うか…… それにせっかくだから、親父おふくろには見せようか
と思ってたし」
決してやましい事に使うつもりでは無いと彼は必死で釈明した。それを彼女は疑いの目
で見つつ、憤るようにフン、と鼻を鳴らす。
『おじさんおばさんに見せる分には別に構わないけど、それが終わったら消しなさいよ。
お正月三が日が明けたら、スマホの中身とパソコンのデータ確認しに行くからね』
「ちょ、ちょっと待ってくれ。データ確認しに来るって、お前は俺の嫁か何かか」
『バッ……バカ言ってんじゃないわよっ!! 誰が、誰の嫁よ!!』
敏感に反応する彼女を、慌てて彼は両手で制した。
「待て待て待て。ただの例え話っていうか、人の携帯の中身チェックとか、夫婦でもない
とやらなくね?って事。普通、どんなに仲が良くたって、異性の携帯やパソコンのチェッ
クしないだろ?」
『それは勝手にって話でしょ? あたしはちゃんと宣言してるじゃない。だったら、事前
に見られたくない物は隠しとくとか出来るでしょ? 問題ないじゃない』
「それを言ったら、お前の晴れ着写真だってUSBとか隠しとく事も出来るんだぜ? それ
って逆に言えばチェックする意味あんの?」
やり込められそうになり、彼女はグッと言葉に詰まる。しかしすぐに、パッと切り返す
言葉が頭の中に閃いた。
『何よ。それって……あたしの晴れ着写真をあたしに隠してまでずっと持っていたいって、
そういう事?』
彼女に問われ、まるで自分自身も気づかない内面を暴かれたような気分になり、彼は慌
ててその言葉を否定する。
「ち、違うって。その……やろうと思えば出来るってだけの話で…… だからチェックな
んてしても意味なくねって話で……」
しかし彼女はさらにはっきりと追及を重ねてきた。
『やろうと思えば出来る、じゃなくてさ。タカシはそういう事、やるの? やらないの?』
285 :
2/5:2014/01/11(土) 09:51:00.73 0
意外に真面目な顔でジッと見つめられ、彼は焦りを覚えた。ゴクリ、と唾を飲み込み、
気持ちをグッと抑え込んで彼は努めて冷静に答えた。
「や、やらねーよ。そんな、かなみに隠してまで……保存したりとかはさ」
『へー、そうなんだ』
感情を押し殺し、彼女もまた素っ気無く返す。しかし、自分が優位に立っていることを
自覚していた彼女は、少し意地悪な気分でもう少し追求したくなった。
『じゃあさ。タカシは別にいらないんだ。あたしの晴れ着写真』
こういうと、しどろもどろになってああだこうだと言い訳するんじゃないだろうか。そ
う彼女は期待していたのだが、彼は意外なことにハッキリとした答えを返して来た。
「いや。くれるというなら、欲しい」
『へ……?』
キョトンと、彼女は彼を見つめたまま一瞬気持ちが真っ白になった。まさかそんな事を
言われるなんて、思ってもみなかったから。
『あ……あたしの……写真、を?』
問い返され、タカシは頷く。そしてすぐに、変な誤解を招かないように慌てて理由を説明した。
「ああ。つーか、変な気持ちでじゃないぞ。まあ、何つーか、記念程度? ほら。かなみ
が振袖着るなんて、そうそうある事じゃないし、ましてやこうして俺のデジカメに収まる
なんて今後無いかも知れないからさ。一枚くらいは残しときたいかな……って思って。ダメか?」
まだ少し呆然とした気持ちのまま、彼女は彼を見つめていた。徐々に正気が戻ってくる
につれ、今度は恥ずかしさがせり上がって来る。
『そ、そんな……記念って……何の記念よ。自分の記念でも無いのに……』
「かなみの初振袖だからってのじゃダメか? 正直、自分でも良く分かんないんだけどさ。
消せって言われると、なんか惜しくなるって言うか…… ホントに1枚あればいいんだけど」
『やっぱりダメッ!!』
このままだと押し切られそうで、何故かそれが怖くなって彼女はその申し出を拒絶した。
「何でだよ。別にやましい理由なんてホント、何も無いから。まあどうしてもって言うな
ら消すけど、せめてそっちの訳くらいは聞かせてくれよな」
286 :
3/5:2014/01/11(土) 09:51:31.75 0
あまり執着し過ぎるとキモくなるので、彼は半ば引きつつも理由を聞き出そうとした。
そうでもないと、気持ちに収まりがつきそうになかった。
『えーと、えーと……なんかさ、その……い、嫌なのよ。アンタのスマホやパソコンの中
にあたしの写真があるって思うと……その……何にもされなくても、穢されていくようで……』
「なんだそりゃ?」
つい呆れた声を、彼は出してしまった。
「穢れるって、そんな訳無いだろ? 大体、林間学校に修学旅行。海水浴や花火大会に餅
つきまで、携帯のカメラも合わせりゃ、今更そんな事言うって言うほどお前の写真なんて
いっぱい入ってるぜ。そこに一枚、晴れ着の写真が入ったからどうだって言うんだよ」
『そ、それは他のみんなも一緒に写ってるじゃない。あたし一人だけがポーズ取って写っ
てる写真なんてないでしょーが』
そんな写真を、彼が時折でも見つめてるなんて思ったら、これからずっと、こんな胸が
苦しくてくすぐったくて身悶えするような思いをし続けなければならない。これが彼女が
必死に拒絶している本当の理由だった。
「そりゃそうだけどさ。たまたまお前が晴れ着着て来て、二人だけの時に写真撮ってくれっ
て言ったから、こういう写真が出来上がったってだけでさ。まあ、どのみち理屈として
はおかしくね? 今更になって一人だけで写ってるから穢れるとかさ」
言い包められそうになりながらも、彼女は懸命に首を振った。彼が自分の写真を大切に
保存したいと言ってくれるのは嬉しいけれど、やっぱり恥ずかし過ぎて耐えられない。
『そ、それはその……みんなが穢れを分散してるからっていうか……とにかく、ダメなも
のはダメなの。諦めて全部消すって言ってよ、もうっ!!』
彼は腕を組んで考え込んだ。彼女は頑固だから、どんなに理屈が合わなくても一度こう
と決めたらそう生半可な事では撤回したりしない。彼に対して、でいえば絶対と言っても
いい。少し考え込んでから、彼は口を開いた。
「あのさ。かなみ一人だけじゃなくて、他の人がいればいいわけ?」
『まあ、それは…… そこまで拒絶したら、タカシが保存する写真なんて無くなっちゃうし……』
287 :
4/5:2014/01/11(土) 09:52:02.96 0
小中高と、住んでる町が田舎なせいもあってずっと同じ学校、同じクラスで過ごしてき
た彼と彼女が別々に写っている写真なんてそう多くはない。もちろん女子同士、男子同士
で遊んだ事もいっぱいあるが、写真を撮るようなイベントごととなると、大抵二人は一緒
だった。
「分かった。じゃ、ちょっと待っててくれ」
彼はそう言い置くと、その場に彼女を置いて、参拝帰りの人に声を掛けた。
「すみません。あの、写真を一枚撮って貰えませんか?」
『は? ちょっと、何言ってるのよアンタ。誰が写真を撮って貰うって?』
慌てて大声で彼の後ろから問い質すと、頼まれた若い女性が少し驚いた顔で彼女の方を
見た。それに気付き、慌てて彼の背に隠れる。
「ごめんなさい。今のは気にしないで。じゃ、これお願いします」
デジカメを渡してから、彼は彼女を引き摺るようにして女性から距離を置く。小声だと
届かないくらいの距離になってから、彼女はもう一度彼を問い詰めた。
『一体どういうつもりなのよ? まさか、二人一緒に写真を撮って貰おうって言うわけ?』
彼はコクリと頷いた。
「ああ。だって、一人で写った写真を残されるのは嫌なんだろ? 俺とのツーショットな
ら、何枚かあるしさ。それならデータが入ってるだけで穢れる訳じゃないし、ホントの記
念写真っぽくなるし。そうすれば、さっき撮った写真は全部消すよ。それでいいだろ?」
『う、う、う……』
何とかダメと言う口実を捻り出そうかと思ったが、唸っていると先ほどの女性が声を掛
けて来た。
『すみませーん。撮りますけど、いいですか?』
「ほら、かなみ。笑顔で前向いて」
ポン、と帯の下辺りを叩いて彼が促す。
『うるさい。全く……撮られるだけは撮られてあげるわよ。残していいかどうかは、また
後で決めるから』
『それじゃ、撮りまーす。はい、チーズ』
パッとフラッシュが炊かれ、彼のデジカメに二人のツーショット写真が収められた。
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
彼が頭を下げると、女性は笑顔で首を振った。
288 :
5/5:2014/01/11(土) 09:52:48.36 0
『いえいえ。二人とも、末永くお幸せにね。それじゃあ』
苦笑しつつ女性は背を向けて歩き出す。少し離れた場所でボーっとやり取りを見ていた
彼女は、ハッと気付くと慌てて彼に詰め寄る。
『ちょ、ちょっと!! あの女の人今何て言ったのよ? 末永くとか何とか、冗談じゃな
いわよ!! 何でアンタも否定しないのよっ!!』
「いやいや。別にいいだろ? 見も知らない赤の他人に誤解されたって。どうせすぐ忘れるって」
『ダメそんなの!! 冗談じゃないわよ。もうバカ!! やっぱり今の写真も残すのダ
メ!! 誰かに見られて誤解されたら敵わないんだから』
「今更俺らのツーショット写真見た程度で誤解するような知り合いいないだろが。せっか
く撮ったんだし、お互い残しとこうぜ。な? な?」
結局、二人のツーショット写真は彼女のスマートフォンと彼のパソコンの画像フォルダ
に大切に仕舞われることとなったのであった。時折彼女がそれを見て頬を緩めていたかど
うかは、彼女しか知らない事である。
終わり
これは後生大事に保存した挙句後に子どもに発見されるパターンやな!
290 :
1/4:2014/01/12(日) 05:31:48.69 0
【妹ちなみん】
ちなみが妹になったと言い張る。
「……いや、言い張るとかじゃなくて、本当の話」
俺の部屋にやってきたちなみが、ベッドに座って足をプラプラさせながら普段と変わりない口調で言った。
「そうだった。親が再婚したんだった。やーい妹」プニプニ
「……ほっぺをぷにぷにされた。……頬の裏に仕込んだ自爆装置の作動を確認。5秒後に爆発する」
「助けてぇ!」(腰砕けになりあわあわしながら)
「……爆発してほしくなかったら、さっきの無駄な揶揄を謝れ」
「すいません妹ができて嬉しさのあまりおかしくなったんです!」(必死)
「…………。……ま、まあ、それなら仕方がない。……た、ただ、タカシはいつもおかしいので、いつも通りとも言えよう。……と、とにかく、自爆装置は止めてやろう」
「はぁ……よかった。でも、なんで自爆装置なんて仕込んでるんだ?」
「……嘘だが?」
「…………。……し、知ってましたよ!? そりゃ自爆装置とかあるわけないじゃないですか! 誰が信じるってんだ! ばーかばーかばーか! 小学生!」
「……やれやれ、酷いものだ。……ただ、最後の小学生というふざけた文句だけは看過できない」
「ちなみって小学生じゃなかったっけ?」
「……同級生だが」
「あー。そういやうちのクラスに小学生がいたな。もしや、そいつが……?」
「……にゃー」(目潰し)
「あああああ」ゴロゴロ
「……床をゴロゴロ転がるのが、兄、か……」ションボリ
そんな素敵な出会いを果たした俺たちだったが、普通に顔見知りだったので特別な感情など湧くはずもなく。
「強いて言うなら、同じ屋根の下に住むことになるので着替えやお風呂やトイレを覗けるかなァというわずかな希望を胸に秘めているくらいだ」
「……どうしてそれを私に言うのか。今日もタカシは理解に苦しむ」ウンザリ
「こうして直接対象者に言っておくことにより、ちなみに残るわずかな良心が俺を犯罪行為がしやすいようにドアを少し開けたりしてくれるかなーと思ったんだ」
ちなみの顔がウンザリから本格的な呆れ顔へ移行していく。
291 :
2/4:2014/01/12(日) 05:32:20.69 0
「もしそこまで良心が残っていなかった場合は、覗いていることがばれた際、事前に言っておくことで『まったく、お兄ちゃんってば私がいないとダメなんだからっ☆』という思念を挟み込み、通報を躊躇させるため」
「……はぁー。……話が長いうえ、ただの夢物語とは。……やはりタカシは死んだ方がいい」
「新生お兄ちゃんに酷いことをいうね、この妹は」ナデナデ
「……なでるな」ムスーッ
「聞いた話によると、兄という存在は妹をなで放題らしいよ」ナデナデ
「……そんなことはない」ムスーッ
「楽しいのに」ナデナデ
「……タカシが楽しくなるのと比例して、私の不快感はうなぎ登りだ。……寝てる時に、タカシのパジャマに氷入れてやれ」
「この季節にそれはもはや殺人未遂として逮捕されてもおかしくないぞ」
「……じゃあ、熱湯入れてあげる」
「それは優しさではない」
「……ちゃんと100度だよ?」
「人間が火傷するお湯の温度とか分かる?」
「……実験しないと分からない」
「知的好奇心が旺盛なのはとても結構なことだが、頼むから兄の体で実験しないでくれ」ナデナデ
「……むぅ。……あと、なでるな」
「どうしてもと言うなら、その願い事をきいてやろう」ナデナデ
「……やっぱり、金と名声と永遠の命がいい」
「しまった、“言うことをきく”ではなく、“願い事をきく”なんて言ったために妹の欲望を聞く羽目に! というか、もうちょっと可愛い願い事はないですかね?」
「……かーね。……めーいせい。……えーいえんのいーのち」クイクイ
「くっ……両手でクイクイと服の裾を引っ張られては仕方ない。その願い、叶えよう!」パァァ
「……なんかぱぁぁって言いながら両手をバッて上げた」
「説明しないでください」
「……そして顔を赤らめた」
「ちくしょう」
292 :
3/4:2014/01/12(日) 05:32:59.45 0
「……くふふ。……こんな、外から見てる分には愉快なのが兄になったとは。……私の人生、面白くなってきた」
「あー。俺もこんな、外から見てる分には可愛いのが妹になるとは予想だにしなかったよ。むしろ予想谷だよ」
「むしろ……?」
「じゃあ学校でもヨロシクということで。コンゴトモヨロシク。オレサマオマエマルカジリ!」ナデナデ
「……学校で兄妹になったとか言ったら、殺す」
「オレサマオマエマルカジリとか言ったから? 嘘ですよ? 何故なら、俺にカニバリズム的趣味はないから」ナデナデ
「…………」ハァー
「ひゅっ」
「……ちょっとそこ座れ。正座」
「はい」
「……人のため息を吸うな、妖怪」ペチペチ
「すいません、目の前だったので、つい」
「……どうしてタカシはそんなに妖怪なのか。……形式上は私の兄になったのだから、妖怪はほどほどにしてもらわないと困る。……聞いているのか」ペチペチ
「はい、聞いてます。ですから形式上の兄の頭をペチペチしないでください」
「……嫌だ」ペチペチ
「はい」
おかしい。俺の未来予想によると、兄妹になった瞬間にちなみの妹の才能が開花し『お兄ちゃん、大好きーっ!』となり結婚していたはずなのに、どうして俺は妹の前で正座して、頭をペチペチされているのか。
「……まったく。……これに懲りたら、もう妹のため息を吸わないこと」
「はい。ところでちなみ、これは兄としての言葉なんだが」
「……なに? もう兄貴面してるの?」
「あ、悪い。じゃあ友人としての言葉でもいい。それでも嫌ならクラスメートの言葉でも構わない」
「……まあ、どっちでもいいけど。……なに?」
「俺はいま正座している。そしてちなみは俺の前で立っている、という位置関係だ」
「…………」コクコク
「すると、どうしても俺の頭の位置は低くなり、自然俺の視線も低くなる」
「……だからなに? ……もったいぶらずに早く言え」
「パンツが見えてます」
「……?」
293 :
4/4:2014/01/12(日) 05:34:05.00 0
「だから、ちょうど俺の視線上にちなみのしまぱんが存在するため、がっつり見えています。見上げる形になるからね。ちょっと短めのスカートだからね。しまぱんだからね」
「そっ、そういうことは、早く言え、ばかっ」ババッ
ちなみは素早く座り込み、スカートで先ほどの魅惑の三角ラインを隠してしまった。今はもう見えない素敵なストライプは、それでも俺の脳内シアターで今後連日活躍してくれることだろう。夜のお供とかにね!
「いやはや、言いたかったんだけど、どうしてもパンツから目が離せなくて。とりあえず焼き付け終わったから言った次第です」
「……うー。黙って見てるとか、今日もタカシは卑怯すぐるうえに、えろすぎる。……近く犯される」ペチペチペチ
「この妹は兄を淫獣か何かと勘違いしてやがる。あと、人の頭をペチペチしすぎだ。さすがにちょっと痛え」
「うるさい、ばか。だまれ。しね。はげ」ペチペチペチ
「ええっ、ハゲてる!? まだ高校生なのに!」
「……この連続ペチペチは、毛根に大ダメージとの噂」ペチペチペチ
「助けてぇ!」
「……くふふ。……い、いや違う。さっきのくふふナシ」
「?」
「……うー。……あまり人を楽しませるな、ばか」ムーッ
「特別意識してませんが」
「……う、うるさい。と、とにかく、そ、その。……ば、ばーかばーか」トテテテテ
何やら妙な捨て台詞を残して、ちなみは部屋から出て行った。……と思ったら、すぐにドアがまた開き、ひょこっとちなみが顔だけ覗かせた。
「どした? 何か忘れ物か?」
「……ま、まあ、そんなもの」
「なんだ? 見られて困るものなら、ちょっと部屋から出てるけど」
「……そ、そゆのじゃなくて、えと。……こ、これからよろしく、……お、お兄ちゃん」
「え」
「じゃ、じゃっ!」
ちなみには似つかわしくない速度で頭が引っ込み、即座にドアが閉められた。
「……ちくしょう。俺の妹は可愛いなあ!」
……ドダダダダダ、ガチャッ!
「さっ、叫ぶなっ、ばかっ!」
「あ、はい。すいません」
なんか真っ赤な顔してる妹に叱られました。
こんな義妹ちなみんがいたら俺は一生を捧げてやる。
ちょっと年の瀬くらいのネタになりますが、5回シリーズの一発目を6レス貰います。
295 :
1/6:2014/01/12(日) 14:57:51.05 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その1〜
『どうしていつもこういう組み合わせになるのよっ!!』
狭い部室内に、先輩の苛立った怒鳴り声が響き渡る。困ったように取り囲んで先輩を見
つめるのは、僕ら広告研究会の一年生部員だ。ちなみにややこしいので一応断わっておく
と、先輩と言うのは僕の高校時代の部活の先輩だった椎水かなみという女の子の事で、一
年浪人して今は同学年である。だから厳密に言えばもう先輩ではないのだけど、僕が頭の
中で思い浮かべる時や二人きりでいる時は未だに先輩と呼んでいるのだ。
『まあまあ。そういきり立たないで。これも厳正なる抽選の結果って奴だから』
「そうそう。まあ何ていうか……偶然って怖いよね?」
長友さんと山田君が口々に取り成そうとするが、先輩は二人をジロリと睨み付け、バン
と長机を叩いた。
『これが偶然? 学校案内の写真撮影に学内報の取材係。学祭の時の模擬店の当番。で、
今日やった納会の出し物でのくじ引き。全部別府君とあたしの組み合わせじゃない。こん
な偶然あり得ないわ。誰かが仕組んでるとしか思えないわよ!!』
『でも、仕組む暇なんてないわよね。だってこのクジ、今みんなの目の前で私が作ったん
だもの。どこにも……その……手を入れる暇なんてなかったし、大体する意味も分かんないし』
クジを作った音羽さんが半分申し訳なさそうな困った顔を浮かべている。この場合、暴
風をまともに受けてあげるのは僕の役目だった。
「そうだよ、椎水さん。まあたまたまこういう運命だったってだけで。諦めよう」
『何、他人事みたいに言ってるのよアンタはっ!!』
僕が割って入ったことで、先輩の矛先が一気にこっちへ向いた。まあ、これでいい。
「だって仕方ないじゃない。音羽さんがわざわざ僕とせん――椎水さんを組ませようとす
るとは思えないしさ。学校案内の撮影の時は別にして、後は全部アンケートに希望書いた
ら偶然一致したとか、同じようにくじ引きだったりとかで、人の考えが入る余地なんてな
いし。不正があったならともかく、ここでケチ付けたって始まらないじゃん」
『だって、いつもよ? たまには他の人と組みたいとか思わないのアンタは。大体こうい
うのって、普通は男女別々にペア組むものじゃないの?』
296 :
2/6:2014/01/12(日) 14:58:22.27 0
『男女平等。道徳的な事を別にすれば、区別は一切しないってのがウチの部の方針だって、
入ったばかりの時に先輩にオリエンテーションで受けたじゃん。かなみだって聞いてたで
しょ? 一緒にいたんだから』
『わ、分かってるわよ。ただその……たまには女の子同士のペアもいいかなって思ってそ
う言ってみただけで…… べ、別に他の男子だって文句無いわよ。何でいつも別府君なの
よって……』
先輩は山田君と、他に二人いる一年の男二人をチラリと見る。しかし、見られた方は何
となく居心地悪そうに肩を竦めただけだった。
「別府はどうなんだよ? 椎水さんといつもおんなじで、嫌とか思ったことあるか?」
その他男子のうちの一人、脇谷君に聞かれたが、僕は首を振った。
「別に。僕は別に誰とだって嫌なんて思わないし。椎水さんとは確かによく組む事あるけ
ど、おかげで多少は性格も分かって来たから、まあそんなにやりづらいって事も無いしね」
ここで万が一僕が嫌だなんて言った日には、後からこんなものじゃないくらいもの凄く
先輩が不機嫌になるので、間違ってもこの場で同意してはいけない。本当にこの人は扱い
が難しいのだ。
『何よ。そのやりづらい事も無いって言い方。私の事を手が掛かる人間だって言いたいわ
け? 冗談じゃないわよ。何でアンタにそこまで言われなくちゃならないの? こっちだっ
て、クソ真面目で小うるさくて、自分からはロクに面白いアイデアの一つも出せないくせ
にツッコミ入れるのだけは一人前でさ。一緒にいても全然楽しくないし』
『まあまあ。別に別府君だって、かなちゃんの事悪く言うつもりでそう言ったんじゃない
と思うけどな。その……ほら。男子の方からしても、女子の扱い方って難しいところある
んじゃないかな? 人によって言っていい事とか悪い事とか、していいことしちゃダメな事とか』
音羽さんが間に入って懸命に取り成してくれる。他の人からしても、先輩の言い方が言
い掛かりに聞こえるのだろう。だけど、下手をすれば、それは火に油を注ぐ事になりかねない。
297 :
3/6:2014/01/12(日) 14:58:53.17 0
『じゃあ、翠ちゃんはさ。ずーっと同じ男とばっかり組まされていたりしたらどう思う?
その相手がちょっといいなーとか思ってる人なら別だけど、一緒にいてもクソつまんない
朴念仁みたいなのだったりしたら。嫌って言うか、いい加減飽き飽きしてくると思わない?
しかも一人前に文句まで付けて来るの』
先輩に凄まれて、音羽さんはちょっとタジタジとなったが、怯えているように見えつつ
も彼女も意外と頑固だった。
『わ……私は別に……別府君とずっと一緒だったとしても、それはそれで仕方ない……じゃ
なくて、別にいいかなって。も、もちろん他の男子とでも同じだけど。同じ部の仲間なん
だし、誰とずっと一緒だからって、きっと楽しいとは思うし』
そこへ調ちゃんも割って入って来る。
『あたしだって、別に誰とずっと一緒でも構わないわよ。今回は違ったけど、学内報作る
時と学祭の時は二回連続で山田だったし』
調ちゃんがチラリと山田君に視線を送る。それに気付いたのか、山田君がちょっと身を
竦めてみせた。
『あの時は調だって文句言ってたじゃない。また山田ぁ、とか言ってさ。もうちょっと引っ
張ってくれる男子の方が良かったなあって』
『でも、クジの結果にまで文句付けてなかったじゃない。かなみは学祭の時も散々駄々こ
ねて、先輩達にまで説得されてホント、渋々頷いたって感じでさ。あたしのは単なる愚痴
だもん』
『あたしだって、二回目の時はそこまで文句言ってなかったわよ。今回でもう四回目よ?
四回目。普通、あり得なく無い?』
腰に手を当てて、先輩はザッと周囲を見回す。
『でもさ。サイコロ振ったって同じ目が四回連続で出ることはあるし。運試しなんてそん
なもんじゃないかな?』
遠慮がちに山田君が反論すると、先輩がさも不満気に彼を睨み付けた。
『それはサイコロの話でしょ? あたしたちがやってるのはくじ引きじゃない。全然比較
対象にはならないわよ』
298 :
4/6:2014/01/12(日) 14:59:24.25 0
確率論の話をしている訳だから彼の言い分は間違っていないと思うのだけれど、今の先
輩にそんな理屈は通用しない。
『まあまあ。でもさ。4回も連続で別府君と同じ組み合わせになるなんて、むしろすごい引
きだと思わない? これはもう、神様が仕組んでるとしか思えないわよ。きっとさ。別府
君と組む事で、何か明るい未来が開けるとかあるんじゃない?』
ニコッと笑って軽くウィンクなんてしてみせる調ちゃんだったが、もちろんそんな事で
先輩が納得しようはずもない。
『冗談言わないでよ。よしんば神様が仕組んだとしたら、あたしは神様を許さないわ。え
え、そうよ。別府君と組まない為だったら、あたしは天にだって逆らってみせる!!』
グッと拳を握り締めて先輩は力説する。威勢は良いが、逆らう内容が余りにも小さ過ぎる。
「しかし、何で別府をそこまで嫌うかねえ。別にブサメンでもないし、オタク的な気持ち
悪さがあるって訳でもないし、性格だって穏やかでシャレも聞くし、しゃべっててつまん
ないって事もないし、無難過ぎてつまんないって事はあっても、そこまで拒否る事もない
んじゃね?」
脇谷君がちょっとウンザリした様子で言うのを、先輩は睨み付けた。そしてその視線を
全員に振り向ける。何となく、全員の雰囲気が同じなのを察したのだろう。一瞬、屈しか
けた先輩だったが、そこは強気にグッと踏み止まる。
『あたしだって一度や二度ならここまで文句言わないわよ。4回も、それも入部してからずっ
と、二人組で行動する時は一緒だから、いい加減ウンザリしてるってだけ。好きとか嫌い
とかそういう問題じゃないんだってば!!』
でも普通は好きならここまで嫌がらないと僕は思う。あくまで普通は、の話だけれど。
いずれにせよ、今日はまとめてくれる先輩達もいない。ということは、みんなが怒り出
す前に僕が出なければならないだろう。
「ところで聞くけど、この組み合わせじゃなきゃ嫌だっていう人は、この中にいる?」
僕の発言に、先輩も含め、一斉にみんなの視線がこっちに集まる。
『あのさ。それってどういう意味で言ってんの? もしかして、クジやり直すってこと?』
察しのいい調ちゃんに、僕は頷いて答える。
299 :
5/6:2014/01/12(日) 15:00:37.55 0
「このままじゃ収まりそうもないしね。だけど、椎水さんだけの意見を聞く訳にも行かな
いから、他の人の意見も聞いとこうと思って。だって、厳正なクジの結果は結果なんだし、
もしもう一度クジを引き直すのが嫌だって言う人がいたら、そっちを優先するべきだと思うから」
『あたしは別に誰とだっていいけど……翠は?』
『私も、別に…… 男子の皆は?』
女子二人から視線を向けられて、僕以外の男三人はお互い顔を見合わせて肩を竦めた。
「いや、別に。僕もこの三人じゃなきゃ嫌だって事はないし」
「まあ男だけ三人組ってのも華がないしな」
「気楽でいいってのはあるけどさ。下ネタとか出来るし。でももちろん、女子がいればそ
れはそれで楽しいからね」
一年生は全部で7人なので、二人組だとどうしても一人余る。活動内容によっては一人
になったりバックアップに先輩が入ったりするけど、今回は三人組だ。
『けどさ。かなみにはキツイ言い方だけど、一人のワガママを認めてやり直してたんじゃ、
キリが無くない? 一度こういう前例作っちゃうと、いちいち文句のある人の言い分聞か
なくちゃいけないじゃん』
調ちゃんがもっともな反論をした。僕は仕方なさそうに肩を竦めてみせる。
「まあ、今回は特例って事で。このままじゃ椎水さんの収まりが付きそうにないし。だか
ら最初にみんなに聞いた訳。でも、これと言って他にこの結果にこだわってる人もいない
みたいだからいいんじゃないかって思うんだけど。どう?」
これが先輩からだったらまた紛糾するだろうけど、断わられている当事者の僕からの提
案だけに、みんな決めるのにさほどの時間は掛からなかった。
『……別府君がいいって言うなら、私は別に反対しないけど。長友さんとも二回目だしね』
「俺も別にいいぜ。つーか、今まで一度も女の子と組んだことないからさ。またかよって
思ってたこともあるし」
音羽さんと脇谷君に続いて、他の皆も同意の声を上げる。僕は先輩にニッコリと頷いた。
「だ、そうだよ。椎水さん。リベンジの機会が出来たからね」
『何よ。その恩着せがましい言い方は。別に頼んだ訳じゃないし、感謝なんてしないからね』
300 :
6/6:2014/01/12(日) 15:01:44.94 0
お礼を代わりに憮然とした顔で文句を言う先輩に取り合わず、僕はルーズリーフを一枚
取り出してボールペンと一緒に先輩に渡す。
「はい、これ。お願いします」
『何よこれ?』
聞き返す先輩に、僕は頷いた。
「椎水さんのリクエストでやり直しになったんだから、本人がクジを作り直すのは当然だ
と思うけど。それに、椎水さんが自分で作れば、他に誰も細工なんてしないでしょ?」
ニッコリと笑う僕を先輩は忌々しげに睨み付けたものの、言い返す言葉が見つからずに
大人しく紙とボールペンを受け取った。
『分かったわよ。今度こそ絶対に、アンタと組まないようにしてみせるんだから』
その2は明日の夜くらいに
飯食ってたら落ちてた
友ちゃんに甘える振りしておっぱいに顔をうずめたい
山「とーもちゃん」むぎゅ
友「ひゃっ、こ、こら、離れなさいっての」
山「えー、ふたりっきりの時くらい、甘えさせてよ」
友「あんたは甘え過ぎなのっ」
山「甘え足りないんだぁ」
友「もー、仕方ないわね」
山「…なんだかんだで許してくれるんだから、友ちゃんは優しいよね」
友「別に許してないわよ。止めてもやめないから、あきらめてんの」
山「あはっ…でも、ありがと」
友「…ふん」
山「…んー…」むにむに
友「んぁっ!?…ど、どこ触ってんのよ!!」べしっ
山「あだっ!?」
友「…あんた、さては甘えるふりして私のおっぱいを狙ってたわね!?」
山「柔らかい感触を求めてたら自然と…」
友「…ほんと山田ってむっつりスケベなんだから」
山「さーせん」
友「…まぁ、するのは私だけって約束するなら、許してやらないでもない…けど」
山「まさか友ちゃんから許可が降りるとは」
友「許可じゃないっての!!ほんと都合のいい解釈ばっかりするんだから」
山「でも、友ちゃんだけにするなら良いんだよね?」
友「…そう、だけど…」
山「わーい。じゃあ友ちゃんおっぱいをたくさん堪能しよっと」むにむに
友「やぁっ…も、もう…ばか…」
遅ればせながら、みんな可愛いぜGJ!!!
307 :
1/5:2014/01/14(火) 06:00:02.07 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その2〜
先輩の作ったクジを布製の袋に入れて、全員で中をかき混ぜる。それから一人ずつ順番
にクジを引いて行き、最後に残った一つの紙縒りを先輩が取ってから、一斉に中に書いて
ある組み合わせのアルファベットを確認した。
『ねえ。Bって誰? あたしとなんだけど』
「あ、それ僕。よろしく、調ちゃん」
『山田かあー。さっきの組み合わせなら、翠ちゃんとだったから打ち合わせに甘い物食べ
に行こうかって思ってたんだけどなあ。よし。一緒に行くか。あたしお金ないけど』
「それって遠回しにおごってくれって言ってるよね……?」
『アハッ。まあ、大丈夫よ。そんなに高いもの頼まないからさー。男の子なんだし、大船
に乗った気でついて来いって言ってくれるくらいの気概欲しいよね』
「あのさ。俺、Aなんだけど」
「あ。俺もAだ。また脇谷と一緒かよ」
「また園田かあ。三回目じゃん? 組むの」
『あのー…… 私も、A……何ですけど……』
恐る恐るクジを差し出した音羽さんに男二人の顔が明るくなる。
「翠ちゃんもか。良かったー、今度はちょっとばかり華があるぞ」
「お前はこないだも音羽さんだったじゃん。俺なんて前回一人だったからさ。初、女子っ
て何かいいなあ」
『あれ? じゃあ……』
ふと、この結果に気付いた調ちゃんが僕と、そして先輩を見る。僕は自分の結果をそっ
と皆に示した。それを見た先輩の目が大きく見開かれる。そして次の瞬間、部室に大音響
がこだました。
『えええええええーっ!!』
308 :
2/5:2014/01/14(火) 06:00:57.22 0
「……椎水さん」
『……………………』
そのまま机に突っ伏したまま動かない先輩に、僕はそっと声を掛けた。くじ引きの結果
に絶叫してこの姿勢になったまま、他のみんなが掛ける声にも全く反応せず、そのまま結
局みんなは帰ってしまった。口々に慰めの言葉を口にしつつ。
「先輩。もうみんな帰りましたよ。今は僕ら二人だけです」
その呼びかけに、先輩の体がビクッと反応した。まるで恐る恐る、といった感じで僅か
に顔を上げる。そして、左右をキョロキョロと確認してから最後に横を向いて僕の姿を確
認する。安心させるように頷くと、先輩はパッと体を起こした。同時に、手に持ったまま
だったクジの紙を引き裂き、腕を高く上げて左右に広げた。
『あーっ!! もうっ!! 一体どんな確率なのよっ!!』
そしてキッと僕の方を見て睨み付ける。
『5連続よ? 5連続。神様のイタズラにしたって酷すぎるわよ。もー、信じられないっ!!』
「まあ、僕もさすがにこの結果には驚きましたけどね。いくら先輩と僕の縁が深いったっ
て、ここまで来るとさすがにあり得ないだろって思いましたけど」
ちょっとおどけた感じで肩をすくめてみせると、先輩はうんざりした様子でハーッとた
め息を吐くと、首を大きく左右に振った。
『ホント、認めたくないけど縁だけは深いわよね。大学は一緒になるわ、同じ部に入部す
るわ、それでもって毎回同じ組み分けでしょ? しかも3人組ですらないし。もしこれが
神様のイタズラだとしたら頭おかしいわよ』
大学のくだりに関してはツッコミを入れたかったが、今のところそれは僕の期待込みの
思い込みの可能性もあるので、僕はスルーして首を傾げる。
「どうでしょうね? 案外、作為的な方がこの結果はあり得ないと思いますけど」
僕がもし神様だったら、僕が他の女の子と組んだ時に先輩がどういう顔をするのか、ちょっ
と見てみたい気もする。
『そんな訳ないわよ。4回全部、アンタとのコンビだなんて絶対何か見えない悪の力が働い
てるに決まってるわ。あたしに対する嫌がらせよ、これは』
309 :
3/5:2014/01/14(火) 06:01:44.64 0
ぶつくさと文句を言っているのはさっきと同じだけれど、さらに一回多く上積みされた
割には必死感が感じられない。それはきっと、僕と組むのが嫌だとアピールしてみせる必
要があまり無いからなのだろう。同じように僕も、周りに人がいなければ遠慮なく先輩の
勝手な言い草にツッコミを入れることが出来る訳だが 。
「もしそうだとしたら、やっぱり日頃の行いのせいじゃないですか? 少なくとも、僕の
部屋で自分が散らかした物くらいは片付けるとか、僕に代返とかノートを任せて野上さん
なんかの誘いにほいほい乗って遊びに行っちゃったり、バイトの給料日前で金欠になると
僕に何かと勝負を持ちかけて奢らせようとするとか、そういう所から改めれば、きっと神
様もそんな嫌がらせは止めてくれますよ」
『うるさい!! アンタにだって原因はあるかも知れないじゃない。潔癖で男のクセにキ
レイ好きで、真面目で堅物で説教魔でドケチで、数え上げればキリが無いわよ』
僕もそうそう甘い顔はしていられないとはいえ、どれだけ先輩に奉仕してあげているの
か、この人は自覚しているのだろうかと、時々主張したくなる。お昼ごはん代を賭けたゲー
ム勝負とかだって、敢えて勝たせてあげて奢ってあげてる事だって何回もあるのに。
「キレイ好きなのも真面目なのも、面白みや魅力は無いかも知れないですけど悪い事じゃ
ないですよね? 説教をするのは先輩がむしろ女子としてはだらしなさ過ぎな面が多々あ
るからであって、それは僕だけじゃなくて先輩のお母さんや妹の美希ちゃんも一緒ですよね」
『何でそこでウチの家族を引き合いに出して来るのよっ!! アンタは家族でも何でもな
いでしょうが。確かにそりゃあ片付けだって料理だって得意じゃないけど、あたしのそれ
とアンタの性格の悪さには何の因果関係も無いわよ。人のせいばかりにして。最低』
ガタンと椅子を鳴らして立ち上がると、先輩は不満気に喚き散らした。どうあっても先
輩は、この不幸な偶然を僕のせいにしたくてしょうがないらしい。
「じゃあ、仮に僕のせいだとして、一体僕がどうすれば先輩との不可解な縁を解消できるっ
て言うんですか? 先輩にアイデアがあったら言って下さいよ」
310 :
4/5:2014/01/14(火) 06:02:55.02 0
ちょっと一歩引いて、仮定の話として先輩の主張を認めた上で意見を聞いてみる。する
と先輩は険しい顔のまま、黙って考え込んだ。その眉間の皺がどんどん深くなってくる。
『うーん…… もうちょっとアンタがあたしに対する扱いを良くしてくれる……とか?』
「例えばどんなです?」
またこの人は自分勝手な事を、と内心呆れつつも僕は最後まで言わせてみることにした。
『そうね…… 例えば、こっちからいちいち仄めかさなくてもご飯ご馳走してくれたり、
細かいお説教はいちいち言わずに、黙ってあたしが散らかした物も片付けてくれたりとか、
色々と気配りして、女の子らしく扱ってくれたり……とか?』
珍しく先輩の表情が媚びるような可愛らしいものになったが、どう考えても悪女のそれ
です。ちっとも嬉しくない。
「それって、むしろ神様が呆れてより先輩に厳しい罰を下しそうな気がしますけど」
『うっ……るさいな、もうっ!! そういうリアルに厳しい事言うのがアンタのダメなと
こだってのよ!!』
たちまちのうちに先輩の顔がしかめっ面に戻ってしまう。だけどまあ、うっかりご機嫌
取りなんてしたら味をしめてしまいかねないので、そこは仕方が無い。
「で、どうするんですか? もう一度、異議申し立てをします?」
このまま一向に止まない先輩の愚痴を聞き続けるのもいい加減飽きてきたので、僕は先
輩の意志を確認する事にした。さすがにもうくじ引きのやり直しはちょっと厳しいので、
万が一先輩がどうしても受け入れられないと言うのなら、色々裏から手を回さなければならない。
『仕方ないでしょ』
先輩は力なく椅子に腰を下ろすと、行儀悪く両足を机の上に投げ出して体を後ろに逸らした。
『くじ引きのやり直しまでしたのに、これで文句なんて言ったら、さすがにみんなに呆れ
られちゃうわよ。受け入れるしかないでしょ。ハーア…… まーた別府君かぁ…… たま
には誰でもいいから違う組み合わせが良かったのになあ……』
「一応聞いておきますけど、先輩は本気で僕と組むのを嫌がったんですか?」
何気なく、そんな質問が僕の口を突いて出た。自分でも意識してなかったけど、先輩の
本心を一応確かめておきたかったのかも知れない。
『当たり前でしょ? 誰がアンタなんかと組みたいって言うのよ』
311 :
5/5:2014/01/14(火) 06:05:15.35 0
即答する先輩だったが、その答えは僕の聞きたい答えじゃない。むしろ当たり前過ぎる回答だ。
「別に本当は組みたかったんじゃないんですかなんて、そんな質問はしてません。僕が聞
いているのは、嫌かどうかです。あそこまで頑強に抵抗して、結局やり直しまでした訳で
すから、もしかしたらそこまで嫌がられてたのかなって」
『……そ……そりゃあその……嫌よ? 嫌に決まってるじゃない。ていうかその……何で、
そんな事聞くのよ?』
肯定はしたけれど、口調にどこか自信が無い。何というか、こっちの顔色を窺うような、
そんな答え方だ。
「そりゃあ、本気で嫌がられているなら、付き合い方も色々と考えなくちゃいけませんか
ら。どうしても嫌で、我慢して組むというくらいなら、さすがに僕の方からお願いして誰
かと変わってもらう方法もありますし」
『ちょ、ちょっと待ってよ。それだったら、その……二度目のクジを引く前にそういう事
はやらなきゃ。もうみんな、決まったコンビで出し物考えてるのに、今更チェンジなんて
納得行ってくれないわよ。そもそもやり直し提案したのアンタなんだし……もう諦めるし
かないでしょ』
「クジは無理ですけど、脇谷君とか女の子と組みたがってたし、代わってくれっていった
ら、承知してくれそうですけど」
『ワッキーは一応翠ちゃんとも一緒だったからもう不満ないんじゃないの? 今頃楽しく
打ち合わせしてるわよ』
「グループと二人組ってのはまた違うでしょう。まあ、確かに今更感はありますけど、僕
が上手に頼めば代わってくれない事無いと思いますよ」
結構真面目に話す僕を見ていた先輩が、急に顔を逸らした。僅かに不安げな色が浮かぶ
のを、僕は見逃さなかった。
312 :
6/6:2014/01/14(火) 06:06:39.46 0
『そ……そこまでして貰う必要ないってば。嫌は嫌だけど……その……ど、どうしても組
みたくないって訳じゃないし…… ただでさえアンタとは過ごす時間長いのに、部活での
コンビもいつも一緒じゃ飽きちゃうじゃない……まあ、みんなは知らないことなんだけどさ……』
先輩が暇な休みの日にはしょっちゅう僕の部屋に遊びに来ている事は、誰も知らない秘
密である。もっともそれを知れば、完全にカップル扱いになって、くじ引きも無しにコン
ビを組まされそうな気もするけれど。
「どうしてもじゃないって事は、じゃあどれだけ僕のことが嫌なんですか?」
一歩先輩に近寄って、上から先輩を覗き込む。すると先輩が驚いた顔をして体を引こう
とした。途端にバランスが崩れ、先輩は悲鳴を上げて椅子ごと後ろへと倒れ込んだ。
続く
ちょっとはみ出してしまった。
お題
つ・何度も同じ間違いをするツンデレ
このまま先輩SSの続き投下します
315 :
1/4:2014/01/16(木) 07:13:00.04 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その3〜
『き……きゃあああっ!!』
「っと!!」
先輩がひっくり返る前に、僕は急いでしゃがむと、先輩の倒れ込む先に片腕を先に差し
込み、グッと押さえ込むとすぐにもう片方の腕を前から回して先輩を抱きかかえる。もち
ろん、あらかじめ予測していたからこそ出来た事だ。
「大丈夫ですか? 先輩。背もたれにあんな風に体を預けていたら危ないですよ」
両腕で先輩の体をしっかりと抱いているので、体がどんどん熱くなっているのが感じら
れる。心臓の鼓動がドクドクと激しくなってきているのも。
『ア……アンタが脅かすから悪いんでしょうが!! と、とにかく早く起こしてよ!!
誰か来たら誤解されちゃう』
「その前に、机から足を下ろしてください。そうすれば重心が前に行きますから」
先輩が指示に従って足を下ろすと、僅かに重心が前に行く。それを感じてから、僕は先
輩の背中の方に体を差し入れるようにしつつ、ゆっくりと上に押し上げるように先輩の姿
勢を元に戻す。力が必要だったのは最初だけで、一度動くと後は勢いで椅子は元通り起き
上がった。
『フゥ…… もう、勘弁してよね。いきなり上から覗き込まないでよ。ビックリするから』
「すみません」
僕は素直に頭を下げた。正直、申し訳ないとは思いつつも、先輩のドキリとする顔がみ
たかったのだ。
「で、話を戻しますけど。どれだけ僕の事が嫌なんですか?」
先輩のすぐ横で、半分机に腰掛けるような姿勢で僕は顔を傾け、横目で先輩を見た。僕
をチラリと見上げた先輩は、すぐに視線を逸らして下に落としてしまう。
『い、嫌って……別府君と組むのは飽き飽きしてるしうっとうしいから嫌だけど……アン
タそのものが嫌とまでは言ってないわよ……』
あまり厳しく拒絶すると、本気で遠ざけられると危惧したのか、先輩の表現が和らぐ。
僕はクスリと笑って頷いた。
316 :
2/4:2014/01/16(木) 07:13:31.56 0
「じゃあ訂正します。先輩は僕と組むのがどの程度嫌なんですか? どうしてもじゃないっ
て事は、なるべく? それとも出来ることなら? それともどちらかといえばとかそんな
感じですか?」
『そんな風に畳み掛けるように言われても答えられないわよ!! 大体、なるべくと出来
る事ならとか、すごく曖昧だしどっちがどのくらいより酷いとか分かんないじゃない!!』
思いつきで何となく口にしただけに、確かに先輩の言う事には一理あった。ならばと僕
は、すぐに代わりの案を出す。
「だったらこうしましょう」
僕は拳を握ると、人差し指を立てて先輩の顔の前に出した。
「この垂直の状態が普通だとします。で、この状態が絶対に嫌。どうしても組みたくないレベル」
手首を曲げて指を90度左に倒す。
「用はメーターの代わりですけど、先輩の気持ちで、どのくらい僕と組むのが嫌なのか示
して貰えますか?」
『こ……こう?』
意外と先輩は、素直に僕の真似をして握り拳に人差し指を立てる。
「はい、そうです。で、そのまま手首を曲げて指を倒して下さい」
『……こんな感じ?』
「そうです。その状態が嫌のMAXだと思って下さい」
『これが普通で、これが一番嫌ってこと?』
先輩は僕の言った通りに指を立てて垂直にしたり横に倒したりする。
「そうですね。それで表現してみて下さい。それなら、嫌の度合いが一目で分かるでしょう?」
先輩は僅かに小首を傾げて、それから指を平行より更に下に向けて見せる。
『じゃあさ。このくらいまで下げたら、それは死ぬほど嫌よ。近寄らないでってそういう
意味でいいのかな?』
「いいですけど…… まさか先輩。一番嫌じゃ収まり切れないほど嫌って事ですか?」
さすがにあっさりとそこまでメーター振り切られたら、僕でも傷付くなと思ったのだが、
先輩は唇を突き出して不満気な表情をすると、視線を逸らす。
317 :
3/4:2014/01/16(木) 07:14:03.56 0
『試しに聞いてみただけよ。まだそこまでするだなんて一言も言ってない』
「何だ。もしかしたら今のが先輩の答えなのかと思ってちょっとドキッとしちゃいましたよ」
ハッと顔を上げる先輩に、笑顔で僕は言葉を付け足す。
「例え先輩といえど、女の子にそこまで嫌われるのは、やっぱり嫌ですからね」
一瞬呆然とした表情を見せた先輩は、次の瞬間みるみる表情を怒りに変えた。
『例え先輩といえどって、どういう意味よこのバカーッ!!』
部室に怒声が響き渡る。僕は咄嗟に両手で先輩を制した。
「まあまあ。言葉のアヤって言えばそうですけど、大体先輩はいつでも僕と一緒は嫌だと
かアンタの事なんて嫌いなんだからとか言ってるじゃないですか。ある程度は耐性付いて
る先輩でもってそういう意味で、別に女の子として軽く扱ってる訳じゃないですって」
『どーだか。アンタって物腰穏やかそうで毒を吐きまくるから信用出来ないのよ』
憮然とする先輩だが、どうやら怒りはほぼ収まったようだった。
「で、どうなんです? 僕と一緒に組むのはどのくらい嫌なんですか?」
話を戻すと、先輩はハッとした表情を一瞬だけ見せて、それからもう一度しかめっ面に
戻ると苛立たしげに手を振った。
『ちょっと待ってよ。少し考えるから』
先輩は自分の顔の前で人差し指を立てると、思った以上に真剣に考え込み始めた。
「そう真面目に考えなくてもいいですよ。参考程度にするだけですから」
『そう言っときながら、アンタはあたしとの付き合いの仕方まで変えようとするでしょう
が。変なところで遊びに真面目なのよ。アンタは』
それは先輩も一緒だと思うと、僕は先輩の様子を見ながら心の中で呟いた。大体、そん
な風にしかめっ面ばかりしていたら、せっかくの綺麗な顔に皺が出来てしまうのに。
「まだですか? 自分の心に正直になればいいだけなのに」
悩まれれば悩まれるだけ、多分深みに嵌まるだろうと思って僕は早めに急かした。
『うるさいわね。その正直ってのがなかなか難しいのよ』
何度も指を倒したり起こしたり。その度に首を捻っては難しい顔をして。もちろんそん
な悩む先輩を観察しているのもとても楽しいのだけれど、でも結論を出す時の先輩を早く
見てもみたい。そこで僕は、もう一つ提案を重ねた。
318 :
4/4:2014/01/16(木) 07:14:34.35 0
「多分、余計な視界が入るから、雑念が入るんですよ。どうです? ここは一つ、目を瞑っ
てやるというのは」
『……目をつぶって?』
怪訝そうな顔の先輩に、僕は頷いてみせた。
「ええ。そうすれば、余計な視覚情報が入らずに済みますから、自分の心に正直に指のメー
ターを倒す事が出来るんじゃ無いかって思って」
先輩はちょっとあごに手を当てて考えてから、小さくコクリと頷いた。
『分かったわよ。じゃあやってみる』
小難しい表情で先輩は目を閉じて指を立てた。ほんのお遊びとはいえ、僕もちょっとだ
け緊張してしまい固唾を飲んで見守る。
『……それじゃあ……行くわよ』
そう宣言すると、先輩は指を90度横に倒した。
まさか、と一瞬僕はドキリとしたが、先輩の指はすぐに元に戻る。そしてもう一度倒し
て、今度は全部戻さずに半分ほど戻ってからまた少し倒し、また戻す。目を瞑っているの
で、最初に全開に倒してから角度の度合いを測っているようだった。
――遊びなんだから、そんな真剣にやらなくてもいいのに。
仮に90度真横に倒したとか、或いはそれ以上の結果だったとしても、僕はさほどには傷
付かないだろう。目を瞑って純粋に心の中だけで考えたとはいえ、それでも素直に先輩が
気持ちを表すとは思えないから。
『え、えーと…… このくらい……かな?』
考え事をしてるうちに、先輩が心を決めたようだった。僕はハッと視線を上げて先輩の
倒した指の角度を確認し、声を掛けた。
「いいですよ、先輩。目を開けて自分の倒した角度がどの程度か確認してみて下さい」
『う、うん……』
続く
ツンデレさんの汗ぺろぺろだわ
>>319 背中に指文字いいわあwww
先輩SSの続き投下します
322 :
1/4:2014/01/18(土) 09:26:06.70 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その4〜
恐る恐る、ゆっくりと先輩は目を開ける。そして自分の指の角度をしっかり視認したの
か、先輩の目がパッと見開かれる。僕は笑顔で頷いた。
「その指の角度が、先輩が僕と組むのがどのくらい嫌なのかって事でしたけど…… 意外
と、嫌じゃなかったんですね」
先輩の指の角度は30度より僅かに少ないくらいにしか倒れていなかった。時計の針で言
えば4分とかそれくらいでしかない。
「僕は正直、このくらいは行くと思ってましたけど」
時計の針で言えば10分くらいの角度まで自分の指を倒してみせると、先輩の頬がパッと
朱に染まった。
『ち……違うのよ!! ホントはその……もう少し嫌だったんだけど、あんまり倒し過ぎ
るとアンタが拗ねるかなって思って…… それでその、もうちょっとだけ戻そうかなって
思ったら意外と戻しちゃってて……ホントはこう。このくらいは倒したかったのよ』
何故か先輩は照れて一生懸命に弁解する。別に嫌の度合いがどの程度かってだけなのに、
まるで間違って組みたい方に振ってしまったかのような弁解の仕方だ。
「ダメですよ。さっきの指の角度が先輩の正直な気持ちなんですから。自分の出した結果
にはちゃんと向き合わないと」
キッパリと先輩の弁解を退けると、先輩は更にムキになって食って掛かってきた。
『だって目つぶってたら角度なんて分かんないじゃない。あたしの感覚だとこれくらいは
曲げてたつもりだったのよ。なのに開けて見たら全然違う角度だし。こんなのあたしの気
持ちとは全然違うんだから!!』
必死になる先輩がとても可愛かったのだけれど、ここでニヤついた顔なんて見せた日に
はどれだけ怒られるか分からないので、僕は頑張って生真面目な顔を作る。
「それにしては先輩。目をつぶってからもしばらく指を倒したり起こしたり何回もしてた
じゃないですか。あれで角度を測ってたんじゃないですか?」
僕の指摘に、先輩は一瞬言葉に詰まる。
『だ、だからそれは…… 分からないから感覚で確かめようとしてたの!! 結局分かん
なかったけど…… 一応、あたしだって遠慮したんだからね!! アンタに気を遣っ
て!! ただ、それが思ってた以上に戻し過ぎちゃったってだけで!!』
323 :
2/4:2014/01/18(土) 09:26:37.61 0
「ありがとうございます。その気遣いも含めた上で、あの角度が本当に先輩がどの程度嫌
かって言うのを示してると僕は思うんですよね。普通、本気で嫌な人には気遣いだって示
したくはないと思いますし。ましてや先輩と僕の仲なんですから」
最後に付け加えた一言に、先輩の顔が何故か赤味を増す。恐らく恋人同士みたいな関係
を想像したのだろう。その証拠に、僅かの間を置いた後、先輩は猛然と否定し始めた。
『なっ…… 何勘違いしてんのよっ!! アンタとあたしの仲なんて……単なる同じ学校
の部活仲間ってだけじゃない!! 高校でも大学でもっ!! そりゃあ確かにその、部屋
にお邪魔させて貰っちゃったりしてるけど、でもそれ以上でも以下でも無い!!』
「僕は別に、どんな仲とも言ってませんけど?」
先輩の反応を楽しみつつ、僕はしれっとした顔で言ってみせた。怒っているからなのか、
興奮しているからなのか、はたまた恥ずかしさからか、先輩の顔はもう誰が見ても分かる
くらいに真っ赤だ。
『嘘よっ!! いやその……嘘っていうか、確かに口では何も言ってないけど、今の言葉
は明らかに深い仲だって言いたげだったじゃない!! 冗談じゃないわよっ!!』
「親しいかどうかはともかく、今先輩が言った付き合いだけでも十分仲は深いと思います
けどね。遠距離恋愛のカップルがひと月の間に恋人同士で過ごす時間よりは、僕らの方が
ずっと一緒にいると思いますけど。否定出来ます?」
先輩はウッと言葉に詰まる。否定したいけど出来ずに苦悶する先輩を前に、僕はもう一
押し、畳みかけた。
「ですよね? もう4年もこんな仲を続けていたら、少なくとも嫌なのに相手に遠慮して
気遣いを見せる必要が無い程度には深いと思いますけど。だから、先輩が僕に対して気遣
いをみせてくれるって言うのは、本気で僕の事を考えてくれてるのかなって思って。だか
らお礼を言ったんです」
こうやって理詰めで押すと先輩は弱い。多少論理に無理があろうが、正論っぽく堂々と
言い切れば、抵抗出来なくなってしまうのだ。
324 :
3/4:2014/01/18(土) 09:27:13.70 0
『べ、別にアンタの事を考えてとかじゃ…… ただその、あんまり強く拒否し続けると、
もしかして拗ねてまた別の事でグチグチと文句言うかなとか……そんな風に思っただけよ。
余計な雑念が入ったから、思ってた以上に戻しすぎちゃったってだけ。本当にそれだけな
んだから……』
何でこんな照れた顔で言い訳をするんだろうかと、半分おかしく、半分不思議に思いつ
つ僕は先輩を眺めていた。まるで、間違って僕と組みたい方向にメーターを振ってしまっ
たようなそんな態度だ。まさか勘違いしているとは思わないけれど、一応助け舟を出すこ
とにした。
「まあ、どっちにしても先輩が僕と組むのを嫌がってる事には変わりないんですけどね。
こんなのは単なる程度の差でしか無い訳ですから」
すると先輩は、我が意を得たりという感じで猛然と頷いた。
『そう!! そうなのよ!! 嫌っていうか、正直もう飽き飽きしてるんだから。本当、
うんざりしちゃう!!』
嫌がってる相手の助け舟に乗っかって拒絶するって言うのもどうかと思うけれど、まあ
これで先輩の気分が良くなるのなら、問題は無い。それに、いつもの事だし。
「でもまあ、いつまでも嫌だ嫌だって言っても始まりませんからね。僕らもそろそろ打ち
合わせでもしましょうか。何処か寄ります? ミスドとかマックとか。それとも僕の家で
お茶飲みながらにしますか?」
『ちょっと待って』
バッグを肩に担いで帰る準備をする僕を、先輩が押し止めた。
「はい? 何ですか?」
まだ何か用事が残ってるのかと首を傾げつつ聞き返すと、先輩はジッと僕を睨むように
注視してきた。
『あたしにだけ答えさせるの、ズルい』
「は?」
ちょっと先輩が何を意味して言っているのか、僕は理解出来なかった。すると先輩は、
苛立たしげに頭を振ってから、バンと手の平で机を叩いた。
『だからズルいって言ってんのよ!! あんたと組む事についてどう思ってるか、あたし
にだけ答えさせといて、何でアンタは答えないのよ』
睨み付ける先輩に、僕は眉を顰めた。
325 :
4/4:2014/01/18(土) 09:28:13.03 0
「ちょっと待って下さい。それは、先輩が僕と組むのを凄く嫌がってる割に、誰かと代わ
りましょうかと提案したら、そこまでする必要はないって言うから、だったらどのくらい
嫌なのか知りたいなって思っただけで、先輩と組む事に不満の一つも言ってない僕が何で
答える必要があるんですか?」
『あるから言ってるんじゃない!! むしろその……何にも言わない方が怖いわよ。相手
が自分の事をどう思ってるか分からなかったら、コンビとしての接し方が分かんないじゃない』
「これだけ普段一緒にいて、今更接し方が分からないとか言うんですか?」
だとすればちょっと困ってしまう訳だが、先輩は不満気に口を尖らせる。
『ただ一緒にいるだけと、コンビを組んで出し物をするのじゃ違うの。こういう時はお互
いの呼吸とか空気感が凄く重要になるんだから。アンタの気持ちもちゃんと言っといて貰
わないとこっちの心の準備が出来ないわよ』
こじつけがましい先輩の意見に、僕は何となく先輩の意図が読めてきた。さっきの指の
倒し方の遠慮っぷりといい、自分でも嫌だ嫌だと言い過ぎて僕の機嫌を損ねてしまったか
どうが心配になって来たのだろう。
「先輩がどうしても聞きたいって言うなら言いますけど……いいんですか?」
一応、念を押す。こういう時僕は少し意地悪になるのだが、どうやら先輩には自分の好
奇心を抑える気持ちはないらしい。
『どうしても、っていうより不公平じゃない。あたしはちゃんとどの程度嫌なのか伝えた
んだから、あんたもちゃんと、あたしとコンビを組む事をどう思ってるのか伝えなさい。
まさか嫌とか言わないわよね?』
不安に思って念押しをする。しかし僕はあっさりと頭を振った。
「何言ってるんですか。無論、嫌に決まってるじゃないですか」
続く。あと一回だ
間違えた671.7だった
今気付いたが既に時遅し
風呂で寝てしまったし落としたし
先輩ツンデレSSの続き
7レス投下しときます
332 :
1/7:2014/01/19(日) 11:21:43.00 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その1〜
『どうしていつもこういう組み合わせになるのよっ!!』
狭い部室内に、先輩の苛立った怒鳴り声が響き渡る。困ったように取り囲んで先輩を見
つめるのは、僕ら広告研究会の一年生部員だ。ちなみにややこしいので一応断わっておく
と、先輩と言うのは僕の高校時代の部活の先輩だった椎水かなみという女の子の事で、一
年浪人して今は同学年である。だから厳密に言えばもう先輩ではないのだけど、僕が頭の
中で思い浮かべる時や二人きりでいる時は未だに先輩と呼んでいるのだ。
『まあまあ。そういきり立たないで。これも厳正なる抽選の結果って奴だから』
「そうそう。まあ何ていうか……偶然って怖いよね?」
長友さんと山田君が口々に取り成そうとするが、先輩は二人をジロリと睨み付け、バン
と長机を叩いた。
『これが偶然? 学校案内の写真撮影に学内報の取材係。学祭の時の模擬店の当番。で、
今日やった納会の出し物でのくじ引き。全部別府君とあたしの組み合わせじゃない。こん
な偶然あり得ないわ。誰かが仕組んでるとしか思えないわよ!!』
『でも、仕組む暇なんてないわよね。だってこのクジ、今みんなの目の前で私が作ったん
だもの。どこにも……その……手を入れる暇なんてなかったし、大体する意味も分かんないし』
クジを作った音羽さんが半分申し訳なさそうな困った顔を浮かべている。この場合、暴
風をまともに受けてあげるのは僕の役目だった。
「そうだよ、椎水さん。まあたまたまこういう運命だったってだけで。諦めよう」
『何、他人事みたいに言ってるのよアンタはっ!!』
僕が割って入ったことで、先輩の矛先が一気にこっちへ向いた。まあ、これでいい。
「だって仕方ないじゃない。音羽さんがわざわざ僕とせん――椎水さんを組ませようとす
るとは思えないしさ。学校案内の撮影の時は別にして、後は全部アンケートに希望書いた
ら偶然一致したとか、同じようにくじ引きだったりとかで、人の考えが入る余地なんてな
いし。不正があったならともかく、ここでケチ付けたって始まらないじゃん」
『だって、いつもよ? たまには他の人と組みたいとか思わないのアンタは。大体こうい
うのって、普通は男女別々にペア組むものじゃないの?』
コピペ間違えた……
上のはなしでお願いします
334 :
1/7:2014/01/19(日) 11:23:07.74 0
・いつも男と組まされてることに不満気な態度を見せるツンデレ 〜その5〜
『へっ……!?』
先輩の表情が凍りつく。静止してしまった先輩を前に、僕は先輩の心に言葉の鉈を振り
下ろした。
「これだけ嫌だ嫌だって言われていい気分でコンビを組める訳無いでしょう? 大体、先
輩ってこういう時いつも僕に全部任せっきりで自分では何一つしようとしないし、アイデ
アが気に食わなければ一人前に文句だけは言うけど、代案の一つも出さないでしょう?
苦労してやっと作ってもお礼の一つや褒め言葉も何にもないし。別に積極的に求めてる訳
じゃないですけど、さも当然のようにされればそりゃ面白くはないですよ」
僕の言葉を、先輩は呆然とした顔で聞いていた。顔は僕の方を向いてはいるものの、視
線は虚ろで視界に僕が入っているのか、入っていても認識しているのかどうかは分からな
い。顔からは血の気が引き、唇が微かに震えている。
「どうですか? 一つとして間違った事は言ってないと思いますけど。全部自分がやって
いる事なんですから、ちょっと考えればこういう答えが出て来る事くらい分かってもおか
しくないと思いますけどね」
冷たく僕はばっさりと先輩を切り捨てる。そしてそのまま先輩の様子をジッと窺った。
僕の答えに先輩は動揺して混乱していたように見えたが、やがて震える唇が、意味を持っ
た言葉を吐き出した。
『だったら……何で……アンタは嫌って……言わなかったのよ…… 聞かれた時に……
アンタが言えば……みんなだって聞いてくれたかも……知れないのに……』
さっき僕が脇谷君に聞かれた事を言っているのだろうと僕は解釈した。この矛盾点が、
先輩の縋る希望なのかもしれない。しかし、僕はいともあっさりと、その問いに答えてみせた。
「だって、自分が組んで嫌な人を他人に押し付けるなんて出来る訳ないじゃないですか。
くじで誰か先輩が別の人と組んだのならともかく、僕に当たってしまった以上、それは運
命ですからね。まあ、先輩が駄々をこねたおかげで上手い事やり直しまでは持っていけま
したけど、こうなった以上は仕方ないですよ」
『仕方なく無いわよっ!!』
335 :
2/7:2014/01/19(日) 11:23:42.59 0
先輩の怒声が部室中に響き渡った。これは恐らく両隣の部室にも届いているだろう。も
うどこの部活も年内の活動はほぼ終わっているはずだから、誰も部屋にいなければいいの
になと、僕はそんな心配をしていた。
『冗談じゃないわ。あたしだって願い下げよ。アンタみたいな腹黒で、おまけにあたしの
事嫌ってる人間となんか組める訳ないでしょ? 今すぐワッキーでも誰でも電話してコン
ビ変えてもらうようお願いしなさいよね。あたしはもう金輪際、アンタなんかと組む気は
ないから』
まさに柳眉を逆立てるという形容が似合うような形相で先輩は一気にまくし立てた。し
かし僕は先輩の言葉に一向に怯むことなく、ニッコリと笑顔を見せた。
「嫌ですね」
普段と同じ、平然とした態度で先輩の言葉を突っ撥ねると、先輩は一瞬たじろいだ様に
見えたが、すぐに気を取り直して突っ掛かってきた。
『何でよ? アンタだって嫌なんでしょ? お互い、組むのが嫌な者同士で何かやろうっ
たって、面白いものが出来る訳無いじゃない。アンタだってさっき、ワッキーなら断わら
ないだろうって言ってたでしょ? 別に相手に気を遣う必要も無い訳だし、変えて貰いなさいよ』
「お断りします。だって、先輩と組むのは僕ですから」
頑なに譲ろうとしない僕に、先輩の顔に苛立ちも混じって来た。
『だから何でよっ!! そこにこだわる理由が分かんないわよ。くじ引きの結果だから?
そんなもの、別にちょっとくらい変えたっていいでしょ? ワッキーに迷惑だから? ア
イツはアンタほどは使えないから、あたしだって色々やんなきゃダメだろうし、あそこま
で依存出来ないわよ!!』
理解不能とばかりに喚き散らす先輩に、僕は頷いて答えた。
「理由ですか? そんなの簡単です。さっきの言葉は、嘘だからですよ」
『は?』
今度こそ頭の中が空っぽになったかのようにポカンとした顔で静止した先輩に、僕は笑
いを禁じえなかった。ニヤつく顔を必死で抑えつつ、僕は頷く。
「だから、嘘なんですよ。先輩と組むのが嫌だなんていうのはね。まさか本気で信じちゃっ
たんですか?」
336 :
ほんわか名無しさん:2014/01/19(日) 11:26:36.92 0
連投回避
337 :
3/7:2014/01/19(日) 11:27:02.56 0
からかうような口調の僕を見つめ、呆然としていた先輩の思考が徐々に動き出して行っ
た。状況を理解すると同時に、体がみるみるうちに朱に染まっていく。
『この……ドバカッ!!』
言葉と同時に、ギュッと握った先輩の拳が、僕の腹部目掛けて繰り出された。咄嗟に急
所だけはかわしつつ腹に力を込めると同時に、ドンッという衝撃が腹に響く。女の子のパ
ンチとはいえ、それなりには効くものだ。
『何でそんな嘘吐くのよっ!! 訳を言いなさい訳を!! 事と次第じゃただじゃ済まさ
ないわよ』
「理由の一つはちょっとした仕返しです」
殴られた痛みに顔をしかめつつ、僕は頷いた。
「恐らくみんなの前だからってちょっと過剰に演出したんでしょうけど、それでもあれだ
け嫌だ嫌だって言われれば、分かっていても面白くはないものですから。だから先輩にも
ちょっとは同じ気分を味わわせれば、僕の気持ちも少しは分かってもらえるかと思って」
『それだけ? そんな理由であたしを騙したの? そりゃあたしだって多少は悪い事も言っ
たと思うけど、あそこまで完全否定はしなかったわよ。仕返しにしては酷すぎるって思わ
なかったの?』
人は自分のことはよく見えないと言うけど、先輩はまさにそれに当て嵌まる人だと思う。
だけどそれはおくびにも出さず、僕は違う事でそれを否定した。
「ちなみに、先輩と組むのが嫌なのは嘘ですけど、理由に挙げたことそのものは全部本当
ですからね。先輩自身、お分かりでしょうけど。つい今さっき言った、脇谷君には任せら
れないって言葉も裏を返せば僕には完全に依存し切っているという事ですから」
『うっく…… で、でもその……あたしだってあそこまで何にもやらない訳じゃないわよ。
学祭の時は買出しだって付き合ったし……』
「あの時は逆に、先輩には学校に残って仕事するようにお願いしたのに付いて来たんじゃ
ないですか。しかも、ショッピング気分で。余計な回り道したりお茶に時間使ったりで、
却って時間掛かったじゃないですか」
338 :
4/7:2014/01/19(日) 11:27:33.66 0
自分のアピールポイントをバッサリと断ち切られ、先輩が憮然とした顔をする。しかし
言い返すことは出来なそうだったので、僕は答えを続けることにした。
「で、それが理由の半分で、後の半分は単に先輩の反応が見たかっただけです」
『反応って……私の……?』
鸚鵡返しに自分を指して聞き返す先輩に、僕は大きく頷いた。
「はい。僕に拒絶された時の先輩はどんな態度を取るのかって。おかげでいいものを見せ
て貰えましたが」
答えてから笑顔になって先輩を見つめていると、最初ポカンとした顔だった先輩の顔色
が徐々に赤く染まって行く。そして遅れてその顔が怒りの形相になった。
『この……サディストおっ!!』
またしても、先輩の拳が僕の脇腹をヒットする。ただし今度は勢いが無いのでそこまで
痛くない。しかし、続けざまに次から次へと左右から先輩は拳を浴びせ掛けてきた。呪い
の言葉とともに。
『意地悪!! 変態!! 悪魔!! 人の心をおもちゃにして!! そんなに楽しいのっ!!
この性悪男が!!』
「先輩だって、僕の態度が見たくてわざわざ組んでどう思ったか聞いたんじゃないんです
か? それと同じですよ」
先輩の攻撃に耐えつつ、僕は先輩を宥めるように頭を腕で優しく抱えて片手でポンポン
と叩く。それを拒みこそしなかったが、先輩の怒りは収まらなかった。
『同じじゃない!! アンタは平然と……人を見下すような目で嫌だなんて言ってのけて
……信じられないわよ!! アンタみたいなペテン師じゃ、何の言葉を信じていいのか分
からないわよ!!』
しゃにむに殴りつける先輩をさすがに宥めない訳には行かず。僕は半ば無理矢理に先輩
の腕を掴み、自分の方に勢いよく引く。バランスを崩した先輩が僕の方に倒れ掛かると、
しっかりとその体を支えて、背中に腕を回し抱きかかえた。
「じゃあ、態度で示しますよ。本気で嫌な人を、こんな風に優しく抱いたりとかしないでしょう?」
339 :
5/7:2014/01/19(日) 11:28:04.95 0
驚きと動揺からか、先輩の体は硬くなっていた。そのまましばし、無言の時が過ぎる。
時間とともに、徐々に先輩の体の緊張が解け、同時に僕の体に預ける体の重みが増す。委
ねてくれているのだと思ってより強く抱くと、不満気な先輩のくぐもった呟きが聞こえた。
『嘘つき。今の抱き方、全然優しくなかった。信じられない』
確かにやり方は若干手荒かったけど、先輩の暴力を止めつつ抱こうとすると、ああいう
方法しか思いつかなかったのだ。
「じゃあ、これならどうです?」
背中を支えた手を動かし、頭に手を添えるとそっと撫でる。しかし先輩は僕の胸に顔を
埋めたまま、頭を振る。
『こんなんじゃダメ。アンタってば酷い嘘つきだもん。まだ信じられない』
何となく甘えているような言葉に心がくすぐられるが、僕は困ったように肩をすくめて
みせる。その動作は多分先輩にも伝わったはずだ。
「じゃあ……どうすれば、僕の事を信じてくれます?」
すると、先輩は僕と自分の体の間に腕を入れて、僅かに体を離した。そして顔を上げ、
上目遣いに僕を見つめる。顔はすっかり上気し、色っぽさすら感じた。潤んだ目が僕を見
つめていたが、すぐにやや自身なさげに視線が落ちる。
『そんなの……自分で考えなさいよ……』
言葉と同時に、先輩の体が僅かに強張った。体と体の間に差し入れられた腕が抜かれ、
僕の背に緩く回される。体は密着してはいないが、ほとんどくっ付きそうなほどの距離で
僕の腕は先輩の背中を抱き締めたまま、その体温の熱さを伝えてくる。先輩の顔をジッと
無言で見つめていると、先輩がチラリと逸らした視線を元に戻す。それはもう一度逸れる
事はなく、今度は彼女の瞼がその視線を遮った。あごを上げ、至近距離で目を閉じるこの
行為が何を要求しているか、男なら気づかない訳には行かない。
――誰も……来ないよな……
僕はチラリと横目で入り口のドアを見て、しっかりと閉まっている事を確認する。時間
はもう午後五時を回っていて、すっかり日も落ちてしまった。先輩がまだかとばかりに僅
かに身じろぎする。僕は自分を納得させるように一つ頷くと、僅かに身を屈めて先輩の顔
に自分の顔を重ね合わせた。
340 :
ほんわか名無しさん:2014/01/19(日) 11:30:00.72 0
もう一回
341 :
6/7:2014/01/19(日) 11:30:10.02 0
そっと、ノックするかのように唇を少しだけ触れ合わせる。それを二度、三度。抵抗の
意志が無い事を感じて、僕は優しく唇を触れると今度は離さずに、徐々に押し付けを強く
していく。既に密着した体から、先輩の鼓動が大きく激しく、伝わって来る。柔らかな先
輩の唇の感触を十分に感じ取ってから、僕は唇を離した。すぐ間近で囁くように先輩に問
い掛ける。
「……どうです? これなら……信じて貰えます……よね?」
先輩が目を開いた。余りの距離の近さに恥ずかしくなったのか、顔を少し背けて、照れ
た表情でボソボソッと答えた。
『……そう……ね…… 考えとくって……レベルかな……』
僕は鼻で吐息をついた。何処まで行っても、この人は本当に素直にうんとは言わない。
もはや呆れを通り越して可愛すぎてします。僕は手を先輩の顔に回し、無理矢理こっちに
向けさせた。
「それじゃあ……信じて貰えるまで、続けるしかないじゃないですけど、いいですね?」
そのまま、有無を言わせずに唇を重ねた。今度は最初から強く重ね合わせると、口を開
いて貪るように先輩の口を吸い、更には舌で先輩の唇を舐る。すぐに反応があって、先輩
の口が開き、彼女の舌が僕の舌に絡み付いてきた。そのまま僕らはたっぷりと、人が聞い
たら呆れる位長い時間の間、互いの口を吸い合ったのだった。
長いキスが終わり、体を離して互いに高まった熱を冷ましてから、僕は小さく呟いた。
「困ったな……」
『何がよ?』
聞き咎める先輩に、僕は照れた笑顔を向けてみせた。
「だって、これから先輩に本気で僕の気持ちを信じ込ませようとしたら、いつもキスしな
くちゃいけなくなりましたから。ここまでやらないと信じてもらえないって事は」
すると、せっかく冷めて来た先輩の体がまた熱を帯びてしまった。
342 :
ほんわか名無しさん:2014/01/19(日) 11:33:38.72 0
と
343 :
7/7:2014/01/19(日) 11:34:13.88 0
『バッ……バッカじゃないのっ!!』
先輩はクルリと僕に背を向け、なにやらモジモジした様子で言葉を続けた。
『こ、こんなのその……今日みたいにあたしを傷つけるような、そういう重要な時は必要
かも知れないけど……い、いちいちこんな事してたら身が持たないわよっ!! 調子に乗
るんじゃないんだから。分かったわね!!』
パッとこっちを振り向くとビシッと先輩は指を突きつける。
「はいはい。分かってますよ。でも、先輩ももう少し僕の言う事を信じてくれないと、で
ないとまた証明して貰いますからね」
にこやかに脅すような事を言うと、さっきのキスを思い出したのか先輩がまた恥ずかし
そうに体を動かす。
『う…… ぜ、善処するわよっ!!』
そうは言ったものの、この人の性格は絶対直らないんだろうなと、僕は苦笑する思いで
頷いたのだった。
終わりです
また次回に
先輩可愛いGJ!
ん、先輩は順調に調教されてるな
デレたときの先輩可愛すぎww
仕事中なのにニヤニヤしてしまった
GJ
代行スレ
>>808-812 『ふっふっふっふ…』
「どった?何か面白い事でもあったのか?」
『タカシよ…口のきき方に気をつけろ…』
「はぁ?なんだよ急に」
『私は…世界を支配した…』
「おーい山田、帰りにゲーセンよってこうぜ」
『聞け…』
「嫌な予感しかしないから聞きたくない。けどまぁどうせ話すんだろ、聞くよ、面倒くせぇ」
『科学と魔術の融合により得た秘技により…私はモノローグ…地の文を意のままにできる…』
「意味がわからん。アホか、なんだよ地の文って」
『今から見せてやろう…私の能力を…』
『やー』
「なんだよそのヘロヘロパンチは、速さが足りないぞ速さが」
ちなみの拳を躱そうとしたが遅かった、遅すぎた。そもそも対峙したこと自体が間違いだった。
虚を突けば勝てる。努力すれば勝てる。相手も所詮は同じ人間だ。そんな希望的観測が一瞬で崩れ去っていく。
そして、その鉄杭のような拳が鳩尾を正確に貫いた。
「がっああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
一瞬で肺の中の空気が空になったような錯覚に陥った。2メートル以上吹き飛ばされ、さらに数回床をバウンドし漸く勢いがおさまる。
鳩尾への一撃だったはずだが全身のいたるところが悲鳴をあげている。本能的に理解できた、
ちなみには勝てない
『どうだ…思い知ったか…』
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おかしいだろ!おまえのヘロヘロパンチどうなってんだよ!」
『ものろーぐぱわー…いえーい、ぴーすぴーす』ドヤァ
「聞こえてたよ、モノローグ!地の文なのにはっきり聞こえた。怖ーよ、無敵じゃねえかよ」
『さっき言ったはず…世界を支配する力だと…私の思いは…世界の思い…恐怖しろ…』
「地の文が妙にラノベ臭いことは触れないでおくよ。というか本当に全身が痛い、もう駄目だな、こりゃ」
絶対に叶わない、それでも彼は立ち上がる
全身が悲鳴をあげる、それでも彼は立ち上がる
諦めたって誰も非難しない、それでも彼は立ち上がる
「え?ちょっと待って、痛いです、体中痛いんですけど、寝てたいんですけど!」
すでに満身創痍でも、彼は絶対に倒れずに二本の足でふんばり、その拳を握りしめる
本当に恥ずかしがり屋で、皮肉屋で、無口で、口下手で、素直な気持ちを伝えられない
彼の気持ちを振り向かせる為に世界を支配する程の秘技を修得しても安心できないような憶病者を
愛する人を正気に戻すために
彼はその拳を握りしめる
その幻想殺s
「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
『モノローグを中断するとは…タカシは超能力者だったのか…』
「ちげーよ!お前からアウトな単語が飛び出てきたから叫んだんだよ!イマジンをブレイクすんな!」
『まぁ聞け…この秘技…修得したはいいが…自分で解除できなくて困っている…』
「あーなんとなく分かった」
『なので…タカシに解除してもらおうと思って…』
「最初からそう言えよ、殴られ損だよ。てか何で殴った」
『せっかくだから使ってみたかった!』
「なにその笑顔!なにその元気っぷり!三点リーダなしで会話できるな最初からしろよ!」
『こ…れ…は…私…の…ア…イ…デ…ィ…ン…テ…ィ…テ…ィ…ー…』
「読みにくい!いや、違うな。聞き取りにくい!」
『まぁとにかく…今タカシの右拳には…秘技を解除する能力がある…』
「一発殴ればいいのか?解除の為とはいえ気が引けるな」
『その辺は調整してほしい…それじゃあ決め台詞とともに…どうぞー…』
「はいよ、まぁ触れれば即解除だろうし、せっかくだから恰好つけて言ってみるか!」
けれども面倒くさくなった彼は平仮名三文字に略してしまった。
「そげぶ!(せめて恰好つけさせろよ!あ、モノローグの介入で力加減ミスった)」
『っげっはぁば!!!!』
「ちなみぃぃ!!大丈夫か、なんか女の子が出しちゃいけない声が聞こえたけど大丈夫か!?」
[もう下校時間ですよーって、これは一体!?別府君、ちなみさんを殴ったんですか!]
「委員長!?いや、これは、その事情が、」
[問答無用です!この鬼畜!ちなみさん、大丈夫ですか?早く保健室に行きましょう]
「待って、話を、話をさせてぇぇ!」
タカシの叫びが虚しく放課後の教室に響き渡るのだった
〜〜〜〜その夜、ちなみ家〜〜〜〜
『ふう…よかった…モノローグの中で愛する人と言ってしまったことは…うやむやになったはず…』
『世界を支配する秘技より…少しでいいから…自分の気持ちに素直になりたい…』
『(自分で言って恥ずかしい…寝よう…)』
〜〜〜〜その夜、別府家〜〜〜〜
「モノローグの中で、愛する人とか聞こえたけど気のせいだよな」
「もし本当だったら、ちなみは俺のことが…」
「(自分で考えて恥ずかしい、寝るか)」
終われ
何ていうかちなみん最強だなおいwwww
ちなみんかわゆー&ワロタww
355 :
ほんわか名無しさん:2014/01/21(火) 11:32:05.30 0
お題
つ・ツンデレに妹になってくれって言ったら
倍どころではないんですがそれは
制服の上から友ちゃんのおっぱいを吸いたい
お題
つ・ツンデレが忙しくてあまりマトモな生活をしていなかったら
友ちゃんの髪梳いてあげたい
お題
つ・男が職場を退職する事になったら
友「ふわぁ…あー、ねみー…」
山「あ、友ちゃんおはよ。もうあと10分で始業時間だよ」
友「まだ間に合うから大丈夫よ」
山「…もうちょっと余裕が欲しいんだけど」
友「うるっさいわね!もうさっさと行くわよ!」
山「…友ちゃんストップ」
友「…今度は何よ。急げだの待てだの、なんなのよ」
山「髪ぼさぼさ。直したげる」
友「はぁ?別にこんくらいどうってことないって」
山「…だーめ。ほら、後ろ向いて」
友「もう…仕方ないわね」
山「ふんふふーん♪」
友「…てかなんであんたヘアブラシ持ち歩いてるのよ」
山「え?そりゃ、友ちゃんがいつも寝癖直さないで学校来るからさ」
友「何よそれ」
山「友ちゃんはほんと脇が甘いからね。カメラに夢中過ぎて躓いて転んだりもするから、絆創膏とかも持ち歩いてるよ」
友「…ふぅん」
山「はい、終わり。うん、これでいつもの美人な友ちゃんだね」
友「なっ…ふざけんじゃないわよ!!」
山「ふざけてないよ。ほんと、素材は良いのにちゃんとしないから損してると思うなぁ」
友「別に私は男にモテたいわけじゃないし」
山「それでもさ、少しくらい早起きして、身だしなみ整えた方が良いと思うよ」
友「…絶対、やんない」
山「えー、残念」
友「(…だって、毎日山田に髪を整えて貰うのが楽しみなんだもん)」
うん。友ちゃん可愛いwwwww
ちょっと長めのSS投下します
374 :
1/8:2014/01/31(金) 23:45:11.07 0
お題作成機より:お嬢・文化祭・新聞
わたくしの朝は、早朝ランニングより始まる。これはお正月の休みであろうがバカンス
に出掛けていようが、欠かす事のない日課である。休むのは、風邪を引いた時くらいか。
『ハッ、ハッ、ハッ、ハッ』
耳に着けたイヤホンから流れる軽快なポップスに合わせるように、白い息が吐き出され
る。早朝の冷え切るような空気と運動で高まった体の熱が融和して心地よい温度になって
いる。ランニングも終盤。難所である急な坂を上り切ると、私はそこで息をついた。
『ハアッ……ハアッ…… ハアハア……ハア……』
ここで休むのには一つは無論、坂がキツイからだが、実はもう一つ理由があった。私は
ちょうど目の前にある住宅の門に掛かった表札を見上げた。そこには、別府、と書かれている。
――タカシ様……
その名を脳裏に呼び起こすだけで、胸がときめいてしまう。小学校から同じ学校に通い、
クラスはくっついたり離れたりしたが、ずっと同じ学校に通う、いわば幼馴染だ。地元の
名士である神野家とは格は全然違う普通の家柄だが、わたくしに分け隔てなく接してくれ
る貴重な友人であり、そしてわたくしの初恋の人でもあった。
――今……何をしていらっしゃるのかしら。恐らく寝ておられるわよね。まだ朝早いもの。
それに、彼は寝起きが悪いですし。
規律正しく育てられたわたくしからすれば、彼の素行はだらしないの一言に尽きるが、
わたくしはそこもまた、彼の良さだと思っている。無論、彼の前ではそんな事一言も口に
出せないけれど。
――まだ、タカシ様と出会えるまで、二日もありますのね。新学期が待ち遠しいですわ。
ハァ……
小さくわたくしは、心の中でため息を吐く。祝賀の客を出迎えるのに忙しい日々もよう
やく終わりを告げたが、それでもこの空いた二日を彼と過ごす為に呼び出す勇気など、わ
たくしにはありはしない。
『さて。そろそろ行きませんと。朝ごはんに間に合いませんわ』
375 :
2/8:2014/01/31(金) 23:45:42.35 0
家政婦の葛西さんが作ってくれる純和風の食事を思い、わたくしははしたなくも空腹感
を覚えてしまう。最後にもう一度、未練がましく彼の部屋を見上げ、そして視線を落とし
た時、道端にビニール紐で括られた雑誌や新聞の束が目に付いた。
――もう、お正月も終わりですのね……
少しばかり寂しさも覚えつつ走り出そうとしたその時、束になった新聞の一番上に括ら
れている紙面に目が吸い寄せられた。どこか見覚えがあるような気がしたのだ。足を止め、
後戻りをしてゴミ置き場に近寄り、紙面をもう一度確認する。その新聞が何なのか分かっ
た瞬間、わたくしは腰につけたポーチからスマートフォンを取り出し、操作し始めた。
――いくらタカシ様とはいえ……これは見過ごせませんわ!!
何度もコールを繰り返し、留守番電話のメッセージを聞いては掛け直すこと3回。よう
やく掛けた相手が電話に出た。
「……もしもし、理奈か? 何なんだよこんな朝早く」
『何なんだよ、じゃありませんわ。と、その前にちゃんと挨拶は済ませませんとね。礼儀
知らずにはなりたくありませんもの。お早うございます、別府さん。ちなみに今の時間は7
時ですわ。決して文句を言われるほど早朝ではないと思いますけど』
学生の冬休みは7日までだが、社会人であればもう起きて出勤の支度をしなければなら
ない。地元有力企業の社長である父も、今頃はキッチンでニュースを見ている頃だろう。
「……俺は休みの日は9時まで寝てる主義なんだけどな。で、何の用だよ。簡単な用なら
さっさと済ませてくれ。寝直すからさ」
普段はありがたい彼の気さくな態度も、こういう時は逆に腹が立つ。
『わたくし。今、貴方の家の門前におりますの』
意識して冷静に、わたくしは彼にそう告げてから、スーッと大きく息を吸い、今度は感
情を込めて電話越しに怒鳴りつけた。
『さっさと着替えて出てらっしゃいっ!! いいですこと? もしこの寒空にわたくしを
放置したままにして風邪などを引かせたら、一生払いきれないほどの賠償金を貴方に背負
わせて差し上げますからねっ!!』
そしてわたくしは、相手の返事も待たずに指を画面に叩きつけて電話を切ったのだった。
376 :
3/8:2014/01/31(金) 23:46:13.68 0
『遅いですわっ!!』
タカシ様が出て来るなり、わたくしは彼に怒鳴りつけた。実際にはさほどに時間は経っ
ていないのだが、いくらある程度の防寒対策はしてあるとはいえ、冬の朝にスポーツウェ
ア姿では体を動かさずにジッとしていれば凍えてしまう。
「これでも急いだんだぜ。理奈に怒られないように身支度を整えると、どうしてもこのく
らいは掛かるんだって」
『やる気があれば、もう2分は縮められたはずですわよ? 貴方が要領悪いから、このよ
うにわたくしを待たせるのではなくて? 本当に貴方と来たら、いくら言っても改善しな
いのですから』
寒空の中、イライラしながら待ったことで、わたくしの怒りは更に増していた。厳しい
口調で詰るが、タカシ様はそれには答えず、指で家を差した。
「とにかく寒いからさ。一旦中に入れよ。用があるなら、それから聞くからさ」
『結構ですわ』
気を遣ってくれたのだろうが、わたくしは一蹴した。肝心な物を目の前にしなければ、
抗議の言葉も薄れてしまいかねない。
『別に、わざわざ貴方の家に上がるほど時間は掛かりませんもの。用というのは、アレですわ』
わたくしは、道端に括られて置かれている新聞紙の束を指した。視線でそれを追ったタ
カシ様が、意味が分からないように首を傾げる。
「アレって……資源ごみがどうかしたのか? 年末の大掃除で整理したんだけど、もう資
源ごみは終わっちゃってたから……って、どうしたんだよ? 怖い顔して」
『貴方はアレをごみとおっしゃいますのっ!!』
いくらタカシ様の言葉とはいえ聞き捨てならず、わたくしは往来であるにも係らず怒鳴
ってしまった。
『わたくしたち新聞部の血と、汗と、涙の結晶である学校新聞の文化祭特集号を!! 部
長としてわたくしが、どれだけ心血をそそいで作り上げたか…… それを貴方は意図も簡
単に紐で縛り上げた挙句に、ゴミとまで呼ぶなんて、信じられませんわっ!!』
「学校新聞?」
377 :
4/8:2014/01/31(金) 23:46:44.87 0
憤るわたくしを見て、タカシ様が首を捻った。まさかそれと意識せずに縛ってゴミに出
したのだろうかという可能性にわたくしは思い至る。しかしだとしても、やはり許せない
事には違いがない。むしろ、それこそ存在価値そのものを否定するようなものだ。
『そうですわよ。貴方は何とも思いませんの? 必死で取材をし、原稿を書き、何度も編
集会議を重ねて紙面をデザインしてやっとの思いで刷り上げたというのに。よくもいとも
あっさりと捨てられますわね』
するとタカシ様は、資源ごみ置き場の方に振り向き近寄った。一番上に縛ってある新聞
を確認して、ああ、と声を上げる。
『もしかして気付いていらっしゃらなかったんですの? 本当に最低ですわね。みんなが
本当に頑張っていい物を作り上げようとしたのに、無意識のうちに捨てようとなさるなん
て、許せませんわ』
「ああ、いや。捨てようとは思って積んどいたよ。縛る時にたまたま上に来たんだなって」
『それはむしろなお悪いですわ。わたくしたちの作品ともいうべき新聞をゴミになさるな
んて。この恥知らず』
感情のままにわたくしは、ついタカシ様に言うべきではない暴言まで吐き散らしてしまっ
た。幸いタカシ様はそれに怒ることはなく、ただ困ったような顔を浮かべただけだった。
「いや。まあ……理奈が起こる気持ちは分からないでもないけどさ。けど、俺はそもそも
新聞部員じゃねーし」
『それが何だと言いますの? この文化祭特集号を作る時には貴方も参加なさったじゃあ
りませんの。他の号ならいざ知らず、この号の編集委員という事では貴方も一蓮托生の身
だったのではありませんの?』
無事に刷り上った新聞を見た時に皆で分かち合った喜びを、わたくしはまだまざまざと
胸に蘇らせる事が出来た。てっきりタカシ様も同じ喜びを分かち合っていたのかと思って
いたのに、彼は部外者だからと外から見るような目でわたくし達を見ていたのだろうか?
「確かに参加したよ。理奈に強引にカラオケ勝負に引きずり込まれて、負けたら文化祭特
集号が出来るまでの間手伝いをしろとか言われてさ。しかもお前、必ず高得点出す持ち歌
で勝負して来やがって。ホント、汚いよな。騙されたぜ」
378 :
5/8:2014/01/31(金) 23:47:51.57 0
『あら? わたくしだってリスクはありましたのよ。万が一負けたら、貴方に膝枕をして
耳掃除をしてさしあげなければならなかったんですもの。そんな事になったら大惨事でしたわ』
それはそれで心の躍る出来事だとわたくしは密かに思っていた。しかし、文化祭が終わっ
てからニ週間で発行しなければならないという強行スケジュールの中で人手がいくらあっ
ても足りない中、部長としては何としても部の事を優先に考えなければならなかったのだ。
「絶対負けないと分かっていたからこそ、そんな罰ゲーム受けたんだろ? 育ちがいいく
せにやる事汚いよな」
その言い草はカチンと来るが、他ならぬタカシ様だけにわたくしは文句で済ますことに
した。もし他の男子であれば抜く手も見せずに頬を張っていただろう。
『勝者で居続けるためには、多少は黒いやり方にも手を染めなければなりませんもの。で
も、貴方だって良かったでしょう? みんなと一緒になって新聞作りをして得られた経験
や達成感は他に変え難いものだったとは思いません?』
「まーな。打ち上げが楽しかった事だけは否定しないわ」
タカシ様の答えに、わたくしは唇を突き出し不満を露にした。わたくしと一緒に新聞作
りをした事は、彼の思い出ではすばらしい事ではなかったのだろうか? 素人だから色々
と教えてあげなくてはと理由を付けては出来る限り一緒に仕事が出来るようにしたというのに。
『貴方ってば、ホント食べる事と騒ぐ事だけですのね。人としての程度が知れますわ』
もっとも、打上げでもわたくしはちゃっかりとタカシ様の隣は確保した訳ですし、楽し
かったと言われるのも悪い事ではないので、一言文句を言うだけで済ますことにした。
「まあ、でも文化祭の打上げとかもそうだけどさ。何かみんなで一つ成し遂げたからこそ
の楽しさってのは、確かにあると思うな。新聞部の方は俺は部外者だったけど、他にも手
伝いに来てた奴とかもいたから、そんなに疎外感を感じることもなかったし」
わたくしは、内心当然と思って頷いた。わたくしが他の部員と同じように――いや、そ
れ以上に遠慮会釈なく使ってあげたからこそ、短期間とはいえ仲間のようになれたのだと。
379 :
6/8:2014/01/31(金) 23:48:40.11 0
『そうでしょう? それなのに貴方は、皆で作り上げた大切な新聞を古新聞同様に捨てて
しまってらっしゃるのよ。これは一体どういう事か、説明していただけません事? 事と
次第によっては、ただでは済みませんわよ?』
彼ににじり寄ると、タカシ様はわたくしに威圧感を覚えたのかわたくしの近寄る動きに
合わせて後ろに下がる。そして手を前に出して必死で振った。
「まあ待て!! そう殺気立つな。ちゃんと自分の分は取ってあるから!!」
『ご自分の分?』
それが何を意味するのか、わたくしはイマイチ飲み込めずに聞き返した。するとタカシ
様はコクコクと頷く。
「そうだよ。理奈。お前は刷り上った新聞をどうしたのか覚えていないのか?」
『そんな事を忘れるわけありませんわ。校門前で生徒達一人一人に配布して、先生達にも
配布して、あとは各教室に一部ずつ置いて、図書室にも何部か置きましたわ。それがどう
かしましたの?』
記憶を手繰り寄せながら、わたくしは慎重に答えていく。するとタカシ様は、ちょっと
憮然とした顔でわたくしを見つめた。
「そうだよ。それでもまだ大量に余ったじゃんか。それで、理奈が文化祭に来てくれたご
家族や友人にも配ったらどうかしらとか言いやがってさ。新聞部員全員とボランティアの
俺らにまでノルマ課しやがって。正直、一人20部とか配り切れる訳ないだろ」
『あら? わたくしは配り切りましたわよ。お父様、お母様、妹の真衣。家政婦の葛西さ
んたち、それに従兄妹たちに中学時代の友人たち。正直、数が足らないほどでしたわ』
多少話を持ったことに、僅かな罪悪感を覚える。しかしわたくしは部員たちよりずっと
多い部数を持って帰ったのだ。10部くらい余ったところでタカシ様より遥かに多い数を配
ったのだし、それで文句を言われる筋合いはないはずだ。
「お前んちは地元の名家で人脈が広いからな。近所の連中だってありがたがって貰うだろ。
でも、俺は普通の家なんだよ。親には1部あれば十分だし、中学の時の友達だってそれほ
ど多くない上に、わざわざこんな用事の為だけに呼び出すわけにもいかないだろ? 正直、
捌ける訳無いって」
不満気に文句を言うタカシ様を、私はそれでも納得行かない気分で睨み付けた。
380 :
7/8:2014/01/31(金) 23:49:20.84 0
『貴方の人脈ですもの。多少余るのは仕方ありませんわ。でも、だからといってこんな寒
空の中、まるでゴミのように縛り上げて捨てるなど、酷いですわ。貴方は自分の作品をこ
のように捨てる事に、何の感情も抱かなかったんですの?』
わたくしなら、こんな酷い捨て方はしない。今もそうしているようにキチンとファイル
に収めて取っておくし、もしどうしても捨てなければならなくなったとしたら、神社に行っ
てお炊き上げをしてもらい、神様に奉納するくらいはするというのに。
「だから、ちゃんと保存用に1部はちゃんと取ってあるって言ったじゃん。思い出保存な
らそれで十分だし。最近、断捨離って言葉も流行ってるだろ? 使わないものは迷わず捨
てろって。多少はドライにならないと」
『でもこれにはわたくしの、貴方の、新聞部員たちの魂が込められていますのよ。1部1部
全てに。普通は自分が一生懸命に作ったものを、無下に捨てられませんわ。小説家が自分
の出版した本を捨てられます? ミュージシャンが、自分の出したCDを捨てられます?
それと同じ事ですわっ!!』
しかし、わたくしがどう力説してもタカシ様に気持ちが伝わったようには見えなかった。
「理奈は編集長じゃん。他の部員にしたって、記事を書いたりした連中からすれば、これ
は作品かもしれないけどさ。けど、俺の立場なんてのは、例えば奥付に名前が載ってるに
せよ、ただの手伝いに過ぎないんだよ。今の理奈の例えで言えば、実際に本を印刷した印
刷屋とか、レコード会社の社員とかさ。そいつらなら、余った本やCDはあっさり捨てる
だろ。違うか?」
『わたくしは、貴方を仲間だと思っていましたわ』
歯噛みする思いで、わたくしは思いを口にする。
『他の手伝いの方達は知りません。けれど、貴方は……貴方だけは、少なくともこの新聞
を作っている間は、わたくし達と同じ仲間だとそう信じていましたわ。だからこそ、貴方
にはわたくしの補佐をするような、本来は部員が担う重要な役割も振ったのですわ。ただ
のお手伝いなら、そんなことは致しません』
「いや。多分理奈なら俺が小間使い程度の仕事しかしなかったとしても、俺に対しては厳
しく当たっただろ」
小声だが、はっきりとわたくしの言葉を揶揄する声が聞こえてわたくしは睨み付けた。
381 :
8/8:2014/01/31(金) 23:49:55.32 0
『期待もしてない人には最初から厳しい言葉なんて掛けませんわよっ!! そもそも使え
ない人間をわたくしの傍で使うなんてこと致しませんわ』
興奮してタカシ様に詰め寄ると、彼は一歩後ろに下がる。
『大体、何でわたくしが勝てる勝負を貴方に持ちかけたのか分かりませんの? ちょっと
は考えてごらんなさいな。その少ない脳みそで!!』
「そりゃ、人手が欲しかったんだろ? それに理奈にしてみれば、俺は扱いやすいもんな。
遠慮なしにこき使えるし」
タカシ様にそんな意図があったのかどうかは分からないが、わたくしにはどうしてもそ
の言葉には棘が含まれているように思えてならなかった。
『違いますわよっ!! いえその……全く外れとは申しませんけど、でもそれは全くわた
くしの気持ちを斟酌してはいませんわ』
後編に続きます
酒飲んでると保守忘れてしまうな
友ちゃんに酒飲ませてめろめろにしたい
メイドコスしたツンデレさんと友ちゃんにおもてなししてもらいたい
386 :
ほんわか名無しさん:2014/02/03(月) 11:33:46.29 0
お題
つ・パソコンがネットに繋がらなくなってツンデレが困っていたら
そんな訳で後編投下出来ない……(涙)
・姉纏さんと節分コスプレ
男「ただいまー」
纏「おう、お帰りタカシ」
男「ぶっほぉ!? 姉ちゃん、何その格好!!」
纏「鬼のこすぷれに決まっておろう? 今日は節分じゃぞ!」
男「あぁ、そういやそうだっけ。にしても虎柄ビキニって……ラムちゃんかよ」
纏「ちと肌寒いが、年に一度のことじゃしまぁ良かろう?」
男「姉ちゃん胸でかいからやたらエロいなぁ……」
纏「また胸ばかり見おって……この愚弟が! せっかく儂が鬼役を買っておるのじゃ、早く豆をまかぬか!」
男「うぇーい」
纏「実の姉をそのような目でみるなど、犯罪者予備軍も良いところじゃぞ……ほれ、豆」
男「おk、じゃ行くぞー。鬼はー外、鬼はー外」ポイポイ
纏「なぜ人の谷間にばかり豆を投げるんじゃ!? このスケベ! 変態!」
男(姉ちゃん、エロバカいなぁ……)ポイポイ
纏「うにゃあぁぁ!! 止めろ、止めんかあぁぁ!!」
谷間に溜まった豆を口で直接食べたい
姉に欲情するとか犯罪過ぎるだろ
ふぅ……
かわいいいいいい
山田が他の女の子を褒めてるともやもやする感じがするところから自分の恋心に気づいていく友ちゃんかわいい
気合いで携帯から
>>381の続き投下します
9レス一気に行きます
394 :
1/9:2014/02/05(水) 21:34:37.63 0
お題作成機より:お嬢・文化祭・新聞 〜後編〜
「理奈の気持ち?」
タカシ様の顔を見る限り、わたくしの言葉がよく理解出来ていないようだった。タカシ
様からすれば、わたくしは高飛車な幼馴染に過ぎないのだろうか? よしんば、彼が多少
の好意をわたくしに抱いていたと仮定しても、その逆など全く想像していないのだろう。
『そうですわ。逆にタカシ様はわたくしと一緒にどのような気持ちで新聞を作っていらし
たの? 部室に向かう時は? 一緒に取材している時は? わたくしの事は、ただの面倒
くさい人間だとしか思いませんでしたの?』
「いやまあそれは無いっていうか、そんなの百も承知の上だし…… だからまあ理奈が
云々ってのはあまり無くて、単に大変だなあって気分しか…… ああ。でもむしろ一緒に
組んだのは理奈で助かったかな? 遠慮されて何も言われずにフォローされるより、あれ
これうるさく言われてる方が気が楽って言うか、まあ気心は知れてるからさ。他の奴なら
よほど気が合うんでもなきゃ、倍疲れたかも」
『そんな程度ですの?』
興奮していたせいか、わたくしはタカシ様の言葉をばっさりと切った。普段のわたくし
なら、少々不満でも折り合いを付けられる回答だったが、この時は冷静な判断力を既に失って
いた。
『わたくしと一緒だったから気楽だったって…… 所詮わたくしは別府にとってその程度
の女でしたのね。ええ。貴方のお考えは良く分かりましたわ』
さらに一歩、詰め寄るとタカシ様が追い詰められるように下がり、その背を塀につけた。
「待て待て待て。そんな程度って言われても…… 幼馴染ってそんなもんじゃないのかっ
て言うか、逆に理奈はどんな答えを求めてたんだよ」
『別府の正直な気持ちですわ』
「いや。だったら……」
戸惑う彼が僅かに抵抗の意思を見せるが、わたくしはそれ以上言わせなかった。
『ええ、そうですわよ。貴方は別に間違ってはおりませんわ。わたくしの望む答えではな
かったからといって、それで貴方を責める資格などわたくしは持っておりませんものね』
「いや。めっちゃ責められてるような気がするんだが……」
395 :
さるさん:2014/02/05(水) 21:39:35.02 0
さるさん
396 :
2/9:2014/02/05(水) 21:40:03.22 0
完全に気圧されつつも、タカシ様は小さく不服そうにこぼす。それを聞き、わたくしは
首を振った。
『いいえ。責めてはおりませんわ。ただ、落胆しているだけで。わたくしと共に過ごした
時間を、貴方はただ面倒くさいとしか思っておりませんでしたのよね? せいぜい、相手
が気の置ける幼馴染だったから気を遣わなくて楽だったと、その程度の思いしか持ってい
なかったのですわよね? ええ。別にいいですわよ。わたくしが勝手に期待していただけ
ですもの。貴方のせいではありませんわ』
本気でわたくしは落胆し、怒っていた。わたくしのように心ときめかせながら一緒の時
を過ごすべきだなんて偉そうな事は思っていない。ただ、ほんの少しでもいいから、喜び
とか、期待とか、普通の男子が女子に抱く想いを持っていてくれればそれで良かったのに、
タカシ様がそれを少しも感じていなかったなんて。わたくしと彼の心はそこまで開いてい
たのだろうか? 金持ちの娘なんて面倒臭いだけの存在でしかなかったのか。
「まあ、ちょっと待てって!!」
タカシ様の大声が、わたくしを負の思考から現実へと引き戻す。しかし、心の中に燻っ
ている怒りも悲しみも、無論消えることなく残っていた。
『何ですの? 別に釈明の必要なんてありませんわよ。貴方は正直に自分の気持ちをおっ
しゃったのでしょう? でしたらそれでいいのではありませんの。胸を張りなさい』
わたくしはせいいっぱいの虚勢を張る。怒りはむしろ自分へと転嫁していた。さっきの
言葉はそのまま自分にも跳ね返ってくる。わたくしはタカシ様の気持ちを全く斟酌せず、
愚かにも自分の夢想に浸り切っていたのだから。裏切られたのは自分のせいだ。知らず目
頭が熱くなる。しかしここで泣くなんてみっともない。わたくしはグッと気を引き締めた。
「別に釈明する気なんてないけどさ。ただ、理奈が勘違いしてるみたいだから、一応ちゃ
んと説明しとこうと思ってさ」
『勘違い? わたくしが? 何をですの?』
怪訝な思いでわたくしは彼を見据えた。これ以上がっかりさせられるのなら、正直もう
話なんて聞きたくもない。しかし、タカシ様の真面目な顔にわたくしは辛うじて、彼をま
だ信じてみようという気になった。
397 :
3/9:2014/02/05(水) 21:42:58.81 0
「だからさ。俺がまるで単に新聞作りなんてめんどくさいだけの仕事で、押し付けられて
渋々やってただけかっていったら、そうじゃないって事」
『さっき自分でおっしゃっていたじゃありませんの。ただ大変だなっていう気持ちしかな
かったって。わたくしの存在も、単純に知り合いがいるから楽だって言う程度でしたって。
今更それを撤回なさるの? わたくしが怒っているから自分の意見を曲げるなんて、そん
なのは却って許しませんわ』
「いや。言った事自体には嘘は無いから」
わたくしの非難を、あっさりと彼は否定する。
『じゃあ一体、何が言いたいんですの?』
詰め寄るわたくしを、タカシ様は手の平を向けて制した。
「確かに俺はもともと新聞作りなんて興味なくてさ。賭けに負けて無理矢理やらされてる
感は強かったからめんどくさいって思いが先に来るんだけどさ。さっき言った大変だなっ
ていうのは、そうじゃなくてどっちかと言ったら感心した方……なんだよな。こんな大変
な事やってるのかって」
『……文化祭の特集号は特別ですわよ。毎週出してる定期号とは違いますわ』
文化祭特集号では各部門の大賞発表やら、ミスコン、ミスターコンの発表、その他学祭
ライブレポートなど文化祭当日も目の回るような忙しさで、その後も短期間で通常より遥
かに多いページ数の新聞を作るから定期号とは比べ物にならない。
「けど、普段の新聞だってページ数は少ないけど、締め切りがあって、ちゃんと毎回記事
のネタを考えてそれに間に合うように作らなくちゃいけないから大変は大変じゃん。むし
ろ今後もあれを続けていくって相当な労力だと思うぜ」
『そうですわ。でも、だからこそ刷り上った時はもの凄く嬉しいですし、配った新聞をみ
んなが読んで話題にしてくれたりするのはもっと嬉しいですわ。貴方にはお分かりになら
ないかも知れませんけど』
わたくしは捨てられた新聞を一瞥する。所詮、彼はわたくしと同じ想いを共有してはい
ないのだ。そう思うと寂しさが込み上げてくる。
「いや。俺だって分かるよ。その気持ちは。編集長までやってる理奈とは思い入れの度合
いは違うけどさ。でも、今までは読んだ新聞なんて普通に捨ててたけど、一部はちゃんと
記念に保存したし」
398 :
4/9:2014/02/05(水) 21:49:30.54 0
『それでも、残りは無残にも捨ててしまわれるのですよね? 貴方の思い入れはその程度、
ということですのよね?』
4
バッと手を振ってわたくしは資源ごみ置き場を指差す。するとタカシ様はため息をつい
て首を振った。
「別に俺だって、捨てるのに何の抵抗も無かった訳じゃないんだぜ。ただ、同じ物を何部
も取っておいてもしょうがないかなって、大掃除だし思い切っただけで。理奈が取ってお
けと言うならそうするし」
わたくしは首を振った。強要して、渋々保存してもらっても、そんなものは嬉しくも何
ともない。
『そんなものは、別府の気持ち次第ですわ。わたくしは、死ぬ思いで一生懸命作り上げた
新聞をいともあっさりと捨ててしまえる貴方の心根が気に入らないだけですもの』
するとタカシ様は、無言でゆっくりとわたくしの方に体を動かす。思わず一歩下がると、
そのままわたくしを避けて歩き出し、資源ごみの方に近寄ると腰を屈めて新聞を引き抜いた。
「理奈に誤解されたく無いからな。これは取っとくことにするよ。ま、俺もこれの制作に
係わった事でいろんな勉強もしたし、新しく知り合いとかも出来たし。それに、理奈の事
もよりよく分かった気がするしな」
『へっ……!?』
最後の言葉に、わたくしは驚いて小さく声を上げてしまった。胸がトクン、トクンと微
かだが鼓動を大きくするのを感じてしまう。
『わっ……わたくしの何が分かったっていいますの? 言っておきますけれど、わたくし
はたかだがニ、三週間程度一緒にいただけで分かるほど底の浅い人間ではありませんわよ?』
やはりタカシ様はわたくしを意識してくださってくれたのだろうか? さっきあれほど
落胆させられたというのに、わたくしは愚かにもまた期待してしまう。それを抑えようと、
私は強がりでごまかした。
「もちろん、それだけで理奈の事が全部分かったなんて言わないけどさ。でも実際はもう
10年だぜ? 理奈だって俺の事を他の誰よりも理解してくれてるんだろ?」
付き合いの長さを持ち出されて質問されては、頷かざるを得ない。
399 :
5/9:2014/02/05(水) 21:54:15.00 O
『ええ。もちろんですわ。本当にめんどくさがりやで、わたくしが勉強に誘っても怠けて
ばかりですし、授業中はよく寝ますし、そのくせ要領よくテストはそこそこの成績をキー
プなさいますし。お風呂に毎日入らないから不潔ですし』
「ちょっと待った。シャワーはちゃんと浴びてるぞ。まあ、高校に入ってからだから、そ
れまでは否定出来ないけど、今は違うからな」
そこだけは譲れない、とばかりにタカシ様は強く主張するが、わたくしは日本人として
湯船に浸かってこそのお風呂だと思っているので、それもズボラ故だと思ってしまう。
『まあ、そんな事は些細な事ですわ。要は貴方がどれだけめんどくさがりでいい加減な人
間かということですもの。それでしたら確かに、わたくしはうちの学校のどの生徒より良
く知ってますわ』
ちょっと胸を張ってみせると、タカシ様はまたため息をついた。
「ちぇっ。悪いトコばっかりかよ。まあいいけどさ。とにかく、俺もそれくらいは知った
つもりだったけどさ。何ていうかこう……理奈が新聞作りに携わっている時の様子が本当
に生き生きしてて。何かこう、理奈ってこういう魅力もあったんだなって改めて思ったりして」
『フ……フン。今更そんな事言ってますの? 遅過ぎますわよ。わたくしの魅力に気付か
ないなんて……』
強がりを言ってみたが、こうして改めて言われると、やはり嬉しくて言葉が上ずってしまう。
『で、わたくしの魅力に気付く面もあったからどうだといいますの? まさかこれだけ話
してオチがないとかでしたら、許しませんわよ?』
するとタカシ様は小さく肩をすくめた。
「ま、だからさ。やればやったでそれなりに楽しい事もいっぱいあったし、いい経験も出
来たし、後悔とかは全然無いよ。ただ、さっきの質問の趣旨からして、毎日どんな気分で
新聞作ってたのかって言われたら、やっぱりバタバタで遊ぶ暇なんて全然なくて大変だっ
たなってのが一番先に来るからそう答えた訳だけど」
『でもやっぱり辛かったっていう方が先に来るんですのね。所詮貴方には新聞作りの楽し
さは分かって貰えなかったんですわ』
タカシ様と想いを共有出来なかった事が寂しくて、わたくしは不満気に口を尖らせた。
するとタカシ様は困ったように笑う。
400 :
6/9:2014/02/05(水) 21:59:23.71 O
「いやー…… まあ、あれがずっと続くのはちょっとキツいな。正直、理奈が傍にいて、
怒鳴りつけながらもあれこれフォローしてくれなかったら、続かなかったかも」
『へっ……!?』
わたくしはまた驚きの声を上げてしまった。わたくしと一緒の時を過ごした事を嬉しい
とは思って貰えなかったけれど、それでも救いだとは感じてくれていたと知り、また変に
気恥ずかしくなってしまう。
『そ……それはその、貴方をキチンとフォローしないと、新聞制作に支障が出るからです
わ。別に貴方のためを思ってやった事じゃありませんし…… まあ、逃げ出されでもした
ら困りますから、少しはそういう事も考えましたけどね』
変な表情をしていたら見られたくないなと思い、わたくしは彼に背中を向ける。言い訳
がましいことを言っているのがみっともないなと思いつつモジモジしていると、後ろから
唐突にタカシ様が質問を投げ掛けて来た。
「ところでさ。俺、理奈がどんな気持ちで俺を今回の新聞作りに引き入れたのかって、ま
だ答えてないんだけど。それはいいのか?」
『いっ!?』
わたくしはパッと彼の方に振り向いた。そして、またしても変な声を出した事に気付き、
口に手を当てて覆い隠して取り繕ってみせる。しかしタカシ様は、それは気にしない風で
更に言葉を重ねてきた。
「さっき言われたじゃん。俺はてっきり、猫の手でも借りたいから安易に手に入る労働力
として引き入れられたと思ってたけど、それは違うって。全然理奈の気持ちを理解してないって」
わたくしは、さっき自分が言った言葉を頭の中で反芻して、そして恥ずかしさに身悶え
しそうになった。タカシ様の言葉に絶望して、興奮の余り叫んだことを。少し考えればわ
たくしの彼に対する思いが露わになってしまうような事を。しかし今からでは取り返しは
付かない。わたくしは懸命にごまかそうと叫んだ。
『じょ、女性の気持ちを詮索しようとするなんて、失礼極まりない行為ですわっ!! は、
恥を知りなさい恥を!!』
しかし、それはあっさりと弾き返される。
「いや。だから理奈が俺に考えろって言ったんじゃん。それで詰られるってのはどう考え
てもおかしいと思うんだけど」
『そ、それは確かにそう言いましたわ。でも……』
401 :
7/9:2014/02/05(水) 22:02:25.33 O
怒りに任せて言った事だから無効にして欲しいと、わたくしはそう言おうとして言葉を
飲み込んだ。神野家の娘が自分の言った事を臆して翻すなど恥である。それに、このまま
では今後わたくしは、果たしてタカシ様が正解に辿り着いているのかどうか、ずっと悶々
と考えなくてはならなくなる。
『あ、貴方はちゃんとお考えになられたのでしょうね? もしふざけた答えとかを出した
ら承知致しませんわ』
勇気を振り絞って、一歩を踏み出す。するとタカシ様は真面目に頷いた。
「ああ。正直、俺との勝負に勝った時の態度だったら、単に労働力が欲しいだけかって思っ
てたけど、さっきの理奈の態度を見てたらどうも違うみたいだし。だから、俺なりに真面
目に考えてみたよ」
『そうですの…… ならば、聞かせなさい。貴方の……答えを……』
わたくしの人生で、こんなに緊張した事は恐らく、これまでにない。心臓がドキドキし
て体が熱い。その熱に浮かされてクラクラしそうだったが、わたくしは必死で耐えつつタ
カシ様の答えを待った。
「ああ。理奈が強引な賭けまでして俺を引っ張りこんだ理由って言うのは……」
顔を見ていられず、ギュッと目を閉じる。彼の答えを、わたくしはどう受け止めればよ
いのだろうか? 頭の中に様々な言葉を巡らせつつ、タカシ様の次の言葉を待った。
「俺を新聞作りに参加させる事で、楽しさを知ってもらってあわよくば部員に勧誘したかっ
たから……とか?」
『え……?』
予想していた答えと全然違う答えがタカシ様の口から出たことに、わたくしは呆然と彼
を見つめた。タカシ様は戸惑うような笑顔を浮かべつつ、さらに理由を続ける。
「いや。新聞部って慢性人手不足じゃん。幼馴染で仕事も押し付けやすい俺が部にいたら
何かと便利だろうからって考えたからとか。まあ、単純に幼馴染だからってのも考えたけ
ど、それだけだと怒った説明がつかないし。新聞作りの楽しさを俺が全く理解してなかっ
た事にさ」
402 :
8/9:2014/02/05(水) 22:05:09.39 O
わたくしがこれだけ緊張して、どう受け止めようか必死で悩んでいたのに、彼は何をお
気楽な答えを出しているのだろう。そう思うと、さっきの緊張の分だけそれが怒りへと変わった。
『ち……違いますわよっ!!』
冬の朝の静謐な空気を、わたくしの怒鳴り声が切り裂いた。タカシ様を睨み付け、再び
詰め寄らんばかりにしてわたくしは厳しく彼を睨み付ける。
『一体貴方はわたくしのさっきの態度をどう見てましたの? そんな考えであんな風に怒
ると思いまして? 貴方の鈍さにはほとほと呆れますわよっ!! 貴方ってば本当に……』
感情を言葉に乗せてぶつける。そして罵りの言葉を続けようかという時に、わたくしは
タカシ様が驚いたようなそんな顔でわたくしを見つめているのに気が付いた。言葉が途切
れるのを待っていたかのように、彼が口を開く。
「……違うのか……?」
ボソリ、とタカシ様が呟く。そして、妙に恥ずかしげな、戸惑うような顔つきで視線を
伏せると、たどたどしく言葉を続ける。
「ゴメン。えっとさ…… 実は……もう一つ考えた答えがあったんだけど…… 正直、そ
っちは虫が良過ぎるし、さすがに自惚れ過ぎじゃないかって思ったからさ。先に無難な方
を答えたんだけど……」
タカシ様の言葉が、最初はよく考えられなかった。やがて、頭の中に思考力が戻って来
ると同時に、わたくしは気付いてしまった。つまり、自分で彼の答えを一つにさせてしまっ
たのだと。もう、ごまかしのきかない状況にしてしまったのだと。
「えっと……答えても、いいのか……な?」
『ダッ……ダメ、ですわっ!!』
わたくしは咄嗟に彼の口を手で封じた。興奮したまま顔をブンブンと激しく横に振る。
『こっ……こんな格好でっ…… こんな場所ではっ…… 今はまだダメですわっ!! 今
度……ちゃんとした時に……もう一度問いますわ!! その時までに貴方もちゃんと準備
していらっしゃい。いいですわねっ!!』
言いたい事を言い切ると、わたくしは彼の手を離す。するとタカシ様はわたくしの格好
を見て、ちょっと笑った。
403 :
9/9:2014/02/05(水) 22:07:31.51 O
「確かに、スポーツウェアじゃあちょっと様にならないかもな」
『お、お笑いにならないでくださいましっ!! クシュッ!!』
彼の言葉に激昂すると同時に、空気が鼻を刺激してわたくしはくしゃみをしてしまった。
するとタカシ様は真面目に心配して声を掛けて来る。
「おいおい。そんな格好で長話したんだし、体、冷え切って無いか? 何だったらうちで
温かいものでも飲んでった方が……」
『構わないでくださいませっ!!』
こんな気持ちのままで、タカシ様と一緒にお茶を飲むなど考えられない。わたくしは首
を振って拒絶した。
『きょ、今日はもうこれで失礼させて頂きますわっ!! 今度必ず呼び出しますから
ね!! その時までに……貴方も、覚悟を決めていただきますわよ。宜しいですわね!!』
ほぼ捨て台詞に近い言葉を吐いて、わたくしは逃げるようにその場から走り去ったのだった。
その二日後、新学期初日にわたくしは、タカシ様からわたくしがどういう思いでタカシ
様と一緒に新聞作りをしていたのかという正解と、そしてそれに対する返事を貰ったのだ
った。その時のわたくしの態度が神野家の娘としてはあるまじきみっともなさだった事の
で、割愛させていただく事にいたしますわ。
終わりです
おじょぺろ
お題
つ・オリンピックの開会式を見て、ツンデレがあたしもいつかこんな舞台に立ちたいなって言ったら
>>408 キンキキッズが昔こんなそんな格好してた記憶があるな…
特に雪とか関係なく、6レス貰います
411 :
1/6:2014/02/09(日) 09:06:13.21 0
・いつも勉強ばかりしているツンデレ
『はう…… 疲れたぁ……』
私は両腕を頭の上いっぱいに伸ばしてう〜ん、と体を伸ばす。
『そろそろいいかな……?』
誰ともなく一人ごちると、手元に置いたスマホを手に取る。履歴を開くと、すぐに目当
ての番号が見つかる。私は画面をチョンと押して電話を掛けた。
『むう……出ない……』
何度もコールする呼び出し音に焦れていると、ようやくプッと呼び出し音が切れた。
「もしもし……?」
『お兄ちゃん? 何ですぐに電話出ないのよ』
憮然とした声で文句を言うと、若干うんざりした返事があった。
「こっちは風呂から上がってちょうどマッタリしてたとこなんだよ。かなみからの電話な
んてどうせめんどくさい事なんだから、出るの躊躇った」
『サイテー 女の子にそういう態度取るなんて。だからお兄ちゃんってモテないのよ』
ぶつくさと文句を言いつつ、私はちょっと不安になる。やっぱり私はお兄ちゃんから女
の子扱いされてないのかなあ、と。
「お前のその女の子アピールうざい。自分にちょっと都合が悪いとすぐに私は女の子なん
だからどーのって。そういうの、嫌われるぞ」
『うっとうしいなあ、もうっ!! お兄ちゃんが鈍感で気遣いが無さすぎるから言ってるん
じゃない。偉そうに説教しないでよね』
そうは言ってもお兄ちゃんに本気で嫌われてしまうのは困る。私は言葉を切り、お兄ちゃ
んの出方を待った。
「何だってお前はそうやってすぐに俺のせいにするんだよな。全く……ちゃんと自分を省
みないと、いつか後悔すんぞ」
『余計なお世話だよ。お兄ちゃんにいちいち言われなくたって、自分の悪いトコくらいちゃ
んと把握してるから』
412 :
2/6:2014/02/09(日) 09:07:48.28 0
もちろん私の一番悪いところは、お兄ちゃんが優しいのをいいことに言いたいことを言っ
たりわがままし放題なところだ。いつかはちゃんと返してあげたいと思ってはいるけれど、
なかなか機会も勇気もない。
「で、用件はなんだよ? 文句言いたいだけだったら切るぞ」
『そんなわけないでしょ!! お兄ちゃんに文句言うためだけに貴重な電池を消費しないわよ』
スマホに変えて一番の問題は、電池が全然持たないことだ。私はお友達や好きな人とは
出来る限り声でやり取りしたいのだが、長電話してるとすぐに電池が切れてしまう。ここ
でお兄ちゃんに電話を切られたら、いろんなものが無駄になってしまうので、私は慌てて
用件を告げた。
『えっと……ちょっと数字で分かんないところがあってさ。教えに来て欲しいんだけど……』
「なんだよ。また勉強してんのか。好きだな、お前も。期末終わったばっかだろうに」
私は毎度の事とはいえ、結構緊張してお願いしたのにバカにされたように言われてさす
がにムカッと来てしまった。
『いいじゃない。別にテスト前じゃなくたって。私はお兄ちゃんみたいに小狡くないから、
普段から勉強しとかないと成績キープできないんだもん』
お兄ちゃんは要領が良いのか、普段あんまり勉強してなくても結構成績が良い。そこは
私が逆立ちしても真似出来ないところだった
「そんなもん、勉強なんてその時必要な分だけやっとけばいいんだよ。お前みたいに勉強
ばっかしてると、逆に勉強で得られること以外の知識が得られなくなるぞ」
呆れた口調のお兄ちゃんに、私は言葉を尖らせた。『お兄ちゃんに偉そうに説教されなく
たって、遊んでる時は遊んでるもん。で、来てくれるの? くれないの? くれないんだっ
たら、もう切るよ』
時間がもったいないので、私はお兄ちゃんに選択を迫った。大抵はこれで落ちるのだが、
たまに本当に断られることもあるからちょっと怖い。
「わかったよ。あと20分待て。そうしたら行ってやるから」
『10分』
413 :
3/6:2014/02/09(日) 09:09:01.35 0
私は短く、そう要求した。断られなかったことにホッとしながら。
『どーせ、マンガ読み終わってからとか、ゲームが一区切りついてからとか、そんな理由
なんでしょ。私とマンガゲームのどっちが大事だって言うのよ』
正直、私よりマンガゲームを大切にされると、女の子としては自分に魅力がないのかな
と心配になってしまう。
「勝手に思い込みで決め付けんな。こっちにだって色々都合があんだよ」
ぶっきらぼうなお兄ちゃんの口調が、少し勘に障った。
『都合って何よ? ちゃんとした理由があるならはっきりと言ってよね。そういう言葉の
濁しかたってズルいと思う』
私の言い方が、どうやら今度はお兄ちゃんを不機嫌にしてしまったらしく、言葉に刺々
しい感じが混じって来た。
「お前な。頼んでるのはそっちなのに、何でそんな偉そうな言い方が出来るんだよ。そう
いう態度取るなら、もう教えに行かないぞ」
これはお兄ちゃんからの最後通告と感じて私はドキリとした。今はまだ脅しだけれど、
ここで我を張れば本当にお兄ちゃんに見捨てられてしまう。
『分かった……』
渋々ながらも背に腹は変えられず、私は頷いた。お兄ちゃんが来てくれなくなったら、
本当に何の意味もなくなってしまう。
『だけど、20分なんて言わないで出来る限り早く来てよね。努力はしてよ』
それに対するお兄ちゃんの返事は素っ気ないものだった。
「分かった。ま、善処はするわ」
電話を切った私は、どこか物足りない気分を覚えたのだった。
「で、どこが分かんないって?」
『まずはコートくらい脱いでよ』
部屋に入るなり、挨拶もそこそこに本題に入ろうとするお兄ちゃんを私はたしなめた。
「お前は集中力が足りないからな。うっかりグダグダと無駄話してっと、いつまで経って
も本題に入れないし」
414 :
4/6:2014/02/09(日) 09:10:47.90 0
『だからって、コートも脱がずに本題入る? 教えるトコだけ教えたら帰る気満々な態度。
萎えるんだけど』
別にお兄ちゃんに勉強だけ教えて貰いたい訳じゃないので、私は文句を言った。すると
お兄ちゃんは意地悪な顔でからかって来る。
「お前な。こんな夜中に男を部屋に呼んで、しかも長居させる気かよ? 言っとくけどな。
いつまでも子供扱いしてもらえると思うなよ? 男ってお前が思ってるより怖い生き物な
んだからな」
脅しを掛けてるつもりなんだろうけど、私を子供扱いしてるのはお兄ちゃんの方だと思
う。一応私は、法律上結婚出来る年齢なのに。まあ、バカにしているようで心配してくれ
てるのは嬉しいけど。
『分かってるわよ。お兄ちゃんじゃなかったら、こんな時間に部屋に呼ぶ訳ないし』
誘うようなセリフに、ドキッとしてくれないかなと期待したのだが、お兄ちゃんはつま
らなさそうに舌打ちしただけだった。
「チェッ…… お前って絶対俺の事バカにしてるだろ」
渋々と言った体でコートを脱ぐお兄ちゃんを見て、私はハンガーを手に取ると空いた手
を差し出した。
『はい。コート掛けてあげるから貸して。飲み物、温かいコーヒーでいいよね?』
「ん? ああ。任せる」
私はこの瞬間が何気に好きだ。何て言うか、夫婦とか同棲してる恋人同士みたいな空気
感を感じることができるからだ。
『一応、読んだ以上はちゃんと気は遣ってるんだから。感謝してとまでは言わないけど、
心意気くらいは感じてよね』
コートを掛け、準備しておいたマグカップにインスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。
ちなみにこのマグカップは一応お客様用なのだが、最近はほぼお兄ちゃん専用になっている。
「またインスタントかよ。まあ文句言うつもりじゃないけどさ。お前も早くサイフォンで
コーヒー淹れられるくらい出来るようにならないとな。お客様のおもてなしなんて出来ないぞ」
『うるさいな。出来ないんじゃなくて、お兄ちゃん相手だからしないだけだもん』
415 :
5/6:2014/02/09(日) 09:13:22.63 O
強がりを言いつつ、内心で私はいつかとびっきり美味しいコーヒーをお兄ちゃんに淹れ
てあげて唸らせるという野望を胸に秘めていた。その日まではひたすらに我慢だ。
「で? どこが分かんないんだよ。無駄話始めるとお前は止まらないからな。さっさと終
わりにするぞ」
コーヒーを啜りつつ、お兄ちゃんは私の前に広げてあった問題集とノートを自分の方へ
と向ける。ごちゃっと書かれている数式と消しゴムの消し跡が、私の苦闘を物語っていた。
「何だよ。お前ってこういう図形で考える問題はいつもダメだよな。頭の中で難しい事考
えすぎるから、却ってややこしくしてるんだよ」
『うるさいな。お兄ちゃんは何ていうか、物事を俯瞰で見てパパパッと割り切った考えが
出来るからかもしれないけどさ。私にはそういうの無理だもん』
理系的な勉強は全く苦手の私にとって、お兄ちゃんの問題を解くスピードは時折天才に
すら思えるときがある。もっともお兄ちゃんから言わせると、私がバカなだけ、らしいが。
「無理だ無理だって最初から思ってるから無理なんだろ。つか、図形くらいちゃんと描け。
きったねーな」
『う、うるさいなもう!! あと、説明する時はこっち来てよっていつも言ってるでしょ?
逆さで見てるとよく分かんないし、ノートを横向きにしてお互い首を横にして見るのも疲
れるからってさ』
「俺は逆向きでも分かるから。基本的にお前の方向けてればいいだろ」
『でも、公式とか書く時はそっち向けるじゃない。こっちくれば書きながら説明だって出
来るから余計な時間だって掛からないし』
「そっち行くと、お前がめんどくさいんだよ。体触れると文句言うし。あと息が掛かると
臭いとか、髪がほっぺに当たってくすぐったいとかいちいちいちいち。ノートひっくり返
すよりか、お前の文句を聞いてる方がよっぽど時間の無駄だ」
お兄ちゃんが傍にいると、息遣いやら匂いやら体温やら、色んな事が感じられてドキド
キしちゃって、だけどそれが私はとても好きだった。ただ、ボーッとしてるのを突っ込ま
れると、ついつい暴言でごまかしてしまうのだが。お兄ちゃんはそれが気に入らないのだ
が、かといってここで屈して、お兄ちゃんとの貴重な接触タイムを失う訳には行かない。
416 :
6/6:2014/02/09(日) 09:15:37.29 0
『私が文句言ってもお兄ちゃんが取り合わなきゃいいだけでしょ? 一言文句言うと、三
つも四つも言い返すじゃない。黙って受け流してればいいだけなのに』
「自分で悪口言っといて大人しく聞いとけとか、また横暴だな。言い返す権利すらないの
か俺には」
『悪口じゃなくて、ホントの事だもん。ほら、早くこっち』
机を叩いて催促するも、お兄ちゃんは動こうとしなかった。
「ヤダね。こないだでもう懲りた。口がニンニク臭いからこっち向くなとか、歯にニラが
くっ付いててみっともないとか。夕飯が餃子だったから仕方ないだろって言っても、女の
子の部屋に来る前には歯磨きくらいしろとか何とか言ってさ。文句言われる為に傍に座り
たくない」
てこでも動こうとしないお兄ちゃんに対抗しようと、私は立ち上がった。
『分かった。じゃあ、私がそっち行くからいいもん』
後編に続く
これは可愛い
頬がにやける
「……」ジー
『おい…』
「……」ニヤニヤ
『おい…』
「ん?どった?」
『どった…じゃない…客をほったらかしにして…一人で何をしている…』
「スマホでアニメ見てた。お前ずっと本読んでるし、ちなみも見るか?面白いぞ」
『断る…私はもう…アニメなんて卒業した…だと言うのにタカシは…』
「なんだよ人を変人扱いしやがって」
『変人ではなく…犯罪者予備軍扱い…性犯罪者に死を…』
「さらっと怖いことを言うな、そんなもんは一部の危ないやつだけだ。俺をみろ、真人間だろ」
『真人間は…客をほったらかしにしない…自覚症状なしか…』
「いきなり人の部屋に上り込んで言う台詞がそれかよ、」
『とにかく…一人でニヤニヤするな…本でも読んで…静かにしていろ…』
「わかったよ、ちなみ本棚から三津田信三の本なんでもいいから取ってくれ」
『ほれ…』
「こっちまで持って来てくれよ、届かないだろ」
『タカシがこっちに…くればいい…』
「何でだよ、面倒くせえ」
『少しは客をもてなせ…』
「何じゃそりゃ、まぁ来いと言うなら行きますよっと」
『うん…それがいい…』
「それでいい、じゃなくて、それがいい、なんだな」
『うるさい…あえて黙っているのも…もてなしの心…』
「そうかい、それじゃあ、静かに隣で本読んでるよ」
『うん…それがいい…』
これはツンデレさんすごく良い顔で笑ってるな
いい空気感だ
GJ!
422 :
1/4:2014/02/10(月) 12:04:21.98 0
・いつも勉強ばかりしているツンデレ 〜後編〜
さっさと机の反対に回り込むと、私はお兄ちゃんの隣に座った。お兄ちゃんが文句を言
う隙を与えず、問題集とノートを自分の見やすい位置にずらす。
『はい。それじゃ教えて。今日はお兄ちゃんが多少口臭くてもちょっとくらい触れても我
慢するから』
多少は妥協もしておかないと、これ以上お兄ちゃんに嫌がられると先々甘えられなくな
る可能性がある。それはさすがに私としても避けたかった。
「ホントだろうな? 時々そうやって宣言するけど、一時間もったことなかったろ」
『今日はちゃんと約束する。だからその……いいでしょ?』
おねだりをする顔で見つめると、お兄ちゃんは諦めた顔でため息をついた。
「しょうがねーな。ただし、文句言ったら即、離れるからな。つか帰るし。それが条件な」
『う……分かった』
しおらしく言いつつ、内心勝利のピースをする。ちっちゃな頃からこの顔は、お兄ちゃ
んに言う事を聞いてもらうための最後の必殺技だ。もちろんその前に、心を揺らがせてお
かないと効力も無いけれど。
「よし。じゃあ始めるからな。さっさと終わらせるぞ」
お兄ちゃんの雑だが分かりやすい説明を聞きつつ、私の意識はすぐに横にいるお兄ちゃ
んに飛んでいた。時折体を動かすと肩と肩が触れ合うし、太もももくっ付きそうなくらい
近い。体温も、触れてなくとも感じられる気すらする。
『それで、何でこの計算式だとこの数字が出て来るわけ? もうちょっと分かりやすく教えてよ』
わざと指差して、お兄ちゃんの手が触れるようにしてみたりもする。チラリと横目で見
ると、お兄ちゃんの顔が間近だ。やっぱりこれが、何よりも最高である。
「お前、人の話を聞いてるのかよ。今言った説明の中に入ってたろ。いいか? もう一度
しか言わないからしっかり聞けよ。だからこれはさ――」
こうして怒られるのもご愛嬌だ。そして今日は、何だかいつもと違う、いい匂いがする。
シャンプーの香りっぽい。お風呂上りだったのだろう。
「おい、かなみ」
423 :
2/4:2014/02/10(月) 12:07:07.18 0
『ふぇっ!?』
「何ボーッとしてんだよ。今の説明受けて、もう一度一から解いてみろって言ってんの。
それとも、聞いてなかったのか?」
『ふぇっ!? あああ、えーっとそれは……お、お兄ちゃんの臭いが……』
口に出そうとして、私は言葉を飲み込んだ。うっかりお兄ちゃんの香りに酔っていたの
を今日ばかりは暴言でごまかす訳には行かない。
「なに? 臭いって何だよ。一応言っとくけど、今日はちゃんと風呂も入ったし歯も磨い
たからな。まあ、お前から電話が掛かってくるより前の話だから、お前に文句言われない
ためじゃないけど」
何か言わないと、変に思われてしまう。慌てた私は、よく考えずに思いついた事をパッ
と口に出した。
『に、匂いってその……悪い臭いじゃなくて、だからその……お、お兄ちゃんシャンプー
とか、変えた?』
「は?」
キョトンとするお兄ちゃんに、私は慌てて言葉を付け足した。
『あああああ…… い、いつもとちょっとその……違う匂いがしたから。い、言っとくけ
ど、わざわざ嗅いだ訳じゃないからね。呼吸したら自然に入って来たから、ちょっと気に
なっただけで……』
すると、出し抜けにお兄ちゃんが手を私の頭の上に乗せ、グシャグシャと髪を掻き回した。
「お前はそんな事で気を散らしてたのかよ。人がせっかく説明してやってたのに」
『ううう…… だって何か、気になる匂いだったんだもん』
私は身を小さくして言い訳した。お兄ちゃんの手が離れると、手ぐしで髪を直す。ちな
みに、これが私の弱点だ。言い訳できない状況でこれをされると、抵抗出来なくなる。
「全く…… 今まで親のと一緒の使ってたけど、初めて自分で買った奴に変えたんだよ。
俺も大学生だし、そろそろ身に付けるものくらい自分の好みのものにしないとって思ってさ」
『オシャレに目覚めた、とか? でも正直お兄ちゃんがオシャレしても意味が無いような気がする』
「何だと? そりゃどういう意味だよ、おい」
424 :
3/4:2014/02/10(月) 12:08:11.83 0
せっかく直した髪をまたグシャグシャとされてしまう。
『や、止めてってば!! 女の子の髪なんだから手荒に扱わないでよ』
文句は言いつつも、私の髪の触り心地が良いとかだったら嬉しいなとは思ってしまう。
どっちかといえば、優しく撫でて欲しいけれど。
「ていうか、今の暴言だよな。素材が悪いからオシャレしても意味ないって言う。なら約
束どおり勉強終了な。はい、お疲れ。後は自力で頑張れよ」
『ちょ、ちょっと待ってよ!! 違うから!! 違うんだってば!! えーとその……何
ていうの? 素材云々じゃなくてセンスが無いから……でもなくて、どうせ見る女の子が
いないから――でもなくて、えーと、えーっと……』
「お前の言語ソースには、俺への暴言しか含まれて無いのかよ!!」
『だだだ、だってだって!! お兄ちゃんを褒める事なんて普段無いから……その、そん
な言葉用意してないって言うか……』
お兄ちゃんのツッコミに何とか言い訳しようとして、私は更に墓穴を掘ってしまう。
「つまり、俺には普段褒める要素はゼロって事だよな? やっぱり暴言じゃん。ま、コツ
は教えてやったし、後は一人でも出来るだろ」
立ち上がるお兄ちゃんの裾を、私は慌てて引っ掴んだ。
『わああああっ!! 帰っちゃダメだってば!! まだ全然中途半端だし、苦しんでる女
の子を放り出して帰るなんて鬼畜なことしないでよ!! ここでお兄ちゃんに帰られたら
何のために一生懸命勉強してるのか意味わかんなくなるし。だからお願い。もうちょっと
だけでも教えて。お願い!!』
「は?」
お兄ちゃんがキョトンと意味不明な顔をして私を見下ろしていた。
「何言ってるんだ? 俺が帰ったら勉強してる意味が分かんないとか…… そっちの方が
意味分かんないんだけど」
『へ……? って、ああああああああっ!!』
お兄ちゃんを引き止めるのに必死な余り、私はつい本音を喚いてしまった事に気付いた。
『お願いお兄ちゃん!! それは忘れて!! 私自身も意味不明だから!! 混乱して訳
分かんないこと口走ったってだけで。そういう事にしといて、お願い!!』
425 :
4/4:2014/02/10(月) 12:10:25.52 0
まさか勉強好きでもない私が、こんなにも毎日熱心に勉強に勤しんでいるのはお兄ちゃ
んに教えてもらって一緒にいる為の時間作りをする口実だなんてバレたら、絶対に怒られ
る。嬉しく思われるかどうかはともかくとして。
「……そういう事にしておいてって事は、裏にそういう事じゃない事情が隠されているっ
て事だよな?」
『……はい?』
私は嫌な予感がした。何やら思案げな顔をしていたお兄ちゃんが、私に向き直る。
「しょうがない。かなみがそこまで言うなら、帰るのは止めにするか」
『ホント?』
その言葉自体は嬉しかったが、嫌な予感は払拭できなかった。お兄ちゃんはコクンと頷
き、その場にしゃがみ込むと私の目線を同じ高さでジッと私を見て言った。
「ああ。勉強は教えてやる。その代わり、さっきの言葉の意味。裏に隠されている意味が
何なのか、しっかりと説明して貰ってから、だけどな」
『…………え? え……ええええええええっ!!!!』
抵抗も空しく、お兄ちゃんの執拗な追及に私の本音はとうとう白日の下に曝け出されて
しまったのであった。そしてやっぱり、勉強に対する態度もたっぷりと怒られると言うオ
マケも付けられて。
まあ……結果的には良かったんだけどね。でも、もっとロマンティックな展開の方が良
かったです。本当に。
終わり
後輩ツンデレは何度妄想しても萌えるから困る
426 :
1/2:2014/02/10(月) 18:46:24.16 0
バレンタインでさ
俺は例年通りツンデレと覗きしてたの
というのも俺下半身ヒュンってなるで高い所好きでさ
ツンデレも高所大好きってんで屋上でよく人間観察するの
それでバレンタイン、眺めれば甘い一時すごしてる男女がいるもので、それ見下ろすのが恒例になった訳
して人通り少ないとこ探したら路地裏で美男美女がコソコソしててね
今まさにチョコ渡しながら告白の真っ最中
したらツンデレ俺の背中叩きながら実況してさ
なんで女って人の恋路見るの好きなんだろうね
俺なんか、可愛い女の人に告白されて羨ましい、嫉妬してるのに
そしたらツンデレかばんゴソゴソ漁り出したの
だからさ、俺チョコ貰えるって構えたのに取り出したのはグミでさ
ツンデレからもチョコ貰えないとなると今年も収穫ゼロだなって
そんなんで嘆いてたらツンデレ、来年はチョコ持ってくるわ、って約束してくれてとても嬉しい、って話
427 :
2/2:2014/02/10(月) 18:47:54.96 0
バレンタインでさ
私は例年通りアイツと覗きしてたの
というのも私体フワフワするで高い所好きでさ
アイツも高所大好きってんで屋上でよく人間観察するの
それでバレンタイン、見渡せば甘い一時すごしてる男女がいるもので、それ応援するのが恒例になった訳
して血眼になって探したら路地裏で美男美女がコソコソしててね
今まさにチョコ渡しながら告白の真っ最中
したらアイツ手すりに肘ついてため息を一つ
なんで男って人の恋愛見るの嫌いなんだろうね
私なんか自分を女の人に置き換えて熱くなってるのに
そんでカップルおかずにグミ食べようとかばん開けたらアイツ子犬みたいに目輝かせてさ
お前の期待してるものは出てこねーよ、ってグミの袋見せたらアイツ、私のチョコが欲しかった言ってね
毎年誰からもチョコレート貰えないから私に賭けてたんだってさ
私なんかが渡さなくてもアイツ結構チョコ貰ってそうなのに、他の女は見る目がないのね、って話
428 :
1/2:2014/02/10(月) 18:49:02.19 0
バレンタインでさ
俺は例年通りツンデレがチョコ持ってくるの待ってたの
ツンデレは毎年凝ったチョコくれるから期待してるところがあったんだよ
そしたら今年はめっちゃ高そうなブランド物のチョコ渡してきてさ
これには流石の俺もたじろいたのね
ならツンデレ、早く食べい、って促してさ
やっぱり高いだけあって板チョコとかよりも美味しい気がする
したらツンデレくいしんぼだから、断らなくて良いのに俺に断って一つ摘んでさ
結局ツンデレの方が半分以上食べちゃった訳
俺もお腹いっぱい食べるツンデレが好きだから見とれてね
そんで俺の視線に気づいて食うのやめたから遠慮の塊が一個残ったの
したら俺へのバレンタインだからって食べさせてくれてさ
俺だけが最後食うのも悪いから、二人仲良く半分こしたの、って話
429 :
2/2:2014/02/10(月) 18:50:15.42 0
バレンタインでさ
私は例年通りアイツにチョコ持っていったの
私アイツの慌てた様子が好きで、毎年風変わりなチョコ渡すのね
それで今年はめっちゃ高いブランド物のチョコ用意したの
そしたらアイツ極上の焦り顔見せてくれてさ
私の顔色伺いながらチョコ食べる姿なんか超可愛くて、どこまで私を楽しませてくれるのって
したらやっぱり高いだけあってアイツ味わって食べてるのね
それ見てたら私もお腹空いてきちゃってさ、アイツのお許しを得て一つ貰ったの
すれば知らん内に半分以上私の胃袋に入っちゃったの
ならアイツも怒ればいいのにニコニコ私が食べてるの眺めてさ
アイツのバレンタインなんだからさ、最後の一個くらいアイツに食べてもらわないと
そんで食い散らかしたお詫びにアーンさせてもらってさ
そしたらアイツ、お口にチョコ入れたら、半分こしよ、ってアイツ、ファーストキスはチョコレートの味がした、って話
仲良すぎだろ。くそうくそう
爆発しろwwwww
432 :
1/4:2014/02/13(木) 12:39:56.78 0
・嘘の下手くそなツンデレ(前編)
「今日はしのぶも用事があって護衛出来ないとか言ってたしな。久しぶりに心置きなくの
んびりするか」
「えーと…… 菓子は何があるかな、と。何だよ。何にもねーじゃん」
「最近、お袋の奴あんまり買い置きしないからな。若いうちから菓子ばっか食うの良くな
いとか言って、家政婦さんにも量を買わせないようにさせてるけど、要は自分がつまみ食
いで太ったからってだけなんだよな」
「しゃーない。近くのスーパーでも行ってくっか。しのぶの奴は自分が護衛してない時は
不用意に出歩くなって言ってるけど、まあいいよな。歩いて5分掛かんないし。コンビニ
よりむしろ近いしな。よしっと……」
「ん? あれ、しのぶの奴じゃん。何やってんだろ? って見つかったらまたうるさい事
言われるから隠れないと」
『タカシ様っ!!』
「げ? やべっ!! もう見つかった」
『このような場所で何をしてるんですかっ!! 私が不在の時はくれぐれも出歩かないよ
う言っておいたはずですが』
「そんな奴隷のような生活出来ないっていつも言ってるだろが。つか、気付くの早すぎだ
ろ。こっそり隠れようと思ったのに」
『忍びの私を出し抜こうなど、タカシ様には不可能に決まってます。このスーパー程度の
広さなら端と端くらいの距離でない限り、大体察知できます。タカシ様特有のザワッとす
るような不快な気配がしますから』
「つまり、入った瞬間には気配でバレたってことか。ほぼ積みじゃねーか」
『そんなことより、何でわざわざタカシ様がスーパーなんかにいらしたんですか? 食べ
るものは今は大体ネット注文で済ませられるから便利だって前に家政婦のおばさんから聞
きましたけど』
433 :
2/4:2014/02/13(木) 12:41:07.44 0
「最近お袋が菓子をあまり買わないようにしてるからさ。在庫切れで補充に来たんだよ。
せっかく一人で羽伸ばせるってのに、菓子くらいないと寂しいからな」
『何でしょう? 今の言い方、すごく引っ掛かるんですけど。もしかして私の護衛が邪魔
だとかそんなことをおっしゃっているんじゃないでしょうね?』
「え? あー……ま、まさか。何かいつも天井裏から見張られているような気がして落ち
着かねえとか思ってないぞ。うん」
『ああ。そーですか。タカシ様のお気持ちはよっく分かりました。私が放課後のおしゃべ
りやお茶だとか、休日ショッピングとか、おおよそ世間の女子高生の楽しみ一切を放棄し
てまでタカシ様の為に尽くしているというのに、それを邪魔とおっしゃる。いーですよ、
もうっ!!』
「邪魔とまでは言ってねーだろ。どうしてそこまで自虐的になれるかな?」
『だって口には出さなくても、顔見れば分かりますもん。はぁーあ。報われないなあ。私っ
て。私生活全てを投げ売って主人に尽くしているというのに、肝心の主人からは邪魔者扱
いだし。えーえー。どーせ私は務めも満足に果たせないダメくのいちですよ』
「んで、しのぶは何しにスーパーに来たんだよ? 買い出し……って感じじゃないな。カ
ゴん中見ると。砂糖に小麦粉。卵に牛乳。どう見ても菓子づくりの材料っぽいけど……お
前、そんな趣味あったっけ?」
『へ…… バ、バカ言わないで下さいよ。私は忍びですよ? そんな、お菓子づくりなん
て女の子らしい趣味ありませんてば!!』
「じゃあ、そのカゴの中身は何だ? どう考えても菓子の材料にしか見えないし。あ、そう
か。バレンタイン近いもんな。そうかそうか。季節がらそんな広告ばかりだもんな。それ
に当てられて作りたくなったか。でもお前、あげる奴なんているの?」
『やかましいですっ!! タカシ様にそんなこと詮索される謂れはありませんし、それに
これはそんな浮わっついたものじゃありません』
「ほぉ。じゃあそれは何を作ろうと思って買ったんだ? 言ってみろよ」
『その目。明らかに疑ってますよね。イヤらしい。これはその……毒薬の訓練です』
434 :
3/4:2014/02/13(木) 12:42:25.54 0
「毒薬? これがか?」
『これはその薬を仕込むチョコを作ろうと思って…… 薬はちゃんと秘伝の物が家にあり
ますよ。ただ、暗殺相手に食べさせるなら、時期的にチョコが一番かと思いまして』
「やっぱりチョコ作るんじゃねーか。下手なごまかししやがって。あげる相手もいないの
に作るのが恥ずかしくて隠してたんだろ?」
『違いますってば!! 時期的に一番手に入りやすい材料だからってだけです!! 本当
にイヤミなご主人様ですよね。タカシ様は』
「ま、物は言い様だよな。そうかそうか。しのぶもやっぱり女の子だよなー」
『え、偉そうにおっしゃいますけど、そういうタカシ様はどうなんですか? 人をバカに
出来るほどチョコ貰えるんですか? そんな訳ないですよね?』
「お前、普段護衛に付いてて何見てんだよ。別に俺は自分がイケメンだとは思ってないけ
どさ。やっぱり家が金持ちってのは強いんだよ。毎年……そうだな。7〜8個は貰えるぞ」
『マジですか? いやいやいや。私にバカにされるのが悔しくて見栄張ってませんか?
倍くらいは盛ってますよね?』
「別に自慢したい訳じゃないし、大げさに言ったりしてねーよ。俺と付き合えれれば自分
も金持ちにあやかれるって考える女なんてどこにだっているし」
『ううう…… わ、私だってその気になれば、チョコあげる男子の一人や二人くらいすぐ
に出来ますもん。お役目があるから付き合わないだけで!!』
「へぇ? 普段学校では目立たないようにって地味でおとなしい子を演じてるお前が?
だってクラスでもあれ誰って扱いだろ? まあ確かにあげるだけなら誰にでも出来るもん
な。相手に喜んで貰えるかどうかは別だけど」
『明らかにバカにした物言い、ムカつきます。言っておきますけど、あの地味な姿はタカ
シ様の護衛をするための仮の姿なんですから。私だって着飾ればそれなりには可愛く出来
るんですからね』
「ホントかよ。じゃあ一度見せてくれよ。お前が精一杯オシャレした姿をさ。でないとイ
マイチ信用出来ないし」
『絶対笑う気でいますよね? それって超失礼です!! 何でこんな性格悪い主人にそん
なことしなくちゃならないんのか、意味不明です』
435 :
4/4:2014/02/13(木) 12:43:36.73 0
「そうだな。それでチョコとか差し出してみてくれよ。あ、あの……ご主人様の為に精一
杯作りましたので……食べて下さい!! とかさ。そうしたら、お前にもちょっとは有り
難み出るのに」
『バッ……バッカじゃないですかタカシ様は!! わたっ……私がそんなことする意味が
分かりませんっ!! そんな妄想するなんてどんだけ変態なんですかっ!!』
「別に望んでして欲しい訳じゃないけどさ。しのぶが可愛く見られたいって思ったら、そ
れくらいしないとなあって思っただけで」
『冗談じゃありません!! 死んだってタカシ様にそんなことしませんから!! あああ……
ホントなら死なない程度の毒入りチョコ食べさせて悶絶させてあげたいのに…… それやっ
たら母上から死んだ方がマシな罰を食らうので、止めにしておきます』
「かすみさんの懲罰がなかったらやる気なのかよ。普段護衛だなんだ言ってるくせに」
『大丈夫ですよ。私は薬に関してはちょっと自信あるんです。身体に何の異常もないのに
腹痛で死ぬほど苦しむ薬とか、お試しになります?』
「冗談じゃねーよ。やっぱりお前は信用なんないな。誰にもあげる奴いないの可哀想だか
ら、何なら貰ってやってもいいとかちょっと思ったけど、やっぱり止めとくわ。俺はまだ
死にたくねーし」
『何ですか? その上から目線な物言いは。貰ってやってもいいとか、そういう事をいう
人に誰があげるもんですか』
「だからいらねえっての。ま、俺は多分他の子から貰えるからいいけど。お前は一人寂し
いバレンタインを過ごせばいいさ」
『ううううう…… もうムカつきました。ホント最低な主人ですね。タカシ様は!! お
役目ゆえに護衛は止めませんけど、金輪際影に徹させて頂きますからっ!!』
「あ、おい。しのぶ!! 行っちまったか…… さすがにちょっと言い過ぎたよな。まあ、
ほとぼりが冷めてから謝るとするか……」
後編に続く。
バレインタインデーにツンデレさんにチョコ渡したい。
そんでツンデレさんとチョコレート交換したい。
お互いのチョコを食べさせ合いっこしたい。
そしてホワイトデーもお互いお返ししあいたい。
今年は雪とソチでバレンタインの話題薄かったな。
お題
つ・当日うっかりバレンタインチョコを渡しそびれてしまったツンデレ
441 :
1/4:2014/02/15(土) 19:22:22.38 0
・嘘の下手くそなツンデレ(中編)
〜バレンタインデー当日〜
[よお。チョコブラックホール。今年も女子のチョコレートを独り占めか?]
「そこまでは貰ってねーだろ。大げさに吹聴すんな」[またそんなこと言って。下駄箱開けたら、2、3個落ちてくんじゃねーの?]
「今どきそんな古風なやり方する子なんているか? 大体俺にチョコくれる女なんて大抵
金持ちと付き合いたいとかそんなのばかりだからな。仮にいてもそういう子じゃないだろ」
[そんなもんか? 何気に目立たないようこっそり抜け駆けとかもあるんじゃね?]
「ないないって。大体お前は大げさに考え過ぎなんだよ」
カパッ。
「ほら。見てみろよ。一つも入ってないし」
[マジか? ホントだ…… 1個もねえ。これは驚きの結果だな。俺の予想じゃ3つは堅
かったんだが……]
「ま、こんなもんだろ。意外と高校生ともなるとリアル思考でむしろ敬遠されたりとかあ
るかもよ?」
[まあ、ないこともないけどさ。まあ、手渡しに変えたっつー可能性もあるしな]
「いずれにせよ、少しは減ってくれた方が有難いかも。貰えるのは悪い気しないけど、他の
奴らの嫉妬に満ちた視線が痛いし」
[当たり前だ。どうせ今年も10個は貰えるんだろ? いーよな。金持ちは。顔それなりで
もモテてよ]
「興味本意なだけだろ? どうせガチで付き合えば即飽きるって。あと顔それなりって、
それ余計だろ。否定はしないけどさ」
[ハハッ。ま、どっちにしろお前は勝ち組なんだからさ。もう少し胸張ってろよ。下手な
謙遜は却って相手をミジメにさせるぞ]
「チェッ。勝手言ってろよ」
442 :
2/4:2014/02/15(土) 19:23:59.75 0
「(何が10個は堅いだよ。結局ゼロじゃねーか……)」
「(ま、静かっちゃあ静かだけどさ。空しいのも事実だよな……)」
『タカシ様。どうなさいました? ショボくれた顔をなすって』
「何だよ、しのぶ。もう話さないんじゃなかったのか?」
『いいええ。あんまりにも元気なさそうな様子だったので、どうしたのかなーと思いまして』
「そうか? 別に普通だと思うけど」
『そんなことございません。顔にこう、陰が掛かってますもん。くらーい感じで』
「知らねーよ。つか、何が言いたいんだよ。イヤミな笑い浮かべやがって」
『別に。ただ、チョコをいっぱい貰えたはずのタカシ様が浮かないご様子だったので、ど
うされたのかなあ、と』
「あ?」
『あれだけ自慢気に語ってらっしゃいましたものねぇ。まさか、一つも貰えなかったとか、
そんなことありませんよねえ?』
「しのぶ」
『はい? 何ですか? タカシ様。何か私に言いたいことあったら遠慮なくどうぞ』
「それじゃあお言葉に甘えさせて貰うけどさ。パンツ、見えてるぞ」
『ふぇっ!? あ…………いぃやああああっ!! 何人のスカート覗いているんですかっ!!
このドスケベご主人は!!』
「そんな高いトコに立ってスカートヒラヒラさせてたら、見る気無くても見えるって。前か
ら言ってるだろ。お前は粗忽なんだから、立ち居振る舞いに気を付けろって」
『あううううっ!! だからってガン見することないじゃないですかっ!! もうお嫁に
行けません!!』
「安心しろ。お前みたいな危険人物貰う物好きは滅多にいないから」
『やかましいですっ!! タカシ様だってチョコゼロの非モテ男子のクセに』
「何だよ。よく知ってるじゃねーか、お前」
『そりゃもう。護衛役として、タカシ様の行動は一部始終観察してますからね。ドヤ顔で
毎年10個近く貰ってたとか言ってたクセに。ざまあみろです』
443 :
3/4:2014/02/15(土) 19:25:16.45 0
「なるほどな。俺が落ち込んでいると思ってバカにしに来たわけか。ホントに性格悪い奴だな」
『こないだの仕返しですからね。それくらい言わせて貰ってもバチは当たらないと思いますが』
「ま、俺がチョコ貰えなかった事は事実だからな。好きに言ってくれて良いけどよ。でも
自分もあげるチョコゼロのクセに空しくねーか? それ」
『フフン。本当にそうでしょうかね?』
「何? 誰かにチョコあげたのか? お前が? で、受け取ってくれたのかよ?」
『もちろんです。誰かは秘密ですけどね。すごく喜んでくれましたよ』
「へぇ。お前がなあ。ま、それならそれで良かったんじゃね? で、そいつと付き合うのかよ」
『ままま、まさか!! 私にはタカシ様の護衛というお役目がありますもん。ちょっとイ
ベントの雰囲気を楽しんだだけです』
「何だ。別にお役目くらい、お前がもし本気で女の子の幸せを選ぶなら、俺がかすみさん
に頼んで任務を解除してやったのに」
『むー。そんなことより、タカシ様のそのスカした態度の方が気に入らないです。もう少
し焦った態度も取れば可愛げもありますのに』
「俺が何を焦るっつーんだよ。別にお前とバレンタインの成果争ってる訳でもねーのに」
『もういいです。それよりもこれ。何だか分かりますか?』
「綺麗な柄の紙袋に金のリボンで封してあるって、いかにもバレンタインチョコぽいけど」
『正解です。実は、実験用のチョコが少し余ったので。欲しいですか?』
「何だよ。くれるのか? チョコなんて作らないとか言ってなかったっけ?」
『だから余りだって言ってるじゃないですかっ!! それより欲しいんですか? それと
もいらないんですか? 答えて下さい』
「いや。まあ、くれるって言うなら貰うけどさ。やっぱ、1個も無しって正直寂しくはあるし」
『そうですか。なら、あげても構いませんけど、それには条件があります』
「条件? 変なことじゃないだろうな?」
『難しいことじゃありません。この間私をバカにしたことを謝罪した上で、ちゃんとお願
いすれば他ならぬ主人の頼みですから差し上げます。出来ないのであれば、これは誰か適
当な男子に恵んでしまいますが』
「この間って……スーパーでの事か? なら、あれは確かに俺が言い過ぎたと思う。悪かっ
たよ。スマン」
444 :
4/4:2014/02/15(土) 19:26:28.23 0
『へ…… い、いやに簡単に謝りましたね。正直、もう少しごねるかと思いましたのに』
「んーとさ。しのぶとは普段から気さくに話してるからついつい気遣い忘れちゃうんだけ
どさ。お前だって年頃の女の子なんだもんな。普通の女の子と同じようにカッコいい男子
に憧れてさ。チョコあげたりしたいって思うのは普通だし、ああいう言われ方されたら傷
ついて当然だよなって気付いたら申し訳なくてさ。次に顔を合わせたらちゃんと謝ろうっ
て思ってたから」
『い、いやその…… そんなっ!! タカシ様に素直に頭下げられると私が困っちゃいま
す。もっと適当に謝るだろうって思ってたから…… 止めて下さい。却ってこっちが申し
訳なくなっちゃいます』
「気にするなって。悪いのはこっちなんだし。ま、こんな俺相手でよければ、その余り物
のチョコくれないか? しのぶの作ったチョコ、食べてみたいし。毒入りじゃなきゃ、だけど」
『あ、当たり前ですっ!! さすがにタカシ様相手にそんなチョコ食べさせる訳にいきま
せん!! 私が母様に死んだ方がマシと思える罰を食らってしまいます』
「まあ、かすみさん怖いからなあ。で、くれるのかな?」
『そ……それはその……仕方ありません。約束ですから…… わ、私の手作りチョコレー
ト……食べて、下さい……』
「ありがとう。今ここで開けていいか?」
『それはもう、タカシ様の物ですから……好きにして下さい』
「それじゃ早速。へぇ。ハート型のチョコか。王道だけど、凝った飾り付けしてるじゃん。
色もカラフルだし」
『それはその……一度作り始めたらついつい凝りだしちゃって……タカシ様に褒めて貰お
うとか、そんなつもりじゃなかったんですよ。本当に』
「あのさ。こっちから何も言ってないのにそういう否定すると、却って意識してたんじゃ
ないかって勘繰りたくなるぞ」
『うわわわわっ!! だから違いますってば!!』
「だから取り乱すのは逆効果だって言ってるのに…… まあいいけどさ。それじゃ、食べるぞ」
『は、はい。どうぞ……』
後編に続く
しのぶちゃん可愛い
続き期待
・普段通りツンツンしながら旦那にチョコレートを渡すツンデレ嫁
・それに対し、感謝の気持ちいっぱいでチョコレートを渡すデレデレ娘
・娘の手作りチョコレートに、男は大満足のようです
・娘ばかりちやほやされて、内心面白くないツンデレ嫁
・気付いてみると完全に2人の蚊帳の外なツンデレ嫁
・男に思いっきり甘えるデレデレ娘
・ついカッとなって、思ってもないことを言ってしまうツンデレ嫁
・自己嫌悪から泣いてしまったツンデレ嫁
・そんなツンデレ嫁を優しく抱きしめる男
・顔を真っ赤にしつつも、喜びを隠しきれないツンデレ嫁
・もう少し、普段は素直になろうと決心するツンデレ嫁
・父親と母親が仲良しで、とても嬉しそうなデレデレ娘
・なんだかんだ言いつつ、仲良しな一家なのでした
・デレデレ娘が眠った後、ツンデレ嫁はこれでもかとデレデレになったそうです
こら10ヶ月後お姉ちゃんになっちゃいますわ
>>439 ち「明日は……バレンタイン……。頑張って、手作りした……けど……渡せるか、な……?」
ち「うう……無理、だよ……! そんな事……でも、せっかく作ったし……。……って、作った事が重要じゃなくてっ……!」
ち「誰に言い訳してるんだろ……。はぁ。…………どうしよ。下駄箱……? あまり食べ物入れたくない……。手渡し……無理無理……」
――。
ち「ん……んん……」
母「ちなみ大丈夫ぅ〜? 起きてるのぉ〜?」
ち「ん〜……? ……・はっ!? も、もうこんな時間……! 遅刻しちゃう……!!」
母「あらあら〜。朝ごはんどうするの?」
ち「いらないっ、行ってきます……!」 ダダダッ
母「めっずらしぃ〜。ちなみ焦ってるぅ〜!」
――。
先「佐藤ー。椎水ー。……。椎水ー?」
ち「(ガララッ!) はいっ……! す、すいません……! 遅刻、ですか……?」
先「ん〜、まぁいいだろ。田中ー」
ち「ほ……。間に合った、か」
友「珍しいわね〜アンタが遅刻ギリなんて。……さては昨日緊張で寝れなかったなぁ〜?」 コソコソ
ち「う……そ、そんな訳……あっ!!」
先「!? ど、どうした椎水?」
ち「い、いえ……失礼しました……」
友「……アンタもしかして」
ち「……何?」
友「忘れたね? チョコ」
ち「べべべ別にそんな物持ってくる理由がないしあり得ない……よ……!!」
友「あっきれた。この期のおよんで何言ってんだか。あっちの顔みてご覧なさいっての」
男(わくわくニコニコ)
ち「う、うう……。で、でも……。忘れちゃった……し」
友「ハァ〜……。ホント駄目駄目の駄目子なんだから。(さらさらり)このメモ、アイツに渡しなさい」
ち「へ……? ちょ、ちょっとこんな……っ! あ、無視……とか……。むう……」
ち(こんなの、チョコ渡すよりよっぽど恥ずかしい、よ……!)
ち(放課後、うちに来て下さい……なんて……!!)
――もちろん放課後、チョコ以上のものも渡せました。
これは純情ちなみんかわいい
『バルタン星人ちなみんです…もっふぉっふぉっふぉ…』
「oh…」
『なんか言え…』
「いや、世代的にどうかなー、とか思ったけど、言葉にならんかった」
『補足すると…帰ってきた…仕様です…』
「わかるか、若干色が薄いとか知らん。で、何の用だ」
『バルタン星人といえば…宇宙忍者…タカシの部屋にスネークした…』
「嫌な予感しかしない言葉だな」
『そしてこれが…機密文章…またの名を…エロ本…』
「やっぱりかー!」
『もっふぉっふぉっふぉ…』
「くそう、蝉がモデルの宇宙人のくせにぃ」
『エロ本の所持は…掟違反…忍びの掟に従い…死を…』
「バルタンの要素薄いな、最初から忍者で来いよ」
『ぇぁ…う、ぇと…ぁー…忍びの掟に従い…死を…』
「(言ったら駄目だったのか、忍者。)」
『という訳で…とらんすふぉーむ…』
「え、変身すんの、ますますバルタン関係なくなるよ、出オチだよ」
『んしょ…あれ…ファスナーが…はさめない…』
「トランスフォームって着ぐるみ脱ぐだけかよ!しかもバルタンだからすげー手間取ってる!」
『ちょ…タカシ…背中のファスナー下して…』
「グダグダだなって、お前なんつー服着てるんだよ」
『くのいちちなみんです…にんにん…』
「布面積をもう少し増やせ、年ごろの娘」
『ふふふ…くのいちといえば…ハニートラップ…これでタカシも…メロメロ…』
「メロメロって言われても、平坦な体に欲情する癖はねーよ。最低Gカップになって出直せ」
『(と…タカシは言うはず…その油断…慢心こそが最大の敵…)』
『(油断した隙に…部屋を脱出…タカシの家族に…あることないことを言ってやる…)』
『(さあ…こい!)』
「あーそうだな、うん、確かに似合ってて可愛いし、エロいし、うん」
『え…いや…そんな反応されても…』
「ただ、もうちょっと露出は少なくしてくれ、ほら、俺も男だしな、その、ほら」
『ふえっ…いきなり…そんなこと言うの…なし…』
「なしって言われても、ちなみの方からだろ、いきなり脱ぎだして」
『脱ぐとか…言うな…あと…そんな見んな…』
「あーごめん、でも、その可愛くて、」
『……………………もっと…見る?…』
〜終われ〜
勃起した
ちなみんかわいいよちなみん
どっちのちなみんもかわい過ぎて死ぬwwwww
知らぬ間にまた2chの運営周りが騒がしくなってるな
お題
つ・世間の動きに疎いツンデレ
VIPでスレを何年探したことか
461 :
1/8:2014/02/22(土) 12:32:19.35 0
・嘘の下手くそなツンデレ(後編)
ハムッ……モゴモゴ……
「うん。まあ、美味いな。チョコを溶かして固め直しただけなら当たり前か」
『そういう事言わないで下さいっ!! それでも結構手間掛かったんですから』
「それは分かってるよ。手作りチョコの有り難みは味よりもそっちだって事も。ま、俺はつ
いでなんだろうけど」
『ついでだなんてそんなっ!!』
「は? どうしたんだよ? そんな焦ったような顔して。これは余り物なんだろ? さっき、
別の奴にあげたって言ってたじゃん」
『え、ええ。そうです。それはそうなんですけど……』
「何だよ? 歯切れの悪い奴だな。もしかして何かやましい事したんじゃないだろうな?」
『や、やましい事なんて滅相もない!! タカシ様に迷惑が掛かるような事は決して……』
「そうだ。そういえばお前に聞きたいことがあったな。今思い出した」
『き、聞きたいことですか? 変なことでなければ……』
「いや。俺のクラスの奴がさ。初めて女子からチョコレート貰ったって喜んでたんだよ。
昼休みに。したっけそいつ、5限目に急に腹痛起こして保健室にはこばれてさ」
『そ、そうなんですか。それは可哀想に…… で、でも人生初のチョコと引き換えなら価
値あるんじゃないですかね?』
「ほぉ? 女の子から貰えたチョコで腹痛になるなら、男にとっても本望だろと?」
『そ、そういう意味ではありません!! 大体その腹痛がチョコのせいと決まった訳では
ありませんし……』
「そうだな。ただ、そいつの話じゃ、今まで見たことがない女子だったそうなんだよな。
まあ、学年違ったりクラスが離れてたりすればそういう事もあるかって、あまり気にしな
かったらしいんだが」
『それはそうでしょう。無論私はタカシ様の身の安全を守る者として、全校生徒の顔と名
前は全て見知っておりますが』
462 :
2/8:2014/02/22(土) 12:33:28.32 0
「へぇ。そりゃすごいな。頭あまり良くないのも、そういうトコに記憶領域を使っているせいか」
『失礼なこと言わないで下さい!! あれは目立たないよう敢えて平凡な成績を取ってい
るんですからね!! あと、勉強の時間もお役目に当てているからで、頑張ればもう少し
出来ます』
「分かった分かった。話戻すけどさ。不可解なのは、他に二人ほど、症状は違うけど保健
室に運び込まれて来てるんだよ。で、そいつらも普段チョコに縁がない非モテ男子でさ。
いずれも見覚えのない女子からチョコ貰ったって。容姿は若干違ったらしいけど、何とな
く真面目そうな可愛い子だっていうのは共通してるらしい」
『へ、へぇ…… そういう偶然もあるんですねえ……』
「で、しのぶ。お前に心当たりないか?」
『へ…… や、ヤダなあタカシ様。何を変なことおっしゃっているんですか。私がそんな
こと知るわけありません。人をお疑いになるのは止めて下さい』
「お前確か、バレンタインチョコなんて作らないって言ってたよな? チョコの材料をた
くさん買い込んでおいて、これは毒物の試作だとかなんとか」
『えーと…… そんなこと言いましたっけ? よく覚えてませんが』
「嘘つけ。その時に俺がバカにしたことはハッキリ覚えてたくせに」
『そっちの印象が強すぎて、その辺うろ覚えなんですってば!! まるで私がごまかして
るみたいな言い方、止めて下さい!!』
「確か全く身体に害を与えずに腹痛だけ与える薬作れるとか言ってたな?」
『そ、それはその……あんまりにもタカシ様が失礼なことばから言うから、たとえとして
挙げただけで実際に作ってなどおりません。』
「なるほど。この件に関してしのぶは全く身に覚えはないと。そういう訳だな?」
『あ、当たり前です。確たる証拠もなしに人を犯人扱いするのは止めて下さい』
「まあ、お前の言い分は分かった。あともう一つ、不可解なことがあるんだけどさ」
『まだあるんですか? タカシ様。ひょっとしてチョコ貰えなかった腹いせに私を陥れよ
うとか思っているんじゃないでしょうね?』
「何言ってるんだよ。チョコなら貰ったろ。お前から、さっき。余り物とはいえチョコく
れた女の子に対して腹いせで犯人に仕立て上げる訳ないだろ?」
463 :
3/8:2014/02/22(土) 12:34:34.30 0
『い、いやその……だって、さっきからタカシ様の言うことがどう考えても私を疑ってる
としか思えなくて……』
「状況から見て、誰かがこんなこと出来るとしたら、お前くらいしかいないからな。事実
関係を確認してるだけだ」
『むー…… あからさまに私を疑っているじゃないですか。正直、心外です』
「やっていないなら堂々としてりゃいいだろ。で、あと一つなんだけどさ……」
『ハイハイ。もう何でも言って下さい。どうせ、全部私のせいだって思ってるくせに』
「だからクサるなって。それでさ。俺、今年チョコゼロだったじゃん。それをクラスで話
してて、中学から知ってる奴が信じられねーよとか言ってたらさ。それを聞いてた女子の
1人がそんなことあるはずないとか口挟んで来てさ」
『は? 何言ってるんですかね? その女子は。タカシ様なんて家柄取ったら何にも残ら
ないごく普通の冴えない男子なんですけどね。まさかその子が自分でタカシ様宛てのチョ
コを下駄箱に入れたというならともかく』
「いや。その子は別の男にチョコ渡してんだけどさ。何か友達が俺宛てのチョコ作ってく
れてたらしいんだよ。何かすごい気合い入った手作りのを。で、そんなはずないだろって
聞いてみたら、何か持ってきたはずのチョコが無くなってたって騒いでたらしくてよ」
『えー? そ、それって単に家に忘れてきたとかじゃないんですかぁ?』
「まあ、その子だけならな」
『え…… その子だけならって……』
「クラスの新聞部の奴が調べたんだよ。やっぱりおかしいってな。そしたら、その子と同
じようにチョコが無くなった子が6人。あと、3人ほど俺の下駄箱にチョコ入れてたらし
い。さすがに届いてなかったとは言えなかったらしいぞ」
『……(滝汗)』
「ちょっとカバンの中身を調べさせて貰おうと……思ったんだが、その顔見れば必要ないな」
『も、申し訳ありませんっ!! 違うんです!! けけけ、決して嫌がらせとかそんなこ
とじゃなくてですね。そんな、どこの馬の骨か分からない女の渡すチョコを食べて万が一
にも毒物が入っていたら大変なことになるじゃないですかっ!! あああ……あくまでこ
れはタカシ様をお守りする為であって…… わ、悪気があった訳では……』
464 :
4/8:2014/02/22(土) 12:36:04.50 0
「つまり、自分が犯人だと認めるわけだよな?」
『ううっ…… で、でもですね。後からちゃんと返そうとは思っていたんですよ? さす
がに人のチョコを捨てたりとか出来ないですし』
「まあ、何にせよお前が持ち主の思いを踏みにじったことは事実だよな」
『で、でもでもっ!! タカシ様だって金持ちに取り入る為のチョコなんて貰っても嬉し
くないとか言ってたじゃないですかっ!!』
「それとこれとは話が全然別だろ。お前は第三者なんだし。余計なお世話じゃ済まされな
いぞ。例えばお前が誰か大切な人にあげようと思っていたチョコを盗まれたらどう思うか
考えてみればすぐ分かるだろ」
『…………』
「全く。任務に忠実なのはいいけど、もうちょっと考えろよな。護衛につくくらいならと
もかく、暴走するのは止めてくれよ」
『……申し訳……ありません』
「まあいい。とりあえず、下駄箱に入っていた以外のチョコはこれから学校に戻って全部
本人の机に返して来い」
『こ、これからですか!?』
「当たり前だ。まあ1日ズレるけど、本人が直接手渡せる方がいいだろうってな。貰う本
人が言うこっちゃないけどさ」
『わ、分かりました……』
「下駄箱のチョコは今よこせ。紆余曲折あったとはいえ、当日に俺のところに来た方がい
いだろ。どういう訳かロッカーに入ってたってことにしとくからさ」
『それ……やっぱり今日お食べになるんですよね?』
「そりゃまあ、お礼と感想が言える程度にはな。何だよ。不満か?」
『い、いえその…… 別に不満だなんて事は…… ただ、やっぱり万が一のことがあった
ら、母上に何と言われるか……』
「全くしょうがねーな。安心しろ。ちゃんとお前に毒味して貰ってから食べるから」
『ホントですか? って、それって私を人柱にするってことじゃないですか!! 酷すぎ
ます!! それに貰ったチョコを他の女の子に食べさせるってのはどうなんですかっ!!』
465 :
5/8:2014/02/22(土) 12:37:16.40 O
「バレなきゃ問題ない。チョコくれた女の子が嬉しく思えばそれでいいんだよ。あと、お前
は任務なんだからしっかり果たせ」
『何かそれって、超都合良いように感じますけど。まあ仕方ありません。とりあえず、手
渡ししようとしてた子のチョコは返して来ます。下駄箱の子の分は後で渡しますから』
「ああ。ちょっと待て」
『はい? 何でしょうか?』
「まさかとは思うけどさ。お前が他の子のチョコ盗ったのってさ。任務以外の理由があっ
たりとかしないよな?」
『な……? どういう意味ですか? それ』
「いや。だからその……ちょっとくらい嫉妬の気持ちがあったりとか……しないよな? やっぱ」
『なっ……!! なななななっ!! 何を勝手な妄想をし……してるんですかっ!! しし
しっ……嫉妬だなんて、ななっ……何で私がそんな感情を抱かなくちゃならないんですかっ!!
まままっ…… 全くもって意味不明ですっ!!』
「いや。確かに都合の良い妄想だからないならないでいいんだよ。つか、お前一応忍者の
はしくれだろが。そんな風に取り乱されると、却って疑っちまうぞ」
『タカッ……タカシ様が変なことおっしゃるからじゃないですかっ!! 女の子ならそん
なこと唐突に言われたら誰だって少しは動揺くらいします!!』
「そっか。悪かった。しのぶが困るって言うなら、今の質問は取り止めにするわ」
「(まあ、あれだけ顔真っ赤にして取り乱していれば、聞かなくても大体分かるしな)」
『当たり前です!! だ……大体、私に嫉妬の気持ちがあったりしたらどうだって言うん
ですか? むしろそっちの方が気になります』
「お前な。俺の質問からは逃げるクセに、自分はちゃっかり質問を返すのかよ」
『いいですよ? 別にお答えにならなくても。ただ、タカシ様だってそういう質問された
ら困るだろうなって思っただけですから』
「いや。もし嫉妬してくれたとしたら、単純に嬉しいとは思うけどな」
『へっ……?』
466 :
6/8:2014/02/22(土) 12:38:19.75 O
「まあ、半分ちょっと怖いところもあるけど、お前の場合はお役目っていう理由あっての
ことだしな。しのぶみたいな子にそういう感情抱かれているっていうのは悪い気しないっ
て言うか……まあな。嬉しくはあるぞ。うん」
『あぅ…… そういうコト、サラッと言っちゃうの……ズルいです』
「ズルいか? 俺は聞かれたコトを正直に答えただけなんだけどな」
『ズルいですよっ!! だって何だか、私の方がみっともなくなっちゃって…… 答えな
くちゃいけない空気になっちゃったじやないですか……』
「いや。別に答えろなんて全くそういうつもりじゃなかったんだけど。別にイヤなのに変
に空気読んで答えなくたっていいんだぞ」
『で……でも……タカシ様にだけ答えさせておいてっていうのは……』
「だから気にしなくていいんだって。無理に答えられても、お互い後味の悪い結果にしか
ならないかも知れないんだし」
『む、無理にじゃありませんっ!! 今ここで答えなきゃいけないような……そんな気が
して…… タカシ様がどうとかじゃなくて……じ、自分の中で……』
「もちろん答えたいって言うなら止めはしないけどさ。そうなると、あとはしのぶ次第だぞ?」
『…………』
「迷うのは分かるけどさ。あまり時間掛かると日が暮れるぞ」
『分かってますっ…… 答え……ますから……答えさせて下さいっ!!』
「まあ、そこまで言うならこれ以上は止めないけどさ。でも、本当にいいんだな?」
『わ、私が答えるって言ってるんですからいいも悪いもありません!! タカシ様は黙っ
て聞いてて下さい!!』
「分かったよ。大人しく聞いてるさ」
『あの、言っておきますけど、他の女の子からチョコを回収したのは、本当にお役目あっ
てのコトなんですからね。そこは誤解しないで下さい。それとこれとは……別なんですから』
「分かってる。それについてはもう注意もしたし、ちゃんと言う通りにすればいいから」
『いえ。そういうコトではなくて…… でもいいです。それとこれとは別の話でいうなら、
タカシ様が他の女の子からチョコを貰うっていうのは……』
467 :
7/8:2014/02/22(土) 12:42:08.94 O
「――――?」
『いえ。そこまで明確に言えるかどうかは微妙なんですけど…………やっぱり、その……
タカシ様が他の女の子からのチョコを嬉しそうに食べるっていうのは……』
「待て……ちょっと……」
『こ、ここで止めさせないで下さいっ!! こんなこと、肝を据えないと言えないのに、
今言えなかったら……』
「いや。それどころじゃ……あいっ……イテテテ……腹が……」
『へ……? どうなされたんですかタカシ様っ!!』
「ヤバい……超腹が痛いんだけど…… お前、チョコに何か入れてないだろうな……?」
『私がタカシ様にそんなことするはずありませんっ!! タカシ様用のチョコはちゃんと
別に……って、あれ?』
「何だよそれ……そもそも俺用って……」
『これがタカシ様にあげるために別に作ったチョコ……ってことは……し、しまったあああっ!!』
「……何が……しまったって……別に作ったチョコって……どういうことだよ……」
『いえ、ですからその……あげるチョコを間違えたというか…… だ、大丈夫ですからタ
カシ様っ!! ちょっと二時間ほど腹痛が続きますけど、その後は何事もなく完治します
から!!』
「……てことはやっぱり男子が何人か倒れたのもお前のせいじゃねーかっ!! アイテテ
テテテッ!!」
『し、しまったっ…… ち、違うんですよタカシ様。あの人たちにはうかつに人を信じる
と酷い目に遭うという教訓をですね……』
「ふざけんなぁっ!! オマケに俺まで巻き込みやがって……」
『わあっ!? タカシ様のは本当に不可抗力なんですってば!! ホント、単純に間違え
ただけで、けけけ、決してタカシ様を酷い目に遭わせるおつもりなどなかったというか……』
「言い訳は後にしろ…… いいから早く解毒剤よこせ……つかマジいてえ……」
『あの……解毒剤は……ありません……』
468 :
8/8:2014/02/22(土) 12:44:35.19 O
「……なに?」
『だだだ……大丈夫です!! 本当に二時間もすれば何ともなくなりますから!!』
「ふざけんな。マジ何とかしろ…… めっちゃ痛いんだぞ…… 二時間も我慢してられる
かあっ!!」
『えーとえーと…… あ。申し訳ありません。そろそろ女の子たちから盗ったチョコを返
しに行かないと。タカシ様はお気を付けてお帰り下さい。ではゴメン!!』
「待て逃げるなこのヤロー……アイッ……イテテテテテテ……」
一応終わり
あと、オマケがありますんでそれは後程
暴走しのぶちゃんかわいいなGJ!
471 :
ほんわか名無しさん:2014/02/22(土) 19:42:57.85 0
かわいい!!!!!
最後の表情かわいすぎワロタ
こういう娘に罵られたい
じゃあ尚更やるよ ってセリフ回しが好きだwww
>>472 まず女子と2人でお出かけする機会がないから
このシチュエーションはありえない…(TωT)
>>472 ふおおおお!くぁいいいいいあああああ!!
みんなまとめてで悪いけどGJ!!
479 :
ほんわか名無しさん:2014/02/23(日) 12:25:34.81 0
>>472 ゴメン
可愛すぎてニヤけるわwwwww
お前はもっと自分のツンデレ感に自信を持っていいwww
いいねいいねw
482 :
一日遅れですまん:2014/02/23(日) 19:21:55.73 0
今日は2月22日。
にゃんにゃんにゃん、というわけで猫の日らしい。
ので、取り敢えず猫耳カチューシャを買ってきた。
『…………』
衝動買いとは、こういうことを言うのだろうか。
思いつきとテンションだけでこんなもん買うもんじゃない。
使い道が全く浮かばない……。
誰かに見せるのも恥ずかしいし、かと言って捨てるのも勿体無い。
『……つけてみるか』
装着。
……む、バランスが難しい。
普段カチューシャとかつけないからなぁ。
よし、コレでオーケー。
姿見で改めて猫耳を装備した自分を見てみる。
『…………』
うん……まぁ……。
わかってたけどね、すごく恥ずかしい。
しかし、この国には毒を食らわば皿までという諺もあるわけだし。
こう……ほっぺたのあたりで手を、こう……丸めて……。
『……にゃん』
483 :
一日遅れですまん:2014/02/23(日) 19:23:00.30 0
「姉ちゃんシャー芯貸してー」
ノックもなしにドアバーンしてくる弟に遭遇。
にゃんにゃんポーズのまま硬直する私。
ドアバーンの体勢のまま不動の弟。
『…………』
「…………」
1分間の空白が生まれた。
私の思考がどうやってこの不埒者を抹消してやろうかという境地に達した頃、弟が動き出した。
私の机へ向かい、なにやら物色している。
それを見守る私。
まだ、死体をどうやって山まで運ぶかの算段がついてないうちは動けない。
そうやって私が脳の稼働率を熱暴走ばりに高めていると、弟は目当ての何かを見つけたらしく、さっさとドアノブに手をかけた。
馬鹿め! 敵に背を向けるとは!
「姉ちゃん」
と、そのまま弟が話しかけてきた。
まさか、殺気を気どられた……?
ドアノブを握ったままの弟はその場で振り返り、
「それ、可愛くて似合ってるよ」
『……へ?』
ガシャーコ。
鳴り響くシャッター音とLEDのフラッシュ。
何が起きたのかよくわからないでいると、弟は「じゃ」と短く挨拶をして今度こそ部屋から出て行った。
その10秒後、私は自身の不覚と、弟への怒りと、アホヅラを写メられた羞恥と、思いもよらぬ褒め言葉にうっかりときめいてしまった自分のアホさ加減にドタバタと部屋の中を這い回る羽目になるのだった。
484 :
一日遅れですまん:2014/02/23(日) 19:23:46.15 0
今日は2月22日。
にゃんにゃんにゃん、というわけで猫の日らしい。
ので、取り敢えず猫耳美少女のイラストを描こうと思う。
今日がバースデーの友人がいるので、その友人の希望を叶えてやろうというわけだ。
俺は下書きはアナログ派……と、シャーペンの芯が切れてる。
しょうがないから姉ちゃんに借りよう。
自室を出て隣の部屋へ。
なにやら昼間出かけてたみたいだけど、姉ちゃんは奥手で恥ずかしがり屋だから、まさかデートではあるまい。
可愛いのに勿体無いよなぁ。
「姉ちゃんシャー芯貸してー」
あ、ノック忘れた……おや?
『…………』
「…………」
頭に猫耳を乗せた女を姉ちゃんの部屋で発見。
まあ十中八九姉ちゃんなんだけど。
大穴で実は俺が今まで一緒に暮らしてた姉ちゃんは実は猫又で、この度変花がうまくできなくなったとか……ないな。
改めて硬直してる姉ちゃんを眺める。
控えめな長さのスカートの下にはタイツ。髪は肩口ぐらいのショートカットで、クリクリした瞳が猫耳と妙にマッチしてる。
……可愛いな。
………………おっと、そういえばシャー芯を借りに来たんだった。
見惚れてる場合じゃない。
姉ちゃんは未だに硬直状態が解けないので勝手に借りるとしよう。
机を漁っり、シャー芯を発見……2Bって。
まあいいか。
さて、コレで用は済んだし、さっさと退散するか。
と、そのまま部屋を出ようとしたが、なんとなくそれが勿体無い気がした。
姉ちゃん恥ずかしがり屋だし、これっきり猫耳姿なんて見れないかもしれないし。
「姉ちゃん」
ドアの前で振り返ると、姉ちゃんと目が合った。
「それ、可愛くて似合ってるよ」
『……へ?』
ガシャーコ。
あ、思わず写メっちゃった。
だってアホヅラが可愛かったから……。
そんなこんな、言い逃げしましょ、そーしましょ。
自室にたどり着くと同時、隣の部屋からドタバタと何かが暴れる音が聞こえてきたけど、気にしない。
その晩、俺の大好物のハンバーグに、俺の大嫌いな人参を大量に付け合わせるというツンだかデレだかわからない行動をとった姉ちゃんは、真っ赤な顔で俺を睨みつけていました、まる。
486 :
一日遅れですまん:2014/02/23(日) 19:24:55.74 0
山田『もしもし? 猫耳娘を描いてとは言ったけど、これ猫耳つけたお前のねーちゃんだよな?』
黙れ山田。
アホ面猫耳姉ちゃん可愛いなwww
489 :
1/6:2014/02/24(月) 23:41:43.82 0
・嘘の下手くそなツンデレ(おまけ)
〜で、夜〜
『ハァ…… これからタカシ様のところにチョコ届けなくちゃならないけど、気が重いなぁ……
主人を腹痛にさせた上に見捨てて逃げるなんて、あってはならないことだし…… 渡しそ
びれた本命チョコに惚れ薬でも仕込んで…… 今から調合して間に合うかどうか…… と
りあえず部屋に戻ってお風呂入りながら考えよ……』
カチャカチャ……
「よお。お帰り、しのぶ」
『ふぇええっ!? タタタタタ、タカシ様っ!? 一体何で私の部屋に? お、女の子の
部屋に勝手に入るとか犯罪ですよっ!! そもそもどうやって入ったんですかっ!! 私
の部屋は並大抵の泥棒程度じゃ侵入出来ないよう万全のセキュリティを施しておいたはずなのに』
「いや。実はだな……」
[私が入れたのよ]
『かっ!! 母様っ!!』
[お帰りなさい、しのぶ。今日は随分と活躍したようね]
『い、いえ……それほどでも……っていうかタカシ様っ!! 一体母様に何を吹き込んだ
んですかっ!! 確かに私がやったコトはお世辞にも褒められたコトじゃないとはいえ、
親に告げ口とか大人気なさ過ぎです!!』
「あのな。一応言っとくけど、俺からかすみさんには何も言ってないからな」
[全く……自分の仕えるご主人様も信用出来ないとか何事ですかこの子は。私があなたの
働きを知らないとでも思っているの?]
『えーと……それでは母様。私がやったことは全部……』
[当たり前ですっ!! 薬の実験に無関係の生徒を使うわ、嫉妬に狂って他の女の子のバ
レンタインを妨害するわ、挙げ句の果てに守るべきはずの主人に毒入りのチョコを食べさ
せるとか何を考えているの貴女はっ!!]
490 :
2/6:2014/02/24(月) 23:43:13.62 0
『一部誤解が混じってます!! 嫉妬に狂ってとかないですから。あれはちゃんと万が一
にもタカシ様が暗殺される危険から守るためで……』
[その貴女が毒入りチョコを食べさせてどうするんですかっ!!]
『わあっ!! 申し訳ございません母様!! でもあれは腹痛以外は無害ですから』
「無害ったってな。立ち上がれねーほど痛かったんだぞ。かすみさんの配下のくのいちが
助けてくれなかったら凍え死ぬところだったじゃねーか」
『また話を盛らないで下さい。そこまで強力な薬じゃなかったはずです!! というか、
母様配下のくのいちと言えば、あの露出が派手なお色気集団ですね? どうせ助けられつ
つ鼻の下伸ばして、オマケに役得とばかりにおっぱいの感触を楽しんだりしてたんでしょ
う? 最低です』
「最低なのはお前の脳みそだ。腹が痛すぎてそれどころじゃないってのによ」
[聞くところから判断すると、薬の調合を間違えたようですね。このアホ娘は。オマケに
自分の罪をうやむやにしようと主人を詰るなど、反省の欠片も見られないようですが、い
かがなさいますか? タカシ様]
「素直に謝って反省すれば、かすみさんにお願いして忍びの罰は免じて貰おうと思ったん
だけどな。まあ、しつけは親の責任とも言いますし、かすみさんにお任せします」
『お、鬼ですかタカシ様は!! 母様のお仕置きは大の男でさえ失神するほど過酷なんで
すよ? そんな目に私が遭うのをあっさりと承諾されるなんて!!』
「ほう? 腹痛で苦しむ俺を、ばつが悪いからと寒空の下に放置して逃げ出したお前がよ
くそんなこと言えるよな?」
『だから、まさか歩けないほどの腹痛だとは…… 最初辛くても、痛みに慣れてくれば家
に帰れる程度だと思ってましたので……』
「で、置いて逃げたと。言い訳にもならねーな」
[申し訳ございませんタカシ様。謝罪を知らぬ娘で。この子の不始末は身を持って思い知
らせますので]
『ウウウ…… か、かくなる上は……ゴメンッ!!』
ボムッ!!
491 :
3/6:2014/02/24(月) 23:44:19.40 0
[させませんっ!!]
シュルッ!!
『みぎゃあっ!!』
ドサッ!!
[この期に及んで逃げようなどと……どこまで性根が腐っているんですかこの子は]
『むぐぐ…… ぬ、抜けない……』
[あら? 貴女程度の腕前で母の緊縛術から抜け出せるとでも思いましたか? まだ見習
いをやっと卒業したばからのひよっ子のクセに]
『タカシ様あっ!! どうかお許しを!! 反省致します!! どんなご奉公でも致しますから!!』
[さて、タカシ様。この子はどう致しましょう? 虫責め、熱湯責め、冷水責め、くすぐ
り責めとお仕置きの方法はいくらでもありますから、お好きなものをお選び下さいませ。
無論、リクエストも承りますわ]
『ひいいっ!! どれも嫌ですけど、せめて虫は!! 虫だけは勘弁して下さいタカシ様っ!!』
「あの、かすみさん。一つ確認していいか?」
[はい。何でございましょうか?]
「この中に、怪我させたりとかそういう罰はないだろうな? 傷跡が残るとかさ。そうい
うのはちょっと後味悪いから」
[しのぶ。聞きましたか? タカシ様の言葉を。あんな酷い目に遭わされたというのに、
お前の体を気遣って下さっているのですよ。有り難く思いなさい]
『ホントに優しい人でしたら、私が罰を受けないよう取り成してくれると思うんですけど
ね。そんな中途半端な思いやりなど嬉しくありません』
[タカシ様。ご安心下さい。私の罰は肉体よりも精神的なダメージを重視しておりますゆ
え、怪我などはさせません。まあ熱かったり冷たかったり痛かったり気持ち悪かったりは
すると思いますが]
『それってほぼ怪我しないってだけですよね? 女の子が嫌がることのほぼ全てが入って
ますよね?』
「あら? さっきまでタカシ様に腹が痛くなるだけで後遺症など一切ないから平気だとの
たまわっていたのはどこの誰だったかしら?」
492 :
4/6:2014/02/24(月) 23:45:28.33 0
『そ、それは―― でも母様の罰とは比較にならないじゃないですか!!』
[そんなことありませんわよ。ねえ? タカシ様]
「かすみさん」
[はい。何でしょう? タカシ様]
「罰のことだけど」
『タ、タカシ様。どうかお許しを!! 見逃して下されば一生恩に着ますから!!』
「……フルコースで、お願いします」
『――――っ!?』
[了解致しました。あやめ。すぐに準備を]
〔はっ!!〕
『お、鬼ですかタカシ様はっ!! 一体何を今まで聞いておられたんですか!! 一つだ
けの罰でも相当厳しいのに、フルコースだなんて死んでしまいます!!』
「いや。今までの話を聞いてたからこそ、しのぶには一度きっちりとお灸を据えて貰った
方がいいと思って。安心しろ。骨は拾ってやる」
『全く安心出来ません!! むしろ不安が増す一方なんですけど』
[それにしては、しのぶのその格好はいただけないわ。罰を受けるならもっと露出は高くないと]
『か……母様、何を……?』
[――斬]
シュパパパパッ!!
『へ……?』
バサアッ!!
『い……いやあああっ!! 制服があっ!!』
[やはり罰を受けるなら、最低限その程度の露出度はないとね]
『何考えているんですか母様!! 私、まだ生娘なのに!! 大体実の娘を男性の前であ
られもない姿にさせるという辱しめに遭わせるなんて、それでも親ですか!!』
[あら? 胸もお尻もギリギリ見えないよう残してあげたのですよ? むしろ母の優しさ
に感謝すべきだと思いなさい]
493 :
5/6:2014/02/24(月) 23:47:16.86 O
『ちょっとでも動いたら見えるレベルじゃないですかっ!! っていうか、何こっちを見
てるんですかタカシ様っ!!』
「いや。制服をボロボロに切り裂かれた緊縛少女ってエロいなって思って」
『何考えているんですかっ!! タカシ様の変態!! ドスケベの犯罪者!! 死んで下さい!!』
「しかしいいのかな? これでこの上忍びの拷問をするとか、もはや18禁レベルじゃないか?」
[あら? ご心配には及びませんわ。別に淫らな事をするわけじゃありませんもの。深夜
アニメならば余裕ですわよ]
「もう十分エロい気がするけどな。つかかすみさん。最近の深夜アニメとか知ってんのかよ」
[あらゆるところから情報は集まって来るものですもの。それよりしのぶ。この程度の辱
しめを見られた程度で主人を変態と罵るなど、くのいちのはしくれとしても甘過ぎだわ。
貴女にはより厳しい罰を与えた方が良さそうね]
『母様そんな!! 普通の女の子ならこんな姿を見られたら恥ずかしさで悶絶してもおか
しくないというのに!!』
「しのぶ。もう止めとけ。さっきから口を開く度に墓穴を掘ってるだけだぞ。諦めて大人
しく罰を受けとけ」
『そんなぁっ!! お願いしますタカシ様!! せめてもう少し軽めに!! しのぶはき
ちんと反省しますから』
「まあ、その……頑張れ、しのぶ」
『タカシ様あっ!!』
〔かすみ様。とりあえず虫の準備は整いました。熱湯の方はまだ少し時間が掛かりますが〕
[聞いた? しのぶ。良かったわね。虫で穢れた体を清められて。逆だったら、それこそ
地獄だったのに]
『お湯ったって50度近い熱湯じゃないですか!! そんなのに浸けられても嬉しくありま
せん!!』
[あやめ。どんな種類が集められたかしら?]
〔はい。ゴキブリ。ムカデ。ナメクジに蛭。毒はありませんが獰猛な虻に芋虫、ダンゴ虫
などなどを大量に〕
[上等よ。始めていいわ]
〔承知〕
494 :
6/6:2014/02/24(月) 23:48:56.66 0
『いいやあああっ!! ゴキブリが!! 蜘蛛が!! ナメクジがああっ!! ふ、服の
中にまでえええっ!! ダメぇっ!! そこ入っちゃ!!』
[あら? いい声で泣くわね。でもいいのかしら? 叫び声がご近所に万が一聞こえるよ
うなことがあれば、ここの部屋の娘は変態マゾだと白い目で見られるかも知れないわよ?]
『――――っ!! は、母様の悪魔あっ!!』
[…………あやめ。確か飼育していた蛇もいたはずよ。この子にサービスしてあげて]
〔御意。ただちに〕
『は、母様お許しをーっ!!』
「(忍びの世界に生まれなくて良かったな。俺……)」
終わり
もうやめたげてよぉ!
山田の枕で寝たい
497 :
ほんわか名無し:2014/02/27(木) 09:50:10.36 0
IS見てからかなみの声がcv下田になってしまった
遅まきながらのバレンタインネタで、また長いの行きます
499 :
1/8:2014/02/27(木) 10:27:21.29 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ
『ねえ。今年はさ。チョコ、どうしようか?』
友人たちの会話に、静花はもうそんな季節かと思った。確かに、商店街ののぼりやら宣
伝用のPOPやらを見ていると、ちらほらとそんな文字が目立つ。この子達の友チョコは何
にしようかなどと考えていると、いきなり肩を抱かれた。
『ちょっと、委員長〜。何を考えているのかなあ?』
『離してよ。うっとうしい』
耳元で聞こえる声から友子だと判断して、静花は体を捻って振りほどく。マフラーを直
し、友人達を置いていかんばかりの速度に足を速めると、みんな慌てて付いて来て回りを囲んだ。
『ゴメンゴメン。考え事邪魔しちゃってさ』
友子が拝むように謝罪すると、反対側から英子という別の友人が好奇心丸出しに話しか
けて来る。
『今のは友子が悪いよね。委員長にとっては初めてなんじゃない? 男子にチョコあげる
のってさ。そりゃあドキドキワクワクしてるところを邪魔されたら不機嫌にもなるわよ』
すると静花は驚いた顔をして英子を見つめた。
『ちょっと待ってよ。何で私が男の子にチョコをあげなくちゃならないの?』
『え?』
逆に、一様に驚きの声を上げたのは友子たちの方だった。
『チョコをあげなくちゃいけないって…… 逆にこっちが聞きたいわよ。委員長、別府君
と付き合ってるんでしょ? まさかあげる気ないとか言わないわよね?』
『あ……!!』
今気付いた、とばかりに静花は口を開けて手を軽く当てた。
『ちょっと待ってよ。まさか別府君の存在自体忘れてたとか?』
『委員長。別府君って仮にもアンタの彼氏でしょ? いくらなんでも冷たすぎじゃない?』
『いや。この場合はむしろ別府君が悪いんじゃない? 委員長にアプローチが足りなさ過
ぎるから、彼氏として認めてもらえてないのよ』
500 :
2/8:2014/02/27(木) 10:28:57.53 0
周りで鳥がさえずるかのようにしゃべりまくる友人たちに、さすがにうるさくなって静
花は叫んだ。
『待って!! ちょっと待ってよ!!』
周りはピタッと勝手なおしゃべりを止めて静花を見つめる。彼女は自分が注目されてい
る事を恥ずかしく思いつつも、ボソボソとしゃべり始めた。
『……今まで男の子にあげた経験がなかったから……別府君とバレンタインってのが結び
つかなかっただけよ。確かにまだその……私にとっては形式上の付き合いで、好きだなん
ていう実感は全然ないけど、形だけでもチョコくらいはあげるわ』
ブスッと不機嫌そうに告白する静花に、友子が手を握って振った。
『そっかそっか。まあ、静花にとってはまだ手探り状態だからね。安心しなさい。このあ
たしが、男の子をメロメロにする必殺チョコの作り方を伝授してあげるから。大船に乗っ
た気でいなさい』
『だから、私はまだ別府君が付き合って欲しいっていうから彼女になっているだけで、私
が別に別府君を落としたい訳じゃないんだから』
静花はムキになって自分の主張を伝えようとするが、無論友人たちにそんな理屈は通用しない。
『まーたそんなこと言って。見栄ばかり張ってると、せっかくちょっといいなって思って
貰えてるところまで台無しになって、逆に捨てられちゃうわよ』
呆れた調子の英子を、静花は厳しく睨み付けた。
『別に構わないわよ。私には捨てられるなんて意識は全然無いんだし。向こうから言い出
したことなんだから、別れたいなら好きにすればいいのよ』
つっけんどんな静花に、友人たちは処置なしといった感じで肩をすくめる。その中で友
子だけがポン、と静花の頭に手を乗せて諭すように言った。
『ま、いずれにしてもチョコはあげるんでしょ? 困ったらいつでもこの友子さんに相談
なさい。お菓子作りのイロハを一から十まで教えてあげるから』
うっとうしげに静花はその手を払いのける。すると今度は友子に対して、他の友人たち
がひそひそと揶揄を始めた。
501 :
3/8:2014/02/27(木) 10:29:57.27 0
『偉そうな事言ってるけどさ。自分だって本命チョコ渡したことないじゃん』
『あれだよ、きっと。今年は山田君を落とすつもりで気合入れてるんだよ。山田君ってば、
全然鈍感だからさ』
『そこ、外野うるさいーっ!!』
『きゃーっ!!』
じゃれ合う友人達を、静花はため息をつきつつ眺めたのだった。
そしてその数日後の事である。
『…………』
「どうしたんだ、委員長。今日はいつにもましてだんまりだけど」
タカシの話にも単に頷くだけで、どこか上の空の静花が気になってタカシは様子を窺っ
てみた。
――別に。貴方と話したくて一緒に帰ってる訳じゃないもの。こんなのただのポーズに過
ぎないんだから――
そんな返答が、タカシの脳裏を過ぎる。厳しい事を言われる事も覚悟していたが、彼女
が返したのはただのため息だった。
『……ハァ……』
意外に思ってタカシは静花を見つめる。
「何かあったのか? 元気ないみたいだけど」
すると静花は顔を上げてタカシを睨み付けた。
『いいわね。貰う方はのん気で』
「は?」
一体彼女が何を言っているのか分からずに首を傾げると、彼女は唐突に憤慨して彼を怒
鳴りつけた。
『どうして貴方は、そう鈍感なのよ!! いつもいつも、いつもいつも!!』
502 :
4/8:2014/02/27(木) 10:31:05.18 0
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。心配して声掛けただけなのに、何で怒られなくちゃなら
ないんだよ」
静花の理不尽さには慣れてきたタカシだったが、かといって理由も分からず怒られるの
は勘弁して欲しいと思っていた。特に今のように気遣ってあげようとした時などは。
『普通、分からない? この時期になって女の子が何を悩んでいるかなんて。考えも無く
ポーズだけで心配されても嬉しくも何ともないわ』
「ポーズだけなんて、そんな事は無いって。だからって勝手に俺が委員長の悩みを想像し
て相談に乗るとか出来ないだろ?」
タカシ自身は正論を言ったつもりだったが、その言葉を聞いて静花はまた表情を険しくした。
『違うわよ。私が怒ったのはその後。この時期に貰うだのあげるだのって、そういう言葉
を聞けばパッと答えくらい出ないのかしら? それとも、過去に貰った経験がないからロ
クに意識もしてないとか?』
友人たちに言われるまで自分もすっかり意識の外にあった事は棚に上げて、静花はタカ
シを責める。しかし、それでようやくタカシは納得が行って頷いた。
「ああ。バレンタインデーの事か。もしかして、俺にあげようかどうかで悩んでる……とか?」
もちろん、形式上だけとはいえ付き合っているのだから、タカシだって意識はしていた。
果たして静花が自分にチョコをくれるのかどうか。しかし、それについて彼女がため息を
ついてまで悩むとは想像が出来なかったのだ。おまけに彼の予想はバッサリと切って捨てられた。
『違うわよ、バカ。そんな事でいちいち悩まないわよ』
つっけんどんな彼女の言葉に、タカシはもしかして義理チョコすらも貰えないのかとい
う予感がした。しかしすぐに静花がそれを覆す。
『そんなの、あげるに決まってるでしょ? 一応その……周りに対しては付き合ってるこ
とになってるんだから。あげなかったら友子たちに何言われるか分かったものじゃないわ』「つまりそれは、ポーズとしても必要……ってことか?」
503 :
5/8:2014/02/27(木) 10:32:36.40 O
静花の口ぶりからして、まるで自分は関係ないかのように聞こえて恐る恐るタカシは聞
いた。今度は悪い予感は的中し、静花は当然とばかりに頷く。
『ポーズとしても、じゃなくてポーズとして、よ。そういう理由でもなければ、私が別府
君にチョコを渡す意味が分からないし』
やっぱりな、とタカシは落胆するが、そもそもこんな関係になっていなければチョコを
貰う事すら出来なかっただろうから、今はまだこれで満足するしかないと気持ちを切り替えた。
「でも、だったら何を悩んでいるわけ? くれるっていうか、委員長からすればあげるっ
て事に決めてるなら、悩む必要もないと思うけど」
『分かってないわね。貴方も』
首を傾げるタカシを、静花はピシリと否定する。
『ポーズだからこそ、重要なんじゃないの。これがたかだが副委員長にあげる義理チョコ
程度だったら何も悩みはしないわよ。適当に、前日くらいにお店で安いチョコを見繕って
おしまいだわ』
投げ遣りに話す静花の言葉の内容から、タカシは何が彼女の悩みなのかおおよそ理解出来た。
「あのさ。もしかして、どんなチョコをあげようかって、それで悩んでるわけ? だった
ら別に俺は気にしないけど。委員長から貰えるチョコだったら、どんなチョコだって喜ん
で貰うけど」
少しでも彼女の気が軽くなればと思って言った言葉だったが、タカシの予想とは裏腹に
それは彼女の怒りを更に焚きつけた結果になってしまった。
『バカね。別府君がどんなチョコを欲しがっているかなんて、今はそんなの全く関係ないのよ』
「貰う当事者なのに?」
ついうっかりツッコミを入れると、静花は鬱陶しそうに手で彼を払った。
504 :
6/8:2014/02/27(木) 10:33:47.74 O
『言ったでしょう? ポーズだって。もちろん、私はまだお義理程度でしか付き合う気が
ない事にはなっているけど、それでも彼氏にあげるチョコレートなの。特に友子達は絶対
私がどんなチョコをあげたか聞きだして、ダメ出しをする気満々なのよ。だからあの子達
にバカにされない程度にはちゃんとしたチョコをあげないとダメなわけ。分かる?』
釈然としないながらもタカシは頷いた。
「つまり、クラスの女子に文句言われない程度の本命チョコがどんななのかってことで悩
んでるわけか。どんなチョコをあげれば俺が喜ぶか、じゃなくて」
『どれだけうぬぼれているのよ。別府君は。何で貴方なんかのためにいちいち心を砕かな
くちゃいけないわけ?』
静花の言葉の一つ一つがタカシの胸にザクザクと突き刺さる。しかし正直、こんな事で
心を折っていたら多分この先彼女と付き合い続けて行くことなんて出来ないだろう。心を奮い立たせて、彼は静花に真っ向から向き合った。
「だって、本命チョコってそういうものじゃないのか? 好きな相手がどんなチョコが好
きなのか調べてさ。彼に喜んで貰えるように心を込めて渡すからいいんであって、美味し
いだの高級だの手作りだのって、そういうのは相手があってこそ生きるんじゃないか?」
『だから何で私が別府君に本命チョコを渡さなくちゃならないのよ。口喧しい友子たちの
おせっかいから少しでも逃れる為に付き合ってるフリをしてるだけだって分かってるわよね?』
ムキになって拒否する静花の態度に、タカシは聞こえないようそっとため息をついた。
彼女は頭が良くて普段は思考も論理的なのに、何で自分が絡むとこうも矛盾した事を言う
のだろうかと。しかし彼はすぐに気持ちを切り替える。そもそも下校時に静花とこんな会
話をしながら帰ること自体が、本来なら望むべくもない事なんだと自分に言い聞かせて彼
は辛抱強く真意を説明した。
「だからさ。本命チョコのつもりで選んだチョコでなきゃ、ポーズの意味も無いだろって
言ってんの。別に俺のことが好きでも何でもないにしたって、好きな人にあげるのと同じ
気持ちでチョコをあげないと、また周りからうるさく言われるぜ」
505 :
7/8:2014/02/27(木) 10:34:49.82 O
痛いところを突かれて、静花はグッと言葉に詰まった。確かに、タカシがそれを望んだ
と言えば、最低限チョコに関する難癖だけはつけられなくて済む。しかしそこまで分かっ
ても、静花はどうしても素直に心を開くことが出来なかった。
『……じゃあ、どうすればいいのよ。そこまで偉そうに言うなら、当然私がどうすべきか
分かってるんでしょう? 難癖つけるだけなら誰にでも出来るわ』
しかしタカシは困った顔で首を振っただけだった。
「うーん…… それを俺が言ったら、チョコを要求する事になっちゃうからな。貰う側が
偉そうに言えることじゃないと思うんだけど。他の子にだったら言えるけど、委員長には無理だよ」
『ズルい。そうやって逃げて答えをはぐらかそうとするなんて卑怯者だわ。ここまで来て
突き放すとか、ホント最低』
思いつく限りの言葉で、静花はタカシを罵る。タカシは甘んじて罵声を受けていたが、
彼女の言葉が止むのを待って、最低限今の自分が出来るアドバイスを送る。
「いや。だって、委員長なら分かるはずだけどな。女の子が好きな男にチョコを贈るなら
さ。相手のどんな反応を期待してチョコを贈る? そこから始めていけば、その人に合っ
たチョコがどれか、分かると思うけどな」
『相手の……反応……?』
静花は黙り込むと、タカシの言葉について考える。自分が彼にチョコを贈った時、どん
な反応をされたい? ありがとうって、微笑んで貰う? それは多分、チョコを貰った全
男子が定型的に返す反応だろう。しかしむしろ、タカシこそ彼女が頼んで恋人役になって
貰っているのだ。そんな男子が返す反応なんてそれ以上思い浮かばない。
『……分からないわよ。分かるわけないじゃない。別府君との付き合いなんて、まだ一年
も経ってないのよ。それでどうやって分かるって言うのよ』
持って回った言い回しに、静花は憤慨する。それをタカシは両手で抑えた。
「うーん……普段の委員長なら分かると思うんだけどなあ。あ、いや。俺の気持ちがじゃ
なくて、どうやって分かるかっていう事なんだけど。委員長はいつも、分からない事があっ
たらどうする?」
506 :
8/8:2014/02/27(木) 10:36:02.64 O
またしても問いかけでしか答えてくれないタカシに苛立ちつつも、静花は大人しく考え
た。彼にこれ以上自分が取り乱していると思われるのは我慢がならなかったからだ。
『分からない事があったら…… ネットで調べるか、詳しく知りたかったら図書室とか市の図書館で調べるか、勉強とかなら手っ取り早く先生とかに聞く……とか……?』
彼女の顔に浮かんだ表情を見て、タカシは頷いた。
「でしょ? 分からない事があったら人に聞くよね。この場合、一番手っ取り早く答えを
知りたいと思ったら誰に聞く?」
『……そりゃ、答えを知ってるのは別府君だわ。でも……』
躊躇う様子の静花を見て、内心少し嬉しく思いつつ、タカシは笑顔を見せた。
「別にサプライズとか必要ないじゃん。委員長の場合は友達からあれこれおせっかいを言
われない為にチョコをあげるんだからさ。俺を喜ばせようなんて考える必要ないんだし」
その言葉に、静花は自分の胸がグッと強く押されるような圧迫感を感じた。
『……そうね。その通り……だわ……悔しいけど……今回ばかりは別府君の意見が正しい
わね。常識に囚われすぎていたのは私の方だったわ……』
言葉では納得したものの、静花は心の中では納得出来ないものを感じていた。しかし、
それを考えてはいけないと彼女はその思いをしまい込む。そもそも、全部言い出したのは
自分なのだからと。
『それじゃあ聞くけど。別府君は彼女からバレンタインチョコを貰えるとしたら、どんな
のが一番嬉しいの?』
「そりゃ、やっぱり手作りが一番嬉しいよな」
即答され、彼女はつい驚いて息を呑んで一歩下がった。
507 :
1/2:2014/02/27(木) 20:34:58.60 0
そんなことよりちょっと俺の話聞いてくれよ
日中腕まくりするようなうっすら曇り空、俺はツンデレとドライブに行ったの
というのも俺車に興味津々でさ
頑張って金貯めて車買ったったからツンデレをドライブデートに誘うの
そんでさ、いつもならツンデレおしゃべりなのに今回一言も喋らなくてさ
俺何か悪いことしたかなってビクビクしながら運転してたんだけど
遂に心折れてラジオのスイッチ入れたの
それからもツンデレ機嫌悪いままで長い時間が流れてさ
ふと音楽番組で好きな歌紹介された時、当たり前に歌っちゃったんだけどね
そういや隣にツンデレいるじゃん、って慌てて横見たら彼女もこっち見ててさ
ドエスツンデレ、続けてどうぞ、みたいに手振るし、恥ずかしくなってツンデレの顔見れなかったね
したらツンデレ弱味握ったから、もっと歌って、とか、カラオケ行きたい、とか俺をいじめてさ
それからというもの、普段はずっと喋ってるくせに車に乗った途端ピタッと口閉じやがって
やけくそでツンデレの好きな歌聞いてバラード歌ったりしてるの、って話
508 :
2/2:2014/02/27(木) 20:36:51.87 0
そんなことよりちょっと私の話聞いてほしいんだけど
日中腕まくりするようなうっすら曇り空、私はアイツとドライブに行ったの
というのもアイツは車とかバイク好きでさ
たまにね、隣に乗せてもらったりするのね
そんでね、いつもなら私くっちゃべってんだけど、今回肘つきながら窓の外見てる訳
実は、沈黙に耐えられる男女は相性いい、って小耳に挟んだから実験してたの
すればアイツ重い空気に折れてラジオかけてさ
なかなか思い通りにはいかないわよねってそのまま窓見てたんだけどね
音楽番組で洋楽が流れた時にアイツ好きなのか口ずさみだしてさ
歌い終わった後、俺の歌どう?って感じで勢いよく振り向いてきてさ
上手だったよ、って手振っておいたら自分から感想求めといて顔真っ赤にして運転に戻んの
それからはいっぱいアイツの歌声聞けて、ちょい音痴で素敵な歌が聞ける私は特別な存在なのだと思いました
今では私はお母さん、子供に聞かせるのはもちろんパパのお歌
なぜなら私達の子供もまた特別な存在だからです、って話
ヴェルタースw
友ちゃん大好きいいいい
・猫好きな山田が猫好きの女の子と猫の話題で意気投合してるのを見た友ちゃん
・面白くない友ちゃん
・山田の家で編集してたら突然猫耳を付けだした友ちゃん
・『ね、猫友ちゃんよ。にゃ、にゃぁ…』と言って顔真っ赤にしながらポーズを取る友ちゃん
・『か、かなみに着けさせる前のただの実験なんだから、他意は無いから!!』と顔を益々真っ赤にしながらまくし立てる友ちゃん
・『えと…に、似合う…かな…?』と顔をリンゴみたいに赤くしながら小声で聞いてくる友ちゃん
・
・朝チュン
513 :
1/6:2014/02/28(金) 22:53:44.55 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ〜その2
『えっ……? て……手作り?』
タカシはコクリと頷く。
「そりゃそうだろ。やっぱり好きな人から手作りのチョコを貰えるのは、男子一生の夢だ
と思うよ」
『何で、そう思うのよ』
まだ胸がドキドキしているのを感じつつ、静花は冷静さを取り戻して聞く。同時に、一
瞬自分に対して手作りのチョコを要求されたのかと錯覚して驚いた自分を恥じた。結果と
しては一緒だけど、あくまでタカシは自分なりに好きな子から貰えるチョコは何が嬉しい
のかを答えただけで、自分に要求しているわけじゃないんだと。
「そりゃ、だってさ。そこに掛けた時間の分だけ思いがこもってるんだぜ。しかも作りな
がら、相手の男がどんな反応するかって想像してワクワクしてくれたりしてれば、もう最高だろ」
しゃべりながら、タカシはつい自分の頬がニヤつくのを感じてしまった。内心、静花が
本当に自分の為だけにチョコを作ってくれればどんなにいいだろうと願ってしまう。だが、
それは儚い願望に過ぎない事は、彼自身もよく知っていた。
『……一応言っとくけど。私、お菓子作りは下手よ』
タカシの言い分に納得しつつ、同時にいざという時に幻滅されないよう、静花は最初に
断りを入れた。それにタカシは驚いた顔をする。
「へ……? 委員長、お菓子作り苦手なの? だって一人暮らしだし、料理とかもするじゃん」
『性格的にせっかちなのよ。だから、自分の感覚でかき混ぜて十分泡立ってないのに止め
ちゃったり、オーブンが十分余熱されてないのに焼き出して生焼けになったり。それに、
一人暮らしだと作りすぎて余るし。正直、美味しければともかく、微妙な出来のお菓子を
一人で食べても空しいしね』
514 :
2/6:2014/02/28(金) 22:54:53.02 0
「だったらクラスの女子と集まった時とか出せばいいじゃん。みんな喜んでネタにすると思うよ」
咄嗟の思いつきで口にして、タカシはすぐさまそれが失言である事に気付いた。しかし
フォローの間もなく、静花の怒りが炸裂する。
『ネタってどういう事よ!! 別府君も所詮、私の作る菓子なんて笑い話でしかないと思っ
てるのね。いいわ。よく分かったわよ』
「違う違う違う。あいつら、委員長が生真面目なのが面白いのか、ちょっとしたことでネ
タにして盛り上がるじゃん。それをつい思い浮かべただけで、俺はもし委員長が俺に手作
りの菓子を作ってくれたら喜んで食べるよ。絶対に」
既に機は失ったかに見えたが、それでもタカシは懸命に弁解しつつフォローを入れた。
しかし、それで静花の疑いのまなざしが消えることはなかった。
『嘘よ。別府君もうちの父と同じだわ。最初は喜んだ顔をするんだけど、一口食べたら微
妙な顔つきになるのよ。で、どう?って聞くと笑顔で美味しいよって答えてくれるんだけ
ど、すぐまた微妙な顔に戻るのよ。きっとそうだわ』
憮然とした顔つきの静花を前に、タカシは返す言葉もなかった。過去一度も彼女の手作
り菓子を見たことすらないタカシが、いくらそんな事はないと主張してもそんなのただの
空論に過ぎなくなってしまう。
「ま、まあ…… バレンタインのチョコなんて気持ちだからさ。何も手作りにこだわる必
要なんて全然ないわけで、今のはあくまで俺が一番嬉しいのを答えたってだけだからさ。
正直委員長から貰えるなら、市販品のチョコでも嬉しいし」
『じゃあ、チロルチョコでも嬉しいわけ? ビックリマンチョコやきのこの山でも?』
厳しい顔つきでそう問い返されると、タカシはさすがに言葉に詰まる。それを見て、静
花はやや大げさとも取れるため息をついた。
『所詮、別府君の言う事なんて口だけなのよね。そういう大言壮語は私、嫌いなのよ』
静花の考えからすれば、何でもいいなんてのはただの思考停止である。相手に期待する
からこそ、あれこれ欲しい物が出て来るので、安いチョコでも構わないといわれると、自
分まで彼にそう思われているのじゃないかと錯覚してしまいそうになる。
515 :
3/6:2014/02/28(金) 22:55:53.14 0
「い、いや。嬉しい事は嬉しいよ。ただ、正直に言えば微妙な気分にもなるけどね」
『ほら。やっぱりそうじゃない。私から貰えれば何でも嬉しいとか、嘘ばかりだわ。カッ
コ付けてるのか気を遣ってるのか知らないけど、底の浅い嘘を吐くのは止めて欲しいわ』
「ゴメン」
降参して素直に頭を下げるタカシを、静花は複雑な気分で見つめた。嘘であって少しホッ
としたのと同時に、こんな事で問い詰めて頭を下げさせた事に申し訳ない気持ちもある。
『まあ、どっちにしてもそんな安い市販品ので済ませたら、友子達に何言われるか分から
ないもの。それ相応のものはあげるつもりだけど……まあ、期待しないでくれた方がこっ
ちとしては気が楽だわ』
肩をすくめる静花を、タカシがいささか心配そうな顔で見つめた。それに気付き、静花
は訝しげに彼を見る。
『何? どうかしたの?』
「委員長さ。いくらみんなからバカにされない為っていっても、あんまり無理するなよ?」
『何よ、それ? どういう意味なの?』
不思議そうな顔の彼女に、タカシはふと思いついた懸念を口にする。
「いやその…… 委員長ってさ。結構すぐにムキになっちゃう性格だから、自分ではその
気もないのに、人に言われると出来ないのが悔しくて出来るまで頑張っちゃったりするじゃ
ん。だから、その……本当に、俺なんかの為に苦労しなくていいからって……」
『当たり前でしょ? 誰が別府君なんかの為に苦労するっていうのよ。変な気を遣わない
でくれる? バカバカしい』
不機嫌そうに鼻を鳴らす静花の横顔を見つつ、やはりタカシは気になって仕方がないのだった。
516 :
4/6:2014/02/28(金) 22:57:25.46 0
『なんて言っちゃったけど…… 結局、乗せられちゃうのよね』
スーパーの袋をキッチンの上にドサリと置くと、静花は中から買ってきたものを取り出
した。素材用のチョコレート。各種パウダーにトッピング用の飾りつけ。さらに、棚から
小麦粉や砂糖を出し、冷蔵庫から卵を取り出す。
『これで準備完了のはずよね。あとは私の腕だけか。別府君は無理するなって言うけど、
あれ絶対フリよ。あそこまで言われて手作り渡さない訳にいかないじゃない。見てなさい
よ。絶対美味しいって言わせてあげるんだから』
お菓子作りのレシピ本を片手に、静花は気合を入れて望んだのだった。
が、その三時間後。
『……無理だわ。やっぱり……』
静花はレシピ本を苛立たしげにベッドの上に放り投げる。そのまま力なく自分の体をカー
ペットの上に投げ出した。傍にあるクッションに握り拳で裏拳を叩きつける。
『大体何でお菓子作りってこんないちいち細かいのよ。泡立てかたが足りないとか、分量
キッチリやらないとダメとか、ちょっと目を離すと焦がしたり固まったり…… 型に流し
入れるとかウザッたいし。みんなが思ってるほど私は几帳面じゃないってのに……』
もうこんな苦労は止めて市販で売ってる本命チョコを物色しようかと考える。それでも
多分、周りからはそんなに言われはしないだろう。クラスの友人達も、静花がお菓子作り
は苦手という事は家庭科の授業で知っているはずである。しかしすぐに負けず嫌いな性格
が頭をもたげる。
『冗談じゃないわ。こんな事でめげてたまるものですか』
市販のチョコをあげた時と、手作りのチョコをあげた時のタカシの反応を考える。もう
チョコをあげると宣言してる以上、サプライズ的な驚きは絶対に後者だ。下手でも頑張っ
て作った方が、絶対に喜ばれると彼女は確信を持って頷く。
『……本当は、どうだっていいのよ……みんなにどう言われるか、なんて……』
しかし、普段の料理でも味付けは目分量。煮込み時間もレシピ通りにやった事はなく、
自分の感覚で判断している彼女に、お菓子作りのハードルはかなり高い。それを自覚して、静花はため息をつく。
517 :
5/6:2014/02/28(金) 22:58:52.73 0
『どうすれば……上手く出来るようになるんだろう? しかも、バレンタインデーまでの、
あと数日で……』
悩みつつ、静花はタカシの言葉を思い浮かべる。無理をするなという彼の言葉を。頑張っ
た感は出したくない。だけどその為にはそれ相応の技術が必要だし、それを自分が一人で
短期間で会得するのは無理だと、この三時間で彼女は悟っていた。
『私一人じゃ無理…… ならどうすれば……』
その時唐突に、静花の心に一人の友人の顔が思い浮かぶ。困ったらいつでも頼れと言っ
ていた、クラスメートの顔を。
『……ダメよ。友子なんかに頼んだら、どれだけからかわれるか……』
しかし、次から次へとタカシとの会話が思い出されてくる。
――分からない事があったら、人に聞くよね?
――常識に囚われていたのは私の方だったわ……
考えれば考えるほど、友人に聞かないことが愚かしく思えて来る。
『……私はいつもそうだわ。プライドに縛られたり常識に縛り付けられすぎていて、本質
を見失うのよ。今、一番大切なことは、別府君が一番喜ぶチョコを渡す事なのに……』
体を起こすと、静花は携帯を手に取り、電話帳を開くのだった。
『委員長。お邪魔しまーす』
『お邪魔しまーす』
『しまーす』
『ちょ、ちょっと待ってよ。何で英子とちーちゃんまでいるのよ?』
友人の友子に連絡を取ったら、彼女は二つ返事で快諾してくれた。しかもわざわざ材料
も持って自分の家に来てくれるという。静花はさすがに悪いと思ったが、委員長は一人暮
らしだから気兼ねなく出来るし、という友子の声に押し切られてしまった。しかし、他の
友人も来るという話は聞いていなかったので静花は驚いた。
518 :
6/6:2014/02/28(金) 23:00:26.31 O
『いやー。LINEで報告したらさ。二人とも来るって言うから。英子は部活の男子にチョコ
チップクッキー作るって言うし。ちーちゃんは友チョコだって』
『うちの部活、あたしが唯一の女子マネだからさ。手作りで持って行ったらみんなに惚れ
られるかなーって。未だにマスコット扱いだし』
『いつも中学の時の友達とチョコ交換会やるんだけどさ。去年、私だけだったんだよね。
市販チョコ。今年は高校生になったからさ。がんばろって思って』
様々な理由を付けているが、静花には何となく理由が分かった。私が別府君の為にチョ
コを作る奮闘っぷりをみんなして眺めたいのだろう。ちなみに静花はいわゆるソーシャル
ネット系は一切手を出していないので、この流れは分からなかったのだ。
『……とにかく上がって。言っとくけど、キッチンは狭いしオーブンも小さいから、いっ
ぺんに出来ないわよ』
『大丈夫だって。出来たらさ。みんなでお茶しながら品評会しようよ。あ、委員長は大船
に乗った気でいて。この友ちゃんに任せれば、お菓子作りなんて二時間でマスター出来るから』
胸を張ってドン、と拳で叩く友子の後ろから、智里がニヤニヤしつつ付け足した。
『何といっても、甘い物好きな山田の為に、日夜新しいお菓子作りに励んでるからね』
『ちがーうーっ!! あたしはあくまで部活での休憩タイムの為に作ってるだけなんだか
らで、アイツの為なんかじゃなくってー!!』
『騒がないでよ。隣近所に怒られちゃうから』
渋い顔でたしなめつつも静花は、今ほど友達という存在がありがたいと思ったことはないな、と心の底から自覚したのだった。
続きます
続き楽しみ
ぶかぶか可愛いwww
>>518の続き行きます
今回はやや軽めに4レスで
523 :
1/4:2014/03/02(日) 21:20:25.78 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ〜その3〜
『別府君。それじゃあ、放課後にね』
「あ、うん。楽しみにしてるよ」
バレンタインデー当日の朝。タカシの席を通り過ぎた時にさりげなく静花は渡す時間を
確認する。タカシが頷き返事をするのを確認して、彼女は自分の席に向かう。すると待ち
構えていたかのようにタカシの周りに他の男子が集まって来た。
「いーよなあ。別府は。委員長からチョコ貰えてさ」
「マジ、リア充爆発しろよ」
「俺なんて家族からだけだぜ。一度でいいから女子からチョコ貰いてーよ」
「お前、家族ったって妹からじゃん。俺なんてかーちゃんだぜ。しかも親父の為に焼いた
ケーキの余りとかそんなんばっかでさ」
「イテッ。ちょ、お前ら止めろって」
ここぞとばかりに口ばかりでなくてはたいたり小突いたりするクラスメートから必死で
身を守りつつ、タカシは言い訳する。
「違うってば。どうせそんな甘いもんじゃねーから。委員長はホント、試しで付き合って
くれてるようなもんだし、多分義理チョコとそう大して変わんねーって」
「それでもチョコはチョコだろーが。収穫ゼロ確定の俺に謝れ」
「そうだそうだ。本命チョコ貰えるなんてそれだけでも光栄だろが」
フルボッコにされつつ、タカシは果たして静花がどんなチョコを持って来てくれたのか、
その後姿を見つつさすがに期待せずにはおれない自分を感じるのだった。
そして放課後。背後からはやし立てられつつタカシが教室から出ると、静花は廊下の窓
を背に待っていてくれていた。
「委員長。お待たせ」
軽く手を上げて挨拶すると、彼女はつまらなさそうにフン、と鼻を鳴らした。
524 :
2/4:2014/03/02(日) 21:20:57.51 0
『とりあえず行きましょう。ここじゃ人が多過ぎるから』
タカシの返事も待たず、静花は早足で歩き出す。
「わ、分かった」
頷きながらタカシも慌てて彼女の後を追ったのだった。
そのまま校門まで無言で二人は歩く。そして校門を出てからようやく静花は歩調を緩め、
タカシはその横に並んだ。
「委員長。どこまで行くつもり?」
てっきり学校内の人目につかないところとかで渡されると思っていたタカシは、どんど
ん学校から離れていく静花に疑問を持って聞いた。すると彼女は振り向きもせずに答える。
『どこか静かな所よ』
「静かな所って?」
果たして静花は、行くべきところが分かっているのだろうか? そう不思議に思いつつ
さらに聞くと静花は足を止めてタカシの方を向いた。
『……別府君は、どこがいいと思う?』
「へ……?」
つい、変な声を出してからタカシはまさかと思いつつ静花に確認する。
「どこがいいって…… 委員長、もしかして行き先決めずに歩いてたのか?」
何をするにしても計画的で無駄の無い彼女にしては珍しいとタカシは意外に思わざるを
得なかった。単にクラスの喧騒から逃げたかっただけなのだろうかとも思う。しかし、静
花はその問いに対して不愉快そうな顔で言い返してきた。
『バカね。私は一応、考えくらいあるわよ。ただ、その前にどこかチョコを渡せるのに適
当な場所があるのかどうか、別府君の考えを聞いておきたかっただけよ』
「ああ。いや。俺は別に考えてなかった――ていうか、てっきり学校で渡されると思って
たから」
タカシの返事に、静花は露骨に呆れた顔をした。
525 :
3/4:2014/03/02(日) 21:22:13.75 0
『何言ってるの。校内の静かな場所なんて、今日はどこに行っても人がいるわよ。バレンタイン
デーなんだもの。校舎裏も中庭も、どこもかしこもカップルだらけだわ』
「うーん…… まあ、確かに……」
校内で人目を忍んで渡すカップルが果たしてどれだけいるのかタカシは知らなかったが、
普段よりは多いのは間違いない。
「じゃあさ。委員長はどこで渡そうと思ってたわけ? さっき、考えがあるって言ってた
よね?」
彼女の考えを聞こうと問い質すタカシに、静花はためらいもなく頷く。
『ええ。あるわ』
「じゃあ、それって何処?」
一瞬だけ、静花はタカシの顔をジッと見つめた。一呼吸分だけ間を置いてから、ハッキ
リとした声で彼女は答える。
『私の家よ』
「えっ!?」
意外な答えに、さすがにタカシは驚きの声を上げない訳には行かなかった。その反応に、
静花は不機嫌そうな顔をして、同時に僅かに顔を赤らめつつ視線を外す。
『何よ。何か文句でもあるの?』
「いや、その…… いいの?」
ためらうタカシに、憮然とした声で静花は彼を詰る。
『バカな質問しないでよ。貴方が嫌だって言うのは話が分かるけど、私が決めたことにな
んで私がダメだって思うわけ?』
「いやまあ…… そりゃそうだけどさ……」
煮え切らないタカシを前に、静花はハァ、とため息をついた。それから彼を置いて再び
歩き出す。タカシも慌てて後を追った。それを確認してから静花はそう決めた理由を説明する。
526 :
4/4:2014/03/02(日) 21:28:29.15 0
『いい? 静かで人目につかない場所で、私の家ほど相応しい場所って他にないでしょ?
一人暮らししてるんだから。外と違って寒くもないし、暖かい飲み物だって飲めるのよ。
理想的じゃない』
「いや。まあ、そうだけどさ……」
まだ煮え切らないタカシに、静花はさらに苛立ちを高めた。
『何を気にしているのよ? 一人暮らしの女の子の部屋に男子が上がっていいのかって?
貴方、前に私の部屋に上がったじゃない。しかもパジャマ姿の女の子がいる部屋に。キッ
チンも使ってご飯も作って、おまけに私のむき出しの背中を視姦して、挙句にタオル越し
とはいえ、触っているのよ? これ以上何を遠慮する必要があるっていうの?』
まるで自分が悪いかのように言われた気分がして、さすがにタカシは抗議する。
「あれは委員長がそうしろって言ったんじゃん。残れって言ったのも、カレー作ったのも、
体拭いたのもさ。別に俺のせいじゃないし」
『そうよ。私が頼んだの。で、今も私から家で渡すって言ってるのに何の問題があるって
いうのよ? 言っとくけど私は怒ってる訳じゃないわ。貴方の無意味な遠慮にイライラして
るだけよ』
一気にまくしたてられてタカシは返答に窮した。理屈を押し並べ立てられて静花に勝てる
とは思えなかった。背中を視姦していると言われた事に納得してはいなかったが。もちろん
自分に、邪まな気持ちがあった事は否定出来ないとはいえ。しかし反論しても押し切られる
だけだろう。
『で、どうなの? 今更遠慮なんて無意味だってこれほど言ってるのに、まだためらうの?』
静花に問い詰められて、タカシは慌てて首を振った。
「ああ、いや。委員長さえ何の問題もないんだったら、是非お邪魔させてもらうよ。うん」
これ以上ためらうと、下手をすればこの場でチョコだけ押し付けられてお別れになりか
ねない。フラグをへし折らないためにもタカシは急いで了承した。
『最初からそう言えば、いちいち面倒な説明しなくて済んだのに。ホント、別府君ってお
かしな所で気を回すんだから。止めてよね。そういうの』
ため息混じりに注意され、タカシは素直に頭を下げるしかないのだった。
続く
バレンタインに彼女の家か
男子の夢だなぁ
お題
つ・将来が不安なツンデレ
530 :
ほんわか名無しさん:2014/03/04(火) 02:01:48.12 0
VIPが転載禁止になったけど、代わりに過去ログがだれでも見られるようになってるな
533 :
ほんわか名無しさん:2014/03/06(木) 04:07:53.54 0
ついつでも会えるようになったツンデレと男
つもう七夕まで待たなくてもよいそうです
つそれでもツンツンしちゃうツンデレさん
それじゃ過去ログ置き場はもうお役御免かな?
最近VIPにスレが立ってたことに気付くの遅れることが多かったしちょうどいいか。
いや、さすがに昔過ぎるのは見られないっぽいから、無くなったら困ります!
>>535 あ、閉鎖するわけではないので大丈夫です、
「転載禁止」になってからの分を収集しないというだけですので!
>>537 いつも乙でした。
過去ログがいつでも見れて便利になったけど、保管庫からDLして読んでたこれまでを思い出すと寂しい気分もするという
転載禁止は全面となると、パートスレには厳しい環境になるなあ
スレ住人が内輪で見る程度の転載は大目に見てほしい気分だが、最近あまりVIPにも顔出してないので議論に参加する気分になれない
とりあえず、
>>526の続き行きます
539 :
1/6:2014/03/07(金) 02:24:22.01 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ〜その4〜
『さ、入って』
玄関のドアを開け、静花はタカシを招き入れる。
「それじゃあ、お邪魔します……」
タカシが軽く頭を下げる。それを確認してまずは彼女から先に入った。靴を脱ぎ、廊下
を歩きながら静花は自分の心が浮ついているのを感じる。思い起こせば、前に彼を招いた
時は具合が悪くて大変だった。単純にドキドキしているというのは今回が初めてである。
『適当に座って。私、ちょっと着替えて来るから』
クッションを指して、彼女はクローゼットを開ける。タカシは落ち着かない気分で荷物
を置くと、クッションの上に座った。以前来た時とほとんど変わっていない。あれからも
う半年以上も経つのが嘘のように思えた。
『手持ち無沙汰なら、テレビとかつけてていいから。気楽にしててね』
着替えを片手に持ち、首だけを彼の方に向けて静花は努めて冷静に声を掛ける。
「ああ、分かった。ありがとう」
タカシが頷くのを確認して、静花は洗面所へと向かったのだった。
「ふう……」
静花が出て行くと、タカシはため息をついて天井を仰いだ。正直、予想外の展開にまだ
心が落ち着かないでいる。むしろ彼女の部屋に入ったことで却って動揺が増している気もする。
――委員長ってさ。奥手なんだか、大胆なんだか、時々分からなくなるんだよな……
普段の様子を見ていると、真面目で気難しい固いイメージの女子にしか見えない。しか
し、風邪を引いていた時といい、今日といい、時々そのイメージを覆すような行動を取る
ことが、彼を戸惑わせていた。
540 :
2/6:2014/03/07(金) 02:24:53.73 0
「静か過ぎるのもなんだし、テレビでも点けるか」
小さく一人ごちて、彼はリモコンのスイッチに手を伸ばした。すると画面に、妙齢の男
女が家の中で諍いを起こしているようなシーンが映る。どうやらドラマがやっているらしい。
〔私、帰ります!!〕
〔待ちなさい〕
〔いや!! 何するの、離して!!〕
〔大人しく帰れると思っているのか。この家に来た以上、分かっているんだろうな〕
〔そ、そんな。私そんなつもりじゃ――止めて下さい。やめ――〕
濡れ場になりそうなシーンに、タカシは慌ててテレビを消した。
「何で、こんな時にこんなもんがやってんだよ。タイミングわりーな……」
ぶつくさ言いつつ、タカシは消えたテレビを見つめる。よく考えれば他のチャンネルに
変えれば良かっただけだが、何となくもう点ける気がしなかった。手持ち無沙汰にスマー
トフォンをいじっていると、着替え終わった静花が部屋に戻って来た。
『お待たせ。今、お茶淹れるわ』
「あ、ああ。ありがと」
静花はニットのセーターにデニムのショートパンツといった姿になっていた。もっとも
セーターの丈が長くてショートパンツはほとんど隠れて見えず、一見すると何も履いてい
ないようにも見えてしまい、そんな錯覚がタカシをドキドキさせてしまう。これでもしレ
ギンスではなく素足だったりしたら、逆に直視できないだろうと思ってしまう。
『何? あんまりジーッと見られるの、嫌なんだけど』
「あ、ご、ゴメン。委員長の私服姿ってさ。やっぱりこう……いいなって思って」
顔を逸らし、照れたように頭に手をやるタカシを、静花は睨み付けた。
『だからそういうの、止めてよね。お世辞だったらいらないし、本気で褒められたとして
も嬉しくないから』
タカシに見つめられたり褒められたりするのは酷くくすぐったく感じて、静花は身をよ
じりたい感覚に襲われた。恐らく男の人に慣れていないからこういう感覚を変に思うのだ
ろうということは、彼女自身認めざるを得ない事だと思っていた。
541 :
3/6:2014/03/07(金) 02:25:24.29 0
「ゴメン。でもまあ……ウソ言ってもしょうがないし。これからはなるべく見ないようにするし」
やや気落ちしたタカシの声に、静花は半ば申し訳なく、半ば残念な気持ちに駆られた。
気持ちの上では褒められて嬉しいはずなのに、変な感覚がそれを邪魔してしまう。あまり
みっともないところは見られたくないだけに、タカシにはもう少し我慢して貰うしかなかった。
『まあいいわ。それよりお茶、何がいい? コーヒーかティーパックの紅茶か緑茶。あと
はスティックの抹茶ラテとかあるけど』
それはこの間、みんながチョコ作りに来た時に差し入れで貰ったものだ。
「んーと。まあコーヒーを。ミルクだけで」
こういうところで優柔不断さをみせてはいけないと、タカシはパッと頭に浮かんだもの
を口に出す。すると静花がちょっと眉をひそめた。
『砂糖、入れないの? もしかしてちょっと大人ぶってるとかじゃないでしょうね?』
カッコ付けで選んだのかと疑う静花に、タカシは慌てて首を振った。
「いやいや。これから甘い物食べるからさ。コーヒーは多少苦めの方がいいかなって。そ
もそもカッコ付けならブラックにするし」
『確かに。ミルク入れると格好はつかないかも。その中途半端なところがいかにも別府君
らしいわ』
「それって、半端なのか? ちょっと良くわかんないけど」
どこかに自分への非難を入れるのが、もう口癖になっているのだろうかとタカシは少し
疑問に思う。しかし、何を言われても今はこれから彼女からバレンタインのチョコを貰え
るのだと思えば腹も立たなかった。
『別に。甘くもなくて苦味も薄いからちょっとそう思っただけよ。今準備するわ』
静花は床に置きっぱなしの電気ケトルを持って廊下に消えた。しかし今度は水音が少し
したと思ったら、すぐに戻ってきて台に乗せスイッチを入れる。それから食器棚からマグ
カップを二つ取り出した。
542 :
4/6:2014/03/07(金) 02:25:54.73 0
『はい。こっちが別府君のね』
差し出したマグカップはやや大きめで、ちょっと変わった植物の意匠があしらってある。
『コーヒー。インスタントしかないからこれで。私は普段、カフェオレでしか飲まないから』
インスタントコーヒーのフタを開け、スプーンで2杯ほどすくってマグカップに入れる。
それから立ち上がった静花は、廊下のドアを開け、冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。
『ミルクはこれで入れて。量はお好みでどうぞ』
「何かちょっと豪快だな」
ドン、とばかりに置かれた牛乳パックがちょっと静花の雰囲気と不釣合いで、ついつい
タカシは笑ってしまった。それが不愉快で静花は彼を睨み付ける。
『言ったでしょ? 私は普段、コーヒーは飲まないんだって。だからシュガーはあっても
ポーションミルクは置いてないの。文句あるなら入れなければいいじゃない』
「いやいや。別に文句があるわけじゃないよ。ただ、ちょっとおかしくってさ。ゴメン」
思い返せば思い返すほど、タカシの心の中でおかしみが増してしまう。清楚で真面目な
静花のイメージとミルク代わりに牛乳パックを置く現実の彼女とのギャップに、さらに拗
ねた態度を取ったことが拍車を駆け、彼は必死で顔にニヤつきが出ないよう抑えた。
『だから何がそんなにおかしいのよっ!! 気持ち悪い笑いして。最低だわ。もう!!』
むくれた顔で静花は可愛らしい動物のイラストが描かれた自分のマグカップに、抹茶ラ
テの粉末を入れる。すると、ようやく笑いが収まったタカシが静花の方に向き直ると、生
真面目に頭を下げて来た。
「本当にゴメン。委員長。気を悪くさせて申し訳なかった」
『知らないわよ、もう。別府君って本当に失礼なんだから』
フン、と顔を背ける彼女がとても可愛らしくてまたニヤつきそうになるのをタカシは必
死で堪えた。代わりに、彼女の機嫌を直すようにと頭を回転させて褒め言葉を探す。
543 :
5/6:2014/03/07(金) 02:27:02.72 0
「でも、委員長は面白くなかったかもしれないけど、俺としてはいいなって思ったから笑っ
ちゃったんだって。何か、普段学校で見れない委員長の一面が見れて、得したような気分だし」
『私は損したような気分よ。貴方にそんな事言われると、見せる必要の無い面を曝け出し
たみたいで』
どうやら自分が何を言っても静花は機嫌を直す気がないようだとタカシは察した。何と
なく居心地悪い雰囲気になってしまいどうしようかと思ったちょうどその時に電気ケトル
がパコッと音を立ててお湯が沸いたことを知らせる。
「ああ、委員長。お湯、沸いたみたいだし入れようか?」
腰を浮かしかけたところで、静花の鋭い静止の声が掛かる。
『待ちなさいよ別府君』
「へ……?」
固まったタカシに、静花は呆れたようにフン、と鼻息をついた。
『何で貴方がお湯を注ごうとするの? お客様なんだから大人しく座ってなさいよ。私が
やるから』
「あ、ああ…… ゴメン」
タカシが大人しく座り直すのを見てから、静花は電気ケトルを持ち上げた。そのままま
ず、タカシ用のマグカップにお湯を注ぐ。
『はい、別府君』
「ああ。ありがとう」
タカシは牛乳パックを持ち上げ、勢いよく出ないようにそっと傾けて注ぐ。自分のマグ
カップにお湯を注ぎながらチラリとその様子を見て、静花がボソッと口にした。
『……やっぱり、様にならなかったかしら……』
「え? ああ。これ?」
タカシが牛乳パックを指差すと、静花はコクリと頷いた。
544 :
6/6:2014/03/07(金) 02:27:42.76 0
『これだったら、キッチンでお湯を沸かして全部私が準備した方が良かったわ。ヤカンが
無いわけじゃないのに』
「大丈夫だよ。好みの量だけ牛乳を入れられるっていうメリットもあるしさ。まあ見映え
の問題はあるかもしれないけど、誰が見てるって訳でも無いんだし」
珍しく反省する静花を前に、タカシは気にしないようフォローを入れる。しかし彼女は
それに首を振った。
『ううん。今日は別府君はお客様なんだもの。やっぱりその……』
そこで彼女が言葉を区切った。どうしたのかとタカシが疑問に思うも、口を挟むより前
に静花は首を振った。
『ごめんなさい。何でもないわ。どうもちょっと、テンションがおかしいみたい』
静花は立ち上がって、廊下へのドアを開ける。すぐ脇にある冷蔵庫を開き、リボンを結
んだ箱を取り出すと、すぐに閉めて部屋に戻る。
『お待たせ。えっと、その……これがその……別府君へのバレンタインチョコだから……
食べてくれる?』
続きます。
545 :
ほんわか名無しさん:2014/03/07(金) 23:52:24.84 I
静花が一番好きかな
546 :
ほんわか名無しさん:2014/03/08(土) 04:37:04.51 0
なんかatwikiが不正アクセスでめんどくさいことになってるらしく、ほとぼりが冷めるまで念のため閲覧しないほうがいいかも
まあ最近放置してて閲覧者もいないのかもしれないけど
549 :
1/5:2014/03/10(月) 05:29:56.16 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ〜その5〜
静花が立ったまま差し出したので、タカシも慌てて立ち上がる。
「も、もちろん!! ありがたく、その……頂くよ」
ついうやうやしくチョコを押し頂いてしまうタカシに、静花は変なくすぐったさを覚えてしまう。
『止めてよね。変にありがたがって貰っても、中身は期待外れなんて事もありえるんだから』
「大丈夫だって。委員長のチョコなら……っと。ちゃんと選んでくれたチョコなら、多少
好みに合わなくても、嬉しさは変わらないから」
この間の言い争いを思い出して、タカシは慎重に言葉を選んだ。静花もそれを感じ取り、
小さくため息をつく。
『その点だけは安心して。今回は事前に友子や英子たちのお墨付きは貰えたから』
静花が断わりを入れるのを、タカシは意外に思った。後からとやかく言われるのを嫌っ
て、事前に相談したのだろうかと。もしからかわれるのを承知でそうしたのだとしたら、
静花にしては進歩だなとそう思いつつ箱を開けようとして、タカシは違和感に気付いた。
「あれ……? この箱……ラッピングしてないな」
箱にはオシャレな印刷がされているしリボンもかけられてはいるが、通常お店で買った
のなら、包装紙で包まれているはずである。
『そうよ。それがどうかしたの?』
タカシは顔を上げて、取り澄ましたような態度を取る静花を見つつ、思いついた事を口に出した。
「あの……もしかしてさ。この中身って……手作りチョコだったり、する?」
タカシの問いに、静花は急に恥ずかしくなってしまった。冷静に返事しようと思ったの
に言葉が出ず、ただコクリとだけ頷く。
「マジで? だって、お菓子作りは苦手だって……」
驚くタカシに、静花は恥ずかしさが堪えきれなくなってつい大声を出してしまった。
550 :
2/5:2014/03/10(月) 05:30:35.54 0
『いいでしょ、別に!! 文句ないって言ったじゃない。それより立ってたら落ち着かな
いわ。開けるなら座ってから開けてよ!!』
そのまま静花はつかつかと三歩ほど歩いて回り込むと、自分のマグカップの前で座り、
カチャカチャとスプーンでかき回した。それを見てタカシもその場に座る。そのまま箱を
開けようかと思ったが、やはりその前に聞きたいことは聞いておきたくてタカシは手を止めた。
「あのさ。何で……そこまでしてくれたの? 別に、形にこだわるだけだったら市販品の
美味しくてちょっとオシャレなチョコで十分様になったと思うんだけど」
静花は押し黙ってうつむきつつ、上目遣いにタカシを見ていた。やがてその視線を逸ら
すと、答えをはぐらかすように少しズレた事を口にした。
『……そういう事聞くのとか……中を見てからの方がいいわ。開けてがっかりすることも
あるかも知れないんだし』
しかしタカシは、珍しくキッパリと拒絶した。
「いや。中を見る前に聞いておこうと思って」
驚いたように静花が顔を上げる。視線が合うと、タカシは場の空気を多少なりとも緩く
しようと笑顔を作った。
「大丈夫。委員長が俺にくれるって事は、少なくともちゃんとバレンタインチョコとして
は形になるものが出来たって思ってるから。だから先に委員長の気持ちを聞いてから中が
見たいなって思ってさ」
それを聞き、静花はまたうつむいてしまう。何とか答えを遅らせる事は出来ないかと考
えを巡らせたが、出た結論は自分にはもう逃げ道が無いと気付いただけだった。諦めて彼
女は、途切れ途切れに言葉を紡ぎ始める。
『……だって、その……く……悔しかったんだもの……』
「悔しかった?」
鸚鵡返しに問い返すタカシに、静花は小さく頷いた。それから覚悟を決めたように顔を
パッとあげる。
551 :
3/5:2014/03/10(月) 05:31:06.48 0
『だってそうじゃない。別府君がどんなチョコを一番に欲しがってるのか知ってるのに、
そこから逃げて市販品に走るなんて、負けを認めるようなものじゃない!!』
「いや。バレンタインチョコに勝ち負けなんてないし……」
急に感情的になった静花を落ち着かせようとタカシは諌めるような事を口にするが、静
花は首を振った。
『相対的な勝負の話じゃないわ。強いて言えば自分の中の話よ。何が一番か分かっている
のに、最初から無理と諦めて努力しないのは負けじゃないの?』
「うーん……まあ、言ってる事は分からなくないけど、そこまでしなくても良かったんじゃ
ないかなって。時間も掛かっただろうし……」
『勘違いしないでね。別に別府君のためじゃないわよ』
パッと口に出してから、静花はその言葉の矛盾に気付く。彼のために一番喜ぶチョコを
あげたいという目的があって、チョコを作るとか買うとかはその為の手段でしかなくて、
最高の結果を得られる努力を放棄する事を負けと言うのなら、結局それは彼のためなのだ。
しかし、その矛盾に彼女は目をつぶった。
『あくまで、私が満足行く結果を得るためのものだから』
「まあ、何となく委員長の気持ちは分かった気がするよ。うん」
彼女の感じた矛盾は、タカシにも違和感となって伝わったが彼はそれをちゃんと考えよ
うとはせずに同意して頷いた。そしてリボンを解き、箱に手を掛ける。
「それじゃ、開けるよ」
前置きなしじゃ何となく失礼な気がしてタカシは断りを入れる。静花はマグカップを口
につけ、顔を背けて抹茶ラテを口に含んで飲むと、小声で答えつつ頷いた。
『どうぞ。言っとくけど、本当に期待なんてしないでよね。辛うじて形になったってだけ
なんだから』
そうはいっても期待してしまうのが男の性だ。タカシはドキドキしつつフタを開けた。
「へえ」
目に飛び込んできたチョコを見て、タカシは思わず声を上げた。透明なビニール袋にた
くさんのチョコクッキーが詰められていた。ハート型のクッキーに同じようにハート型の
くぼみを作り、そこにチョコを流し込んで固めてある。さらにその上に小さな色とりどり
のグミやチョコチップがあしらって華やかなものになっている。
552 :
4/5:2014/03/10(月) 05:31:37.67 0
「すごいじゃん、委員長。本当にお菓子作り、苦手なのかって思うくらいだよ」
予想外に驚いた褒め言葉に、静花は恐縮して身を縮み込ませた。
『……苦手よ。だって一人じゃこんなの……絶対出来なかったもの……』
誤解された方が恥ずかしいので、静花は正直に告白した。それでタカシはさっき意外に
感じた疑問の答えが浮かんだ。
「もしかして、吉仲とかと一緒に作ったのか? 教えて貰って」
コクリ、と静花は頷く。そしてチラリと上目遣いにタカシに視線を送ると、嬉しそうな
彼の表情が視界に飛び込んでくる。
「そっか。委員長、頑張ってくれたんだ」
それで誤解されたのかと思い、静花はムキになって言い返した。
『だから別府君のためじゃないんだってば!! 私が自分に負けるのが悔しかっただけだっ
て言ったでしょ? でも一人じゃどうしようもなくって……でも、諦めるのも嫌だったか
ら……手段なんて選んでいられなかったのよ!!』
しかし、どう抗弁しようともタカシの顔から笑顔を消す事は出来なかった。
「だけど、どんな理由であれ、俺にあげるチョコを作るために委員長が奮闘してくれたこ
とは事実なんだし。だからスゴく嬉しいよ」
それを聞いた瞬間、静花の心臓がドクン、と大きく鼓動を打った。そしてそれは一回に
留まらず、彼女の体に熱い血流を送り続け、耐えられなくなって彼女は体ごと横を向いてしまう。
『……よ……喜ぶのはまだ早いわよ。友子やちーちゃんは美味しいって言ってくれてたけ
ど……別府君の口に合うかどうかは分からないんだし……』
何とか自分の気持ちを少しでも落ち着かせようと、静花はもう一口抹茶ラテを口に含む。
しかし、温くなってしまったそれは、あまり気付けとしての役は果たしてくれなかった。
「それじゃあ早速、頂いてもいいかな?」
『どうぞ。いちいち断る必要なんてないわよ。それはもう貴方のものなんだから……』
静花の突き放すような言い方に苦笑しつつ、タカシは袋を結んである金色のリボンを解
いた。そして袋の中に手を入れ、一枚手でつまんで持ち上げる
553 :
5/5:2014/03/10(月) 05:32:41.77 0
「本当に見映えは可愛らしいよね。ちょっとデコ盛りって感じだけど」
逆さにすると落ちるんじゃないかと思うほど盛られた飾り付けにちょっとおかしみを感
じたタカシが感想を言うと、静花は横目でジロリと睨み付けた。
『そ……それは最初の方で、みんなからあれこれ言われたら盛り過ぎちゃった物だから……
み、見た目はいいから早く食べてよね』
緊張に耐え切れず苛立ちを見せる静花に苦笑しつつ、タカシは一口かじった。無言でし
っかり口の中で味わうように食べ、残りを放り込んでからおんなじようにじっくりと味わっ
て食べる。やや難しい顔で考え込むタカシに、静花は何か口に合わなかっただろうかと
不安になってしまう。
『……だ……大丈夫だった? 甘過ぎたりとか……しなかったかしら?』
何も言わないタカシに、堪え切れず静花は感想を求めてしまう。するとタカシは真面目
な顔つきになり、ジッと彼女を見つめた。
「委員長」
『な……何……?』
何を言われるかと、静花は思わず居住まいを正してしまう。正座をしてタカシに正対し、
膝の上で拳を握り締める。タカシはまっすぐに静花を見つめたまま、表情を変えずに口を開いた。
続く
そろそろホワイトデーだなあ……
554 :
1/4:2014/03/11(火) 01:25:53.84 0
【ツンデレと進級の話をしたら】
「3月といえば、卒業のシーズンですね」
「む? まあ、そうじゃな」
学校帰り、通り道の公園でたい焼きを(俺の金で)買ってベンチでもっちゃもっちゃ食ってるまつりに切り出す。
「まだわらわたちは卒業という歳ではないが、貴様はちゃんと進級できるのかえ? もっとも、わらわ的には落第してもらった方が嬉しいがの」モキュモキュ
「そうなんだ。まあ、まつりは小さいから一つ年下の奴らと一緒の教室でもそんな違和感ないから大丈夫だろ」
「ぬ? 貴様の話じゃろ?」
「え、まつりの一ヶ月後の話じゃ?」
「……え? わらわ、落第なの?」
「はい」
まつりが綺麗に凍った。それでもたい焼きは落とさないのは、偉いのか食い意地が張ってるのか。
「……えええええっ!? なんでなんでなんで!? わらわ学業優秀じゃよ? 内申もいいよ? ……あっ、貴様、自分が落第なのをわらわと勘違いしとるのじゃろッ! ええい、そうじゃと言えッ!」
「いいえ」
「なんでそこでいいえとか意地悪なこと言うのじゃー……」ウルウル
まつりが半泣きになった。今日も可愛い。
「ううー……なんでなのじゃー……あっ、ひょっとして担任に袖の下とか渡さないとダメなのかや? でも大谷先生はそういうの嫌いそうじゃし……」ブツブツ
そうかと思えば何か呟きながら考えたりもしたりと、目まぐるしく変わる表情に頬がゆるむのを禁じ得ない。
「……む? なにわらわを見てニヤニヤしとるかや? 今日も気持ち悪いのじゃ」
「ニコニコしてると言ってください。人聞きの悪い」
「人が落第しそうになって困ってる様を見て笑ってるような悪人は、等しくニヤニヤというおとまのぺなのじゃっ!」
「オノマトペです」ナデナデ
「……そ、そうとも言うのじゃ。……じゃ、じゃって外来語は苦手じゃもんっ!」
「無理して使わなくても」
「うぅー。たまにはそーゆうのも使いたくなるお年ごろなのじゃよ」
555 :
2/4:2014/03/11(火) 01:26:30.87 0
「うわ超かわいい。あとでさらって三日三晩犯しまくって孕ませよーっと」(うわ超かわいい。あとで妊娠させよーっと)
「怖すぎるっ!?」
「ああ失敬失敬、言ったことと思ってることが逆だった」
「ほぼ一緒じゃったぞ!?」
「いや、言うつもりの台詞はほら、オブラートだかビブラートに包まれてるおり、震える」ビビビビビ
「オブラートじゃ! ええい、貴様が余計なことを言ったせいで着信したみたいになってるのじゃ!」
「モノマネします。西野カナ」ビビビビビ
「うるさいのじゃ!」
「いやはや。まあなんだ、大丈夫。俺は、俺だけは、まつりが後輩になってもこれまで通り馬鹿にするから安心してくれよ」ナデナデ
「途中まで感動しそうになったが後半で一転、いつも通り貴様の悪辣さが出てきおったのじゃたわけーっ! ふえーんっ!」
「ああ泣かしてしまった。これは良心がうずく。ただ、俺に良心とやらがあるのかはなはだ疑問ですね。まだ良心回路があるキカイダーの方が持ってる信憑性が高そうだ。ただ、ハカイダーよりは良心があるように思えるのですが、その辺りまつりはどうお考えでしょうか?」
「キカイダーの話に行きすぎじゃっ! わらわを慰める方向へ行けっ!」
「それもそうだな。よしよし」ナデナデ
「明らかに子供相手の慰め方なのじゃ……」ズーン
「とにかく、元気を出せ。大丈夫、全部嘘だ」
「そうは言っても……ぬ?」
「嘘」
「なにが?」
「落第関連の話」
「…………」
「エイプリールフール!」ジャーン
「何がじゃーんじゃーっ! まだじゃ、一ヶ月早いわっ!」
「俺の持ちネタなんです」イヤハヤ
「あほーっ! 今日もあほーっ!」ポカスカ
「わはは。まつりは俺と違って品行方正五里霧中なんだから落第なんかするわけないだろ」ナデナデ
「ううーっ。びっくりしたのじゃ。ドキドキしたのじゃ。どうしようどうしようかと思ったのに、この阿呆は……。あと、五里霧中ではないのじゃ」
「いや、ほら、よく俺に惑わされてあわあわしてるので割合ぴったりかと」
556 :
3/4:2014/03/11(火) 01:27:03.35 0
「超うるさいのじゃ! そもそも貴様がわらわを騙したりしなければドキドキあわあわしなかったのに……ああもう、不愉快なのじゃ! たい焼きも冷えちゃったのじゃ!」
食いかけのたい焼きをぐいっと差し出された。
「めろんちょ」ベロリ
「あああああ!?」
そこで、ちょうど歯形のある箇所を舐めたら奇声をあげられた。そりゃそうだ。
「何をするかや!?」
「めろんちょ」
「意味分からんのじゃ! ああ……わらわの、わらわのたい焼きが、妖怪液に汚染されちゃったのじゃ……」ズーン
「妖怪液じゃなくて、唾液です」
「うるさいのじゃ! ああもう、こんなの絶対に食べられなくなっちゃったのじゃ! 新しいのを要求するのじゃ!」
「へーへー」
「返事は一回なのじゃ! ……それじゃ、次は何にするかの?」
「抹茶は? お前今日選ぶ時に抹茶とそのカスタードと死ぬほど悩んでたじゃん」
「ぬ。……よく見とるのぉ。貴様、わらわのすとーかーかや?」
「していいの? やったぁ!」(天まで届け、とばかりの快哉を叫びつつ)
「ちっ、違う違う違うっ! 許可などしとらんっ! じゃから、わらわをすとーきんぐしてはならんのじゃっ!」
「ちっ。許可が出たなら堂々とまつりの後をつけてさらって三日三晩」
「それはもういいのじゃーっ!!」
半泣きだったのでこの話題はやめることにする。流石に下衆すぎるか。自重しよう。
「んじゃお詫びをかねて買いに行くか」
「ん!」
はい、とたい焼きを手渡された。
「なんでしょうか」
「もう食べられなくなっちゃったから、貴様にやるのじゃ」
「えー」
557 :
4/4:2014/03/11(火) 01:27:35.51 0
「えー、とはなんじゃ、えー、とは。わらわのほどこしじゃぞ? 喜ばぬか!」
「だって、妖怪液に汚染されてるんだもん」
「貴様の唾液じゃッ!」
「言われみればそうだった。よし、まつりの目の前でこのたい焼きを舐めて間接キスを堪能しよう」
「かんせ……あーっ! い、言われてみれば! か、返すのじゃ!」アワアワ
「妖怪液に汚染されてますが、大丈夫ですか」
「ぐ」
「というか、既に俺がめろんちょした後ですし、間接キス後なのですが。つまり、もしこれを返してまつりが食したとしたら、間接間接キスですな。お、わけが分からん。はっはっは」
「うううーっ。もうそれ食べちゃダメなのじゃ!」
「嫌です」モグモグモグ
「あああーっ!!」
「うーん。うまい。生地は冷えてるが、それでもこのカスタードが」モグモグ
「……そ、その、わらわの味は?」ドキドキ
「人肉を食った経験がないのでちょっと」
「別にわらわの肉が入っとるわけじゃないわいっ! ほ、ほら、わらわが口をつけた箇所があるじゃろ? なんか甘かったり幸せになったりせぬか? の? の?」
「全然」モグモグ
「……貴様と言うやつはーっ!」
「はい」
「もーっ! 本当にーっ! もーっ!」ポカスカ
「痛い痛い」
「うぐぐーっ! 罰なのじゃ、抹茶とあんこを買うのじゃ!」
「あ、それはダメ。そんな食ったら晩飯入らねーだろ」
「うぐぐぐぐーっ! もーっ! わらわのこの『もーっ』て感じはどうしたらいいのじゃーっ!」ポカスカ
「痛い痛い」
ぽかすか叩かれ続ける俺だった。
まつりをひらがなにすると、それだけでロリっぽく見えるなあwww
何はともあれ二人とも仲良し過ぎだwww
GJ!!
560 :
1/7:2014/03/14(金) 02:41:18.98 0
・人生初めて、家族以外の男の人にバレンタインチョコをプレゼントするツンデレ〜その6〜
「すっごく、美味しいよ」
そして、今まで我慢していた分も含めたような満面の笑みを浮かべる。何を言われるの
かと緊張していた静花は、ホッとすると同時に思わせぶりな態度にドキドキさせられた事
を憤って、両手でリビングボードを叩き、立て膝になって前のめりにタカシを怒鳴りつけた。
『だったらもっと早く言いなさいよ!! 何かあると思ったじゃない。何をもったいぶっ
てるのよ!!』
しかし、タカシの顔に浮かんだちょっとイヤらしい笑みを見て、彼女はその理由に思い
当たった。
『分かったわ。わざと思わせぶりな態度を取ってみせて私の反応を楽しんだんでしょ?
最低だわ。死ねばいいのに』
「ゴメンゴメン。何かさっきからさ。普段の委員長じゃありえないくらい緊張してるのが
感じられたからさ。ついちょっと意地悪な気持ちになっちゃって。ホント、謝るよ」
頭を下げるタカシに、静花は憤って鼻息を荒く吐くと、そっぽを向いた。
『知らないわよ。別府君がそんな意地悪な人だったなんて思わなかった。これからはもう
少し貴方との付き合い方も考えないとね』
しかし、怒らせてしまったとはいえタカシの胸には温かいものが広がっていた。こんな
他愛の無い戯れで彼女が感情をむき出しにしてくれるのが、嬉しくてしょうがなかったの
だ。もう一つ、今度はホワイトチョコを固めたクッキーを手に取る。しばし飾り付けを目
で楽しんでから、タカシは一口かじって頷いた。
「でも、本当に美味しいよ。焼き加減も良くてサクサクだし、チョコも美味しいし。それ
に見た目も綺麗だから言う事無いよ。これでお菓子作りが苦手だなんて言っても誰も信じ
ないって」
静花はまだそっぽを向いていたが、怒りは単にからかわれた事に対してだけだったので、
褒め言葉一つで簡単に崩壊してしまい、またあの奇妙なくすぐったい嬉しさが襲ってくる。
561 :
2/7:2014/03/14(金) 02:41:50.07 0
『……友子達はみんな信じるわよ。ここまで作り上げるまでどれだけ時間が掛かったかを
考えればね。本当に丸一日潰れるんだから。延々と時間を掛けて妥協なくやれば、誰だっ
て出来るわよ。ビジョンさえあればね。だからこれからも手作りの菓子を作って貰えるだ
なんて期待しないでよ』
うつむいてぶつくさと言い訳めいた事を言う静花に、タカシはちょっと驚いた調子で返した。
「あれ? それって逆に期待していいってフリなの? 俺は今回、バレンタインだから特
別だって思ってたんだけど。だってまあ……本当に恋人同士な訳じゃない訳だし……」
『ちちちっ……違うわよっ!! き、期待しないでっていうのは本気で言ってるんだか
ら!! 言う必要もないっていうのは確かにその……その通りかも知れないけど……』
何故か静花の心の内に、タカシの言葉がものすごく寂しく感じられていた。擬似カップ
ルなろう、というのはそもそも自分が提案したことなのだが、今この時間はそれを思い出
したくなかった。それはきっと、チョコ作りから今までずっと、彼の事をまるで本当の彼
氏のように感じていたからなのだろうと静花は省みて思う。
しかし、一瞬ただよったそんな空気を、タカシは次の一言で吹き飛ばした。
「でも、本命チョコに匹敵するようなチョコを貰えたから十分だよ。正直、お返しにどう
しようか困るくらいにね」
『お、お返しって?』
そんな事をすっかり忘れていた静花が驚いて聞き返すと、タカシは意外そうな顔で首を傾げた。
「お返しって、もちろんホワイトデーのさ。当然だろ? 委員長がここまで頑張ってチョ
コを作ってくれたんだし、俺も相当の努力をしないとみんなからも相当言われるだろうしな」
まさか静花の家でチョコを食べているとまでは知らないまでも、彼女の作ったチョコが
どんなものかは恐らく、彼女の友人達を通じて男子にも広がるだろう。みんなから冷やか
される事を思い、タカシはため息をついた。そんなタカシを尻目に、静花は半ばボーッと
した感覚で先の事を考える。
562 :
3/7:2014/03/14(金) 02:42:21.29 0
『そっか……ホワイトデーか……』
またもう一日、タカシとこんな風に過ごせる一日があると思うと心が浮き立ってしまう
のを彼女は否定出来なかった。果たして彼は何をお返しにくれるのだろうかと思うと、今
から楽しみになってしまう。
「委員長。もしかして今、お返しのこと考えてた?」
『ふぇっ!?』
唐突にタカシに質問されて驚いて変な声を出してしまい、静花は慌てて口を押さえた。
『えと……えっと…… そう。そうよ。私がこれだけ頑張ったんだから、貴方はもっと努
力していいものくれなきゃダメなんだから。ホワイトデーのお返しは3倍返しって言うしね』
何かを必死で取り繕っている感が見え見えの態度を取る静花が可愛らしく面白くて、タ
カシはまた笑ってしまった。
「何だそれ? 何でお返し期待してるくらいで動揺するんだよ」
『う、うるさいわね!! 何か欲が丸出しみたいでちょっと恥ずかしかっただけよ!!』
まさかホワイトデーのお返しそのものではなく、タカシと過ごせる時間に心を浮つかせ
ていただなんて言えるはずもなく、静花は怒鳴りつけてごまかす。しかしそれは、却って
タカシにおかしみを抱かせただけだった。
「そうかな? 何かもう風習として出来上がっちゃってる以上、チョコあげたんならホワ
イトデーに期待するのは別におかしくもないと思うけど。でもそういうトコ気にしちゃう
あたり、委員長って真面目だよな」
タカシからするとフォローしているつもりだったが、どうしても感情が表に出てしまい
ニヤつきが消せなかった。それで静花はますます不機嫌になって彼を詰る。
『今の、からかってるの? それともバカにしてるわけ? 真面目って絶対褒め言葉で使っ
てないでしょ』
友人からもよく同じ扱いを受けてしまっているため、この手の揶揄に静花は敏感だった。
いくらタカシが相手とは言え、からかわれるのは面白くない。しかしタカシはサラッと切
り返して来た。
563 :
4/7:2014/03/14(金) 02:42:54.63 0
「いいや。可愛いなって思って」
その瞬間、静花は自分の体温がマックスまで上昇したのを感じ取った。その言葉も敢え
て負の方面で受け取る事で、彼女は混乱しそうな頭を辛うじて抑える事に成功する。
『いっ……いっ……い……いい加減にしてよ!! 私をおもちゃにして遊ばないで!!
もう……知らないっ!! そんな冗談付き合っていられないわ。もう、それ早く食べちゃっ
てよね。それでとっとと帰って!!』
顔を真っ赤に熟れさせながら憤慨する静花の様子は明らかに照れ隠しにしか見えなかっ
た。しかしここで笑い出したりすれば本当に叩き出されかねない。笑いたいのをグッと堪
えてタカシはチョコクッキーをつまんで持ち上げる。
「そんな慌てて食べるような真似したらもったいないって。本当に美味しいんだし、味わっ
てよく食べないとね」
そんなタカシに、静花は忌々しげな気分で吐き捨てる。
『今の別府君って、絶対に意地悪だわ。私を弄ろうとしてワザとゆっくり食べてるでしょ
う? 最低だわ。そういう性格、絶対に嫌われるわよ」
しかしタカシはとんでもないとばかりに手を振ってそれを否定した。
「いやいやいや。そんな事ないって。何なら委員長も一緒に食べようよ。まだたくさんあ
るしさ。俺ばっかり食べてて委員長は何も食べるもの無しじゃ申し訳ないような気がするし」
『何言ってるのよ。貴方、バカなの? 別府君にあげる為にわざわざ作ったのに私が食べ
ちゃ意味ないじゃない。バレンタインチョコの意味、分かってるの?」
善意で言ったつもりなのだが厳しく叱責されて、タカシは微妙な気分になった。しかも
言われている内容自体は、普通好きな女子から言われれば相当嬉しいことだというのが余
計に感情を複雑なものにさせていた。
「そりゃ分かってるけどさ。俺の為に作ったんだからって言われれば嬉しいし。でも、委
員長だって飲み物だけじゃ口寂しいだろうし、量はまだまだあるから1枚や2枚くらいな
ら委員長もいいんじゃないかって思って」
タカシの反論に、静花は小さくため息をついた。
564 :
5/7:2014/03/14(金) 02:44:27.97 0
『そりゃどうも。でもご心配なく。この間みんなでチョコ作った時に交換こした分がまだ
余ってるから私はそっちを食べるわ。本当は飲み物だけでもいいかなって思ってたけど、
別府君が気にするみたいだし、私も少しつまむことにするわよ」
そう言って立ち上がると、彼女は再び廊下のドアを開け、冷蔵庫を開くと中から袋詰め
しておいた菓子を持って戻った。
「それ、他のみんなが作ったバレンタインチョコなの?」
タカシの問いに、静花はコクリと頷く。
『ええ。このチョコレートケーキが友子ので、プチクッキーが英子。で、ちーちゃんがス
コーン作ったの』
袋を開け、静花は一つずつを取り出す。それを見ながらタカシは感心した声を上げた。
「へえ。やっぱりみんな女の子なんだなあ。どれも上手に出来てて美味しそうだな」
『何よ。まさかこっちのチョコも食べたいなあとか思ってないでしょうね?」
まさかと思いつつも、静花は疑いの眼差しをタカシに向けた。それに気付き、タカシは
慌てて首を振った。
「え? いやいや。まさか。俺は委員長のだけで十分だって。もちろん。うん。たくさん
作ってくれたからさ。ここで食べるだけじゃ食べ切れないくらいあるのに、他の子のチョ
コまで食べる余裕ないって。ただ、ちょっと感心しただけでさ」
『そう。ならいいわ。まさかこの期に及んで他の子のチョコに浮気なんてしたら、二度と
作ってなんてあげないって思ってたけど』
内心ホッとしていた気持ちが表に出ないよう、静花は済ました顔でそういうとスコーン
を一口かじった。この間も食べているので今更口に出す感想もなく、無言で一つ食べ終え
る。それからタカシの視線に気付いて彼女は視線を彼へと向けた。また何か嬉しそうな顔
をしているのを見咎めて、静花は怪訝な面持ちになる。
『何よ。変な顔して人が食べてる様子を眺めないでくれる?』
「ああ。ゴメン。別にそんなつもりなかったんだけど」
謝りつつ表情を消そうとするが、自分の言っている意味に気付いていない静花を思うと
どうしても顔のニヤつきが消せなかった。それに苛立って静花が声を荒げる。
565 :
6/7:2014/03/14(金) 02:44:59.85 0
『何なのよもう。気持ち悪い。その変なニヤけ顔止めてよね。何かすごく気に入らないんだけど」
「いや、ゴメン。だってさ……」
タカシは真面目な顔をするのを諦めた。表情が消せない以上、正直に理由を言うしかな
い。むしろそれで彼女の反応を見るのも面白いかもと思いすらしつつ、彼は言葉を続ける。
「それって要は、他の子のチョコに俺が興味を惹かれたくないってヤキモチ焼いてくれて
るんでしょ? 何か委員長が嫉妬してくれるなんて嬉しくてさ。どうしてもつい、こう……
ニヤニヤしちゃって我慢出来なくて。ホントにゴメン」
『んなっ!?』
自分の態度が示した意味にようやく気付いて、静花は顔が真っ赤になるのを感じた。慌
てふためき、わたわたと手を振りながら必死で弁解を始める。
『ちがっ…… 違うのよっ!! だ、だってその……私が作った手作りチョコがあるの
よ? なのにその……ほ、他の子が作ったチョコまで食べたがるなんて普通に失礼だと思
わない? 人として。だからその……し、嫉妬とかそんなんじゃないし、大体私が嫉妬す
るって意味分からないわよ!!』
タカシはコクリと頷きつつ、更に意地悪になる自分を感じていた。自分が静花に対して
優位に立てる状況なんてそうはないので、何だか楽しくてしょうがなかった。
「そうだよね。委員長が俺のためにわざわざ頑張って作ってくれたチョコだもんな。他の
このチョコに浮気するなんてとんでもない。俺はちゃんと、委員長のチョコ一筋だから」
『そ、そういう言い方しないでよねっ!! 私と貴方はあくまで付き合ってるふ……フリ
してるだけでっ……元々は何の関係もないんだから!! べ、別府君のために作ったって
のもその……周りの子達にアピールするためでっ……ほ、本気で別府君の事を思って作っ
たって訳じゃ……』
「分かってるよ。それも全部承知の上で、嬉しいって言ってるんだって」
『ば……馬鹿じゃないのっ!! こんな、ごっこ遊びみたいな付き合いなのに……う、う、
う……嬉しいだなんてっ…… あああ、もう分かんないわよ!! ちょっと顔が暑いから
顔洗ってくる。その間に別府君は大人しくちゃっちゃとチョコ片付けちゃってよね!!』
逃げるように立ち上がる静花を見送りつつ、タカシはその背中に声を掛けた。
566 :
7/7:2014/03/14(金) 02:45:31.52 0
「片付けるなんてとんでもない。委員長の努力を無駄にしないよう、ちゃんとゆっくり味
わって食べないといけないからね。そんな、市販の安い菓子みたいな扱いはそれこそ失礼だし」
パッと振り向いた静花の表情は照れているのか怒っているのか、はたまたその両方なの
か、鋭い眼光で睨み付けてはいるものの顔は熟れたトマトのように真っ赤で目は潤んで涙
目になっていた。
『知らないわよもうっ!! 勝手にして!!』
バン、と荒々しくドアを閉めて部屋から出て行った静花を見送ると、タカシは静花の作っ
てくれたチョコクッキーを手に取った。そして幸せな気分に浸りつつ、もう一口かじるのだった。
『う〜〜〜〜〜っ…… もう最低。最悪だわ……』
バシャバシャと水音を立てて冷水で顔を洗い、静花は鏡で自分の顔を見つめた。幾分か
マシな顔になったものの、まだ顔の赤みは取れていない。
『あれじゃあもう……自分の言ってる事がウソですって言ってるようなものじゃない。あ
んなに取り乱してちゃ……』
胸に手を当ててみると、やはりまだ動揺が収まっていない。静花は深く深呼吸をした。
『このままじゃいずれは…… ううん。その前に自分でちゃんとしないと……』
このごまかしの関係からちゃんとした関係にならないと。そうは思っても、臆病な自分
が後ろから抱きかかえて止めてくるのをまた感じて、静花はため息をつくのだった。
終わり。
グッジョブ
569 :
ほんわか名無しさん:2014/03/15(土) 11:43:20.37 0
お題
つ・ツンデレに俺に変えて欲しいところって何かあるかって聞いたら
友ちゃんに膝枕してもらいたい
これはたぷたぷせざるをえない
5レス貰います
575 :
1/5:2014/03/20(木) 07:18:15.75 0
・お題作成機より:生徒会長、公園、うちわ
ある日の放課後。今日は早く帰れるので、帰ったら何をしようかと心の中で算段しつつ
歩いていると、通りがかった公園に生徒会長が佇んでいるのが見えた。特に何をしている
でもなく、ボーッとしている風にしか見えない。
「何やってんだ? アイツは……」
無視して帰るのが一番平穏無事に済む方法だが、相手が女子――それも美人の場合は、
それはフラグ潰しとも言う。
「まあ、俺が会長にフラグ立てるなんて出来るとは思えないけどな」
一人ごちつつも結局無視出来ずに、俺は公園の中に足を踏み入れた。
「会長」
驚かさないよう、声を落として呼び掛ける。反応がないので聞こえなかったのかと思い
もう一度声を掛けようと思った時、彼女は長い髪を手で後ろに流した。そして、クルリと
こちらを向く。
『別府君』
俺の存在を認めると、その表情がいささか不快そうに歪んだ。
『何をしているの? こんな場所で』
「そりゃ、こっちのセリフだよ。公園の隅っこにボーッと突っ立ってさ」
人とはちょっと違う思考を持つ会長だけに彼女にしてみれば不思議でも何でもない事な
のだろうが、凡人の俺にはさっぱりその行動は読めない。すると彼女はチラリと視線をさっ
きまでと同じ公園の隅に送ってから、小さく答えた。
『夏の残骸を見ていたのよ』
「夏の残骸?」
妙に詩的なその言葉の意味が全く理解出来ず、俺はおうむ返しに聞いた。
『そうよ』
彼女は頷くと、手を伸ばして公園の片隅を指した。俺は視線でそれを追うが、特に変わっ
た物は見当たらない。
576 :
2/5:2014/03/20(木) 07:19:33.76 0
「何が夏の残骸だって?」
何となくバカにされそうだなと思いつつ聞く。すると会長は案の定呆れた目付きで俺を
見つめた。
『貴方って本当に注意力が散漫なのね。私の言葉を意識してしっかりと見ればちゃんと見
えるはずよ。私の言った事を胸に刻んで、もう一回見てみなさい』
そう言われれば、俺としては見ざるを得ない。何か特別な物があるかといえばやはり特
に何もない。あまり清掃されていないのか、植え込みの辺りにゴミが落ちているだけだ。
「うーん…… 植え込み以外には、ゴミくらいしか見当たらないけどな」
首を傾げると会長は、露骨に呆れたため息をついた。
『その程度の観察眼しか持っていないから、普段からロクな発想が浮かばないのよ。そも
そもゴミって何? アソコに落ちている物一つ一つにそれぞれ個別に名前があるはずよ。
それをゴミだなんてひとくくりにするから、見える物も見えなくなるんだわ』
会長の言葉をヒントに、俺はもう一度落ちているゴミを見直した。グダグダと反論して
も、軽蔑されるだけだ。
「コンビニの袋、空のペットボトル、あと……ありゃ何だ? 壊れたうちわか。それに菓
子の袋と……そんなもんか」
とりあえず目につく物をザッと並べ上げると、会長が頷いた。
『そうね。その中で一番私の言葉に似合う物は何かわかる?』
続けて放たれた問いに、俺は真面目に考える。ここで迂闊にふざけた答えでも出そうも
のなら、会長に軽蔑されて今後の扱いが更に酷くなりそうな気がする。
「夏の残骸……か。残骸ってのに一番合いそうなのなら、壊れたうちわかな」
チラリと会長を横目で見ると、会長はコクりと頷いた。どうやらミスは犯さなかったこ
とに、俺は内心ホッとする。
『そうよ。貴方はあれを見て、どう思う?』
またしても質問をされて、俺は答えに窮した。何か気の利いた答えを返さないとマズい
のは分かっているが、質問の意図が読めない以上答えも思い浮かぶ訳もない。
「うーん…… 管理者はちゃんと掃除しろよ、とか?」
思いつくまま適当に答えると、会長は露骨にウンザリとした様子で大きなため息をついた。
577 :
3/5:2014/03/20(木) 07:20:36.40 0
「何だよ? 文句あるならはっきり言ってくれよな。どうせ会長から罵倒されるのなんて
慣れてるしさ」
『それは慣れちゃ駄目でしょ。叱られるのは貴方に原因があるんだから、肝に銘じてキチ
ンと反省してくれないと』
むしろ余分な説教を食らい、俺は頭をすくめた。
「分かったよ。で、今の答えは何がマズかったって言うんだよ? ため息だけじゃ反省も
出来ないだろう?」
果たしてこれに反省する要素があるのかどうかははなはだ疑問だったが、俺は一応聞い
てみた。会長の感覚が分かっておけば、今後の対応に役立つかも知れないし。
『別に何が悪かったとかじゃないわ。そんなことしか考えられない貴方の脳ミソには辟易
するけど、まあ別府君ならこの程度よねってちょっと呆れただけ』
「じゃあ会長はあれを見て何を考えてたんだよ? 俺にそう言うからには随分と立派な事
を考えてたんだろ?」
敢えて挑戦的な物言いをしたのは、こう言えば会長は間違いなく乗って来ると思ったか
らだ。案の定、彼女は不愉快そうに眉を寄せた。
『私は自分の考えがそこまで立派だなんて思ってないわよ。ただ、貴方の貧相な思考回路
よりは余程マシだとは思っているけどね』
「俺よりは遥かに立派なんだろ? なら、参考にさせて貰うからさ。聞かせてくれよ」
すると会長はちょっと嫌そうな表情で少しの間渋る様子を見せていたが、やがて諦めた
ように一つため息をつくと頷いた。
『まあいいわ。別に人に聞かせることでもないと思ったけど、逆に言えば頑なに拒むこと
でもないしね。万が一にも鼻で笑ったりしたら許さないけど』
そう前置きするということは、自分でももしかしたらおかしいかもと自覚していること
らしい。日頃、自信に満ちた態度を取っている会長にしては珍しいことだが、それだけに
余計興味をそそられた。
「分かったよ。笑ったりしないって約束する。それだったらいいだろ?」
生真面目に頷いて見せたのに、会長は面白くもなさそうにフン、と鼻を鳴らした。
『そんな約束必要無いわよ。私は単に貴方が笑ったら軽蔑して二度と許さないだけだもの。
貴方にバカにされたところで痛くも痒くもないしね』
さすがは会長。俺ごときに弱みを見せるつもりは一切ないらしい。
578 :
4/5:2014/03/20(木) 07:21:36.73 0
「分かった分かった。嫌われたくなきゃ自分で気を付けろって言うんだろ? とりあえず
会長の感想を聞かせてくれよ」
これ以上毒舌を食らわないように先を促すと、会長は視線をうちわに向け、ジッと見つ
めつつ呟いた。
『そうね。敢えて婉曲な表現で言うとしたら、盛者必衰の理を表すってところかしら』
「何だそりゃ? さっぱり意味分かんねーぞ」
俺が首を傾げると、会長は心底呆れた顔で俺を見つめた。
『嫌だわ。平家物語の有名な冒頭の言葉じゃない。中学の授業で習わなかったのかしら?
それとも、もう忘れたの?』
「それくらいはさすがに覚えてるって。俺が言いたいのは、その平家物語とうちわにどん
な繋がりがあるのか意味が分かんないってことで」
何故かこれに関してはバカにされた事が悔しくて、俺はちょっとムキになった。しかし
会長はまるで信じていない顔で俺に説教を垂れて来る。
『どうせ授業なんて寝ていてテストの時に一夜漬けで丸暗記するから、いざという時に知
識が出て来ないのよ。更に言えば、知らないのに知ったかぶりをするなんて、究極にみっ
ともないわね。恥知らずもいいところだわ』
どうやら会長は、どうあっても俺を無能にしておきたいらしい。まあ、自分の言った事
を間違いだと認めたくないだけなんだろうけど。俺も反論したかったが、このまま言い争っ
ていても話が進まないだけなので、とりあえずここは折れておく事にする。
「まあこの際、俺が知ってたかどうかは問題じゃないだろ。それより、今の話とうちわに
何の関係があるのか、そっちを教えてくれよ」
『別府君は、平家物語の冒頭に語られた言葉の内容は分かる?』「は?」
唐突に逆質問を食らい、俺は一瞬戸惑った。まだその話を続けるのかと思い、さすがに
会長相手とはいえ、苛立ちを覚える。
「いや、だからさ。もう物語の中身とかいいから。それよりうちわの方を――」
『私は無駄話は嫌いなの』
会長の言葉に遮られて、俺は黙らざるを得なかった。無駄話が嫌いなら、余計ストレー
トに話をするべきじゃないのか。そう疑問が浮かんだが、それを口には出せなかった。
579 :
5/5:2014/03/20(木) 07:22:53.50 0
『いいから、知っていれば答えて。知らなければ知らないって一言言ってくれればそれで
いいから』
僅かに急かすように会長は答えを促す。そう言われれば、さっきそれくらいは知ってる
と言った以上俺も答えざるを得なかった。
「あれだろ? 奢れる平家は久しからずっていうか、形あるものは必ず滅びるっていうことだろ?」
すると会長はコクりと頷いた。
『まあ概ねそんな感じでいいわ。私はね。あのうちわに、それと同じものを感じていたの』
「あの壊れたうちわに?」
相変わらず会長のセンスはよく分からない。時々この人は、俺らと違う世界を生きてい
るんじゃないかという気がする。『そうよ』
当然、とばかりに自分の意見を肯定すると、彼女はまっすぐに俺を見つめつつまた質問
をぶつけて来た。
『だって別府君。うちわが一番活躍する時期っていつだと思う?』
後編に続く
582 :
1/6:2014/03/21(金) 20:10:09.33 0
・お題作成機より:生徒会長、公園、うちわ 〜後編〜
「いつって…… そりゃあ夏だろ?」
俺の答えに、彼女はコクりと頷く。
『でしょう? 夏は様々な場所でうちわが活躍するわ。特にお祭りや花火大会では多くの
人が浴衣を着てうちわを片手に持つじゃない。もはやあれは、単に涼を取る為だけじゃな
くてファッションの一部と言ってもいいわ』
「まあな。美人の女が浴衣着てうちわを持つ姿なんて、やっぱり映えるもんな」
そういえば、去年の夏は会長と夏祭りなんて機会はなかったな、と思い返す。果たして
高校生活最後となる今年は会長の浴衣姿を見る機会はあるのかなと思いつつ、目の前の会
長に浴衣姿を重ね合わせていると、会長の不機嫌そうな声が俺の妄想を打ち破った。
『別府君って、ホント頭の中が女の子の事しかないのね。どれだけ腐り切っているのよ』
だって目の前に学校一と言っても過言ではない美人がいれば、誰だって妄想くらいする
だろう。一瞬、そんな思いを口に出したらどうなるだろうかと興味が湧いたが、寸でのと
ころで止めた。会長がそんな一言でデレる玉だとはとても思えなかったからだ。
「女の理想がどうあれ、男ってのはそういう生き物なんだよ。口に出すか出さないかって
だけの話で」
『そうかしら? どちらにしても、別府君はちょっと欲望が強すぎる気がするけどね』
完全否定はされなかったが、呆れた顔つきで会長は俺を見た。しかし、比較対象がない
状態で否定しても、お互いの主観的基準で言い争うだけの不毛な会話になるだけなので俺
はスッパリと諦めた。
「まあ、俺がスケベかどうかなんてのは関係ないだろ。とりあえず話を続けてくれよ」
俺があっさりと引き下がった事に、会長は何故か物足りなさそうな顔をした。しかしす
ぐに、ため息一つで気持ちを切り替える。
『要はね。夏はあんなにもみんなから重宝がられて、まさにこの世の栄華を極めていた訳
じゃない。なのに、季節が過ぎるとあっという間にいらない物になって無惨にも捨てられ
てしまっているうちわにね。ちょっとした哀愁めいた物を覚えていたっていう、そういう事よ』
一度話を切った為か、いい加減めんどくさい様子で、会長は一気に話を終えた。それを
聞いた俺は、真っ先に浮かんだ疑問を口にする。
583 :
2/6:2014/03/21(金) 20:10:42.42 0
「あのさ。考え方とか感性を否定する気はないけど、まさかそんなことの為に、わざわざ
公園に立ち寄ってずっと立ってたのか? 寒い中」
『そんなこととは何よ。そんなこととは』
一応言葉は選んだつもりだったが、やはり会長は気を悪くした。しかし俺も口にした以
上は簡単に引っ込めるつもりは無い。
「だって、普通はチラッと見かけてもそれで足を止めてジッと見続けるなんてしないだ
ろ? 感傷に浸ること自体は悪くも何ともないけどさ。いくらしっかり着込んでたって、
こんな寒空に佇んでいたら風邪引くぞ」
一応心配して言ったつもりだったのだが、上から目線で物を言われたように感じたのか、
会長の表情が更に険しくなる。
『別府君にそんな事を言われる筋合いはないわ。自分の健康管理くらいはしっかり出来る
わよ。それに、あそこに立ってたのは何もうちわを見て感傷に浸る為じゃないし』
「あれ? 違ったのか?」
俺が見掛けた時は既に会長はジッと視線を一箇所に向けたまま考え事をしていたように
見えたからてっきりそうだと思っていた。首を傾げる俺に会長は頷いた。
『当たり前でしょう? 道端からあんな植え込みの中が見えるわけ無いじゃない。秀美ちゃ
んから来たメールに返信しようと思って寄ったらたまたま見つけただけよ。勝手な誤解を
して偉そうに説教しないでくれる?』
「別に偉そうに説教したつもりはないけどな」
確かに会長の行動を否定するようなことは言ったかも知れないけれど、ああしろこうし
ろなどと講釈垂れてはいないはずだ。しかし会長は真っ向からそれを否定した。
『嘘よ。風邪を引くとか何とか言っていたじゃない。百歩譲って心配してくれていたとし
ても大きなお世話だわ。貴方なんて、あのうちわと同じ程度の存在でしかないくせに』
「それは単に忠告って言うか…… まあいいや。どっちにしても余計なお世話だって言う
んだろうし。それにしても、うちわと同程度の存在ってどんな存在だよ」
会長が俺の事を人として軽く見ているのは、生徒会の後輩達との扱いの差でも一目瞭然
である。とはいえ、いくらなんでもゴミと同格扱いされるのはさすがにいい気分ではない。
584 :
3/6:2014/03/21(金) 20:11:13.85 0
『あら? さっき私が言った事、覚えていないのかしら?』
そう問い掛けられても、俺は首を捻るしかない。会長の考えなんて俺の遥かに及ぶとこ
ろではないし。
「さあな。俺とあのうちわのどこが同じなのかなんてのは想像付かないし。そうだな……
俺もあのうちわと同じ、ゴミだって言いたい訳か?」
不思議としゃべっているとある程度は思いつくもので、俺はその場で予想を付け加える。
しかし会長はあっさりと首を振った。
『近いけど、ちょっと違うわね。さっき言ったでしょう? あのうちわも、夏の間は重宝
がられていたって』
「……は? それと俺がどう繋がるんだよ?」
『分からないの? 貴方だって今はこの世の栄華を極めてるわけじゃない。生徒会副会長
として、学校中の生徒に名前を知られているわけだし』
「会長と書記に毎日罵られながらお仕事するのがこの世の栄華だとしたら、俺はすぐさま
誰かに譲ってやりたいね」
ため息交じりに俺は否定する。そもそも副会長職だって、他になり手がないから前会長
の推薦――というか罠で無理矢理引き入れられたものだったし。しかし会長は、その言葉
に不快そうに眉をひそめた。
『罵られているのは、貴方がサボったりしてばかりいるからでしょう? 一般生徒はそん
な事知らないもの。からかわれたり揶揄されたりもするけど、やっぱり生徒会やってるっ
て事はそれなりのステータスにはなるものよ』
「そんなもんかね」
俺は首を傾げつつ考える。確かに生徒会役員ともなれば全校集会でもクラスの並びでは
なく先生達とステージを挟んで反対側の前の方に立っているから目立つし、何といっても
会長が目立つ存在なだけに、羨ましがられる事も多い。あとは他の女子からねぎらいの言
葉を掛けられたりとか。ただ、どちらかといえばそれは汚れ仕事役を引き受けているから
だけのように思えてならない。
『貴方はこき使われている程度にしか感じてないかもしれないけど、それでも多分、今が
別府君の人生では一番光り輝いている時よ。この後、任期が切れれば後は落ちぶれていく
だけ。だからあのうちわと同じだと言っているのよ』
585 :
4/6:2014/03/21(金) 20:11:44.58 0
俺はチラリと捨てられたうちわを見て、渋い顔をした。
「つまり会長は、俺の残りの人生はああだと言いたい訳か。そりゃまだわかんねーだろ?
この先、大学生になって社会人になれば、またスポットライトを浴びる日が来るかも知れないし」
『無理ね』
俺の希望的観測は、一言で叩き潰された。
『だって、別府君の今の地位だって自分で望んで得たものじゃなくて他人に引き上げて貰っ
たものじゃない。しかもそれすらもめんどくさがって真面目に仕事しない人が、今後の人
生で伸びる訳ないでしょう?』
「お、俺だって一応はそれなりにやってきたつもりなんだけどな。遊びたいの我慢してさ。
確かに会長や他の後輩に比べれば劣るかもしれないけど、それなりには認めてくれよ」
精一杯の抵抗が会長に通用するかどうかは分からなかったが、せめて俺は自分の主張を
する。しかし予想通り会長はフン、と鼻で笑うような息で返してみせた。
『そんなもの、最低限の義務を果たしたというだけで努力のうちになんて入らないわよ。
向上心のない人間はね。どれだけ人生が長くたって伸びる芽はないの。だから別府君は落
ちぶれ決定なわけ。分かる?』
「ぐ……」
何か言い返そうとしたが、勉強にせよスポーツにせよ、ノルマをこなす事しか考えてこ
なかった俺にはその術は無かった。
「た、確かにこれまではそうだったかも知れないけどさ。けど、今から自覚すれば改善の
見込みはあるんじゃねーの?」
『そんな漠然と、頑張らなきゃって思ったって人は伸びないわよ。明確な目標も人生設計
もない人にはね。貴方にそこまでの自覚はあるの? たった今、私に言われた程度で』
最後のはかない抵抗も粉々に打ち砕かれる。会長の非難はいつも俺の急所を的確に抉っ
てくるのだ。諦めて俺は降参したとばかりに首を振った。
「いや。ないな。でもだからっていったって、会長が言うようにそのまま落ちぶれる気な
んてないぜ。そりゃ、目立つ事はないかもしれないけど、せいぜい人並みな暮らしが出来
る程度にはしがみ付いてやるよ」
586 :
5/6:2014/03/21(金) 20:12:30.96 0
負け惜しみとも取れる言葉だとは自覚していたので、てっきりこれも会長から罵倒され
つつ否定されると思っていた。しかし、意外なことに会長は面白そうな顔つきで俺を見ていた。
「な……何だよ。何か俺、気を引くようなこと言ったか?」
俺の問い掛けに、会長は僅かに首を傾げてみせた。
『さあ? でも……そうね。私個人としては、ちょっと興味あるかもしれないわ。無能な
人間が必死に悪あがきする様子って、それはそれで見ていて面白いかもしれないし』
「会長ってさ。前から思ったけど、ホント性格悪いよな」
悪あがきも込めて一言嫌味を言う。しかし会長はそれすら全然平気なようだった。
『褒め言葉と受け取っておくわ。別府君に性格が悪いと思われるっていう事は、大多数の
人にとってはそう受け取られていないという事だし』
どうやら俺が何を言っても、会長をへこますどころか怒らせることすら出来ないらしい。
そういった意味では、ストレートに怒る後輩の文村の方がなんぼか扱いやすいのかも知れない。
「チェッ。まあ確かに会長が底意地悪い事言うのって俺くらいだしな。全く、他の男ども
にも少しは分けてやりたいぜ。この罵声をな」
脳天気に会長と一緒に過ごせて羨ましいなどと言ってるクラスの奴らとかにも少しはこ
の気持ちを味わわせてやりたいと真剣に思って言うと、それすらも会長に切って捨てられた。
『それは無理ね。別府君ほどやり込め甲斐のある人なんてそうはいないもの。これだけ私
をスッキリとした気分にさせるのも、貴方が無能でそのくせプライドだけは一人前だから
こそだわ』
俺にしてみれば、単に人並みを主張しているだけの気がするが、会長からすればそれす
ら増長しているように見えるらしい。
「分かったよ。もういい。これ以上寒い中罵声を浴びて平気でいられるほど俺はマゾじゃ
ないからな。もう帰るわ」
完敗した気分で会長に背を向けると、その背中に声が掛かった。
『せいぜい頑張って落ちぶれないよう無駄な足掻きを続けなさい。私にすら面白がられな
くなったら、それこそ貴方はおしまいなんだから』
587 :
6/6:2014/03/21(金) 20:13:06.99 0
グサリと止めに心臓を刺すような一言だったが、俺はその言葉である事に気が付いた。
振り向いて、その事を会長に問う。
「あのさ。一つ聞くけど、私にすら面白がられなくなったら……って事は、少なくとも今
の段階では、俺は会長にとって興味の対象だって事か?」
すると会長は僅かにではあったが、俺の目に分かる程度には不快そうな表情を見せた。
視線を逸らし、不満気に返事を吐き捨てる。
『……言ったでしょう? 貴方が落ちぶれないよう足掻く姿にはちょっと興味があるって。
まあ、落ちぶれた貴方を見るのもそれはそれで楽しいかも知れないけど…… でも、どち
らにしても、別府君にとってポジティブな意味で無いのは確かだわ』
それが照れたような仕草に見えたのは、きっと自惚れなんだろうと俺は自覚する。しか
し、単に会長の変わった観察眼の対象に過ぎないとしても、会長自身が楽しんで俺に興味
を持ってくれるのなら、何故かそれはそれでいいような気がした。
「分かったよ。ま、会長を飽きさせる事がないように、出来る限り長いこと足掻いてみせ
るとするよ」
その方が長く会長に見てもらえるからな、と俺は言外に付け足す。しかし意外にも、会
長の方からその言葉を補足してくれた。
『頑張りなさい。その方が、私も長く楽しめるわ』
それに俺は無言で手を上げると、背を向けて会長を残して公園から出たのだった。
もっともこの時は、これから会長との縁がどのくらい続くのかなんて、本気で考えてい
た訳ではなく、ましてや俺が想像していたよりも遥かに長く続くなど知り得るはずもなかっ
たのだが。
終わり
こんな何ともない日常もよいかと
ドS会長久しぶりだな
このシリーズ凄え好きだわ
お題:ツンデレの引越しを手伝ったら
590 :
1/2:2014/03/22(土) 16:59:07.03 0
そんなことよりちょっと俺の話聞いてくれよ
山々も緑づいてきて小春な日和、俺はツンデレとバッティングセンター行ったの
というのも女の子と遊ぶ場所なんか俺知らないからさ
二人で遊びに行くってなったらツンデレ俺に一任するで好きなところ行かせてもらうの
そんでツンデレに見られながらバッターボックス入ってね
久しぶりだから空振る思ったけどたくさんホームラン出したって
調子も出てきたから球速あげてカッコいいところ披露できたの
そんで見てるだけじゃつまらないだろうしツンデレにバトンタッチ
最初は、見てるだけでいい、言ってたけど次第にノリノリでバット振るようになってさ
すればツンデレ空振る時、あん、とか、やん、とか息漏らすの、エロいよね
そして帰り道、今日のお出かけは楽しかったか聞いたらツンデレはイヤイヤしてさ
女の子置いてきぼりだと彼女できても愛想つかされるよ、って言われたの
だからツンデレに愛想つかされないように今度のデートは遊ぶ場所ちゃんと考えるよ、って話
591 :
2/2:2014/03/22(土) 16:59:42.98 0
そんなことよりちょっと私の話聞いてほしいんだけど
山々も緑づいてきて小春な日和、私はアイツとバッティングセンター行ったの
というのも私異性とお出かけする所とかベタな事しか思いつかないからさ
アイツにお任せしたら思わぬ所連れてってくれるんで毎度お願いしてるの
そんでアイツ、いいとこ見せる、ってバットこすりながらボックス入ってさ、男の子だもんね
してキンと良い音響かせてさ、男の子だもんね
さらにアイツどんどんスピードあげてってさ、男の子だもんね
最後に、久しぶりだからたくさん飛んだ、って気持ちよさそうにしてさ、男の子だもんね
そしたらアイツ息荒げながら私にバット握らせてさ、男の子だもんね
だけど野球って思ったより難しくて、アイツがやったみたいに遠くに飛ばないのね
そして帰り道、少しは当たったけどほとんど空振った私は逆に鬱憤が溜まってね
今回はハズレだったなって、私も楽しめる所イきたかったなー、言ったらアイツ調子乗って彼氏ヅラしてきたの
まったく勘違いしないでよね、アンタだけじゃなくて私も気持ちよくなりたいだけなんだから、って話
気持ちよくなりたいとかえろいな!!!!1
4レス貰います
594 :
1/4:2014/03/24(月) 02:42:08.27 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ
『ごっめーん。今日、昼休み用事あるからさ。お昼、一緒出来ないわ』
両手を合わせて拝む友子に、静花はさして興味もなさそうに頷いた。
『いいわよ、別に。たまには一人で食べるのも悪くないし』
『そっか。ちょうど英子もちーちゃんも別お昼の日か…… 都合悪い時に、もう…… 悪
いわね、本当に』
『だから気にしないで。友子と二人だと、一点集中で私をからかってくるから、却ってウ
ザッたいなって思ってたし』
厳しい言葉で返されて、友子はガクッと膝を折る。
『委員長さ。もう少し残念がるとかしようよ。でないと友達無くすよ』
『フン。お昼ごはんのスパイスに人の恋バナ使ってからかうのを楽しみにしてるような友
達なら、いつ無くしても全然構わないわよ』
無表情で遠回しに非難の言葉を浴びせると、友子は苦笑して頭を掻いた。
『ま、ま、ま。いいじゃないの。それだけ幸せってことで。じゃああたし、そろそろ行か
なきゃ。じゃね』
軽く手を振って立ち去る友子を見送りつつ、静花は首を傾げた。
『……珍しいわね。友子が別府君との仲をからかわないなんて。いつもなら、ここで別府
君と仲良く二人でご飯の食べさせ合いっこでもしててよね、とか言ってくるはずなのに』
もしかしたら、自分の嫌味が効いたのだろうかという可能性を静花は信じなかった。こ
の程度で止めるのであれば、もうとっくに自分の周りは静かな環境になっているはずである。
――何かしら? この釈然としない感覚は……?
うつむき加減に首をひねってから、静花はハッとある可能性に気付く。同時に拒絶感か
らあわてて首を振った。
『ないないない。別府君との恋人関係をからかわれるのに慣れたなんて……そんな事、あ
る訳ないから』
教室だと、他にも一人でお昼を食べる自分をからかいにくる友人がいそうなので、静花
は急いで立ち上がると静かな場所を求めて教室を出たのだった。
595 :
2/4:2014/03/24(月) 02:42:40.09 0
しかし、静花の感じた違和感の回答は、意外と早く出た。それも、意外な形で。
――あれって……友子? それに、一緒にいる男子って……
静花はパッと校舎の陰に隠れて、友子の隣に座る男子の姿を確認した。最初はよく彼女
と一緒にいる山田という同じクラスの男子かと思ったが、すぐに背格好からそうではない
と分かった。それは明らかに、本来なら彼女の隣にいるべき男子だ。
――別府君が……何で、友子と……?
首を傾げつつその様子を眺める。二人で仲良く談笑しつつお昼を食べるなんて、まるで
恋人同士みたいだ。無意識に指を口に持っていき、グッと爪を噛む。
――まさか二人が……なんて、そんな事はないわよね。バレンタインデーの時だって、別
府君が友子からチョコを貰った様子なんてなかったし、大体友子には山田君がいるし……
しかしよくよく眺めていると、一見すれば恋人同士のような二人も、どこかズレて感じ
る。友子は自分たちと一緒にいる時と同じように飾り気のない大声の笑い声を上げている
し、タカシも遠目だからハッキリとは分からないが、どこかリラックスした雰囲気に見え
る。座っている間隔も少し開いていて、意識している恋人同士とはどこか違って見える。
――付き合っている訳じゃない……? なら、何を話しているのかしら……
その時、静花は自分が爪を歯で噛んでいることに気がついた。先端がボロボロになって
いるのを見て、慌てて口から手を離す。
『……私、何やって…… 苛立ってる? まさか、友子に嫉妬してるなんて……』
口に出して呟き、否定しようとしたが、心の中のモヤモヤ感は明確にその感情であるこ
とを肯定していた。
『……バカみたいだわ。私たちは単に付き合ってるフリをしてるだけ……って、そういう
ことにしているのは私なのに……』
ふと、ある疑いが彼女の心に去来する。タカシがまさか、友子にその事を打ち明けて相
談しているのではないかと。
『ううん。そんな事ないわ。そんな事したって、別府君に益なんてないはず……』
静花のタカシを信じる心がそれを否定した。この関係をただ解消したいだけなら、そう
自分に申し出ればいいのだ。或いはそれが出来ない理由にまで思い至ったが、静花はやは
り首を振る。
596 :
3/4:2014/03/24(月) 02:43:11.71 0
『ううん。別府君はバカじゃないわ。そんな裏切り行為をしたら、私が許さないって事く
らい分かってるはずよ』
一つ大きくため息をついて、彼女は意を決すると二人に背を向けた。
『いつまでも見てたって無駄なだけだわ。二人でこっそり会ってるのにはそれなりの理由
あってのことだろうし…… 理由までは聞けなくても、聞けばどういう状況かくらいはわ
かるわよ。別府君ってバカ正直だしね』
一人でグダグダ悩むほど無駄なことはない。そう思ってその場を離れ別の場所へ移った
静花だったが、結局お昼ごはんも午後の授業も、その事が頭を占めて離れないのだった。
『別府君。帰るわよ』
「え? あ、ああ。ちょっと待ってくれよ」
友人としゃべっていたタカシは、いきなり背後から静花に声を掛けられて慌てた。こん
な風に教室で静花から誘いを受けるなど珍しかったからだ。
『早くして。待たされるのが嫌いなの、分かってるでしょう?』
「あ、ああ」
慌てて荷物をバッグに詰め込むと、一緒にしゃべっていた友人がからかう。
「よ、別府。もう尻に敷かれてんのかよ」
「今からそんなじゃ、将来苦労すんぞ」
「夜も委員長が上なのか? 私がリードするから、とかって」
下品な冗談にタカシは睨み返した。
「うるせえよ、お前ら。まだそんな段階、遥か先だっての」
すると友人たちがドッと笑い出す。
「何だよ、タカシ。まだ穴掘り苦労してんのかよ? 付き合ってそろそろ結構経つじゃん」
「ああいう真面目で固そうなタイプって、臆病なだけで意外と性に対する知識だけはあっ
たりするからな。優しく耳元で褒め言葉連発すれば、コロッといけるかもよ」
ニヤニヤ笑いつつ軽く友人の一人がタカシを肘で小突く。彼は一つため息をつくと、そ
れを腕で払う仕草をする。
597 :
4/5:2014/03/24(月) 02:44:03.03 0
「悪いけどもう行くぞ。委員長、待たすと機嫌悪くなるからさ」
「そりゃ大変だ。怒らすとまた一歩、初エッチが遠のくからな」
ゲラゲラと笑う友人たちを尻目に、タカシはバッグを持って席を立った。
「じゃな。また明日」
「おう。んじゃな」
軽く手を上げて挨拶すると、早足で先に廊下に出ていた静花の所に向かう。廊下の窓か
ら外を向いていた彼女に声を掛けた。
「悪い。お待たせ」
すると静花は、横目でジロリと彼を睨み付けた。
『遅いわよ。待たされるの、嫌いだって言わなかったっけ?』
「ゴメン。出来る限り相手しないようにはしていたんだけどさ」
『どうせまた、くだらない話ばかりしていたんでしょう? 男子ってば、ホント下品な話
しかしないんだから』
そのまま静花は、まるで彼を置き去りにするかのように歩き出した。早足で歩く彼女の
そばに付き添うかのようにタカシは急いで追いつくと、そのまま並んで歩く。特に静花の
機嫌が悪いとか、そういうことではない。二人で帰る時はいつもこんな感じなのだ。校門
を出るまでは。
「それにしても、珍しいな」
校門から離れ、生徒の数も若干減ってきたところでそろそろいいだろうとタカシは声を
掛けた。
『えっ?』
静花は驚いたような声を小さく上げ、それから歩調を緩めてタカシの方に顔を向けた。
『珍しいって…… 一体何が珍しいって言うの?』
「ああ。委員長から帰ろうって教室で誘ってくれるのがさ。いつもは周りからからかわれ
るのが嫌で、廊下で待ってるだけじゃん」
『何だ。別府君がくだらない話にうつつを抜かしてて放って置いたら時間掛かりそうだか
ら、それで急げって意味で声掛けただけよ』
「そういうことか。でも、何で今日に限って帰るのを急いたりするんだ? 何か用事でも
あるとか?」
598 :
5/5:2014/03/24(月) 02:45:27.81 0
タカシの疑問に、静花はためらうように顔を背け、うつむき加減に前を見て少しの間無
言で歩く。しかしやがてそのまま、彼女にしては珍しく、自信のないようなか細い声でボ
ソリと答えた。
『……別府君に聞きたいこと……っていうか、確認したいことがあったから……』
「俺に?」
聞き返すタカシに、静花はコクリと頷いた。そして、覚悟を決めると足を止め、体ごと
彼に向き直った。
『……今日のお昼休み。友子と一緒にご飯食べてたでしょ? 一体、何を話していたの?』
続く
ちょっとはみ出てレス数オーバーしてしまった。
599 :
ほんわか名無しさん:2014/03/26(水) 14:28:28.22 0
移転か
うにゅー
あ
602 :
ほんわか名無しさん:2014/03/27(木) 20:39:30.08 0
お題
つ・春なので新しいことにチャレンジするツンデレ
604 :
1/5:2014/03/28(金) 00:56:20.68 0
・男から今日は君を帰さないよ、と言われたツンデレ 〜その2〜
「へ? 吉仲と俺が……って?」
はぐらかすような返事が気に入らなくて、静花はタカシを思いっきり睨み付けた。
『ごまかさないで。私はちゃんと見たんだから。中庭の外れで、貴方と友子が座ってご飯
食べてるの。今まで一度も二人きりでご飯食べるなんて、そんな事なかったわよね? あ
れは一体どういうことなの?』
するとタカシはマジマジと静花を見返した。詰問されているのに、彼の表情には後ろめ
たさや申し訳なさはなく、やや嬉しそうな微笑が浮かぶ。
「委員長さ。もしかして……嫉妬してんのか? 吉仲に」
ずっとあくまで恋人のフリだと言われ続けていたが、もしも静花にそんな感情が芽生え
たのだとしたら、この後の進展に期待が持てるかもしれない。タカシには疑われたことよ
りも何よりも、その気持ちの方が大きかった。
『んなっ…… ななな、何バカな事言ってんのよ!! 嫉妬とか……そんなの、有り得る
わけないじゃない!! 大体そんな……私たち、付き合ってるフリしてるだけなのに、そ
んな事思う訳ないでしょう?』
二人の楽しそうな様子を目にして心の中に芽生えた苛立ちの感情。それを振り払うかの
ように、静花はムキになって否定する。しかしそれが、却ってタカシにとってはより自分
の考えを確かなものにしてしまっているとは彼女は気づいていなかった。
「大丈夫だよ。そんな浮ついた話じゃないのは確かだから。ちょっと相談事があってさ。
ただ、みんなには聞かれたくなかったから、お願いして昼に付き合って貰ったんだよ」
『相談事って……何よ? 私にも知られたくないようなことなの?』
大切な話を自分ではなくて友人に振られることも、静花にとっては面白くない事だった。
しかも、その問いにタカシはためらうことなく頷き返す。
「委員長にも知られたくないっていうか、むしろ委員長には一番知られたくないこと……かな?」
タカシの言葉も、余裕を持った態度も気に入らなくて静花はその場で彼に食って掛かった。
605 :
2/5:2014/03/28(金) 00:57:23.87 0
『何よそれ? 意味分からないわ。私に知られたくないことって何なのよ? やっぱり後
ろ暗いことなんじゃないの? ごまかしてないでハッキリ教えなさい』
普段のクールな態度もどこへやらかなぐり捨てて詰め寄る静花の態度を嬉しく思いつつ
も、タカシはそれを答えるわけには行かず、体を後ろに引くと両手を合わせて拝むように
謝罪する。
「ゴメン。今はその……まだちょっと言えないんだ。そう遠くないうちに、必ず答えるか
らさ。だからもうちょっとだけ待ってくれよ」
『いいえ。待たないわ。もし答えないなら、答えるまで貴方とは口利かない。一緒にお昼
も食べないし、放課後だって一緒に帰らないんだから』
拗ねた子供のような態度を取る静花に半ば困りつつ、半ば面白いと思いつつタカシは一
つ忠告する。
「でもさ。それで俺らが喧嘩してるように周りから見られたら、また話のネタを提供する
ことになるんじゃね? 吉仲とかに知られたら、またいらないおせっかい焼かれるってこ
とになるだろうけど、それでもいいのか?」
『グッ……』
静花は思わず呻いた。バレンタインデーも無事に乗り切ったことで、からかわれはした
ものの最近は自分たちの付き合い方にああだこうだと差し出がましい忠告は受けなくなっ
ている。しかし、タカシが言うようにもし二人が喧嘩したなんて知れた日には、友人たち
はもとより、下手したらクラスの女子全員から余計な口を挟まれかねないと、それは容易
に予想出来た。
『……分かったわよ。教室では、普通に振舞ってあげる。お昼も今までどおり、週の半分
は貴方と食べるわ。でも、答えを聞くまでは二人きりの時は絶対に口を利いてあげない。
これならどう?』
挑戦的に静花は条件を付け直した。しかし、タカシの立場からすればそう言われようが
苦笑いするしかない。
「うーん…… これならどう?って言われても、俺からしてみれば、少し我慢して返事を
待って貰えるのが一番いいんだけど」
『そんなの嫌よ。ちゃんと教えるか、無視されるか。どっちか選びなさい。それ以上の選
択肢はないの。分かる?』
606 :
3/5:2014/03/28(金) 00:57:54.81 0
タカシは困って頭を掻いた。ここで答えたら、せっかくこっそりと友子に聞いたのが無
駄になってしまう。
「ゴメン。どうしても、今委員長に教える訳には行かないんだ」
タカシは丁寧に頭を下げて許しを請おうとした。しかし、静花からすればどんなに頭を
下げられようが、二人だけで秘密を共有して自分には教えないなどと、許せるわけがなかった。
『ああ、そうなの。分かったわ。別府君にとっては、私との仲よりも友子との秘密を守る
方が大事なんだ。それならそれでいいわ。別に私たち、そもそも付き合ってる訳でも何で
もないんだしね』
プイ、と体ごとタカシから背けると、静花は早足で歩き出そうとした。その時、携帯の
着メロがメールの着信を告げる。
『何よ、こんな時に……って、友子!?』
メールを開いた静花は、驚きの声を上げた。タイトルは、ゴメン……とだけ。両手を合
わせて謝っているキャラクターの絵が最後についている。静花はそのまま本文を目で追った。
[今頃私とのことで別府君を問い詰めてると思うけど、許してあげて。別府君もさ。色々と
悩んでいるんだよ。初めて女の子とお付き合いするんだしね。そこは彼のプライドも尊重
して、そっとしておいてあげて。私は単に相談に乗っただけだからさ。嫉妬しちゃダメだよ]
『何なのよ。このメールは』
そのまま彼女は、携帯の画面をタカシに見せた。タカシはその文をザッと目で追う。そ
れから手で目を押さえると小さくため息をついた。
「吉仲のヤツ……出来ればそっとしておいて欲しかったのに……」
『で? 一体何を相談したのよ? 私が扱いにくいとかそういう事? 悪かったわね。癇
癪持ちでへそ曲がりで嫌味ったらしい女で』
「いやいやいや。そういう事じゃないって、ホントに。委員長の性格がどうとかじゃなく
て、俺のスキル的な問題だから」
詰め寄って問い質す静花を何とかやり過ごそうと、タカシは必死で無難な線に落ち着か
せようとするが、静花はややズレた責めをする。
607 :
4/5:2014/03/28(金) 00:58:26.43 0
『何よ。一切フォローなしなの? 扱いにくい女だってのは認めるんだ。ただ、そういう
彼女を御するスキルが無いのは自分のせいだからって言いたいわけ?』
「いやいやいや。委員長が性格悪いとか言ってないし、そもそも相談内容もそういう事じゃ
ないから」
恐らくちゃんと説明しないことには延々と静花の怒りは続くだろうとタカシは腹を括っ
た。しかしそれでも、今日の話の内容を今ここでバラすわけにはどうしてもいかなかった。
『じゃあどんな事を相談したのよ? 言えないなら、やっぱり私に後ろ暗いことだって思うわよ』
「それは無理。だけど絶対いずれ話すし、その時はきっと委員長も許してくれると思うから」
キッパリと言い切るタカシをジッと見つめ、静花はいくら聞こうがどうあってもタカシ
は答えないだろうと見て取った。一つ、ため息をつく。
『分かったわよ』
タカシは安堵して胸を撫で下ろした。このまま本当に、答えるまで解放されなかったら
どうしようかと、真剣に悩んでいたからだった。
『今はこれ以上聞かない。別に無視とかもしないわ。友子にバレるし』
タイミングよくメールを送ってくる彼女のことだから、自分とタカシの間の仲が少しで
もギクシャクしていたら、恐らくあっさりと看破するだろうと彼女は見て取った。もしか
したら、わざと自分が寄りそうな人気の無い場所を選んで彼を誘ったのかもしれない。自
分が見ていたのもきっと知っているのだろう。そこまで考えて静花は、もはや呆れた感情
すら通り越してしまった。
「じゃあとりあえず、今は話さなくてもいいって事で、許して貰えるんだ」
タカシが確認すると、静花はキッパリと首を振った。
『いいえ、許さないわ』
「は……?」
ポカンとするタカシに、静花は腰に手を当て胸をそびやかして彼を睨み付けた。
608 :
5/5:2014/03/28(金) 01:00:10.95 0
『今日のところは見逃すってだけよ。だから話す日が長くなれば長くなるほど、私の中で
の怒りと苛立ちは増え続けていくってことは認識しておいてね。正直、隠し事をされるよ
うな信頼関係しかないんだったら、この関係も見直さざるを得なくなるし』
「だ、大丈夫。ホント、近いうちに絶対分かるからさ。そんな一ヶ月も二ヶ月も放置する
とかありえないから」
作り笑いを浮かべつつ、タカシは頷いた。実際その日はもう決まっているのだが、それ
を静花に悟られれば、全てが崩壊してしまうかもしれない。
『……本当よね? 私、見かけによらず気は短いから。よっく肝に銘じておきなさいよ』
そう言い置いて、静花はプイと体を背けた。とりあえず乗り切ったことに安堵したタカ
シは、すぐにその考えを改めた。今はあくまで、猶予期間を置いただけで、恐らくしばら
くは自分への当たりは厳しくなるのだろうと。というのも、結局その日は静花は一言も口
を利くことなく、素っ気無くタカシと別れたからだった。
続く
容量オーバーがそろそろなので、多分次スレで
海堂尊(チームバチスタシリーズ書いてる人)の輝点炎上という小説が
ヒロインがクール系ツンデレっぽい感じで、ついニヤニヤしてしまって電車の中では読めない件
ち「…クール…ということは…私も…守備範囲に入ってしまうのか…あー…やだなぁ…」
お題
つ・新歓の準備に勤しむツンデレと男
もうすぐ容量いっぱいらしいから、埋め
vipでやってた時にはよく、最後なら尊さんとイチャイチャできる。
とか書き込んでたなぁ、という埋め
埋めと言いつつかつみんのおっぱいに顔を埋める
616 :
1/2:2014/04/07(月) 05:45:29.90 0
友「むぅ、かなみとタカシ君の関係、なかなか進まないわねぇ」
山「幼なじみ故の壁の高さかなー」
友「いろいろ試してきたけど、なんとなく良い感じになっても、次の日になったら元に戻ってるし…」
山「人間とは変化を恐れる生き物なりー」
友「よーし!!こうなったらプランBに移行するわ!山田、ちょっと出かけるわよ!」
山「え?う、うん」
…で
山「…と、友ちゃん」
友「何よ」
山「こ、これがプランBですか?」
友「…そ、そーよ。なんか文句あるの?」
山「いや、友ちゃんがボクの腕に抱きついて歩いてるだけじゃ…」
友「それで良いの!!」
山「…これがどうしてタカシとかなみちゃんの関係進展に影響するの?」
友「つまりね、私と山田がラブラブに見える→かなみとタカシ君が対抗意識→関係進展、ってわけよ!」
山「は、はぁ…ほんとに効果あんのかな?っていうかこれってタカシとかなみちゃんが見てないと意味ないんじゃ…」
友「壁に耳あり障子に目ありって言うでしょ。どこで見てるかわかんないんだから、今日から外歩くときずっとこうだからね!!」
山「えぇ!?」
友「…私だってほんとはアンタとなんて嫌だからね。かなみとタカシ君のため、我慢しなさい」
山「…はぁ、しょうがないなぁ…(…うぅ、なんか必要以上に腕に身体押し付けてくるなぁ…柔らかいものが…柔らかいものが…)」
友「あー、山田とこんなことしなきゃいけないなんて、やだなぁ♪(えへ…かなみたちの関係進展のためを装ってイチャつく…プランB大成功ね♪)」
617 :
2/2:2014/04/07(月) 05:46:43.35 0
…で
友「んー、やまだぁ♪」すりすり
山「ちょ、ちょっと友ちゃんいくらなんでもくっつきすぎだよ…超周りから見られてるんだけど…」
友「これも関係進展のためよ。我慢しなさい♪」すりすり
山「か、勘弁してぇ〜」
タ「…山田と友子、すごいな。いつの間にあんな関係に」
か「人目憚らずイチャつくなんて、友子がまさかそんなに山田くんのことが好きだったなんて」
タ「あの2人初めて会ってまだ2年くらいだろ?もう付き合いだしたのか…」
か「(…片や私達はもう十何年にもなる幼なじみなのに、まだ付き合ってすらいない…)」
タ「…な、なぁかなみ?」
か「へ?な、なによ」
タ「きょ、今日さ…うちに来ないか?えと、ちょっと話したいことがあるんだけどさ」
か「へ、へぇ、偶然ね。私もあんたに用があったのよ」
タ「そ、そか。じゃあ今日放課後、うちに来てくれ」
か「う、うん」
…意外と効果は有ったようです
よく勘違いしてるあほ
「あっあんたのために作ったんじゃないんだからね!」←これツンデレじゃないですから
最後ならかなみんとベッドでイチャイチャ
最近の辞書にはツンデレが載ってるらしいね
ツンデレの意味が知りたくてググったらこのスレに出会った身としてはちょっと感慨深い
辞書にはどう解説してあるのかむしろ知りたい