夏休みを利用してほの板のコテハンで小説を書きます。
感想を聞かせてください。
2 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:16
やだ
期待age
回答早っ!!
5 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:17
夏の終わりのせつなさを感じさせるような小説にしてくれ。
6 :
ほんわかななふしさん ◆JQw0yy/u0. :03/07/25 15:18
それは、夏にしては涼しすぎるあるひのことだった…
7 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:18
さぁ大きな声で
「感想」
8 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:20
主人公の設定が難しそうだな
9 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:20
さっおっきな声で
感想いも
10 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:21
ろーるぷれいんぐ方式で
11 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:22
サスペンスで
12 :
ほんわかななふしさん ◆JQw0yy/u0. :03/07/25 15:24
「私」は夏休みを利用して、とある場所に来ていた。
別に、実家があるとか心霊スポットがあるとか
そういうのではなく、ただ、ネットで見たその地の
姿がどこか気にかかり、きているのだ。
13 :
るいこすた ◆Rui/LLxYYs :03/07/25 15:24
雨があがったばかりでアスファルトの匂いがした。
そんな夏の日の出来事・・・
14 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:24
二時間もので
15 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:25
被った…鬱
僕の名前は曹操。
部屋の模様替えをしていたら古いアルバムが出てきた。
いや、出てきたというのは適切じゃあない。このアルバムの
存在はいつも僕の頭の中にある。どこに隠してあるのかを
忘れたことなど一度もない。
18 :
ほんわかななふしさん ◆JQw0yy/u0. :03/07/25 15:26
19 :
ほんわかななふしさん ◆JQw0yy/u0. :03/07/25 15:27
始まりますた。
20 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:27
曹操キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
22 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:29
>>17 古いアルバムがやっと出てきた
だろ。正しい表現は。
23 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:29
今日が勇者の旅だちの時でした、
書斎机にそれを載せ、慎重にページをめくった。
問題のページが出てくると僕は手を止めた。そこには写真と
新聞の切り抜き記事が貼ってある。写真に写っているのは、
白い灯台だ。
25 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:30
その名前は?
26 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:30
とにかくレスはイイから今日の分を読ませろてめーらシャラップ
27 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:30
お母さんは勇者に皮の服を手渡した。
28 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:32
灯台キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
29 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:33
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
俺様用しおり
\ │ /
/ ̄\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
─( ゚ ∀ ゚ )< 読んだ読んだ読んだ!
\_/ \_________
/ │ \
∩ ∧ ∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\∩ ∧ ∧ \( ゚∀゚)< 読んだ読んだ読んだ読んだ!
読んだ〜〜〜〜! >( ゚∀゚ )/ | / \____________
________/ | 〈 | |
/ /\_」 / /\」
 ̄ / /
 ̄
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
30 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:34
灯台ももって、守備力があがりましたテロテロッロ〜♪
あれからもう十三年になる。この四月で僕は三十一になったし、
川崎は三十二になったはずだ。
しかしあのことを誰かに話すわけにはいかなかった。
たとえ今も明瞭に思い出せる出来事ではあっても、だ。
十二年前の秋、僕は十八歳だった。そして川崎は十九歳だった。
32 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:35
>>30 守備力よりもその文章力をどうにかしろてめーは
33 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:37
ここは一レスごとに感想を述べるスレなのか??
34 :
ほんわか名無しさん:03/07/25 15:37
川崎キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
同級生なのに川崎のほうが一つ年上なのは、二人の生年月日が
原因であって、決して彼が浪人や落第をしているわけではなかった。
彼の誕生日は四月二日で、その翌年の四月一日に僕が生まれた。
つまり同級生のなかで川崎はいちばん年上であり、僕はいちばん
年下だったのだ。
僕と川崎が幼稚園から大学に至るまでまったく同じ学校に通うこと
になったのには、お互いの家が近所という物理的な理由の他に、
何か超自然的な力が関与しているとしか思えなかった。
しかも大学では学部こそ違え、彼が籍を置く社会学部と僕のいる
工学部とはなぜか校舎を共用しており、結局のところ顔を合わせる
回数は高校時代までとたいして変わらなかったのだ。
むろん二人の仲は悪くなかった。一緒に行動することも多かった。
しかし親友と呼べるような間柄ではなかったことも、またたしかだ。
当時川崎はよく、「俺たちのようなのを、いい関係っていうんだろうな」
といっていた。
いい関係。それはある意味では正しく、ある意味では正しくない
ともいえる。なにしろ僕たちの友人関係は、もつれた糸のように複雑で
長い実績や過去によって仲介されていたのだ。
そんな僕たちが旅行に出ることになった。大学一年の秋のことだ。
秋といっても夏休みがおわったばかりで、相変わらず何日にかに
一度は異常な残暑に見舞われていた。
もともとは僕一人で旅行するつもりだった。学制時代の思い出を
作りたかったし、少しは精神的にも逞しくなれるのではないかと
思ったのだ。
この話をどこで聞きつけてきたのか知らないが、川崎が首を
突っ込んできた。自分も一緒に行くといい出したのだ。それでは
一人旅にならないと僕が難色を示すと、もちろん行動は別にするという。
「お互い、正反対のルートを辿るんだ。で、後からどっちが面白い
旅行をしたか、競争しようじゃないか」
「どうしてそんなことをするんだい」
「どうしてってことはないさ。ゲームだよ、ゲーム。かまわないだろ。
俺も偶然同じ方向に旅行すると思ってくれればいい」
「それはまあ君の旅行を中止させる権利など僕にはないけどさ」
おかしな話だった。だがなぜ彼がこんなことをいい出したのか、
僕にはなんとなく理解できた。たぶん彼は僕が一人旅などという
ものを思いついたこと自体、あまり面白くないのだ。
川崎の人生のシナリオの中では、僕は気が弱く、彼の助けがなければ
何もできない男を演じつづけることになっているにちがいない。
行き先は東北方面と決めた。周遊券を駆使して、予定を立てず、
できる限り多くの場所を回るつもりだった。
時期的に考えて、今ならどこもすいている、というのが僕の
読みだった。日本の学生がいくら勉強不足だからといっても、
後期授業開始時ぐらいはおとなしくなるものだ。僕にしても、
もし自分にとって極めて重要な授業が、この時期に含まれていたなら、
こんな時期に旅行しようなどとは思いつかなかっただろう。
それに自分でいうのもおかしいけれど、日ごろからきちんと講議に
出ているし、ノートだってきっちりと取っている。試験前にあわてる
必要なんてないのだ。むしろ問題は川崎のほうだと思ったが、
自分からこんなことをいい出した以上は、なんらかの解決策が
あるのだろう。
彼にノートをコピーさせてあげたり、試験当日に隣に座って、
彼が見やすいように答案用紙をちょっとずらしてやるといった
ことをする人間が、社会学部内にいるのかもしれない。
高校時代は、むろんそれらは僕の仕事だった。
別行動というこだったが、最初だけは同じにした。同じ列車に
乗って出発したのだ。ただし降りる駅が違う。僕は東北を南から
攻めていくつもりだったが、川崎は一気に青森まで行くといった。
「今夜泊まるところは決まっているのかい?」
列車が走り出してしばらくしてから川崎が聞いてきた。
「今夜だけはね。駅前のビジネスホテルを予約してあるんだ」
すると彼は鼻からふっと息を出し、小馬鹿にしたように笑った。
「一人旅をするのにホテルなんか使うなよ。まあそのへんが、
お坊っちゃんの限界だな。俺なんて全然当てがないんだ。
だけど心配してない。いざとなれば駅の待ち合い室でだって
寝られるかならな」
お坊っちゃんなどといわれて、僕は少しむっとした。
「僕だって明日からは野宿覚悟さ。その準備もしているし」
「そうかい。でもやめたほうがいいぜ。あれは日ごろ体を鍛えて
おかないとつらいからな」
「少しぐらいは平気さ」
「まっ、あまり無理しないことだ。一人旅なんて柄じゃないんだからさ」
川崎は僕の肩に、ぽんと手を置いた。
それからしばらく僕たちは、大学やサークルの話などをして
時間を潰した。「僕たちは」といったが、実際には川崎がほとんど
一人でしゃべっているのだった。彼はテニスとスキーの同好会に
所属している。そこでのさまざまな出来事がいかに楽しさに満ち
溢れているかを自慢し、自分が今まさに理想的な大学生活の
真っ只中にいることを、僕に思い知らせようとするのだった。
思い知らせる−−本当にそのとおりだ。川崎は僕に思い知らせよう
として、今度のことを考えついたにちがいない。彼は僕が自信を
つけることを苦々しく感じているのだ。
そして僕は回想する−−−。
そんなことよりさ、
「リレー小説inほの板 第4巻」を立てるってのは?
55 :
ほんわか名無しさん:03/07/26 02:30
なるほど
\__ _______
|/ ,,,,,,, _
/'''' '';::.
/二⌒"''ヽ l ≡ );;;: / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
〈i `'ヾ | ≧〒≦ :;/) | ツマラン!!
|こi .iこ ヾl iー/ i ー' k.l < ギースの話は
l / !.ヽヽ i6. l ノ‐ヘ iJ | ツマラン!!
. l,〈+ヽ ノ U乞 し ノ \_______
ヽー '/ `ー ‐
57 :
◆4x4Q7kxTSk :03/07/26 21:39
僕はいつも自信がもてなかった。
自信を持てず、いつも人の後ろに隠れていた。
そしてその人というのはたいてい川崎で、そのために彼は友人に
頼りにされる器の大きな青年という役どころを演じることができた。
いつからこういう関係が成立してしまったのだろうと僕は回想した。
やはり幼稚園のときからだろうか。たしかにあのころ僕は、川崎の後ろに
隠れてばかりいた。なにしろ僕は皆のなかでいちばん年下で、当然身体も
小さかった。
それに較べて川崎は、上級生が一人交じっているのかと思えるほど
大きかったのだ。
誰もが川崎に一目置いていた。彼が命令すれば、全員良く鍛えられた
兵隊のように忠実に働いた。だかそんなふうに一人が頑張れば、当然
不満は溜まる。
皆はその不満を、一番弱い者に向けた。つまり僕だ。そこで僕は
自分の身を守る必要性から、川崎の後ろにぴったりとくっついて
いなければならなくなった。そして川崎はそういう状況を、とても
気に入っていた様子だった。
こうした関係が、その後も延々と続くのだった。小学生になり、
さらに中学に上がってもだ。僕の身体が少しずつ皆に追いつき、
逆に川崎の身体がクラスで特に高い方でもなくなってからも、
この力関係に変化はなかった。
62 :
ほんわか名無しさん:03/07/26 21:53
( ´,_ゝ`)
川崎はいつもリーダー役で、僕を助手か子分みたいに扱うのだ。
馬鹿げたことだが、正直なところ僕もその状態に甘んじていた。
彼の後ろについていれば、いろいろと楽しいこと――不良行為とまでは
いかないが、実行するのに多少の勇気を必要とする遊びなど――
に出会うことができたからだ。
高校生になり、本格的に異性を意識しはじめるようになると、
彼は僕を今までとは別の形で利用することにした。それはつまり
引き立て役だ。僕という男性的魅力に乏しいサンプルを常に脇に従える
ことにより、自分の長所がより際立つだろうと考えたのだろう。
事実その当時僕は何度か、川崎に連れられて女の子二人組とデートをした。
一方の女の子が彼のお目当なわけで、当然僕はもう片方の女の子の相手を
しなければならなかった。その場合僕が相手をする女の子もまた、
引きたて役という、惨めな役目を負わされていたようだった。
だが今落ち着いて考えてみると、彼が僕に引きたて役をやらせたのは、
単に異性だけを意識してのことではなかったのではないかという気が
してくる。というのは、中学時代まではリーダー役だった川崎も、
高校に入ってからはめっきりと精彩を失っていたように思えるからだ。
勉強の成績にしても、スポーツにしてもだ。少なくとも誰も彼を
恐がらないし、彼の意見を特別に尊重するという雰囲気もなかった。
要するに平凡な高校生の一人だったのだ。
そういう事態が、自己顕示欲の強い川崎に耐えられるはずがない。
彼は自らの地位の低下を際立たせないために、相対比較の対象をそばに
置こうとしたのではないか。それが僕だ。僕が依然として川崎の従臣で
ありつづければ、見かけ上彼は以前の彼と変わらない様に見える。
少なくとも彼自信は、それまでと同じように優越感を味わいつづける
ことができるのだ。
列車は山の中を走っていた。
川崎は目を閉じていた。自慢話に疲れたのか、自慢の種が尽きたのかは
わからない。その横顔を眺めていると、気配を察したのか目を明けて
こちらを見た。
「なんだ、どうかしたか?」
「いや。眠ってたのかい?」
「まあな」彼は両まぶたを指先で押さえた。
「あっという間に眠っちまったぜ。旅のときはいつもこうだ。どこでも
眠れるっていうのが、俺の自慢でね。神経が図太くできているんだろうな」
また自慢か、僕は不快さを通り越して、苦笑したい気分だった。
「おまえも眠ったのか?」
「いいや、とくに眠くもないんだ」
「そうかい。しかし眠れるときに眠っておくのが、疲れないコツだぜ。
といっても無理かな。なにしろおまえは神経質なところがあるからな
今回も睡眠薬持参かい?」
「まあいちおう」
「ふうん、そんなんで大丈夫かねえ」川崎は片方のほほを曲げて笑った。
「まあ俺にしても、バーボンという薬を常にリュックに入れてあるけどさ。
本物の睡眠薬持参で一人旅とは冴えないな」
さっそくジャブを放っているのだ。気にするな、と自分にいい聞かせた。
今回の旅の最大の目的は、僕自身の精神面の強化だが、その裏には
川崎との間に成立している十数年に及ぶ関係を清算したいという願望が
含まれていた。自分に自信がつけば、川崎に対して根拠のない劣等感を
抱くこともなくなるだろうと考えていたのだ。
しかしたぶんそのことが彼には気に入らない。常に優位に立ってきた
相手が、自分の支配化から飛び立って行くことを許したくないのだ。
だから今度のことを思いついた。彼は旅行の後で僕にこういうつもりだ。
同じように旅をしても、自分ならばこんなにも冒険とスリルに満ちた
内容にすることができる、それに較べておまえのはとうて一人旅と
呼べる代物ではない、と。そうすればいままでの精神的な立場に
ヒビが入ることもない。と考えているのだろう。
負けてはならないと僕は思った。決してこの旅を、単なる敢行地巡りに
終らせてはならない。
76 :
◆4x4Q7kxTSk :03/07/26 22:47
上野から約五時間、仙台駅に到着した。座席から立ち上がると、
リュックサックを担いだ。
「じゃあ行くから」
「ああ、しっかりな」
川崎は右手を上げた。自信たっぷりの顔に、やや底意地の悪そうな
表情がにじんでいることにはなんとも思わなかったが、通路の途中で
振り返ったとき、彼が一瞬不安そうな色を見せたのは意外だった。
そして僕は歩き出した―――。
た。止めと
だ。止めが多いので気をつけましょう。
作者多忙のためしばし休止。
あきらめ悪く保守
(^^)
81 :
ほんわか名無しさん:03/08/06 02:39
ほすあげ
待ってみよう。。保守。
仙台で一泊しあと、松島を見て、石巻まで行った。他に泊まるところが
見つからなかったからだ。翌日には平泉を通って花巻まで、宮沢賢治の
旧家の近くにある民宿に泊まる。
この夜あたりから焦りを覚えはじめた。
やはり単に観光地を回っているだけだということに気づいたからだ。
何のハプニングもない。同じように一人旅を楽しんでいる女子大生と
知り合いになって、夢のような一夜を過ごすということもないし、
地元の人間と親しくなって秘境を案内してもらうということもなかった。
川崎は今ごろどうしているだろうと、布団の中で宿の天井を見つめ
ながら考えた。彼は女の子に声をかけることに慣れている。それが
成功しやすい美形でもある。もしかしたら、今ごろはすでに一人旅では
なくなっているかもしれなかった。
そいういうことでも当然彼は自慢の種にするだろうし、もしそんな話を
聞かされたら、やはり僕は彼のねらいどおりに自信を失ってしまうだろう。
とりあえず明日は日本海側に行ってみようと思った。日本海の荒波を
眺めていると小さなことに拘るのが馬鹿ばかしくなるというではないか。
もしかしたら自分を変える何かがあるかもしれない。
マッテマシタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
キタ━*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*━!!!!!
89 :
ほんわか名無しさん:03/08/10 10:01
ワラタ
列車で日本海側に出ると、とある駅で降りた(とある駅としなければ
ならないのには、もちろん理由がある)そこからバスに乗る。いったい
何十年使っているのだといいたくなるような車体で、ほとんどすべての
座席はシートが破れていた。
舗装もひどくて尻が痛くなるほど揺れる。僕のほかに乗っているのは、
一目で地元の人間とわかる数名と、二人の若い女性旅行者だった。
OLという感じだ。川崎なら迷わず声をかけるだろうなと思ったが、
僕の場合そう簡単にはいかなかった。
相手が二人ではどうしようもないだとか、よく見るとさほど若くも
ないとか、消極的な考えばかりが頭に浮かぶのだ。そして結局
タイミングを逃し、バスは目的地に到着してしまった。
着いたところは日本海に突き出た小さな岬だった。周りを見ても
とくに何もない。ただっ広い野原に灯台がにょきっと立っているだけだ。
そしていかにも会社の慰安旅行でございますという調子の団体が、
疲れた足取りでぶらぶらと歩いていた。
僕は岬の先端まで歩いて海を見下ろした。巨大な岩がごろごろしていて、
波しぶきが激しく上がっている。なるほどこれが日本海かと思ったが、
期待していたような衝撃も感動も訪れないのでいささかがっかりした。
灯台の前を通ったとき、バスで一緒だった女性二人組が中に入って
いくのが見えた。それに誘われて足を踏み入れた。どうせほかに見るべき
ものもないのだ。
入ってすぐのところに受付窓口のようなものがあって、そこで生意気にも
入場料をとっていた。
窓口にいたのは、眼鏡をかけた三十過ぎぐらいの色の黒い男性だった。
つり銭を寄越すとき、その腕が異様に太いのが印象に残った。
螺旋階段を上がったが、灯台の上から眺める景色も、予想したとおり
格別ダイナミックなものでなかった。ただ遠くがよく見えるという程度だ。
それでも反対側にいる女性たちの会話が面白くて、そこにとどまって
いたが、彼女たちがいなくなってからは、僕がここにいる意味はなく
なってしまった。僕は灯台を一回りしてか下りることにした。
こんなところでぐずぐずしている暇はない。
考えてみたら、今夜泊まる場所も決まっていないのだ。
階段を下りようと思ったとき、
「一人旅ですか」
と横から声がした。見ると、先ほど窓口にいた男性が、手すりにもたれた
格好で僕のほうを見ていた。
背が高く、がっしりとした肉体をしていた。白いワイシャツのボタンが
はじけそうなほど胸板も厚い。その厚い胸の前に、ごつい双眼鏡を
ぶらさげていた。
100 :
ほんわか名無しさん:03/08/12 17:29
100age
☆期待保守☆
保守です
☆必殺保守☆
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
保守
☆連夜保守☆
107 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/18 22:23
はいと答えると、彼は眼鏡の奥の目を細めた。
「それはうらやましいな。そういうことができるのも、若いうちだけ
ですからね。学生さんでしょう?」
「そうです」
「大学の…」
彼は腕組みをして、僕の足先から頭までをさっと眺めた。
「三年生ぐらいかな」
「外れました。一年です」
「へえ、じゃあ今年の春、受験に合格したというわけだ。それで今年は
思いきり遊ぼうというわけですね」
「というよりは、今しかできないことをしておこうと思って」
「なるほど」
彼は自分にもそういう時期があったというように、何度も頷いた。
「東北を回っているんですか」
「ええ。東北と、それからできれば北海道にも渡りたいと」
「へえ、そんなに行くんですか。で、どうです。どこか気に入った
場所はありましたか」
「そうですね…まあ、いくつかは」
「たとえば?」
「たとえば…」
少し困って顔をそらすと、日本海が目に入った。そこで僕はいった。
「たとえばここですね。観光名所として知られてはいないけど、
それがかえっていいと思います」
地元の人間に対して、少しばかりお世辞をいっておくのも悪くないだろう。
はたして彼は嬉しそうな顔をした。
「ほう、ここを気に入っていただけましたか。そうなんです。ここは案外
穴場なんです。とくにこの灯台から眺める景色は最高です。心を洗われる
ような思いがします」
彼は日本海に向かって大きく深呼吸をしたあと、僕のほうを振り返った。
「どうです。下でコーヒーでも飲みませんか。インスタントですけど」
少しは川崎に話すネタができそうだなと、プラスチックのカップに
入れられたインスタントコーヒーを飲みながら僕は思った。
地元の人々と親しくなることは、旅の勲章のような気がする。
灯台守の男性は、ガッツと名乗った。一人で勤務しているのだという。
「たった一人で?ずっとですか」
僕は少し驚いて聞くと、彼は苦笑した。
「ずっとじゃ持ちませんよ。相棒がいるんです。その男と交代でしてね、
私は今日の昼から明後日の午前中まで勤務します」
「それにしても、大変ですね」
僕は室内を見回した。観測室は、六畳ほどのこぢんまりとした部屋だ。
さまざまな計器類が置いてあるが、どういった働きをするものなのかは
見当もつかない。一台のペンレコーダーが作動していて、記録紙に
赤と黒と青の線をゆっくりと描いていた。
僕が座っているのは、壁際に置かれたお粗末なソファアだった。
そして小さなテーブルを挟んで彼が座っている。
「今日は天気がいい。夕焼けを見に行きませんか」
腕時計を見て、彼がいった。僕も自分の時計を見た。五時近くになっていた。
「ここから見る夕焼けは格別なんですよ。君は海に太陽が沈むところを
見たことがありますか」
「海に太陽が?いいえ」
「そうでしょう。太平洋側に住んでいる人は、海から太陽が上がるのを
見ても、沈むところは見られない。いいもんですよ。行きましょう。
いい場所があるんです」
灯台守は両膝を叩いて立ち上がった。
「でもいいんですか。まだ観光客が来るかもしれませんよ」
「平気平気。今日はもう誰も来ませんよ。町から来るバスは、君が乗って
きたのが最終なんです。それにどうせ入場は五時まででいつもより
少しぐらい早く閉めたってかまいません」
「そうですか」
それなら案内してもらうのも悪くないなと思った。秘境とまでは
いかなくても、地元の人間が「いい場所」と呼ぶ所に行ってもみたい。
リュックを担ごうとすると、
「ああ、荷物は置いたままでいいんじゃないかな」と彼はいった。
「岩場を登ったりするから、身軽なほうがいい」
「でも、ついでにそのままバス停まで行こうと思いますから」
帰りのバスの最終時刻まで、さほど時間がなかった。
「間に合いますよ。間に合うように帰ってくればいい。いざとなれば、
最寄の駅まで私が車でお送りします」
「いえ、なんとか間に合うように帰ってきましょう。じゃあカメラだけ」
僕はリュックからカメラを取り出した。
そのとき、先ほどからなんとなく心に引っかかっているものがあることに
気づいた。それは彼の台詞の一つだ。彼はなぜ僕が最終バスに乗ってきた
ということを知っているのだろう。
同時に僕は思い出した。灯台の上にいたとき、彼は胸から双眼鏡を
ぶら下げていた。
「急ぎましょう。せっかくのシャッターチャンスを逃したら残念だ」
僕がぼんやりと考えていると、ワイシャツの袖を下ろしながら
彼は急かせた。
125 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/18 23:17
「ええ、今行きます」
カメラを手に、僕は彼の後に続いた。何をおかしなことを考えているんだ
と自分自身をたしなめた。彼が僕のことをじっと見ていたなんてことが、
あるはずがないではないか…。
☆保守☆
127 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/22 15:25
ガッツ氏が急がせたわりには、日の入りまでにはまだ少し
時間があるようだった。こんなことならやはりリュックを持って
くるんだったと後悔した。
われわれは右手に海岸を見下ろしながら、雑草がぼうぼうに
伸びた原っぱを歩いた。
「この先に綺麗な花が咲いているところがあるんですよ」
前方の少し小高くなったところを指差してガッツ氏は言った。
彼はあまり時間のことは気にしていないようすだ。
小さな丘を越えたが、綺麗な花の咲いているところなんてなかった。
それで僕がきょろきょろしていると、
「あそこですよ。ほら、見えるでしょう」
といって彼はさらに前方に人差し指を向けた。すると海に面した
斜面の中腹に、白い花が密集しているのが見えた。しかしまだ
二百メートルぐらいありそうだ。
「さあ、行きましょう」
彼がいったが、僕は顔の前で小さく手を振った。
「いえ、もうここで結構です。もう時間あまりないから」
「そうですか。じゃあここから夕焼けを眺めるとしましょう」
彼が草の上に腰を下ろしたので、僕もその横に座った。
「ガッツさんは、よくこんなふうに散歩をされるのですか」
「しますよ。ここはいいところです。何度歩いても飽きない。
季節の移り変わりが、手にとるようにわかるんです。こういうのは
都会にいると味わえないだろうなあ」
「うらやましいですね」
「そうでしょう。君もこの機会に味わっておくといい」
「はい」
僕は頷きながら腕時計を見た。バスの時刻が迫っていた。
そろそろ灯台に戻ったほうがいいかなと考えていると、
「今夜の宿は決まっているのかな」
と心中を察したように尋ねてきた。僕は首を振り、だから
なるべく早く駅に戻りたいのだと答えた。
「だったら」と彼はいった。
「今夜はここに泊まっていけばどうかな」
「泊まるって、灯台にですか?」
そう、と彼は頷いて微笑んだ。
「宿泊施設があって、私たちはそこで寝泊まりしているんだよ。
二人ぐらいなら、楽々と寝られる。ただしあまり綺麗ではないけどね」
「いや、でも申しわけないな」
「私ならかまわないよ。さっきもいったとおり、一人っきりでね。
むしろ話し相手が欲しいぐらいなんだ」
「ええ、だけど」
「そうしなさい。何も金の高い宿にとまることはないさ」
「そうですか。それならお世話になろうかな」
このとき僕の頭にあったのは、灯台に泊まったという話なら
一人旅のエピソードとして恥ずかしくないのではないかという
ことだった。
川崎などは僕のことを、ちゃんとした宿にしか泊れない
お坊っちゃんだと思いこんでいる。
「よし、決まった。となると、夕食のことを考えねばならないね。
一緒に何か買い物に行こう」
138 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/22 16:11
「あの、海に沈む夕日は・・・」
「ああ、そうだった。自分でいい出しておいて、肝心なことを
忘れていた」
彼は苦笑して再び座り直した。
保守
☆保守☆
141 :
ほんわか名無しさん:03/08/24 23:03
宗次郎とルルボンの登場キボンヌ
143 :
ほんわか名無しさん:03/08/26 16:53
続きマダー?
太陽が日本海に沈んでいくのをじっくりと撮影した後、
僕たちは海を背にして歩き出した。道路まで出て、さらに十分ほど
歩くと、小さな食料品店が一軒あった。
「旅行したからといって、なにも無理にその土地の名物を探すことなんか
ないんだ。そんなのは単なる自己満足さ。肝心のは空気だよ」
そういいながらガッツ氏は籠にレトルトカレーや缶詰などを
ほうりこんでいった。こんなところまで来てインスタント食品かと
少々うんざりしたが、口に出すわけにもいかない。
食料品店を出ると彼は隣の酒屋に入り、地酒の一升瓶を二本買った。
「これも何かの縁だ。今夜は飲み明かそう。酒はいけるんだろう?」
「ええ、少しなら」
僕は遠慮ぎみに答えておいたが、じつはどういうわけかアルコールには
強いのだった。たぶん遺伝的なものだろう。
酒屋を出るときには、早くも先ほどの食料品店が片付けを始めていた。
その店だけでなく、周りの家々も戸締りをしている。薄暗くなった道を
歩いているのは、われわれ二人だけだった。
バスの停留所まで辿りついたとき、僕はなにげなく時刻表を見て
足を止めた。
駅行きの臨時バスが残っていることに気づいたからだ。時計を見ると、
出発まであと約十五分ある。
「どうしたんだい?」
先を歩いていたガッツ氏が、立ち止まって聞いた。
「ガッツさん、僕やっぱり行きます。臨時バスがあるみたいだから」
「なんだって?」
彼は戻ってくると、時刻表を見つめ、それから僕を見下ろした。
眉間に皺が刻まれている。
「でも、泊まるところがないんだろ」
「それはなんとかなると思います。大きな駅まで行ければ、
ビジネスホテルだってあるだろうし」
「つまらないな」
彼は吐き捨てるようにいった。
「そういう旅行はつまらないよ。無駄に金を使うもんじゃない。
いいから、俺のところに泊まりなさい」
「でも・・・」
「せっかく食料を買ったんだし、酒だって用意したんだ。俺をがっかり
させないでくれよ。それに学生のくせにホテルに泊まるなんて贅沢だ」
ガッツ氏は明らかに怒りを含んでいて、僕はどきりとした。
なぜこんなにむきになるのだろうと思った。学生の一人旅と聞いて手助け
する気になったのに、その好意を裏切られたように感じたからだろうか。
もしそうなら、その好意は受けるべきかもしれない。
「わかりました。泊まらせていただきます」
「そう。それがいちばんいいんだ」
ガッツ氏は大きく頷くと、両手に食料と酒を持って再び歩きはじめた。
灯台に帰ると、すぐに夕食にしようということになった。といっても
レトルトカレーを温めたり、缶詰を開けて中身をプラスチックの皿に
移しかえたりするだけのことだ。とにかくまともな調理器具がほとんど
ないのだ。僕は果物ナイフをつかってチーズを切ったが、そのナイフに
しても刃こぼれがひどかった。
155 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/26 22:51
ひととおりの準備を終えるとガッツ氏がコップを二つ出してきて、
地酒をなみなみと注いだ。
「君の一人旅に乾杯だ」
「ありがとうございます」
僕たちはコップを鳴らした。
☆保守☆
☆保守☆
一本目の一升瓶は、あっという間に空になった。ガッツ氏は自分が
飲むペースも相当なものだが、僕にもかなり強引に勧めるのだった。
「いや、しかし君はなかなか強いな」
二本目の栓を開けながら彼はいった。
「よく飲んだりするのかい?」
「それほどは。でも飲むのは嫌いじゃないです」
「酒の種類でいうと、何が好きなのかな。ウイスキー?」
「とくに何が好きということはありません。僕の知り合いには、
バーボンしか飲まないっていうのもいますけど」
川崎のことだ。
「ふうん。俺は日本酒しか飲まないな。ウイスキーだとかブランデー
だとかいうのは、高いばかりで少しも旨いとは思わない」
そういって彼はまた僕のコップに酒を注いだ。
飲みながら僕たちはさまざまな話をした。お互いの身の上話から
はじまって、分化やスポーツに話題が飛び、今の政治に対する
不満などを大声で語り合ったりした。
ついさっきまでは赤の他人だった相手と、こんなふうに打ち解けている
という事実は、今までに味わったことのない緊張と興奮を僕にもたらした。
二本目の瓶が半分ほどになったころ、
「ところでさ」
とガッツ氏が意味ありげな笑いを唇に滲ませた。
目がとろんとしているのは、いよいよアルコールが回ってきた証拠だろう。
僕のほうはまだ平気だという自覚があった。
彼は小指を立てて、
「こっちの経験はどうなんだい」
と尋ねてきた。
「ああ、それはまあ、そこそこは・・・」
「なんだよ、そこそこって。意味深長なことをいうじゃないか。
彼女はいるのかい?
彼は相変わらずにやにやして僕を見た。息がずいぶんと酒臭い。
「今はいませんけど、高校のときには仲の良い子が」
「ふうん、その子とはどうしたんだ?」
「どうもしてません。彼女の父親が転勤になったので彼女も引っ越すことに
なったんです。それでまあそれきり会ってないわけで・・・」
そこまで話すと、ガッツ氏はげらげらと笑い出した。
「なんだそれじゃ、振られたようなものだな」
「でも、手紙のやりとりは今でもしています」
「そうかい。でも手紙じゃあな」
彼は自分のコップに酒を注ぐと、一気に半分まで飲んだ。そして
口元を手の甲でぬぐってから続けた。
「で、どうだったんだい、その子とは?」
「どうだったって・・・何がですか?」
「とぼけるなよ。やったかってことさ。いただいちゃったのかい?」
「ああ・・・」
「いただいちゃった」という表現が引っかかって、僕は素直に話すのを
ためらった。
「ご想像におまかせします」
考えた末、僕はこう答えた。
「そうか、やっちまったのか」
彼は勝手に納得し何度も首を縦に振った。それから頭を上げると、
さらに尋ねてきたのだった。
「それが初めてだったのか?」
僕は酒をむせそうになった。
「それもまたご想像におまかせします」
「なんだ、正直に話せよ。男同士じゃないか」
170 :
◆4x4Q7kxTSk :03/08/30 22:00
彼はからんできた。
「ははあ、まだ飲み足りないらしいな。酒をもう一本買って
おくんだったなあ」
彼が瓶を傾けたので、僕も反射的にコップを差し出していた。
そうしながら僕は、この灯台守と一緒にいることを、徐々に苦痛に
感じ始めていた。
なんかエロい方向に進んでいるので軌道修正。
そのころ川崎は・・・。
173 :
ほんわか名無しさん:03/09/03 11:18
続きまだ?いつも読んでるよー
☆期待保守☆
灯台に泊まると決まったときから、今夜は風呂を我慢しなければ
ならないと覚悟していた。せいぜいシャワーがついている程度だろうと
思っていたからだ。それだけにガッツ氏が風呂の支度を始めたときは驚いた。
「さっと浴びてくればいい。疲れをとるには風呂が一番だ」
風呂は廊下を挟んだ向かい側にあった。しかし更衣室らしきものはない。
そのことを尋ねると、ガッツ氏は苦笑まじりに答えた。
「いつもは一人っきりなんだから、そんなものは必要ないさ。
ここで脱いでいけばいい」
「はあ、じゃあ失礼して・・・」
僕は観測室内で服を脱ぐと、長椅子の上に畳んで置いた。そしてリュック
から入浴セットを出し、ブリーフ姿で出入り口に向かった。
「なんだパンツも脱いでいけばいいじゃないか」
「いえ、風呂で簡単に洗いたいですから」
「それにしたってさ。まあ、いいけど」
「入らせていただきます」
風呂場は思ったよりも狭く、そして暗かった。古いドラム缶を改造
したんじゃないかと思うような浴槽だった。
ゆっくりと風呂につかった後、壁や蛇口に腕をぶつけないように
気をつけながら身体を洗っていると、突然後ろのドアが開いた。
「湯加減はどうかな」
ガッツ氏が聞いてきた。
「ええ、ちょうどよいです」
「それはよかった。背中を流してやろうか」
「いえ結構です」
「遠慮するなよ」
「そうじゃなくて、もう洗いましたから」
もちろん嘘だ。
「ふうん」
彼は数秒黙ったまま僕をじっと見下ろしていた。その目つきが
気になって、どうかしたんですかと僕は聞いた。
「いや、なんでもない。寝室の用意をしておくから」
そういって彼はドアを閉めた。
まさかそうゆう展開になっちゃうの?
風呂から出ると、もう一度さっきまで着ていた服を身につけた。
着替え代わりにジャージを持っているが、状況がわからなかったからだ。
長椅子に座って本を読んでいると、ガッツ氏が戻ってきた。
「隣の部屋が宿泊所になっている。置いてある毛布を適当に使って、
先に休んでなさい。俺は風呂に入ってくるから」
「どうもすいません」
本を片付けて隣の部屋に行くと、三畳ほどのところに何枚もの毛布が
びっしりと敷きつめてあった。どの毛布をしいて、どの毛布をかぶれば
いいのか全然わからない。適当に身体に巻き付けて横になることにした。
この部屋には窓がなかった。そこで染みだらけの天井を眺めていると、
五分ほどしてガッツ氏が入ってきた。
「もう風呂に入ったんですか。早いですね」
「ああ、汗を流すだけだからな」
彼はランニングシャツにパンツという格好だった。仁王像のように
肩や腕の筋肉が盛り上がっている。彼は灯りを消すと、横になった。
眼を閉じてじっとしていると、うとうとと眠りに入っていくのが
自分でもわかった。今ごろになってアルコールが回ってきたようだ。
ぼんやりとした頭で家族のことを考えてみる。父や母は、僕がこんな
ところにいるとは夢にも思っていないだろう。
引っ越した彼女のことも考えた。彼女は今何をしてるだろうか。
好きな人はいるのか。そんなことは手紙には書いてなかったが・・・
そこで、はっと目が覚めた。下腹部に異常な感触がある。
ゆっくりと首を曲げ、何が起こっているのかを確かめようとした。
その瞬間、思わず目を剥いた。
いつの間にか、ジーンズのジッパーが下ろされていた。そして誰かが
触っているのだ。
いや、誰かなんていう必要はない。ここには僕の他に一人しかないの
だから。さらに目をこらすと、僕の腰のすぐ横に彼の頭があるのが見えた。
心臓が早鳴りを始めた。身体が凍りついたように固まっている。
まさか。
僕はこの灯台守りの狙いを、今初めて知った。考えてみれば、彼が
見ず知らずの学生に親切にする理由など、どこいもないはずなのだ。
彼はやはり双眼鏡で見ていたにちがいない。バスから降りてくる乗客の
一人一人を。そして探していたのだ。自分好みの若い男を。
全身から汗が吹き出した。どうすればいいだろうかと考えた。迂闊に
暴れたりするのは禁物だと思った。騒げば、彼は力でねじ伏せようと
するだろう。この筋肉の持ち主に勝てるはずがない。
しかしこれ以上はぐずぐずしてはいられなかった。僕はむにゃむにゃと
不明瞭な声を発すると、寝ぼけたふりをして身体を彼とは反対側へ捩った。
彼も少し驚いたのだろう。びくっと手を引っこめた。
壁のほうを向くと、僕は息を殺した。彼が今後どういう行動にでるのかを
予期できず、不安と恐怖が頭の中で渦巻いていた。
とくに彼に背中を向けているということが、僕を憂鬱にさせていた。
今にもジーンズを下ろされ、ブリーフを脱がされるのではないかと
気が気でなかった。できればジーンズのジッパーだけでも元に戻して
おきたかったが、それをすれば僕が目を覚ましていることを気づかれて
しまう。
僕にとって唯一の救いは、彼がまだ力ずくで欲望を満たそうとはせず、
獲物がおとなしく熟睡するのを待ちつづけてくれていることだった。
何も策が思いつかぬままじっとしていると、ついい彼が動きだした。
きもちわるい
や ら な い か の 悪 寒 ! !
彼は立ち上がり椅子に座りなおすと、自分のジッパーを下げつつこう言った。
「 や ら な い か ? 」
見れば開いたジッパーの中からはみ出してしまった
彼の息子も立ち上がっていた。
198 :
ほんわか名無しさん:03/09/09 16:04
ガッツと曹操のアナルセックスコラボレーションが
>>1による官能小説によって実現されようとしています!!
いつの間にこんな展開に・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
┃━┏┃
>>1よ。続きはやはり俺たちの予想通りに進んでしまうのかい・・・?
ガ━━ΣΣ(・∀・;)━━ン!!!なんかへんな展開に。。。
川崎さんは、そこに参加しないの?
僕の腰に手を伸ばしてきたのだ。そしてゆっくりと撫でまわしている。
この行為には、僕が眠りこんでいるかどうかを確かめるという意味も
こめれられているはずだった。つまり、これ以上おとなしくしている
わけにはいかないのだ。
僕は意を決すると、うーんと唸り声をあげながら再び寝返りをうった。
またしても彼の手は引っ込められた。それを確認してから、僕は空咳を
ひとつして、上半身をわざとだるそうに起こした。そしていかにも熟睡
していたのを起こされたように、顔をごしごしとこすってから大きな
あくびをした。彼は彼で、うつぶせのまま狸寝入りをしている。
僕は急ぎすぎないよう気をつけながら、四つんばいでドアのところまで
行った。スニーカーの踵を踏んだままに外に出ると、すぐに向かいのトイレの
ドアを開けた。しかしもちろん小便などしている暇はない。灯りだけつけて
ドアを閉めると、物音をたてないように観測室に入った。
荷物をここに置いていたのは正解だった。僕はスニーカーを履き直し、
ジーンズのジッパーを上げると、アルミサッシの窓を開け、まずリュックを
外に出してから自分も窓枠を乗り越えた。
しかし、脱出はまだこれからだった。建物の周りには、コンクリートの
2メートルほどの塀が巡らされていたからだ。門扉にしても、同じぐらいの
高さがある。僕はリュックを担いだまま、死にものぐるいで乗り越えた。
今にも奴が追ってくるような気がした。門扉から飛び降りると、
僕は無我夢中で駆け出した。街灯などはなく月明かりだけが頼りだが、
暗闇は自分の姿も隠してくれるはずで心強かった。例の「灯台下暗し」
の格言に感謝した。
(;・∀・)ほ、保守。。
☆保守☆
その夜は結局、バス停から少し離れた草むらで寝袋に入って眠った。
停留所は屋ねつきだしベンチもあるのだが、もし彼が追ってきた場合、
すぐに発見されそうで恐かったのだ。
夜が明けると、早々に始発のバスがやってきた。僕は眠い目をこすり
ながら乗りこんだ。とうとう一睡もできなかった。眠りかけると、
あの男が迫ってくる夢を見て、飛びあがってしまうのだ。
バスの窓から外を眺め、もう二度と来るものかと呟いた。
駅に着くと電車に乗り、川崎と約束した駅まで行った。待ち合わせの
喫茶店はすぐに見つかり、僕は彼がくるまでの間、昨夜のことをどう
話そうかと考えていた。この異様な体験には、さすがの彼も驚くだろう。
約束の時間よりも約30分遅れて川崎は現れた。しかし彼はそのことを
謝りもせず、席に着くなり、
「昨夜は最高だったぜ」
と、にやつきながら煙草を取り出した。
「むこうで引っ掛けた女がさ、一人暮しをしているコンパニオンだったんだ。
で、昨夜はその女の部屋に泊めてもらったというわけ。これがまたいい女でさ、
歳は俺よりも一つ上なだけだが、妙に熟れてるんだ」
「へえ・・・」
「いやまったく、一人旅はこういうことがあるから楽しいよな。ところで
おまえのほうはどうだい?少しはハプニングらしきものはあったかい」
「うん、まあ少し」
そういった瞬間、僕の頭に一つの考えが閃いた。それはいたずらと呼ぶ
には悪意に満ちすぎていたが、僕の心を捕らえて放さなかった。
「ええと、例えば途中で寄ったお寺のことなんだけど・・・」
僕は一昨日までのことを話した。川崎は途中で失笑を浮かべた。
「予想通り、お上品な旅だねえ。少しは冒険したらどうなんだ」
「なかなか機会がないんだよ。ああ、でも昨夜は惜しいことをしたと思うよ。
本当はちょっと変わったところに泊まれたかもしれなかったんだ」
「ちょっと変わったところ?」
「灯台だよ」
僕はあの小さな岬に行ったことを川崎に話した。しかし昨夜は駅の宿で
泊まったことにした。
「その宿ではほかの旅行客から聞いたんだけど、交渉次第じゃ、そこの
灯台で泊めてくれるらしいんだ。もちろん食費も宿泊代もとらない。
ただし、今まで交渉に成功した人間は少ないらしけどね。あのあたりを
一人旅する人の間じゃ、ちょっとした伝説の地らしいよ」
「へえ、面白いな」
狙いどおり、川崎は関心を示した。
「じゃあ今日はそこに行ってみるか」
「大丈夫かい?灯台守は、かなり恐そうな人だって聞いたけど」
「平気だよ。おまえと一緒にするな」
川崎は唇を歪ませて笑った。
彼と別れた後、僕は北へ向かった。そして夜にはビジネスホテルに
チェックインした。バスルームでシャワーを浴びながら、今ごろは
あの灯台で酒盛りが始まっているであろうことを想像した。
灯台守は、今夜もあの地酒を買うに違いなかった。一方の川崎は
バーボンだ。彼のことだからロックでがんがんに飲んでいることだろう。
川崎もアルコールには強い。普通なら、昨夜の僕と同様、少々のことでは
酔いつぶれたりはしない。
223 :
◆4x4Q7kxTSk :03/09/15 17:18
しかし今夜は違うはずだった。
朝彼と会ったとき、僕は仕掛けを施しておいたのだ。彼がトイレに行った
際に、彼のリュックからバーボンの瓶を見つけだし、僕が常に携帯している
睡眠薬を放り込んでおいたのだ。
だから今夜ばかりは、さすがの彼もぶっ倒れるだろう。
そして何が起こるか―――。
川崎のアナル危機
|Д゚)))ガクガクブルブル
ほのぼのから遠ざかっていく・・・w
227 :
ほんわか名無しさん:03/09/15 17:57
↓川崎
___ __,,,.... . . ....,,_
,. -'''Y´:三三三::`ヽ、__ _,,. -‐ ''''"゙´ : : : : : : : : : `'': 、、
/ミミミミミ三三三三彡彡ミヽ ,.r'',. - '''""ブ: : : : : : : : : ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.゙ヽ、
___/:三:彡''"\ミ三三彡'~`ヾ、彡`、 // /゙: : : : : : : : : ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.゙ヽ ←ガッツ
{三三ヲ U  ̄ ̄ ヾ彡\. !/ !i1: : : : : : : ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ヽ
.!ミ彡〈 U U ヾ:彡'.ノ ,.ニ、' ゙ ';.: : : : : : ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ヽ
{t彡彡〉 U U /彡:r'ry',., ヽ: : : : :;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;゙i,
{彡彡'ノ二ニ_‐-, i-‐_.ニ二ヽ 彡,ii゙:リ0 )- 、..,,_ ヽ: : : :;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.i
/"'i:l >┬o┬、i Uiy┬o┬< .|/i_;/'''" `''' ー ヽ:;,;: -‐‐、;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.リ
| ハ|:| U`┴‐┴' { }`┴‐┴'′( |/ ,.r i;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/
| {..|:l ` ̄ ̄┌|U ̄ |┐ ̄ ̄´U/` ,}^i, ノ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/
ヽ_|| └`----'┘U ( _ ノ/ /;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ノ
| ヽ U /-―-―-\ ("゙''┴==ヲ ' /|;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;./
\ ! /二二二二二ヽ ゙'ーr‐'''~ /ー- ' !;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/
| \U ―― /lヽ,) ノ ゙'ヽヽ、、;.;.;.;./、
__/\ ヽ_____,i_U_ノ ,/井! ,/ :: ` `''>'´/;:';;;;;;;;
┬┬/ /井\ /井#':, ,... . ..,,,__,, . - :: ,. -'" ,./;;; ';;;;;;;;;;
怖ぇ─wwヘ√レvv〜(`Д´)─wwヘ√レvv〜─ !!
|´Д`) ハァハァ
ほ、ほんとに川崎さんが参加しちゃったよ・・・・・。
231 :
ほんわか名無しさん:03/09/18 15:47
/⌒ヽ
/ ´_ゝ`) /⌒ヽ ちょっと通りますね、ここ通らないと行けないので・・・
| / / ´_ゝ`)
| /| | | / /⌒ヽ チャプッ
// | | | /| | / ´_ゝ`)
U .U // | | | / /⌒ヽ プクプクッ プクプクプク・・・・
U .U 二| /| |二-_ -_/_´_ゝ`)二- - /⌒ヽ= _ _ ッ・・・・・
 ̄- ̄- ̄ ─ ─  ̄-  ̄- ̄  ̄-
*少々お待ち下さい*
(;・∀・)ドキドキ。。。
ホシャ
これが13年前の出来事の概要である。
この後何気に見たテレビのニュースで、私は飛びあがるほどの衝撃に
出くわすことになった。
事件を知った私は、翌朝急いで新聞を買いに行った。そして記事の部分を
丁寧に切り取ると、ガイドブックの間に挟んでおいた。
その切り抜きが、現在このアルバムに貼ってあるのだ。
これを見た者は、私のほかには川崎しかいない。あの旅行から帰った後、
二人で見せ合いをしたのだ。
彼のアルバムは、彼の道程があの小さな岬で途切れていることを如実に
示していた。そして私のアルバムを見たときの彼の表情を私は忘れられない。
この新聞記事を貼ってあることについて、彼は何もいわなかった。
これは何だと聞きもしなかった。
私も何もいわなかった。
おそらく二人がこのことについて語り合う時はないだろう。それでいいのだ。
私はアルバムを閉じる前に、もう一度古い新聞記事を読み直した。
記事は小さな岬の灯台守が刺殺されたことを報じていた。
凶器は果物ナイフ。ここには書いてないが、おそらくあの刃こぼれした、
チーズを切っていたナイフだ。
死亡推定時刻は早朝の5時から8時。被害者は宿泊室で寝ているところを
刺された模様。争った形跡は無い。
240 :
◆4x4Q7kxTSk :03/09/22 23:07
そして宿泊室の傍らには、使用済みコンドームが落ちていた。
この使用済みという事実が、私には興味深かった。しかしそのことについて
川崎に尋ねることも、決してないはずである。
私は静かにアルバムを閉じた。今度開くのはさらに10年先か20年先か。
いずれにせよ、私と川崎の「いい関係」は続いているはずだ。
―― 完 ――
・・・・・・
|;・∀・))))) ほ、ほんとに終わり?
とりあえず、◆4x4Q7kxTSk さん、お疲れ様でした。
(・∀・)ノ 乙でした。。
どうもありがとうございました。
特にミヤビさんには何度も保守してもらってありがたかったです。
別の話も考えてますが、誰でも参加してもらって結構ですよ。
ちょっとずつ書くかどうか迷ってます。
>>245さん、
期待してます。無理なさらずに頑張ってください。
>>245 (*´∀`)エヘヘ テンポがよくて、とっても読みやすかったYO
また読みたいので、ぜひ書いてほしい。。。
楽しみに待ってるね!
☆一応保守☆
保守ありがとう。しばしお待ちを。
期待保守
251 :
ほんわか名無しさん:03/10/04 21:48
ほしゅ
空想なんて知らないなあと思いながら、ルルボンは奇麗に装飾された
封筒を開いたが、小さくまるこい字が便箋にびっしり書き連ねられている
のを見て、 ――― えっ、もしかしてあの空想?
と、少し焦った気分で読みだした。
それはやっぱりあの空想から来た手紙だった。
「ルルボン、お久しぶりです。元気ですか?ながーい間みんなに心配を
かけてきたけど、このたびやっとお嫁に行くことができました。思えば
山あり谷あり落とし穴ありで、私も遠回りしてきたものです。
こんな30歳手前の崖っぷちの私を救ってくれたのは、ニヤリンという
一つ上の男性でした。同じ会社に勤めていたので、職場結婚です。
ルルボンも知っていると思うけど、私の理想は目元が涼しげで、鼻筋が
通っていて口元は上品で、顔の色は日にこんがりと焼けてクッキー色で、
だけどニキビとか変なものはできてないスベスベお肌で、肩がガッチリして
いて、お尻が小さくてキュッと閉まった、背の高いいかにもスポーツマン
ということだったけど、
ニヤリンはこれらの条件の1割すら満たしていません。友達に紹介すると
決まって、やさしそうな人ねっていわれます。でも身体は丈夫で、働きもの
なので、夫としては丸かなと思っています。ただ古銭を集めるという、
私には理解不能の趣味をもっているのが頭痛のタネです。
先日も、生活が苦しいんだから、こういう趣味はほどほどにしてねと
クギを刺しました。ホント、こっちもなかなか物価が高いのよ。
ルルボンはいかがお過ごしですか。きっとマイペースでお仕事している
んだろうね。忙しいと思うけど、もしこっち来ることがあれば寄ってね」
追伸として、お金がもったいないので結婚式はやりませんでした。
彼との写真を同封します、とあった。
―――ふん、何がマイペースでお仕事よ。つまりは売れ残ってるって
ことをいいたいわけね。
文面を2度読んでから、ルルボンは心の中で憎まれ口を叩いた。とはいえ
心底不快になっているわけではない。こういうやりとりはよく交わしたのだ。
彼女とは東京の大学で一緒だった。ルルボンは実家から一時間かけて
通学していたが、空想は大阪の出身で下宿していた。それで都心で遊んで
いて遅くなったときなど、よく彼女の部屋に泊めてもらったものだ。
卒業後、ルルボンは小さな薬局で働くことになり、東京で一人暮しを
始めたが、空想は実家に帰ってしまったのだった。
東京で生活するのが大変だということはよくわかったし、やはり両親の
そばにいてやりたいというのがその理由だった。就職先は、彼女の父親が
勤めている会社にしたらしい。
最後に会ったのはいつだったかなとルルボンは考えてみた。3年ほど前に
何かの用事で空想が上京したとき、友達数人と会ったことを思い出した。
あのときはまだ結婚してなかったのは、ルルボンと空想だけだった。
結婚した友人のなかには、すでに二人の子供を産んだ者もいた。そのせい
だろう、ルルボンは空想とばかり話していた。他の友人の話しは、概ね
夫や子供の自慢話で、あまり面白くなかったのだ。
その空想も、とうとう結婚したという。
―――やれやれ、ついに来たるべき時が来たか。
ため息をつきながら封筒の中を見た。写真が1枚入っている。手紙では
いろいろ書いているが、案外いい男かもしれないと少し不安を感じながら
取り出した。写真には二人の男女が写っている。
男性のほうは、いわゆるハンサムではないが、体格はよく、目を細めて
笑った顔は人なつっこい印象を与える。
―――まあまあじゃないの、空想。
そう思って視線を移したとき、「あれえ」と思わず声に出していた。
「どうなってるの、これ」
そこに写っているのは空想ではなかった。背丈や長い髪は似ているが、
顔はまったくの別人だった。
新作キタ━*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*━!!!!! わくわく
☆期待保守☆
|∀・) マッテル。。。
―――どういうことよ?
ルルボンは写真に目を近づけた。写っている顔はそれほど小さくない。
男女の上半身がならんでいるのだ。
―――違うわ、空想じゃない。あの子、いったいどういう写真を送って
きたのよ。
ルルボンは手紙と写真を前に考え込んだが、うまい説明は思いつかなかった。
うっかり別の写真を入れたのかなと思ったが、いくらなんでもそんなミスを
するだろうか。空想は学生時代から、どちらかといえば慎重なタイプだ。
考えれば考えるほど気になってきて、空想はたまらずコードレス電話を
手にした。時刻は夜の10時、まだ失礼な時間帯でもないだろう。
手紙の末尾に書いてある番号を押し、繋がるの待ったが、ふと、
―――もしかして、整形したとか…。
という考えが頭に浮かんだ。もしそうだとすると、あまり問い詰めるのは
かわいそうだという気もする。
しかし、とルルボンは思い直した。空想はそんな整形が必要な顔立ちじゃ
なかった。どちらかといえば美人の類に入るだろう。それに空想の顔を
どのようにしてみても、この写真の女性になるとは思えなかった。
コールサインが2度3度と鳴っている。ルルボンは空想の明るい声が
飛び込んでくるのを予想して待ったが、いつまでたっても繋がらなかった。
―――保留か。
留守番電話ぐらい買えばいいのにと思いながら、ルルボンは電話を切った。
翌日もルルボンは仕事から帰ってきてから空想の家に電話した。しかし
昨日同様、コールサインが鳴りつづけているだけだ。
それから二日続けて、ルルボンは昼間にこっそりと職場の電話を使って
かけた。夜はどこかに出かけているかもしれないと思ったからだ。
だが相変わらず、向こうの電話には誰も出なかった。
さすがに少し心配になった。電話に出ないぐらいなら何とでも解釈できるが、
写真のことがとにかく不可解で気味悪かった。
空想の実家に連絡できればいちばんいいのだが、残念ながら住所も電話番号
も知らなかった。
―――さてと、困ったぞ、どうしよう?
―――こうなったら行くしかないか。あまりぱっとしない季節だけど。
壁のカレンダーを見た。10月9日、明日は金曜日だった。
大阪には新幹線で向かった。駅に着いたとき、時計は10時過ぎを
指していた。ホテルにチェックインするには早すぎるので、荷物は
コインロッカーに放り込んでタクシー乗り場へ向かった。手紙の住所を
見せて、「ここに行きたいんですけど」というと「はいよ」と運転手
は答えた。
道をくねくねと数分走ったところでタクシーはスピードを緩めた。
「このあたりですけどね」
「じゃあここでいいです」
車を降りるとルルボンは周囲を見回した。古い木造家屋が並んでいる。
中年のおばさんが家の前で洗濯物を干していたので、ルルボンは
愛想笑いを作って近づいていった。
おばさんの説明はへたくそだったが、なんとか目的のアパートは
見つかった。二階建てで各階に四部屋ずつある。新築らしく壁の白さが
まぶしいが、周囲を伝統的日本家屋に取り囲まえているので、なんとなく
浮いて見えた。
二階のいちばん端が空想たちの部屋だ。ルルボンはインターホンの
チャイムを押した。ピンポーンという音がドアの向こうから聞こえてくる。
二度鳴らしたが、返事はなかった。
−−−やっぱり留守か。
ルルボンは新聞受けを調べたたまってないところを見ると留守にする
ことを新聞屋には連絡してあるということか。いや、新婚だからまだ
契約していないとも考えられる。
どうしようかなと思っていると、階段を誰かが上がってくる気配がした。
ジーンズにトレーナーといった格好の痩せた男が姿を見せた。大学生
ぐらいの年だろうか。
男はルルボンをちらりと見た後、空想たちの隣の部屋のドアに鍵を
差し込んだ。
「あの」
ルルボンは声をかけた。ドアを開きかけていた男は、ノブを握った
まま彼女を見た。
「なんですか」
「こちらにお住まいの方ですか」
「そうですけど」
男の目に警戒の色が宿ったが、ルルボンはひるまずに聞いた。
「こちらのご夫婦、どこに行かれたかご存じないですか」
「さあ、知りませんね」
ぶっきらぼうに答える。それでもルルボンはかまわず、
「ご夫婦とお会いになったことはありますか」
と質問した。男は右の頬をピクリと動かした。
「それはまあ、引っ越しの挨拶に見えましたから」
「この方たちですか」
ルルボンは例の写真をバックから出して男に見せた。彼は写真を手に
とって一瞥すると、
「ええ、そうですよ」
と答えた。ルルボンは頭がくらっとなるのをこらえた。
「よく見てください。この女性じゃないんじゃないですか」
「あなた、何がいいたいんです」
さすがに男の表情が厳しくなった。
「いえ、あの・・・いいんです。ごめんなさい」
男は部屋に入ると、乱暴にドアを閉めた。
―――えーっ、どうなってんのよ、これ。空想、あんた一体何をしたのさ。
呆然としたままルルボンは階段を下りた。そのとき彼女の目に留まった
のは「入居者募集中○○不動産」と書かれた看板だった。
☆保守☆
☆期待保守☆
保守
( ゚Д゚)<記念
285 :
ほんわか名無しさん:03/10/15 04:50
うp
|∀・)ノ 保守!
保守
☆保守保守☆
このスレは関係ないが、
小説スレ全般、なんか本格化しすぎたりへたれすぎたり
両極端で参加するのにしんどい。
前者は無駄に長文化して自分のほうにばかりもってこうとする奴、
後者は面白くもないものを書き込む奴がいるのが問題。
290 :
ほんわか名無しさん:03/10/18 13:47
不動産屋はすぐに見つかった。ガラス戸に物件紹介記事がべたべた貼られて
いるのはどこも同じである。
友人を訪ねたきたが留守らしい、ほかに連絡先を知らないので教えて欲しい
とルルボンが言うと、眼鏡をかけた中年の主人が気の毒がって調べてくれた。
たぶん簡単に人に教えてはならないきまりのはずだが、暇だったららしく、
思いのほか親切だった。
ニヤリンの勤め先と、保証人になっている空想の父親の住所が判明した。
念のために、ニヤリン夫妻の顔を知っているかと主人に聞いてみた。
「もちろん旦那さんのほうなら知ってますよ。でも奥さんとは会ったことが
ないな。それが何か?」
「いえ、べつに何でもないんです」
そういってルルボンは各連絡先をメモノートに記入した。
「あんた、これからご主人に連絡をとるの?」
メモをとりおえたルルボンに、店の主人が聞いた。
「そのつもりですけど」
「だったらさ、鍵を付け直す日を聞いてたっていっといてくれないかな」
「鍵ですか。わかりました」
世話になった手前、元気よく返事してルルボンは店を出た。
携帯電話からさっそくニヤリンの会社に電話した。幸い、本人が直接出た。
ルルボンが名乗ると、すぐにわかったようだ。ということは、空想はやはり
ルルボンの友人である空想にちがいないということだ。
大阪に来てることをルルボンがいうと、「へえ」とニヤリンは
間の抜けた声を出した。
「それで空想に会おうと思ったら、お留守みたいなので、不動産屋さんに
この電話番号を教わったんです」
「そうですか・・・いやじつは、空想は今日から旅行に出てましてね。
友達と二泊三日とかで。残念だなあ。いらっしゃることがわかっていれば
なんとかできたんですがね」
「でもあたし、昨日まで何度か電話したんです。だけど誰も出ないから」
「あ・・・そうですか。実家に行ったりして、よく出かけてたからタイミング
が悪かったのかな」
嘘をついている、とルルボンは感じた。芝居が下手だ。
「空想に連絡をとりたいんですけど」
「それが、今夜どこに泊まるのかは僕も聞いていなくて」
「じゃ一緒に行った友達の名前と住所を教えてください」
「それもよくは知らないんです。あの・・・仕事中なんで、もういいですか。
空想が帰ってきたら、連絡するようにいいますから」
全然よくはなかったが、これ以上なにを聞いてもごまかされるだけの
ような気がした。
「じゃあ、空想によろしくお伝えください」
それだけいうと電話を切った。
「ほんとにもう、どなっちゃってるのよ」
ルルボンは電話に向かってぶつぶついった。
|∀・)ノ 保守!!!
ルルボンは次に空想の実家にかけた。母親が電話口に出た。彼女も
またルルボンのことを知っていた。ルルボンはまず結婚祝の形式的な
言葉を述べた。
「ありがとうございます。結婚式もしないで、本当に皆様には失礼な
ことでしたわね」
と母親は答えた。
「いえ、そんなことはありませんわ。それより、空想さんはそちらに
おられません?大阪まで来たんですけど、お宅に伺ったら留守みたいで」
すると母親が戸惑ったように沈黙した。ルルボンは嫌な予感がした。
「あの・・・たぶんあの子、旅行に出ているんじゃないかしら。そんな
ようなことをいってましたけど」
「旅行・・・どちらへ?」
「さあ、ちょっと聞いて無いんです。どうもすみませんねえ、わざわざ
訪ねてくださったのに」
「いえ、ついでにちょっと寄っただけですから」
電話を切ると、ルルボンは腕組みをして空を見上げた。
−−−空想、あなたどこへ行っちゃったのよ。どこへ行こうと勝手だけど、
気になるクイズを送ってきたりしないでよ。
クイズとはむろん例の写真のことだった。
ぼんやりと立っていても仕方ないので、歩きながら考えることにした。
近くの喫茶店で軽く食事をした後、駅に戻って荷物を取ってからホテル
に入った。シングルベットに倒れこんだのが午後4時。朝から動きっぱなし
で足が重かった。
何のためにこんな所まで来たんだろうという気がした。空想のことが
気になって来たのだが、本人には会えない。何かあったのかと思ったが
そうではなく、単に旅行中なのだと家族はいう。
−−−本当に旅行に出ちゃったのかな。誰も嘘をついていなくて、あの
写真も何かの間違いで・・・
いや、そんなことあるはずないと思った。旅行先を誰にもいってない
なんて絶対におかしい。それに何をどう間違えば、別人の写真を人に
送ったりするのだ。しかもアパートの隣室の男は、たしかにこの写真の
人たちがご夫婦だといったではないか。
「わかんないなあ」
ルルボンは頭をくしゃくしゃと掻いた。
夜になると彼女は自分の部屋に電話をかけた。留守番電話にメッセージ
が入ってないかを確かめるためだ。旅行に出たときは、毎日これをする。
聞こえてきたのは、驚いたことに次のようなものだった。
「こんにちは、空想です。今、東京に来ているんだけど、留守みたいね。
会えなくて残念。また今度会いましょう。じゃ」
(・∀・)ノ ☆保守☆
保守ですよ
☆保守☆
私も保守しますよ〜
電話をかけまくった結果、鳥面犬のところで手応えがあった。昼間に
空想と会っていたというのだ。鳥面犬もまた大学の仲間だ。今は結婚して
専業主婦の座を確保している。
「今日電話がかかってきたの。それで渋谷で会ったのよ。とくに用は
なかったみたい。東京にくる用があったんだけど、時間が余ったから
っていってたわ」
「どんな話をしたの?」
「つまらない話よ。でも楽しかったわ」
「彼女、何かいってなかった?ご亭主のこととか」
「亭主?あたしの?」
「空想のよ」
「えーっ」
鳥面犬は鳥みたいにかん高い声を出した。
「あの子、独身じゃないの?」
今度はルルボンがえーっという番だった。
「あなた、それも知らずに話をしてたの」
「だって空想いってくれないんだもの。それにあの子とあなたの前じゃ、
結婚の話はタブーってことになってるし」
むかっとしたが、ルルボンはなんとかこらえた。
「ね、空想はあなたと別れてからどこに行くっていってた?」
「そうねえ、どこに行くともいってなかったわ。今夜はどこに泊まるか、
まだわからないっていってたし」
「どこに泊まるか?」
それを聞いてはっとした。空想がルルボンのところに電話をかけてきた
のは、今夜部屋に泊めてほしいというためだったのではないか。
「ねえ、ちょっとお願いがあるの」
「なによ?」
一歩引いたような口調で鳥面犬は聞いた。
「空想を見つけてほしいの。あの子たぶん、まだ東京にいるわ。誰かの
家に転がりこんでると思うの。片っ端から問い合わせてくれないかしら」
「どうしてそんなことをするの?」
「どうしてもよ。今すぐ連絡をとりたいの。お願い協力して」
「だったらあなたがすればいいじゃない」
「それができないから頼んでるのよ。今あたし大阪にいるの。だから
連絡のやりとりをしにくいのよ。お願い」
「・・・ふうん、大阪にいるの」
さすがの鳥面犬も、只事ではなさそうだという気になったらしい。
少しの間黙り込んでいたが、
「後でちゃんと説明してくれるわね」といった。
「するする」
ルルボンが答えると、彼女はふうーっとため息をついた。
「しかたないわね。じゃあそっちの番号教えて。空想がつかまったら、
かけるようにいうから」
「悪いわね」
ホテルの電話番号を言った後、
「ところで空想の顔どうだった?」とルルボンは聞いた。
「顔?そうね、ちょっと痩せてたかな。それがどうしたの?」
「ううん、なんでもない。よろしく頼むわね」
ルルボンは電話を切ってほっとひと息着いた。
☆期待保守☆
実はこっそり読んでました。
なので保守!
ありがとね!ヽ(´▽`)ノ ハーハー
もしかしたら何でもなくて、ほんの気紛れで東京に行っただけなのかも
しれない。そうすると夫のニヤリンも空想の母親も嘘をついていなかった
ことになる。それならそれでいいとルルボンは思った。問題がないことに
こしたことはない。
だがルルボンはやはり気にかかるのだ。あの写真のこと。それから
空想が鳥面犬に結婚したことを話さなかったということだ。ふつうなら
真っ先に話題の中心になるはずだ。わざとしなかったとしか考えられない。
それはなぜか。
−−−とにかく今は、空想が電話してくれるのを待つだけだわ。
ルルボンは祈るような気持ちになった。
だがその夜には、電話のベルは鳴らなかった。
鳴ったのは翌日の朝だ。ルルボンは夜が遅かったせいもあり、まだ
ベッドの中にいた。
「もしもし」
「ルルボン?あたしよ、空想」
「空想!」
ルルボンはベッドから飛び起きた。
「探してたのよ」
「そうだってね。すれ違いだったんだ」
「空想、あたしあなたに聞きたいことがあるの。もしかしたらたいした
ことじゃないのかもしれないけど、気になって仕方がなくて。あなたの
結婚報告のことだけど」
「結婚?」
途端に空想の声が沈んだように感じられた。そして彼女はいったのだ。
「ルルボン、どうしてあたしが結婚したこと知ってるの?」
「え?だって手紙をくれたじゃない」
「手紙?」
少し間を置いてから彼女はいった。
「あたし、出してないわ」
「えっ・・・」
二人はしばし沈黙した。受話器を握る手に汗が湧いた。
★わくわく保守★
|∀・) <保守
期待保守!
★保守です★
保
どきどき保守
保守ありがとうございます。しばしお待ちを
★わくわく保守★
そんでもって保守
昼過ぎに空想は現れた。ルルボンは立ち上がって手を振った。空想も
すぐに気づいたようだ。
ホテルの一階の喫茶店にいる。ここで会う約束をしていた。彼女は
さっき、羽田空港から電話をかけてきたのだった。もともと今日こちらに
帰ってくるつもりだったらしい。
「久しぶりね。元気だった?」
「まあまあってとこ。相変わらず小さな薬局でセコセコしてるわ」
ひとしきり挨拶代わりの雑談を交わした後、
「ところでさっきの話だけど」
と空想のほうから切りだしてきた。
「そうそう、そのこと」
ルルボンは例の手紙と写真をテーブルの上に出した。空想はその
二つの物件を前に目を見開いた。
|∀・) <保守!!
「どうしてこれをルルボンが持ってるの?」
「だから送られてきたのよ」
ルルボンはこの手紙のせいで自分がいかに不可解な思いをし、
空想のことが心配で奔走したかをまくしたてた。
「あたしが送ったんじゃないわ」
空想が首をふった。「書いたのはあたしだけど」
「えっ、どういうこと?」
「あなたに出そうと思って書いたの。でも出すのをやめたのよ」
「じゃあ出したのは?」
「たぶんあの人だと思うわ」
空想はちょっと顔を傾け、肩をすくめた。白けたような顔をしている。
「ちょっと待ってよ。もしそうだとすると、あなたのご亭主殿って、
とんでもないおっちょこちょいね。こんなふうに、全然関係のない
写真を入れたりするわけ」
「それはあたしにもわかんないわ。あの人の考えてることなんて、
何もわからない」
そういうと彼女は唇を噛みしめた。大きな目が潤み、さっと充血した。
「空想・・・何があったの?」
ルルボンが聞くと、空想は写真をつまみあげた。
「ここに写っている男はあの人よ。で、女の方はあの人の元恋人。
ううん、現恋人だな」
「・・・どういうこと?」
「この女がうちに来たのよ。この写真を持ってね」
空想の話は先週の金曜日に遡った。夕方突然降り出した雨の音を
聞きながら、彼女は手紙を書いていた。ルルボンに出すためのものだ。
封筒の宛名も書き終えたところで、その女性はやってきた。あんころ
もっちーと名乗り、学生時代にニヤリンに世話になった者だが、近く
まで来たので寄ったのだといった。空想は少し訝しく思いながらも
部屋へ入れた。あんころは最初、普通に社交辞令を述べていたが、
突然空想の前に写真を出した。
「ニヤリンさんは本当は自分と結婚するはずだった、だけどあなた
との結婚を断ったら会社での立場が悪くなると思って、しかたなく
自分と別れたんだって、こんなこというのよ。そうして彼から貰った
っていう金の指輪を見せたりするの」
空想は目の端を吊り上げていった。
「どうして空想との結婚を断ったら、会社での立場が悪くなるの?」
「たぶんうちのお父さんが経理部長だってことをいいたいんだと思う
けど、冗談じゃないわよね。これが社長なら話も別だろうけどさ。
それに結婚を申し込んできたのは向こうなのよ。失礼しちゃうわ」
「そういってやったんでしょ」
「いったわよ。いったけど、信用しないの」
民主党が躍進なんて信じられないです。
そりゃ小泉改革は完璧に進んでたわけじゃないけど・・
株価が回復したり、それなりにうまくいってたのに
★必殺保守★
そんなはずはない、とあんころはあんことはいったのだそうだ。
ニヤリンさんは今でも自分のことを愛してくれていて、あなとなんか
本当は別れたいんだと。さすがに頭にきた空想は、あんころを追い
出そうと思ったが、ちょうどそのとき電話が鳴った。ニヤリンからだった。
雨が降っているので駅まで迎えにきてほしいという電話だった。
「それであたし、その女を待たせてニヤリンを迎えに行ったの。
本人から直接話を聞こうというわけ。あの人、女が部屋にいるって
ことを知ったら、急に青くなったわ」
情けない男ねえといいたいのを我慢して、
「正直で、嘘をつけないタイプなのね」
とルルボンは婉曲に表現した。
「ねえねえ、それからどうなったの」
「それがねえ、部屋に帰ったら、あの女はもういなくなってたの」
「あらどうして?」
「そりゃあ、帰っちゃったんでしょ」
「ふうん・・・そう」
拍子抜けして、ルルボンは全身の力を抜いた。
「だけどそのままじゃ我慢できないから、あたし彼を問いつめたのよ。
あの女との関係はどうなのかって。彼ったら、はじめはごにょごにょ
いってごまかそうとしてたんだけど、しまいには白状したわ。結婚を
前提に付き合っていたことがあるって」
「でも結局別れたんでしょ」
「彼はそういってる。でもよく聞いてみると、はっきりしないの。
どうやら今でもときどき会ってたらしいのよ」
「わあ、それは卑怯だな」
「そうでしょう、そうでしょう」
空想は背中を伸ばし、両方の握り拳を胸の前でぶるぶると震わせた。
「それであたし、どうにも嫌になって部屋を飛び出しちゃったのよ。
金曜の夜からは実家に帰ってたの」
「そうか、だから電話が繋がらなかったのね。あ、でも旦那がいるか」
「あの人、毎日残業でとても帰りが遅いの。12時過ぎにならないと
帰らないわ」
「ああ、それで」
そういえば、働き者だと手紙にも書いてあった。
「だけど今となっては、本当に残業だったのかどうか怪しいもんだわ。
あの女と会ってたのかもしれない」
そうかもしれないとルルボンも思ったが、口には出さず、
「東京にはいつから行ってたの?」と聞いた。
「木曜日からよ。気分転換ってこともあるけど、じつをいうと仕事を
物色するのが目的だったの。こっちの会社はやめちゃったし、あの人と
別れたら、もうここにはいたくないもの。だったら東京で暮らそうかと
思って」
「いいわ、それ、グッドアイディアよ。また二人で楽しくやりましょ。
で、いい仕事は見つかった?」
「それがねえ、なかなか条件が合わないの。現実は厳しいわねえ。
だからルルボンにも相談しようと思ってたんだけど」
「大丈夫、いくらでも相談にのったげる。でもその前にこのことを
はっきりさせようよ」
ルルボンは手紙と写真を指でつついた。
「おたくの旦那が出したんなら、なぜそんなことをしたのか聞かなきゃ」
「そうねえ・・・」
空想は頬に手を当てて逡巡してたようすだが、やがてその手を
ぱたりとテーブルに置いた。
「ルルボン、今からうちに来てくれる?このさい、いろいろなことの
決着をつけるわ」
「もちろん同席させてもらうわよ」
友達を思う気持ちと野次馬根性を半々に、ルルボンは大きく頷いた。
★保守★
ほっしゅっしゅ〜〜〜〜
民主党が躍進なんて信じられないです。
そりゃ小泉改革は完璧に進んでたわけじゃないけど・・
株価が回復したり、それなりにうまくいってたのに
☆保守☆
もひとつ保守
保守!
☆必殺保守☆
保守
▲▲
ミ,,・д・ミ < 保守だ!
oミu uミっ
゛゛"
「妙なことがもう一つあるわ。隣の人の話よ」
空想たちのアパートに向かって歩いてる途中、ルルボンは昨日のことを
思い出していった。隣室の男は、あの写真を見て夫妻に間違いないといった
のだ。そのことを聞くと、空想も首を捻った。
「おかしいわねえ、あたし、隣の人とはまだ顔を合わせてないのよ。
引っ越しの挨拶は彼が一人でしたかはずだから」
「ふうん」
あの隣の男、適当に答えただけだったのかなとルルボンは思った。
アパート近づくと、空想の顔は徐々にこわばってきたようだ。足の運びも
遅くなる。先ほど電話して、これから帰るということはニヤリンに知らせて
あった。
「さあ、行こうよ」
ルルボンが促すと、「うん」と小声で答えてルルボンはアパートの階段を
上りはじめた。
「なんだ、勝手に入ってくればいいのに」
と、やや固い笑顔でいった。空想は無表情で部屋に上がる。お邪魔します
といいながらルルボンも後に続いた。
入ってすぐがキッチンで、その奥に六畳間が二つあるという標準的な
2DKだった。どの部屋も奇麗に片付けられているが、古銭が額に入れて
あちこち飾られているのは少し異質だった。。座卓が置かれてある部屋で、
空想とルルボンは並んで座った。そして向き合うようにニヤリンが座る。
「何か飲み物でも・・・」
ルルボンに気遣ってかニヤリンは空想を見ながらいったが、彼女は
うつむいたまま返事をしない。しかたなくルルボンは、「おかまいなく」
といった。「そうですか」とニヤリンはひきつった笑いを浮かべる。
通夜のように雰囲気が暗かった。
とにかく話の糸口を見つけようと、ルルボンは例の手紙を出した。
「これが届いたんですけど、ご主人がお出しになったのですか」
手紙をちらりと見た彼は、小さく首をふった。
「いえ、僕は出しませんけど」
「あなたが出さなきゃ、誰が出すのよ」
ようやく空想が口を開いた。そえでニヤリンも色をなした。
「なぜ僕がこんなものを出すんだ。それにこの手紙がどうしたというんだ」
「中にこんな写真が入っていたんです」
ルルボンは写真を出し、ニヤリンの前に置いた。そして驚いている彼に、
今までのことを説明した。話を聞いた彼は、やなり首をふった。
「まったく覚えがありません。どうしてこんなことになったのか・・・」
「わかったわ、あの女の仕業よ。嫌がらせのつもりで、あの女がやったのよ」
空想がヒステリックに喚いたので、
「彼女はそんなことをする人じゃない」
とニヤリンはいった。しかしこの台詞は、空想をさらに興奮させた。
「ルルボン、聞いた?彼女ですって。やっぱり今でも好きなんだわ」
「何をいっている。そんなはずないじゃないか」
「だけど今でもときどき会ってっらっしゃるんでしょう?」
空想が涙ぐみ始めたので、ルルボンが代わりに聞いた。するとニヤリンは
つらそうに眉を寄せた。
「彼女は僕のことだけでなく、仕事だとか家族のこととかで悩んでて、
ノイローゼ状態なんです。それでつい先日も自殺をはかりました。幸い
命に別状はありませんでしたが。だから彼女から電話がかかってきて、
会ってくれないと死ぬからといわれると、会わざるをえないわけです。
でも本当に会うだけです。会って話を聞いてやれば落ち着くんです」
「嘘だわ、そんなの絶対に嘘」
「本当だよ。だけどもう信じてくれなくていい」
そういうとニヤリンは腕組みをして横を向いた。空想はひたすら泣いている。
まずいなあ。、とルルボンは思った。空想が離婚するのは全然かまわない
けど、このままでは後味が悪すぎる。
「あのう、いちおうその女性に、この手紙を出さなかったかどうか聞いて
みたらどうでしょう。空想でもご主人でもないとすれば、ほかに誰も
考えられないわけだから」
ニヤリンは仏頂面をしたまま考え込んでいたが、ルルボンの意見も
もっともだと思ったか、頷きながら腰を上げた。
「そうしましょう。このままじゃ、僕だってすっきりしないから」
ニヤリンがキッチンへ電話をかけに行ってくる間に、ルルボンは自分の
ハンカチで空想の涙を拭いてやった。空想はしゃくりあげながら、
「ね、ひどい話でしょ」
といった。ルルボンはまだ何ともいえないので、曖昧に答えてから、
「まあもし東京に来たなら、いい就職先を世話したげるから」と励ました。
「お願いよ。月給20万以上で、週休二日のとこね」
空想は泣きながらいった。
ニヤリンの電話は予想してたよりも長いものになった。ルルボンは
耳をすませ、その会話が少し奇妙なものであることに気づいた。
「はい・・・そうです。金曜の夕方にお見えになったようです。・・・
いえ、僕は会ってないのですが、女房が・・・はい、そうです。・・・
今からですか?ええ、まあ、かまいませんが。住所はですね」
電話を終えた彼は、ルルボンが聞く前にいった。
「彼女、行方不明なんだそうだ。先週の金曜からずっとだよ」
☆期待保守☆
感謝保守
☆金曜保守☆
日曜保守!
381 :
ほんわか名無しさん:03/11/30 14:30
さぁ全馬ゲートイン完了・・・スタートしました。
各馬きれいなスタート。
人気薄の1が好スタートでハナを奪います。鞍上はヒッキー。
第一コーナーをむかえて早くも縦長の展開です。先頭は良スレ。ネタスレが
2番手にひかえて差のない3番手に予想スレ。さぁ、好ダッシュをした
1の駄スレはどこでしょう。
いました、いました、ずいぶんと下がってしまっています。どんどん下がって
誰も見向きもしません。下がる、下がる、まだ下がる。
おーっと、ここで鞍上ヒッキー、自作自演のムチを入れた。一気に先頭に
踊り出る!
外からコピペがからんできた!内から母と精子もやってきている!
晒した、晒した、晒し返す、マジレス、ブラクラ、連続コピペー!
向こう正面、狂気の厨房状態になっています!
おーっと、駄スレ1の勢いが突然止まりました。
うってかわって放置プレイ。これはつらい展開だ、誰にもかまってもらえない!
鞍上ヒッキー必死に煽るも、みるみる1は下がっていく!
50馬身、100馬身、300馬身、どうやら態勢決したようです。
1の駄スレは早くもDATへと消えて行きました。
うしろからは誰も来ない、うしろからは誰も・・・
(;・∀・)競馬には詳しくないんだけど。。。保守
381にワラタよ。保守
☆期待穂酒☆
やってきた刑事は四十過ぎの丸い顔をした男だった。ずんぐりと
した体形でズボンのベルトの上に腹の脂肪が乗かっていた。
ニヤリンがあんころの家に電話したとき、ちょうどこの刑事がいて、
電話に出たのだ。彼は娘が行方不明になったという両親からの届けを
受けて、あんころの部屋を調べている最中であった。あんころは
一人暮らしをしており、いつからいないのかは不明だが、先週の金曜日
に仕事先に現れて以来、誰も彼女の姿を見ていないという。
「つまり現時点では、奥さんが最後にあんころさんに会った人という
ことになりますな」
空想の話を聞いた刑事は、何かを含んだような言い方をした。横で
聞いていたルルボンは、それがどうしたのよといいたかったがやめた。
さらに刑事は根掘り葉掘りさまざまなことを質問した。プライバシー
に関わることがほとんどだったが、空想もニヤリンも不快な顔ひとつ
せずに答えていた。
質問の矛先はルルボンにも向けられた。むろん例の手紙のことだ。
「その手紙と写真を見せていただけますか」
ルルボンはそれらを差し出した。刑事は手袋をして受け取った。
「お預かりしてかまいませんかな?もちろん後でお返しします」
返すのは当たり前だと内心毒づきながら、どうぞと答えた。
さらに刑事は、3人の指紋を採りたいといった。捜査の参考にする
だけで、必要無くなれば廃棄か返却するという。
しかたなく承諾すると、刑事は警察署に連絡した。間もなく鑑識係
がやってきて、3人の指紋を採取していった。
「あの刑事さん、あたしのことを疑ってるわ」
刑事たちが帰った後、空想がいった。
「あたしがあの女の人をどうにかしたと思ってるのよ。だからあんなに
しつこく聞いたんだわ」
「そんなこと考えてないさ。細かく聞くのは彼らの仕事だよ」
「でも指紋まで採ったわ」
「単なる捜査手順だよ。彼らが考えてるのはたぶん自殺のセンだよ」
たしかにそれがいちばんありうることのようにルルボンにも感じ
られた。空想も同感のはずで、その証拠に3人とも押し黙ってしまった。
「あたし、とりあえず失礼するわ」
口を開くと同時に、ルルボンは腰を上げた。すると空想も立ち上がった。
「待って、あたしも行く」
「でも空想は・・・」
「いいの」
そういうと空想はルルボンの腕をとって、玄関に向かった。
ルルボンはニヤリンを振り返った。彼は眉間にしわを寄せて座卓の
表面を見ているようだったが、彼女らが靴を履き終えると、
「ルルボンさん」と呼び掛けてきた。
「連絡先だけは知らせて下さい。警察に聞かれると困りますから」
ルルボンは空想を横目で見ながら、
「わかりました」と答えた。
392 :
ほんわか名無しさん:03/12/04 20:45
「ギャハー!!」
ルルボンは突然そう叫ぶと、懐からナイフを取り出し、空想の右目に突き刺した。
「ゲッ!」
ルルボンはひるんだ空想に、何度も何度もナイフを突き刺した。
「キャーーーーーーーー」
玄関の惨事に気付いたニヤリンが悲鳴をあげる。
Σ(・∀・;)
☆休日保守☆
395 :
ほんわか名無しさん:03/12/08 18:13
仲裁に入ったニヤリンはナイフで刺されて還らぬ人となり、
(´Д`;)ほ、保守。。
☆保守☆
☆保守保守☆
☆週明け保守☆
いつも保守すいません。ちょっと時間に追われて…キュー。
>>400 (*´∀`)ノ ダイジョブ!マターリ待ってるからね
☆金曜保守☆
夏休み過ぎてんじゃねーか
人は重度の危機感を感じた時、危機意識をエネルギーに変えることが出来る。
空想は恐ろしい速さでルルボンのこめかみを殴った。ルルボンは横向きにニヤリン
の死体の方に倒れ込んだ。その衝撃でルルボンは手に持っていたナイフを落とした。その時だ。
空想の右斜め前にいたニヤリンがよろけるようにおかしな動きで歩き出した。
それがなんの前兆であるか空想にはわからなかった。
知ってか知らずかルルボンはこめかみを手で押さえたまま逃げようとした。
空想、逃げろ、と誰かの声がする。空想は壊れ掛けたぜんまい仕掛けのロボットのよ
うな動きで近づいてくるニヤリンを見た。目がいっぱいに見開かれている。あまりに強く目を開
こうとしているので目尻から血がにじんでいる。口のまわりが奇妙なリズムでデタラメにヒクヒ
クと動く。歯が見え隠れしている。空想、伏せろ、とまた誰かの声がして空想は左側の地面に身を投げ出した。
銃声がけたたましく鳴り響いた。1発や2発ではなかった、マシンガンだ。空想は思った。
頭上で何かが激しく飛び散り吹き飛ぶ音がする。空想は完全にパニックに陥った。ここがどこで
今何をしていて何が起こっているのか、生きているのか死んでいるのか、夢ではないのか、何も
かもわからなくなった。銃声が止んだ。空想は恐る恐る頭を上げるとすぐ目の前に半分削られた
ルルボンの顔が転がっていた。思わず胃のあたりから何かがこみ上げ空想は激しく吐いた。
手にかかった嘔吐物は生暖かかった。その感触で空想は生きてることを実感した。
気付くと目の前に中年の男がいた。先程の刑事が深刻そうに立っていたのだ。
刑事は名前をアイムス・キャットマンと名乗りイギリス特殊空挺任務部隊SASの少佐だった。
アイムス少佐の顔は苦悩や絶望で歪んでいるように見えた。アイムスは目を落として
ブーツの足先でルルボンの死骸を転がしながら「何か異常な事態が起こっている」と言い、
ミネラルウォーターを一口飲み、少しの間話を休めて天井を仰いだ。そして
「何か異常な事態が起こっている」アイムスは最後にもう一度、そう言った。
駄目な映画を盛り上げるために 簡単に命が捨てられていく
違う 僕らが見ていたいのは 希望に満ちた光だ
おお*・゜゚・*:.。..。.:*・(・∀・)゜*:.。. .。.:*・゜゚・*━っ!!!!!
保守します。
412 :
ほんわか名無しさん:03/12/23 18:31
あげます
☆保守保守☆
☆土曜日保守☆