リレー小説 美少女戦隊☆レイジィバツース!

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1ほんわか名無しさん
「ううっ!寒いよぉ〜!」
二月も初旬のある晴れた朝、わたしは冷たい風の吹きぬける小道を歩いていました。
おやこんなところに!
3ほんわか名無しさん:03/02/04 10:42
エロトピア発見!!!!!!!!!!!!
4ほんわか名無しさん:03/02/04 10:42
今まで見たことも無いような異様な
5ほんわか名無しさん:03/02/04 10:42
性器が写っていた・・・
6ほんわか名無しさん:03/02/04 10:43
萎え
7ほんわか名無しさん:03/02/04 10:43
赤面しつつ目が離せない主人公。
そんな彼女の名前は・・・
8ほんわか名無しさん:03/02/04 10:43
でも、わたし女だから・・・
9ほんわか名無しさん:03/02/04 10:44


          第一部   〜完〜


10ほんわか名無しさん:03/02/04 10:46
わたしの名前は如月麻衣子。
11ほんわか名無しさん:03/02/04 10:50
わたしには人には言えない秘密があるの。
12ほんわか名無しさん:03/02/04 11:10
今日こそは隣のクラスのF村君にアタックだ!
13ほんわか名無しさん:03/02/04 11:15
よっし、寝よ。
14ほんわか名無しさん:03/02/04 11:21
布団の中で彼に想いを馳せる。
「会いたい。会いたいよ・・・」
15ほんわか名無しさん:03/02/04 11:27
「歯痛い。歯痛いよ・・・まじで」
16ほんわか名無しさん:03/02/04 11:48
「こんなに痛くちゃ眠れないじゃない!歯医者さん、逝くわ!」
さっそくマフラーを装備して佐藤歯科に向かう。
17ほんわか名無しさん:03/02/04 12:40
ああ、財布忘れた。家に戻る。
18ほんわか名無しさん:03/02/05 06:05
???「お前のサイフは漏れが頂いた!」
19ほんわか名無しさん:03/02/08 02:59
まい「きゃぁー!痴漢よー!」
20ほんわか名無しさん:03/02/09 01:23
男は執拗に恥部を責めていた・・・そのうち自分の
21ほんわか名無しさん:03/02/09 02:01
懐から眼鏡を出し麻衣子にパーチャク
22ほんわか名無しさん:03/02/09 15:09
まいこ「このままじゃヴァイヤーだわ!変身するしか!」
23ほんわか名無しさん:03/02/10 13:35
マイ「レイジィーコントリビューーーショーーーン☆」

キラキラ〜

ぽこ太「まいちゃんは変身すると美少女先師になるのだ!」
24ほんわか名無しさん:03/02/10 13:36
〜変身中〜
25ほんわか名無しさん:03/02/10 13:44
アニメのように変身のポーズをとって
おまじないを唱えるだけで変身出来る訳も無く
26ほんわか名無しさん:03/02/10 13:45
ビルの屋上から戦いを見守る影。

ドッピオ「彼女はなかなか素質がありそうだ・・・」
27ほんわか名無しさん:03/02/10 13:49
痴漢男はマイの頭を鷲掴みにすると、裏路地へと引きずり込む。

マイ「いやぁぁ!やめてよぉぉぉお!」
28ほんわか名無しさん:03/02/10 13:50
見守る黒い影
29ほんわか名無しさん:03/02/10 13:56
そして立ち去る黒い影。
30ほんわか名無しさん:03/02/10 13:57
男に惨い辱めを受けるマイ。しかしその悲痛な叫びは誰にも届くことは無かった。
そして一時間後・・・
31ほんわか名無しさん:03/02/10 13:59
マイは路地裏にボロ切れのように打ち捨てられていた。
マイ「うぅっ。こんなの酷いよぉ・・・。初めてだったのに・・・」
32ほんわか名無しさん:03/02/10 14:00
マイ「でも、まぁ、いいか。」
33ほんわか名無しさん:03/02/10 14:01
そして帰りに銀だこを沢山買い込んだ。

マイ「ホックホクョ〜♪」
34ほんわか名無しさん:03/02/10 14:03
再び現れる黒い影。
35ほんわか名無しさん:03/02/10 14:04
その黒い影を憑け回す白い影。
36ほんわか名無しさん:03/02/10 14:06
マイの瞳から突然涙がポロポロとこぼれ出した。
「うっ、うっ、F村くん・・・」
37ほんわか名無しさん:03/02/10 14:08
「・・・わたし、汚れちゃった・・」
38ほんわか名無しさん:03/02/10 14:14
海岸の散歩道。いつもは心地よく感じられる冷たい風も、
今日だけは身を刻むような鋭さが感じられた。

マイ「もう、死のうかな」
水からの影が漂う水面を覗きこむ。。。
39ほんわか名無しさん:03/02/10 14:20
そこへF村君がやってきて
40ほんわか名無しさん:03/02/10 14:21
F村「よう!マイじゃねーか。なにやってんだ?」
41ほんわか名無しさん:03/02/10 14:23
F村「今、暇か??」
42ほんわか名無しさん:03/02/10 14:30
マイは顔を合わせることが出来ない。
F村「何だよ。泣いてるのか?」
43ほんわか名無しさん:03/02/10 14:33
F村「何か取り込みちゅうか?じゃ、俺逝くわ。」

F村は去っていった。
44ほんわか名無しさん:03/02/10 14:34
マイ「待ってf村君!」
45ほんわか名無しさん:03/02/10 14:35
ガバッ!
マイはF村に後ろから抱きつくと、嗚咽と共に泣き崩れる。

F村「おいっ!どうしたんだよ!」
46ほんわか名無しさん:03/02/10 20:31
F村「泣いてちゃわかんねーだろ。どしたんだよ?」
47ほんわか名無しさん:03/02/10 20:38
「あたし、あたし汚されちゃったよおぉぉぉぉ・・・」
48ほんわか名無しさん:03/02/10 20:47
博士「マイちゃん!そんな男とイチャツイテル場合じゃないぞ、緊急事態だ!」
49ほんわか名無しさん:03/02/10 21:37
F村「何だ?このくそじじい??
   人の恋路をじゃまする奴は馬に蹴られて氏んじまえって知らねぇのか?」
50ほんわか名無しさん:03/02/11 11:00
博士「えーい、邪魔だどけこの若造がぁ」
51ほんわか名無しさん:03/02/11 18:22
そう叫ぶと、博士は大怪獣に変身した!
52ほんわか名無しさん:03/02/12 02:58
マイ「博士なんて、大ッ嫌い〜!!!」

神速の張り手で博士を瞬殺するマイ。
53ほんわか名無しさん:03/02/12 19:36
博士「ぐうっ、飼い主の手を噛みやがったな、だが、ただでわ死なん!」
54ほんわか名無しさん:03/02/12 20:04
博士「貴様も道連れだ〜〜!!」

博士が自爆しようした・・・・その時!!!
55ほんわか名無しさん:03/02/12 20:05
???「そうはさせないぜ!?」
56ほんわか名無しさん:03/02/12 20:08
爆発であたりが光に包まれた・・・

マイ「あぁ・・・私もうだめなのね・・・」
57ほんわか名無しさん:03/02/12 20:34
その頃・・・
58ほんわか名無しさん:03/02/12 21:03
宇宙はヤヴァかった・・・・・
59ほんわか名無しさん:03/02/12 21:04
どれくらいヤヴァかったかと言うと・・・・・

ラピュタは本当にあったんだ!!!

てくらいヤヴァかった。
60ほんわか名無しさん:03/02/12 21:05
あまりヤヴァくなかった・・・・・超スマン。
61HP ||||||||||||||||||||・・ ◆oScQ6qzT4Q :03/02/12 21:12
それはともかく(失礼)宇宙では、銀河系を荒らし回る凶悪宇宙強盗団「ベルーガ」が
今日も数千隻の宇宙船団を率いて惑星を占領、暴虐の限りを尽くしていた。
62ほんわか名無しさん:03/02/13 20:25
そう、後にマイとその仲間達☆レイジィバツース☆と凌ぎを削ることになるあのベルーガだ。
63ほんわか名無しさん:03/02/13 21:02
ガッツ石松に似ているともっぱらの噂のあのベルーガとは違う。
64ほんわか名無しさん:03/02/13 21:18
ベルーガ・・それはイマイチ売れない二流芸人と低収入ホストで構成された凶悪宇宙強盗団だ。
65ほんわか名無しさん:03/02/15 10:03
しかし、そんなベルーガも可愛い小動物が大好きで
つい抱き上げて幼児言葉を使ってしまうというのは
誰にも知られちゃいけない 秘密だ。
66ほんわか名無しさん:03/02/15 10:25
その秘密を知った香具師は「KILL!」なりよ
67ほんわか名無しさん:03/02/15 10:28
さらに、ベルーガにはとてつもない秘密があった


・・・・・それは・・・・・・
68ほんわか名無しさん:03/02/15 11:28
凶悪宇宙強盗団にもかかわらず、
"国境のない医師団"並に平和を愛している
という事だ。
幹部を始め皆、口にこそしないが
彼らの本当の想いは一つであった。

このことに比べれば全員がズラである事など
些細なことに過ぎなかった。

そして彼らは、理想と現実のギャップに
毎夜苦悶するのだった。
69ほんわか名無しさん:03/02/15 12:49
そんなベルーガの一人、さくちゃんは実はマイに淡い恋心を抱いていた。
70ほんわか名無しさん:03/02/15 12:56
その頃地球ではマイの葬儀がしめやかに
執り行なわれていた
71ほんわか名無しさん:03/02/15 17:12
第一章 〜地下墓地〜
72ほんわか名無しさん:03/02/15 21:18
さくちゃんは、とうとうゾンビパウダー
を手に入れ、マイの墓へ行った。
そして、マイの墓を掘り返しはじめた。
すると、聞いた事も無いような、叫び声が
地中から聞こえてきた、、、
73ほんわか名無しさん:03/02/15 21:41
叫び声に怯えながらも、
マイの為に掘りつづけた。

しばらくすると、土とは違う感触が
スコップから伝わってきた。
さく「やったぞ!!石油を掘り当てたぞ!!」

石油を掘り当てた、、、これは裏の世界
での隠語で、、、、
74ほんわか名無しさん:03/02/15 22:18
レイープシテ
75ほんわか名無しさん:03/02/16 23:51
レイープイクナイ
76ほんわか名無しさん:03/02/17 00:14



                   第2部 完



77セビリア・モンテネグロ ◆ipcGD1jOQY :03/02/17 00:25
第3部〜もうエロいのはやめよう〜
78ほんわか名無しさん:03/02/17 07:57
チュンチュン・・・
・・・朝にはお約束の、スズメの鳴き声が聞こえる・・・
ジリリリリ・・・お約束の目覚し時計のベルが聞こえる・・・
・・・リンッ

「ふぁ〜。・・・何か、変な夢を見ていたなぁ・・・」

麻衣子は布団の中から手をのばしベルを止める

「・・・色々とアレな夢だったけど・・・でも、F村君に抱きついちゃえるなんて・・・
・・・よっし、今日こそはF村君にジェットストリームアタックだぎょん!」

人様に聞かれたら電波としか思われない台詞を大声で叫ぶと、麻衣子は園児服に着替えた
・・・着替えるのは、食事を済ませてからのほうが良いと思うのだが・・・
79ほんわか名無しさん:03/02/17 09:21
一方そのころ、彼は人知れず「悪」と闘っていた。。。。
80ほんわか名無しさん:03/02/17 09:24
「彼」とは? 
そして「悪」とは? 

それはいずれ明らかになるであろう。。。
81ほんわか名無しさん:03/02/17 11:24
まあ、そんなこんなで無事食事を済ませ
学校へと向かう麻衣子であった。

「うー、でも、こういう場面はやっぱり・・・遅刻遅刻!!よね?」
慌てて、駆け出す麻衣子。
しかし、十字路で横道から出てきた女性とぶつかってしまう

麻衣子「あたたたた・・・・・・」
女性「大丈夫?」
倒れた麻衣子に手を差し伸べる女性

麻衣子「あ、せ、先生!!ご、ごめんなさい!」
その女性は麻衣子の担任教師「朝河 百合子」であった。
パーフェクツな容貌の百合子は男女に関わらず学校中の生徒の憧れであった。
82ほんわか名無しさん:03/02/17 11:34
しかし、百合子にとって女教師はあくまで仮の姿。
その正体は、悪の秘密結社「黒田重工梶vの幹部の一人「リリー」であった。
しかし、結社の制服は当然ベタなエロエロ全開コスチュームなのが
彼女の悩みであった
83ほんわか名無しさん:03/02/17 11:46
そこにいかにも悪役顔のいかつい中年男性が現れた。
中年特有のくたびれた感じは無く、どう見ても
カタギの人では無さそうであった。

麻衣子「あ、校長先生!オハヨウございます!!」
麻衣子の方に視線を走らせる校長・・・・・・
急に優しい笑顔になり
校長「おはようございます。今日も元気そうですね〜w」

実は校長こそが美少女戦隊☆レイジィバツースの総司令
「岩山 厳蔵」その人なのである。顔は怖いが性格は至って温厚。
小型犬をこよなく愛するナイスミドルである。
84ほんわか名無しさん:03/02/17 12:21
黒田重厚渇議室

パイロット姿の男「で、例の計画の進行状況は?っていうかぶっちゃけいつ決行できるわけ?」
あきらかに某アイドルを意識した格好のこの男、黒田重機且ミ長"黒田獣騎"である。
若干25才にして、父親からひきついだ小さな会社を世界一の重機製造販売会社にした
男である。現在では兵器関係の生産まで行っているとの噂である。
85ほんわか名無しさん:03/02/17 21:05
・・・教室・・・

麻衣子&モブ「おは〜」「おは〜」「おは〜」「おは〜」「おは〜」「おは〜」
最近の若者はまともに挨拶も出来なターン・・・
・・・若者らしい挨拶を交わしながら、麻衣子は自分の席に向かう・・・

そして、椅子に座ろうとし数秒静止・・・
麻衣子「・・・どうして、いつもこうなのかな・・・」
軽い頭痛を伴いながら、椅子の上に乗せられたブーブークッションを手に取る。
?1「ねじーヽ(´ー`)ノ・・・また失敗してしまったねじーヽ(´ー`)ノ・・・」
?2「くくく・・・」
?3「ほっしゅほっしゅ!」
麻衣子の方に3人のιょぅι”ょがやってくる
麻衣子「まったく、あんたら『アレトリオ』は・・・」

・・・この『アレトリオ』と呼ばれる3人娘たちは
麻衣子の同級生にして、美少女戦隊☆レイジィバツース別働隊『アレトリオン』のメンバーである。
・・・が、その存在を知るのは総司令である校長だけなので
麻衣子にとっては『アレトリオ』という名前の漫才トリオでしかないのであった。

麻衣子「とりあえず、あんた等の紹介は後日ね。・・・後日があればだけど」
さり気無く、ひでぇ事をサラリと言ってのけた麻衣子は、3人を無視して授業の用意を始めるのだった。
86ほんわか名無しさん:03/02/18 12:16
もうすぐ授業が始ろうとしていたそのとき、
麻衣子の携帯が静かに震えだした。
携帯を覗き込み、
「ごめん、頭痛くなってきたから
今日は帰る。先生に言っといて。」
と隣の席の娘に伝えると
麻衣子は大急ぎで教室を飛びだした。
携帯に届いたメール、
それは校長よりのスクランブル要請だった。
87ほんわか名無しさん:03/02/18 14:02
「4丁目のたばこ屋のおばあさんが危ない!」
麻衣子は走った。
88ほんわか名無しさん:03/02/18 14:09
89ほんわか名無しさん:03/02/18 14:30
杞憂だった。
90ほんわか名無しさん:03/02/18 18:34
杞憂は麻衣子の無二の親友だった。

杞憂「麻衣子ちゃんどうしたの?」
麻衣子「えっ?あぁ、おばあさんが危ないのよ!」
91ほんわか名無しさん:03/02/19 00:12
一方その頃・・・・  校長は小犬と戯れてた。 「ぬおー、カワイイでちゅねー!」
92ほんわか名無しさん:03/02/19 00:50
見守る黒い影
93ほんわか名無しさん:03/02/19 00:52
それを見守る黄色い影。
94ほんわか名無しさん:03/02/19 08:42
黒い影「ついにハーケンしたユンボ!」
黄色い影「課長に報告ブルですね!!」
二つの影は黒田重工鰍フ改造社員
"田中ユンボ主任"とその部下"中村ブル"だった。
彼らは社内では、その仕事内容と普段好んできている
服の色から"標識ロープコンビ"と呼ばれている。
彼らの仕事とは、組織の裏切り者や逃亡者の
居場所をつきとめる事だ。
95ほんわか名無しさん:03/02/19 19:31
田中ユンボは早速携帯を掛け始めた。
田中「あっ課長でかユンボ?田中ですユンボ。
はい。ついにハーケンしましたユンボ。
間違いなくやつですユンボ。今は「岩山 厳蔵」と
名乗っているようですユンボ。はいユンボ、はいユンボ、
えっ自分らがでありますかユンボ
わっわかりましたユンボ」
田中の顔が強張っている。
中村「どうしたでブルか?」
田中「俺達で処理しろってユンボ」
中村「エ〜僕達でブルか?」
田中「そうだよユンボ。俺たちでやつから
レイジィースーツを取り返すユンボ!!」
96ほんわか名無しさん:03/02/19 19:46
一方、
97ほんわか名無しさん:03/02/19 19:54
杞憂「おばあさんなら元気じゃない。ほら」
麻衣子「煤i ̄□ ̄;」

百ヤード先の先頭の煙突を攀じ登るおばあさん。
98ほんわか名無しさん:03/02/19 20:23
麻衣子「ちっくしょあのハゲ(校長)!いつかぬっ殺す!!」

99ほんわか名無しさん:03/02/19 20:24
校長「!殺気!!」
100ほんわか名無しさん:03/02/19 20:30
ダダダッε=ε=εε=ε=ε=( ´_ノ`)つ[バリカン]   ダダダッε=ε=εε=ε=ε=( ┯_┯)
101ほんわか名無しさん:03/02/20 05:27
第三章 〜校長の密かな愉悦〜
102ほんわか名無しさん:03/02/20 05:44
小学校の地下に設けられた平和の最後の砦。
黒い大理石を敷き詰めた楕円の広間。床にはセイレーンと白い翼を持つ鳥獣のレリーフがあしなわれている。
円形の「ステーション」から八方に伸びるカタコンベ(地下墓地)さながらの広大なハイテク施設。
そここそが「レイジィバツース」の本拠地であった。

校長「今年の適正検査を通りそうなものは幾人かはいるのかね?ドクター。」
レイコ「校長…。お尻から手をどけてください…。」
103ほんわか名無しさん:03/02/20 06:00
レイコ「残念ながら今年は該当者なしですね。」
校長「うむ。しかし現在の人数では黒田重工(株)の魔の手を押さえつけることは…。」
レイコ「麻衣子ちゃん達は頑張ってくれていますわ。」
校長「近い内に海外の同盟組織から一名補員することとしよう。」
レイコ「!まさか彼女をこの学園に?」

モニターと訓練施設に厳しい眼差しを注ぐ校長。
広間の大理石は、まるで彼らの不安の暗喩であるかのように、
晧々と注ぐ太陽光照明システムの明かりをその漆黒の彼方に引きずり込んでいた。

レイコ「校長、お尻…。」
「ピシッ!!」甲高い打撃音が広間の静寂を引き裂いた。
104ほんわか名無しさん:03/02/20 10:07
一方、学校の裏山の芝生では〜

麻衣子「あー、もうつっまんなーい」
杞憂「平和だってことじゃない」
麻衣子「まったく黒田重工の連中もホネの無い奴ばっかだねぇ〜」
杞憂「あはは・・・。(汁)」

木の影から二人を狙う物陰・・・。
105ほんわか名無しさん:03/02/20 10:23
田中ユンボ「キエエエエェェイイイ!!」
奇声をあげて襲いかかる黒田重工鰍フ刺客!!

麻衣子は寝そべりながら、逆さに流し目を送る。

麻衣子「あぁ?百年早いよ・・・」

閃光が迸り、田中ユンボはズタズタになって芝生を転げていった。
中村ブル「相棒の仇!!!」
麻衣子「あなたはそーね・・・左手で三秒よ。」
お互いに駆け寄る二人。
106ほんわか名無しさん:03/02/20 10:29
カッ!!!

すれ違い様に一撃を叩きこんだ二人。

中村ブル「ひ・・・左手って・・・言ったくせに・・・・」
麻衣子「あっ!ごめん右が出ちゃったぁ!!(照)」
杞憂「右の・・・蹴りがね」

中村「ぐふっ!(死)」
107ほんわか名無しさん:03/02/20 10:46
中村ブル(ふふふ…。しっかり発信機は付けさてもらいましたよ)
麻衣子「こいつどーしよっか」
杞憂「あ、麻衣子ちゃん何かついてる」
麻衣子「うそ取ってー。」
中村「ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン」

麻衣子「さてと、簀巻きにして川に流すか」
108ほんわか名無しさん:03/02/20 10:47
道端にエロトピアが落ちている
109ほんわか名無しさん:03/02/20 10:53
杞憂はエロに弱かった。

杞憂「イ、イヤァァアア!」
田中ユンボ「ふふふ。作戦成功だ!今のうちに・・・アレ?」
何者かが首根っこを引っ掴んだ。

麻衣子「右手と左手どっちでイキたい?」
田中「み・・・右・・・」
麻衣子「どっせぇぇえええええいい!!!!」

その夜、二つの流星が夜空を彩ったという。
110ほんわか名無しさん:03/02/20 11:14
中村「わ、わかったから落ちつけブル!」
麻衣子「ブル?」
杞憂「きっとブル語尾なんだわ(ヒソヒソ)」

田中ユンボ「お前達の校長がどんな男なのか教えてやるユンボ!」
麻衣子「へぇ・・・。」
111ほんわか名無しさん:03/02/20 11:17
麻衣子「いらない。杞憂ちゃん。」
杞憂「レイジィギガエクスタシス!!!」

田中・中村「ギャァァァアアアア!!!」
ちゅどーん!!
112ほんわか名無しさん:03/02/20 18:46
濛々と立ち込める黒煙の中
横たわったままピクリとも動かないが
田中は辛うじて息をしていた。
中村は少なくとも彼の視界にはなかった。
あたりを見回そうにも手足の感覚すらない今の状況では
かなわない事だった。
いや、彼にはもはやその気力すらもなかった。
徐々に朦朧として途切れそうな意識の中、
根っからのサラリーマンの彼は会社の事を思った。
(あぁ〜課長にまた怒られるユン....)
113ほんわか名無しさん:03/02/20 20:35
息絶えた田中の首を一人の男が手に取った。
さっきまではそこにいなかった男である。
男の手から煙が上がり肉の焼ける臭いが
あたりに広がった。
紺のスーツ、綺麗に7:3に別けられた髪
黒ぶちのめがね、やや猫背気味に曲げられた背中が
小さな体をさらに小さく見せていた
いかにもうだつのあがらない
中年サラリーマンだが、かれは
黒田重工鰍フ逃亡者追跡課課長で
田中、中村の直属の上司であった。
もちろん改造済みである。
114ほんわか名無しさん:03/02/20 23:18
麻衣子は直感で判断した。

「こいつ・・・ヤバイ!」
115ほんわか名無しさん:03/02/21 00:22
「こういうときは逃げるに限るわね。」
麻衣子はとっとと逃げ出した。
116ほんわか名無しさん:03/02/21 02:01
第四章 〜呪紋〜
117ほんわか名無しさん:03/02/21 02:02
話は変わって、とある一家の情景。
118ほんわか名無しさん:03/02/21 02:11
さくら「お母さーん、もう準備できたよー」
もも「ほらおとーさんもはやくー」

母「さぁ、ミサを始めましょう」
119ほんわか名無しさん:03/02/21 02:30
祭壇には醜悪な悪魔が祭られている。
120ほんわか名無しさん:03/02/21 12:38
いや、祭られていると言うよりは、
祭壇に閉じ込められているといった感じである。
よくみると綺麗に手入れされてはいるものの
悪魔象も祭壇もかなり古いものであろうと推測できる。
父「さくら、ももよく聞きなさい。
ご先祖様が"邪悪なる物"をこの悪魔象の中に封印されて
500年、我々一族はその封印を守り続けてきました。」
さくら、もも「お父さん、またその話ー」
母「黙ってお父さんの話をお聞きなさい」
父「ご先祖様が人知れず"邪悪なる物"を
封印されるまでは、町には様々な魑魅魍魎が
溢れていたと伝えられています。
今この国がこんなに平和なのは
ご先祖様のお陰なのです。」
母「さぁ、ご先祖様に感謝しつつ、
今日一日の平和を祈りましょう。」
さくら、もも「はーい。」

”さくら””もも”は美少女戦隊☆レイジィバツースの一員である。
121503 ◆Yyuy8TrzHs :03/02/21 18:09
次の日の帰り道、日はとっくに沈み、空を重い蒼に染め上げている。
山に囲まれた辺りは一層暗く、尾根の輪郭から覗く蒼白い月明かりが辛うじて
心許ない足元をぼんやりと照らし出していた。

さくら「あー、疲れた疲れたー!今日は早く寝よっと」
もも「おねーちゃん宿題手伝ってくれるって言ったじゃん」
さくら「バカ!そんなんだからいつまでたっても"封魔の法"を使いこなせないのよ!」
もも「ももは魔力が高すぎるからコントロールできないだけだってお父さんが言ってたもん」
さくら「バカねー。そんなのお世辞に決まってるじゃない」
もも「おせじ?」
さくら「社交辞令ってやつよ」
もも「そっかー、"しゃこうじれい"かぁー」
勃起するほど良スレ!!
123ほんわか名無しさん:03/02/21 21:41
さくらとももの前に、突然一人の変質者が
勃起しながら立ちはだかった。
124ほんわか名無しさん:03/02/22 01:35
もも「キャァァアア!」
さくら「へ・・・変態よぉぉ!!誰かぁ!!」

その瞬間、双筋の閃光が変質者を切り裂いた。

弥生「大丈夫か?」

彼女は無明真眼二刀流師範代目録の剣士であり、美少女戦隊☆レイジィバツースの最古参メンバーである。
125ほんわか名無しさん:03/02/22 04:42
第五章 〜ザ・サード・オブ・イッツ・カインド〜
126ほんわか名無しさん:03/02/22 05:08
「重力子フィールド反転。」
「各パラメータ、以上ありません!」
「安全装置解除ッ!」

「イグニッション!!」
127ほんわか名無しさん:03/02/22 07:24
大気圏外では宇宙盗賊団「ベルーガ」と国連宇宙軍との追跡戦が行われていた。
128ほんわか名無しさん:03/02/22 09:20
一方、マイのクラスでは転校生が紹介されていた。
彼女はフランスの帰国子女でやはり母方がフランス人らしかった。
金色というよりはほとんどクリーム色に近い柔らかな巻き毛が、
暖かい色白な顔とエメラルドの瞳は際立たせている。

リリス「リリスといいます。みなさん宜しくお願いします。」

麻衣子(うわぁ綺麗。お人形さんみたいな子〜。)
教室中どよめきあっている。
校長「さぁ、そこが空いてるな。」

リリスは麻衣子の右隣の席に腰掛けると、親しげにウィンクを交わす。
麻衣子は一瞬ドキッとした。まるで彼女のことを以前から知っているかのようだった。
129ほんわか名無しさん:03/02/22 09:29
そう、リリスこそが美少女戦隊☆レイジィバツースに補員された強力な助っ人であり、
フランスの機密防衛組織"サード・アイ・ブラインド"の特殊要員であった。
130ほんわか名無しさん:03/02/22 09:40
リリス「(ふふ・・・この子が麻衣子ちゃんね。カワイイわ)」
麻衣子は妙な視線に少し戸惑いながらも、黒板に集中しようと努めた。

担任の百合子は校長と転校生の突然の介入を訝しく思いながらも、
黒田重工鰍ノ提出するレポートのことを気にかけながら、とりあえずは
目先の算数の授業に専念することとした。
131一旦まとめ:03/02/22 09:49
美少女戦隊☆レイジィバツース

麻衣子・・・リーダー(?)とにかく強いらしい。
杞憂・・・強力な魔法が使えるらしい。(名前・・・w)
さくら・もも・・・封魔の法とやらが使えるらしい姉妹。妹の潜在能力が凄いらしい。
弥生・・・無明真眼二刀流の使い手らしい。一番先輩らしい。
リリス・・・謎の新メンバー。フランスハーフの転校生。瞳がエメラルド色らしい。
132一旦まとめ:03/02/22 09:54
黒田重工

田中ユンボ・・・下っ端。麻衣子に一撃でやられた後右手でイッた。
中村ブル・・・下っ端。やはり麻衣子の一撃に伏した後、杞憂の大魔法で昇天。
課長・・・上の二人を回収しにきた。校長を追っているらしい。
朝河 百合子(リリー)・・・麻衣子の担任にして、黒田重工鰍フ幹部。ボイン。

宇宙海賊団「ベルーガ」

さくちゃん・・・(?)
133一旦まとめ:03/02/22 10:00
その他。

校長(岩山 巌蔵)・・・レイジィバツースを束ねる。黒田重工鰍ニ因縁がある。
レイコ・・・レイジィバツース専属のドクター。校長のセクハラに悩んでいる。
アレトリオ・・・レイジィバツース別働隊の三人組。その存在は高い位の幹部にさえ知られていない。
F村くん・・・麻衣子が片思いを寄せる隣クラスの男子。薄情。
博士・・・夢の中で麻衣子を爆殺した謎の人物。
ポコ太・・・なんだったんだよ。
134ほんわか名無しさん:03/02/22 10:18
>>132 黒田獣騎は?
135ほんわか名無しさん:03/02/22 11:44
そして六人目の美少女戦士が現れるのはこのスレのレスが200
に達成してからのことであった
136大魔王 ◆xdqi7eMKRA :03/02/22 11:51
また、これ復活したのか・・・
137ほんわか名無しさん:03/02/22 17:47
百合子先生が算数を教えていると突然めまいが
138ほんわか名無しさん:03/02/22 18:39
危険だ。これは最近流行りの新種ウイルス、
「激しくC型」に感染したのかもしれない。
139ほんわか名無しさん:03/02/22 23:36
黒田重工の"例の計画"の始まりであった
140ほんわか名無しさん:03/02/23 00:15
長い時間の中で、取り残されたかのように佇む廃工場。
その廃工場の中は薄暗く、地面には厚く埃が溜まっていた。
静寂と緊張に包まれ、人を寄せ付けない、まるでそこだけが異世界で
あるかのような錯覚を覚える。
その殺伐とした雰囲気から、廃工場の中へ足を踏み入れる事をためらう。
だが、男はすぅっと軽く息を吸いこみ、奥へと進んで行く。
薄暗く広い工場内に男の足音だけが響く。
しばらく進んで行くと、天井に穴でもあいているのだろうか、
柔らかな光が一筋、この暗い廃工場の中へ射していた。
その、まるでスポットライトかのような光の中に一人の少女が
コチラをジッと見つめ、立っていた。
141ほんわか名無しさん:03/02/23 00:29
しかしその少女はただの迷子だったので
「ママ〜」と泣きながら去っていった。
142ほんわか名無しさん:03/02/23 13:12
しかし迷子はママを見つけれずに死んでしまいましたとさ
143ほんわか名無しさん:03/02/23 18:05
>>140から>>142が"
激しくC型"と共に広がっている"迷子の少女"の
話です。」 レイコは校長につげた。
144ほんわか名無しさん:03/02/24 01:15
「あ、そ。」

校長はゴルフクラブを磨きながら来週の
「第38回高校対抗校長先生ゴルフコンペ」に
思いをはせていた。
145ほんわか名無しさん:03/02/24 05:19
レイコは白い目を校長に向けながら思わせぶりに嘯いた。

レイコ「あーぁ、今夜はホテルに食事の予約取ってあったんだけどなぁー」
校長「して何だね?そのウィルスと寓話の関連性は?」
146ほんわか名無しさん:03/02/24 05:41
第六章 〜アンチボディーズ〜
147ほんわか名無しさん:03/02/24 08:33
レイコ「まだ、原因は解りませんがこの話を耳にした1週間以内に
10人が10人とも"激しくC型"に感染し発病していると言う事です。
生徒達の間では少女の呪だとさえ噂されています。」
校長「なんだって!!」
レイコ「そうです。早く原因を着きとめないと私達も....」
148ほんわか名無しさん:03/02/24 09:47
〜給食の時間

リリス「隣いいかしら?」
麻衣子「うん!空いてるよー」

楽しげに自己紹介をする麻衣子を抱擁するような笑顔で見つめるリリス。
麻衣子「ん?顔にごはんつぶでもついてるかな?」
リリス「ううん、あなたのことは何でも知ってるから」
麻衣子「?」

リリスはスープに憂い気な視線を落としながら、髪をいじりながら切り出した。
リリス「ところで、あの話は既に広まってるのかしら?」
麻衣子「あの話?」
リリス「可哀想な迷子の少女のお話。」
149ほんわか名無しさん:03/02/24 10:14
麻衣子「?」
パンを口いっぱいに頬張りながら
麻衣子は小首をかしげた。
リリス「その様子では、まだ貴方の耳には
入ってなさそうね。」
リリスはほっとした表情でスープを口に運んだ。
150ほんわか名無しさん:03/02/24 10:36
レイコ「"激しくC型"はそれ自体ではインフルエンザに似た単なる感染症です。
    健康体ならば数週間で完治するでしょう。」
校長「では何が問題なんだ?」

〜黒田重工渇議室

百合子「それはこのウィルスが"存在しえないもの"であるという事実です」
社長「例の計画への転用は諦めるしかないか…」
百合子「今は打開策を練っているところです」

〜教室

麻衣子「そのお話を聞くとどうなるの?」
リリス「大抵の人間には悪夢を、選ばれたものには螺旋の傘を描く無限の"ビジョン"を授けると云われているわ」
151ほんわか名無しさん:03/02/24 13:39
黒田重工鞄ヲ亡者追跡課

課長の机の前に制服姿の女性が思いつめた表情で立っている。
課長「三上君、考え直す気はないかね。
今ならまだ私の力で何とか取消せるのだが。」
三上「いいえ、もう決めた事ですから。」
課長「田中君の事は残念だが、君があの課に移っても
彼は決して喜ばんと思うぞ。」
三上「田中の事は関係ありません。」
課長「しかしね君、あの課に移ると言う事が
どういう事か解っているのかね?」
三上「はい。百も承知です。」
課長「・・・そこまでの覚悟があるのなら、
三上慶子本日付を持って調査部強襲課勤務を命ず」
三上「有難う御座います」
三上慶子は田中ユンボのフィアンセであった。
そして調査部強襲課とは別名"怪人課"と呼ばれる部署である。
152ほんわか名無しさん:03/02/25 00:37
黒田重工鰹d役会議室

百合子「依然"計画"にはあの男が持ち出した"レイジィスーツ"のオリジナルデバイスが必要です。」
社長「あの男のことなら追跡課にまかせてある。いずれ結果を出すだろう」
百合子「しかし時間が・・・!」

社長はやおら立ち上がり、窓の外に並び立つガラスの塔と遥か下界を一瞥すると、彼女の肩に手をおいた。
百合子がビクッと体を震わせると、社長は耳元で囁いた。

社長「心配なら君自身が動いてもいいんだよ。」
百合子「そ、それには…賛成しかねます。私には有事の戦闘能力には長けていません」
社長「そう思って、君には取っておきの用心棒を用意した。」
153ほんわか名無しさん:03/02/25 00:50
社長「入りたまえ。」

会議室に入ってきたその男は、銀髪痩身の大男だった。腰には彫りが印象的な長刀を納めた鞘を携えている。
どうやら盲目らしく、両目から額にかけて包帯で厚く巻いてあるようだった。
だが、その下から覗くスラリと通った鼻と薄い唇、白い肌と輪郭とが、その若さと端正な顔立ちを物語っていた。

百合子「この男をわたしに?」
男「勘違いするな。俺は奴らの一人に用があるだけだ」
百合子「レイジィバツースとは以前に戦ったことが?」
男「いや、無明心眼二刀流の使い手がいると聞いた。そいつと手合わせ願いたい」
社長「そう急くな。いずれ時期がくるさ…」

社長は不適な笑みを窓の向こうにくれてやった。夕日が沈みかけ、反対の窓に映る蒼い月が、
不気味にその宵光と溶けずに重なった。
154ほんわか名無しさん:03/02/25 05:12
第七章 〜When Things Go Wrong〜
155ほんわか名無しさん:03/02/25 05:31
それは一瞬のことだったのだろうか?それとも一時間?いや、もしかしたら一年だったのかもしれない。
永遠をその襞に孕んだ刹那の慟哭が、彼女の心の最も奥深い所で弾け、時の刻みを乱し、
その配列を砕いてしまった。
リリスは麻衣子の唇から粘膜を引いてゆっくりと遠ざかると、柔らかな笑顔でこう呟いた。

「ほら、これでもう大丈夫」

麻衣子の表情は驚きから恍惚のそれへと兆しを見せるが、すぐに我を取り戻し動揺を抑え切れなくなった。

麻衣子「い・・・今のは?!」
リリスは口元を指で愛しげになぞりながら、小悪魔的な微笑を浮かべる。

リリス「おまじないよ。」
156ほんわか名無しさん:03/02/25 05:50
地下の一角に位置する"怪人課"はその名前とは裏腹に、非常に洗練された研究室のような趣で佇んでいる。
三上慶子はそのキャリアに物を言わせ、ここの指揮権を握った。
フィアンセの無念をどうしても自分の手で濯ぎたかった。

「レイジィバツースを皆殺しに…」
しかし彼女達がまだ年端もいかないいたいけな少女達であることを、知る術はなかった。
157ほんわか名無しさん:03/02/25 08:28
〜一方、宇宙海賊団「ベルーガ」の旗艦"エグゼクター"は連邦に押収され、
リーダーのさくちゃんが駆る小型艇"アベンジャー"が学校近くの森に不時着していた。
158ほんわか名無しさん:03/02/25 08:34
さくちゃん「ここは何処?私は誰?」
緑の妖精「君はボンボレだよ!」
159ほんわか名無しさん:03/02/25 08:38
さくちゃん「ボンボレ?」
緑の妖精「ボクを惑星カリオペまで連れて帰ってくれるなら、助けてあげるよ!」
160ほんわか名無しさん:03/02/25 08:41
さくちゃんは朦朧とする意識の中、緑の妖精の戯言を話半分で聞いていた。
そして手元の花束に気づいた。

さくちゃん「そうだ!今日は愛しの麻衣子ちゃんに会いに来たんだ!」
緑の妖精「このロリコンがw」
161ほんわか名無しさん:03/02/25 09:21
そんなさくちゃんが教室に辿りついた時に目にした光景は、想像を遥かに逸したものだった。

さくちゃん「あ…あ…」
麻衣子「あ、さくちゃん」
リリス「あなた誰?」

少女二人のキスは彼にとってあまりにもショッキングな光景だった。
さくちゃん「う、ウワァァァ━ヽ(`Д´)ノ━(ヽ`Д)━( ヽ`)━ヽ( )ノ━(ヽ )━(Д´ヽ)━ヽ(`Д´)ノ━ァァァン!」
駆け去る海賊団のリーダー28歳。
162ほんわか名無しさん:03/02/25 09:28
一方、さくらとももは依頼を受けてある洋館の除霊に赴いていた。
163ほんわか名無しさん:03/02/25 09:38
さくら「闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの 混沌の海にたゆたいし 金色なりし闇の王 我ここに 汝に願う 我ここに 汝に誓う 我が前に立ちふさがりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを」
もも「其は忌むべき芳名にして偽印の使徒 深淵の淵へ還れ 招かれざる者よ」

一枚のタペストリを前に封魔の法を詠唱する姉妹。
164ほんわか名無しさん:03/02/25 09:50
葛篭折りの奇妙なタペストリからおぞましい悲鳴と咆哮が響く。

さくら「来るわよ!」
もも「お姉ちゃん、うしろ!うしろー!」

醜悪な怪物がさくらの背中を引き裂いたかに見えたが、制服の下に着こんだレイジィスーツが
ダメージのほとんどを吸収していた。

さくら「どういうこと?タペストリの地縛霊とは波長が別物だわ!」
もも「どうやらこいつが霊の安息を乱した原因みたいね」
怪物「イ・・・"イルミナティ"に組するものは…殺す」
さくら「"イルミナティ"?」
165ほんわか名無しさん:03/02/25 09:55
さくら「我は命ず 汝悠久の時 ようきょうの惨禍を混濁たる瞳で見続けよ!」

さくらは輝く短刀を空間に召喚すると、それを振り翳し詠唱を続けた。
さくら「もも!合図したら"破魔の法"をお願い!」

怪物の一撃をひらりと空でかわすと、背中を十字に斬りつけた。
さくら「今よ!」
166ほんわか名無しさん:03/02/25 09:59
もも「其は汝が為の道標なり 我は昇華をもって 汝を饗宴の贄と捧げよう
   汝 その諷意なる封印の中で安息を得るだろう 永遠に儚く!」

振り翳した両手から閃光が迸り、巨大な光りの魔方陣が回転を始めた。

怪物「"イルミナティ"め・・・」

さくら「"イルミナティ"は百年も前に壊滅したわよ!」
怪物「まだだ・・・まだ・・・・」
もも「お姉ちゃん、下がって!」
167ほんわか名無しさん:03/02/25 10:09
もも「我は覗きたもう 其の永遠の縁に明滅する憐れな光明
    されば地に帰れ 邪悪なる者よ 其は汝が為の道標なり」

怪物の背中の十字傷からグリーンに輝く光の触手が伸び、かれを縛り付けた。

もも「チェックメイトね怪物さん」
168ほんわか名無しさん:03/02/25 10:19
さくら「ももっ!近づいちゃダメッ!」

次の瞬間、怪物は光の呪縛を引き千切ると、獰猛な爪をももの頭に向けた。
さくら「イヤァ!!」

血飛沫があたりに飛び散る。が、それは妹のものでは無かった。
怪物"だった"思われる肉片が洋館の隅々まで散乱している。
血の池の真ん中で、妹は一人泣きじゃくっている。

さくら「まただわ。。。あの時と同じ。。。」
169ほんわか名無しさん:03/02/25 10:27
伏線張りすぎじゃないかい…
170ほんわか名無しさん:03/02/25 11:23
第8章 〜Many Rivers To Cross〜
171ほんわか名無しさん:03/02/25 13:07
黒田重工樺イ査部強襲課

三上慶子のもとに一枚の書類が届いた。
黒田獣騎の印鑑が見える。
書類を覗き込んだ慶子の顔が歓喜に震えだす。
慶子「やったわ!!ついに“C-TAPPA”の使用許可が
降りた!!」

"c-type assault perfect professional android"
通常略して“C-TAPPA”と呼ばれるそれは
強襲課の一部の作戦のみに使用される強襲専門アンドロイドで
大量に投入する事で作戦をより確実に遂行できる。
全身黒タイツの顔に"C”の文字が描かれているのが印象的だ。

書類を握り締めた慶子の手は、
すでに改造が施されたらしく
人の物ではなかった
172ほんわか名無しさん:03/02/25 23:43
猫の手だった。
173ほんわか名無しさん:03/02/25 23:48
しかも三毛だった
174ほんわか名無しさん:03/02/26 00:07
この話の全体像つかめてる香具師もういないな・・・
175ほんわか名無しさん:03/02/26 01:42
満天の星空が、冷たく透明な空気の中に漂っている。
麻衣子は一人海岸の公園で、昼間の出来事を胸の中で反芻していた。
彼女の妖麗なエメラルドの瞳、唇の感触が頭から離れない。

蒼過ぎる月が、海の彼方に鋭いさざ波の収束を促している。
176ほんわか名無しさん:03/02/26 01:47
瞳に映るその幻想的な光景は、麻衣子の心象風景にも鏡像を結んでいた。
小さいが、確実に心の襞に染み入ってくる音も無い微かな漣。
彼女は文字通り、あのフランスの帰国子女に心を奪われてしまっていた。
177ほんわか名無しさん:03/02/26 01:50
麻衣子「魔法が解けないよ…」

彼女は切なげに溜息をつくと、コートのポケットに手をしまい歩き出した。
自販機で買っておいたミルクティが少しぬるくなっていた。
178ほんわか名無しさん:03/02/26 02:10
〜レイジィバツース本拠地、要員宿舎〜

ガタッ!
リリスは椅子から前屈みに崩れ落ちると、心臓の辺りを苦しそうに鷲掴みにする。
呼吸が整なわない。歯を食いしばってテーブルの上の注射器を手に取ると、
それを膝の辺りに突き刺した。そして壁に凭れかかり息を落ちつける。

リリス「まだ・・・まだ逝くわけにはいかないわ・・・」
179Nueve ◆.fhyHfvg8M :03/02/26 02:44
リリスの頭の中に自分と同じ声が響く
イヴ「あなたはもう長くないわ。死んじゃう前に私に全て任せなさい。」
リリスは両手で耳を塞ぐと叫んだ。
「お願いだからもう少し時間を頂戴!」

重い静寂。

心臓の動悸は収まっていたが、言い知れぬ不安と死の影が、そっと沈黙のまま寄り添うのを感じた。
180ほんわか名無しさん:03/02/26 03:13
朝河百合子は苦々しい思いで、自分が組まされた男のふてぶてしい態度を見て取った。
社長が私の用心棒だと言ったその男は百合子の問いかけには全く応じず、愛刀の手入れに余念のないようだった。

百合子「あなたがどんなに手練な剣士か知らないけど、生身の人間がレイジィスーツの力に歯が立つわけ無いわ」
男「レイジィスーツとは何だ?」
見えるはずのない包帯に巻かれた瞳をこちらに向ける男。百合子は一瞬鋭い眼光に晒された錯覚に陥った。

百合子「あのスーツはね、被服者の意識にシンクロして現実の因果律に干渉するという
    基本デバイスを元に設計されたものなの。それをあの校長が盗み出したわけ。あなた任務をわかってるの?」
男「俺が仕留めたいのは、二刀を操る女剣士一人だ。だが邪魔が入るなら手加減はしない。」
181ほんわか名無しさん:03/02/26 03:29
百合子「はいはい。せいぜい頑張って私を護ってね。」

百合子はやおら立ち上がると、入浴のためにその場で服を脱ぎ出した。
男「おい、着替えるなら他の場所でやってくれ…。」
百合子「ハァ?あんた目が見えないんでしょ?どこで着替えたって同じじゃない!」
男「その…臭いがする…」

百合子「に・・・臭うですって・・・!?この薫る乙女のボディーになんてことを!」
百合子はこみあげる怒りと恥辱に顔を赤らめて食い下がった。
「あんたね!こんな年頃のレディーと一つ屋根の下で寝泊りすることを誇りに思いなさいよ!」
ズカズカと浴室に駆け込む百合子。
「覗くんじゃないわよ!!」
浴室のドアが荒荒しく閉ざされた。
182ほんわか名無しさん:03/02/26 03:57
第九章 〜襲撃!〜
183ほんわか名無しさん:03/02/26 04:25
これまで幾度となく地球の危機を救ってきたレイジィバツースだが、
実はメンバーの遷歴が多いことは彼女達のあまり意識するところでは無かった。
基地の最深部で厳重に管理されているという「オリジナル」が初代リーダー
の使用したスーツであること以外は。彼女と面識があるのは彼女達の中でも
最古参メンバーである弥生だけであったが、彼女は過去のことはあまり話したがらなかった。
184ほんわか名無しさん:03/02/26 04:35
校庭で新しい芽をつけ始めた木々を見つめる弥生。

だが登校の人ごみに混じって、忌まわしい記憶の淵にある気配を感じて視線を移した。
その先には担任の百合子先生。隣には…。長刀を携えたあの男がいた。

弥生「銀之助・・・生きていたのか・・・」
彼も彼女の視線に気づくと、その容貌とは不釣合いな笑みを送る。

銀之助「見つけた」
百合子「言っとくけど、他の生徒に傷つけるようなことをしたら許さないから!」

弥生「久しぶりだな」
銀之助「あぁ、この日をずっと焦がれていた」
弥生は枯れた梅の並木道の方に目を見遣ってから、こう促した。
弥生「どうだ?少し散歩でもしながら…」
銀之助「ふっ。変わってないな。いいだろう」
185ほんわか名無しさん:03/02/26 04:44
弥生「腕を磨いたようだな」
銀之助「あの日以来、ずっとお前を倒すことだけを考えてきた」

弥生はにこやかな笑みを空に向けると、まだ冷たい二月の風を頬に感じ取った。
弥生「わたしはまだ恨まれているのだな」
銀之助「それを確かめたくて会いにきた。」
弥生「わたしと剣を交えたいんだろ?」
銀之助「連中も目論みなど知ったことじゃないが。お前をこの手で殺めたい」
弥生「イヴは…。彼女は何て言ってるか聞こえない?」
銀之助「お前に殺される前のまま、優しく微笑んでいるさ」
186ほんわか名無しさん:03/02/26 04:50
弥生「その包帯…。目が見えないわけじゃないんだろ?」
銀之助「これは自分自身への忌ましめだ。そして修練でもある」
187ほんわか名無しさん:03/02/26 05:38
二人が空気の異変に気づいたのはその時だった。
無数の人のものとは思えないおぞましい殺気が学校を取り巻き、ざわついている。

銀之助「どうやら邪魔が入りそうだな・・・」
弥生「ええ、そうね。」
銀之助「すぐに勝負をつけようか」
弥生は無言のまま、彼を草間の空間へと導いた。
188ほんわか名無しさん:03/02/26 05:44
一方、さくちゃんは森の中で宇宙艇のメンテをしていた。

さくちゃん「あぁ、麻衣子ちゃんが女の子とあんなことを…」
緑の妖精「いいから早く宇宙船を修理しる!」
さくちゃん「!…殺気!」

高分子放射銃を携帯して学校の方向にかけるさくちゃん。

一方、すでに校舎は無数の黒タイツ集団C-TAPPAに襲撃を受けていた。
189ほんわか名無しさん:03/02/26 09:26
第十章 〜Cross Over〜
190ほんわか名無しさん:03/02/26 09:41
最強伝説飲茶
191ほんわか名無しさん:03/02/26 09:50
学園は大混乱だった。

麻衣子「くっ…!こいつら、今までの雑魚キャラとはまるで違うわ!」
杞憂「どこかにメンバーで固まりましょう!」

壁や天井を自在に駆って四方から襲い来る攻撃に、レイジィバツースも苦戦を強いられていた。
麻衣子はコムリンクでメンバー全員に中庭への集合指令を出した。
天井から一人のC-TAPPAが凶刃を向けた。

麻衣子「ちっ!」
すかさずオーバーヘッドで黒タイツを蹴散らし壁に叩きこむが、
黒タイツは態勢を立て直すと驚異的なスピードで廊下を追ってくる。

麻衣子「しぶといわね!」
杞憂「前からも三人来るわ!」
192ほんわか名無しさん:03/02/26 09:55
麻衣子「アレを使って!」
杞憂「わかったわ!少し離れて!」

杞憂は杖を召喚すると、胸の前に空中で静止させ大魔法の詠唱をした。
「マグヌス エクソールシスムス!!!」
翼の生えた妖精が別次元ごとその空間に召喚されると、あたりは強大なエネルギーに包まれ
凄まじい閃光と轟音とが敵ごと校舎の一角を削り去った。
193ほんわか名無しさん:03/02/26 10:01
校舎の一角が凄まじい轟音を立てて爆発した。

銀之助「始まったようだな…。」
弥生「お前の仲間じゃないのか?」
銀之助「あれは俺の預かり知らぬことだ…。」

一方、百合子は突然の同朋の襲撃に驚きを隠せない様子だった。

百合子「なぜ大量のC-TAPPAが投入されているの?学園には手を出させない約束なのに」
負傷した一般の生徒達を庇いながら、百合子の中に会社への不信感と怒りが込み上げていた。
194ほんわか名無しさん:03/02/26 10:25
銀之助「さぁ、俺達も始めようぜ」
彼は長刀を鞘に収めたまま柄を握ると、重心を低く構えた。

弥生「居合…。神影一刀流を極めたか」
銀之助「仲間のことが心配だろう?案ずるな長引きはしない。」
弥生「勝負は一瞬か…。いいだろう。」
彼女は腰の両脇に携えた璃猿と慶蓮の両刀を引きぬくと、上段に十字に構え目を瞑った。

銀之助「無明真眼二刀流の真髄、しかと確かめさせてもらうぞ。」
195ほんわか名無しさん:03/02/26 10:40
一方、麻衣子と杞憂は校舎が崩れ落ちた際にダメージを負いながらも、
黒タイツをぶちのめしながら集合場所へと急いでいた。
麻衣子「奴らに基地のことがバレたのかしら?」
杞憂「校長とレイコさんが心配だわ!」
と、廊下の前に二人の前に立ちふさがる影。

麻衣子「リリスちゃん?!どうしたの?早く避難しなきゃ」
リリス「私も戦うわ…」背後にはおびただしいほどの黒タイツの遺骸が積み上げられている。
麻衣子「まさかあなたも・・・。」
リリス「そちらはお友達?紹介が遅れたわね。私もレイジィバツースの戦士よ」
196ほんわか名無しさん:03/02/26 10:52
中庭に集まったレイジィバツースは17人。他のメンバーはやられたか、敵の手に落ちてしまったのだろうか。
麻衣子は不安に駆られながらも、一人一人に指示を出していた。あまりにも多勢に無勢。
この圧倒的な敵の数の前では、1箇所に集合したのは失策となる可能性もあった。
197ほんわか名無しさん:03/02/26 11:22
そこへ校長が「第38回高校対抗校長先生ゴルフコンペ」に
出場するため、のんきにゴルフバッグを抱えて現れた。
198ほんわか名無しさん:03/02/26 11:28
麻衣子「よっし!あのハゲに集中攻撃よ!ヽ(#`Д´)ノ 」
校長「ほへ?」

成す術も無く美少女戦士達の集中放火を浴びる校長。
校長「いやーんもっとー!」
そうこうしてる内に周りは黒タイツで取り囲まれてしまった。

麻衣子「しまった!!失策だわッ!!!!」
杞憂・リリス「・・・。」
199ほんわか名無しさん:03/02/26 11:47
〜一方、草原の空き地。

カッ!!
三つの閃きが空で交わると、次の瞬間、折れた刃が地面に突き刺さっていた。

銀之助「無明真眼二刀流破れたり。」
彼の居合抜きは弥生の右刀「慶蓮」を圧し折ると、そのまま彼女の喉笛を切り裂いた。

弥生「グフッ!」
喉元にあった金属製の護符が、紙一重で致死傷に至る深さまでの刀の進入を防いでいた。
銀之助「ほう?だが一刀ではもう勝ち目はあるまい」
長刀を鞘に戻し再び居合の構えを取って間合いを詰める。
弥生は鋭い眼光を浴びせ剣気を「璃猿」に集中させ、構えを逆手から両手持ちに切り替えた。

弥生「真眼二刀流の真髄は、一刀の太刀にあり。」
200ほんわか名無しさん:03/02/26 12:09
銀之助はふと地面に落ちた護符の一片に視線を落とした。
金属製のプレートにはフランス語でこう刻まれている。

"イルミナティの加護があらんことを"

銀之助「これは・・・」
弥生「あぁ、イヴが今際の際にわたしに託したのものだ」
銀之助「何か隠していることがあるな?」
弥生「銀…。どうしても今は話せないことがあるんだ。そしてお互いにまだ死ぬべき時ではない。」
銀之助「始めから殺りあうつもりは無かったと?なめられたものだな」
201ほんわか名無しさん:03/02/26 13:00
「ていっ!」

校長を敵の真中に蹴り出す麻衣子。
202ほんわか名無しさん:03/02/26 13:17
敵が一斉に校長に群がった。

杞憂「麻衣子ちゃん、あんまりだわ…。」
麻衣子「ふふん、あなた達は知らないのね、あのハゲの実力を…!」
戦士の一人「あの、リーダー、うしろ…」

無数の黒タイツの攻撃に校長は虫の息だった。

麻衣子「キャァァ!こーーーちょーーーーぉーーー!!」
203ほんわか名無しさん:03/02/26 13:25
リリス「やれやれ…ね」
リリスは双刀のナイフを構えて呪文を唱えると、その姿を光で暗ました。
視界が戻った時には、なんと彼女の背中には蝙蝠のような翼と、悪魔のしっぽが生えている。
右手には長く巨大化した双頭の剣を握っている。エメラルドの瞳は更に深く、魔性の輝きを放っていた。

麻衣子「あく…ま…?」
204ほんわか名無しさん:03/02/26 19:01
「デスペル」
突然響き渡った解呪の呪文が
リリスの姿に驚き
動きが完全に止まっていた麻衣子達を我に帰した。
そこには「オリジナル」を三毛猫の手に握ぎり締めた
三上慶子の姿があった。
リリスの魔法は完全に解除されていた。
205ほんわか名無しさん:03/02/26 20:57
リリスは苦しそうに心臓を抑えながら倒れこむ。

麻衣子「どうしたの?」
リリス「何でも・・・ないわ。それよりも、オリジナ・・・ルが・・・」
そういうとリリスは気を失った。
206ほんわか名無しさん:03/02/26 21:03
そう、学園の襲撃はレイジィバツースを引きつける囮であり、
地下に位置する巨大基地施設は更に大量のC-TAPPAによって蹂躙された後だったのだ。
そして三上慶子は最深部に保護されていた「オリジナル」と「プライマリ」を奪取した直後であった。
207ほんわか名無しさん:03/02/26 21:11
校長「いかん!せめて"プライマリ"だけは…」
麻衣子「おっぃハゲプライマリって何よ?」
校長はリリスの後ろでカプセルの培養液に浸された女の子が運ばれているのを指差した。

麻衣子「あれは…リリスちゃんにそっくりだわ。」
校長「初代リーダーのイヴじゃ…」
208ほんわか名無しさん:03/02/27 00:26

窓の外では静かに豆が降っていた。
209ほんわか名無しさん:03/02/27 01:09
「くっ、このままでは儂の大事なダッチワイフ(半生)が!!!」
校長はそう叫ぶと
「これだけは人前ではやりたくなかったが....」
苦渋の顔で禁断の呪文を唱え始めた!!
210ほんわか名無しさん:03/02/27 05:58
リリス「私の体で何してたんじゃいワレ!」

悪魔の形相をしたリリスが校長の頭を鷲掴みにした。
校長「お…お目覚めで」
211ほんわか名無しさん:03/02/27 05:59
イヤ〜ンイヤ〜ン ハワイヤ〜ン
http://homepage3.nifty.com/digikei/ten.html
212ほんわか名無しさん:03/02/27 08:33
???「ふふふ…私達の出番のようね。」
???「そうね…。」
???「ったく、本隊がこれじゃ手が先が思いやられるわ。」
校長「おぉ!お前達!!」
麻衣子「???」

学園の時計塔の屋根から三人の少女が跳び降りた。
そう、レイジィバツース別働隊"アレトリオン"が発動したのだった!
213ほんわか名無しさん:03/02/27 09:19
アリー「いくわよ!」
メル「必殺!」
リン「アレトリオバスター!」
214ほんわか名無しさん:03/02/27 10:01
第十一章 〜トリニティ〜
215ほんわか名無しさん:03/02/27 10:12
旋風のような閃光が黒田重工鰍フ手先を桁違いの勢いで蹴散らしていく。

麻衣子「す・・凄い・・・あいつら強かったんだ・・・」
杞憂「凄い・・・凄いけど・・・」
麻衣子「味方まで蹴散らしてるYO!!ってオイ!!」

時計塔の下の地面にめり込む"アレトリオン"

アリー「ちょっと・・・高過ぎたようだな妹者」
メル「御意だわ・・・姉者」
リン「あーんいたぁーい♥」
216ほんわか名無しさん:03/02/27 11:12
"アレトリオン"の騒ぎをよそに
「オリジナル」と「プライマリ」の搬出は
C-TAPPAによって完了しつつあった。

「お宝の匂い!!海賊の血が騒ぐー!!」
突然、C-TAPPAの前にさくちゃんが
"高分子放射銃"を構えて立ちはだかった。
「お前ら死にたくなかったら、そいつをよこし...って無視かよ!!」
C-TAPPAの作業は淡々と進行し、オリジナル」と「プライマリ」を
乗せた車は黒田重工鰍ノ向け発車した。
217ほんわか名無しさん:03/02/27 11:35
三上慶子「さて、我々の目的は達成されたわけだが…」
慶子は長い黒髪を振り解くと、冷たい視線を美少女戦士達に向ける。
慶子「私怨で申し訳無いけど、あなた達を生かしておくわけにはいかないの」
胸元のフィアンセのペンダントをきつく握る慶子。

麻衣子「…どうしよう、あれだけの軍勢に一斉に攻められたら勝ち目はないわ。」
怪我を負って弱った仲間達が次々と捕らえられ、搬送用トラックに押し込まれている。
218ほんわか名無しさん:03/02/27 11:55
リリスはそっと麻衣子の耳元で囁いた。
あまりにも突然の微風に麻衣子はビクンと体を震わせる。

リリス「大丈夫よ…。おまじない…憶えてる?」
麻衣子「あ…あれは何だったの?」

顔を赤面させながらリリスの問い掛けると、彼女はまだ息苦しそうに微笑んだ。

リリス「"プライマリ"は今あなたにインプットしてあるの」
219ほんわか名無しさん:03/02/27 13:57
次の瞬間、一筋の閃光が慶子の右胸を貫いた。
思わぬ司令塔のダメージにC-TAPPAの指揮系統は混乱、辺りは騒然とした。

慶子「くっ!"キメラ"を投下して引き上げるぞ。」
既に人質やブツを回収したトラックは引き上げ、慶子を乗せたジェットヘリも本社へと方向を変えた。
慶子の搭乗したヘリの隣を飛行していた貨物輸送艇から"キメラ"が三体投下された瞬間、輸送艇は爆発。
パイロット「何者かに狙撃されています!」

麻衣子「時計塔からだわ!」
改造ボウガンを構えた少女が、相棒のカラスを伴って時計塔から飛び降りる。

リリス「彼女は?」
杞憂「霧崎レイカ。超凄腕のスナイパーで狙ったものを外したことがないの。」
麻衣子「彼女のゲリラ戦法にこれまで幾度となく救われてきたわ。」
レイカ「みんな!ボーッっとしないで、奪われた仲間を助けなきゃ!!」

彼女の放った矢はことごとく敵の指揮中枢を貫いていく。
220ほんわか名無しさん:03/02/27 14:12
麻衣子は数名のレイジィバツースが敵トラックの追跡に向うのを見届けると、
目の前に投下された"キメラ"と呼ばれた三体の怪物と対峙する。

リリス「"プライマリ"のコピーが成功していたら、あなたが負けることはないわ。」
麻衣子「一つ聞くけど、"プライマリ"って何なのよ。」
リリス「話せば長くなるけど、今はあなたの力になるとだけ言っておくわ」

周囲は指揮の乱れたC-TAPPAと残存戦力の大混戦に突入していた。
221ほんわか名無しさん:03/02/27 14:26
海賊団のリーダーさくちゃんは、キメラの下敷きになって気を失っていた。
222ほんわか名無しさん:03/02/27 14:50
三上慶子「キメラは遺伝子工学とロボット工学を駆使して開発された最新型の兵器。
     一機につきC-TAPPA30体分の働きは保証できる。可哀想だけど皆殺しね。」

ヘリの窓から遠ざかる戦場を見下ろす慶子。

グロテスクさとハイテクなフォームを併せ持つその怪物は、三体とも
その巨体を統一された意思が動かしているかのように、一糸乱れぬ連携攻撃を放ってくる。
が、麻衣子はそのどれをも軽々とかわしていた。

麻衣子「嘘みたいに神経が研ぎ澄まされてるわ。。。」
223ほんわか名無しさん:03/02/27 14:55
怪物の爪が麻衣子の背後に回った瞬間、彼女は回転しながら渾身の拳で一撃を叩きむ。
体長7メートルはあろう怪物の巨体が、地面に叩きつけられめり込むと、ピクリともしなくなった。

麻衣子「う…」
杞憂「うそ…」

二人とも目を丸くして呆然とした。
224ほんわか名無しさん:03/02/27 15:10
分が悪いと見たキメラ達は、一目散に他の戦士を手にかけようと麻衣子の横をすり抜けた。
麻衣子「ちょっ!待ちなさいよ!!」
キメラに背を向けていた一人の少女に、毒牙がかかろうとしたその瞬間。
怪物の一体は縦に一刀両断されると、そのまま慣性で地面を滑りながら爆発した。
そのまま刀を構えて疾風のようにC-TAPPAを両断していく人影。

麻衣子「弥生ちゃん!よかったぁ!無事だったんだ!!」
225ほんわか名無しさん:03/02/27 15:18
アレトリオンの三人も…。

アリー「このままじゃわたしたち、見せ場が無いわ!」
メル「御意だわ姉者!」
リン「そろそろ本領発揮ですわ♥」

三人の特製レイジィスーツの背中からメカニックな翼が生え、
宙に浮かび回転しながら、中心にエネルギーを固める。
「必殺!トリニティブラスト!!」

三角形のレーザーがキメラの最後の一体を貫くと、華々しい炎と共に量子レベルに還元された。
226ほんわか名無しさん:03/02/27 20:44
おまいら気づくと夢中で読んでました

ここは v(o・∀・o)v カットしてね♥
227ほんわか名無しさん:03/02/27 21:55
その頃、レイコは廃墟と化した校舎の視聴覚室でビデオを見ていた。
「なに、このビデオ。。。井戸が写っているだけじゃないの。。。」
228ほんわか名無しさん:03/02/27 22:48
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小説の話とちとズレてすまんが・・・
過去ほのぼので立った小説スレの中で
俺が一番傑作だと思ったもの
http://www.yasai.2ch.net/honobono/kako/1010/10109/1010970970.html
読んでみて。お勧めだよ。
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229ほんわか名無しさん:03/02/27 23:50
突然ナレーションが流れると
ビデオは終わってしまった。
レイコ「参考になるかい!」
それは"激しくC型"原因究明の役にたてばと
校長からレイコに渡されたビデオだった。
230ほんわか名無しさん:03/02/28 06:43
第十二章 〜Switch n' Snatch〜
231ほんわか名無しさん:03/02/28 06:54
学園を見下ろす小高い丘で、紫煙をくゆらす一人の男の影。
黒田重工鰍フ若き社長、黒田獣騎その人であった。

秘書「全て計算通りでしたわ。」
獣騎は煙草を携帯灰皿に捻じ込むと、パチンと蓋を閉じる。

獣騎「あぁ、"プライマリ"がコピーされていたことを除けばな。」
秘書「如月 麻衣子、我々の脅威となるやもしれませんね。」
獣騎「"激しくC型"と、その発現コードを解読されるのも時間の問題だろう。」
二人は流線型のエアクラフトに乗り込むと、本社へと帰途についた。
232ほんわか名無しさん:03/02/28 07:04
>>228おもしろ(・∀・)イイ!!
233ほんわか名無しさん:03/02/28 07:15
二日後、修復中の校舎では早くも通常の授業が開始されていた。

〜レイジィバツース基地施設跡
第一会議室にはレイジィバツースの要員数名と、幹部が集まっている。

校長「被害は甚大だ。」
レイコ「重軽傷者7名、戦闘不能2名、敵側に奪取されたのが3名。幸い死者は出てないけど、
    ショックで士気が下がっているわ。戦隊を抜けたいと申し出ている生徒も数名…。」

霧崎伶佳はイライラしながら戦況レポートに目を落としている。
234ほんわか名無しさん:03/02/28 07:26
伶佳はレイジィバツースの莫大な資金源の一つである有名財閥の伶嬢であり、
当然基地内でもその実力とともに、強い発言権を持ち合わせていた。
金色に輝くロングヘアと、端正な顔立ち、知性的な蒼い瞳が同性をも魅了してやまなかった。
今回の戦闘ではあの活躍である。この非常時にあってはメンバーの彼女への信頼が更に高まっていた。

伶佳「納得いかないわ」

隊員から第一声を発したのはやはり彼女だった。
235ほんわか名無しさん:03/02/28 07:41
伶佳「さらわれた仲間の救出が作戦モジュールにリスティングされてないのはどうして?!」
レイコ「実はあの直後に黒田重工鰍ニ取引があったの。」
伶佳「何なのよ取引って!」
レイコ「中身に触れる事は出来ないわ。だけど仲間は無事よ。」
伶佳「酷いわ!生徒の命を駆け引きに使うなんて許せない!」

伶佳はテーブルを叩きと、プイと斜めにうつむく。

麻衣子「囚われた仲間の名前は?」神妙な面持ちで尋ねる。
レイカ「真宮寺さくら、真宮寺もも。この二人は姉妹ね。
    もう一人はC.J.マクダーナル。イギリスの留学生よ。」
236ほんわか名無しさん:03/02/28 07:58
〜黒田重工鰹d役会議室前。

待合室では朝河百合子が指をイラつかせながら座っている。
頬や足には、襲撃時に生徒を庇って出来た傷が生々しく残っている。
会議室のドアが開き、彼女は立ち上がると三上慶子とすれ違った。

百合子「あなたね…」
慶子「社長はあなたの働きも評価していらっしゃるわ。」
百合子「ふざけないで。あんなことは決して望まなかったわ。」
慶子「どうあれ、結果を出したのは私達よ。」

慶子はそのままコツコツと廊下の奥に歩み去った。
237ほんわか名無しさん:03/02/28 08:41
リリスは外れにある学園病棟のベッドから窓を通して、修復中の校舎をボーッと眺めている。
あれ以来ずっと体調が芳しくなく数回の心臓発作を起こしていたが、今は小康状態が続いていた。
二月も最後の日、空はあまりにも蒼く照っている。窓をあけて深呼吸したい衝動に駆られた。
と、誰かがガラッと窓を空けた。

杞憂「うぅっ、寒いねー!」
リリス「気づかなかったわ。ありがとう。」
杞憂「ううん、そんな顔してたから。」

バスケットには色とりどりのフルーツが収まっている。
一際目を引いたのは真っ赤に熟れたリンゴだった。
238ほんわか名無しさん:03/02/28 09:26
杞憂「あっ、これ?食べたい?」
彼女は優しく微笑むと、リリスの傍に寄り添い、リンゴを剥き出した。

杞憂「あれ?どうしたの?」
リリス「私、同年代の子とはあまり話したことなくて…」

うつむいて鼻をすするリリス。

杞憂「あのね、明日の夜、生徒会長の家で戦隊を招いてパーティーがあるんだけど来ない?」
リリス「霧崎さんの?」
杞憂「建前はそうなってるけど、さらわれた仲間達のことについての話し合いも兼ねてるの。
   幹部側にバレたらますいことだわ。」
239ほんわか名無しさん:03/02/28 09:36
杞憂「それに、もしかしたら生きて帰ってこれないかもしれない。
   だから数人の有志を募って、激励でパーッとやろうってわけ。」

リリスは哀しげな表情を浮かべてリンゴを受け取ると、そっと口に含んだ。
甘酸っぱい風味が、どこか切なさを込み上げるようだった。

リリス「あなたは行くのね。」
杞憂「麻衣子ちゃんは迷ってる。」
リリス「明日の午前には退院できそうだから、一緒に買い出しに行こ?」
杞憂「うん!」
240ほんわか名無しさん:03/02/28 09:47
黒田重工鰹d役会議室前

慶子と入れ代りに白衣の集団が現れた。
あの"C-TAPPA"や"キメラ"を作り上げ、
三上慶子を始め社員を改造し続けている
研究開発室の面々である。

「百合子ちゃん。相変わらずナイスボディーだね。」
一人の男が百合子に声を掛けるが一瞥をくれると
百合子は男を無視した。
「本当ですね室長。これだけの素材はなかなかないですわ」
集団の中から女性の声が飛ぶ。
室長と呼ばれた男は、黒田獣騎の古くからの友人であり
名を"敷島 京介"という
「改造して欲しくなったら何時でもおいで」
笑い声を残し一団はノックもなしに会議室の中に消えていった。
241ほんわか名無しさん:03/02/28 10:30
「下賎な連中…」
夜、百合子は自室のベッドで昼間の連中のことを回想していた。
社長が遣したあの男の方が、無礼だけどよっぽど誇り高い男だったわ。
百合子はそう思いながら溜息をついて寝返りをうつと、ドアの外に人影があるのに気づいた。
銃を構えゆっくりとドアに近づき、覗き穴から顔を確認する。
そこにいたのは、あの長刀を携えた盲目の男だった。
242ほんわか名無しさん:03/02/28 10:39
外では大雨が降っているようだった。
百合子はずぶ濡れの男に着替えを用意してやるとベッドに寝かせ、
熱のある額に氷水に浸したタオルをあてがった。

銀之助「すまない…。他にあてがなかったんでな…」
百合子「いいのよ。あなたは私の相棒なんだから。」

柔らかい雨音が窓に打ち付け、さざめきなから心地よい沈黙に分け入っていた。

銀之助「俺達もどうやら、踊らされていただけだったようだな。」
百合子「ええ、学園の警備は厳重だから、私について侵入させたわけ。」
銀之助「そして厄介な戦力である女剣士を、襲撃より先に引き離す必要があったわけだ。」
243ほんわか名無しさん:03/02/28 11:08
「キャハハハ!それでさー、彼女ったら…」
酒が入った百合子は、銀之助ともう暫くの間談笑していた。時計は午前2時を回ろうとしている。
銀之助は熱の心地よいダルさに襲われながら、百合子の話に楽しげに耳を傾けていた。

百合子「ごめんなさい。病人なのに、付き合せちゃったみたい。」
彼女はすまなそうに銀之助を一瞥すると、居心地悪そうにベッドにかけていた腰を退いた。
銀之助「あぁ、いいんだ。」彼は思わず百合子の腕を掴んで制止する。
甘い沈黙が流れた。雨は既に止んでいるようだ。
244ほんわか名無しさん:03/02/28 11:41
百合子「あ、明日の授業早いからもう寝るわ!」
銀之助「この包帯を外してくれないか?」
百合子「いいけど、もしかして眼が見えるの?」
銀之助「あぁ、この目でお前の顔を見てみたい。」
百合子「あのさー、「お前」はないでしょ。私の方が一回りも年上なんだから。。。」

そう言って銀之助の頭の後ろに手を回し包帯を解くと、端正な面持ちと水晶のような暗く赤い瞳が露わになった。
眼があったまま時間が凍りついたように感じられた。鼓動が早くなる。

銀之助「綺麗だ…」
百合子「みんなそういうわ…」
彼は恥ずかしげに眼をそらすと、シートを引き寄せ、体を離そうとする。
「明日早いんだろ?そろそろ…」
百合子は彼の顔をクイと自分の方に向けさせると、顔を近づける。瞳は熱に浮かされたように潤んでいた。
「もう一度目を瞑って。今度はどんな臭いがするか聞かせて…」
そうして二人は深い口付けを交わした。
245ほんわか名無しさん:03/02/28 12:40
時計は随分前に次の日の到来を告げ終わっていたが
まだ黒田重工鰍フ研究開発室には灯りが灯っていた。
敷島「今の素体ではこれが限界か。
やはり、素体を改良するしかないか。」
助手A「いっそのこと素体を改造してしまっては?」
敷島「いや、負担が大きすぎるだろう。」
モニターにはレイジースーツを身につけ倒れて動かないC-TAPPAが映し出されていた。
助手B「室長、コーヒーが入りましたよ」
敷島「おっ有難いねぇ。そっちはどんな感じだい?」
コーヒーを受取りながら,パソコンにかじりついている
女性に声を掛けた。
助手C「"プライマリ"自信が完全に完成されたプログラムだし
人型を前提に作られているから、キメラの形態にあわせるのが...
でも、必ず完成させます。」
女性は作業の手を止めず答える。
敷島「うん、期待してるよ。」
今、敷島達は"オリジナル"と"プライマリ"の技術を応用し
"C-TAPPA"と"キメラ"の改良に取組んでいた。
敷島「さぁ、もうひとふんばりしましょうかね!!」
246ほんわか名無しさん:03/02/28 13:07
助手「室長、アミノ製薬から研究レポートが届いてます。」
敷島はレポートの表題を確認すると、封を解く。タイトルはこうあった。

「プライマリのダストコードと"激しくC型"の発現パターンについて」
247ほんわか名無しさん:03/02/28 13:35
さくら「いい?"スペル"は一つの組み替えコードのようなものなの。」

黒田重工鰍フ地下に捕らえられた姉妹は、同室の近未来的なインテリアを施した白い部屋に軟禁されていた。
一日に何度も行われるうんざりするような検査や投薬を除けば、待遇はそれほど悪くはなかった。
食事や入浴、娯楽も自宅より数段快適にこなすことが出来た。
今は暇を利用して、こうして妹に"封魔の法"についての講義中というわけだ。

もも「組み変えコード??」
さくら「簡単に言うと、呪文だって普通の言葉と変わらないってこと。」
もも「呪文を覚えるのは大変だわ。この前だってお母さんが・・・」
さくら「心から出た言葉も、周到に考えを巡らした言葉も、相手の考えや感情に大きな影響を与えるでしょ?
    時としてそれはどんな魔法よりも強い効果をもたらすことがあるわ。」
もも「たとえば?」
さくら「た、たとえば?そうね。。。す。。。好き。とか?」
248ほんわか名無しさん:03/02/28 13:54
もも「ブ・・・」
さくら「?」
もも「(≧∇≦) ぶぁっはっはっ!!!」
さくら「ちょっ。。。!!」さくらはカァッと顔が赤らんだ。
もも「お姉ちゃん似合わな過・・・ブッ!!」頭に姉の拳骨が突き刺さる。
さくら「あんたね、誰のせいでこんなとこに閉じ込められてると思ってんのよ#」
もも「だって、お姉ちゃんがヘマするから・・・」
さくら「あーんたが呪文しくったからでしょうが!見事にハトが飛んだわよ!口からね!!」
249ほんわか名無しさん:03/02/28 15:05
(*´Д`)……
250ほんわか名無しさん:03/02/28 19:40
その頃、すっかり忘れ去られちゃったF村君は・・・
251ほんわか名無しさん:03/02/28 22:29
羽布団を売り付けられていた。
252ほんわか名無しさん:03/02/28 23:06
「マジすか!そんな高級品なのに
  \500,000でいいんですか!!!」
F村君はすっかりだまされていた。
253ほんわか名無しさん:03/02/28 23:16
「どうです?この幸運の壷もセットで」
と悪徳業者某S○NY。
(○はオーじゃなくて伏字だよ〜)
254ほんわか名無しさん:03/02/28 23:19
さくちゃん「俺の出番ナシヽ(#`Д´)ノ 」
255ほんわか名無しさん:03/02/28 23:31
そんなF村君を遠くから見つめる麻衣子。
麻衣子「はぁ〜、まだ彼の好きなのかな。」
麻衣子の心は既に同性の少女に揺り動かされていた。

霧崎邸にいち早くついた戦隊は一般の生徒達と混ざってパーティーの準備に余念が無かった。

F村「おーぃ、如月!すげーよ。今ならパソコンもついて\500.000だってさ!」
麻衣子「・・・。」
256ほんわか名無しさん:03/02/28 23:37
麻衣子はリリスに関する一連の奇妙な事態に関して、彼女に問い詰めることが出来ないでいた。
それを聞いたら、彼女が何処か遠くに逝ってしまうよな、そんな気がしてならなかった。

F村「すげー!マイナスイオンが出る椅子が\200.000だってYO!」

第一、リリスとはあの日以来口を聞いていなかった。
あのキスが純粋な義務からだったのならば、自分の気持ちの行き場はどうしたら良いのだろう。

F村「シャネルのバッグがたった\3.000かよ!」
麻衣子「安いなオイ!」
257ほんわか名無しさん:03/02/28 23:43
さくちゃん「よっ!何ショボくれてんだよ麻衣子チャン」
麻衣子「えっと…誰だっけ。」
さくちゃん「ズガ━━━(゚Д゚;)━━━ソ!」
麻衣子「あ、思い出した!変な名前のおじさんだよね?!」
さくちゃん「

            。。
   。     。 +   ヽヽ
゜ 。・ 。 +゜  。・゚ (;゚´дフ。
             ノ( /
              / >       」
258ほんわか名無しさん:03/02/28 23:51
麻衣子「変なおじさん・・・イッチャッタ…」

事前の話し合いで、黒田重工鰍ノ特攻するメンバーは決定している。
麻衣子はリーダーとして、幹部側とメンバーどちらの立場からも板鋏になっていた。
到底、この作戦は奨励されるべきものではない。下手したら人質の命にさえ関わるだろう。
だが、黒田重工鰍ニ幹部の取引だって、何一つ信頼に足る保証は無かった。

日が暮れ、霧崎邸は異常な賑わいと豪華絢爛に彩りを見せ、宴もたけなわと言ったところだった。
259ほんわか名無しさん:03/03/01 00:06
杞憂「すっごい豪邸ねー。迷ったりしないの?」
伶佳「まっさかー。困るのはトイレの時くらね。」
弥生「激しくトイレに行きたいのだが…」
伶佳「えっ?!ここから二十分はかかるわよ!(嘘)」
弥生「ズガ━━━(゚Д゚;)━━━ン!!」
杞憂「あっ!リリスちゃんだわ!」

黄金色に輝く階段の下で、居心地悪そうに辺りを見まわす少女。
会場でも一際華やかな純白のドレスとその容貌とは裏腹に、表情はどこか沈んでいるようだ。

伶佳「はじめまして。今回の作戦にあなたが協力してくれると聞いて心強いわ!」
杞憂「怪我はもう大丈夫なの?」
リリス「えっ?あっ、もう全然平気だよ!」
260ほんわか名無しさん:03/03/01 00:20
「あっ!」
そこにバッタリと麻衣子も鉢合わせてしまった。
冷たい静寂が流れた後、ややあって、

麻衣子「あなたも…行くの?」眉を不安気に吊り上げて尋ねる。
すると突然、リリスは麻衣子に抱きついた。一同は目を丸くしている。

麻衣子「ちょっ…ちょっと!」
リリス「良かった!話し掛けてくれた!!」

瞳からポロポロと雫の涙が零れている。
261ほんわか名無しさん:03/03/01 00:24
階段の上段で様子を見つめるアレトリオン。
姉の方は完全に酒が回っている様子だ。

アリー「んなこったろうと思ったわ。ヒック」
メル「上層部に報告しますかあねじゃー?ヒック」
リン「まぁ、禁断の恋…なんて素敵♥」
262ほんわか名無しさん:03/03/01 00:37
生徒会長の演説のあと、霧崎邸は自家製の絢爛な花火の光彩に包まれた。
数名の生徒がお堀で溺れている。更に数名の生徒が地下迷宮で魑魅魍魎に襲われていた。

麻衣子「風情やなぁ…ウットリ。」
弥生「まだ三月だがな。」
伶佳「楽しんでくれた?」
杞憂「多分一生の思い出になるわ。」
麻衣子「一生が長ければ、だけどね…」

瞬間、沈黙の帳が降りる。リリスは一層辛そうに、視線を星空へと放っていた。
263ほんわか名無しさん:03/03/01 00:43
夜もふけ、霧崎邸は人もまばらだった。終電の時間をとっくに過ぎていたせいか、
自宅通学の生徒の中には、そのまま眠り込んでしまった輩も少なくない。
会場はまるで戦場のように無残にとっちらかっている。金品の装飾もいくらか削られていた。

最上階の展望塔では、総勢34名のレイジィバツースが、有志6人を見送っていた。
264ほんわか名無しさん:03/03/01 00:53
メンバーは以下の六人。

霧崎伶佳・・・弓、ボウガン他狙撃系に秀でている。ゲリラ戦術に長ける。
鳳凰寺杞憂・・・破壊力のある大魔法を使える。癒し系も少々。
無明道弥生・・・無明真眼二刀流。だけど今は一刀のみ。
リリス・・・実力は未知数。プライマリのキャリア。
雨崎加奈・・・忍者。
アイリス・O・アスガード・・・天才スーパーハッカー。趣味はガーデニング。
265ほんわか名無しさん:03/03/01 04:21
第十三章 〜脱出!〜
266ほんわか名無しさん:03/03/01 04:46
〜黒田重工樺n下研究施設

さくら「ちょろいわね。」
さくらとももは看守を縛り上げると、ほとんど無人の広大なハイテク研究施設の中をさまよい出した。
廊下のや壁に設けられたレールの上を、ひっきりなしに研究ロボットが行き交っている。
時々ロボットに凝視されたような気がしてゾッとした。高度なオートメーション化が施されているが、セキュリティはおろそかなようだ。
あまりにも明る過ぎる照明と、スベスベした白い材質の床や壁が非有機的である。

もも「お姉ちゃん、そっち、何か嫌な感じがする…。」
さくら「待って、ドアが開いてる。何か見えるわ。」

半開きになったスライドドアの向こうに、なにやらカプセルらしきものが見えた。

「あなたたち何してるの?」
267ほんわか名無しさん:03/03/01 04:57
ギョッとして後ろを振り返ると、そこには背丈の低いブロンドの女の子が立っていた。

さくら「あなたは?」
CJ「C.J.マスダーナル。あなた達と同じレイジィバツースよ。CJって呼んで。」
さくら「こんなところで何を?」
CJ「何って散歩に決まってるじゃない。施設内の散策は自由よ。もっとも、見るものなんて無いけど。知らなかったの?」
さくら・もも「ガーン!」
CJ「でも、そこのドアが開いてるのは初めてだわ。故障かしら。」

ここからは辛うじて中の設備の一部が覗けるが、何故かおぞましい気配を感じて近づけない。
268ほんわか名無しさん:03/03/01 05:07
鼓動が早くなる。もしかしたら向こうに脱出口があるかもしれない。
不安と期待に焦らされながら、ゆっくりと開いたドアに近づいていく。

もも「お姉ちゃん、戻ろうよ…」

近づくにつれ、カプセルの中には培養液に浸された少女の体らしきものがあるのがわかる。
一向は遂にドアを超え、カプセル室に完全に侵入すると、スライドドアは突然ピシャリと閉まった。

さくら「び…びっくりした…。」

培養液の中には、金色の巻き毛が印象的な欧米系の美少女が閉じ込められている。
カプセルには「EVE-01 Primary Encorder」とロゴがある。

CJ「…見て。目が開くわ。」
269ほんわか名無しさん:03/03/01 05:16
"それ"はゆっくりと瞼を持ち上げると、そこには深紅のルビーのような暗く赤い瞳が露わになった。
少女の頭からは無数のコードがカプセルの上部装置に接続されていた。

イヴ「はじめまして。」

何処かからか優しい声が響いた。
"それ"は直接言葉を発してはいない、頭の中に直接響いてくるようだ。
270ほんわか名無しさん:03/03/01 05:22
イヴ「良く来てくれたわ。正統なるイルミナティの末裔。。。」

さくら「イルミナティ?何かの間違いよ。私達は…」

さくらはハッと、イヴの視線が妹のももに注がれているのに気づいた。
これまで大切にしてきた何かが、ガラスのように壊れそうな予感した。
271ほんわか名無しさん:03/03/01 05:26
第十四章 〜アレトリオン〜
272ほんわか名無しさん:03/03/01 05:37
霧崎伶佳率いる人質奪還作戦遂行チームが乗ったランドクルーザーは、
黒田重工鰍フ本社にむけて山道を急いでいた。車内には見送りも兼ねて麻衣子も同乗している。

麻衣子「あーたら、祭りじゃないんだからもうちょっと落ちつきなさいって。」
車内ではパーティの興奮収まらぬまま二次会の様相を呈していた。
加奈「次、雨崎加奈、ラヴマスィーン、歌いまっす☆」
一同「わーッヽ(^∇^)ノ」

突然、運転手が悲鳴を上げて崖側のガードレールに突っ込んだ。

アイリス「いったぁーい…キャー!私の大切なVAIOタンがぁ!!」
伶佳「何事?!」
窓から外を見て、彼女達は戦慄した。
三人の翼を持った天使達が、行く手に立ち塞がっている。

麻衣子「アレトリオン…。」
273ほんわか名無しさん:03/03/01 05:57
〜校長(岩山 巌蔵)宅

プルルルルルッ!メロン記念日の着信音を遮ると、校長は電話に耳をあてた。

校長「もしもし、岩山です。」
レイコ「校長、由々しき事態です。たった今アレトリオンからの連絡が…」

校長はレンタルビデオで借りてきたAVをデッキに入れ、鼻をほじくりながら

校長「ほんで…?」
レイコ「麻衣子ちゃん達が…カクカクシカジカ」
校長「な…何ィ!!」
レイコ「既に上層部の司令代表がアレトリオンに指示を出しています。私も現場に向かいますわ。」

電話が切れる。部屋の中にはAVの喘ぎ声が虚しくこだましていた。
274ほんわか名無しさん:03/03/01 06:20
〜都市に向かう谷の山道。

横転したランドクルーザーからメンバーが降りる。
伶佳「あ、あなた達は下がってて…。」

アレトリオンににじり寄る伶佳。

伶佳「お願い、仲間だったら見逃してくれない?」
アリー「残念だけど、私達はもっと上の司令で動いてるの。命令は絶対よ。」
麻衣子「命令?」
メル「そこのフランス娘を"絶対に生きたまま敵の手中に納めてならない"」
リリス「どういうこと?」
リン「残念だけど、黒田重工鰍ヘあなたの重要性に気づいてしまったらしいの。」
アリー「"デコーダー"の始末。それがさっき下った指令よ。」

リリス「ごめんなさい。私のせいで…」
麻衣子「彼女をどうする気?」
アリー「捕らえてあのイヴと同じホルマリン漬けか、それとも…」

瞬間、アリーの頬を麻衣子が殴打する。

メル「姉者!!」リン「あーん痛そ〜(T-T」
アリー「上等ね。何なら皆殺しにして差し上げましょうか?」
275ほんわか名無しさん:03/03/01 07:01
〜フランス国立図書館前

留学生である風院さつきは、燦燦と注ぐ陽光の中で、
図書館から引っ張り出してきた資料を読み耽っていた。
噴水の前では子供達がじゃれあっている。
新聞を読むおじさんや、犬をつれたおばぁさん。
たまにスタイルのいい所謂パリジェンヌに見とれながら、
彼女は日本に発ってしまった友人のことについて調べていた。
276ほんわか名無しさん:03/03/01 07:07
手にした資料は、ヨーロッパ異端録。
さつきはやっと目的の記述を見つけると、ケースから眼鏡を取り出し、記事に集中する。

"イルミナティ"…キリスト生誕以前から西欧の歴史を裏で暗躍したと言われる秘密結社。
        魔女の血族とも言われ、最も血の濃い一族は、処女の生き血を吸うことで数百年生きるという迷信まで流れた。
        百年ほど前に政治謀略に利用され壊滅。だがその秘術は現在も受け継がれていると言われる。
277ほんわか名無しさん:03/03/01 07:22
さつきは写真資料の閲覧室に駆け込むと、
政治謀略との結託が疑われ、当時処刑されたイルミナティの
写真が無いか躍起になって調べ上げた。案の定、それは存在した。
処刑地はここフランス、オーヴェルニュ地方。
既にある戦乱で壊滅しかかっていた残存勢力をここで処刑したと言われる。

写真には晒し首にされたもの、串刺しにされたもの、犯されて首をかっきられた死体など、
惨いものばかりだった。が、そこには彼女が一番見たくないものがやはり存在した。
もはや運命としか言いようが無かった。数人の軍人に取り押さえられ泣き叫んでいる少女。
紛れも無い、フランスで友情を育んだはずの巻き毛の少女、リリスそっくりであった。
278ほんわか名無しさん:03/03/01 08:48
〜山岳の谷間

アレトリオンの凄まじい攻撃に、レイジィバツースは満身創痍だった。

麻衣子「どうして?プライマリが発動しないわ・・・」
リリス「あなたが無意識に抑えこんでるのよ。相手が仲間だから。
    心を開かなければ、コードは解凍されない。」

アリー「そんなことで黒田重工鰍フ防衛網を破れるとでも思ったのかしら?」
メル「さっさとそこの娘を渡してオネンネしちゃいなw」
リン「じゃないと誰か殺しちゃいますよ?」

伶佳「強過ぎる・・・」
弥生「くっ、璃猿に切れないものが存在するなんて」
加奈「煙幕で逃げる?」
アイリスは失禁して気絶している。

リリス「あの時と同じだわ・・・。また私のせいでみんなが・・・。」
麻衣子「?」
279ほんわか名無しさん:03/03/01 09:04
リリス「・・・ない。・・・せないわ。」
リリスはうわ言のように呟くと、以前の如く変身し、双頭の剣を構え皆の先頭に立った。

リリス「もう誰も死なせないわ!」
麻衣子「ど、どうしたの?」

メル「ちょっとヤバそうだよ姉者。」
アリー「・・・少しは楽しめそうだな。」
リン「やーん怖いですぅ(T-T」
280ほんわか名無しさん:03/03/01 09:37
アレトリオン「トリニティブレイド!」
三人がまるで意志を持っているかのように振舞う鋭利な金属製カッターを、リリス目掛けて投げつけた。
だが、彼女は刹那、紙一重で三つの刃の間をすり抜けると、双頭の刃でアリーの片翼を切り落とした。

アリー「ちぃっ!」すかさず跳び退けるが、
リリスはそのまま刃を翻すと、双刀のもう一方の刃の峰でアリーの背中を打ち付ける。
「がはッ!!」
メル「姉者!」
三人に丁度囲まれる形となったリリスだが、双頭の剣を巧みに操って、同時に繰り出される攻撃を全て切り返していた。

麻衣子「凄いわ・・・」
杞憂「今のうちに回復魔法を・・・」
281ほんわか名無しさん:03/03/01 10:21
弥生「あぁ、彼女は強い…」
以前から彼女のこと知っているかのように、弥生は呟いた。
イヴをこの手にかけた時も…。
アイリスは何やらモバイルをいじっているようだ。

三対一にも関わらず、リリスは剣術でアレトリオンを圧倒し始めた。

アリー「やるわね!だけど位置がちょーっとまずいわよ!」
メル「アレだな姉者!」
リン「あんたなんか死んじゃえ(^^ゞ」

三人の中心にエネルギーが収束する。当然リリスはもろにそのダメージを貰うハメとなった。
リリス「くっ!」
メル「ほらほら!足元がお留守ですよ!」
メルは得物の巨大鎌を振り翳すと、リリスの両腿を切りつけた。

リリス「キャァッ!」地飛沫が散る。
282ほんわか名無しさん:03/03/01 10:42
リン「はーい!トドメは私がさっしまーす☆」
紫水晶の槍をリリスの胸に突き立てようとしたその瞬間、リンは顔から地面に叩きつけられた。
次の瞬間にはメルの大鎌が砕け、彼女ごと崖の下に吹っ飛んでいった。

アリー「・・・やっと本領発揮というわけか。」

リリスを抱えた麻衣子が、鋭い眼光でアレトリオンのリーダーを睨み付ける。

麻衣子「大丈夫。誰も死なないわ。あなたも護ってみせる。みんなで生きて帰りましょう。」
リリスは黙って微笑むと、もう弱音の涙は見せまいと心に誓った。
283ほんわか名無しさん:03/03/01 14:41
第十五章 〜危険がいっぱい、麻衣子はいっぱいいっぱい!〜
284ほんわか名無しさん:03/03/01 16:41
ここは東京のとある歓楽街―
285ほんわか名無しさん:03/03/01 17:15
新章
〜アンデスの麓の団子屋〜

ポポイ「はぁ〜」
団子屋の主人ポポイは溜息をはいていた
286ほんわか名無しさん:03/03/01 20:04
ポポイ「なんでだろう」 
287ほんわか名無しさん:03/03/01 20:08
「ふふ、それはね・・・」
288ほんわか名無しさん:03/03/01 20:25
ポポイ「オマエは誰じゃ!」
ポポイの口調が変わった。
289ほんわか名無しさん:03/03/01 21:03
「あ、俺のこと?」
そこにいたのは悪徳業者に羽布団他一式を売りつけられ、
その支払いのためにサラ金に手を出しまくり
そして多重債務者となって現在逃亡中のF村君であった。
290ほんわか名無しさん:03/03/01 21:08
「もうかりまっか?ポポイさん」と、
最近店の向かいに出来た2つ星の付いたケーキのチェーン店「ミシュラ」
のメインシェフ、オルベスが話しかけてきた。
291ほんわか名無しさん:03/03/01 23:10
ポポイはF村を一瞥すると、オルベスを店内へと招き入れた。
F村はうらめしそうにウィンドー越しに談笑する店主達を見つめる。

F村「ちっくしょ。俺はどうしてこんなことになったんだろう。」
ポケットからかつて思いを寄せていた人の写真を取り出す。
そこに映っていたのは、はつらつと駆けるブルマ姿の麻衣子だった。
292ほんわか名無しさん:03/03/01 23:20
麻衣子とは二、三回デートしたことがあった。
もちろん付き合ってるわけでは無かったが、明らかに彼女は好意を寄せていたし、
F村くんだってヤリたいお年頃だ。無論、ベッドインもなかったのだけど、際どいやり取りは幾つかあった。

麻衣子は彼にこう言ったことがある。
「F村君はきっと、私のことなんて何とも思ってないんだろうなぁ。」
293ほんわか名無しさん:03/03/01 23:24
それは間違いだった。
F村は自分でも気付かないまま、日々確実に麻衣子に引き寄せられていた。
しかし、何もかも遅かったのだ。自分の気持ちに気付いたとき、
彼はもはや麻衣子の領分ではなかったのだった。
294ほんわか名無しさん:03/03/01 23:32
こんなこともあった。

初めてのデートの時、お互い手持ちがないまま、人気のケーキ屋のショーウィンドウを前に、
あれが食べたい、これがおいしそうなどと他愛の話を延々とした。寒かったけど、あの時は何よりも贅沢な時間に思われた。
あの時の店員の怪訝な表情が滑稽だった。その次の日の朝だった。彼女はF村にそのケーキを買ってきたのだ。
お小遣いを前借したのだという。あの時は本当に嬉しかった。
自分の分はないのに、おいしそうに頬張るF村の表情を眺めながら、幸せそうに微笑んだ彼女の顔が強い感情と共に蘇る。
295ほんわか名無しさん:03/03/01 23:39
掴んだ写真にポタポタと涙が落ちる。今の自分が惨めだった。
だが何よりも、素晴らしい想い出を共有することが出来た麻衣子への
感謝の気持ちと愛しさで胸が詰まる。F村はただただ座り込んで泣くしかなかった。

F村は気配を感じて視線を上げると、そこにはケーキ屋の店主オルベスが立っていた。

オルベス「お腹が空いてるのかい?ジャパニーズ・ボーイ。」
そうしてオルベスはF村を店の中へと招き入れた。
296ほんわか名無しさん:03/03/02 00:01
もう君には届かないだろう。行き場を失った愛は語られることもなく、存在自体が無意味で儚い。
だけど自分は知ってる。この想いは何よりも確かで、世界の何よりも価値があるものだ。
愛を口にしなくてもいい。愛を知らなくてもいい。愛を感じなくたっていい。
愛じゃなくてもいい。この愛。この愛。。。
297ほんわか名無しさん:03/03/02 00:11
第十七章 〜罰〜
298ほんわか名無しさん:03/03/02 00:16
谷間では一人となったアレトリオンとの決死の攻防が続いていた。

アリー「一人でのびのび戦えるのは久しぶりだわ。」
彼女の動きは明らかにアレトリオン連携時よりもキレを増している。
プライマリが発動した麻衣子ですら圧され気味であった。

麻衣子「この人、本当に強いわ・・・。」
他の仲間はただ呆然と戦いの行方を見守っている。
299ほんわか名無しさん:03/03/02 03:57
無数に散りばめられた星が、その存在の真を叫ぶかの如く、何時にも増して鋭い光を投げ掛けている。
月は出ていないのにも関わらず、二人の戦いを鮮烈に照らし出ている。
アリーは中心に柄のある円形の剣を、麻衣子は持ち前の戦闘センスと自流の格闘術で鎬を削っている。

アリーは一旦退き金色の長髪を後で束ねると、呼吸を整え始めた。

「それが噂の"プライマリ"の力なの?所詮ウワサの程度だったようね。」

彼女にとってもはや命令などどうでもよかった。この戦いを心底楽しんでいるようだ。
だが麻衣子の方は呼吸が乱れる所か、時間が経つに連れ動きが速くなっていくようだった。
300ほんわか名無しさん:03/03/02 04:12
アリーは構えを変えると、円形の剣を頭上に振り翳した。
アリー「この奥義を繰り出させたのは、あなたが二人目よ。」
彼女の剣「ウロボロス」に凄まじい風と気が収束し始める。

麻衣子は表情一つ変えずに拳を解す。眼にはまるで魔性の光が宿ったようだ。

加奈はふと、リリスが何やら呪文を詠唱していることに気付いた。
リリス「汝は知るだろう 幾何なりし封縛 如何なる訃音を告げる者か
    我 久遠の絆断たんと欲すれば ことの刃は降魔の剣と化し 汝を討つだろう」

アリー「行くぞ!!」
疾風の如く駆け寄るアリーと麻衣子。
301ほんわか名無しさん:03/03/02 04:25
それは一瞬の出来事だった。
二人が刹那の彼方に交じり合う瞬間、まさに神がかりな審判を以って勝敗は決した。

麻衣子「ゴルァァァアアアア!!」

麻衣子は左手でアリーの顔面を鷲掴みにすると、そのまま後頭部からアスファルトの叩きつけた。
地面におぞましく鈍い衝撃が響く。アリーは完全に意識が落ちていた。
302ほんわか名無しさん:03/03/02 04:39
アイリス「やったわ…。アレトリオンを退けた!」
杞憂「どうしよう。このまま本社に向かうの?」
伶佳「当然。この勢いで仲間を救いましょう!」

麻衣子は静かに呼吸を整えている。ふと、山道を駆けあがってくる一台のジャガーに気付いた。
303ほんわか名無しさん:03/03/02 04:49
車から降りてきたのは、険しい表情をしたレイコだった。
遥か後方には、上層部の指令で麻衣子達を追ってきた軍用ヘリが迫っている。

レイコ「あ、あなた達、何してるの?こんなことをして許されるとでも思った?」

一同は答えない。沈黙を破ったのは伶佳だった。

伶佳「私達はタダ仲間を救いたいだけなんです。」
レイカ「まだ子供なのに、そんな勝手な判断をして!この行動がどういう結果を招くことに
    なるかちゃんと考えた?!実際アレトリオンに大怪我を負わされそうだったじゃないの!」
麻衣子「上層部と彼女達は、リリスちゃんを処分するつもりだと。」
レイコ「何言ってるの?そんなわけないじゃない。いくら上層部でも子供の命をそんな風には…」

レイコはそう言いながら、学園襲撃後の幹部編成の変動と、怪しい雲行きについて思い当たる節があった。
校長に代わって非常時最高権限を握ったのは、黒田重工鰍ニ癒着の噂もある陸軍将校だった。
304ほんわか名無しさん:03/03/02 05:01
リリス「お願いです先生、行かせて下さい!」
加奈「どのみち彼女には、もう行くあてがないんです。」
麻衣子「だから私達が護り通す。囚われた仲間も助ける。」

レイコ「じゃぁこれは知ってる?リリスちゃんはもう死期が近いのよ。」

驚愕のあまり声が出ない一同。リリスは黙ってうつむいている。
ヘリのプロペラ音が、まるで死者を追い立てるケルベロスのように迫っていた。
305ほんわか名無しさん:03/03/02 05:32
パイロット「将軍、目的地に着きました!」
崖側の縁から陸軍ヘリが浮上する。ライトでその場を探るが、そこには女医師一人しかいなかった。

306ほんわか名無しさん:03/03/02 06:04
〜都市中心部 AM3:43 黒田重工竃{社ビル屋上ヘリポート

レイジィバツースはレイコが貸してくれたジャガーを路肩に乗り捨てると、
隣の高層ビルから本社ビル屋上に飛び移っていた。
アイリスは小型アンテナを星の瞬く夜空に向けると、目にも止まらぬ速さでコマンドを打ち出す。

伶佳「本当に巧く行くの?」
弥生「何をしているのだ?」
アイリス「アメリカの機密軍事攻撃衛星"ブライト・ライト"のシステムをハックしてるの。」
リリス「極秘に打ち上げられた大気圏外地上レーザー掃射システムね。」
アイリス「局地での作戦行動や要人の暗殺に使われるはずだったけど、政権の交代により
     その存在は闇へと葬られてしまったの。今でも軌道上を86基の極小攻撃衛星が漂ってるわ。」

麻衣子は話そっちのけでリリスの後姿を憂いの表情で見つめていた。レイコの言葉を反芻する。

「心臓の病気でね。これ以上戦いが長引けば死期を早めることになるわよ。」
麻衣子「どういうこと!?そんな!!」取り乱す麻衣子。
リリス「イヴが、彼女が呼んでいるんです。」
弥生「必ず無事に連れて帰る。」
レイコ「・・・わかったわ。車を使いなさい。早く!」
307ほんわか名無しさん:03/03/02 07:03
第十八章 〜Stealth〜
308ほんわか名無しさん:03/03/02 09:25
前にこの板で小説書いたりもしたことあるんですが
ここではロムさせてもらいます
最後まで続くといいな

話の腰を折ってごめんなさい
309ここカット:03/03/02 11:19
ちょっと書かせて貰ってます。
最後まで息が続くのかw
ガンガッテ(`・ω・´)
310ほんわか名無しさん:03/03/02 15:28
〜衛星軌道、日本上空36,000km

黒いスポットが星空を侵食しながら漂っている。
やがて地球の縁が覗いた月明かりが、攻撃衛星の黒い外殻に反射した。
やがてレンズのような砲塔を地上に向けると、
音も無く掃射エネルギーをチャージし始めた。
直線上には、真夜中でもなお明るい都市部の街灯が瞬いている。
311ほんわか名無しさん:03/03/02 15:38
アイリスはモニター上に映し出された映像を見ながら、モバイルに座標を打ちこんでいた。
軌道衛星のカメラが鮮明に屋上を捕らえている。これなら新聞の文字も読めそうだ。

アイリス「はいこれ。」
アイリスは伶佳にレーザー照準のようなものを手渡す。
伶佳はそれをボウガンの下に取りつけた。
伶佳「後はシミュレーション通りに撃てばいいのね。」
モニターは本社ビルを捉えていた。

アイリス「言ったとおり、射程角度は垂直軸から僅か8°以内に限られてるわ。
     あなたがそれで狙ったものを、レーザーが捕える。エネルギーは十段階で設定可能。
     但し、一度放射したらチャージに最低7分以上かかるわよ。」
312cut ◆EghiGOqNu. :03/03/02 15:51
誤字だらけスマソ
313ほんわか名無しさん:03/03/02 16:29
ケーキ屋の店主オルベスはF村君の身の上話を一通り聞き終えていた。
オルベス「oh、ジャパニーズボーイ大変だったネェ。で、これからどうするつもりだい?」
F村「このままここにおいてもらう訳には行きませんよね?」
オルベス「ん〜困ったね。ここに置くわけにはいかないなぁ。
ohそうね!!いい人紹介するよ。」
オルべスはそう言うと、通信機らしきものを取出し操作し始めた。
オルベス「ボスですか?オルベスです。一人見所のある若者を紹介したいんですが。
今何処ですか?えっ地球にいらっしゃる。それは好都合ね。」
オルベスは通信機を置くとF村君に
「30分位でボスが来てくれるから待ってなさい」と告げると
店の奥に消えていった。
オルベスの通信相手は何を隠そう
宇宙海賊団のボス"サクちゃん"その人であった。
314大魔王 ◆xdqi7eMKRA :03/03/02 16:35
>>312
いやいや、こちらこそこのようないい小説を書いていただいて。
どうもありがとうございます
315ほんわか名無しさん:03/03/02 17:15
フイーン・・・・バタバタバタ・・・・
空からUFOのような、それでいてヘリコプターのような機体が降りてきた。
F村(・・・・何者?)
そして中からダンディーな中年男性が一人。
サクレーン「どーも、あなたがF村君?私はマイク・サクレーン、サクちゃんと呼んでくれ」
F村「はぁ、どうも」
サクレーン「ところでF村君、アナタハ神ヲシンジマスカ?」

そんなシーンを影から見守る一匹のチワワがいた・・・・・
316ほんわか名無しさん:03/03/02 23:54
チワワは地球防衛国軍連邦の総長兼現役のエージェントだ。
宇宙海賊さくちゃんは飛来後ずっとマークされていたのだ。
そう、緑の妖精は彼らのスパイだった。
317ほんわか名無しさん:03/03/03 00:22
〜フランス、オーヴェルニュ地方マッシフ・サントラルの東78kmの山岳地帯

風院さつきは古い文献とGPS、あてに出来ない方向感覚を頼りに
深い山道を自慢のTJラングラージープで駆っていた。
もうダムを過ぎてから一時間近く谷間を下っている。
森は益々深く、空は重い灰色に染まっている。枯れた木々や葉がどこか不気味だ。
轍がまだ新しいところを見ると、きっとこの先に目的の集落があるに違いなかった。
318ほんわか名無しさん:03/03/03 00:26
第十九章 〜人喰いの村〜
319ほんわか名無しさん:03/03/03 00:40
その村には黒服を着た老人達しかいないようだった。
ジープはここに来る2km手前で電気系統がイカれたらしく、山道に乗り捨てるしかなかった。

老婆「あぁ、ここがべグレヴィルだよ。」
村と言うのも憚られる閑散とした佇まい。細々と畑を耕して生計を立てているようだが、
不思議なことに家畜の類は一切見当たらなかった。

老人「良かったら泊まっていくといい。風呂も食事も用意しよう。車は明日見てみるさ。」
こんな老人が車に詳しいとは思えなかったが、取り敢えずはそうするしかなかった。
何より、百年前にこの村で起きたことについて調査しなければならなかった。
320ほんわか名無しさん:03/03/03 05:04
〜黒田重工竃{社ビル 社長室 AM1:26

黒田獣騎は壁一面に代わる広い窓から、晧晧と瞬く都市の光を眺めていた。

獣騎「臆病な人間どもめ。だが今に世界は変わる。俺が変えて見せる…」

藪島率いる研究開発チームは、数時間毎に目覚しい結果を報告している。
秘書の皇=マリア=リヴェラが、たった今夜行便で来訪した客人を社長に招き入れた。

マリア「社長、アッシュ・ド・ピエール様がお見えになられましたわ。」
獣騎は窓から踵を返すと、煙草を灰皿に圧しつける。

獣騎「君は煙草が嫌いだったなピエール。あぁ、そこに掛けてくれ。」
ピエール「構わんよ社長さん。」
獣騎「良く来てくれた。例の調査報告とブツをずっと待っていたんだ。」
ピエール「やれやれ。調査は本分じゃないんだが。あそこでは酷い目にあったよ。」

全身黒のスーツに、メタリックなアタッシュケースを掴んだその男は、弱い30と言ったところか。
オールバックの黒髪にギリシア系の顔立ち、だが彼は生粋フランス育ちであり、
裏世界では最高の殺し屋兼、運び屋のエキスパートとして名を馳せていた。

社長は椅子に腰掛けると、大理石のような光沢を放つ重々しいデスクを挟んでピエールと対峙した。

社長「さぁ、早速だが…。」
社長は少し緊張した面持ちで再び煙草に口に咥えると、横に寄り添ったマリアがすかさず火を点ける。

「"ベグレヴィル"で君が見たことを報告してくれ。」
321ほんわか名無しさん:03/03/03 05:26
〜フランス オーヴェルニュ、山奥の集落"ベグレヴィル"

さつきは日が沈むまで村を散策することにした。
というのも、村の老人達は一向にこの土地に刻まれた忌まわしい事件について口を割ろうとしないからだ。

さつきは小川にかかった小さな橋を渡ると、ふと目の前の枯草の茂みに
木製のアーチが覗いてることに気がついた。図書館の文献から撮った写真を取り出す。

さつき「間違い無いわ。"イルミナティ"の人々はここで処刑されたんだ…」
322ほんわか名無しさん:03/03/03 05:44
アーチ状の建造物の用途は検討が付かなかったが、-いや、想像したくなかっただけだろう。
擦ったり引掻いた跡が無数についており、中には最近つけられたものまであるようだ。
さつきは背筋に悪寒を感じながらも、中心に設けられた何かの壇上に付着した白い粘液を採取すると、
携帯アナライザーのカプセルに投じた。

生暖かい風が枯草の茂みを吹きぬける。
さつきは衛星電話を取り出すと、アンテナを空に向けた。
323ほんわか名無しさん:03/03/03 05:54
〜パリ近郊の地下施設、機密防衛機関"サード・アイ・ブラインド"ラボ

研究員「おーぃヘキャッシュ、電話だぞ。愛しのさつきちゃんから」
ヘキャッシュは嬉々として電話を受け取る。

ヘキャッシュ「久しぶり。今何処にいるんだよ」
さつき「えぇ、ちょっと調べて欲しいことがあるんだけど…。」

ヘキャッシュのデスクトップにさつきが送った粘液の成分データが転送された。
ヘキャッシュ「アミノ酸やタンパク質の断片のようだけど…ちょっと待って。」
既存のデータと照合を始める。

さつき「もしかして体液の一部かしら?組成も特定できそう?」
ヘキャッシュ「今調べてるよ。ところで、今度また一緒に食事でも…」
さつきは呆れたように返す。
さつき「また彼女と別れたの?相変わらず甲斐性無いんだから。」
324ほんわか名無しさん:03/03/03 06:18
〜黒田重工竃{社ビル 社長室 AM2:23

ピエールはベグレヴィルで遭遇した奇怪な出来事や調査報告、その収穫物を
社長の前に披露し終えた直後であった。

獣騎「"イルミナティ"の遺産か…。」
ピエール「遺産?とんでもない。あれは"呪い"以外の何でもありませんよ社長さん。」
カプセルに保護された白い液体を恍惚と見つめるマリア。

マリア「この粘液が新しい世界の子種なのですね。」
獣騎「そうだよマリア。"激しくC型"のオリジナルソースだ。」
ピエール「呪われた民の怨念の媒体ですよ。」
325ほんわか名無しさん:03/03/03 07:33
さつきは集落でも一際大きい木造の屋敷の一室をあてがわれていた。
窓には雨混じりの強い風が吹き付けている。日の入りが近いのか、
灰色の空は一層重く、その濁った模様を頼りない窓いっぱいに押しつけていた。
家主の老婆は何やら村人を一階に集めているようだ。食事の時間だろうか。
衛星電話の着信音が鳴り響く、案の定ヘキャッシュからだった。

ヘキャッシュ「さつき?何やら奇妙なんだ。先…のサ…プルに該当するデー…」
さつき「ちょっと待って。電波が悪いみたい。」
ヘキャッシュ「上層部の…ウィルス…レコードに…クセス制限…」
さつきは要領得ずに困惑していると、階段が軋む音を耳にした。
326ほんわか名無しさん:03/03/03 09:54
ヘキャッシュ「んだよぉ、電波悪いのかなぁ・・・。」
受話器からはノイズが響くばかりだ。さつきとの交信は途絶えてしまった。
「どうした?また元カノに嫌われたのかよ?」同僚のフランクが意地悪そうに笑っている。

フランク「で、彼女はこのサンプルを何処で?」
ヘキャッシュ「あぁ、ベグレビルとかいうド田舎の集落らしい。」
フランク「ベグレビル?おぃおぃマジかそりゃ。」
ヘキャッシュ「あ?お前知ってんの?」
フランク「まぁな、一度任務で向かったことがあるんだが・・・、心配だな。」
ヘキャッシュ「どういうことだよ?」
327ほんわか名無しさん:03/03/03 10:02
フランクはヘキャッシュの前で地図を広げると、ペンでベグレビルのある辺りを丸く囲んだ。

フランク「いいか?あの辺りでは過去数十年に渡って、登山者や観光客が行方不明になってるんだ。」
ヘキャッシュは眉間に皺を寄せて話に集中している。
次にフランクは赤ペンで円の中にスポットをマークし始めた。

フランク「OK、これが無残な遺体が発見された場所だ。全てあの集落の半径15km以内に収まっている。」
ヘキャッシュ「無残って?」
フランク「頭骨と体の骨の一部が見つかっているんだがその・・・。何者かに食されたらしい。」
ヘキャッシュは嫌な予感を抑えながら地図を凝視している。
フランク「猟奇殺人の線も考えられたんだが、手がかり無しだ。まぁここ数年は何事もないみたいだし・・・」

電話が鳴った。
328ほんわか名無しさん:03/03/03 10:15
ヘキャッシュ「もしもし?さつき!?おぃ、どーした?何があった!」
電話の向こうのさつきは何か怯え、狼狽しきっている様子だった。声が震えている。

さつき「もう・・・ない・・・今は炭坑みたいな・・・に隠れて・・・」
電波障害が彼女の声を遮っている。
さつき「おばあさ・・・が、村・・・・私を・・・祭壇・・・に・・・呪文・・・・」
ヘキャッシュ「さつき!そこに隠れてろ!今すぐ助けをやるから!!」
フランクはタダならぬ事態を察知して、迅速に上層部に連絡を入れているようだ。

電話の向こうから、何か木を引掻くようなおぞましい音が無数に響いている。
瞬間、電波が鮮明に通ったようだ。
さつき「ヘキャッシュお願い、そこにいて。。。私と話していてくれない?」
ヘキャッシュ「あぁ、わかった。わかったから助けが来るまで我慢しような?」
さつき「うん。。。」
329ほんわか名無しさん:03/03/03 10:34
((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
330ほんわか名無しさん:03/03/03 10:40
第二十章 〜Love,Candle,and Secrets〜
331ほんわか名無しさん:03/03/03 11:04
そこは炭坑と言うよりは、何かの儀式用に設けられた土の洞窟だった。
結構丈夫な木製の扉が、狂気に捕われた村人の侵入を防いでくれていた。
外は大嵐らしかったが、衛星電話はクリアに電波を受信出来ている。
もう扉を引っ掻く音は聞こえない。諦めてしまったのだろうか?

ヘキャッシュとさつきは義務的な連絡を終えると、研究室から同僚に出てもらい
助けが到着するまでの間、さつきと二人っきりで他愛の話で気を紛らわせていた。
付き合っていた頃のこと、あれからあったこと。最近は疎遠な二人だったが、
こんな状況で堰を切ったように話したいことが浮かび上がってくる。
洞窟内を照らすランプの灯かりが、ゆらゆらと蠢いていた。
332ほんわか名無しさん:03/03/03 11:10
一通り話題も途切れた頃に、嫌な沈黙が流れた後、さつきは切なげな声でこう切り出した。
「きっと助けは間に合わないわ。」
ヘキャッシュは必死で気を落ち着けながら返す。

ヘキャッシュ「ばぁか、うちらは天下の諜報機関だぜ。大丈夫、今にそこの住人全員ひっ捕えてみせるって。」
さつきは力無く微笑むと、こう呟いた。

「わたしね、何か盛られたみたい・・・」
333ほんわか名無しさん:03/03/03 11:19
もう電話が鳴って4時間近く経とうとしていたが、一向に救出隊の連絡は入らない。

さつき「血が、止まらない・・・の。目とか口、顔中、それに下の方も・・・」
ヘキャッシュは不安に気が狂いそうになるのをこらえながら、止血剤がないか尋ねる。

さつき「車の中よ。。。体中の穴から血が・・・何かの疫病かしら?私どうなっちゃうのかな?」
334ほんわか名無しさん:03/03/03 11:25
ヘキャッシュ「さつき、・・・」
さつき「ねぇヘキャッシュ聞いて。。。」
さつきはヘキャッシュの言葉を遮ると、深呼吸を置いて話し出した。

さつき「あなたを振っちゃったこと、恨んでる?」
ヘキャッシュ「そんなわけないだろ。」彼は涙声を隠しきれない。
さつき「ごめんね。あんな形で別れることになって。でもね、」
苦しそうに酸素を仰ぐさつき。まるで空気が鋭利な刃物のように喉を切りつけるようだ。

ヘキャッシュ「もういいから、無理して話すなよ。もう少しで救助隊が」
さつき「いいえ、来ないわ・・・」
335ほんわか名無しさん:03/03/03 11:42
さつき「お願い、じゃぁこれだけ言わせて・・・」
受話器にその言葉をそっと囁くさつき。
ヘキャッシュは目を閉じると嗚咽しながら彼女に呼びかけた。
「愛してる。俺も愛してる。お願いだからこらえてくれよ・・・」
さつき「もう・・・ダメ・・・みたい。でも、最後にあなたに話せて・・・良かった。。。」

僅かな沈黙でさえ真空の刃の如く、彼の心を引き裂くには十分だった。

ヘキャッシュ「さつき?さつき!?」
さつき「死に・・・たく、ないよ・・・。」
さつきの目から生気が消える。電話を握っていた手を力なく降ろすと、
そのまま電話を硬い地面に放り出した。同時にランプの灯火が風に吹かれたように消え、
洞窟は冷たい闇に閉ざされた。
336ほんわか名無しさん:03/03/03 12:53
黒田重工梶@研究開発室

敷島は"激しくC型-オリジナルソース"の分析結果を
驚愕の顔で見ていた。
敷島「信じられん。いや当然と言うべきか。
しかし、この数値バランスは....」
敷島はブツブツ呟きながらパソコンに向うと
"激しくC型擬似覚醒プログラム"
と書かれたファイルを開き修正を加え始めた。
"激しくC型擬似覚醒プログラム"とは
"c-type assault perfect professional android"
通称"C-TAPPA"に使用されているプログラムである。
敷島「これで素体の性能は80%以上増すだろう。
そして、レイジースーツでも着用させよう物ならば...
ハハハハハ!無敵の軍団が完成するぞ!!」
337ほんわか名無しさん:03/03/03 13:06
黒田重工梶@屋上ヘリポート

伶佳はボウガンの狙いを正確に定めていた。
事前のシュミレーションで
照準にほんの僅かなずれが生じるだけで
レーザーが地上に到達する間には
数キロのずれになる事が解っている。

とそのとき、杞憂が素っ頓狂な声を上げた。
「ねぇ、ここ開いてるよ!!」
ヘリポートから階下に降りる扉には
鍵がかかっていなかった。
338ほんわか名無しさん:03/03/03 17:07
第二十一章 〜Wetwire,Firewire〜
339ほんわか名無しさん:03/03/03 17:11
サクちゃん「ヘイF村君、あのビルで〜す、あのビル。
あのビルにピザの宅配として潜り込むので〜す。
私も後からチワワと共に行きま〜す」

・・・いつのまにチワワと仲良くなったのか。
F村の目指すビルは、そう、黒田重工鰍ナあった。
340ほんわか名無しさん:03/03/03 17:51
(;゚∀゚)=3
341ほんわか名無しさん:03/03/03 22:12
も読むきしない
342ほんわか名無しさん:03/03/04 01:15
ひっそり期待sage(・∀・)イイ!!
343ほんわか名無しさん:03/03/04 06:27
朝河百合子は突然の電話を疎ましく思いながら、まだ重い瞼をこすって受話器を耳にあてる。
時計はまだAM2:30を回ったばかりだった。

「幹部召集?こんな時間に…」

直後、電話の向こうからけたたましいアラームが鳴り響いた。
百合子「コードレッド?そんなまさか…」

緊急事態のランクでは「コードレッド」は最高警戒レベルだ。
だが、実際にこれまで耳にしたことは無かった。
344ほんわか名無しさん:03/03/04 07:17
〜黒田重工竃{社ビル AM2:33 社長室

照明が赤から白へと繰り返し点滅している。
獣騎とピエールは沈黙しながら事の次第の報告を待っている。

獣騎「何事だ?」
秘書のマリアがセキュリティエリアとの連絡を終えて部屋に戻ってきた。
マリア「コード・レッドですわ。重大な事態です。」

マリアは一息置くと、頬にかかった髪をたくし上げ若き社長をじっと見据えた。

「地下の研究施設エリアとの連絡が途絶えました。」
345ほんわか名無しさん:03/03/04 08:44
〜黒田重工竃{社ビル 最上階設備配線エリア

アイリスは端末にノートパソコンを接続すると、ビル内のシステムに侵入を試みた。

アイリス「信じられない。あらゆるセキュリティが解除されてる。」
伶佳「どういうこと?」
リリス「何かあったのかしら?」
加奈「このビル、人の気配がしないわ。。。」
アイリス「一時間ほど前に厳戒なセキュリティプログラムが稼動した痕跡はあるの。
     でも程なくして全システムがダウン・・・」
麻衣子「私達の他に侵入者が?」
杞憂「これからどうするの?」

アイリス「加奈ちゃんと私でメインコンピュター"MOTHER"まで辿りついて
     全システムを乗っ取るわ。それから人質の位置を探ってあなた達に知らせる。」
伶佳「了解。」

一同は散開した。
346ほんわか名無しさん:03/03/04 08:53
第二十二章 〜ガーディアン〜
347ほんわか名無しさん:03/03/04 09:06
加奈とアイリスの二人は他の五人と別れた後、ビル内を縦につき抜ける狭い配線ダクトを
下っていた。忍者である加奈は巧みに道具を操ってアイリスを先導する。

アイリス「ちょちょちょちょっと!もう少しゆっくり降りなさいよ〜!」
泣き喚くアイリス。
加奈「何言ってのよ。これからちょっと飛び降りる所よ。」
彼女はパッと道具を放すとアイリスを掴んで、配線孔をまっしぐらに落ちていった。
アイリス「ギャー!(泣)」
348ほんわか名無しさん:03/03/04 09:29
一方、麻衣子以下五人のレイジィバツースはフロアを一回ずつ駆け下りていた。
社内は不気味な程静まり返っている。時間も時間だろうが、警備員一人にも遭遇しないのはおかしい。
丁度七階ほど下った辺り、地上78階で一同は酷い惨状を目の当たりにして立ちすくんだ。
まるで小規模な武力衝突があったかのようだ。窓は割れ、壁には夥しい銃痕、社員や警備員の
死体が無残に引き裂かれ、血糊とともにフロア中に散乱している。

杞憂「うっ・・・酷いわ…」
弥生「私たちが着く直前に何かあったらしいな。」
玲佳「仲間が無事だといいけど。」
リリス「気をつけて、まだ近くに何かいるかも。」

麻衣子は壁に刻まれた巨大な四本の爪痕を注視している。これには見覚えがある。

麻衣子「"キメラ"だ。。。」
349ほんわか名無しさん:03/03/04 10:03
伶佳「麻衣子うしろ!!」
麻衣子「しまっ…」
麻衣子は突然、金属製の重い殴打を受けて地面を滑った。
杞憂「こ…これは何?」

目の前には、体長3m程の四角いフォームの2足歩行型ロボットが立っていた。
麻衣子を殴った腕には、内臓型のバルカン砲が装備されている。

伶佳「自律型戦闘兵器"ガーディアン"よ。非常時に稼動したみたいね。」
ガーディアン「シンニュウシャ ハ ジョキョ スル」
350ほんわか名無しさん:03/03/04 10:17
ガチャッ!
ガーディアンは両腕と体の中心から巨大なガトリング砲を露わにすると、
レイジィバツースに烈火の如く凄まじい弾幕を叩きつけた。

杞憂「いけない!バリア!!!」

薄い光の膜が五人の前に張り巡らされる。が、弾幕は勢いを失いつつも
メンバー全員に容赦なく撃ちこまれる。

「キャァァ!!」
麻衣子「くっ!後ろに引かなきゃ!」

背後にはヒビ割れた広い窓が、都市上空の暗い闇を背負って待ち受けていた。
351ほんわか名無しさん:03/03/04 10:32
「ちっ!」
変身しようとするリリスを麻衣子が止める。
麻衣子「だめ!あなたは戦いを控えて!!」鬼気迫る表情にリリスは頷くしか無かった。
「いい?ここは私と弥生ちゃんが引きつけるから、その隙にあなた達は後ろに回って!」

ガーディアンは腕を弾丸の如く伸ばすと、麻衣子の首を締めつけ窓に叩きつけた。
砕け散ったガラスが遥か下界の光の瞬きに吸いこまれていく。
次の瞬間、ガーディアンは腕を縮め麻衣子に攻め寄った。彼女は両足を踏ん張って転落を堪えている。

麻衣子「くはっ!」
ガーディアンが力まかせに押すにつれ、背中が凄まじい背中で反っていく。

杞憂「伶佳ちゃん、レーザーで撃って!」
伶佳「だめよ。この位置からじゃ麻衣子もタダじゃすまない・・・」

弥生が背後から刀を叩きつけようとした瞬間、後頭部から現れたバルカン砲によって退けられてしまう。
弥生「くっ!近づけない!!」
352ほんわか名無しさん:03/03/04 10:33
>>背中が凄まじい背中で反っていく。
>>背中が凄まじい勢いで ですた。。。(鬱
353ほんわか名無しさん:03/03/04 10:41
窓枠の縁で転落をこらえる麻衣子の顔に、ガーディアンのボディから突き出した銃が付きつけられる。
メンバーからはこの状況は見えない。死を覚悟した麻衣子は皆に叫んだ。

麻衣子「ここは私にまかせて!早く先に行って!」
杞憂「だけど…!」
麻衣子は左手でグーのサインを送る。
伶佳「わかったわ!急ぎましょう。」
弥生「・・・あぁ。」リリス「・・・。」

一同は駆け出した。
354ほんわか名無しさん:03/03/04 10:57
ビル内は数十台のガーディアンに蹂躙されていた。
麻衣子を欠いたレイジィバツースは決死の突破を試みながらフロアを駆け下りていく。
後ろから数台のガーディアンが弾幕を張って追ってくる。
杞憂はふと、気配が一つ足りないことに気付いた。

「あれ?リリスちゃんは?」

〜麻衣子に付き付けられた銃が火を吹く瞬間だった。
窓枠の外に2台の軍用ヘリが浮上し、ガーディアンにクロスファイアを浴びせた。
後ずさるロボット。ヘリから三人の人影が飛び降りると、ヘリは飛び去っていった。
機体にはセイレーンの紋章。

「いいザマね。リーダー」

そこに降り立ったのは"アレトリオン"の三人だった。
355ほんわか名無しさん:03/03/04 13:40
〜ビル中心階 メインコンピューター室

そこはただ真っ白な、無菌室のような広大な円形の部屋だった。
中心にはリアクターのような物々しいタワーのようにそびえる"MOTHER"が
数個のモニターを閃かせていた。この部屋に通じるエレベーターや階段は無い。
幾つかの自律防衛システムを乗り越えて、
加奈とアイリスはようやく"MOTHER"と対峙していた。

アイリス「凄いわ!これこそまさにバケモノね!」
目を煌かせてキーを叩く姿はさっきまでとは別人だ。
加奈「ちょっと!モニターを見て!!」
別行動のレイジィバツースが追われている様子を映し出している。
アイリス「自律型の防衛ロボットね。これは手動で停止させないと。待ってアクセスキーを。。。」

一つのモニターには玄関が映し出されている。どこから見ても怪しい三人組み。

F村「ちわーっす。ピザ7人前ですけどー」
356ほんわか名無しさん:03/03/04 13:51
F村「おぃ、そのチワワが怪しまれたんじゃねーノ?」
サクちゃん「OH!my goddes!何を言うかこのジャパニーズハラキリ馬鹿GA(ゲラリヒョン
       もっと大きな声で出すネ!!(ゲラリンチョ」
357ほんわか名無しさん:03/03/04 14:02
第二十三章 〜Sinequanon〜
358ほんわか名無しさん:03/03/04 14:10
F村「はいはい。わかりましたよ・・・」
サクちゃんはそっとチワワに耳打ちした。

サクちゃん(ちょっとー!いつまでこんなアホみたいな演技させんすかー!もう限界っすよー)
チワワ(何を言うのじゃ、絶対に正体を明かしてはならんぞ。麻衣子とかいう香具師に面が割れてるからな)
F村(トホホー)
359ほんわか名無しさん:03/03/04 16:02
アイリスは"MOTHER"のプログラムの最深部に達していた。
アイリス「後は特定のキーワードを抽出して巨数暗号をフィルタにかければ。。。」
モニターでは仲間達がドンドン追い詰められている様子が映し出されている。

加奈「ねぇ!早く!!」
アイリス「わかってるわよ!ホラ終わり!!!」
パチンとEnterKeyを弾くアイリス。
しかし、モニターは突然暗転。ファンの駆動音が嫌な静寂を奏でると、
モニタの真中に緑色の文字が点滅し始めた。

-プログラム"Sinequanon"が稼動中-
360ほんわか名無しさん:03/03/04 16:26
さくちゃん「あれっ?!ドア開いてるYO!」
F村「俺の苦労は一体...」
チワワ「ワンワン!(乙カレー)」

ビル内に進む宇宙人と一人と一匹
361ほんわか名無しさん:03/03/04 16:59
アイリス「"Sinequanon"は恐らくダミープログラムね。何者かが既にシステムを支配してるわ。」
加奈「何とかできないのそれ?!」
アイリス「私を誰だと思ってんのよ」

不敵に笑うアイリス。

一方、銀之助を伴った朝河百合子がビルに到着した。
百合子「何か凄く嫌な予感がするわ…」
362ほんわか名無しさん:03/03/04 17:08
地上17階まで着た辺りで、伶佳達は既に数10台単位のガーディアンに取り囲まれていた。

弥生「もう撒くのは限界だ」璃猿を鞘から引き抜く。
伶佳「まだなの?アイリス…」レーザーの照準をガーディアン達の中心に合わせる。
杞憂「リリスちゃんは何処へ行ったのかしら…」

〜地上78階

アレトリオンは麻衣子に歩み寄ると、ガーディアンから庇うように盾になった。

麻衣子「?!どういうこと?」
アリー「命令が変わったのよ。」
メル「気に食わないけど、あなたたちを護れって。」
リン「モー暴れてやるんだから!!」

ガーディアンが銃を構える。

アリー「おイタはそこまでね。」
363ほんわか名無しさん:03/03/04 17:23
伶佳「来るわよ!」

ガーディアンの一体がミサイルを放つと、周りを取り囲んでいた機体も一斉に掃射を開始した。
爆炎と煙がビルを震撼させる。百合子は外でその衝撃を身に受けていた。

百合子「何?中で一体何が…」
銀之助「・・・?伏せろ!上から何か来る!!」
百合子「上?」

都市の遥か上空、大気圏外を滑っていた攻撃衛星の砲塔が一瞬白く閃くと、
高エネルギービームを地上に一閃する。夜空が一瞬カッと煌くと、分け入った雲を
吹き飛ばし、ビルの屋上に突き刺さった。その瞬間だった。17階エリアの窓という窓から
爆炎とともに破片が四方に飛び散る。

百合子は慟哭する。

「今のは一体・・・」
364ほんわか名無しさん:03/03/05 06:57
〜"MOTHER" 管理ルーム

アイリスはタワーのパネルを抉じ開け、何か複雑な手順で回路同士をバイパスさせていく。
やおらチェアに腰掛けると、目を閉じてふぅと呼吸を置いた。

アイリス「行くわよオラァァァ!!!」

キーボードに鬼の如く怒涛の打ち込みを開始するアイリス。
加奈は部屋の隅っこでガタガタ怯えている様子だ。
部屋の照明が明るくなり、ファンの駆動音が戻った。

アイリス「やったわ!」

だが次の瞬間、モニターの左隅に表示されたメッセージに彼女は戦慄した。

EVE:"あなたはだれ?"
365ほんわか名無しさん:03/03/05 20:10
レビテト
366ほんわか名無しさん:03/03/05 20:35
その時、一人の男+α2個が扉を開けてモニターに向かい、こう言った。
「F村だ」
「宇宙探偵サクちゃんだ」
「言葉の喋れる犬だ」
367ほんわか名無しさん:03/03/05 23:25
アイリス「あ、ピザの出前?今忙しいから後にして!」
368ほんわか名無しさん:03/03/06 08:59
加奈「F村君?」

加奈は忍者であるがゆえに
人を愛する事を禁じられていた。
それが掟であった。

その加奈が一年ほど前、学校で見かけた
F村を好きになってしまった。
そんな彼女が取った行動は
訓練を兼ねたストーキングだった。

加奈の技術は高く、周囲どころかF村も
気付いていないその行為を
人材を探していたレイコに見破られ、
レイジィバツースにスカウトされたのだ。

このことは加奈とレイコ二人の秘密で
他のメンバーは当然、校長すら知らない事である。
369ほんわか名無しさん:03/03/06 10:13
加奈「どーしよ!なんでF村くんがいるの?ぅわーんもっとお洒落すれば良かったぁー!(泣)」
アイリス「・・・。」アイリスはほっといてモニタに表示されたメッセージに答えた。

Iris"私達はレイジィバツース。捕われた仲間を助けに来たの"
EVE"そう、なんか妙なのがビルを徘徊しているようだけど"
Iris"ええ、まぁ"
EVE"残念だけど、ここにいる三人は私に少し貸してもらうわ"
370ほんわか名無しさん:03/03/06 15:38
第二十四章 〜越えられない痛み〜
371ほんわか名無しさん:03/03/06 17:01
霧崎伶佳の放った衛星レーザーはビル17階から地下までを貫いていた。

伶佳「ちょっと出力間違っちゃったみたい…。」
弥生「確かに、狙いは外してないな。」
杞憂「結界が持ちこたえて良かったわ…」
372ほんわか名無しさん:03/03/06 17:10
伶佳は恐る恐る付きぬけた大穴を覗きこむ。
ガーディアンは全て殲滅されてしまったらしい。

「これで一気に降りられるわね。」

後ろから誰かが呼びかける。
麻衣子を抱きかかえたリリスだった。
麻衣子は全身虚脱で息が上がっている。

麻衣子「みんな…、良かった。」
373ほんわか名無しさん:03/03/06 17:18
話の腰を折って悪いが>>371さん
"衛星レーザーは屋上に突き刺さった"との表記が>>363
あるのだが...
しかも>>348よりこのビルが地上85階建程度だとわかる。
それを全部ぶち抜くレーザーて...



374ほんわか名無しさん:03/03/06 17:20
「よ、良かったじゃないわよバカァッ!!」
伶佳は麻衣子に駆け寄ると、突然きつく抱き締める。

伶佳「あなたどーしていっつも無茶すんのよ!!」
麻衣子「あはは…バレてた?」
伶佳「大丈夫じゃない時に限ってヘタな空元気だすの知ってんだから!!
   "プラネットヴェルト"に特攻した時だって…」

いつもは気丈な生徒会長だが、何かが堰を切ったように溢れ出していた。
杞憂「伶佳ちゃんが泣くの始めてみたわ…。」

「感動の再会は終わったか?」
忌まわしい声に反応して一同は身構えた。
アレトリオンだった。
375ほんわか名無しさん:03/03/06 17:25
>>373ご指摘ありがd。チョト苦しいけど
レーザーは指定した着弾地点を真っ直ぐ目指したあと爆発するという設定に
脳みそが勝手に設定したみたいでつ。。
376ほんわか名無しさん:03/03/06 17:41
よければこのスレ使ってください。

http://human.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1046445635/l50
ネタスレ応援スレッド
377ほんわか名無しさん:03/03/06 20:10
レイジィバツースとアレトリオンは、共に地下へ向かって大穴を一階ずつ下っていた。
麻衣子は杞憂の回復魔法を受けたが、あまり体力が回復していない。

リリス「プライマリの負荷が高いのね。」
麻衣子「ん?平気平気!!」
伶佳は無線でアイリスと連絡を取っていたが、麻衣子の台詞を聞いて頭をコツンと叩く。

伶佳「なーに言ってんの。あんたはちょっと休憩してなさいよ。」

リリスはその様子を少し妬ましげに視線を送る。その様子を見ていた杞憂が彼女にそっと話し掛ける。

杞憂「あの二人ね。ちょっと前までは犬猿の仲だったのよ。」
リリス「そーなの?」
杞憂「あの二人、去年は同じクラスでね。レイジィバツースの前リーダーは伶佳ちゃんだったんだけど」
リリス「ふーん。」
杞憂「お家のこととか、色々プレッシャーがあったらしくて、彼女、自殺未遂を・・・」
378ほんわか名無しさん:03/03/06 20:31
〜2ヶ月前
379ここカットね:03/03/06 20:38
去年なのに2ヶ月前は矛盾しない?
380ほんわか名無しさん:03/03/06 20:47
〜黒田重工梶@研究施設別棟

黒田獣騎と敷島京介はレイジィバツースの闘いをモニターしていた。
京介「ま、予定外でしたが、実験データも無事。計画には支障ありません。」
マリア「不謹慎ですわね。若干名の犠牲者が出ましたわ。」
獣騎「封鎖された地下施設への道を開いてくれたようだ。ピエール、頼んだぞ」
ピエール「やれやれ。追加料金は少々高く付きますよ」
381378:03/03/06 20:53
じゃ、〜一年前と言ってみるテスツ…

〜一年前
382ほんわか名無しさん:03/03/06 21:42
一年前、コルトヴェイン=インダストリーの開発したオービット・リング(通称プラネット・ヴェルト)
の攻略は宇宙海賊団ベルーガの協力を仰いで大成功に終わった。
中でも新入隊員だった麻衣子の活躍は目覚しく、次期隊長の呼び声が高まっていた。
383ほんわか名無しさん:03/03/06 22:06
だが、闘いの最中に伶佳が一人想いを寄せていた幹部重役の一人、水島重里が命を落してしまう。
戦闘が終わって数日、伶佳は学園に姿を見せなかった。

そんなある日だった。教室に一人の生徒が駆け込んで来てこう叫んだのだった。

「おい!委員長が手首切ったってヨ!!」
384ほんわか名無しさん:03/03/06 22:24
伶佳はひとり病室で放心状態だった。
そこに麻衣子達が見舞いに駆け付ける。

麻衣子「伶佳さん・・・あたし・・・」
伶佳「ふん、何よ。ブザマだって言いたいんでしょ!」
麻衣子「・・・私のせいで水島さんが。。。」
伶佳「・・・。」

伶佳はじっと窓の外を見つめる。夕日はとっくに沈み、
暗い赤と紫に色に染まった領界に早くも星々が覗いている。

伶佳「・・・あなたのせいじゃないわ。あなたはみんなを救った。」
麻衣子「水島さんは・・・」
伶佳「私ときたら、あの後混乱しちゃって・・・隊員の命を危険に晒したわ。」

彼女は麻衣子に微笑んだ。

「これからのこと宜しくね。」
385ほんわか名無しさん:03/03/06 23:14
第二十五章 〜Massive Attack!〜
386ほんわか名無しさん:03/03/07 00:20
アイリスはじーっとモニターを睨めている。
EVEからの応答はもう無かった。加奈は相変わらずF村のことで浮かれている様子だ。
アイリス「さ、捕われた仲間の居場所も伝えたし、そろそろ合流するわよ」
加奈「えっF村君に会えるかなぁ?」
アイリス「さぁ?(何しに来たんだあいつらは。。。)」
387ほんわか名無しさん:03/03/07 05:55
〜黒田重工梶@本社ビル フロント

F村「えっ?!それってマジっすか!!レイジィバツースがこのビルに?!」
サクちゃん「OH!イッツトゥルーねジャポネーゼ!」
チワワ「F村よ。お主彼女達と面識があるのじゃろう?」
F村「ええ、一応…」
サクちゃん「俺だってあるんだがな…」
F村(あっ普通にべしゃった…)
チワワ「お前は他の隊員に怪しまれる。F村くんが一番の安全牌なのじゃ。」
F村「で、俺は何をすればいいんですか?」
チワワ「彼女達を油断させて、ある物を奪って欲しい」
388ほんわか名無しさん:03/03/07 06:02
F村「あ?」
F村は冗談じゃないと思った。愛する麻衣子にそんな真似が出来るかと。

チワワ「成功した暁には、そこのスケベオヤヂが撮影した麻衣子チャンの悩殺スナップを…」
F村「で?俺の任務の詳細は?(キラ」
389ほんわか名無しさん:03/03/07 06:08
アイリスはリボンを口に咥えながら、金髪のツインテールをサイドに回し、後ろで一本に編む。
アイリス「これで良しッと。加奈ちゃん、行くわよ。加奈ちゃん?っていねぇよォィ!!」

〜フロント

加奈「や、やぁ、お久しぶりですねF村さん、元気だった?」緊張のあまりギクシャクする加奈。
F村「ん?誰あんた」
加奈「ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン」
390ほんわか名無しさん:03/03/07 06:19
笑顔が引き攣る加奈。後ろ手にクナイを握り締める。

加奈「あはは…、まぁ無理もないですわ。私達、知り合ってまだあまり会話をしてませんものね。」
加奈(そーだわ。自分の気持ちを知られちゃいけないんだ。ここは一つ冷静に、冷静に。)
F村「他の隊員は何処?」
加奈「あ、あぁ、確か便所に行くって言ってたかすぃら?」
F村「カステラ?」
391ほんわか名無しさん:03/03/07 06:30
加奈は忍者の血統だ。恋は決して許されないのである。とは言え、年頃の女子である。
彼女はただただ、彼に少しでも近づきたい。気を惹きたいという感情を抑えることは出来なかったのだ。

F村「みんな長いね。トイレ。」
加奈「そっ、そーね!ウンコかしら?」
F村「……。」
加奈「ハッ!!」

見詰め合う二人。加奈は自分の言動によって極限まで追い詰められていた。

加奈「キャッ!キャァアアアーーーー!(恥)」

三分後、サクちゃんとチワワはクナイにメッタ刺しにされたF村を発見した。
F村「俺…何か怒らせること言ったっけ…?」
392ほんわか名無しさん:03/03/07 08:07
第二十六章 〜Slide two side〜
393ほんわか名無しさん:03/03/07 08:25
サクちゃん「そんな事より大丈夫かい?ジャパニーズボーイ」
床は血の海だった。常人なら、出血多量で死亡しているであろう量である。
F村「大丈夫ッス!俺、昔から傷の治り速いから。それに普段から色々健康にも気使ってるし。」
F村はそう言うとケロリとした顔で立上った。
彼の傷はもうふさがり始めていた。
サクちゃん「oh!オルベス、やはぁり貴方の目は間違ってまーせんでした。
このジャパニーズボーイの不死身度はかーなりぃ、高いデェース。」
サクちゃんはなんだか嬉しそうだった。
394ほんわか名無しさん:03/03/07 08:50
〜アンデスの麓のケーキ屋

仕込みのために店の外に出たオルベスは、山脈の峰から覗く眩しい暁光に照らされた。
オルベス「ジャパニーズボーイ、ドンギバップね!(^ー゚)b」
395ほんわか名無しさん:03/03/07 11:03
加奈「F村君死んだりしないよね。前に"やくざ"にめった刺にされた時も
元気そうだったし...」
加奈はF村をストーキングしている際に目撃した事を思い出していた。
加奈「きっと大丈夫だよね。」
一人納得すると、"MOTHER" 管理ルームに戻るため
"レーザーの大穴"へ向った。
大穴に辿り着き、見上げると伶佳達が上の階から
ちょうど降りてきているところだった。

現在地:アイリス:42〜43階 "MOTHER" 管理ルーム
麻衣子、伶佳、杞憂、弥生、リリス、アレトリオン:17階より"レーザーの大穴"
                        を降下中
    加奈:1F"レーザーの大穴付近"
サクちゃん一行:1Fフロント周辺
百合子、銀之助:外部,本社ビル周辺(?)
獣騎、京介、マリア:黒田重工梶@研究施設別棟(研究員達も無事ならここか?)
ピエール:研究施設別棟より本社ビル地下へ移動中
    オルベス:アンデスの麓のケーキ屋
    三上慶子、さくら、もも、CJ:不明
396ほんわか名無しさん:03/03/07 14:56
サクちゃん「Ohhh,F村、かなりヤバそーだけどR U OK?」
F村「えー大丈夫っすよーアハハー」頭からピューピュー血液が噴き出している。
チワワ(こやつ死ぬな・・・)
397ほんわか名無しさん:03/03/07 17:13
チワワの予想を裏切りF村は至って元気そうだ。

サクちゃん「ヘィ、ジャパニーズボゥイ、ユーは純粋なジャパニーズですか?」
F村「んー詳しくは解んないけど、何代か前にフランス人のオバーチャンが居たらしいけどなんで?」
サクちゃん「oh!もしや、その方はオーヴェルニュ地方の出身ではないーですか?」
サクちゃんはF村の質問には答えずにさらに質問を重ねた。
F村「だから、詳しく知らないんだって!」
F村は質問を無視されたのに腹を立てたのか、やや切れ気味に答えた。

F村の頭から一際勢いよく血が噴出した。
398ほんわか名無しさん:03/03/07 17:20
めでたし、めでたし。FIN...
399ほんわか名無しさん:03/03/07 18:41
と、いう血文字になった
400ほんわか名無しさん:03/03/07 23:49
ところ変わってアンデスの麓、
団子屋の主人・・・「劉翻」は今日も溜息をついていた。
オルベスのケーキ屋に客を取られて商売にならないからだ。

劉翻は決心したように、ある所に電話を入れた。
401ほんわか名無しさん:03/03/08 00:02
プルプルプルプル

「もしもし、オルベスケーキ店さんですか?
 ショートケーキ大至急で壱兆個、出前お願いします。
 あ、こちらですか?黒田重工17階の会議室までお願いします。」

ガチャン

「これでよし...ふはははははは」
劉翻のせこい嫌がらせ計画が始まった!!
402ほんわか名無しさん:03/03/08 00:15
劉翻はオルベスに奥さんを寝取られたことも根に持っていたのだ!
403ほんわか名無しさん:03/03/08 00:22
百合子と銀之助は1F裏口がビル内に侵入したところだった。

百合子「"コードレッド"があったから、恐らく社員は別棟に避難してるはず。」
銀之助「別棟?」
百合子「ええ、地下施設に通じるターミナルに別棟行きの輸送システムがあるの。
    あそこの階段を…ゲッ!!!」

百合子が指差した先には、ポッカリと大口を広げた穴があった。
404ほんわか名無しさん:03/03/08 00:36
レイジィバツースは1Fで合流した後、(アイリスは単独行動中)
大穴から地下研究施設への侵入を果たしていた。
伶佳はアイリスから転送して貰った地図データを頼りに一同を先導する。

伶佳「みんな絶対離れないで!ここ、とてつもなく広くて迷宮みたいなの。」
加奈「そういえばさ、F村君何しに来たんだろうね。」
麻衣子「さぁ。あの海賊団のオヤヂがついてたってことはどーせロクなことじゃ…」(←バレてる)
杞憂「ねぇ、アレトリオンの言うこと、信用していいのかしら…」
弥生「今は少しでも確かな戦力が欲しい所だ。ここは信用するしかあるまい。」

リリスはただ黙々と走り続ける。心臓が軋み出している。

「イヴ…あなたも近くにいるのね…」
405ほんわか名無しさん:03/03/08 00:52
麻衣子「リリスちゃん大丈夫?おぶろっか?」
リリス「う、うん。なんでもないよ。大丈夫。」
麻衣子「ねぇ、リリスちゃんは誕生日いつ?」
リリス「どうして?」
麻衣子「ちょっと気になっちゃってさ、あはは…」
リリス「ごめんなさい…知らないの。」
麻衣子「そうなんだ。やっぱり…。」

麻衣子は彼女の生い立ちついての疑念を頭から振り払うと、明るい声で話し掛けた。

麻衣子「じゃぁさ、今日帰ったら、私と杞憂ちゃんの部屋(寮)に遊びに来なよ!」
リリス「もしかして今日って…」
麻衣子「そ、わたしの誕生日なの!一緒に祝いましょうよ。あなたの分もね!あ、疲れてたらいいんだけど。」

リリスは少し顔をそらすと、声を震わせて言った。

「ありがとう…」
406ほんわか名無しさん:03/03/08 02:36
団子屋の主人の名前が
「ポポイ」、「劉翻」の2つになってるね。
劉翻(中国人?)が過去に何かがあって、
今は偽名としてポポイを使ってるっつー事で。
407ほんわか名無しさん:03/03/08 06:31
アイリスは一人ターミナルに降りると、"地下研究施設「グリエラ」→"の標識に従って
地下鉄のようなレーンを歩き出していた。時計はもうAM4:30を回っている。
あれだけの騒ぎがあったにも関わらず、警察や消防機関は動いていない。
何かの権力が抑えつけてるに違いない。だとしたら私達は泳がされてるのかしら…。

ピエール「お嬢さん、どちらまでかな?」
呼びかけられて後ろを振り向くと、そこには全身黒服の男が立っていた。
408ほんわか名無しさん:03/03/08 06:46
〜1Fフロントでは、まだ例の三人がグズグズしていた。

F村「あ、俺ちょっとやばいかも。」
サクちゃん「OH!ジャパニーズボーイ、お線香の一本はあげてやるNE(涙)」
チワワ「骨はワシにくれんかのう…。」

F村は薄れゆく意識の中で、何かとてつもなく醜悪で恐ろしい怪物が二人の背後に忍び寄るのを見た。

F村「う、うしろ…。」
サクちゃん「うしろ?」
恐る恐る振り向くと、そこには獰猛な牙を剥き出しにしたキメラが立っている。

チワワ「◎×▽※〜!!」
サクちゃんは気絶したチワワの首根っこを引っつかむと、F村と共に大穴に向かって駆け出した。
409ほんわか名無しさん:03/03/08 10:56
その瞬間、F村君は遂に覚醒した!!
410ほんわか名無しさん:03/03/08 11:13
"イルミナティ"を滅ぼした者達の末裔として!
411ほんわか名無しさん:03/03/08 11:52
F村「ウ、ウォォオオオオ!!!」
F村の瞳が魔性の光を放ち始める。

サクちゃん「Oh マイガッ!ファッキンナイスYO!!ジパングボーイ!!
       さぁ、あいつをボコってくReeeeee!!!!」
F村「これで終わりだぁぁぁああああああ!!!!」

F村は信じられないスピードでサクちゃん達を引き離し、大穴へと逃げ去った。

サクちゃん「I'll kill you...」
412ほんわか名無しさん:03/03/08 12:02
〜カプセル室 EVEの部屋

さくらは意識を失ったももを抱かかえ、涙をすすっている。
さくら「ももっ!返事をして!ももっ!!」
CJ「イヴ、この子に何をしたの?」
イヴ「安心して、ちょっと体を借りるだけよ」
さくら「そんなこと許さない!!」

カプセルに向かって呪文の詠唱の構えに入るさくら。
だがその時、イヴの体から眩い閃光が放たれると、
そこには大きな白い翼を広げた天使が降臨していた。

CJ「変身した?」
イヴ「お願い、この子の魔力が必要なの…」
413ほんわか名無しさん:03/03/08 13:53
その頃、劉翻にだまされた事に気づかず、
ケーキ店店主のオルベスは壱兆個をトレーラー(レンタル)に満載して
黒田重工竃{社17階の会議室に向かっていた。
414ほんわか名無しさん:03/03/08 13:59
    _____     _____            _____
  |書き込む | 名前:|         | E-mail(省略可):| hage    |
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄             ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     , -'~ ̄ ̄ ̄~`ー、      /)             ↑ ↑ ↑
     /      ゚ ○ ヽ   //
    |  = 三 =  oヾ、 / つ^^ヽ
   l|.  ,-―'、 >ー--、 l;;l、/ テノノノ
   i^|  -<・> |.| <・>-  b |  r'^^´  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   .||    ̄ |.|  ̄    .|/  ノ   < あのねえ、メアド欄に半角で “hage”!
    .|    /(oo) ヽ   |  /       \_______________
     | _(⌒)___    / /
   /,-r┤~.l ニ  `, /
  (rf .| | ヽ -― '
  .lヽλ_八_ ,, ̄)
   `ー┬‐-ー' ̄
                                      
415ほんわか名無しさん:03/03/08 15:17
奇妙なAAがアイリスのモバイルに表示されている。

アイリス「これは…危険信号だわ!!」
ピエール「さぁ、みんなのところに案内してもらおうか…」
416ほんわか名無しさん:03/03/08 15:36
その時だった。誰かが後ろから駆けて来る気配に二人は振り向いた。

百合子「どいてどいてーッ!!」
銀之助「早く逃げろー!」
アイリス「・・・は?!」

その後ろからはものすごい形相をしたF村君が全力疾走で走っている。
アイリス「F村くん?!ってえ?え??!」

更にその後ろからはチワワを抱えたサクちゃんが必死で何かから逃げてきた所だった。
巨大なものの駆ける足音が段々近づいてくる。

アイリス「う…そ…。」
ピエール「ボサッとするな逃げるぞ!!」

巨大化したキメラが、翼を大きく広げて追ってきた。
417ほんわか名無しさん:03/03/08 15:44
アイリス「じょっ、冗談じゃないわ!私かよわい乙女なのにぃーッ!」
そんなことを言いつつ一番逃げ足の速いアイリスの視界がレイジィバツース一向を捉えた。

アイリス「みんなッ!こっちに来ちゃダメーッ!!」

だがメンバー達の様子もおかしい。必死に何かから逃げているようだ。

伶佳「アイリス!!逃げて逃げて!!!」
アイリス「・・・ヘ?!」
向こうからは凄まじい金属音が鳴り響いてる。
そう、レイジィバツースの後ろに露わになったのは、通路いっぱいの四速歩行型巨大ガーディアンだった。
418ほんわか名無しさん:03/03/09 13:21
第二十七章 〜Broken Spell〜
419ほんわか名無しさん:03/03/09 16:39
なんかスレ立て荒らしがいるようなので保守sage
職人さんまだかな(´・ω・`)
420ほんわか名無しさん:03/03/10 08:11
何時からだったんだろう…。
かけがえのないものを失って、わたしは痛みを厭うようになって
なのにまだそれに縋っては、あの引き裂かれるような感情に独り
幾宵にも渡る問いかけ 星々は答えず わたしはただ涙するだけ
壊れてしまった言葉 愛は拭えない恥辱に代わってしまった
もう一度過去に手を伸ばせたら もう一度あなたに手を触れられたら
星々の光に手を翳すように…

イヴは私の分身であり、始まりだった。
"イルミナティ"の過ちと あの人の運命を変えたかった。
でもそれは間違いだった…
421ほんわか名無しさん:03/03/10 08:25
お互いに全力疾走で距離を縮めていく両サイド。

麻衣子「うそ?!前からキメラが来るわよ!」
杞憂「逃げ場無しなの?!」
加奈「止まったら殺られるわよ!」
弥生「アレトリオンは何処だ?」
伶佳「まだレーザーがチャージできない…」
アイリス「キャーッ!!(泣)」

リリス「アレを使うしかないわね。」

リリスは徐に呪文を唱え出す。
422ほんわか名無しさん:03/03/10 08:42
リリス「汝 美の祝福を賜らば 我 その手法 紫苑の鎖に繋ぎ止めん
     汝は知るだろう 幾何なりし封縛 如何なる訃音を告げる者か」

周囲の時間が加速度的に緩くなっていく。
彼女は空間を削るようにキメラに走りよると、心臓に剣を突き付けた。
次の瞬間、対向から走ってきたガーディアンからキメラに向かって弾幕が叩きつけられるが、
彼女は上手く空中で身を捻って弾丸を全てかわすと、宙を舞いながら再び詠唱を開始した。

「天の風琴が奏で流れ落ちる その旋律凄惨にして操觚なる雷」

双頭の剣が数10メートルにも巨大化し、リリスはガーディアンを一刀両断した。
その間の動作の全てが、彼女以外の物体は全てスローモーションで動いているようだ。
423ほんわか名無しさん:03/03/10 12:18
麻衣子達は一瞬の出来事に、何が起きたのかまったく理解していなかった。

呪文を唱えていたリリスが突然目の前から消えてしまった。
その数秒後には、”キメラ”から血が吹出し”ガーディアン”が
真っ二つになって崩れ落ちた。

そして、消えたときと同じ唐突さでリリスが現れた。
「爆風が来る。早く結界を!」そういい残すと
リリスはその場に倒れこんだ。
424ほんわか名無しさん:03/03/10 14:09
そこへケーキ満載の台車を押しながらケーキ店店主、オルベスが現れた。

「ったく、どうなってんだ?ビルに大穴あいてるし、
 そもそも壱兆個のケーキはこぶのに台車で何往復だよ、まったく。
  何でもいいけど17階会議室ってのはどこなんだよ〜」
425ほんわか名無しさん:03/03/10 17:56
オルベスは、人が誰もいないのをいぶかしみながら、
17階へのエレベーターを探していた。

フロントに差しかかったところで
”めでたし、めでたし。FIN...”
と書かれた地文字を発見したオルベスは
無意識に地の後を目でおった。
それは大穴へと続いていた。
「oh!! 一体何が...」
呟いたその顔はもはや”ケーキのチェーン店
「ミシュラ」のメインシェフ”
のものではなかった。

オルベスはシェフハットに忍ばせた
"高分子放射銃"を取出し右手に握り締め
大穴へと歩を進めた。
426ほんわか名無しさん:03/03/10 21:14
麻衣子「杞憂ちゃん、お願い!!」
杞憂はすでに呪文の詠唱に入っていたが、間に合いそうになかった。
誰もが死を覚悟した。
銀之助は百合子をかばうように抱しめた。
「地獄でまた逢おう」銀之助の言葉は爆音で掻き消された。

次の瞬間、アイリスのモバイルの画面が強く輝き
一同をかばうかのように包み込んだ。

オルベスは”レーザーの大穴”から立昇る火柱を見ていた。


427ほんわか名無しさん:03/03/10 21:33
麻衣子達を包んだ光は、どうやら炎や爆風を
完璧に防いでくれたようだ。

気が付くと麻衣子達を包んでいた光は
一つの形を作り出していた。
それは一糸纏わぬ天使の姿だった。
しかも、その天使の顔をレイジーバーツスのメンバーと
教師でもある百合子、そしてF村は知っていた。

「ももちゃん?」麻衣子が口にするのと同時に
F村は天使に向って襲い掛かっていた。
F村「イルミナティー!!」
428ほんわか名無しさん:03/03/11 01:22
「ショック!F村君の好みがももちゃんだったなんて!!!!!」
と勘違いする加奈の横を一条の閃光が貫く。

「oh!wait!!ジャパニーズボォ〜イ!!」

天使と化した「もも」と、鬼神と化した「F村」の間に
高分子放射銃を携えたオルベスが割って入った!!
429ほんわか名無しさん:03/03/11 02:29
その時だった。17階に積んでいた一兆個のケーキがその重みに耐えきれず、
大穴から一斉に雪崩れこみ出した!!
430ほんわか名無しさん:03/03/11 03:01
ダイコンランニ(・∀・)ナッテマイリマスタ!
431ほんわか名無しさん:03/03/11 03:02


                 終  了



432ほんわか名無しさん:03/03/11 04:27
アイリスのモバイルに「終了」という文字が現れたと同時に、ももの姿は消えた。
F村は正気を失ったまま、リリスは掠れるように息を切らして麻衣子の膝元で伏せていた。
オルベスとサクちゃんは何やら揉めているようだ。銀之助は右腕を損傷。百合子は彼を必死で解放している。
ガーディアンの爆発によって研究室の一角の壁が崩れ落ちている。まだ辺りは騒然としていた。

銀之助「イヴ?イヴなのか?」リリスを見て尋ねる。
弥生「銀、彼女は違うんだ…」
リリス「麻…衣子ちゃ…わたし…」

麻衣子は混乱気味だった。担任の百合子がどうしてここにいるのか、
さっきの天使は一体なんだったのか。リリスは一体何者なのか。疑念だけが場を支配する。

ピエール「休むにはまだ早いようだな…」
壊れた研究室の壁から、強化されたC-TAPPAの一群が襲いかかった。
433ほんわか名無しさん:03/03/11 04:39
第二十八章 〜ディバイン・コンバイン〜
434ほんわか名無しさん:03/03/11 05:04
意志を失った戦闘マシーンと化したC-TAPPAと激戦が続いていた。

伶佳「っんな肝心なときにアレトリオンは何処いったのよ!!」
弥生「出し抜かれた様だな…。」
銀之助「弥生、この刀を使え!!」

銀之助は長刀"レイヴン"を彼女に投げ渡す。

弥生はC-TAPPAの横薙ぎの一線を飛び越えると、空中で逆さにレイヴンを握り締めた。
同時に鞘から自刀の"璃猿"を引き抜くと、両刀を逆手に持ちかえる。

弥生「無明真眼奥義、花月乱!!」

まさに神速で回転しながらC-TAPPAを一網打尽にしていく。

麻衣子「大穴の方から何か・・・」
辺りの地響きに気付いている者は少なかった。
435ほんわか名無しさん:03/03/11 09:20
やがて地響きは誰の目にも明らかになった。
ガレキと煤を巻きこんで黒く変色した”それ”は
甘いクリームの香りと共にやってきた。
それはまるで、全てを飲みこむ龍のようであった。
杞憂「何!、新手の攻撃?」

一同の中でオルベスだけがその正体に気付いていた。
「oh!やっぱり一ヶ所に積んだのは、まずかったね〜」
白衣のポケットの中に忍ばせた”携帯型瞬間物質転送装置”
を指ではじきながら呟いた。
436ほんわか名無しさん:03/03/11 17:06
そして全ては甘い闇に包まれた…
437ほんわか名無しさん:03/03/11 17:28
麻衣子は気がつくと、薄い灯かりが燈る光沢のある部屋に臥せっていた。
膝元ではリリスが寝息を立てていた。呼吸は落ちついたようだ。
辺りは床上まで侵食した白く泡だった甘いクリームに塗れていた。
体中ベトベトだった。

麻衣子「うえ…。今日は誕生日ケーキいらないな…」苦笑する麻衣子。
リリス「う…ん……麻衣子ちゃん?」
麻衣子「気がついた?」
リリス「わたしたち、どうなったの?わたし、まだ生きてる…?」
麻衣子「わからないけど…、生きてるよ。良かった。。良かった。。。」

彼女は膝上のリリスの頭を胸に抱き寄せて微笑む。頬に一筋の涙が伝った。
リリスは麻衣子の体についたクリームを舐め取る。

「おいしい…」
甘い静寂が薄明かりの中で揺らめいていた。

「誕生日おめでとう…」
438ほんわか名無しさん:03/03/11 17:44
バンッ!
突然の音とともに、部屋は眩い白い照明に照らされた。
そこは地下研究施設"グリエラ"の最重要セクションであり、イヴのカプセル室だった。

「ここに辿りついたのはあなた達だけみたいね。」

子供の声が響く。

麻衣子「ももちゃん?どういうこと?」
リリス「違うわ…。あなた…イヴね…。」
もも「ケーキの洪水に流されてきた見たいだけど、あの仲間達はどこかに消えたわ。不思議ね。」

麻衣子は周りを見渡すと、イヴのカプセルの周囲にアレトリオンの三人が倒れていた。

もも「馬鹿な人たち…。私の体を奪おうなんて…」
439ほんわか名無しさん:03/03/11 17:52
〜黒田重工竃{社ビル 上空

屋上ヘリポートのすぐ上を、中型流線型の宇宙艇"ミシュラ"が音も無くホバリングしている。
あの場にいた人間は全てこの宇宙艇に転送されていた。

オルベス「おまいら!meに感謝しる!」
伶佳「ねぇ、麻衣子とリリスちゃんがいないわ!」
杞憂「そんな……!!」杞憂は今にも泣き出しそうな表情だ。

オルベスはコンソールを弄りながら言った。

オルベス「それが…あの二人の周囲だけ時間軸の位相エネルギーがずれてたみたいネ…」
サクちゃん「もう一度降りれないのかYO!」

アイリスは目を輝かせて周囲の機械をいじりだしていた。
440ほんわか名無しさん:03/03/11 19:13
オルベス「変なところを弄らないで下さぁい!!大変な事になりまぁす!!」
オルベスはアイリスを気にしながらコンソールをなにやら操作している。

百合子「でも、あれはなんだったのかしら?生クリームのような香がしたけど...」
オルベス「一兆個分のショートケーキねぇ!」
一同「一兆個!!」
オルベス「イエース!!うちの店で一番人気の苺ショートねぇ!
直径21cm、高さ8cm、重さ800gのケーキを八等分したものでぇす」
アイリス「ちょっ、ちょっと待ってよ!!一個当り100gでしょ、
一兆個って...いっ!一億t!!っんな物どうやって運んだのよ!!」
オルベス「oh!それは企業秘密デース!!(W」

ちなみに体積は東京ドーム279杯分だ。
441ほんわか名無しさん:03/03/11 20:10
そしてオルベスは通信機のスイッチを入れた。
「あ〜地球各地の支部のミナサ〜ンお元気ですか〜?
 こちらアンデス支部のオルベスでぇ〜す!
  黒田重工鰍フ本社ビルで緊急事態、応援を要請シマァ〜ス!」

そう、「ケーキのチェーン店ミシュラ」とは宇宙強盗団「ベルーガ」の地球各地の支部、
オルベスとはケーキ店シェフは世を忍ぶ仮の姿、その正体はベルーガの地球支部長であった。
442ほんわか名無しさん:03/03/11 20:30
黒田重工鰍フ本社ビルは度重なるショックによって
すでに崩壊が始っていた。

サクちゃん「オルベス、急がないと全て瓦礫に埋ってしまうぞ!!」
オルベス「アイアイサー!ボス!」
オルベスは答えるとアイリスに声を掛けた。
オルベス「すまないが、お嬢さん少し手伝っていただけるかな?」
アイリス「アイリスよ。よろこんで。」

誰もサクちゃんとオルベスが普通に喋っているのを
気付いてはいなかった。
オルベスとアイリスは、しばらく打合せをすると
それぞれ、てきぱきとパネルを操作し始めた。

猛烈な勢いでパネルを操作していた二人が、ほとんど同時に顔を上げた。
オルベス「アイリス、こちらは何時でもOKだぞ!」
アイリス「こっちもOKよ。」
オルベス「ボス、スイッチを!」
サクちゃん「よし。”修復用ナノマシーン”放出!!」

いつのまにか"ミシュラ"の周囲には集っていた同型の宇宙艇から
一斉に”ナノマシーン”が放出された。

街にはようやく朝日が昇り始めていた。
朝日に照らされ、きらめくナノマシーンは
まるでダイヤモンドダストの様だった。
444ほんわか名無しさん:03/03/11 22:50
ここにはマジで書いてる香具師とネタで書いてる香具師の比率が5:5でつか?
445ほんわか名無しさん:03/03/12 00:20
第29章 〜チワワの一日〜
446ほんわか名無しさん:03/03/12 00:39
チワワは悲しかった。
宇宙艇ミシュラは確かにあの場にいた”人間”を全員救い出したが、
チワワは人間を凌駕する知識を持っていたものの、やはり外見は犬なのだ。
・・・・・・。

自力で脱出したチワワは、崩れ行く黒田重工鰍みながら
「一つの悪が滅びたのだ。今回はこれで良しとするか」
と、つぶやいていた。

そんな一連の動きを見ていた劉翻は
「もうポポイの名で身を隠す必要も無くなったようだ」
と、ニヤニヤ笑い、携帯電話を取り出し、
「俺だ、劉翻だ。時が来たようなので復帰する・・・」
447ほんわか名無しさん:03/03/12 00:55
劉翻は電話をしながらその場を去っていった。

そんな折、上空に宇宙艇が現れ、黒田重工鰍修復していった。
チワワ「苦労して抜け出さんでもよかったやん」
と何気に関西弁。
チワワ「さて、黒田重工鰍フ件の後処理は彼らに任せて
普段の職務に戻るか」
帰りかけたその時、
448ほんわか名無しさん:03/03/12 01:40
所詮は犬、片足をあげるとそばの電柱に放尿した。
449ほんわか名無しさん:03/03/12 02:04
「ゴルァ!!!!!」

チワワがビクッと振り向くと、そこには怪しいビニール袋を抱えた
街の掃除人「山田 猛(48才無職)」が立っていた。
「立 ち シ ョ ン 禁 止 ! !」
ズガーソ!!!
チワワは空の彼方にぶっとばされた。
450ほんわか名無しさん:03/03/12 05:33
第三十章 〜青銅の枯葉〜
451ほんわか名無しさん:03/03/12 05:42
〜黒田重工梶@研究施設別棟モニター室

黒田獣騎は煙草をふかしながらビルの外に煌きながら降り注ぐナノマシーンを見ていた。

獣騎「マリア、防空システムの準備に何分かかる?」
マリア「3分程度かと…しかし、じき辺りにも朝陽が…」
獣騎「かまわん撃墜しろ。」
452ほんわか名無しさん:03/03/12 05:56
〜地下研究施設「グリエラ」 カプセル室

ももの体を支配したイヴはそっとリリスに歩み寄ると、文字通り天使の微笑みを彼女に向ける。

イヴ「お疲れさま。もうあなたは楽になっていいのよ。」
リリス「イヴ、わたし…まだ死にたくない…」

麻衣子はリリスを庇うように前に出る。
麻衣子「他の人質はどこ?」
さくら「ここにいるわよ…。」

部屋の隅からさくらが沈んだ声で話し掛ける。
隣にはイギリス人だというC.J.マクダーナルもいるようだ。

さくら「お願い、妹を傷つけないで…」
453ほんわか名無しさん:03/03/12 06:07
〜再び黒田重工梶@研究施設別棟モニター室

マリア「では、撃墜します。」

パンッ!!という音をたててマリアの手が標的をとらえた。

マリア「無事に撃墜しました。」
獣騎「よし、防空システムをセットして手を洗ってくるといい」

そう言って黒田獣騎は煙草を灰皿に押しつけると首筋を掻きながら布団に潜り込んだ。
マリアは金鳥リキッドのスイッチをONにするとモニター室を出た。
マリアの手の平には黒田の血を吸ったヤブ蚊が潰れて貼り付いていた。
454ほんわか名無しさん:03/03/12 06:21
獣騎が布団の中でモゾモゾしていると、部屋に浴衣姿のマリアがそそくさと入ってきた。

マリア「社長、ゆっくりお休みになって下さいましね。」
そう言って獣騎の布団に一緒に入る。

マリア「ねーんねーんころーりーよー♪」
獣騎「ぐーぐー」
455ほんわか名無しさん:03/03/12 06:31
獣騎が寝入ったのを確かめるとマリアは部屋を出て女子トイレに向かった。
中にはいると左端の一番奥の個室に入って鍵を閉めた。
黒いストッキングとベージュのパンティを一緒に降ろすと
便座に腰掛けてポーチからバージニアスリムメンソールを1本取り出し火を点けた。

マリア(生活の為って割り切ってたけど、もう限界かも。
    ヤブ蚊を敵機なんて言うし、雨のことはナノマシーンだなんて。
    あんなキティーガイに付き合ってたら、こっちまで頭がおかしくなりそう。
    テンプスタッフだったかしらキャリアスタッフだったかしら?
    TVコマーシャルで見た「上司に恵まれなかったら…」っての電話しようかな。
    番号は確か「オージンジ、オージンジ」だったわね。)
456ほんわか名無しさん:03/03/12 07:19
〜再び地下研究施設「グリエラ」 カプセル室

さくらの懇願を無視してイブはリリスの顎に左手を当てて顔を持ち上げた。

イヴ「これを喰らいなさい。」

右手をリリスの鼻の先で開くと握りっ屁が解放された。
うっと言う呻き声を上げてリリスは顔をしかめた。

イブ「麻衣子、さくら、次はあなたたちの番よ。」

イブは声を立てて高らかに笑った。

C.J.マクダーナルはその声も呻きも笑いも全て耳にしていた。

マクダーナル(イブ、リリス、さくら、麻衣子、彼女たちは皆
        今年か来年に還暦を迎えると聞いているが、
        年齢以上に声も姿も老けている。
        老人臭漂う彼女たちがなぜいまだに
        握りっ屁をかけ合っているのだろう?
        イギリスにはない土着の信仰によるものだろうか?)

そんなことを考えながら大きな欠伸をした。
457ほんわか名無しさん:03/03/12 09:13
加奈「どうしたの”アイフル”?」
チワワは、加奈の膝の上で目覚めた。
チワワ「その”アイフル”ってのはやめてくれんか?
あぁ、それにしても長い間犬をやっていると脳みそまで
犬並になってしまうようだ。」あくびと共に”アイフル”は
夢の話を始めた
アイフル「あの騒ぎの中、わしだけ取り残されてな...
458ほんわか名無しさん:03/03/12 15:53
チワワはあの後、空中に投げだされた所を"ミシュラ"に拾われていた。
アイフルの"夢"にはいわゆる暗示能力があった。
あのカプセル室にいた人間がすべて老人に見えたことにもなんらかの意味があるに違いない。

朝日が今にも雲間から顔を出そうとしている。
ナノマシーンを放出した他の機体は既に飛び去っていた。

オルベス「よし、他の人間の居場所を特定したぞ!早速転送して引き上げよう!」
モニターにはビルがフレーム状に表示されている。
アイリス「まって、何かこっちに飛んでくる。」

突然機体が大きな振動とともにバランスを崩した。
サクちゃん「ちっ!追手か!!」
459ほんわか名無しさん:03/03/12 16:07
黒田重工鰍フビルはナノマシーンによって見る間に修復されていく。

杞憂「すごい!!まるで魔法みたい!」
サクちゃん「本来は宇宙船を修復する為のものなのだが、プログラム次第で
こういった使い方もできる。 もっとも、今回はアイリス君がいたから
何とかなった訳だが...」とアイリスに目を向ける。
「”Mother”が”イヴ”の支配を放れていたから何とかなったのよ。」
さすがに疲れたらしく、力なく微笑ながらアイリスは答えた。
460ほんわか名無しさん:03/03/12 16:23
かぶった!!すまん>>459はcutで
461ほんわか名無しさん:03/03/12 17:10
>>459->>460そのままで(・∀・)イイ!!
>>458と順序入れ替えでw
462460:03/03/12 18:07
>>461 サンクス!!無駄にならなくてすんだ!!
463ほんわか名無しさん:03/03/12 20:59
〜"グリエラ" カプセルルーム AM05:30

ももの姿を借りたイヴは、しゃがみこむ麻衣子とリリスの前に立ちはだかっていた。

麻衣子「あなたのことは弥生ちゃんから少し聞いてるわ・・・レイジィバツースの初代リーダーだったとか」
イヴは耽美な笑みを放つと、この世のものとは思えないほど滑らかで艶やかな声を奏でる。

イヴ「リーダー・・・。確かに、あの頃は信頼できる仲間がいたわ。あの男も悪い人じゃなかった。」
彼女はふっと寂しげに視線を斜めに落した。

イヴ「わたしはね、つまるところ披験体に過ぎなかったのよ。」
リリス「違うわ!あなたは・・・」
イヴ「黙って。プロジェクト"レイジィバツース"のために一体何人の"私たち"が実験で命を落したと思ってるの?」
リリス「あなたの気持ちはわかるわ。だって私たちの感情はシンクロしてるから・・・」

部屋の隅で話を聞いていたCJが割って入った。

CJ「プロジェクト"レイジィバツース"は黒田重工鰍フ覇権計画の一環だったわ。」
さくら「?!」
CJ「実験にあたったのは現学園長の岩山巌蔵、敷島京介、そして私の父、C.J.マクシミリアン・・・」
464ほんわか名無しさん:03/03/13 17:40
>>463の後勝手に続けていいかな…?
465ほんわか名無しさん:03/03/13 17:54
CJ「始まりは全てあの忌まわしい航空機事故だったわ…」

CJはおもむろに話始めた。
466ほんわか名無しさん:03/03/13 18:06
リリス「フランスのオーベルニュ山岳地帯での墜落事故…」
CJ「奇蹟的にも生還者は7名。その中に私もいた。」

CJはすっと顎を上に向けると、目を閉じて呼吸を整えた。

CJ「墜落の夜、何があったかは憶えてないの。だけどこれだけは耳の奥に焼きついてるの。
  …沢山の人の悲鳴と、呪文……」

イヴは鋭い視線を彼女に投げるが、CJは構わず話続ける。

CJ「朝方、山奥フランス当局に救助された私達は、衰弱しきっていたにも関わらず、
  医療行為を施されること無く隔離室に入れられたわ。」
リリス「知ってる。あなたにあった記憶があるわ…。」
467ほんわか名無しさん:03/03/13 18:16
CJ「サード・アイ・ブラインドという機関で、私達はあらゆる検査やテストをされたわ。
  その内、生物情報科学者だった父が無理に引き取ってくれたの。」
リリス「わたしも実験に立ち会った…。」

麻衣子「あのさ、何だか知らないけど、要点だけお願いできるかしら?」

CJ「そこで計画されていたのは、"激しくC型"の言語コード化だったの」
468ほんわか名無しさん:03/03/13 18:28
リリス「迷子の少女の話…。あれは単なる呪いの寓話じゃない。人間の免疫コードに働きかけるスイッチコードよ。」
イヴ「だけど"媒体"そのものが不完全だった。」
CJ「そう、インフルエンザと軽い脳炎のような症状は数週間で引いてしまったわ。」

さくらはわけがわからないような顔をしている。

CJ「当時、黒田重工鰍ェ進めていたプロジェクト"レイジィバツース"に関わっていた父と敷島は、
  検体が12〜17才の少女の場合、ある特殊な適合特性があることを見抜いたの。」
さくら「わたしたちの学園と何か関係が?」
リリス「とても言い難いんだけど、あの学園は"言語コード"のテストに最適だったのよ。」
469ほんわか名無しさん:03/03/13 18:55
麻衣子「そう、わかったわ。でも…」
麻衣子は突然すっと立ちあがると、こう言い放った。

麻衣子「私たち、謎解きにきたわけじゃないの。そこの仲間達やももちゃん、リリスを連れて帰る。
    それがココに来た理由なのよ。あなたが何企んでるんだか知らないけど、これだけは譲れない!」
イヴ「そう?でも私達の話がまだよねぇ、リリス?禁呪に手を出してしまった罪深き悪魔の憐れな話…」

リリスは辛そうな表情で下に俯いていた。

麻衣子「そんなことどーだっていいのよ!」
さくら「妹の体を返して!」

イヴはやれやれと笑みを零すと、ももの体から分離した。

イヴ「ありがとう、魔力は十分回復したわ。もうあなた達に用はない…」

彼女が手を上方にかざすと、突然足元に緑に輝く魔方陣が出現した。
イヴ「出でよ!召喚獣"キメラ"」
470ほんわか名無しさん:03/03/13 22:02
麻衣子「召喚魔法!!うそ、呪文の詠唱もなしに!!」

魔方陣から円筒形に伸びた光がイヴを包み込み
天井まで達すると、まるで天井から染み出すように”キメラ”が
獅子・牡山羊・ドラゴンの三つの頭と蛇の尻尾をもつ、その姿を現した。
471ほんわか名無しさん:03/03/13 22:49
キメラが麻衣子達に向かって咆哮する。

麻衣子「どうして?!さっきは助けてくれたのに…!!」
イヴ「魔が差しただけよ…。リリスが惹かれてるあなたに会ってみたかっただけ…。
    あなた達は生かして置けない気がするの。ごめんね。」
リリス「麻衣子ちゃん…。ここの研究施設のどこかに"オリジナル"があるはずだわ…」
麻衣子「オリジナル?」
472ほんわか名無しさん:03/03/14 01:38
イヴ「オリジナル?これのことかしら?」
イヴの体が輝くと、"00"ナンバーの施されたレイジィースーツが彼女に着用されていた。

リリス「そんな…!!」
さくら「くっ…。スーツが無きゃ不安だけど、やってみるしかないわ…。」
さくらはおもむろに立ち上がると、ボソボソと詠唱を始めた。

イヴ「無駄よ。あなたの術はイルミナティには通じない。」
さくら「へっ!そうかしら?」
リリス「?!魔力の型が違う?」
さくらの振りかざした手のひらに五芳星が輝く。
さくら「百年間馬鹿みたいに同じ魔法ばっか使ってらんないわよ!!」
キメラはさくらを睨めつけると、蛇の尾の毒牙を彼女に向けた。
さくら「封神!!!」

蒼い閃光が辺りを呑みこむ。
イヴ「きゃぁぁっ!!」

麻衣子「リリス…、彼女と感情がシンクロしてるって言ったわよね。」
リリス「えぇ?どうして?」

麻衣子は怯んだイヴにすかさず駆け寄った。
473ほんわか名無しさん:03/03/14 01:58
麻衣子(多分彼女と戦ったって勝てないわ。それなら……!」

それは一瞬のことだった。
麻衣子はイヴの懐に飛び込むと、彼女の唇に口付けを交わしたのだった。

イヴ「な……!」
麻衣子「これは私からの罰。あなたからは何も奪わないし、奪わせないわ。」
彼女はバッと天使の翼を広げ身を退けると、麻衣子を睨みつけた。
イヴ「も、もうあんな想いをするのは沢山だわ…!」
麻衣子「あんな想い?」

イヴの紅い瞳に少し涙が滲んだその時だった。突然部屋の天井から一筋のビームが
キメラの背中に突き刺さった。キメラは床に伏せ凄まじい咆哮をあげている。

麻衣子「衛星レーザー…」
474ほんわか名無しさん:03/03/14 10:14
ドゴーンと一発、すんごいのが降ってきた。
そのビームはイヴや麻衣子達をも襲った。
イヴ「ぐおおおおおおっ」

サクちゃん「まずい、彼女らを救出しなくては」
オルベス「ヘイッ、ボスッ」
サクちゃん「あれ?本来彼女らは我々の敵では・・・」
オルベス「固いこと言うなや〜、一蓮托生ですぜ」

無事救出された麻衣子達。
黒田重工鰍ヘ見るも無残にその姿を崩壊させている。
F村「何者・・・?」
そこへ宇宙艇ミシュラへF村宛に謎のメッセージが届く。
《《激しくC型と三角形の真の秘密は教えてあげないYO》》
F村(・・・・何故俺宛?しかも三角形って何?)
何かと変な事に巻き込まれるのは彼の運命らしい。
475ほんわか名無しさん:03/03/14 12:25
話は>>463辺りまでさかのぼる。

麻衣子達を救出する為、黒田重工竃{社ビル上空に停泊していた
”宇宙艇ミシュラ”は何者かの砲撃を受けバランスを崩してた。

サクちゃん「ちっ!追手か!!」
杞憂「下からよ、ビルからビームが!」

ナノマシーンによって修復されていく黒田ビルの屋上には
対空用のビーム砲が出現していた。
 
サクちゃん「オルベスいったん、この空域から離脱しろ!」
オルベス「アイアイサー!」
伶佳「ちょ、ちょっと待ってよ!仲間はどうすんのよ!」
サクちゃん「仕方がない。後で作戦を立直すしかないだろう。」
伶佳「そんなのだめよ。何とかできないの」
サクちゃん「解ってくれ、このままではミシュラが落されてしまう」
伶佳「そんなぁ...」
476ほんわか名無しさん:03/03/14 12:43
「おい...」
そのとき、F村が伶佳に声を掛けた。
伶佳「なによ!こんな時に」
振り返った伶佳をF村が突然抱しめた。
伶佳「きゃっ!なっ!なにすんのよ!」
加奈「F村君!!」
F村「借りるぜ」
F村は伶佳を抱しめたまま、耳元で囁くと伶佳の背中から
衛星レーザーがセットされたままのボーガンを奪い、
無造作に引金を引いた。
477ほんわか名無しさん:03/03/14 12:47
ちょうどその頃、地下では
麻衣子がイヴと口付を交していた。
478ほんわか名無しさん:03/03/15 00:27
>>474で麻衣子達が無事救出されたことになってるので、ちょと調整しまつ。
479ほんわか名無しさん:03/03/15 00:35
ヴが麻衣子から身を離し、キッと睨みつけている。
麻衣子「あんな想いって何?昔何か……。」

その時だった、衛星から放出された高エネルギービームがキメラの背中に突き刺さった。
部屋中が凄まじい破壊力のエネルギーに満たされた瞬間、麻衣子、人質、アレトリオンは
無事ミシュラに転送されていた。

麻衣子「みんな…!」
伶佳「麻衣子!良かった!!」
一番に駆けつけたサクちゃんをぶっ飛ばして麻衣子に抱きつく伶佳。
オルベス「さぁ、全速力で都市圏から離脱するYO!」

F村は目を怪しく輝かせてリリスに向けてボウガンを構えていた。

F村「イルミナティは殲滅する…」
480ほんわか名無しさん:03/03/15 00:48
黒田重工鰍フ屋上ヘリポートから小型の自律型迎撃ポッドが三機、ビームを放ちながらミシュラを追ってくる。

オルベス「サクちゃん、砲塔についてくれ!」
アイリス「無事に逃げ切れるの?」副操縦席のアイリスが尋ねる。
オルベス「ふふふ…ユーはこのミシュラの真の力を知らないアルね。。。」
アイリス「アル?」
チワワ「ミシュラ…これが噂に聞いていた伝説の宇宙艇か…。」
アイリス「こんなオンボロが?」
オルベス「Ohマイガーッ!これでも連邦宇宙軍の一個艦隊を翻弄したというお札つきYO!」

リリス「何…?何か忌まわしい気配がする…」
麻衣子「F村くん?」
麻衣子がF村の異変に気付いたその時だった。
奥で縛られていたピエールが何時の間にか縄を解き、銃をアイリスに向けた。

ピエール「今すぐ降りるんだ。」
一同は凍りついた。
481ほんわか名無しさん:03/03/15 01:06
ミシュラは都市のビル群の合間を掻い潜りながら、攻撃艇のビームをかわしていく。
だがミシュラの砲塔からの攻撃が敵を捕える事も無かった。
サクちゃん「くそ!標的が小さくて迎撃できないぜ!」

アリー「ピエール…。」アレトリオンの長女が目を覚まし、彼に呼びかけた。
ピエール「アリーか、久しぶりだな。今はこいつらのおもりってわけか。」
アリーはウロボロスをピエールに向かって構える。
アリー「ここからなら確実にあなたを仕留められるわよ。」
ピエール「その代わり、そこのカワイイ金髪のお嬢ちゃんの脳漿が散らばることになるかもな。」

アイリスは半ベソをかいている。

麻衣子「くっ!まずいわ。このままじゃ最悪の事態に…。」
リリスは何か他のものに怯えているようだ。

次の瞬間だった。F村がボウガンから放った矢がリリスの胸を貫いた。
あたりにメンバーの悲鳴が轟く、気を取られたアリーをピエールがもう一方の銃で狙いをつけた。

ピエール「おっと。それ以上動くんじゃない。」
倒れこむリリス。F村はそのまま気を失っていた。
482ほんわか名無しさん:03/03/15 01:20
リリスはおびただしい程の血液を吐いて、みるみる衰弱していく。

リリス「麻衣子ちゃん…。」
麻衣子「リリス!しっかりして!!」
リリス「彼を…責めないで……ね…。」そういうと彼女は気を失った。
麻衣子「何なのよ!何がどうなってるの…わけわかんないわよ!!」
涙混じりに叫ぶ麻衣子。

ピエール「さぁ、もう選択の余地はないだろう?今降りれば彼女を手当てしてやれる。」
アリー「こいつの言うこと信じちゃダメよ!」
伶佳「でも仲間の命には代えられないわ。。」
麻衣子「……お願い。降ろして。」

オルベスが溜息混じりにレバーを降ろしたその時だった。
ガツンという衝撃が宇宙艇を大きく揺るがした。
アリーはピエールがバランスを崩した隙に銃を跳ね飛ばす。

オルベス「何だ!?レーザーとは違うYO!!」
突然、コックピットのフロントウィンドウが何かで覆い尽くされた。
アイリス「キャァァアア!!」

召喚獣キメラの眼が、船内を探るように睨みつけていた。
483ほんわか名無しさん:03/03/15 02:01
キメラは一旦翼を羽ばたかせミシュラから離れると遥か前方まで飛び去り、
迂回してこちらに突進してきた。
「私がやるわ!」
伶佳はF村の手からボウガンを奪うと、宇宙艇のデッキに飛び出した。
アイリス「だめよ、チャージが終わらない内に連発したらオーバーヒートするわ!」

艇内では杞憂が必死にリリスに回復魔法をかけている。が、傷は深い。
杞憂「はやく病院に連れていかないと…。」

ピエールの方は、弥生とアリーと加奈の三人に同時に喉元に刃物を突きつけられ、直立していた。
弥生「変なマネをしたら命は無いと思え。」
アリー「今度はあなたの負けね。」
加奈(F村くんどうしたのかしら……)

アレトリオンの他の二人と、銀之助、百合子、F村、さくらとももはそれぞれ別室に非難している。
オルベスは宇宙艇の速度を緩めて、伶佳が狙いを定めやすいように高度を上げた。
アイリス(いくら射撃の名手でも、衛星照準で動く標的を射止めるなんて無理よ…)
後ろからは相変わらず、攻撃ポッドが火を吹きながら迫っていた。

伶佳は強風で髪が邪魔にならないよう、制服のリボンで髪を後ろで一本に結わえると、
ボウガンの照準をキメラに向けた。キメラは咆哮しながら迫ってくる。
伶佳「さぁ、もっと近づいてきなさい…。」

更に上空でイヴがその様子を見下ろしている。表情は冷たくも、どこか哀切とした色を添えている。
イヴ「さようなら…。」

キメラはまだミシュラとの距離を縮めないうちに大顎をカッと開く。
伶佳「!!」
無数の火の玉がミシュラに向かって放たれた。
484ほんわか名無しさん:03/03/15 02:22
オルベス「伶佳サン!どこかにしっかりしがみつくネ!」
オルベスはミシュラをビル郡の谷間に向かって急降下させる。

伶佳「キャッ!ちょっ!!人でなしぃぃ!!」
彼女はデッキの手すりに片手で必死にしがみついている。
火の玉がミシュラの船体上部を掠めると、キメラの巨体が腹を向けてすれ違おうとした。
伶佳「今だわ!!」
彼女は刹那の判断でボウガンの引き金を引いた。


麻衣子と杞憂は必死でリリスの手当てをしていた。
麻衣子「もう呼吸してないわ!」
杞憂「だめ、魔力が尽きそう。。」
沈黙を守っていたCJマクダーナルが徐に歩み寄ってきた。
麻衣子「なに?」
CJ「ありあわせの道具しかないけど。。。」

彼女はテキパキとリリスの傷口の止血をすると、手早く挿管チューブを喉に入れ呼吸を確保した。
同時に他のチューブで血管をバイパスすると、ポンプを麻衣子に手渡した。

CJ「これ、このペースで押して血液を送るのよ。心臓が細動を起こして血液が回ってないわ。」
麻衣子「あなたは…」
CJ「母は医者だったの。わたしも英才教育を受けていたわ。あの事故で全て変わってしまったけど。」
485ほんわか名無しさん:03/03/15 03:39
第三十一章 〜獅子奮迅〜
486ほんわか名無しさん:03/03/15 04:48
衛星からのレーザーが再びキメラの背中を捕えた。
キメラはミシュラとすれ違いざまにコントロールを失い、
ビルの合間に掛かったアーチに突っ込むと、道路に墜落した。
伶佳「やった!」
彼女は思わずしがみついていた手すりを離してしまう。

「・・・へ?!」

伶佳はまっしぐらに都市の谷間に落ちていった。
487ほんわか名無しさん:03/03/15 05:05
イヴ「面白いオモチャを持ってるのね。」
イヴはすーっと呼吸をすると、目を瞑って衛星システムとリンクを試みた。

アイリスはモバイルの警告音に気付くと、液晶を確認して息を呑んだ。
アイリス「攻撃衛星プログラムが凄い勢いで支配されていくわ・・・でも、どうやって?」
オルベス「どういうことですカ?」
アイリス「軌道上にある86基の攻撃衛星すべてが、何者かの意志のままってことよ。」
麻衣子(彼女だわ・・・。)
488ほんわか名無しさん:03/03/15 05:27
〜都市中心部、高層ビル群の狭間の道路 AM05:53

早朝勤務を控えた山田篤(27)はメインストリートの渋滞を避け、
比較的道幅の狭い裏道路を自慢のニュープリメーラで駆けていた。
休日のせいもあって、この時間は殆ど車が通らない。

山田「ふふーん♪やっぱ朝は飛ばせるね〜♪」
と、いきなりドンッとボンネットに金髪の少女が飛び乗ってきた。
山田「ンギャァァアア!!」少女は何かパクパク叫んでいる。
山田「な、なにもんだあんたーー!!」
伶佳は後方を指差して叫んでいた。
伶佳「車を止めないで!」
山田「(;゚Д゚)ハァ?」
山田はふっとリアに目をやると、巨大な怪物が涎をぶちまけながら後ろに迫っていた。
489ほんわか名無しさん:03/03/15 15:04
山田「ひぃぃ!!」
山田は時速230kmで公道を突っ走る!
伶佳はニュープリメーラのボンネットから後ろ向きに
キメラにボウガンを構え、矢を二本装填した。
伶佳「これでも食らいなさいッ!」
二本の矢は見事キメラの両目を貫いた。
怪物は道路を転げながら近づいてくる。

伶佳「ちょっと!何スピード落してんのよ!」
山田「前前!」
伶佳「んげっ!!」
車はそのまま無人のショッピングモールに突っ込んだ。
490ほんわか名無しさん:03/03/16 03:21
〜ミシュラ内部

アイリス「伶佳ちゃんを探さなきゃ・・・。」
オルベス「その前に追手を振りきるのが先だYO!このままじゃミシュラが持たないNE!」
後ろで鈍い打撃音が数回響く。
なんとピエールが、彼を取り押さえていた弥生、アリー、加奈の三人を一瞬で気絶させ立っていた。

麻衣子と杞憂はリリスを介抱しながら、緊張の構えを固める。
ピエール「アレを渡せば、このまま見逃してやろう。」
麻衣子「アレ?」
ピエール「イヴのプライマリデータと波長パターンを記録したチップだ。研究施設のデータが失われたのでな。」
麻衣子「何の事?そんなものは…。」
CJ「あるわ。」
麻衣子「どういうこと?」
CJ「コードはあなたの脳の電気信号として、そのバックアップデータはレイジィスーツ内臓のチップに記録されるの。」
ピエール「そういうことだ。」

CJ「あなたの首元についてるのがそれよ…。渡すしかないわ。。。」
麻衣子は死にかけているリリスにそっと視線を送ると、俯いて拳を握る。

「……渡すから出ていって。」
491ほんわか名無しさん:03/03/16 03:45
〜大型ショッピングモール 中央吹き抜けアーケード

伶佳を乗せたニュープリメーラは、瓦礫に半分埋もれてプスプスと煙を立てている。
その近くにはキメラもうずくまっている。伶佳は瓦礫と粉塵の中で意識朦朧と仰向けに倒れていた。
透明なアーケードの屋根にそってミシュラがゆっくり飛行するのが見えた。
まだ迎撃ポッドを振りきれてないらしい。

伶佳はなぜか、入隊時にレイコや幹部から受けたレイジィスーツの特性についての
説明を頭の中で反芻していた。

レイコ『このスーツは、被服者の意識にシンクロして潜在能力を増幅……』
水島『……理由はわからないが、このスーツは被服者の脳波パターンも記録しているらしい…』
麻衣子『プライマリは見本プログラムのようなものらしいって……』
様々な声が頭の中で響き渡る。


…ドクン

彼女は何かが自分の中から湧きあがってくるのを感じる。
神経が異様なほど鋭利に研ぎ澄まされているようだった。
同時に立ちあがったキメラと一対一で対峙する。
しかし、彼女の眼は何か他のもの捉えた輝きを放っていた。
492ほんわか名無しさん:03/03/16 05:08
伶佳は突然キメラに背を向けると、ニュープリメーラから山田さん(27)を引きずり降ろし、
エンジンを駆けた。失明したキメラは音と臭いを頼りに彼女の方向を探ると、
凄まじい雄たけびと共に追ってくる。伶佳は猛スピードでモールの階段をバックで駆け上がった。
キメラは真正面からせまっている。

モールの最上階に辿りつくと、方向を変えてまっしぐらにミシュラの飛び去った方向を目指した。
行く手には広い休憩用ラウンジと窓、その向こうには首都高の道橋が同じ程度の高さで平行に架かっている。
前方に回りこんだキメラのツメをドリフトで避わすと、そのまま窓を突き破って首都高に乗った。
同時にビルの影からミシュラが現れた。後ろから迎撃ポッドが三基、
レーザーを放ちながら食らいついている。

アイリス「みて!平走してる車のドライバー、伶佳だわ!早く転送して!」
ところが伶佳は、車をじりじりとミシュラ側に近づけると、アクセルを固定して車の屋根に乗り出した。
ミシュラの窓からは仲間達が固唾を飲んで様子を見守っている。
アイリス「まさか…。」

伶佳は腰に隠していた2つのホルスターから銃を引き抜くと、三基の迎撃ポッドを迎え撃った。
493ほんわか名無しさん:03/03/16 05:33
伶佳の2丁拳銃は的確に迎撃ポッド一体の、構造的弱点である接合溝を貫き爆砕した。
と同時に、車が道橋からはずれ宙に放り出される。彼女はひらりと宙返りしながらミシュラの後方デッキに着地した。
迎撃ポッドのもう一体が車に激突し、首都高下のほとんど無人の通路に墜落すると、凄まじい爆炎をあげた。

あっというまに遠ざかっていく炎の横からキメラが飛び出した。
眼と鼻の先には迎撃ポッドの最後の1基が火を吹こうとチャージしている。
伶佳は銃を納め、再び背中のボウガンを構えると、迎撃ポッドの溝に矢を押しつけた。

伶佳「言ったでしょ?狙った獲物は絶対に射とめるわ。」
彼女がボウガンから矢を放つと、ポッドはその衝撃を受けてキメラの大顎に一直線。
同時に火を吹こうとしていた怪物の巨体が凄まじい爆音とともに砕け散った。

伶佳「ふぅ。。やれやれね。。。」
彼女は力無くその場にヘたれこんだ。
494ほんわか名無しさん:03/03/16 05:55
ふーっと息を抜いたその時だった。
突然胸に痛みが走ると、一本のナイフが伶佳のみぞおちから突き出した。

ピエール「お前は危険だ……」
ピエールはそう言い残すと、片手に奪い取ったチップを握ってミシュラから飛び降りた。
すぐに麻衣子達が血溜まりにうずくまっている伶佳を発見し、船内に引き入れる。

伶佳「あたしったら…最後の最後で……ドジっちゃったわw」
麻衣子「大丈夫、助かるわよ!今すぐ宇宙ステーション内の医療施設に向かうって。あそこなら!」
伶佳「麻衣子、プライマリの正…体……わかったかも………」
CJ「それ以上喋ったら危険だわ!」

ミシュラは突然機首を上空に向けて急激に上げ出した。
オルベス「やっと大気圏外離脱エネルギーがチャージできたNE!逝くYO!!」

ミシュラは轟音と共に加速器を発動させると、凄まじい炎を吹いて空の彼方に消えた。
495ほんわか名無しさん:03/03/16 07:08
第三十二章 〜宇宙ヤヴァイ〜
496ほんわか名無しさん:03/03/16 08:49
さぁ、今日はまとめて読むかヽ(`Д´)ノ
497ほんわか名無しさん:03/03/16 09:20
キタキタ━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━! !
498ほんわか名無しさん:03/03/16 22:49
〜衛星軌道 セクター4、連邦宇宙ステーション"オマハ"第七区画 医療セクション

広大な円軌道を描く機械装置の輪。その中心に位置する動力機関によって、
この円内の区画はゆっくりと回転し、遠心力によって内部で重力を得ている。
ミシュラは海賊団籍の宇宙艇のため、「オマハ」に通じる"ヘヴンズ・ゲート"で拘束され、
怪我人だけがこの医療セクターに搬送されていた。
499ほんわか名無しさん:03/03/16 23:09
リリスは屋根の全面が透明ガラス張りになった人工庭園"エデン"の丘で静かに佇んでいた。
フランスの長閑な田園地帯を思わせる鮮やかな緑と、屋根を青空のように覆う地球の蒼いコントラスト。
手前から伸びている小川の緩やかなせせらぎが耳に心地いい。

リリス「昔を思い出すわ……。」

彼女はゆっくりと深呼吸を繰り返した。
最先端の医療を受けた彼女の体はすっかり体力を取り戻していた。
ここにはもう2週間も滞在している。あの時一緒だったメンバーや、他の人間もほとんど去っていた。
霧崎伶佳の様態も安定し、明日には登校を開始するという。
レイコや校長など、学園の関係者や古い友人が見舞いに来たこともあった。
学園内の疑惑や黒田重工鰍フ一件も表面的には処理済だったが、
問題のイヴの行方は遥として知れなかった。
500ほんわか名無しさん:03/03/16 23:22
麻衣子「あっ!ここにいたんだー!!」
丘の向こうから麻衣子と伶佳が手を振っている。
麻衣子は緊張が緩んだのか、いつもの調子の能天気な娘に戻っていた。

伶佳「久しぶりですわね(ニコ」
リリス「ええ、あなたに救われたわね」
伶佳「お互いですわ。」
麻衣子「明日は久しぶりに学園に戻れるねー!」

実はここにきてから、ほとんど関係者同士が顔を合わせて話を持つ機会が無かった。
そのため多くの謎はうやむやにされたまま放置されているのも事実である。
彼女達には黙っていたが、あの怪我は確実にリリスの余命を削っていた。
50185:03/03/16 23:56
・・・その頃、学園内漫才部部室にて・・・

?1「ねじーヽ(´ー`)ノ部室待機は何時解けるねじーヽ(´ー`)ノ
ねじー(私)達の出番は、まだなのかねじーヽ(´ー`)ノ」
?2「くくく・・・」
?3「ほっしゅほっしゅ!」
・・・実は、アレトリオは>>86のスクランブル時点で
校長より出された部室待機命令を受けて以来、
い・ま・だ・に、部室にて待機していたのであった・・・

?1「ねじーヽ(´ー`)ノ・・・それにしても
アレトリオンスーツが、どこにも見あたらないねじーヽ(´ー`)ノ」
?2「くくく・・・」
?3「ほっしゅほっしゅ!」
彼女等は『もう一組のアレトリオン』が活躍(?)していた事など
全く、全然、知らないのであった・・・

?1「ねじーヽ(´ー`)ノ・・・ユコたんも、モコたんも同じ台詞ばかり繰り返してないで
もう一度、部室内全部探すねじーヽ(´ー`)ノ」
ユコたん「くくく・・・」
モコたん「ほっしゅほっしゅ!」
見つかるはずも無いアレトリオンスーツを探して
アレトリオの時間は過ぎてゆくのであった
・・・?1の芸名が『ココたん』である事も明らかにされないまま・・・

#もしもアレならば、設定していた本名も明らかにしなくも無い・・・予定・・・
502ほんわか名無しさん:03/03/17 00:31
>>85サン
本名キボンウ(;´Д`)ハァハァ
503ほんわか名無しさん:03/03/17 00:42
アレトリオもう一組イタ━━━(゚∀゚)━━━!
504ほんわか名無しさん:03/03/17 01:42
そのころ劉翻は香港にて・・・
劉翻「黒田重工鰍ェ崩壊した以上、レイジィバツースを放っておくわけにもいくまい」
ピッ、カチャカチャ・・・
ズゾーっ(コーヒーを飲む音)
黒服A「ボス、例の科学者が応接室のほうに」
劉翻「やっと来たか、司馬玲の奴」

〜応接室〜
司馬玲「いやぁ劉翻さん、久しぶりですなぁ。イッヒッヒ」
50585:03/03/17 01:53
・・・学園内校長室・・・

ココたん「ねじーヽ(´ー`)ノ校長先生っ!>>502のとおりねじーヽ(´ー`)ノ
ねじー達の伽羅紹介&今までの放置プレイ(;´Д`)ハァハァ分の反省と謝罪と賠償を要求するねじーヽ(´ー`)ノ」
ユコたん「くくく・・・」 モコたん「ほっしゅほっしゅ!」
漸く、存在を忘れ去られていたと言う事に気付いたアレトリオは校長に詰め寄っていた
校長「えぇと・・・君たちは誰でしたか?」
・・・完全に存在は忘れ去られていたのであった

ココたん「ねじーヽ(´ー`)ノ扱いが酷過ぎるねじーヽ(´ー`)ノ
『ユコたん』こと『蛞野 蝓子(なめの ゆこ)』たん と
『モコたん』こと『毬野 藻子(まりの もこ)』たん なんか
何時の間にか台詞が、二人で一行に括られてるねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
校長「・・・しかしですねぇ・・・
『ココたん』こと『螺野 子子(になの ここ)』さん・・・
今の今まで、スーツを盗まれていると言う事に気付かなかったのは・・・」
子子「ねじーヽ(´ー`)ノ・・・それは、その・・ねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

校長「兎に角、>>502が(・∀・)でない事の証明も出来ませんし
ここは、お互い様・・・と言う事で、今後の活躍を期待しますよ」
子子「ねじーヽ(´ー`)ノせ、せめてスーツを取り戻して欲しいねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
校長「今、学園も大変な時期ですし。自力で頑張って下さい(笑み)」
・・・アレトリオの活躍できる日が来るのかどうかは不明なのであった・・・

#ちなみに、アレトリオン時は『アレトリ・○○(ココ・ユコ・モコ)』と言う風に名乗らせるつもりでした・・・
#下書き書いてる内にアレトリオンが登場してしまって、書き難くなったのですが
#一区切りついたようなので閑話(伏線)として、ちょこっとだけ書かせて頂きました

・・・閑話休題・・・
506ほんわか名無しさん:03/03/17 02:25
>>85スーツ(・∀・)っ◇ドゾー
507ほんわか名無しさん:03/03/17 02:30
萌え絵で脳内補完してますが、何か?
508閑話休題:03/03/17 02:39
>>85
ガ━━━━━━(゚Д゚;)━━━━━━ン
勝手にアレトリオンを使ってしまって申し訳け。。
活躍期待してまつ!!
50985@閑話:03/03/17 07:42
・・・商店街 某店内・・・

子子「ねじーヽ(´ー`)ノココのお店にもスーツが落ちてるねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
子子「ねじーヽ(´ー`)ノコレも拾うねじ、其れも拾うねじ、アレも拾うねじーぃぃぃヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

・・・何か間違えている彼女たちに、数人の制服の男達が近寄る
警官1「ちょっと君たち。ここいらのコスプレ服屋(正式名称何?)を荒らしているのは君たちだね?」
警官2「ちょっと君たち。署まで同行願い無いかな?」
子子「ねじーヽ(´ー`)ノ反省と謝罪と賠償を・・・」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
こうしてアレトリオは連行されて逝くのであった・・・
                         ・・・活躍の日まで後X日?
・・・閑話休題・・・

>>506
◇⊂(-_- スーツ ドモデス…

>>508>勝手にアレトリオンを使って申し訳け。。
(・∀・)d ダイジョブ それがリレー小説だから・・・
・・・伽羅の設定を、話に合わせて変えまくるだけだから・・・
#其のたびに書き直(鯖缶
510ほんわか名無しさん:03/03/17 09:55
・・・エデン大浴場・・・

防曇ガラスの向こうでは、蒼い地球が広々とその涼しげな輝きを称えている。
大理石と鏡のようなステンレスで設計された広大なジャグジーバスは、ここエデンの名物である。
麻衣子と伶佳、リリスの三人は帰還前の湯浴みと洒落こんでいた。

麻衣子「いやー、ここのお風呂とも今日でお別れかぁ」
彼女は窓の向こうに足を投げ出して顔を上気させている。
伶佳は洗い場でリリスの背中を流していた。
伶佳「残念なの?私には広すぎてあまり落ちつかないわ。。」
リリス「あっ、そこ。。そこもっと強く。。」

カラーン...

麻衣子「ん?今なんか変な音しなかった?」
伶佳「変ね。この時間は私達しかいないはずなのに。。」

脱衣所と浴場の間の仕切りの影に三つの影が潜んでいた。

F村「ちょっと・・・やばいんじゃないですか?」
チワワ「何を言うんじゃ、チャンスは今しかあるまい!」
F村「どうして浴場まで覗く必要が・・・」
サクちゃん「任務のための下調べだからな!!」
511ほんわか名無しさん:03/03/17 10:14
三人がグズグズ揉めていると、後ろの脱衣所からワヤワヤと話声が近づいてきた。
チワワ「いかん、そっちに隠れるんじゃ!!」

浴場に三人のあられもない姿の少女が入ってくる。
加奈「でさー・・・」
CJ「ふーん・・・」
アイリス「あ、リーダー達先に入ってたんだー。」
手を振るアイリス。

麻衣子「おー、みんなー。」
伶佳「彼女達だったのね。」
リリス「アンッ!もっとそこ擦って。。。」
伶佳「・・・。」

F村「やばいっすよ!前門の虎、後門のなんとやらですよ!」
チワワ「四面楚歌だな。」
サクちゃん「なーに、獲物が増えただけさ。」
F村(このオサーンはカメラ握り締めて何を偉そうに・・・)
512ほんわか名無しさん:03/03/17 10:27
>>509
ご活躍待ってます(*゚∇゚)
あの調子でアレトリオは戦えるんでしょうかw
513 ◆prGJdss8WM :03/03/17 10:47
(メ゚Д゚)y━・~~~ もまいらは朝から漏れを萌え死にさせる気でつか?
514ほんわか名無しさん:03/03/17 18:22
百合子の自宅

バスルームからシャワーの音が聞える。
くもりガラス越しに百合子の豊満な体が写る。
ベットでは銀之助が軽い寝息を立てている。

百合子はあの事件以来、会社には一度も出社していなかった。

崩壊した黒田重工ビルは、僅か10日間でガレキの撤去を
終えたとテレビで言っていた。
表向きはテロによる破壊活動ということになっている。
もちろん、これは黒田重工の情報操作によるものだ。
515ほんわか名無しさん:03/03/17 18:33
黒田重工は本社ビルを失いはしたものの、
仮にも世界一の重機会社だけあってか
拠点をすぐ近くのビルに移し営業を続けていた。
事件が深夜から早朝にかけての出来事であった為、
人的被害が少なかった事も、早い立直りの一因だろう。

百合子はバスルームから出ると、
バスタオルを体に巻きつけ銀之助の眠るベットに
腰掛け、長い間止めていたタバコに火を付けた。
516ほんわか名無しさん:03/03/18 10:31
お風呂の続きキボンヌ...
517ほんわか名無しさん:03/03/18 15:07
麻衣子「・・・さて、と・・・。わたし、そろそろあがるね」
リリス「あっ、私も・・・」
脱衣室に向かう麻衣子とリリス・・・
・・・が、其の時、麻衣子の目が三つの影をとらえた
麻衣子「あーっ!あんたたちっ!こんなとこで何してるのっ!?」
F村&チワワ&サクちゃん「ビビクゥッ!」

だが、其れは彼等に向けてかけられた言葉ではなかった
アリー「何してるの?って。風呂に入りに来たのですが、何か?」
メル「見事な返答だな姉者!」
リン「お〜ふ〜ろ〜(^^ゞ」
アレトリオンの3人が、麻衣子よりもはるかに豊満な双房をアレトリオンスーツに収めたまま
脱衣所から浴場へと、入って来ていたのであった・・・

麻衣子「嘘つけえぇっ!どこの世界にスーツ装備したまま風呂はいる香具師がいるかあーっ!」
アリー「ここに居ますが、何か?」
メル「見事な開き直りだな姉者!」 リン「はやく入ろうよ〜☆」
麻衣子「・・・」
リリス「・・・コレが厨・・・」

アリー「とまあ、厨的冗談は置いておくとして。私たちは別働隊だからな」
メル「正体を明かすつもりは無い。と言う事だな姉者!」
リン「なれあいはしないんだよ〜♥」
麻衣子「・・・もういいです。勝手にして下さい・・・」
麻衣子は、アレトリオンとの意思疎通を図った自分の愚かさを悔いつつ浴室を後にするのであった
518ほんわか名無しさん:03/03/18 15:09
麻衣子「それにしても、あのスタイルは何よ・・・反則よ・・・」
リリス「小さくてもいい、ゐ`・・・とか言ってた人も居たわよ」
麻衣子「・・・しかし、名前からしてアレトリオンの正体は、アレトリオだと思ってたけど
 あの3人の洗濯板とは全く違うし・・・正体は一体・・・」
リリス「それって、現実を誤魔化してるつもりなの?」
麻衣子「・・・てぃ・・・」
リリス「あっ・・・」
二人が乳繰り合っていたその頃、アレトリオは取調べを受けているのであった
・・・が、それはまた別のお話

子子「ねじーヽ(´ー`)ノ警部さん。もう許して欲しいねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
警部「いいから早く、君たちの学校の名前を答えてもらえないかな?」
子子「ねじーヽ(TーT)ノ」 蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
・・・なむ〜チーン
519ほんわか名無しさん:03/03/19 06:09
第三十三章 〜Starry Eyed Surprise〜
520ほんわか名無しさん:03/03/19 14:39
時は後漢
521ほんわか名無しさん:03/03/19 21:02
街は頭に黄色い布を
巻いた人々であふれていた。
522ほんわか名無しさん:03/03/20 08:14
時の皇帝・光武帝は王朝統一の為に中国全土に密使を送りこみ情報を蓄積していた。
だが、当時の西域、烏孫との国境に魑魅魍魎が跋扈しはじめたとの報告があり、
ある秘術を使う一団を遣わすこととなった。

その一団は当時ローマの帝国から、国政平体の為に進呈された人々で
金髪蒼眼、あらゆる国の言語に精通、魔術を用いて世界中の外交において暗躍していた。
彼らを知る一部の特権階級の人々は、畏れを込めて一団をこう呼んだ

光の民、イルミナティと・・・
523ほんわか名無しさん:03/03/20 08:43
光武帝に使わされた三人の密使は、驚異的な日程で烏孫との国境に辿りつき、
黄色い布を頭に巻いた人々の沸き返る街を後にすると、
怪物が出没するという県境の山奥で遭遇した巨大な怪物と戦っていた。

プリム「ねぇ、こいつ、今までのザコとは全然違うわよ!」
リディア「えーん、もっと楽な仕事かと思ってたのにぃ〜。」
ヨハン「気を抜くな!下手すりゃ殺られるぞ!こいつは神獣レベルだ!」

麒麟と呼ばれるその怪物は、尾の毒牙を一閃するとリディアの左胸を貫いた。

「キャァァ!!」
プリム「リディア!!!」
ヨハン「ちっ!だめだ!!二人じゃ手に負えない。封印するぞ!!」
プリム「そんな。。リディアが。。。」

プリムは気が動転して封の印を描けない。
ヨハン「しっかりしろ!」

もはやここまでか。そう思った瞬間だった。
524ほんわか名無しさん:03/03/20 10:57
緑に輝く巨大な魔方陣が麒麟の上に落とされ、かれを縛り付けた。
そして空から悪魔の翼を羽織った少女が、音もたてずに地面に着地する。
ヨハン「まさか。。。リリスさま?」
リリス「其のものはまだ生きている。こちらへ。」
プリム「リリス様、どうかリディアを助けてください。」
リリスはリディアの左胸に手をあてると、呪文を詠唱した。
傷口が見る見る癒えていく。彼女は仕事を終えると、麒麟を一つの壷に封じこめヨハンに手渡した。
リリス「それを光武帝に献上なさい。光の民からの友好の証だと。」
ヨハン「しかし、あなた程のものならばこんな怪物くらい…」
リリス「私とて神獣とまともに戦えば無事ではすまない。それよりももっと有効な活用ができるだろう?」
ヨハン「しかし、何か嫌な予感がするのです。」

その時だった。リディアが気付くと、カッとリリスのエメラルドの瞳を睨みつけた。
まるで瞳には別の魂が宿ったような、しかしそれは彼女自信が良く知っている紅い瞳であった。
リディア「見つけたわよリリス♥」
リリス「イヴ!!!!!!!」

彼女は気がつくと、汗だくでベッドから飛び起きていた。
窓には地球が変わらぬ蒼い光を放っている。

リリス「そうだった。明日から学園に戻るのね。。。でもどうしてあんな昔の夢を。。。」

〜そして舞台は現代の日本へと移る。
525ほんわか名無しさん:03/03/20 17:31
黒田重工葛ュ襲課の三上慶子は会社からの帰宅途中、何者かの襲撃を受けていた。
二人の黒服の男が突然街中で、彼女に向って青龍刀を振り降ろしたのだ。
彼女は二本の青龍刀を手袋で隠した両手の肉球で払い、
二人同時に蹴りとボディーブロをそれぞれ入れると、
男達が怯んだすきに人目を避けるために路地裏へと駆込み
辺りに人気がないのを確認した。
程なくして男達が路地裏に駈込んで来た。

慶子「貴方達、何者?」
男達「...」
慶子「答える気はなさそうね。」

再び男達が襲い掛かってきた。
慶子はそれを軽くかわし、両腕を胸の前でクロスさせた後
やや下げ気味で前に突出し、同時に「獣装!」と叫ぶと
背中から帯状の物が噴出し彼女の体を一瞬のうちに包んだ。

そこには美しき猫の姿を持つ怪人と化した慶子の姿があった。
この姿こそ、強襲課が怪人課と言われる所以である。
526ほんわか名無しさん:03/03/21 03:12
慶子は慈悲のかけらもなく男達を引き裂くと、血に塗れた爪を舐め、美しい女性の姿に戻った。
鮮血の如く赤く染まった月をバックに、妖麗なボディラインを浮かび上がらせている。
それを陰から見守る人影があった。

司馬玲「ふふふ・・・彼女は使えそうだな。」
黒服「劉翻様のご命令では始末しろと・・・。」
司馬玲「なぁに、奴もきっと賛成するさ。」
黒服「?!その壷は?」

司馬玲は愛しげに小さく古びた陶器をさすっている。
「見つけたのさ・・・麒麟をね。」
527ほんわか名無しさん:03/03/21 03:23
     *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
  * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
      *  ※ ☆   ※ ※   ☆ ※  *
528ほんわか名無しさん:03/03/21 04:06
お疲れ様〜(゚∀゚)
529ほんわか名無しさん:03/03/22 06:01
保守sage(;´Д`)
530ほんわか名無しさん:03/03/22 21:36
・・・警察署内留置場・・・

取調べは続くよどこまでも・・・
子子「ねじーヽ(´ー`)ノ警部さん。もう釈放して欲しいねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
警部「しかしなぁ〜。学校の名前すら答えないようではなぁ〜」
いまだに学校名すら聞き出せない警部は、いい加減やる気をなくし始めていた

子子「ねじーヽ(´ー`)ノだから、学校名なんて知らないねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」
警部「だからねぇ。何で、学校名を知らない訳?
 低学年の子でも、自分の通ってる学校の名前ぐらいは知ってると思われるけどなぁ」
微妙な会話のずれに気付く者は少ないまま、時間ばかり過ぎてゆくのであった・・・

蝓子「くくく・・・私たちは小○学生ではないのですが・・・ねぇ(ボソッ」
藻子「ミタメデ カンチガイ ほっしゅほっしゅ!」
相棒に恵まれないココたんに、未来(あす)は・・・多分、来ないのかもしれない・・・
531ほんわか名無しさん:03/03/23 15:26
その頃、校長先生は
532ほんわか名無しさん:03/03/24 07:40
腰を振っていた。
533ほんわか名無しさん:03/03/24 08:47
実は校長、「第38回高校対抗校長先生ゴルフコンペ」で見事優勝し、
賞品のハワイ旅行をゲットしていたのだ。

「ハワイと言えば、ハワイアン!!アローハオエー!!」
校長はそう叫ぶと、「カメハメハ、カメハメハ」と
リズムを取りながら腰を振り続けた。
534ほんわか名無しさん:03/03/24 11:18
それを見つめる二つの影。
中華服を着用した二人の男だった。
一人は長身、もう一人はまだ幼い子供のようだが、瞳が妖しく黄色に輝いている。

「あれが岩山巌蔵か・・・落ちたものだな。」
「兄者、始末していいか?」
「あぁ・・・。一瞬で始末をつけろ。」

校長「!?」

校長はいきなり長身の何者かに顔面を掴まれ、近場の岩に叩きつけられた。
岩が凄まじい音を立ててグシャリと弾け、そのまま地面に小さなクレーターを形作る。

校長は薄れ行く意識の中で、男の指の狭間から敵の顔を覗った。

「りゅ・・・劉翻の手先か・・・」
535ほんわか名無しさん:03/03/24 15:31
長身の男は完全に止めを刺すためか、
意識の無くなった岩山を再び岩に叩きつけようと掴み上げた
そのとき

「おいおい、あんた達そいつを殺されると、ひじょ〜に困んだよねぇ
丁重にお連れしろって、社長命令があるからさぁ。」

と妙に軽い声が響いた

場違いな声のほうに、二人の男は目を向けると
派手なグリーンのスーツに身を包んだ男が
するすると歩み寄ってきていた。

男は肌と目の色以外全てグリーンだったが
端整な顔立ちにはよくあっていた。
佐川修平、黒田重工葛ュ襲課勤務の男だ。

「なぁ、あんた達の仲間だろう?うちの子猫ちゃん苛めたのはさぁ」
佐川はそう言うと、男達の返事を待たず、気だるそうにポーズを取り
「獣装」してエメラルド・グリーンボアの姿を持つ怪人に変身した。
536ほんわか名無しさん:03/03/25 04:57
第三十四章 〜Stars All Seem To Weep〜
537ほんわか名無しさん:03/03/25 05:45
星々が哀しげにその刹那の光明を瞬かせている。一瞬一瞬毎に消えては現れる輝き。
無限の死と無限の再生。私達は区切られた時間に根を張り行間を読み飛ばす存在でしかない。
それでも太古の昔から数億光年の時を超えて、あの光は何かを伝えようとしているのだろうか?
彼女は星々の声を探ろうと目を閉じる。

ふっと心地よい春の息吹がリリスの頬を撫でた。
目を開けた途端、視界いっぱいに星空が落ちてくる。


「遠くに見える夢を想う
 それが今日こそ叶う事を願って
 星空の夜には
 愚かな夢想家達が視線を向けるの
 流れ星を待ちながら……」

彼女はおもむろに歌い出した。

「でも
 もしお星様が来なかったら?
 彼らの夢は無意味なものに色褪せてしまうの?
 地平線まで真っ暗になったとしても
 私達は希望があるって信じなくちゃ
 天使が側で私を見守っていてくれるかな?
 私を導く光を見る事が出来るかな?
 自分の気持ちは自分で解決しなきゃいけないって解ってるけど
 私の心には穴が空いている……」
538ほんわか名無しさん:03/03/25 06:13
〜学園東棟・学生寮屋上 リリスは一人星空を見上げながら囁くように歌っている。

「何がこの虚無感を満たしてくれるかしら?
 それを知らずに納得する事が出来る?
 私はそれを見るチャンスを願っている
 今私に必要なもの。
 それは私の所に来てくれるお星様・・・」

と、突然もう一つの声が彼女の歌に割りこんだ。

「あなたがそばにいれば
 運命も太刀打ちできない
 すべてが手に届く場所にある
 何でも見渡せる。」

リリス「ま、麻衣子ちゃん?いつからそこに?」
麻衣子は答えずにそっとリリスの前まで歩み寄ると、彼女の頬にそっと手を伸ばし、涙を手で拭う。

麻衣子「いい歌ね……。」
リリス「あなたのだって…。」
麻衣子は屋上の手すりに身を乗り出すと、すーっと深呼吸をして星空に向かって叫んだ。

「私がここにいるのが見えるー?!」
麻衣子はキョトンとした様子のリリスを振りかえると、クスッと微笑む。
「プッ!アハハハ」彼女も釣られて笑い出す。
軌道上のスパイ衛星が、じっとその様子を捉えていた。
539ほんわか名無しさん:03/03/25 08:47
岩山巌蔵は目を覚ました。
どうやら、どこかに寝かされているようだ。
後頭部に違和感がある。
体を起そうとするが、うまく言う事を聞かない。
"ピー・ピー・ピー"と一定の間隔で電子音が響いている。

突然、女性が岩山の顔を覗き込んだ。
「目が覚めたようね&hearts」
”ここは何処か”と尋ねようとする岩山の唇を
彼女の細い人差指が止めた。
「ちょっと待ってね。」
そう言うと彼女は岩山の視界からフレームアウトした。

「岩山様が目を覚まされました。」
彼女がどこかに連絡を取っている

どれくらい時間がたったろうか。

誰かが部屋に入ってきた
「よぉ!ご苦労さん」
岩山の視界にはまだ入らないが、
女性に声を掛けたその声の主を彼は知っていた。

「敷島?なぜ...?」
540ほんわか名無しさん:03/03/25 12:36
敷島は親しげに岩山の肩を叩こうとするが、彼は肩を退いてかつての友を睨みつけた。
敷島「おいおい、随分だなぁ。助けてやったんだぜ?」
岩山「あぁ、だが私自身は助かっていない様子だが?」
敷島「まぁいい。今はお互いに共通の敵がいることはわかってるな?」

岩山は敷島のデスクに放られている茶封筒に目を落す。

"C-Virus,Carrierの司法解剖レポート"

岩山「直接ウィルスに感染した者が?!」
敷島「あぁ、少し前の話になるんだが…。フランス現地で若い女性が感染したようだ。」
岩山「信じられん。。ウィルスソースは当の昔に不活性化したはずだが。」
敷島「感染者の名前は風院さつき。厄介なことにあのサード・アイ・ブラインドのエージェントらしい。」
岩山「上層部に潜伏しているスパイから劉翻サイドにリークがあったというか。」
敷島「その通り、更に厄介なことに彼らは・・・」

彼は部屋のブラインドを下げ、スクリーンにスライドを映し出した。

敷島「これが風院さつきの死後八日目の遺体。見ての通り全く腐敗する様子がない。」
岩山「私にどうしろというのだ?」
敷島「実はつい先日、遺体が"逃げ出した"」
岩山「逃げ出しただと?!」
敷島「君とレイジィバツースの力が必要になる。"シュトフ・アッセンブリー"が動き出したようだ。」
541ほんわか名無しさん:03/03/25 13:06
×敷島のデスク→病室(?)のデスクに変更スマソ・・・
542ほんわか名無しさん:03/03/26 10:55
昼下がり、学園の庭内では昼食後に戯れたり、陽に当る生徒で賑わいを見せる。
麻衣子は木の下の芝生に一人、購買で買ったサンドウィッチを頬張ってボーッとしていた。
「最近ヒマだわぁー。。」
その時、背後でザッ!と芝生を踏む音を耳にした。
「あなたが如月麻衣子?」
「ん?あなた誰?」
「あたしと勝負して!!」
「へっ?!」

その少女は渾身の力を込めて拳を芝生に叩きつけた。
当った場所から土が捲り返り、大きなクレーターを創った。
間一髪でよけた麻衣子を衝撃と土つぶてが襲った。
校庭の生徒達がザワザワと二人を注視している。

麻衣子「あんた何者よ!」
優子「フフフ…。私は天才格闘家、優子。昨日転校してきたの。
   レイジィバツースに代わってこの学園を仕切らせて貰うわよ☆」
麻衣子「はぁ?まさか道場やぶりってやつ?!」
優子「そうの通りっ!!」

神速の蹴りが繰り出されるが、麻衣子は紙一重で屈んでそれをかわした。
キックは校舎の壁を捉えると、そこから直線状にレンガが吹っ飛び、壁は見るも無残に破壊された。

麻衣子「はわわ……」
543ほんわか名無しさん:03/03/26 15:19
麻衣子のレイジースーツは
先の戦いでピエールにチップを奪われてしまい、
新しいチップを取りつけたばかり
いわばレベル1に戻った状態だった。
そのため、麻衣子の持つ本来の力をフルに引きだすにはまだ至っておらず
せいぜい20〜30%アップ程度、当然”プライマリ”も発動しない状態である。

「逃げるのだけは上手いようね。だけど、これならどう☆」

そう言うと、優子は立上りかけた麻衣子の足を踏みつけると
顔めがけて再び蹴りを繰りだした。

麻衣子はとっさに腕でガードしたものの
数メートル程飛ばされてうつ伏せに倒れこんだ。

衝撃で麻衣子の制服のスカートは捲れあがり
健康的な太ももとクマさんイラスト入りの白いパンティーが
丸見えになった。
544ほんわか名無しさん:03/03/26 16:04
パンチラキタキタ━━━━━━━━━(*゚∀゚)━━━━━━━━━!
545ほんわか名無しさん:03/03/27 11:10
第三十五章 〜easy to assemble〜
546ほんわか名無しさん:03/03/27 12:26
麻衣子は倒れたまま、体の違和感から戦闘意欲が湧かずに狼狽していた。
麻衣子「くっ、このままじゃやられちゃうわ…」
優子「ねぇ、最強の特殊任務遂行部隊レイジィバツースのリーダーがこの程度ってことないわよね?」

麻衣子は力を気力を振り絞って立ちあがると、下を俯いて呟く。
麻衣子「意味の無い戦いなんて出来ない…。」
優子「意味の無い戦い?笑わせてくれるわ。あなた達みたいにハイテクの力を借りて
   のほほんと遊びながら戦う連中に何がわかるって言うの?」
麻衣子「違うっ!私達はいつも命がけで戦ってるわ!!」
優子「じゃぁ、あなたは何で戦うの?」

麻衣子の脳裏に六年前の戦争の記憶が過った。

麻衣子「私に聞いたって意味無いわ。戦う理由なんて人それぞれよ。
    それに、ここの学園のほとんどの生徒は身寄りの無い子供達。。
    戦士として選ばれたからには、自分に出来る限りのことをする義理があるの!」
優子「そう、わかったわ。実は他にワケありなんだけど、益々あなたの力を確かめたくなった。」
麻衣子「!?」

優子は構えを解くと、特殊な呼吸を繰り返しだした。
547ほんわか名無しさん:03/03/27 14:38
優子を包む空気がゆらゆらと陽炎のようにゆれる。
呼吸を繰り返す彼女の顔付が徐々に変ってゆく。
目は半分程閉じられ、唇は在るか無かの微笑を称えている。
いわゆる”アルカディックスマイル”と言うやつだ。

心なしか、彼女の体格が一回り大きくなったように麻衣子は感じた。

静寂が周囲を包んでいた。
ギャラリーも、まさに息を殺して二人を見守っていた。
聞えるのは、遠くでさえずる鳥の声と
規則正しい優子の呼吸音だけだ。
「フーーー」一際長く息をはきだし、
ふわりと優子は動きだした。

ガードはほとんど意味が無かった。
先ほどの蹴りの何倍も強烈な打撃を全身に受け、
再び宙を舞う麻衣子をさらなる攻撃が襲う。

優子の動きはまるで舞を舞っているようだった。
激烈な、それでいて優雅なその動きを
麻衣子は知っていた。
(プライマリー!?)

ギャラリーの中から突然一人の女性が飛びだした。
「止めなさい、優子!!」
声の主は、レイコだった。
548ほんわか名無しさん:03/03/28 15:36
(-∀-)<保守するヨー。職人さんガンバルンダヨー。
549ほんわか名無しさん:03/03/28 18:53
麻衣子は治療室のベットで検査を受けていた。

「御免なさいね。妹ったら、本当に馬鹿なんだから。」
レイコは麻衣子の体を調べながら何度も同じ言葉を口にした。
優子はレイコの妹だった。
「大丈夫です」その度に麻衣子は明るく答えはしたが、
体のあちこちが悲鳴を上げていた。

「打撲はかなりのものだけど、さいわい骨にも内蔵にも異常は無いわね。」
ベットに腰掛け、手にした検査結果を見ながらレイコは言った。
「スーツのお陰ですね。きっとスーツが無かったら...」
「御免なさい。」
「えっ、あっ私そんなつもりじゃ...」
「いいのよ。ホント御免なさい。」

沈黙が流れた。

「あの、聞いてもいいですか?」沈黙に耐えかねた麻衣子が口を開いた。
「何?」
「なんであんなに優子ちゃんは強いんですか?それにあの動きって...」
麻衣子の言葉を遮るようにレイコが話し出した。
「プライマリーと良く似てるけど、私たちは”飛龍”って呼んでるわ。代々家に伝わる門外不出の技よ。」
「へっ」
「家は、代々武道で生計を建てて来たのよ。今でもそう。妹は私の代りに厳しい修行に耐えてきたの。」
レイコはそう言うとベットから立上り検査結果を机に置くとさらに続けた。
「優子は貴女の訓練相手にと思って、私が呼んだの。もちろん校長の許可も取ってあるわ。
監視カメラに残っていた”プライマリー”の動きが”飛龍”にあまりにも良く似てたから。」
そう言うとレイコはビデオを取出それを流し始めた。
モニターにプライマリーを発動させキメラを打ちのめす麻衣子の姿が映し出された。
550ほんわか名無しさん:03/03/29 14:15
   ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧
  ( (-( -( - ( -д( -д)
  (つ(つ/つ//  二つ
ハァ─) .| /( ヽノ  ノヽっ ─・・・
   ∪∪とノ(/ ̄ ∪
      


                ∧
 ((  (\_ ∧ ∧ ∧ ∧ Д)っ
   ⊂`ヽ( -д-) _)д-) )  ノノ
  ヽ ⊂\  ⊂ )  _つ
スゥ──(/( /∪∪ヽ)ヽ) ノ ──
      ∪ ̄(/ ̄\)


     (\  ∧ ∧   カッ   
      < `( ゚Д゚)         飛龍!!
       \  ⊂ )
       /    \
       ∪ ̄ ̄ ̄\)
551ほんわか名無しさん:03/03/30 04:14
(・∀・)イイ!!
552ほんわか名無しさん:03/03/31 01:42
レイコ「プライマリと飛龍の間には、深いところである共通したメカニズムがあるの。」
麻衣子「時間と因果律・・・。」
レイコ「・・・そう。あなたも感じ取っていたのね。」
レイコ「レイジィスーツの基本デバイスについては、隊員にはあまり詳しく教えられないのだけれど」
麻衣子「えぇ、わかっています。だけどわたし、もう何かの隠し事に振りまわされるのはイヤです・・・」

麻衣子はベッド横のテーブルに置かれたグラスを憂いげに見つめている。
冷たく漉き取った水の質感を、ひんやりと感覚に感じ取る。
まるで心象風景との鏡像を結ぶ如く、ゆるやかな波紋が広がったような気がした。

レイコ「そうね。流石にあなたたちに話さなければならない時が来たのかも。」
553ほんわか名無しさん:03/03/31 09:22
第三十六章 〜Digitally/Reality〜
554ほんわか名無しさん:03/03/31 11:58
〜レイジィバツース訓練施設

白く光沢のある材質で覆われた広い部屋の一角に、数名の隊員が集合していた。

レイコ「いい?これからあなた達に教えることは、決して広めて欲しくは無いことなの。」
杞憂「麻衣子ちゃんどういうことなの?レイジィースーツの第二段階って・・・?」
麻衣子「私達はもっと大きな力を得ることが出来るってことなの。」
弥生「・・・。」

レイコはそっとCJマクダーナル、リリスの二人に目配せをすると、彼女らは黙って頷いた。

レイコ「これを理解すると、あなた達の世界観にも大きな影響を与えることになるから、
    成長過程の少女たちに話すのは好ましくなかったの。もちろん、あまり強大な力も与えたくなかった。」
加奈「でも、今はそれが必要だってことね。」

レイコは黙ってCJとリリスに、皆の前に来るように促した。
二人は落ちついた様子で他の生徒と向き合う。

レイコ「今から見せるものは、少し衝撃的かもしれないけど。」
麻衣子「覚悟は出来てるわ。」
555ほんわか名無しさん:03/03/31 16:43
モニターに映し出されたのは小学生くらいの少女5人と
50人程の武器を手にした中国服の若い男達だった。
少女達はレイジースーツに良く似た服を着用し、
無表情で背中合わせに円陣を組んでいた。
その円陣をさらに男達がとり囲んでいる。

「始めろ。」どこかで聞いた事のある声が響いた。
その声と同時に、男達がそれぞれの武器で少女達に襲い掛かる。
先頭の男が一人の少女に青龍刀を振り下ろした。
が、しかし少女達は微動だにしない。

「キャー」思わず杞憂が目を伏せる。
「杞憂ちゃん良く見て!」麻衣子が声を掛ける。

男達は青龍刀の男を中心にし放射上に吹飛んでいた。

全ての男が倒されるまで3分とかからなかった。

なんと言う事はない映像だった。
50人の男達が5人の少女に倒された
それだけの映像である。

ただし、少女達が指一本動かしていないことと、
倒された男達が、子供にかえったり、老人になってしまった事を除けば。

「”因果”を食べたの...?」麻衣子は誰に言うとなく呟いた。
556ほんわか名無しさん:03/04/01 05:30
伶佳「彼女達は一体?」
レイコ「この学園の生徒ではないわ。これは校長先生の持ち出した黒田重工鰍フ実験データ。」
加奈「因果を食べるってどういうこと?わたしたちにもあんなことが出来るの?」
レイコ「正確には・・・」

レイコは下を俯いてコツコツとモニターに歩み寄ると、画面を切りかえる。
そこにはグリーンのフレーム状に表示されたレイジィスーツとプログラムの羅列が映し出された。

レイコ「こう言うべきね。テクスト構造における記号統一性の組み替え・・・」
麻衣子「はぁ?」
麻衣子はポカーンと口を開けてわからないと言った仕草を送る。
レイコは少し眉を引き攣らせて言い換えた。

「現実の因果律に干渉できるの。平たく言えば、決定的な矛盾で時空連続体にひび割れを起こさない範囲で、
 あなた達の思い描くことが全て現実の表象として可能になるわ。」
557ほんわか名無しさん:03/04/01 05:49
アイリス「そんなデバイスがどうして可能になったのかしら。。だってAI研究ですら現実世界への
     記号接地は不可能だとされているのに!」
リリス「呪文よ・・・。イルミナティのスペルコードを経由したの。」
杞憂「そうか、魔法と同じね。理由はわからないけど、魔力の特質が世界への干渉だから・・・」
麻衣子「??。???。」

背後でイライラした様子の優子が割って入った。

優子「飛龍は洗練された武術なんだから、そんな邪道なテクノロジーと一緒にしないでよね!」
レイコ「そう、世界構造のテクストへの干渉、飛龍の場合はリーディングの操作。つまり自らの
    世界認識を制御するの。正確には脳の神経系統に変化を及ぼして、神経、身体構造の飛躍的進化を可能にしている。」
優子「時間を削るように見える動き方は、実際に脳の中で時間処理がそう行われているからよ。」
CJ「時間構造を無限に続く一枚一枚のスライドに例えるなら、数枚づつ読み飛ばして行くわけ。」

伶佳は、キメラとの追跡戦の記憶を探っていた。あの時、確かに彼女は覚醒していたのだ。

伶佳「じゃぁ、やっぱりプライマリって・・・」
558ほんわか名無しさん:03/04/01 06:19
レイコ「プライマリは経験則に基づいて最適化されたプログラムデータよ。」
リリス「オリジナルの戦闘データをモニタリングして導き出したの。」
麻衣子「イヴのデータね・・・。」
リリス「・・・。」

伶佳「因果律に干渉をコントロールするには、無意識レベルでレイジィスーツのオペレーティングシステムと
   シンクロしなきゃならない。そしてそれには個人差が出る。。それで個人個人のバックアップデータを・・・。」
レイコ「そう、それでもプライマリの汎用性は十分にあった。でもそれは・・・とても危険な技術だったの。」

優子は「飛龍」の呼吸を発動させながら、話を続けた。

優子「飛龍もプライマリも、時間というスライドを他の観測者よりも細かく区切ることで、他人の認識できない時間に割って入ることが出来る。」
   でもそれが何を意味するかわかる?」
麻衣子「?!」

次の瞬間、眼前から優子が消えた。

麻衣子「これは?!」
CJ「人間の感覚で捉える相対性理論、場の量子論、種々の物理法則の定数が全て変動するわ。」
リリス「不可能が可能になる。自分の思い描くことが現実になる。もし制御不能になったら恐ろしいことになる。」
加奈「それも自分の感情次第だからね・・・。」
レイコ「だけど通常、人間の脳の情報処理能力では、そこまでは不可能ということがわかったわ。」

リリスは少し下を俯いた。唇をキュッと引き締める。
だけど、並列処理なら・・・。そんなことを考えた自らを戒める。
優子が麻衣子の背後に突然現れる。

優子「飛龍に出来るのはここまで。だけどレイジィスーツの潜在能力はこんなもんじゃないわ。」
レイコ「日々の鍛錬が必要不可欠なの。これまでの現実認識の仕方を意識して少しずつ変えなくては。」
559ほんわか名無しさん:03/04/01 10:08
麻衣子達が去った部屋に、
レイコ・リリス・CJの三人が残っていた。
疲れた表情で少し離れて椅子に座っている。

「本当に話してよかったのかしら?」レイコが呟く。
「...」リリスとCJは黙ったままである。

静寂

おもむろにリリスが立上った。
「大丈夫...変換率もあのころと比べて格段にあがってるし...
彼女達ならきっと大丈夫ですよ。」
それだけ言うとCJを促し部屋を出て行った。

一人残ったレイコは立上り、
モニターの前に置かれた大きめの封筒から書類の束を取出し
近くにあった椅子に再び腰をおろして、パラパラとそれをめくり
”レイジースーツ基本ディバイスについて”
と書かれた場所を読み出した。
560連続投稿すまぬ。:03/04/01 10:10
「レイジースーツは被服者の意識にシンクロして現実の因果律に干渉する。
そのエネルギーも被服者の因果律より得る。
つまり被服者に起るべき事が起きない事による、
あるいは起りえない事が起る事による”因”と”果”の差異をエネルギーとし、
戦闘時には爆発的な攻撃力を発揮する。
また、被服者が攻撃を受けた場合もダメージの80%が”果”として
エネルギー変換されるため防御面にも優れている。
被服者は普段よりスーツを着用する事により、シンクロ率を高め
エネルーギを蓄える事が可能である。
なお、被服者はスーツにより摂取された”因”及び”果”を
夢で見る事例が確認されている。」


立ち上がろうとしたレイコの手が偶然、スイッチに触れる。
画面が少女達の映像に切り変る。

少女達が急激に成長し始める。
身長、髪の毛、爪、あらゆるものが信じられないスピードで伸び始める。


髪の毛の間からのぞいた少女達の顔には
深い皺が刻まれていた。
561ほんわか名無しさん:03/04/01 12:12
/知らん間に凄いことなってるー(;´Д`)/
562ほんわか名無しさん:03/04/01 19:56
第三十七章 〜Rain falls like Sleepdust〜
563ほんわか名無しさん:03/04/02 14:58
〜学園北棟、美術史図書館一階、開架閲覧フロア PM5:23

麻衣子は一人窓際の休憩用椅子に腰をかけ、大好きなビザンツ様式の建築写真集をぼんやりと
パラパラめくっていた。窓の外はもう暗い蒼で染まっており、にわかに降り出した雨が
さざ波のようなリズムで窓に打ちつけている。
湿気のせいか、図書館特有の琥珀色の薫りがいつにも増して館内を満たす。
暖房は効いているはずだが、窓からひんやりと漂う冷気のおかげで心地よい陶酔感を味わうことが出来た。

「そろそろ時間かな…。」

彼女は本を書架に戻すと、カウンターの前を通りゲートまで歩きながら
吹き抜け2階の休憩ラウンジを見上げる。上級生達が何か談笑しているようだ。
更に上の方には、西欧の教会建築を模した円形の屋根が広がっている。
麻衣子は一瞬、吸いこまれるようなゾクゾクとした寒気を背中に感じ取ると、
にべもなくゲートをくぐり、雨の降る屋外に進み出た。

「わ。。どうしよう。傘持ってないや…。」

雨は思ったより強いようだった。寮まではここから歩いて少なくとも30分はかかる。
彼女は何をするでもなく、ただボケッと途方に暮れていた。

「良かったら一緒に入っていかない?」
「え?」

振り向くとそこには────……
564ほんわか名無しさん:03/04/03 07:29
#(・∀・)イイ!! 漏れも書きたい(;´Д`)#
565ほんわか名無しさん:03/04/03 09:55
いまだ多重債務者のF村君が内職で作った
100本近い傘をもって立っていた。

「1本500円なんだけどね。」
566ほんわか名無しさん:03/04/03 19:04
「F村君!!いつ帰って来たの?」
麻衣子は少し驚いた様子で尋ねた。
F村とは、宇宙ステーション"オマハ"で別れたきりになっていた。
「さっきボスに送ってもらって着いたばかりだよ。」
「そう言えば、サクちゃんは?一緒じゃないの?」
「宇宙海賊日本支部に新しい宇宙船を受取に行ってる。
明日には、俺も行くんだ。
そしたら、次いつ合えるか解んないから...
だからその前に...」
F村がいつになく真剣な表情になり
麻衣子を見つめた。
「その前に?」
麻衣子は普通ではない雰囲気を感じていた。

突然、F村は傘を放りだすと、雨の中に飛びだし麻衣子の方に向き直った。
「....麻衣子ちゃん好きだ〜!!」
567ほんわか名無しさん:03/04/04 02:06
・・・そして、静寂・・・

・・・つづく、沈黙・・・

・・・まるで、時が・・・

・・・そこだけ、止まったかのようであった・・・
568ほんわか名無しさん:03/04/04 05:34
麻衣子は口元に包み込むような笑みを浮かばせる。
「ありがとう・・・。」
しかし、瞳はどこか哀しげな、それでいて彼を憐れむような色を覗わせていた。
彼女は降りしきる雨にも関わらず、F村の前まで歩み寄る。

F村「まだ愛してるんだ・・・。」
麻衣子「でも、もうお別れなのね。」
F村「・・・。」
麻衣子「やっぱり、あなたの傘は受け取れない。」

F村に傘を突き出す。彼は黙ってそれを見つめる。
二人の空間を埋めるのは、ただただ冷たい雨だけだった。

麻衣子「あなたの涙を見るのは初めてね。」
F村「・・・。」
麻衣子「もう戻れないの。お互いにね。それにあなたには、何かがあるじゃない・・・。」
リリスを殺しかけた時のことを思い出し、F村はグッと拳を握り締める。
F村「・・・いつか・・・。」
麻衣子「・・・いつか?何?」
F村「何でも無いっ!元気でなッ!!」
麻衣子「ちょっと・・・!」

F村は麻衣子に背を向け、雨の中を駆け出した。
「いつかまた・・・。手繰り寄せてみせる・・・。」

麻衣子は傘を握ったまま、憂いげな眼差しで彼を一瞥すると
蒼く冷たい虚空を仰ぐ。肌の下にまで水が浸透するような寒気を感じた。
「さようなら。」
そうして彼女は傘を投げ出すと、雨に濡れたまま歩き出した。
569ほんわか名無しさん:03/04/05 04:06
第三十八章 〜Slow Movement〜
570ほんわか名無しさん:03/04/06 04:33
(・∀・)ほっしゅほっしゅ
571ほんわか名無しさん:03/04/07 04:07
岩山巌蔵は一人、校長室で思案を巡らせていた。
劉翻とシュトフ・アッセンブリーが同時に動き出した今、
宿敵、黒田重工鰍フ提案を受けるしか道は無かった。
黒田重工を裏切った後、身柄を引きうけてくれた先代学園長の肖像画を見上げる。
「彼女達に、過酷な試練を与えることをお許し下さい。」
そういって校長は、レトロなアンティークものの黒電話を耳に当てる。
「朝河 百合子に繋いでくれ。」
572ほんわか名無しさん:03/04/07 04:28
〜百合子のマンション 地下駐車場。

百合子は鍵をじゃらつかせて、足早に愛車67年型シェルビー・マスタング・GT-500に
歩み寄る。校長からの依頼は意外なものだった。もし本当なら、一刻を争うことになる。
キーを持つ手が少し震える。ふっとサイドウィンドウに人影が移る。彼女は吃驚して振り向いた。
「ピエール!驚かさないでよ!」
「おや、君らしくないな・・・。」
彼は片手で煙草を燻らせながら、百合子に近づく。
「な・・・何?」
「いつも囲っていた坊やはどうしたんだ?」
「彼ならやることがあるって出ていったわよ。知ってるくせに。」
彼女はそう言いながら後ろ手にドアを開け運転席に滑り込むと、乱暴にドアを閉めようとするが、
ピエールは手でそれを遮り、囁いた。
「君が会社を憎んでいることは分かっている。だが、若社長さんはあんたのことを心配して俺をつけたんだぜ?」
「どういうこと?」
次の瞬間、キキィッというタイヤのすれる音と共に、
2台の黒ベンツがシェルビー・マスタング目掛けて疾走してきた。
「連中のお出ましだ。俺を連れて行くか、死ぬかだな。」
573ほんわか名無しさん:03/04/07 19:13
ピエールはベンツの黒塗りの窓から
銃口が覗いているのを確認すると、
百合子の返事を待たずシェルビー・マスタングの助手席に
飛乗った。と同時にシェルビー・マスタングがタイヤを軋らせ急発進する。
地下駐車場にゴムの焼ける臭いが充満した。
「さて、どうやって振りきる?」
ピエールはどこか楽しそうに百合子に声を掛ける。
「貴方は私の護衛に来たんでしょう!何とかしなさいよ!!」
必死の形相でシェルビー・マスタングを操りながら百合子は叫んだ。
ピエールはやれやれと言った表情で
懐から手榴弾を取出しピンを抜くとタイミングよく窓から放り投げた。
574ほんわか名無しさん:03/04/08 05:33
手榴弾は先頭を走っていた黒ベンツの下に滑り込み爆発。
車体は高速でサイドに空中回転しながら、フロントから駐車場の支柱に激突し爆炎を上げた。

百合子「やった!w」

だがすぐに後続の一台が煙を割って迫ってくる。
百合子「しつっこいわね!」
ピエール「気を抜くな。前からも三台来るぞ・・・。」
百合子「うっそ!!」

遥か前方、駐車場の出入り口から三台の黒ベンツが突っ込んで来た。
車間距離がみるみる縮まっていく。

ピエール「腕の見せ所だな。」
百合子「舐めんじゃないわよぉっ!」

百合子は突然サイドブレーキを引き上げると、思いっきりハンドルの右に切る。
シェルビー・マスタングはグルリと横に回転、ウィンドウからピエールが銃弾を放った。
575ほんわか名無しさん:03/04/08 12:25
ピエールの放った銃弾は見事に後方のベンツの左前輪を打ち抜いた。
百合子のシェルビー・マスタングはさらに回転続け
200°程回転していったん止った。
ベンツはパンクにより左によれていた。
百合子はベンツと駐車してあったセルシオの
僅かな隙間めがけ、アクセルを踏みこむ。

シェルビー・マスタングが左フロントでベンツの右フロントを
押しのけ、その隙間を走り抜けた。

「あいつら、劉翻とシュトフ・アッセンブリーどっちなの?」
「さぁ?手口からするとシュトフ・アッセンブリーっぽいけどな。」
「そうね。後で修理代の請求書送りつけてやるわ!!」
576ほんわか名無しさん:03/04/08 13:27
#キ/タ━━━→(゚∀゚)←━━━!
577ほんわか名無しさん:03/04/08 16:03
第三十九章 〜Different Gear〜
578ほんわか名無しさん:03/04/08 16:51
〜ワールド・トレードセンター "クリプト"(地下機密区画)会議室〜


黒田獣騎は暗く広々とした会議室の中心に立っていた。
ひんやりとした黒い大理石で覆われた壁に内臓された四方のモニターには、
各国の機密情報機関が裏から操作、収拾した世界情勢を示すあらゆるデータが目まぐるしく動いている。
モニターの一つにはどこから写したのだろうか、銀河系の一部や異形の宇宙ステーション、
近隣の惑星との位置関係も表示されている。

「で、"キャリア"は確保できそうなのかね?」

七老会の最長老が口を開く。

獣騎「はい。すぐにでも。」
「劉翻の企みは知ったことではないが、そちらは処理できるんだろうね?」
獣騎「ええ、問題ありません。今のところ獣装幹部達が上手くあしらっています。一つ気になることが・・・」
「なんだね?」
獣騎「シュトフ・アッセンブリーを焚きつけたのは七老会のどなたかでは?」

会議室内がザワザワとどよめいた。
579ほんわか名無しさん:03/04/08 17:20
七老会の最若手が、辺りの騒ぎを一閃するかの如く先早に審問を浴びせた。

「獣騎くん、黒田重工鰍ェここまで成長するのに我々がどれだけ惜しみない支援をしたと思っているのかね?」
「何にせよ、シュトフ・アッセンブリーは脅威だ。数百年続く伝統を礎に、世界各国に網の目を巡らしておる。」
「劉翻も既に結託している可能性も否めない。」
「統治者は未来を見通す眼を持っているとか・・・。」

会議室内を再び喧騒が飛び交った。

獣騎「彼らを率いてるのは、イルミナティを滅ぼした者の末裔とも言われていますね?」

「君はまだ知らなくていいこともあるのだよ獣騎くん、宜しい下がり給え。一刻も早く"キャリア"を捕えることだ。」

会議室を後にした獣騎の背中を、秘書のマリアが追いかけた。

マリア「如何でした?」
獣騎「くだらん道化芝居だ。あの老いぼれどもは私腹を肥やすことしか頭にない。」
だが、俺は違う・・・。獣騎はギリッと歯を食いしばり軋ませる。
マリア「予想通り、裏で全てを操っている者がいるようですわね。」
獣騎「ふん、よかろう、今しばらくは芝居の一役を演じてやろう。
    だがいずれ運命を欺いて、この腐りきった世界を・・・。」

彼の鬼気迫るオーラに、マリアは一抹の不安を胸に閉ざした。
580ほんわか名無しさん:03/04/09 12:43
・・・警察署・・・

「おい、”ジャンパー”例の3人組はどうしてる?」
谷口警部が龍柄のブルゾンの若い刑事に声を掛けた。
「あいかわらずすっ。もう3週間すよ。帰っていいってんのに...
今じゃすっかり留置所の顔っすよ。」”ジャンパー”こと竜村が答える。
「そうか...あいつら一体何者なんだ...」
「あれ?谷さん、なんかあったんすか?」
谷口警部のいつになく疲れた表情に竜村が心配そうに尋ねた。
「訳が解らんのだ。さっき警視総監が、その3人組を釈放しろと
俺の携帯に電話してきたんだ。」
「えぇ!!谷さん警視総監と知合いなんすか?」
「あったこともねーよ。」
「それ本当に警視総監だったんすか?」
「ああ、今所長に確認してきた所だ。」
「えぇ!...あいつらなにもんなんっすか?」
581修正です!!:03/04/09 13:18
「あいかわらずすっ。もう3週間すよ。帰っていいってんのに...
            ↓
「あいかわらずすっ。もう3週間すよ。学校名言ったら帰っていいってんのに...
「あいつらはなあ・・・大きな声じゃあいえないが・・」
「はい」滝口は少し緊張しているらしい。
「ちょっと耳かせ・・・」
「はい」
そうして耳を近づける二人
谷口警部が滝口の耳にそっとささやく
「あいつらは・・・」
583ほんわか名無しさん:03/04/09 16:58
「ワーッ!!」谷口の大声が署内に響いた。
「なにするんすか!怒るっすよ!」
竜村は耳を押え、泣きそうな表情で谷口に訴える。
「バーカ、だからお前はいつまで経ってもだめなんだよ。」
竜村の頭を一発叩きながら、谷口は続ける。
「いいか、俺があいつらの正体を知ってる訳ねーじゃねーか。
3週間掛って情報らしい情報は何一つ得られてねーんだぞ。」
「...」

「よう、谷さんやってるね。」
二人の後ろを通り過ぎながら年配の刑事が声を掛ける。
「あっ、お疲れ様です部長。この馬鹿に何とか言ってやってくださいよ。」
「まぁまぁ、それはそうと例のコスプレ屋の被害届取下げられたぜ。」
「本当ですか!」
「あぁ、話は聞かせてもらったんだが、これで例の3人組を拘留する
理由がなくなったって訳だな。」
584ほんわか名無しさん:03/04/10 01:24
「所詮コスプレ衣装屋荒らしじゃな、というのが上の言い分だけどな。」
「それって...」
「それ以上聞くと、おまえが拘置所行きだよ。
 いや、拘置所行きなら良いほうかもな・・・」
585ほんわか名無しさん:03/04/10 10:20
「ったく、先輩方だらしないっすねぇ!俺許せないんすよ。そういう権力を傘にする連中ってー!」
竜村は突然強気に転じ立ちあがると、谷口を見下ろして言い放った。

「見ててください。俺があいつらの正体、暴いてやりますから!」
586ほんわか名無しさん:03/04/10 10:47
第四十章 〜Song to the Siren〜
587ほんわか名無しさん:03/04/10 22:26
ももはイヴに体を乗っ取られたあの事件以来
言葉を失ってしまっていた。
喋れなくなってしまったのだ。

しかし、言葉を失った代りに、新たな能力を得ていた。
未来や過去を見る力がそれだ。
まだ、ほんの30秒から1分程度先もしくは前しか見ることは出来ないが、
訓練次第ではもっと未来や過去を見ることもできそうだ。

始めの頃は、その力をコントロールできず
突然見える、今と違う映像に戸惑い混乱もしたが
最近やっとコントロールすることが出来るようになっていた。

おそらく、イヴの力の一部を”スーツ”と”体”が記憶した為に
こんな力が使えるようになったのではないのだろうか。
ももは漠然とそう考えていた。
588ほんわか名無しさん:03/04/11 05:06
さくらとももは親元を離れて寮生活を始めていた。
妹が言葉を失ったことに責任を感じたさくらは、この生活が何かの転機になればと、
ももの暮らす環境を変えることにしたのだったが、もちろん、自己嫌悪からくる両親との不和も理由の一つだった。
生い立ちと運命、そして因縁が、家族の絆に深い亀裂を刻んでしまったのだ。


ももはただボーッと、古い琥珀色に染まったお伽絵本を見つめていた。

さくら「もも?何をみてるの?」
そっと妹の背中越しに尋ねるが、返事は返ってこない。
瞳からは魂が抜け落ちたようだった。
さくらはグッと悲しい衝動をこらえると、妹の顔を覗きこむ。何かを伝えたそうな目だ。
ももの指差した絵に目を落す。

さくら「これ?」
もも「……。」コクッと頷く。

そこには耽美な容姿と歌声で、船乗り達を暗礁へと導く精霊が描かれていた。
589海王星 ◆m9g/KftE.w :03/04/12 09:10
記念保守パピポ

|∀・)サイレン?
590ほんわか名無しさん:03/04/12 09:26
ホシュ
591ほんわか名無しさん:03/04/13 04:12
〜放課後、麻衣子達の教室 PM05:37

ここのところ雨ばかり続いていた。リリスは教室に独り、机に顔を寝かせて、
窓を伝う雨雫と、その彼方に薄暗く輝くエメラルドの空、威圧するような黒い雲の塊に視線を放り投げていた。
コンコン・・・。
ノック音に気付き入り口の方を見遣ると、そこにはあの姉妹が少し物怖じした気配で佇んでいた。

さくら「あの?リリス・・・さん。ですよね。麻衣子さんからここにいると聞いたので・・・。」
リリス「ええ。どうしたの?」
彼女は姉妹にニコッと微笑みかけるが、流石に妹の方は、彼女のイヴと寸分違わぬ容貌に少し怯えている様子だった。
雨音が一層強くなる。

さくら「ももが・・妹がこれをあなたに見せたいって・・・。」
そう言って彼女は、あの精霊が描かれた古いお伽絵本をリリスに差し出した。
リリス「・・・そんな!」
途端にリリスが何かに驚いた様子で息を殺した。そしてやおら眉を引き攣らせると、手で口元を覆う。

さくら「?!リリスさん?」
もも「・・・。」

呆気にとられていたのも束の間、彼女は小さく嗚咽を漏らしながらすすり泣きはじめた。

リリス「これ・・・これを何処で?」
────────────
|∀・)<ここまで読んだ
────────────
593ほんわか名無しさん:03/04/14 18:43
「実家から寮に引越すときの荷物に、何時の間にか紛れてたの。
もちろん私やももが買った物じゃないわ。」
さくらがリリスにハンカチを差出ながら答える。
リリスは首を振ってそれを制すと、ポケットから自分のハンカチを取出し
涙を拭き、力なく微笑んだ。

「貴女達、シレーヌの話はご存知?」

リリスが受取った古いお伽絵本をめくりながら二人に尋ねる。

セイレーン、フランスではシレーヌと呼ばれる精霊の話を
リリスは語り始める。

「彼女達の話は”歌で船を難破させる”部分がいちばん有名だけど、他の話もあるのよ。」
「確か、純潔を守る事に固執したために水鳥に変えられてしまった話もあったわね。」
リリスにさくらが答える。
「そう、そしてその翼も歌の女神にもぎ取られ、最後はオルフェウスに石に...」
話しながら最後のページをめくったリリスの顔が突然驚愕の表情に変る。
リリスの目に再び涙が溢れ出す。

「...この本は、イヴがレイジーバツースのリーダーに選ばれた時に
私達がお祝いに贈ったものよ。」

最後のページにフランス語でお祝いの言葉と、
何人かのサインにが記されていた。
594ほんわか名無しさん:03/04/15 05:34
彼女はふと、裏表紙の隅の方に掠れた文字を見つける。
この字には見覚えがあった。懐かしい、それでいて愛しく温かい感情が胸を満たす。
文字はこうあった。
「Did I dream you dreamed about me?」

さくら「それは?」
リリス「え?あ、うん。これはね。親しい人が良く歌ってくれた歌の歌詞なの。」
さくら「へぇー!どんな歌なんですか?」

リリスはそっと目を閉じて呼吸を整えると、囁くように透明な歌声を響かせた。

"わたしの夢を見るあなたを、夢に見ることはできますか?
それとも大海原を渡るわたしのそばに あなたはずっと寄り添っていたのかしら?

愚かな私の船は学んだの あなたの座す岩の上で 愛は壊れて失われてしまった
「明日また戻ってきて」そう歌ったのに

形の無い海に漂って
私に出来たことはただ微笑むことだけ
だけどあなたの歌う瞳と 手招きが
あなたの瞳の中に描かれた愛に導くまでは

私の歌が聞こえる?
「泳いで来て、私の元に泳いできて。そしてこの胸に抱かせて欲しい」
「私はここよ。ここにいるの。あなたを抱き寄せたくて待っている」"


リリスはグッと絵本を胸に抱き寄せると、微笑とも切なげとも取れる表情で
瞼を閉じると、一筋の涙を頬に伝わせた。

「えぇ。。ずっと夢見ていたわ。。。」
595ほんわか名無しさん:03/04/15 07:40
第四十一章 "chiaroscuro incunabula"
596ほんわか名無しさん:03/04/16 06:50
「イヴとわたしは双子の姉妹だったの。」

日も暮れかけ、電灯もつけない暗い教室。
相変わらず、不規則に揺らぐ雨音がリズムを刻んでいる。
麻衣子たちはリリスを囲むようにして彼女の話に耳を傾けていた。

「辛いことだったら、無理して話すこと無いのよ?」
麻衣子はそう言ったが、彼女自身、真実を知るのが怖かった。

「……いいえ。これはきっと私達の隠された意思で、イヴの願いでもあるの。」
そう言ってリリスはももに優しい視線を送る。
ももがどうやってこの絵本を手にしたかは謎だったが、
彼女にコピーされた「イヴの記憶」が何かを伝えたがっていることは確かだった。

「"イルミナティ"が何者だったのか。それは自分たちにもわからない。
 "深遠から来たもの"の一派で、大昔に北方の民族とともに大陸に下ったとされているわ。」

「深遠?」
「北極圏、クレーターを中心に円形に広がる巨大な海溝が故郷だという説もあるわ…。
 イヴと私が生まれたのは紀元前1320年のアイトリアの都市オルコメノス。
 イルミナティの司祭の元に預けられたの。」
597ほんわか名無しさん:03/04/17 09:28
「ちょっと待って、紀元前1320年ってどう言う事よ?
そんな大昔から貴女達は生きてるって言うの?
それに...」
矢継早に質問を繰りだす伶佳を制して、リリスが続ける。
「もちろん、死なないわけじゃないし、歳だってとるわ。
そうね...貴女達、リインカネイションって言葉を聞いた事はない?」
「産まれ変りって事?」
「そう、私たち”イルミナテー”はその秘儀を”雄牛の神”に施された民なの。」
「雄牛の神?」
「古代ギリシャでは”ゼウス”、日本では”素戔鳴”が有名ね。
偶像崇拝を禁じているキリスト教徒が神の代りに拝んだのも”黄金の雄牛”よ。」
「モーゼの十戒ね」
「えぇ、そして”サターン”もそうよ。」
598山崎渉:03/04/17 13:40
(^^)
599ほんわか名無しさん:03/04/18 12:52
加奈は瞳を輝かせている。
「じゃぁ、聖書のアレは?アダムとイヴの話とか。」
「あくまで素材になったに過ぎないわ。
 イルミナティは歴史の表、裏舞台で様々な伝説のソースとなってきたけど、
 特に双子の私達には特別な力があったから、世界各地の伝承の元にもなったわ。」

麻衣子は怪訝な表情でリリスを見つめている。言いようの無い不安で胸が引き裂かれるようだった。
その心中を察してか、リリスはふっと目を閉じて優しい語り口に置き換える。

「安心して。転生するたびに私達は"別人"になるの。もちろん、それ以前の記憶は情報として
 与えられるわ。ただ、それも人間と同じく曖昧だったり、薄くなったり。この時代の私は、私しかいない。」
「でも、人間じゃないの?」
「わからないわ。イルミナティそのものは魔力の強い人種で、ベースは人間と変わらないわ。
 だけどイヴとわたしは……。」
「特別だった?」杞憂は自分の境遇を彼女に重ねて訊ねた。

リリスは込み上げるものをこらえるように一言一言を押し出す。

「私達にあったのは、運命を操る力。アーカイブの書き換え能力だったの。」
600ほんわか名無しさん:03/04/18 14:21
レイコはレイジィバツースのデータ報告に目を通しながら、
北棟と学園病棟を繋ぐ広大な渡り廊下を歩いていた。

レイコ「干渉率、変換率ともに信じられないくらい延び始めてるわね・・・。
    特に伶佳さんの進歩は目覚しいものがあるわ。それに比べて麻衣子ちゃんは・・・。」

突然、黒服の男がレイコの前に立ちはだかった。

レイコ「何でしょうか?」
劉翻「これは失礼。噂よりもずっとお美しかったもので・・・。」
レイコ(ハァ?)
劉翻「あなたの上司と古い付き合いのものでしてね。」
そういって劉翻は数枚の写真をレイコに差し出した。

レイコ「・・・これは!?」
写真には密会中の校長と黒田獣騎の姿が納められている。

レイコ「どういうこと?何かの罠なんでしょ?」
劉翻「まぁ、誰を信じるかはあなたの勝手ですが・・・。」

劉翻はふっと煙草を投げ捨て、すれ違いざまに耳元に囁く。

劉翻「味方を過信しないことです。あの娘たちを守りたいんならね。」
601ほんわか名無しさん:03/04/18 16:35
「ちょっと待ちなさい!」レイコの怒声がとぶ。
劉翻が先程までとは明かに違った気を纏い
ゆっくりと振り返えりレイコと対峙する。

「煙草の吸殻!」レイコが指差した先には
劉翻の投げ捨てた煙草が
雨に打たれながらも、まだ紫煙を上げていた。
「まったく、マナーがなってないんだから。
こんな事だから、喫煙者の肩身が狭くなるのよ。」
「これは失礼」劉翻は急に笑顔を浮べると
煙草に歩み寄り、それをハンカチにくるみ
黒服のポケットにしまいこむと
「ますます、貴女の事が気に入ってしまいました。
それでは、また近いうちにお会いしましょう。」
と言残し、雨の中に消えて行った。

「フー」
レイコはため息をつくと、天井を支える柱にもたれかかり
劉翻から渡された写真をに目を落した。
602ほんわか名無しさん:03/04/19 09:59
☆^( ^ー゚)<ホシュ
603山崎渉:03/04/20 01:43
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
第42章 >>One Step Too Far
605ほんわか名無しさん:03/04/20 06:51
"Did I dream you dreamed about me?"

……わたしの夢を見ているあなたを 夢見させてくれますか?

誓い合った絆も 永遠の襞に絡め取られた愛のしじまも
時の鎖に引きずられて 運命という名の縁に螺旋を描いて砕けていく
願わくばもう一度 同じ夢を見させて欲しい。
わたしの意識を未来へと押し出すものから …生の幻想から解き放たれて

踏み出すには遠過ぎたあの一歩も 今はこの瞳の中に掴まえていられるから
だからもう一度 もう一度だけ あの頃を生きることが出来たら
わたしをあなたの夢の中に あなたをわたしの夢の中に
過去のどの瞬間も 永遠に燃えて輝いている …わたしが全てを捕える


……"レイジィバツース"はわたしのエゴだったのかもしれない。
606ほんわか名無しさん:03/04/21 12:20
子子「ねじーヽ(´ー`)ノシャバの空気が美味いねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「くくく・・・」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

・・・飽く迄もマイペースなアレらは、場の空気をプチ壊すと
又、スーツを求め、町の雑踏に消え行くのであった

その後をつける男が、彼女等の姿を見失わないよう意図しながら・・・
607ほんわか名無しさん:03/04/21 20:58
子子達はスーツを求めてネオンが灯り始めた町を彷徨っていた。

その後をしっかり尾行しているはずの竜村は、
呼び込みに捕まっていた。
「お兄さん!どう遊んでいこうよ?今なら、飛切可愛い娘付けるからさ〜!」
呼び込みの男は竜村の手首を掴んで話さない。
「は〜?誰に声掛けてんだこら!ん?みねー顔だな。新入りか?」
「なっなんだてめー!どこの者だ!」
強引に手首を振り解かれた呼びこみの男が身構える。
竜村は通称”ジャンパー”と呼ばれるほどブルゾンが好きで、
季節に関係なく着用している。
その容姿とその格好、そして刑事ゆえの恐い雰囲気は取り様によっては
その筋の者に見えなくもない。
「ここの者だよ」ポケットから桜の大門入りの手帳を取出すと、
「あんまり、無茶な呼び込みやってっとぶち込むぞ!」
「す,すいませんでした」
竜村は頭を下げている呼び込みを一瞥し舌打をすると
早くも見失った”アレン”が消えた方へ走りだした。

呼び込みの男が携帯を取出し、どこかへ電話し始めた。
「上手く行きました。」
「ありがとうねじーヽ(´ー`)ノ」
「新しいスーツは、指示通り学園に届けてあります」
608ほんわか名無しさん:03/04/22 02:39
〜学園生徒会室〜

「ったく、だれよこんなダサいスーツ取り寄せたのは・・・。」
霧崎伶佳が積み上げられた梱包を尻目に溜息混じりにボヤく。
「宛名がアレトリオになってるにゃ&heatrs;」
猫耳がチャームポイントの書記、楠くるみがワープロを叩きながら答えた。
「・・・はぁ、あの名物漫才姉妹ね。経費が生徒会宛てになってるけど間違いじゃないの?」
「ん〜、それで間違いないようです。ただ、調べると裏がありそうですね。
 一度”セフェロンアロー”のチェックを通した痕跡が書類上に見受けられます。」
会計の綾音が眼鏡を光らせて言った。
「セフェロンアロー・・・?!どうしてレイジィバツースの管理組織が関わってるのよ。」

「そういえば子子たち、最近見かけなかったにゃねー・・・。」
「また何か問題でも起こしたのかしら?」
綾音がやれやれといった感じで言った。
「そういえば警察から電話あったわよ。竜村とかいう刑事から」
「まじで!?」
609ほんわか名無しさん:03/04/23 17:54
保守〜o(≧∇≦)o
610ほんわか名無しさん:03/04/23 17:59
"コンコン”
誰かが扉をノックする。
「どうぞ」伶佳が答える。
扉を開けて入って来たのは
”アリー・メル・リン”のアレントリオだった。
相変わらずスーツ着用である。
「アレントリオ!なっ何しに...」
「新しいスーツが届いてるはずだが?」
「おぉ、これじゃぞ姉者」
「ヤ〜ン、かっこいい☆」
「それは、貴女達宛てに届けられた物じゃないわよ。」
「解ってますが何か?」
「で、どうする姉者」
「どうするの〜☆」
「命令通りだが、何か?」
「やはりそうだろうな、姉者」
「仕方ないか☆」
そう言うと三人はそれぞれ自分のスーツから
チップを外すと、新しいスーツに取りつけた。
「なっ、なにこれって”レイジースーツ”なの?」
「ちょっと違いますが、何か?」
「あまり深入りしないほうがいいぞ、なぁ姉者」
「そうそう☆」
そう言い残すと、三人は部屋を出て行った。
数分後”名物漫才姉妹”が部屋を訪れた。
611ほんわか名無しさん:03/04/24 18:43
鬱蒼とした山奥の森の中に銀之助はいた。
この山に篭って一体何日がたったのか、自分でもはっきりしない。
髭は伸び、服も汚れているが不思議と汚い感じはない。
剣が風を切る音だけが響く。
612ほんわか名無しさん:03/04/25 06:32
目にはまた包帯を巻いていた。
彼のとっては視力を遮った方が剣が冴えるようだった。

銀之助は怒涛の飛沫をあげる滝壷に入ると、
長剣レイヴンを冷たい清流に沈め、呼吸を整えた。
次の瞬間、刃を翻すと閃光の如く上方に剣を振り上げる。
大滝は上流に向かって真っ二つに割れた。

頭上の木の上からパチパチと拍手が聞こえる。

優子「へぇ〜、あんたもやるじゃない。」
銀之助「お前か・・・久しいな。」
優子はさっと地面に降り立つと、銀之助に上着を投げつける。

優子「さっさと着なさいよ。風邪ひくわよ。」
銀之助「何のようだ?」
優子「そろそろ動き出すわよ・・・運命が・・・。」
銀之助「あぁ、薄々感づいていたが・・・。まだ・・・。」
優子「'飛龍'をものに出来ない?」
銀之助「レイジィスーツとやらに対抗できるのはあの技だけだからな。」
優子「イヴを・・・昔の仲間を手にかけなきゃならないなんてね。。」

優子は寂しげに視線をそらした。
613ほんわか名無しさん:03/04/25 15:33
〜生徒会室

子子「ひどいねじ〜ヽ(TーT)ノ」
蝓子「私達のスーツ…」
藻子「誰か仕組んでるほしゅー!」

アレトリオがわんわん泣いている。

くるみ「可哀想にゃ。。会長も慰めてあげるにゃー」
伶佳「あんた達いじめられてるんじゃないの?」
子子「ねじー。゚゚(´□`。)°゚。」
綾音「会長、フォローになってません……。」

コンコン…生徒会室のドアがガラリと開く。

そこにも三人組みの少女。そう、生徒会の対抗勢力、
風紀委員長、神薙いずな率いる美少女風紀保守戦隊「トリニティ」だ!
614ほんわか名無しさん:03/04/27 00:15
ホシュ!ヽ(`Д´)ノ
615ほんわか名無しさん:03/04/28 12:46
「こちらに”スーツ”が届いてません事?」
いずながおっとりした口調で尋ねる。
「盗まれたねじー。゚゚(´□`。)°゚。」
「どう言うことかしら?」
子子達は事情を説明した。

「まー、どう致しましょう。」
「取り返して欲しいねじ゚゚(´□`。)°゚。」
「実は盗まれたスーツは私共のものですのよ」
「ねじ゚゚(´□`。)°゚?」
「あのですね、配達の係が届け先を間違ったらしく
私共のスーツが此方へ、そして貴女方のスーツが
私共の元へ届けられたらしいのです。」
「えっ!じゃあこの”漫才姉妹”のスーツは無事なの?」
沈黙を守っていた伶佳が口を開く。
「はい。ここに」
「げっ!!」
差し出された”スーツ”は持去られた物より
数倍、”ダサイ”スーツだった。
616ほんわか名無しさん:03/04/29 04:34
生徒会室を出た後、いずな達は廊下を歩いていた。

取り巻きA「あんなことをして大丈夫でしょうか?いずな様…。」
取り巻きB「もし偽者だということと細工がバレたら…。」
いずな「ふっ…。心配には及ばないわ。見てなさい。レイジィバツースの覇権を握るのは私達風紀委員よ!」

もう日は沈み、校舎全体が夕闇に包まれ始めていた。
節電のため照明を落してある区画も多く、少し不気味な様相を呈している。

いずな「すっかり遅くなっちゃったわね。困るわ。舞踊の稽古があるのに…。」
取り巻きA「いずな様、最近出るらしいんですよ…」
いずな「出るって?な、何がよ…。」
取り巻きB「お化けですわ。丁度この区画に……。」

取り巻きBが暗い書庫区画に指をさす。

いずな「ぃっ…や、やめなさいよ!そんな話はするなって言ったでしょうがぁ!」
取り巻きA「今、何か横切りませんでした?」
いずな「ひっ……」

いずなはガクガク足が震えている。
617ほんわか名無しさん:03/04/29 14:53
第43章 "Touch the Sky!"
618ほんわか名無しさん:03/04/29 18:00
背後に冷気を感じ取ったいずなはハッと後ろを振り返る。
青白い光に包まれた女性の幽霊がじ────っとこちらを見ていた。

幽霊「ねぇ、何して遊んどんのー?(ニコニコ」
いずな「きゃっきゃぁぁ!!Σ(@▽@」
幽霊「あっ、逃げんといてーなぁー!」

幽霊は三人の前方に回りこみ、微笑みかける。
取り巻き達は失神している。

いずな(く・・・くそー。こんな時に役に立たないんだからー)
彼女は思いきって幽霊にタンカを切った。

「なっ、何の用ですの?」
「ウチ寂しいだけなんやー。遊んでーな。」
「騙されないわよ。何ならここで悪霊退治でも如何かしら?」

いずなは武器であるオレンジ色の光に包まれた鞭を構えた。

「わっ!凄いやん!あんたもレイジィバツースなんやなぁ!聞きたいことあるんやけどー。」
「(何か調子狂うわねコイツ・・・)な、何よ・・・」
「サイレンの絵本を知らんかー?古いもんやけど、思い出の品なんやー。のーなってしまって。」
619ほんわか名無しさん:03/04/30 01:50
「ふーん。そーなの?で、あなた名前はなんていいますの?」
いずなは怪訝そうに、しかしやんわりと幽霊に尋ねた。
「ウチ?ウチは雨音雫ちゅーもんや。よろしゅうな。」

いずなはエネルギー状の鞭「カラミティ・ロッド」をしまい、腕を組みながら思案を巡らせた。

「あなたもレイジィバツースだったの?」
「そーや、記念すべき初期メンバーやったんやけどなぁ。」
「敵にでもやられましたの?」
「まぁそんなもんや。アハハ☆」
「…。」
「そや!絵本探してきてくれたらいいこと教えたるで!」

幽霊は満面の笑みを浮かべる。いずなは屈託のない透き通った微笑みに見蕩れながら、
こんな子が不遇の死を遂げたことに、ズキンと胸の痛みを覚えた。

「何よ。何か役に立つことなのかしら?」
「実はな、この学園には隠された部屋があってなー。」
「隠された部屋?」
「鏡の間っちゅーんやけど、あんたやったら今の数倍強うなれるで。素質あるわー」
「ちょっと!もう少し詳しく聞かせてもらえる?!」
620ほんわか名無しさん:03/04/30 12:16
"ジャンパー刑事"こと竜村は、花束を片手にとある病室の手前に立っていた。
周囲では医師や看護師達がひっきりなしに行き来している。
このドアをくぐるのはいつも勇気が必要だった。
彼は深呼吸をして病室のドアを開け、中に進んだ。

竜村「よぉ、また来たぜ!」

……しかし返事は無い。
室内に響くのはシュコーシュコーという生命維持装置の乾いた機械音だけだった。

ベッドには最愛の恋人がチューブを咥えながら、しかし安らかな微笑みを浮かべて眠りについている。

「なぁ、今でかいヤマ追ってるんだぜ。解決したら出世間違い無し。
 美味しいもん食わせてやるから、早く目覚めてくれよな。」

竜村は他愛のない話を延々と繰り返す。時々虚しさに駆られることも無くは無いが、
彼女の口元が、いつも微笑み返してくれているような錯覚に救われていた。
窓の外には、神々しい光を背負った雲と青空が遥か彼方まで広がっている。

偶然だろうか、次の瞬間、ラジオから彼女が好きだった曲が流れ始めた。

……"Touch the Sky"
621ほんわか名無しさん:03/05/01 06:25
〜学園屋上

リリスは目を瞑り、大空に両手を翳していた。

「何してるの?」背後から麻衣子が尋ねる。
「こうしてるとね。風の声が聞こえるのよ。」
「ふーん。イルミナティって不思議な力を持ってるのね。」

リリスはクスッと笑うと、麻衣子を振り返って言った。

「違うわ。誰にでも出来ることよ。」
「わたしも?」
「その気になって、心を開けばいいだけ。」
「こう?」
「うん。こうやって大気の流れを想い浮かべるの。」

朝独特の陽気と肌寒さを覚える爽やかな風が一陣、彼女達の間を吹き抜けた。
622ほんわか名無しさん:03/05/01 08:48
麻衣子「…なんかスカラー波がキャッチ出来そうね。」
リリス「……。」
623ほんわか名無しさん:03/05/02 00:42
冷気が駆け巡る蒼空の彼方に、青い月が巨大で幽玄な孤を描いていた。
月に垂直に交わる幾何学的な模様が光を奇妙に乱反射させている。
昔レイジィバツースによって破壊されたオービット・リングの破片だ。
屋上から見渡す限りの緑の地平線と、青い海のようなソーラープラント。
その彼方では青と赤に光り輝く二つの球体、──磁場発電機がゆったりと交わりながら回転を続けている。

「きもち────ぃ」静寂を破ったのはリリスの方だった。
「そうね。この場所が気に入った?」麻衣子は優しく微笑み返すと、ごろんと寝転ぶ。
「ええ。」
彼女はずっと遠くに視線を投げやると、息を大きく吸った。
「こういう時間と空間を、永遠の箱庭に出来たらな────。」
「そうだねー。思い出すだけで、あの時、あの瞬間に戻れたらって想うよ。幻でいいからさ。」
リリスは刹那、寂しげな表情を浮かべると、俯きながら、そして微笑を浮かべて呟いた。
「それって時には、残酷なくらい辛いことなのよ。」
「?」
624cut ◆EghiGOqNu. :03/05/02 01:17
第四十四章 〜狐狩り〜
625ほんわか名無しさん:03/05/02 03:05
〜レイジィバツース司令室。

レイコ「さて、今日は極めて重要な作戦会議を行います。」
麻衣子「みんなも知ってる通り、最近学園内で隊員達が次々と襲われているの。」

レイコはスライドに被害状況と事件現場の写真を投射する。
現場には惨状を物語る物の破片や被害者の血痕が散らばっている。
隊員達は一様に目を逸らそうとした。

レイコ「手口から見て相手は単独犯、凶器は刃物ね。犯行時間はバラバラ。単独行動時は要注意よ。」
レイコが更に続ける。
「・・・目撃者はいないわ。被害者の証言を聞く限りでは、殺す意図は無いみたい。
 ただ、犯人は女性の声でこう言ってさるそうよ。」

事件現場の壁に血文字でこうあった。

・・・『狐狩り』
626ほんわか名無しさん:03/05/02 03:48
# そろそろ進行するのかな(・∀・*)ドキドキ
627ほんわか名無しさん:03/05/02 03:49
# すみませんageちゃいました(;´Д`)
628 ◆xNtCVCNeMw :03/05/02 04:48
>>627
折り返しも過ぎましたし、ここら辺でちょっとトーンを変えてみたらどーかなーと。
629Dreaming Of You:03/05/02 04:57
?????: ?? ???? ???? ?? ??? ??? ?? ?? ?? ????? ? ??? ??

?? ?? ????? ???? ??? ????? ??
630ほんわか名無しさん:03/05/02 05:53
会議が終わり、レイジィバツース達は各々の教室へと戻る途中だ。
先を急ぐ麻衣子の制服の裾を、リリスがキュッと掴む。

「ん?なぁに?」
リリスは上目遣いにボソっと呟く
「…ねぇ、今、いいかな?」
麻衣子は少し顔を赤らめた。
「い、今?…あ、そろそろだったもんね。いいよ。人のいないところで…」

「人のいないところでなぁによー?!コソコソとー!!」
後ろからアイリスがはしゃぎながら二人の首に飛びつく。
「こーら、ほっときなさいよ。」伶佳がコツンとアイリスの頭を小突いた。
「いったぁー!」
「何のお話してたの?。」杞憂が寂しげに声をかける。
「う、うん…。私達、ちょっと用事あるからまたね!」

麻衣子とリリスはそそくさと寮の方向へと向かった。
残された三人は心配げに二人の背中を見送った。
杞憂は胸にチクチクと痛みを覚える。

「麻衣子ちゃん……。」

その様子を覗う影……神薙いずなが二人の後を追う。

「サイレンの絵本とやらは彼女が持ってるのね。」
631ほんわか名無しさん:03/05/02 06:24
薄暗いチャペルの倉庫は絶好の隠れ家だった。
小さな窓から陽光が埃を反射してビームを描いている。
リリスと知り合うまでは杞憂と良くここで遊んだものだ。

麻衣子はブラウスの襟もとをほぐし、
透き通るような白い首元を露わにするときつく目を閉じた。
「…いいよ。」
「うん。」
背後からリリスが麻衣子の首筋に牙を突きたて、鮮血を吸い取り始める。
「あっ…。」
拳を握り締めて我を保とうとするが、抵抗虚しく、意識が何かに引きずられていく。
麻衣子の瞳が恍惚に濁りはじめた瞬間、彼女の体はプルッと小刻みに震えた。
「あ、ちょっと…。もういい?」
「う、うん、いつもごめんね。ありがとう……。」
リリスは惚けたような表情でゆっくりと粘膜を引きながら首筋から遠ざかる。
吸血痕はすぐに消えた。

物陰ではいずなが足を震わせて戦慄していた。
「なっ、なんですの!?彼女達は…。」
632ほんわか名無しさん:03/05/02 16:28
一方「ジャンパー刑事」こと竜村は・・・
633ほんわか名無しさん:03/05/03 00:34
復旧記念ポコペン

>>631萌えますた。
復旧おめー。
更新いつも楽しみにしています。職人さんガンバレ(・∀・)!
635ほんわか名無しさん:03/05/03 02:31
竜村は車内で幕の内弁当を頬張って学園を見張っていた。
636ほんわか名無しさん:03/05/03 02:33
見守る黒い影
637ほんわか名無しさん:03/05/03 02:35
そのころ、竜村の義理の妹のリブ子(16歳)は
638ほんわか名無しさん:03/05/03 02:41
兄に手作りのお弁当を
639ほんわか名無しさん:03/05/03 02:43
作るのが面倒で
640ほんわか名無しさん:03/05/03 02:43
コンビニへ
641ハリス ◆mSoYU62K22 :03/05/03 02:44
行くつもりだったが
642ほんわか名無しさん:03/05/03 02:44
閉まっていた。
643ほんわか名無しさん:03/05/03 02:44
それすらもめんどくさくなり
644ほんわか名無しさん:03/05/03 02:45
竜村に電話したが
645ほんわか名無しさん:03/05/03 02:45
それすらもめんどくさくなり
646ほんわか名無しさん:03/05/03 02:48
家でふて寝をきめこもうとしたそのとき?!
647ほんわか名無しさん:03/05/03 03:09
竜村の目の前に、初恋の先輩が現れた。
648ほんわか名無しさん:03/05/03 03:27
と言う夢だった。
649ほんわか名無しさん:03/05/04 09:38
竜村は初恋の先輩・鳴神成実をふっと思い出していた。
そう、彼女もこの学園の出身だった。
学園にいわくとして語り継がれてる狐憑きがあったな────。
そんなことをボンヤリと考えながら、缶コーヒーのプルタブを引く。
張り込みは長引きそうだ・・・。


〜レイコの医療室

レイコ「一連の襲撃事件に関するウワサは絶えないけど・・・。」
加奈「学園に昔から取りついている狐憑きが関わってるとか。」
CJ「そうね。"狐狩り"の正体はわからないけど、面白いことがわかったわ。」
レイコ「なんなの?」
CJ「襲われた生徒は全員、過去に"激しくC型"に感染しているの。」
650ほんわか名無しさん:03/05/05 10:13
651ほんわか名無しさん:03/05/06 19:28
いずなは恍惚の表情を浮べていた。
完全に自我を失っている。

古来より”バンパイアー”には
”チャーム”の能力が備わっているというが、
その伝説がでたらめではなかった事を
いずなは身をもって知ったばかりである。

リリスも麻衣子も自分達がバンパイアーではないと
必至に弁解していたが、
魅了されて身動きできなかった事は紛れもない事実である。

血の赤、白い肌、光と闇

混乱していたいずなの首筋に
そっとあてられたリリスの唇
麻衣子の血で赤く染まった唇
リリスの青い目

いずなにとって、彼女達が何者であるかなど
この恍惚感の前では、もはやどうでもよい事だった。
652ほんわか名無しさん:03/05/06 20:42
ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン
漏れの麻衣子チャソが(;´Д`)キュキュキュ…キューケツ属性…
653ほんわか名無しさん:03/05/07 05:31
〜北極圏の海底、クレーター跡巨大環状海溝"コントラ・ムンダム"

暗黒の海溝を三艇の弩級潜水艦が突き進んでいた。
船体にはシュトフ・アッセンブリーの紋章である鷲と太陽、
そして時計をあしらったレリーフが刻まれている。
オペレーターの一人が艦内に継げた。

「リュシオン様、セクターB-08に到着しました。ライトアップします。」

潜水艇のフロント一面の巨大な窓に、カッと前方の風景が青白く開ける。一人の女性が司令ブリッジを渡り歩み出た。
透き通ったクリスタル・ブルーの髪に、水晶の如く煌く瞳、永遠の若さを象徴する魅惑のプロポーション。
リュシオンと呼ばれたその女性こそ、シュトフ・アッセンブリーを統括する能力者であった。

「やっと見つけたわよ・・・私のエンジェル・・・。」

眼前を圧倒するかのように広がる氷壁の中に、
薄い羽衣を羽織った天使───イヴが閉ざされて、いや、羽を休めていた。表情はどこまでも安らかだ。
柔らかな肌の耽美なラインと、眩しいほどの白さを誇示する翼が折りたたまれている。
周囲は、この惑星のものとは思えない怪奇な趣向を凝らした建造物で覆われている。

次の瞬間、潜水艇のモーター音が急停止した。
「緊急事態!艇内の電圧がダウン!非常電源に切り替えます!」
凄まじい振動とともに、ブリッジが赤いライトに覆われた。
この状況にも関わらず、リュシオンはイヴを見つめてほくそえんでいる。
イヴは目を見開いて、真っ直ぐにそのルビーの紅い瞳にリュシオンの姿を捉えていた。
654(・∀・)イイ!! ◆CYfR60L9JU :03/05/07 07:31
リュシオンの搭乗している旗艦の右後方に待機していた潜水艇がペシャリとひしゃげ、爆発した。
轟音とともに衝撃波が旗艦を襲う。乗務員達はパニック状態だ。
655 ◆xNtCVCNeMw :03/05/07 11:08
学園は合唱祭の練習期間に入っていた。
放課後の校舎に各々の合唱曲が木霊している。
麻衣子たちのクラスは、作詞作曲を肉付けしながら、
オリジナル曲を準備している。

「ふえーん伶佳ちゃーん…」
ピアノ担当の杞憂が柄になく伶佳にすり寄った。
「ど、どうしたの杞憂さん?」
「麻衣子ちゃんが全然相手してくれなくってー。」
「そういえば最近リリスさんとベタベタし過ぎよね。」
「妖しいわ。さっきだって合唱の練習中、じっと見詰め合ってたんですもの…。」

伶佳が視線を見遣った方向で、リリスと麻衣子がピアノの傍で談笑している。
瞬間、リリスが凍りついたように言葉を失った。

「どうしたの?」
「ルシル……。イヴが彼を見つけたわ……。」
656ほんわか名無しさん:03/05/07 11:21
転校生ネタもキボンヌ(;´Д`)ハァハァ
(・∀・)イイヨイイヨー
658ほんわか名無しさん:03/05/07 19:07
"激しくC型"に感染して以来
彼女は学園に顔を出していなかった。
いや、正確には転校の前日に
"激しくC型"特有の高熱が出てしまい
まだ一度も学園には行っていない。

苛められやすい体質と言う物があるとしたら
彼女はまさにそれだった。
たいした理由もなく苛められた。
今回で、もう8度目の転校である。

そんな理由で熱が引いた後も、
引きこもっていた彼女が
何の気まぐれか
転校3ヶ月目にして初めて
自ら学園へと足を向けていた。
659ほんわか名無しさん:03/05/07 20:56
合唱祭までもう三日。
「狐狩り」事件の影響で放課後の練習を控えさせられてる為か、
朝から校舎中に練習の声が響いている。
「・・・こ、ここね。」
彼女は緊張した面持ちで校舎の門をくぐる。
(今更出て、変に思われるよね・・・いじめられないかな・・・)
「やぁ!君ここの生徒?」
後ろから元気な男の子が声をかけて来た。
「えっ?!一応・・」(やだ!緊張しちゃうよ〜!!)
茶色い瞳に柔らかそうな髪。
その男の子は満面の笑みを彼女に注いで言った。
「このクラスまで案内してくれないかな?」
(ここって、私のクラスじゃない・・)
「あなたは?」
「俺?俺は劉飛。本業は祓鬼師。狐狩り事件のことで呼ばれたんだけど・・・」
660ほんわか名無しさん:03/05/08 19:27
「ごっ、ごめんなさい。私も今日始めて来たばかりだから...」
そう言うと彼女は足早に男の元を去った。

(祓鬼師?狐狩り事件?なんかあってんのかな...
やだな、変なことに巻きこまれたら。
それにしても、なんて広い所なの。)

不安で一杯になり、何度も引き返したくなる気持を押え
ようやく校舎の入口に辿り着いた彼女は
近くにいた3人組に声を掛けた。
「あ、あの...」
3人の視線が彼女に集る。
「がっ、学園長室ってどこですか?」
「そんな者はいませんが何か」
「見事な解答だな、姉者」
「校長ならいるけどね☆」
そう言うと三人組は彼女の存在など
忘れたように去っていった。

一人取り残された彼女が、視線を感じ振り返ると
目の前にはどう見ても生きた人間ではない少女の顔があった。
「なぁ、うちと遊んでーな!」
「!!ーーーー」
声にならない声をあげて歌声の響く校舎内を爆走する彼女は
一人の小柄な少女とぶつかった。
「ごっごめんなさい。」
「・・・」少女は”大丈夫”と唇だけを動かすと、
ポケットからメモ用紙とペンを取出すと
何かを書き、それを彼女の目の前に差し出した。
”大丈夫だから心配しないで。”
「・・・あなた、喋れないの?」
661ほんわか名無しさん:03/05/09 11:50
わたしはその子の案内で校舎を歩いていた。
その子は言葉こそ語らなかったけれど、
何か不思議な包容力を放っているようだ。
年下のようだけど、私はその優しい雰囲気が
心の隙間を補ってくれるような、そんな気がした。
「ねぇ、あなた名前は?」
彼女は指で空を切った。
"もも"
「ももちゃん?」
662ほんわか名無しさん:03/05/09 17:37
>>659
http://human.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1046445635/l50
上記スレの”229”に早急に答えられたし。

すれ汚しすみません。
663ほんわか名無しさん:03/05/11 12:04
「ホシュ」
664ほんわか名無しさん:03/05/11 12:06
〜聖プラティパス学園最上層展望施設"キャンパス・ステラ"

眼前に広大に広がる都市群の如き学園施設を、三人の人影が見下ろしていた。

楠くるみ「うふふ・・・。もうそろそろだにゃ♥」
エンデュミオン「学園の全生徒が一同に会する大イベント・・・。またとない機会だ。」
ルナ「でもエンデュミオン、狐狩りとかいう不穏な事件が引っ掛かるわ。」
エンデュミオン「捨て置け。どうせ怨恨絡みの傷害事件だろう。」
くるみ「そうですにゃ!必ずやその日は獣装戦隊誕生の記念すべき日となるにゃー!」
猫耳としっぽを震わせてくるみは展望塔のてっぺんに飛びのり、時の声をあげた。
665ほんわか名無しさん:03/05/11 12:37
銀之助はかつてイヴと良く散歩をした公園を歩いていた。
後ろからは優子が憂い気についてくる。

銀之助「弥生は・・・正しかったのだな。。」
優子「・・・。」
銀之助「今なら、何となくわかる。雫は何かを知ってイヴに消されたんだろ?」
優子「あなたは、ずっとイヴのチャームにかかっていた。弥生はあなたのことを想って黙っていたのよ。」
銀之助「全ては偽りだったということか・・・。」
優子「真実を知ることが、あなたにとっては残酷な仕打ちだったから。魔術とは言え、あなたのその気持ちに偽りは無かった。」

銀之助はふっと緑の葉をつけ始めた木の枝を見上げる。
まだ少し肌寒いが、どこか温かい風が頬を優しく慰める。
自分でも気付かなかった涙の筋がヒンヤリと感じられた。

「俺は・・・。するべきことをしなくては・・・。」
666 ◆xNtCVCNeMw :03/05/12 04:36
私は時が果てるのを待っている……。

学ばれた全ての運命
私の魂が 彼らが燃やしたものを灰にしてしまった
だから 時が果てるまで 静けさが私の名を汚す
咎める…
そして 疑い 責めている
時が果てるまで 永遠に…

今度はあなたが泣く番
そして 生涯 問い続けるのです
あなたにはわかっていたのだから…
667 ◆xNtCVCNeMw :03/05/12 04:39
第四十五章 〜Fight The Future〜
668 ◆xNtCVCNeMw :03/05/12 04:51
リリスは神妙な面持ちで麻衣子を見つめる。
麻衣子は彼女の瞳の奥に哀しい閃きを見取ると、ゆっくりと尋ねた。

「ルシルって誰なの?」
リリスは答えるのを躊躇う表情を見せたが、意を決したように深呼吸を置くと、重々しく口を開いた。
「かつてイヴとわたしが……愛した人よ。」
「……そうなんだ。」
「彼、彼女は数世代に渡って私たち双子を守ってくれた。時には同朋からも…」
「?…どういうこと?彼?彼女?」
「ルシルは男女二つのペルソナを行き来するの。純粋無垢な少年ルシル、恐るべき法力を誇る巫女リュシオン…。」
「イヴは何を……。」
「わからないわ。でも今でも彼女は彼を憎んでるはず。」
「どうして?」
「イヴはね。前世で虐殺されてるの。」
669ほんわか名無しさん:03/05/12 07:45
ギャクサツ・・・((((゚Д゚)))
670ほんわか名無しさん:03/05/12 10:12
「うーん・・・困っちゃったなぁ。わたしのクラスどこだろー?」
ももちゃんは疲れてたのか、おんぶしてあげたらスヤスヤ寝てしまった。
寝顔がカワイイ。
わたしはあてもなく学園をさ迷い、
何を間違えたのか広大な屋外展望キャンパスらしき所に出てしまった。
「あーんもうヘトヘト〜・・・」
ももちゃんをそっと床に寝かせ、壁にへたれこんだ。
「まったく初日から何やってんだろ・・・。」
ボーッと彼方を見やる。
床一面の鏡のようなソーラーパネルがどこまでも広がり、視線の彼方に霞んでいる。
パネルが青空を反射してまるで宙に浮いてるみたいだった。
これだけ巨大な施設は電力供給が大変なんだろうなーとふと考える。
パネルに映る自分の顔を覗く、白い雲が自分を飛び越えていくのが見えた。
「・・・ん。」
「ももちゃん、起きた?」
671ほんわか名無しさん:03/05/12 10:31
ももちゃんは眠たげに目をこすると、
まだ寝惚けてるのかムニャムニャと
わたしの膝元に摺り寄って来た。
「あ、ちょっと・・・ねぇ・・・」
ふっと顔をを覗きこむと、瞼にうっすらと涙を光らせている。
口元は何かを訴えかけるかのようにパクパクと空を貪っていた。
「おねえちゃん・・・?わたしをおねえちゃんと勘違いしてるのかしら・・・。」
春の陽気がポカポカと空間を抱き込んでいる。
もーどーでもいいや。この時間がずっと続いたらいいな。
ももちゃんの寝顔を覗きこみながら、
わたしはいつのまにか、うたた寝に身を委ねてしまった。
672ほんわか名無しさん:03/05/12 18:07
開放された空間の方がノイズが入りにくいからと
教室から、キャンパス・ステラへと場所を移した麻衣子とリリスは
イヴの気配を一番良く感じ取れる場所を探し
ソーラーパネルの上に設けられた通路を歩きながら話を続けていた。

「私達一族が転生する話は以前にしたわよね。」
麻衣子が頷くのを確認しリリスが続ける。

「それはとても辛い事なの。体験しなければ、決して解らない事だけど・・・
”前世の因果を背負って産まれてくる辛さ”とでも言えばいいかな。
普通の人が経験しないような、悲しい出来事や辛い事も沢山あったわ。」

「・・・貴女は、それをイヴと共有してるのね。」

リリスは麻衣子の言葉の中に、微かな嫉妬を感じながら話を続けた。

「そうね。一族の中でも、私達二人の結び付きは特に強いから・・・
何度産まれ変っても、私たちは必ず双子で産まれてきたの。
イヴの事は何でも解ったし、私の全てをイヴは知っていたわ。」

青空を映し出すソラーパネルに映った麻衣子の表情は今にも泣出しそうだった。
673 ◆xNtCVCNeMw :03/05/13 01:18
麻衣子は湧きあがる疑念に、何よりもそんな自身に苛立ちながら、恐々と続ける。

「でも、違った?」
「ルシルは……。彼は無垢だけどとてつもない知性の持ち主で、いつしか私達を危険視するようになったの。」
「…それで陰謀に巻きこまれたのね。」
「リュシオンも出生は不明だけど、私達と同等の力を持っていた。自分のことを"未来に射止められた者"だって。」
「未来に射とめられた者?」

瞬間、冷たい風が二人の間を駆け抜けた。

「彼女には未来が見えているの。時の果てる彼方まで……。そして永遠の若さを持っている。」
「イヴは一体どんな死に方をしたの?」
「当時ルシルが裏で手引きした市民クーデター軍に、政治家連中の手先として見せしめに…。嬲り殺されたわ。猟奇的と言っていいほどよ。」
リリスは見せたこともないような険しい表情を覗わせた。

「あなたは運命を操る力を持ってるって言ったわよね。」
「えぇ、ほんとに制限の限られた能力だけど、時に何よりも恐ろしい力になるわ。」
「そんな神様みたいな力を持ってても、悲劇からは免れないのね。」
「…神様なんていないわ。それは私達が一番良く知っている。」
674 ◆xNtCVCNeMw :03/05/13 01:38
「私は一部始終を傍観せざるを得なかった。リュシオンに力を奪われて、一族が滅ぶのを籠の中で見守るしか。」

大気の流れが速いのか、上空の雲が凄い勢いで彼方へと飛び去っていく。
麻衣子はこれまで最も恐れてきた真実に、ただ耳を傾けるしかなかった。

「ルシルは何かの間違いだって言ったわ。イヴが捕えられたのは私のせい。わたしが彼女を行かせたから、あんな恐ろしい結果に。」
「彼はあなた達を愛していたのね。」
「…イヴは今でも信じようとしないけど。」

二人はキャンパス・ステラの尖塔に辿りついた。
傾きかけた陽射しとパネルの反射光が、まるで遥かな時の溝を満たすかのように優しく、哀しげに二人を包む。

「そうしてわたしは余生をかけてリュシオンの秘術、"時の禁呪"を手に入れた。哀しき業と引き換えに…。」
「どうして?」
「イヴの悲しい悲鳴が、恐ろしい木霊となって私を復讐の虜にしたの。」
「それじゃぁ、あなた達の目的って…」
「そうよ、現世に転生した私達は、黒田重工に取り入り、ある密約を交わした。」
「プロジェクト"レイジィバツース"ね。」
「でもその頃からだった。私達双子の心の歯車が狂い出したの……。」
「黒田重工は世界各国の機密機関と共にプロジェクトの研究に乗り出したわ。
 画期的な魔術とテクノロジーとの融合。現実を書きかえる神のシステム。」
「でも全ては復讐のための伏線だったのね。」
「えぇ、そのはずだった。」
「?」
「私はまだ……彼を…ルシルを愛していたの。」

麻衣子はいよいよ心の澱みを抑えきれなくなると、
手すりに身を乗り出し、夕日の方向にうなだれた。
…嫌な沈黙。

「イヴからは何か聞こえる?」
「いいえ、消えちゃったみたい……。」
676ほんわか名無しさん:03/05/13 04:27
〜フランス・オーベルニュ山岳地帯

百合子とピエールは崖を下った後、谷間の集落跡で何かを探していた。

百合子「ふぅ。これだけ探しても見つからないなんて・・・。」
ピエール「イルミナティを匿っていた部族の森か。故郷にもオカルトめいたスポットがあったもんだな。」
百合子「無駄口叩いてないで探してよ。何処かにあるはずよ。イルミナティの遺跡の在り処を示す手がかりが。」
ピエール「ふん。相変わらず食えないタチだな。さすが元・相棒だよ。」
百合子「私の人生の汚点だわ。」

百合子はそう言いながらもクスッと悪戯めいた微笑みを見せた。

百合子(校長の言う通り遺跡が見つかったとしても、本当に激しくC型のワクチンになるものなんてあるのかしら・・・)
677ほんわか名無しさん:03/05/13 09:09
ふと肌寒さを覚えた私が目を開けると、
視界いっぱいに夕焼けに染まった空が落ちてきた。
「寝ちゃったんだ。教室探さなきゃな・・・。」
気付くとももちゃんがいない。
わたしは突然の孤独に少し戸惑いながら辺りを見廻し、
身体にしんしんと孤独が染み入るのを感じた。
その時だった。
ギュッ!
ももちゃんがわたしの腕を掴んで、急いで何処かに案内したいようだ。
「ねぇ、何なの?・・・うわっ!凄い!」
眼前に開けた夕焼けの光景は、パネルの節々で複雑に反射しながら
これまで見たことも無いような色彩を放ち、異星の如く様相を呈していた。
わたしは何故か涙をこらえきれなかった。
ももちゃんは少し怪訝な表情を見せたけど、すぐに笑って涙を拭ってくれた。
わたしはこの日を忘れまいと心に誓った。
678ほんわか名無しさん:03/05/13 11:43
第四十六章 〜Let the Light Shine In〜
679ほんわか名無しさん:03/05/13 15:28
麻衣子達のクラスはいよいよ合唱曲練習の大詰めに架かっていた。

委員長「みんな、後三日だからね!がんばろ!」
杞憂「あっ、麻衣子ちゃんとリリスちゃん、何処言ってたの?」
麻衣子「うん、ちょっとね。」
杞憂「・・・。」

そこへ見なれない生徒がまた二人、教室に遠慮がちに入ってきた。
喧騒が静まる。

「あの・・・。はじめまして・・・。」
麻衣子「ももちゃん?あなたは?」
「わたし、転校生なんですけど・・・その・・・。」
680ほんわか名無しさん:03/05/14 19:03
「転校生?・・・ひょっとして3ヶ月くらい前に来る予定だった人!?」
委員長が横から口を挟む。
「はっ、はい。」
わたしは、不安で一杯になりながら答えました。
「そう。もう体調はいいの?」
「へっ?」
「えっ?先生から”激しくC型をこじらせてなかなか出てこれない”って
聞いてたけど違うの?」
「えっ、あっもう大丈夫です。すっかり元気になりました。」

気が付くと、ももちゃんの姿がありませんでした。
お礼すらも言ってなかった私は
ももちゃんを探して教室を飛びだしました。

そのとたん、右太ももに何か熱い物が触れた気がして
ふと目をやると、そこから何かが生えていました。
それが、ナイフか何かの柄だと気が付いたとたん
絶えがたい程の強烈な痛みと恐怖が襲ってきました。
「キャーーーーー」
わたしは、産まれて初めて絶叫していました。
681ななしッ子:03/05/14 22:50
これでもやっておちつこうや
http://www.v-gene.com/rescue/otatataki/otatataki.cgi
682ほんわか名無しさん:03/05/15 06:41
次の日、私は気付くと病室のベッドにいた。
悲鳴に気付いて駆けつけた生徒が、気絶した私を発見してくれたらしい。
お昼過ぎになるまでにクラスの生徒が代わる代わるお見舞いに来てくれた。
まだお互いのことは良く知らないけど、友達と呼べる人も出来そうだ。
だけど、気を失う瞬間、誰かが私に呼びかけた声が耳から離れない。
・・・「狐狩り」と

〜レイジィバツース作戦会議室

麻衣子「くっそー!あんなに近くにいたのに守れなかった!」
レイコ「このままじゃ合唱コンクールの運営にも支障をきたすわね。」
伶佳「犯人は一体何が目的なのかしら?」

CJが睨みつけていたモニターから顔を話し、徐に歩み寄ってくる。

麻衣子「うわっ!ビックリした!!(気配無いのよねこの人・・・。)」
CJ「ラボに分析させていたんですけど、ナイフからは犯人に繋がる手がかりはないそうです。ただ・・・。」
レイコ「ただ?」
CJ「被害者の血痕を分析させた結果、血中タンパク成分に微量のトレハロースが検出されたわ。」
レイコ「トレハロース?!何でそんなものが?」
683ほんわか名無しさん:03/05/15 09:56
「はぁ・・・。ツイてないのかなぁ・・・。」
わたしは病室で大きな溜息をつく。転校そうそう恐ろしい目にあった割には、
そのお陰か同級生の心遣いが嬉しくもあったからだ。ふと、ノック音に気付く。
「あっ、どーぞー。」
「お邪魔するね。具合はどう?」
(可愛い子だなぁ・・・。確か杞憂ちゃんだっけ・・・)
「うん、もう退院できるみたいなの。」
「そぉ、良かった。皆に頼まれて合唱曲の打ち合わせをしに来たの。」
「そーなんだ。なんか、悪いね。」
「ううん、みんな歓迎してるよ。ここの歌詞だけどね・・・。ちょっと暗くて見えないね。ブラインド開けるわね。」
眩しい光が部屋にさし込む。
私は彼女の話しも半分に、あの言葉を話さない少女のことを思い出していた。
「・・・また会いたいな。」
684ほんわか名無しさん:03/05/15 10:15
「でね、ここはソプラノのソロパートなんだけど、もし良かったら・・・。って聞いてる?」
「えっ?あっ、ご、ごめんなさい・・・。」
杞憂さんはクスクスと笑うと、楽譜を折り畳み、前屈みになってわたしの顔を覗きこんだ。
「な、なんですか?」
「あなた、何か辛いものを背負ってきたんだろうけど、ここではみんなが仲間だからね。」
「・・・。」
彼女の哀切な、しかし優しい眼差しに、私の中に何かが込み上げてきた。
「秘密や嘘、裏切りに打ちのめされた時はね、こう考えるの。」
彼女は窓際に陽射しを背負いながら続けました。
「私の知らない処で起こっていることが、今ここにいる自分を形作っているんだって。」
「え?」
彼女は照れくさそうに笑う。
「秘密や嘘が覆い隠されていると思ったら間違い。それは今自分に起こっていることそのものなのよ。」
「・・・なんとなく、わかるような気がします。」
「だから、何か不安を感じたら、寂しかったら、我慢することないのよ。」
杞憂さんは一瞬どこか寂しげな表情を見せると、微笑みながら、
「ま、現実、気にするなって言われても難しいけどね。ほんとに辛いときはどうしようもないしね。」
舌を出して笑う姿に、あの無言の少女への気持ちとは違う、ときめきのようなものを感じた。
685ほんわか名無しさん:03/05/15 11:24
一 方 竜 村 は────・・・。

学園の張り込みで三日三晩車に泊まりっきりだったが、
ノーパソでインターネット通販を利用して上手く生活していた。
「俺ってディカプリオみたいだぜ!」
686ほんわか名無しさん:03/05/15 17:06
リリスは一人、休養施設のベッドラウンジの個室に閉じ篭っていた。
外の明るさが辛い。彼女はにべもなくブラインドを降ろす。
心と同じ闇が、瞳の奥に虚ろな虚像を結んだ。
麻衣子は普段と変わらない笑顔で接してくれるものの、なんとなく距離感を感じてしまう。
リリスはベッドに滑り込んだ。

・・・私、何やってんだろ。。何がしたかったのかな・・・。

それと気付かないうちに涙がとめどなく溢れ出す。

数千年の業の結果がこれ?
一時の感情に流されて、かけがえのないものを失って。。
それだけじゃない、多くの人間を闇に巻き込んでしまった。
この罪は、1世代では到底拭いきれるものじゃない。なのに私は・・・。

嗚咽が部屋を満たす。

・・・想い出を、過去を穢しては生きられないというの?
そしてまだ何かに縋ろうとしてる。贖罪は果たさなければならないのに・・・。

虚ろな視線はただボーッと窓のブラインドに注がれる。
合間から僅かに漏れる陽射しも、彼女の夜の闇より深い心の襞には届かなかった。
687ほんわか名無しさん:03/05/15 17:12
うんこ先生
688ほんわか名無しさん:03/05/15 17:21
竜村は寂しさのあまり、そう呟いた・・・。
689ほんわか名無しさん:03/05/15 17:40
「キャー!お兄ちゃんの下品!!!」
「ぶべっ?!」
車が1dハンマーで横薙ぎに吹っ飛んだ。
「おっ、お前、リブ子、今仕事中なんだからどっかいってなさい!」
「えー。せっかく人が心配して警察無線盗聴してまで来てあげたのにぃ・・・。」
「・・・。」
「ねぇ、お義兄ちゃん覚えてる?今日は・・・。」
「あぁ・・・。憶えてるさ。」
リブ子は後部座席に花束が詰まれているのに気付き、胸が締めつけられた。
「悪いけど、今日も帰れないからさ、姉さんに代わりに届けてくれないかな。」
「・・・うん。これ、お弁当。」
リブ子は恥ずかしげに弁当を差し出すと、花束を受け取って駆け去った。
「・・・あいつ。」
竜村は苦笑いを浮かべながら、車内に張ってある最愛の恋人の写真を見つめる。
「・・・もう二年か。お前が眠ってから、あいつも大きくなったんだぜ。」
感慨深げに弁当の蓋を開ける、と、御飯の上に海苔で

「お義兄ちゃんのウンコ!」
690ほんわか名無しさん:03/05/15 18:38
私はベットの上で校医の先生と
その助手らしき人の質問を受けていました。

「貴女も"激しくC型"に感染していたのよね?」
「はい。転校日の前日に熱が出ちゃって、
病院に行ったらそう言われました。」
「じゃあ、前の学校で”迷子の少女”の話を聞いたのね?」
「迷子の少女の話?」
「少女が廃工場で迷子になって
母親を見つけられずに亡くなるあの話」
「何ですか、その話?」
「まさか、聞いた事が無いの?」
「はい。まったく。
でも、それと病気が何か関係があるんですか?」
「・・・」

先生と助手の人は
何だかすごく驚いた様子で
ベットから少し離れて
小声で何かを話していましたが
私には聞き取れませんでした。
691ほんわか名無しさん:03/05/15 21:41
(・∀・)イイ!!
応援しかできないけど、楽しませて貰ってます。
スレ汚しスマソ…。
692ほんわか名無しさん:03/05/16 06:04
第47章 >>Love can damage your health.
693ほんわか名無しさん:03/05/16 09:23
「♪〜」
今日は天気が良い。昨日は酷い目にあったけど、皆のお陰で頑張れる気がする!
こんなにも心を躍らせて登校できるのはいつ以来だろう。
勉強も合唱曲練習も遅れを取り戻さなくちゃ!

私は気分揚々と廊下を歩いていた。
すると、物陰から数人の深刻そうな話し声が聞こえてくる。
わたしは何だろう、と思って耳を傾けた。
「・・・ねぇ、言っちゃった方いいって。」
「その内捕まるよ。あんなことしてさぁ。もう黙って見てられないよ。」
真中の眼鏡の子が、数人に言い臥せられて泣きじゃくっている。
(イジメ?・・・にしては様子がおかしいな・・・。)
グループのリーダー格のような子が言った。
「とにかくっ、いくら委員会の体裁に関わるとは言え、真実が明らかになった以上、
  風紀委員長としては、このまま見過ごすわけにはいかないわね。」
眼鏡の子が口を開く。
「わかってない・・・。彼女達が何をしたのか・・・。」
「何?怨恨が動機だというのなら理由を言ったらよろしくてよ?」
「いずな、ちょっと話を聞いてあげましょうよ。」
「何にせよ、『狐狩り』なんてやって生徒を傷つけたことは正当化できないでしょうけど。」

(狐狩り?あの子が・・・?)
694ほんわか名無しさん:03/05/16 09:41
「・・・彼女達は・・・獣よ。太陽を食らう狼スコル・・・。」
「スコル?北欧神話のアレ?」
わたしはわけもわからず、その一部始終を漏らさず聞こうと耳を欹てた。
リーダーらしいいずなという人が彼女を責めたてている。
「何の例えか知らないけど、彼女達があなたに何をしたって言うの?」
「・・・病気が流行った時、私も感染したわ。その時に、見たの・・・。」
私は何故か動悸を抑えきれない。彼女を知っているような気がする。
「見た?何をですの?」
「みんな、虚ろな目をして、どこかの草原ね。そこで・・・。」
眼鏡の子は身体を震わせて驚くべきことを語り出した。
「人を・・・殺したわ。」
「?!」
「殺されたのは・・・学園の役員会で重役の・・・私のお父さんよ。」
695ほんわか名無しさん:03/05/16 14:22
リリスは目を醒ますと、自分が暗闇のベッドの中にいることに気付いた。
無音の空間。心の中を言い知れぬ虚無感が満たしている。
「あのまま寝ちゃったんだ。。」
身体に力が入らない。心がカラカラに乾いてるような感覚を覚えた。
「あれ?どーしたんだろ。」
彼女にはわかっていた。大抵、昔の夢を見たときはこうなる。
過去の業が決して越えられない痛みとなって、身を焦がすのだ。
瞳は虚ろなまま、虚空に焦点を結んでいる。

・・・なんて無力なんだろう。わたし、何も無い。。
きっとこの先永遠に生きていたって、今そこに最愛の人がいたって、
この渇きが潤うことはない。涙さえ奪われてしまった。
あの傷が、過去に縋るための記憶の箱庭が、わたしの泉を凍らせてしまった。
"現在"という幻から、時間を奪ってしまった。
生という慣性、思考のエントロピーを、刹那に縛り付け均衡状態にしてしまう。
哀しみの果てにあるもの。それがきっと時の終点。。。

リリスは虚ろな瞳のまま上体を起こすと、何を捉えるでもなく、
ただただ枯れてしまった心の乾きを、そのチリチリと燻るような痛みを感じることしか出来なかった。

・・・過去はやがて夢とひとつになる。。
果たしてその夢は、あのスコルのようにわたしを生に駆りたてるのか、
それともハティのように、その足音で全てに静かな終わりを告げるのか。
・・・わたしはわたしを、何時まで現世に鏡像を結び続けるのだろう・・・。
696ほんわか名無しさん:03/05/17 04:20
日もとっぷり暮れ、麻衣子と杞憂は学園内のコンビニで買い物した後、揃って寮に帰宅した。

「はぁ〜…疲れたぁ!いよいよ明日かぁ。」
「そうね。今日、あの転校生来なかったけど、どうしたのかしら……。」
「そういえばリリスちゃんも途中で居なくなっちゃったな…。」
「…心配なの?」杞憂が少し含みのある様子で訊いた。
「そりゃ……。」
「彼女なら大丈夫よ。今ごはん作るからちょっと休んでたら。」

麻衣子はガバッと上身を起こす。

「いいよっ。杞憂ちゃん今日は熱っぽいって言ってたじゃん。明日のこともあるしさ。」
「じゃぁ、麻衣子ちゃん料理できるの?」
「うっ…」
「待っててね。お腹が空くとロクなこと考えないから。」

杞憂は微笑みながらそう言ってキッチンに向かった。

「……ごめんね。」

麻衣子は沈んだ表情で溜息混じりに、窓に映る自分の顔を見つめた。
697ほんわか名無しさん:03/05/17 04:38
夕食と入浴も済ませ、寝支度をした麻衣子はベッドに身を沈めた。
「う〜ん、この瞬間の為に生きてるって気がするゥ〜!」
あくびをして身体を屈伸させると、気持ち良さげな表情で天井を見上げる。
突然、杞憂が上から麻衣子を覗きこんだ。

「わっ!なっ、何?!」
「…一緒に、寝ていい?」
「へっ?!い、いいけどさ。どうしたの?具合悪いの?」
「うん、何だか朝からおかしくて…。」

そう言いながら杞憂は麻衣子のベッドにゆっくりと滑り込んだ。
麻衣子はすかさず、おでこを杞憂の額にあてる。
「ねぇ、熱があるよ…。私が無理させちゃったせいかなぁ。。」
「ううん、気にしないで。」どこか瞳が潤んでいるようだ。

麻衣子はいつもの様子とは違う彼女に少し戸惑いながら、
何故か恥ずかしさを感じて彼女に背を向けた。
「明日までに治るといいんだけど…取り敢えず早く寝なきゃね。」
「……。」
返事がない。
ふと、彼女の手が麻衣子の腰に触れ、下腹部の辺りに降りてくるのを感じた。

「…!!」
698ほんわか名無しさん:03/05/17 04:55
杞憂はそのまま、麻衣子の背中に体をキュッとすりよせる。
(何?何なの?!杞憂ちゃんおかしいよ…ド、ドキドキする。どうしよう…!)
パニックになった麻衣子は思わず、下腹部に当てられた彼女の手を握り返してしまった。
耳元に彼女の少し乱れた吐息が降りかかる。

「…麻衣子ちゃん、淋しかったよぉ。」
「ね、ねぇ、杞憂ちゃん、熱のせいだよきっと。やっぱり自分のベッドで…って、ひゃっ?!」

杞憂はガバッと毛布を翻し、麻衣子の上に臥せるような形になった。
視線はじっと瞳に注がれている。そのあまりにも艶やかな表情に、
麻衣子は胸の疼きを抑えきれなかった。

「麻衣子ちゃん、ごめんね。ごめんね。」

そう言いながら彼女は麻衣子の首元に顔をすりよせ、何度も吸付いた。
腕は麻衣子からパジャマを引き剥がそうとしている。
麻衣子は理性が飛びそうになるのを堪えながら、涙を浮かべてそれなりの抵抗を見せようとした。
「き、杞憂ちゃ…ダメっ!ダメだってば……!ね、……えっ?!」

麻衣子の視線の先にリリスが佇んでいた。
699ほんわか名無しさん:03/05/17 05:24
「リ、リリスちゃん…。」杞憂も彼女に気付き、顔を向ける。
「ごっ、ごめんなさい!話があって、あ、それで、鍵が…その……。」
リリスはいたたまれなくなってその場から駆け出した。
「待って!!」すかさず麻衣子が追い駆ける。
杞憂はベッドにヘたれこんだまま、シーツを顔に当てて泣きだした。

〜学園東、マリーナの桟橋 AM2:33

麻衣子は息を切らしながら、リリスの後を追いかけていた。
「おかしいなぁ。ここに駆けこんだ気がするんだけど。」
リリスは桟橋の陰に身を潜めていた。涙が止まらない。
(私、まだこんなに泣けたんだ…。)
水面に映る自分の泣き顔を自嘲気味に笑い飛ばす。
(・・・馬鹿みたい。私、まだ彼女に縋ろうなんて、おこがましいこと考えてたんだ。)
その時だった、麻衣子が叫んだ。

「リリスちゃん!私、あなたのことが────…。」
リリスはハッとして、物陰から体を乗り出そうした、その瞬間。

……ドクン。

心臓が急激に痛みだす。急性の発作だった。
「ハァッ!ハアッ……そんな────。こんな時に…。」
掻き乱すように、手を胸の辺りにあてる。いくら絞り出そう出そうとしても声は出ない。
彼女は胸を抑えたまま気を失うと、冷たい海面に身を放り出した。
700ほんわか名無しさん:03/05/17 06:20
第48章 >>The Hardest Heart.
701ほんわか名無しさん:03/05/17 07:17
元ネタはこれでつか?

Lazybatusu / 8:00 AM

http://www.amazon.de/exec/obidos/clipserve/B00005B9OJ001012/028-2434344-4549361
702会社から:03/05/17 11:00
レイコとCJは研究室で"激しくC型"のサンプルを分析していた。
既知のウィルスとは全く違う特性を持つその振舞いは、
本来ならば、この物理構造の世界では存在しえないものだ。

レイコ「うーん。血中のトレハロースがこの成分を保存する機構があるみたいね。」
CJ「えぇ、通常の感染者は症状の改善とともに、血液成分に異常は無くなったと思われます。」
レイコ「狐狩りにあった生徒は違うのよね。それに見て、クラスターの波動解析なんだけど・・・」
CJ「位相が量子エネルギーの振動幅よりずれてるわね。複素領域まで達してるみたい・・・。」
703ほんわか名無しさん:03/05/17 11:32
CJ「それに、特定の位相の波動に共鳴するんですけど、定数のパターンが固定されているんです。」
レイコ「ほんとだ。なにこれ。まるで・・・。」
CJ「まるで暗号です。パターン毎に位相をずらしていけば、ウィルスを操ることだってできます。」
レイコ「どういうこと?それって・・・。」
CJ「トロイの木馬みたい・・・。もっと問題なのは、
  ウィルスが自発的に振舞いを決定しているように見えることなんです。」
レイコ「信号の発信源が不明だってこと?」
CJ「少なくとも、通常の時間軸ではありえません。信号が検出されるはずでず。ですがこれは・・・」

CJはラボの中心に位置するガラス状プラズマモニターに手のひらを押し付け、呼吸を整える。

CJ「陽電子が時間を逆行するように、なにかが未来からその振舞いを操っているとしか・・・。」
704ほんわか名無しさん:03/05/17 13:09
>>698レズキタ━─━─━(゚∀゚)━─━─━!
705ほんわか名無しさん:03/05/17 16:00
「私...生きてる...」
リリスは、箱が沢山積まれた場所に横たわっていた。
どうやら、マリーナの倉庫らしい。
箱が照明を遮るせいか、そこは薄暗かったが、
疲れた今のリリスの体にはかえって心地よかった。
心臓の痛みは治まっている。
「...」
リリスは複雑な思いで
まるで痛みを懐かしむように胸に手を当てた。
「えっ!」
リリスは自分が全裸である事に気付いた。

「リリスちゃん気がついたんだ。」
背後で誰かが声をあげる。
「麻衣子ちゃん...?」
声の主を求め、振り返ったリリスの目に
箱の隙間から漏れる照明に照らされた
全裸の麻衣子が飛びこんできた。
「よかった。心配したんだから。」
706ほんわか名無しさん:03/05/17 21:05
ワクワク(*・∀・)
もしかして感想とかはあまりつけない方いいのかな。
残りレス数が締めつけられてるっぽいし・・・
707ほんわか名無しさん:03/05/17 21:14
うーん皆レズ好きなの?(´д`;)
708ほんわか名無しさん:03/05/18 18:21
本日は休載?

>>707露骨なエロに逝かなくて耽美なら(・∀・)イイ!
709ほんわか名無しさん:03/05/19 08:42
麻衣子「今ね、服乾かしてるから。。寮にも戻りづらいしね。」
そう言って麻衣子は微笑んだが、先ほどのショックがまだ引き摺っているのを口元に見て取れる。
リリス「麻衣子ちゃん・・・彼女を責めないであげて・・・。」
麻衣子「当然だよっ!杞憂ちゃんは私の一番大切な友達なんだから。。」
リリス「・・・じゃぁ、私は?」
麻衣子「えっ?!」

荷物の合間から注ぐ照明の光が、ゆらゆらと薄暗い影を創る。

「もっと・・・特別。なのかな?」
「・・・嬉しいわ。」

麻衣子は突然裸に羞恥心を感じ、両足をキュッと締めた。
恥ずかしそうに下を俯いた麻衣子に、リリスは何かに引き寄せられるようにそっと近づいた。

麻衣子「リリスちゃん、あのね。」
リリス「なっ、何?」
麻衣子「あなたの過去を聞いて、正直困惑したのも事実よ。」
リリス「・・・。」
麻衣子「でもね。あなたの業は罪という言葉で総括されるものじゃないと想うの。」
リリス「そんなことないわ。イヴを傷つけ、世界の運命を巻き込んでしまった。。」
麻衣子「あのね、六年前の戦争の時、あなたは何処にいたの?」
リリス「?」
710ほんわか名無しさん:03/05/19 08:55
リリス「・・・フランスの極秘任務で指揮を取っていたわ。」
麻衣子「そう、あなたには戦う力があった。でも、まだ幼かった私には・・・。」
リリス「ご両親は・・・お気の毒だわ・・・。」
麻衣子「ふふっ、何でも知ってるのね。」
リリス「いいえ、あなたがあの前線の戦禍をどう生き延びたのかまでは・・・。」

麻衣子は視線を遥か彼方に向けるように、俯いていた顔をあげた。

「・・・天使。天使が導いてくれたの。」
「・・・天使?」

麻衣子はニコニコと微笑みながら、リリスの表情をまじまじと見つめる。

麻衣子「そう、天使。だーれも信じてくれないの。」クスッと笑う。
リリス「・・・・・。」
麻衣子「すっごく、哀しそうな表情をしてた。でも、目の前で両親を殺された私にこう言ってくれたのよ。」

──あなたには、過去の因縁を断ち切る力がある───
711ほんわか名無しさん:03/05/19 09:13
(因縁を・・・断ち切る力?)

リリスは驚きの表情を隠せないでいた。
麻衣子「不思議なことに、顔はよく思い出せないんだー。それから色んな人にあって、
    色んな場所を巡って、この学園に引き取られたの。幼馴染の杞憂ちゃんにも再会できた。」
リリス「強いのね。あなたはほんとうに・・・。」
麻衣子「そんなことないよ。だって最初はレイジィバツースの選抜に落ちちゃったんだから!」
リリス「そーなの?」
麻衣子「うん、シンクロないずどとかなんとかいうのがダメダメでさー(苦笑」
リリス「・・・シンクロね。でも、不適合者が後に適合する例は聞いたことが無いわ。」
麻衣子「私、悔しくて。。お父さんやお母さんを守れるような力が欲しくて。。。」

リリスは辛そうな表情で聞き入っている。
その表情に気付いた麻衣子は、声のトーンを明るくすると、満面の笑みでこう言い放った。

麻衣子「あなたのおかげよ。今は戦えるもの。あのスーツのおかげ!」
リリス「禍をもたらす目的で創られたものよ・・・。」
麻衣子「そんなことない。私たちが今までどれだけの人の為に戦ってこれたか考えたことある?」
リリス「・・・え。」
麻衣子「ねっ、過ちだったかどうかなんて、いまの行動で変えられるんだから!」

リリスは気付かぬうちに、みたび涙を零していた。

(・・・まだ、まだ過去を超えられる?贖罪でも因縁でも運命のためでもない。
 ・・・自分と自分の、大事な時間を守る為に・・・)
712ほんわか名無しさん:03/05/19 09:43
第49章 〜Long Periods Of Goodbye〜
713ほんわか名無しさん:03/05/19 13:27
体育館裏…昼なお暗く一部の人しか寄り付きそうも無い其の場所に、彼女等は居た…

子子「ねじーヽ(´ー`)ノ結局、新しいスーツは
    「私たちのスーツと引き換えで、お渡しします」
   とか言って、いずなたん達に持っていかれてしまったし、
   伶佳たんから聞いた『アレントリオ』とか言う、ねじー(私)達のパチモントリオは行方知れずだし、
   一体、どうすれば良いのねじーヽ(´ー`)ノ」

久々に長い台詞をもらえたと思ったら、ただの状況説明台詞な
『アレトリ・ココ』こと螺野 子子(になの ここ)芸名:ココたん
なのであった…が、

蝓子「…くくく…」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

…あいも変わらず、コピペに見える台詞の
『アレトリ・ユコ』こと蛞野 蝓子(なめの ゆこ)芸名:ユコたん
『アレトリ・モコ』こと毬野 藻子(まりの もこ)芸名:モコたん
よりは、マシなのかも知れない…
714ほんわか名無しさん:03/05/19 13:29
「リリスちゃん、それにね、私、あなたに出会えたことが何よりも…。」
「えっ……。わっ、わたしも……。」
まるでリリスの抱えてきた数千年の業がその瞬間、
静かに、しかし蒼穹に解き放たれていくようだった。
二人は胸を高まらせながら、裸のままキュッと寄り添う。
(なんだろこの感じ…すごく、すごくせつない…。)
麻衣子は惚けた表情でリリスと額を触れ合わせ、彼女の唇を見つめる。
「麻衣子ちゃん、お願いがあるの…。」
リリスは、透き通った輝きを放つエメラルドの瞳を閉じると言った。
「わたしのこと忘れないで。約束して……。」
一筋の涙が流星のように伝う。
麻衣子はただならぬ雰囲気を感じ取ると、その栗色の瞳を潤ませて言った。
「いやっ、いやだよ…。」
「そしていつか何処かでエメラルドの瞳の少女に出会ったら、伝えて欲しいの。」
「どうしてそんなこと言うの?ふっ、えぐっ……。」
「こう伝えて。『あなたはあなたの時間を生きて』って……。」
涙をこぼしながら、麻衣子は何度も何度も頷く。
「約束だよ?」
「…うん!じゃあ、その少女に出会えるように、おまじないをして。」
次の瞬間、リリスは黙って麻衣子の唇を奪った。
お互いの腕が両者の存在を確かめ合い、何かをまさぐるように絡み合う。
照明に照らされて虚ろにゆらゆらと漂う二つの影は、その光と闇の彼方に溶け合った。
永遠に────…。
715ほんわか名無しさん:03/05/19 13:51
子子「ねじーヽ(´ー`)ノとりあえず、最後にアレントリオが目撃されたと言う噂のある
   ここから、手がかりを調べるとするねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「…くくく…」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

…と、その時

アリー「もう其の必要はありませんが、何か?」
メル「見事なお約束的台詞だな姉者!」 リン「お約束ばんざい〜☆」

アレトリオとアレントリオの初邂逅は、まるで誰かの意図に操られるかの様であった…

楠くるみ「うふふ・・・。うまくいったのにゃ?」
エンデュミオン「目障りな者同士を潰し合わせる・・・。お約束だが合理的だ。」
ルナ「でもエンデュミオン、スーツの無いアレトリオンじゃ噛ませ犬にもならないと思うわ。」

…意図に操られているのであった
716713@閑話:03/05/19 14:00
>>713>>714の順番は入れ替えてお読みください(汗
717ほんわか名無しさん:03/05/19 14:16
>>716ナイス(・∀・)b☆
718ほんわか名無しさん:03/05/19 15:04
〜いずな邸

いずな「う〜ん、おやすみエカチェリーナ♥それにフランソワー♥」
いずなは二つの熊の縫いぐるみに愛しげに頬ずりして、ベッドに沈んだ。
「おやすみにゃー・・・」
バタン!
メイド「大変ですいずな様ぁ!!」
いずな「ギャー。゚゚(゚▽゚。)°゚。
メイド「アレトリオにしかけていた発信機が・・・。」
いずな「ノッ、ノックくらいしてから入りなさいよぉ!!」
メイド「ハッ!すっ、すみません!!(あら、シマシマの三角帽♥」
719ほんわか名無しさん:03/05/19 16:19
…体育館裏…
戦況は火を見るよりも明らかであった。
片や、普通の学生服に貧相な肢体のツルペタトリオもといアレトリオ。
片や、ダサいスーツに豊満な肉体のボンキュッボントリオもといアレントリオン。

萌力ならばツルペタトリオに軍配が上がるのだが、
この場面では、残念ながら戦力が優先されるゆえに、
スーツがなく、アレトリオンになれないアレトリオは、
見せ場である変身プロセスを省いて変身した、アレントリオ…
アレントリオンに追いまわされるだけであった。

そして、体育館の上からソレを見物している獣装戦隊(名前、何?)の三人は、
一方的な鬼ごっこと化している戦闘に、飽きを感じていた。

この時、その場に起こっている異様な現象に気付くものは、
その現象を起こしているアレトリオ以外には、いないのであった。
720ほんわか名無しさん:03/05/19 19:41
やがてそれは誰の目にもはっきりとしたものに変った。
地面には、いつのまにか3つの魔方陣が描かれている。
その魔方陣がそれぞれ光を放っていた。
「・・・今ここに召喚する(ねじ/くくく/ほっしゅ)」
三人の声が同時に響く。
どうやら、アレトリオの三人はただ逃げまわっていたのではなく
地面に魔方陣を描き、さらには呪文の詠唱まで行っていたらしい。

三人の声に反応して魔方陣から現れたのは
モンスターと言うよりは、むしろ機械に近いものだった。
モチーフは犬のようである。
四本足のそれは、高さ3m・全長7m位はあろうか。
とげ付きの首輪が妙に禍禍しい。
一瞬アレントリオンの攻撃の手が止る。
「いまだ、いくねじよ!"ケル"フュージョン」
「”ベル”フュージョンくくく」
「ほっしゅ、”オス”フュージョン」
三体のモンスターの額の部分から伸びた光が、
それぞれ子子、蝓子、藻子を包む。
三人の体が、モンスターに吸いこまれるように消ると同時に
三匹の機械の犬の目に赤い灯が灯った。
721ほんわか名無しさん:03/05/19 22:26
子子「ねじーヽ(´ー`)ノなんて事が出来ると良いのにねじーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「…くくく…」 藻子「ほっしゅほっしゅ!」

…当然、そんなに都合の良過ぎる ご都合主義は通用しないのであった。

アリー「くっ…気のせいか、アレトリオに追いつけないのですが、何か?」
メル「見事な状況説明台詞だな姉者!」 リン「まてまて〜♥」

アレントリオンはダサいスーツの装備により、各種ステータスが上昇し、
移動速度も上がっているはずなのであったが、何故かアレトリオに追いつけずに居るのであった。

楠くるみ「うにゃ…。なんかおかしいのにゃ。」
エンデュミオン「アレトリオの、あの移動速度…。速い、速すぎる。」
ルナ「通常の3倍以上のように見えるわ。…奥歯に加速装置のスイッチでも仕込んでいたのかしら?」

ややマニアックな台詞が混じっている気がしなくも無いが、
獣装戦隊(名前、何なの?ってばさ)は、事の異常さに気付いていた。

楠くるみ「ふ…ふにゃ〜。ま、まさか。アレトリオは、あのロストナンバーズなのかにゃ!?」
722ほんわか名無しさん:03/05/19 23:00
「そのお話、詳しく聞かせてもらえるかしら?」

楠くるみ「にゃッ!。何者にゃ!?」
獣装戦隊(名前、以下略)の背後に現れたのは、>>613参照の、神薙いずな率いる美少女風紀保守戦隊「トリニティ」であった!
そう!まさに、今、ここに4組の漫才トリ…もとい、4組の3人組戦隊(?)がそろったのであった!
723ほんわか名無しさん:03/05/19 23:01
>>721
全部読む→コントロール+F
→獣装で検索しる!
724ほんわか名無しさん:03/05/19 23:05
現在状況

・「アレトリオ」vs「アレントリオン」
・「獣装戦隊(名前未定)」vs「トリニティ」
・「リリス」×「麻衣子」

・・・収拾はつくのかな?
725ほんわか名無しさん:03/05/20 00:27
(;´Д`)ハァハァ
726720:03/05/20 05:56
ガーン!つぶされてるよ。
727ほんわか名無しさん:03/05/20 10:27
>>720-721ワロタ
728ほんわか名無しさん:03/05/20 11:18
〜そのころ、学園付属都市、校門に通じる十字路 AM 3:42

一台のシェルビー・マスタングが赤信号の為にエンジンを轟かせながら停止した。
百合子「そこを曲がったら、あなたとはお別れね。」

助手席にはアッシュ・ド・ピエール、後部座席には一人の女性が安らかな寝息を立てている。

百合子「会社が何を考えているのかわからないけど、協力は感謝するわ。
    それでも、敵であるあなたにあのゲートをくぐらせるわけにはいかない。」
ピエール「まぁいいさ。そこの嬢ちゃんの遺伝子サンプルは手に入った。」
百合子「風院さつき・・・。まさか校長の言うワクチンが"激しくC型のキャリア"だったなんて。」

ピエールは後部座席のさつきの寝顔を覗きこむ。

ピエール「こいつが未来への鍵か・・・。」
百合子「どうしてあんな罠だらけの遺跡に眠っていたのかしら。」
ピエール「まぁ、罠だろうよ。」
そう言ってピエールは煙草に火をつける。
百合子「・・・煙草、変えたんだ。」
ピエール「いつまでも昔のままじゃないさ。」
百合子「でも、こうしてると昔を思い出すわ。」

信号が青に変わる。
と同時に、百合子は車のキーを回し、エンジンを停止させた。

百合子「・・・どうしてあの時、約束を守ってくれなかったの?」
ピエール「・・・・。」
答えなんていらない、ただこの刻が少しでも続いて欲しい。百合子はそう願っていた。
729ほんわか名無しさん:03/05/20 11:45
〜レイコの研究室。

レイコ「あなた、寝なくていいの?」
CJ「えぇ、今のうち出きることをしなくては・・・。」
レイコ「明日の合唱祭はどうするの?」
CJ「わたし、練習出てないしそれに、クラスに知ってる人、いないから・・・。」
レイコ「歌上手いのにねぇ〜。」

突如ドアが開き、威勢のいい少女が一人飛び込んできた。

博多ひよこ「まいどおおきにぃ〜!ひよこ宅配で〜す!」
レイコ「は・・・?!」
ひよこ「CJさんに、アイリス様から光磁気ディスクをお届にまいりましたぁ!」
CJ「ごくろうさま。はいこれ銀ダコのポイントカード。」
ひよこ「えろうおおきにぃ!あ、そや、あんたらの仲間やないかな。派手に暴れとる輩がおったで?」
レイコ「ハ?!どっ、どこでよ?」
まさよ「ここでよ」
レイコ「えっ・・・でも・・・」
まさよ「早く舐めろよっ!また入れるぞ!?」
レイコ「わかったよ・・・んっ・・・」
ぺチョぺチョ
まさよ「そうそう・・・それでいいのよ」
731ほんわか名無しさん:03/05/21 06:24
「まさよはそこでレイコの秘唇にその焦げるように温かくぬめった秘蜜を・・・」
「なーに読んどるんやリューフェイ!!(ズコッ」「ブッ!」

〜図書館地下・文書閲覧区画地下第72層〜

劉飛と雫(幽霊)は"狐憑き"に関する資料と、ある本を探すためにここに来ていた。
開架を蹂躙する幾層ものメタリックなキャットウォークの網目が、歩くたびに広大な空間に金属音を響かせる。

「ほんまこんなとこにあるんかいな〜。サイレンの絵本の暗号を解く手がかりなんて…。」
「俺の仕入れた情報なんだ。間違いないって!」
「そっかー?ウチを狐憑きと間違えて祓うところだったくせになぁ。」
「うっ・・・。ほらほら、怠けてるとほんとに祓っちまうぜ?」
「あんさんもエロ本はちゃんと元の場所に戻しなや!ウチだって。」
「あ?なんで?」
「友達とも約束してるんやー。この本の謎が解けたら"鏡の間"に連れてってやるって。」
「まぁーそれは何の話かよくわからないけどさ、狐とかいう奴の妖気は微塵も感じられないぜ?」

グラッ。
突如図書館中が振動に包まれた。

「…な、なんや地震か?!リューフェイ!足元!!」」
「へっ?!」
足場が崩れ、劉飛は地下の奥深くへ転落していった
732ほんわか名無しさん:03/05/21 06:28
第50章 >> X-Zibit-I
733ほんわか名無しさん:03/05/21 06:50
「な…なに?今の?」

神薙いずなは眼前で繰り広げられた光景に立ちすくんでいた。
引き立て役の取り巻きA・Bはまたもや気を失っている。

爆炎の跡にアレトリオンの三人が倒れている。
その煙幕に対峙するかの如く、アレトリオはたたずんでいた。
「すっ、すごいねじー、こんなことが出来たなんてヽ(;´ー`)ノ」
「・・・くくく。」
「ほっ(ry」

獣装戦隊"アルファブリード"が高見からその様子を眺めている。

「やはりロストナンバーズか…。」
「勝負あったにゃ!」
「始末するのはもう二人、無明真眼二刀の使い手と、"霧裂きの弓の一族"の末裔・・・。」
734ほんわか名無しさん:03/05/21 07:53
「ま・・・まだ、終わってませんが、何か?」
「そ・・・そのとおりだ、姉じゃ」「おわらせはせん!おわらせはせんぞ〜☆」
消えかけようとする命の灯火を無理矢理繋ぎ止めて立ち上がろうとするアレントリオン・・・
「しぶといのねじー!今度こそ、校長先生に使用を禁止されていた力を完全開放して
骨の一本も残さず、この世から消滅させてくれるわ!」
「・・・くくく。まるで、悪役のようなセリフですなぁ」「ほっしゅほっしゅ!」
そう言ってアレントリオンに近付いたアレトリオは、禁断のセリフを口にした
「ねじー重装ねじー!」「・・・くくく。重装・・・」「重装ほっしゅほっしゅ!」
子子の姿が、擬人化された螺子のように変わる・・・
蝓子の姿が、二足歩行する蛞蝓のように変わる・・・
藻子の姿が、天然記念物の毬藻のように変わる・・・
「ちょっとまてーい!」
いずなの、一寸待ったコールが体育館裏に響き渡る
「重装を肉眼で確認にゃ!博士に連絡するのにゃ〜」
今時の猫耳娘らしくケータイを取り出す、くるみタン(;´Д`)ハァハ(ry
735ほんわか名無しさん:03/05/21 09:33
CJはモニターに羅列されたデータを睨みつけながら、深い吐息を漏らした。
……眠い。さっきの地震で少しは眼が冴えたものの、流石に三日寝てないと堪える。
レイコは騒ぎを嗅ぎつけた後、レイジィバツースの何人かに収集をかけて出かけてしまった。

アイリスから受け取ったミッフィー柄のディスクにはご丁寧に似顔絵まで書いてあったが、
収められているデータは上層部の最高機密、クリプトデータをクラックした禍禍しいものだ。
CJはそこに恐るべき記述を発見した。

「…イヴ、クローンNo.07暴走……。C-ウィルスとの適性値ピーク…。隊員一名を殺害…。」
画面は目まぐるしくスクロールしていく。
「二つのアレトリオン…。敷島博士の実験…。獣……。言語コードの試験流布?」
彼女の頭の中で、幾つかの出来事がまるで図形を形作るかのように纏まり出した。
何かの細工だろうか、モニターにデータ破壊の兆候を警告するメッセージが表示された。
「まだだわ…お願い、もう少し持って!」
コピーを同時進行させながら、尚も画面を送る。
「…学園内にクリプトルームを設計……試験波に応答あり……。計画の中断を…。」
(どういうこと?何があったのかしら…?)
次の一節に、CJは電撃のような戦慄を覚えた。

「ゼロ次元準位におけるC-ウィルスを媒体とした量子系時間軸の未来との感応値が大幅に上方修正…」
736ほんわか名無しさん:03/05/21 14:40
麻衣子はふと目覚めると、自分がまだマリーナの格納庫にいることに気付いた。
板張りの隙間から強烈な朝陽のビームが射し込んでいる。
隣では一枚のタオルケット越しに、リリスが天使のように安らかな寝息をたてていた。

麻衣子「あ、寝ちゃったんだ・・・。みんなに心配かけちゃったかなあ?」

リリスがムクッと起きあがる。
半分寝惚けながら目を擦るとすぐに麻衣子に気付き、恥ずかしそうに目を合わせて微笑んだ。

「お、おはよー。」


〜竜村の車

「合唱祭?なんじゃそりゃ?」
何やら大きなイベントがあるらしいことに気付いた竜村は、登校中の生徒に事情を聴いていた。

「え、ええ、私も転校してきたばかりで良くはわからないんですけど。」
「まぁあれよ。聖人を祭るためのイベントね。クラス毎に競うのよ。」
竜村「ここってミッション系のスクールだったんかぁ。」
ひよこ「優勝したクラスには女神の祝福があるとかなんとかっちゅー話やで!」
竜村「ふーん・・・。」
ひよこ「ほな情報料頂くで?」
竜村「金取んのかよ!」
ひよこ「世の中金や!当然やきー!」
竜村「こーゆーものなのだが・・・」
ひよこ「げっ、警察かいな!」
竜村「そうだ、ついでだからもう一つ聞きたいことが・・・。」

そう言って竜村はアレトリオの尾行時に撮った写真を突き出した。
博多ひよこ「あ?こいつらなら昨日・・・(うわっ、こいつストーカーか?)」
737ほんわか名無しさん:03/05/21 15:46
滝村「な、なんじゃこりゃ〜!」

ひよこからの情報により、体育館裏へと向かった滝村が見たものは
3人の、四肢を失い倒れている少女
3人の、首から下が骨と化した少女
3人の、全身ミイラ化した少女
3人の、全裸で立ち尽くす少女
計12人の少女達であった…

子子「ねじーヽ(´ー`)ノあなたは先日、ストーキングしてた人ねじねー」
蝓子「…くくく…」藻子「ほっしゅほっしゅ!」

「ッ!」滝村は反射的に拳銃を引き抜くと、ためらわず引き金を引いた

パンッ! パンッ! パンッ!

3つ、乾いた音が体育館裏に響き渡る
3つ、少女等の額に穿たれる銃痕
3つ、確かな重みを持った倒れる音
3つ、滝村の口から吐かれる息

そして、時は数時間前へと戻る…
738ほんわか名無しさん:03/05/21 16:10
くるみ「にゃ!もしもし、博士かにゃ!コード37564、ロストナンバーズを発見したのにゃ!」
敷島「なんだって!?起動、タトール!」
突然、くるみの足元にあったマンホールの蓋が、亀を模した4本足のメカへと変形する
いずな「…何で体育館の屋上にマンホールの蓋があるのかと思っていたら…」
いずなの呟きを無視し、タトールの甲羅から敷島の姿が浮かび上がる
敷島「はっはっは。こんなこともあろうかと
こんなこともあろうかと
こ ん な こ と も あ ろ う か と
考えて、設置しておいたのだ。」
いずな「…普段から何を考えているのかしら…」
敷島「さて、くるみ君…」
くるみ「ふにゃ?」
敷島「君も良い年頃なんだから、バックプリントの下着は卒業しては如何かな?」
 ズルッ
思わず脱力し、足を滑らすアルファブリードとトリニティ
当然、屋上で足を滑らせれば…落ちるのであった
739ほんわか名無しさん:03/05/21 16:42
下では、すでにアレトリオが重装を終え、アレントリオンへ止めを差し終わっていた
アリーは四肢を失い倒れていた
メルは首から下が骨と化していた
リンは全身ミイラ化してた

いずな「ヒィ…な、何をどうすれば、こんな事に…」
子子「ねじー。何かを思い出して来たねじー」
くるみ「うにゃっ!エンデュミオン、ルナ、戦闘体勢をとるにゃ!」
エンデュミオン「…」ルナ「…」
くるみは返事の無い仲間二人を振り返り、見、声にならない悲鳴をあげる
蝓子「…くくく…ごちそうさま…」藻子「水分補給ほっしゅほっしゅ!」

エンデュミオンは、蝓子の体表から出される溶解液で首から下を溶かされ
その溶けた肉や内臓等を飲まれてしまっていた
ルナは、藻子の体表から生えてきた大量の藻に絡み付かれ
首だけを出した球状になっていたが、体の水分を全部、藻…藻子に吸い尽くされてしまっていた
そして、そのあまりの光景に腰を抜かし、失禁してしまった くるみの四肢に
子子の指先から打ち出された螺子が、1本づつ…計4本突き刺さった

子子「ねじー。だんだん、使い方を思い出してきたねじー」
そして、くるみに打ち込まれた螺子が爆散…四肢「だけ」を吹き飛ばした
740ほんわか名無しさん:03/05/21 17:20
いずな「あっ…ああ…」
あっという間に、アルファブリードをアレトリオンと同じにしてしまったアレトリオに
いずなは、かける言葉を失っていた…
…そして、それと同時に、恐怖心が芽生えた…
いずな「取り巻きA・B!すぐに逃げましょう!」
しかし、取り巻きA・Bは気を失ったままだった…
蝓子「…くくく…」藻子「ほっしゅほっしゅ!」
取り巻きA・Bは、あっさり蝓子と藻子の餌食となってしまった
いずな「そ、そんな…私達は味方のは…」
ビスビスビスビスッ!
いずなの四肢に、くるみと同じモノが打ち込まれ、同じ結果になる
子子「ねじーヽ(´ー`)ノ完全に思い出したねじーヽ(TーT)ノ」
蝓子「…くくく…。そう、あの時も同じでした…私たちは…」
藻子「記憶操作・封印ほっしゅほっしゅ!」
動く者がいなくなり、重装が自然に解かれ、全裸になったアレトリオは立ち尽くす…
…あの時と同じように…

敷島「やれやれ…あの時のまま…あの時と同じなのか。」
岩山「まただ…また、止められなかった…」
敷島「…しかたないな。どの道、ここからでは間に合わなかった。」
岩山「敷島っ!貴様と言う奴は!」
タトールを通して、事の一部始終を見ていた二人に、あの時と同じ亀裂が入ったのであった

…そして、アレトリオは立ち尽くしたまま朝が来、滝村が来たのであった…
そして、アレトリオの時間が再び動き出す…忌まわしい記憶を閉じ込めて…

子子「ねじーヽ(´ー`)ノあなたは先日、ストーキングしてた人ねじねーヽ(´ー`)ノ」
蝓子「…くくく…」藻子「ほっしゅほっしゅ!」

パンッ! パンッ! パンッ!

…そして、時は流れ出す…二度と動き出さぬ12人の少女の時を置き去りにして…
741 ◆4ORsnekogo :03/05/21 18:27
>>737-740
・・・・
742ほんわか名無しさん:03/05/21 18:30
ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン
いずなタンが死…死…(TдT
743ほんわか名無しさん:03/05/22 02:30
竜村「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
自分がとっさにとった、その行動に滝村は困惑していた。
滝村「・・・なんでだ・・・なんで、撃っちまったんだ、俺は。」
地面にひざまづき、叫ぶように声を出し、自問自答するも、答えは出ないのであった。

そこへ忍足でやって来た ひよこ。
ひよこ「う〜ん。警察とは言え、やっぱストーカーやし。こら、見とかんと気になって、今夜は眠れへんわ〜。」
その光景を見た事で、数日間眠れない事になるのだが・・・。

ひよこ「こ、これは・・・。」
ひよこがそこで見たのは、ストーカー刑事こと滝村が、
拳銃を片手に死体の前に座り込んでいると言う、家政○婦は見た的状況だった。
ひよこ「こら、まずいわ。急いで通報せんと、次はうちが殺されてまう。」
素早く足音を立てず、その場を離れ警察へ110番通報したのであった。

十数分後。手錠をかけられパトカーに乗せられた滝村は
「・・・ちがう・・・ちがうんだ・・・こんな・・・こんな・・・。」
抵抗する素振りも見せず、自失呆然とした表情で呟き続けていた。
「・・・ごめんなさい。ごめんなさい・・・ゆるしてください。ゆるしてください・・・。」
隣の座席に座った、かつての上司である谷口警部は思わず耳を押さえた。
「・・・しぬー。しぬー・・・ ・・・にげてーっ!」
滝村の絶叫が車内に響き、滝村は気を失った。
744山崎渉:03/05/22 02:41
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
745ほんわか名無しさん:03/05/22 02:57
そのころ、レイコは病院のベットの上にいた。
研究室を出て少し行った所で、焦っていたのかバランスを崩し
壁に頭をぶつけて気を失っていたのだ。
幸いな事に、収集をかけられたレイジィバツースのメンバーが
何時までたってもレイコが姿を現さない事に疑問を抱き、探しに来たので
すぐに病院へと運び込まれ事無きを得たのだ。
が、彼女たちは知らない。
あのまま体育館裏に行っていたら、一体どうなっていたのかと言う事を。
746ほんわか名無しさん:03/05/22 05:50
書き手にとってはある意味スリリングだ…w
747ほんわか名無しさん:03/05/22 08:02
麻衣子とリリスは寮で身支度を整えると、急いで合唱祭の会場へと向かった。
テーブルの上には杞憂からの書置きとサンドウィッチが置いてあった。

"昨日はごめんね。お腹空いてたら食べて"

キャンパスに出た二人だが、すぐにその異常な雰囲気を察知した。
「何?何があったの…?!」
学園中に訃報を告げるベルが鳴り響く。
イベントの為に集まっていた生徒がゾロゾロと帰途に着いていた。
「体育館裏で事件があったそうよ…。生徒と部外者が数名惨殺されたんですって…。」
「犯人は数日前から車で張りこんでたって…。」
「やだーあたしその人知ってるよー…。」
ウワサがウワサを呼んでいる。
「…あのレイジィバツースに死者が出たとか…。」

瞬間、麻衣子は不安に駆られた。真っ先に脳裏に浮かんできたのは…。

「杞憂ちゃん…!!」
「…きっと大丈夫よ」

リリスが声をかけるが、麻衣子は依然青褪めたままだ。
腕に取り付けているコムリンクが、戦隊集結の報せを忙しなく告げている。
748ほんわか名無しさん:03/05/22 08:05
第51章 >> Synergy Fall
749ほんわか名無しさん:03/05/22 08:34
〜ドイツ・ヴェスターヴェルト山地の古城〜

シュトフ・アッセンブリーの拠点でもあるこの古城は中世期に建てられたもので、
歴史上の数名の人物が偶然にも、この場で数奇な運命を遂げているらしい。
イヴはバルコニーから、宝石の如く散らした星空を言葉もなく、ただその瞳に受け止めていた。

「……どう?ここ変わってないでしょ?」
妖艶な衣装を纏ったリュシオンがイヴの背後に手を回した。
「また昔みたいに、星読みをして差し上げても…」
「…触らないで。」
リュシオンは寂しそうに顔を俯け、グラスを片手に部屋に下がる。
「……ルシルは?彼に会わせて。」
「それは出来ないわ。今のあなたには会わせられない。」
「…そう。」

長い沈黙が間を支配する。
数千年もの間変わらない星々の輝きが、冷たくバルコニーに降り注いでいた。

「…ずっとあなたのことを考えていたの。百年前のあの日からね。」
その言葉を耳にした瞬間、イヴの中で何かが音を立てて崩れたような気がした。

「…イヴ、泣いてるの?」
「……わたし、何してたんだろ。ずっとこの日を待っていたのに。。」
「復讐のために?それとも何か答えが欲しかった?」

イヴのルビーの瞳が涙に潤んでいく。

「あなたには何が見える?未来のわたしが何て答えてるか見えるんでしょ?」
750ほんわか名無しさん:03/05/22 08:58
リュシオンはふっとグラスに視線を落すと、指先でその縁をなぞる。
クリスタルの透き通った響きが、星々の輝きに共鳴した。

「リリスの声は届いてたのね。あなたは彼を信じていた。だけど感情が理解を濁した。」
「……。」
「イヴ、いつか話したわね。未来が見えるということはどういうことなのか…。」
彼女の両腕がそっとイヴの肩に乗せられ、そのまま胸の前で優しく包み込んだ。
「遠くの景色を見て。地平線の果て。あそこが私に見える時の果て…未来よ。」
「…どうしてこんな悲劇、防げなかったの?」

ギュッっと彼女を抱きしめる力が強くなった。

「ごめんね。でもわかって欲しいの。物事には過程があるわ。それがどんなに悲惨で酷いものであっても。」
「……わたしたち、もう拭いきれない罪を犯してしまった。。」
「いい?視界が遠くに行くほど中心に収束するように、遥か遠い時間の未来もある一点に収束するの。」
「…?」
「そこに至る道は一つではないけれど、振り返れば辿った道はただ一つ。そして理解するの。
  いまなお視線の先に、時の果てが私を誘っていることに……。」
「それがあなたの答え?」
「…いいえ、まだ完璧じゃないわ。」

リュシオンはイヴの耳元に優しく吐息を吹きかけた。
だがその声の響きは、少年のそれに取って代わっていた。

「愛してるよイヴ。」
「…ルシル。ごめんなさい。わたし…わたし……。」
イヴは両腕を後ろに、ルシルの頭の温もりを捉えようとする。
ルシルは力強い眼差しを遥か地平の星に向ける。
「さぁ、未来に放ってしまった災厄の種を摘み取らなければ…。」
751ほんわか名無しさん:03/05/22 11:25
http://human.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1053529667/l50
提案なのですが、感想は↑に書きませんか?
750も超えて残りも少なくなって来ましたので...
スレ汚しすみません。
752ほんわか名無しさん:03/05/22 16:30
事件の次の日の夜、わたしは一人学園のイベント施設の屋上に佇んでいました。
転校してきてはじめての合唱祭はどうやら延期になったらしく、
今は犠牲になった生徒の弔い休日が続いています。
"狐狩り"とどういう関係があったのかはわかりませんが、
あの子を庇っていたいずなさんが亡くなった今、私にできることはなんなのか・・・。

・・・パラッ
「あ、これ・・・」
今日歌うはずだった曲の楽譜・・・。
譜題は"Dreaming Of You"クラスのみんなで作った歌だとか。
「みんな、あんな一生懸命練習したのにな。。」
私はすっと夜空を見上げ、曲の一節を徐に口ずさんだ。

どうしようもないこの願い せめて そのいたわりを・・・
抱え込めはしないこの願い あなたの救いが限り

・・・夜空を見上げると、かつては一つだったのに、無数に引き千切られた光彩がその刹那刹那に生命の炎を燃やしている。
そうしてわたしに何か訴えている。わたしの声は彼らに届いているのだろうか・・・。そして歌い続ける。

星空の夜には 愚かな夢想家になって 流れ星を待ちつづけるの
でも もし流れ星が来なかったら? わたしの夢は儚く消えてしまうの?

"I tell you baby all my dreams come true..."

「えっ?」
振り向くと、そこにはあの無言の少女、ももちゃんが立っていた。
「・・・今、あなたが歌ったの?」
彼女は黙って微笑むと、わたしに先を促した。
753ほんわか名無しさん:03/05/22 16:33
夢は叶うわ あなたが隣で眠っているだけでいい それだけ 何も疑わないで・・・

ももちゃんがわたしの声に声を重ねる。

わたしの夢を見るあなたを 夢に見させて
壊れて失われたはずの愛を 今この胸に抱いて 未来に夢を解き放つの
あなたと交わした約束が わたしたちの出発した場所で果たされる


「・・・あなた、声が戻ったの?」
ももちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
なんて純真な笑顔なんだろう。
何か大切なものを取り戻したような表情だった。
「おねぇちゃん、名前は?」
「えっ?わたしの名前はね・・・」
754ほんわか名無しさん:03/05/22 16:56
レイコは悲劇のあった体育館に一人、
何かを振り払うようにバスケットに集中していた。

・・・私の管理不行き届きだわ。あの悲劇は私の責任。

「帰って休んだらどうだね?」
「・・・校長。」
レイコは構わずドリブルを続けると、フリースローを放つ。
が、ボールはリングに冷たくあしらわれてしまった。
「私なら大丈夫ですから。すぐに仕事に戻ります。」
上着を取って去ろうとしたとき、校長が彼女の腕を掴んで引きとめた。

「君のせいじゃない。どうすることも出来なかったんだ。運命だよ。」
「・・・研究室に戻ります。」
「レイコくん!」

レイコは涙目を悟られないように足早に更衣室に入ると、
シャワーを全身に浴びてうなだれた。
「校長の言う通りよ。休んでくれなきゃ使い物にならないじゃない。」
後ろから響く声。
レイコはゆっくりと後ろを振り向くと、その人影を確認した。
「・・・百合子。」
755ほんわか名無しさん:03/05/22 23:59
「・・・百合子・・・なぜ・・・。」
百合子の一撃により、崩れ落ちるレイコ。
「あなたには休息が必要よ・・・そして私も・・・ね・・・。」
百合子はレイコにバスローブを着せ、両腕で抱き上げると更衣室を後にした。

そのころ、杞憂は体育館裏にいた。
ーーー KEEP OUT ーーー
現場には立ち入り禁止を示すテープが張られている。
「・・・。(もしも、あんな(>>745)事が無く、ここに来ていたら・・・。)
いっそ、私も、こうなっていた方が良かったかも・・・。」
「おいおい、なに物騒な事を言っているんだい、プリンちゃん。」
突然、横からかけられた声に、杞憂が目を向けると、
そこには何時の間にか、派手なグリーンのスーツに身を包んだ男が立っていた。
「あなたは誰!ってか、プリンちゃんって何!?」
「あ〜。『百聞は一見にしかず』って言うだろ、プリンちゃん。」
佐川は、気だるそうにポーズを取ると「獣装」した。
「知ってるかい、プリンちゃん。獣装と重装の違いをさぁ。」
「そんな事、知ってるわけ無いでしょ!」
杞憂はスーツを身にまとうと、杖を召喚し詠唱を始めたが、
「遅い。遅いんだなぁ〜、プリンちゃん。」
詠唱が終わる前に、佐川の攻撃が杞憂の意識を奪う。
「さってと〜。イイところへ行こうか、プリンちゃん。」
杞憂を片手で抱き上げると、佐川はその場を後にした。
756ほんわか名無しさん:03/05/23 07:21
第52章 >>Tuning birds.
757ほんわか名無しさん:03/05/23 07:59
「…どういうこと?」

レイジィバツースのオペレーションルーム。
麻衣子を筆頭とする総勢34人の隊員が、黒田重工の手先に取り囲まれていた。
不安そうな仲間達をかばうように、麻衣子は怯まず前を進み出た。
三上慶子は冷たい微笑を浮かべる。

「この学園とレイジィバツースの指揮権は黒田重工鰍フものになったのよ。」
「うそっ!レイコ先生は?!」
お互いに睨みあう。

「安心したまえ。彼女と校長先生の承諾なら取ってあるよ。」
そう言いながら、奥から敷島がコツコツと歩み出た。
「事態は緊急を要するんだ。速やかな協力を申請したい。リーダー、如月麻衣子殿。」
そう言って敷島は杞憂のリボンをちらつかせた。
「なっ!?彼女をどうしたの?!」
「…あなたたちの狙いはわかっているわ。」
CJが進み出て言った。
「……クリプトルームね。でもどうしてそんなに急ぐの?」
「君らの校長があまりにも悠長だったんだよ。もう奴らはすぐそこまで……」

ガコン!

突然オペレーションシステムの電源が落され、辺りが闇に包まれた。
758ほんわか名無しさん:03/05/23 08:23
「みんな今よっ!」
麻衣子の鶴の一声で、レイジィバツースは一斉に蜂起すると包囲網を強行突破した!
「まずいっ!早く捕まえろ!!」敷島が叫ぶ。

「とにかく地上に出て散りましょう!!(杞憂ちゃんを探さなきゃ…)」
「この妖気は何?昔何処かで…」リリスは何かに怯えているようだ。
「麻衣子ッ!前!!」伶佳が青褪めながら叫ぶ。

地上に続く広大な回廊の前方から、醜悪な怪物が無数に襲いかかる。

「なっ、なっ、なっ何何何???」
「麒麟……。」


〜学園外、レイジィバツース基地地上施設。

土砂降りの中、黒田重工鰍ニ謎の部隊が激しい戦闘を繰り広げていた。
ヘリコプターからそれを見下ろす男。劉翻が通信機を耳にあてる。

「…えぇ、こちらは順調ですよ。必ずや、鍵を手に入れてみます。」
司馬令はそう答え、無線機を下ろした。
「くくく…。ロストナンバーズの暴走は好都合だった。
 "狐狩り"も鍵候補の絞込む結果になったし、全てはこちらの思惑通りに進みそうだ…。」
759ほんわか名無しさん:03/05/23 11:14
さくら「みんなどいてどいてぇー!!」
さくらが威勢よく麻衣子の頭上を飛び越えていった。
そして呪文を詠唱する。

「煉獄の竪琴は 汝の運命の輪を揺らす 夢幻の封縛になりて その因果を律する矢とならん!」

さくらから無数に光り輝く帯が現れ魑魅魍魎に絡みつく、互いに叩きつける。
「滅!」
怪物が一瞬で蒸発する。
リリス「す・・・スゴイ・・・。」
伶佳「気を緩めないで!まだまだ来るわよ!!」
怪物とレイジィバツースが入り乱れる。

伶佳「麻衣子後ろ!」
麻衣子「へっ?」
麻衣子は片足の怪物に鷲掴みにされ、壁に強く叩きつけられた。
「ぐはっ!!」
伶佳のボウガンが怪物に突き刺さる。
伶佳「ど、どうしたのよ?調子悪いの?」
麻衣子「う、ううん・・・ス、スーツの力が・・・働かない・・・。」
760ほんわか名無しさん:03/05/23 11:33
混戦が続く中、一人、また二人と仲間が倒れていく。
麻衣子「なんなのこいつら?強過ぎるっ!」
「リーダー、強行突破は不可能ですっ!」
伶佳「あなたは下がってて、スーツの防御力もかなり落ちてるわ!」
リリス「私も変身して戦うわ。」
そう言ってリリスは悪魔の姿に変貌を遂げる。
麻衣子「・・・お願い、無理はしないで。」
リリス「えぇ、でも彼らは恐らく神獣麒麟のクローン。
    過去にアレの種を摘み取らなかった私の責任でもあるわ。落とし前はつけなくちゃ!」

怪物の一匹が伶佳に炎を吹きかける。
が、炎は伶佳の突き出した手の平でくるりっと円を描くと、一瞬白く輝いて消えた。

麻衣子「い、今のは?」
伶佳「重力と空間の方向を変えたのよ。シンクロ率が上がったら出切るようになったの。」
リリス「因果律を操作したのね。スーツ本来の作用だわ。」

後方の隊員が叫ぶ。
「リーダー!C-TAPPAが後ろから!!」
761ほんわか名無しさん:03/05/23 11:58
伶佳「紫音と非戦闘要員はこっちに来てっ!」
レイジィバツース屈指の戦闘要員である"紐使い"紫音が
CJ、アイリスを引き攣れて伶佳と合流する。
伶佳「このダクトを通ると途中から作業用トンネルに出るから、そこから常備軍に保護を要請して!
   麻衣子、あなたもよ。」
麻衣子「でもあたし・・・。」
リリス「大丈夫、後でまた会えるわよ。」
リリスは天使のように美しい、だが翳りのある微笑みを彼女に注いだ。
それが麻衣子に見せる、最後の笑顔だとは知らずに・・・。

麻衣子「う、うん。」

伶佳は四人を見送ると、圧倒的に優勢に立つ怪物群とC-TAPPAの戦闘に違和感を覚えた。
「C-TAPPAは・・・味方?!」

〜オペレーションルーム。

敷島「そうだ!あの小娘たちを援護しろ!!」
敷島はそう叫ぶと携帯をしまって慶子に毒づいた。
敷島「ったく、劉翻のやつ何考えてんだ!もし鍵に死なれたら・・・。」
慶子「彼は何かを知ってるのでは?」
敷島「何か?」
慶子「ええ・・・。例えば、鍵はレイジィバツースでは無いとか・・・。」
敷島「ふん!どっちにしろあの小鳥たちには死なれたくないんでね。」
慶子「・・・サイレンの翼が鍵を目覚めさせる。」

慶子はグッと婚約者のペンダントに握り締め、復讐の衝動を心の奥底に封印した。

「確かに、可能性を摘みとってしまうリスクは犯せませんね。」
762ほんわか名無しさん:03/05/23 16:54
離脱した麻衣子たちは一路、作業用トンネルを学園外に向かって走り続けている。
アイリスとCJは何やらコソコソと相談しながら、意を決したかのように麻衣子達を引きとめた。

「リーダー、わたしに提案がありますっ!」
「なっ、何なの?」
「わたしたちで奴らの出鼻を挫いてやるのよ!」
アイリスが息巻くが、シオンが冷たい口調であしらった。
「だめだっ!私はあなた達の護衛に付けられたんだ。私設常備軍に引き渡す義務がある。」
CJが彼女を宥めるように説明する。
「シオンさん、いいですか?奴らの狙いはクリプトルーム、通称"鏡の間"にある転移装置です。」
「転移・・・装置?」
「幸いなことに彼らはその場所を特定できていません。だから・・・」
「だから私達が先に?そこで何が起きると言うの?」
麻衣子が不安げに尋ねる。
「私にもわかりません。ですが、その位置とアクセスコードとなる人物は特定できました。
 彼女がいなければ装置は姿を現しません。」
「誰なの?」
「最近、麻衣子さんのクラスに転校してきた女性。彼女がアクセスコードです。」
「どういうことなのよ?」
シオンは何かを思案するようにアイリスに言った。
「して、そのクリプトルームとは何処だ?」
「・・・キャンパス・ステラ。学園の最上層よ。」
763ほんわか名無しさん:03/05/23 17:06
「そういえばわたし、彼女の名前知らない・・・。」
「"狐狩り"にあった生徒の遺伝サンプルを解析してていてわかったんです。恐らく彼女は・・・」
「・・・存在しない。」
アイリスが続けた。
「彼女は、何者かが現実に書きこんだ仮想プログラム・・・。」
シオンと麻衣子は顔をキョトンと顔を見合わせた。
「あの・・・わけわからいんですけどー・・・」
「とにかく、彼女を探してキャンパス・ステラに同行させないと。」
「で、でも学園は無人よ?!」
「ヴァーチャルなプログラムに基づいているなら、『何処に存在するのか』は関係ないわ。」
「問題はあなた達に引き寄せらていること。。きっと運命ならば見つかるはず。。」
「そこで何が起こるのか・・・それに賭けてみるしか!」

走りながら一行は、雨の降りしきる地上に踊り出た。
764ほんわか名無しさん:03/05/23 18:16
「すっ、凄い!」
伶佳はC-TAPPAの動きに舌を巻いていた。

敷島によりプログラムを書き代えられた
C-TAPPAは以前の学園襲撃時より
はるかにパワーアップしていた。

次々とクローン麒麟(以下Clo麒麟)を倒していく
C-TAPPAに数名の隊員以外は
援護と言うより完全に守られている。

それでも、Clo麒麟は圧倒的に数で勝っていた。
30人以上いたレイジィバツースのメンバーは
今や半分以下になっていた。
765ほんわか名無しさん:03/05/23 18:30
「これじゃ切りが無いわ。」
伶佳は矢のストックが残り少ないのを
確認しながら呟いた。

伶佳の近くで剣を振っている隊員の背後から
Clo麒麟が今にも炎を吐きだそうとしている。
「ちぃー」とっさに伶佳は矢を放つ。

ほんの僅かな隙を突いて
今度は別のClo麒麟の爪が伶佳を襲う。
”やられる”
次の瞬間C-TAPPAが
伶佳とClo麒麟の間に割って入る。
Clo麒麟の爪はガードしたC-TAPPAの腕ごと切りさいた。
更に攻撃を繰りだそうとするClo麒麟を
伶佳の矢が捉える。
「・・・ありがとう」
伶佳は倒れているC-TAPPAに囁くと、
何かを決意した顔で
腰のホルスターから銃を抜いた。
766ほんわか名無しさん:03/05/24 07:39
第53章 >> Syncopated Heart.
767ほんわか名無しさん:03/05/24 09:07
風院さつきは、学園外に設けられた黒田重工鰍フ待機キャンプに身柄を拘束されていた。
彼女にはまだ一連の出来事の説明は無かったが、自分があの人食いの村で何かに感染し、
一度死んだことは明らかに憶えていた。

「すごい銃声……。外で一体何が起こってるのかしら。」
ふと、女性を傍らに付けた長身の男が近づいてくるのに気付いた。
男はさつきの目線まで腰を下ろし、優しい口調で語り掛ける。

「さつきくん。心配しなくていい。直に君の信頼する人々も訪れるだろう。」
「何が起こってるの?私に一体に何が…。」
「……ワクチンだよ。君が世界を救うんだ。」
「それって…わたしに抗体があるってことなの?」
「正確に言えば違うんだが…。まぁ私はついでにあるものを手に入れられればいい。」

黒田獣騎はタバコを投げ捨て、遠い視線を彼方に送る。

「……無限のビジョン。アカシック・レコード。」
「獣騎さま、作戦本部から連絡がありました。」
秘書の皇=マリア・リヴェラが進み出る。

「シュトフ・アッセンブリーの弩級空挺団が防空網を突破、こちらに向っているそうです。」
768ほんわか名無しさん:03/05/24 09:35
「…ザザッ!如月麻衣子以下避難中のレイジィバツースは未だ到着せず……」
無線からノイズ混じりに響く常備軍からの報告を、伶佳はイラだちながら聞き流す。

「なーにやってんのよあの四人はぁっ!」
背後に迫ったClo麒麟を片手で薙ぎ払うと、10数名になった隊員を導きながら雨の降る地上へと駆け出す。
怪我人や戦闘不能に陥った隊員は、C-TAPPAによって黒田重工鰍フ医療施設へと運ばれるようだ。
もう敵も味方もない。この正体不明の怪物の魔手をあしらわなければ…。

「ちょっと伶佳!様子がおかしいよ!」加奈が叫んだ。
「何これ?!」
足元で巨大な魔方陣の一片を踏んでいることに気付く。
「これは…私の封印…。」リリスが呟く。

「くくく…ようこそ諸君。」

司馬令がレイジィバツースとC-TAPPAの前に立ちはだかった。
瞬間、足元の魔方陣が砕けると、中心に天を覆い尽くすほどの巨大な怪物が姿を現した。
リリスは怪物をキッと睨みつけて言った。

「あれがオリジナルよ。神の獣。麒麟本体…奴が操ってるのかしら…?」

雨雲を裂くような雷鳴の如き咆哮が空間を軋ませる。
769ほんわか名無しさん:03/05/24 14:21
〜学園都市郊外、"ゾディアック・ゲート"モニュメント前〜

銀之助「何やらとんでもないことになっているようだが・・・。」
優子「急ぎましょう。手遅れになるかも。」
黒マントの男「久しぶりに大暴れできそうだ・・・。」


〜レイジィバツース オペレーション・ルーム〜

校長(岩山)「劉翻め・・・。私の可愛い小鳥たちを・・・。」
敷島「心配するな。アルファブリードを発動させよう。」
慶子「当初の計画では、生徒を偽って潜伏したアルファブリードが
   イベントに集まった学生を一度に包囲、アクセスコードを探る予定でしたが。」
敷島「ロストナンバーズが暴走した。昔のあの時のようにな・・・。」
校長「ちょっと待て!どういうことだ?生徒にアルファブリードが?!」
敷島「あぁ、いるよ。過去にC-ウィルスに感染した生徒、数十余名に改造を施した。」
校長「貴様っ!!」

校長が敷島を床に殴り伏せた。

敷島「ふっ、お前だって知ってるだろう?どっちみち彼女たちに未来は無かったことを!」
校長「・・・。」
敷島「俺達は共犯なんだよ。岩山。」

敷島はそういって血の混じったツバをコンソールに吐きつけた。
770ほんわか名無しさん:03/05/24 14:41
麒麟の尾は校舎の一角を丸々薙ぎ払い、そのままレイジィバツースに襲いかかった。

リリス「あぶないっ!!」
リリスは悪魔の翼を広げ、伶佳と身近の隊員を抱えあげ宙に逃げる。
逃げ遅れたC-TAPPAが一網打尽にされていく。
リリス「うっ・・・・。」
彼女の心臓はズキズキと軋み出していた。心拍が定まらない。
リリス(まずい・・・。私に死が・・・月を食らう狼の足音が聞こえる・・・。)


〜レイコと百合子はラボに避難していた。

百合子「ここなら暫く安全だわ。あの不気味な怪物も襲ってこない。」
レイコ「百合子・・・何なの?私に何をさせる気?」
百合子「手に入れたの。ワクチンをね。」
レイコ「激しくC型に適合者が?!」
百合子「早速だけど、解凍プログラムを創って欲しいの。」

そういって百合子は白濁液の収められた試験管を差し出した。

レイコ「ど・・・どうしてわざわざC-ウィルスを活性化させるのよ?」
百合子「ワクチン・・・いいえ、彼女は人間よ。彼女を死なせたくない。」
レイコ「まさか、代わりにあなたが?」
771ほんわか名無しさん:03/05/24 15:09
レイコ「あなたまだ、あの時のこと・・・。」
百合子「・・・学園と会社の両方に身を置きながら、いつも考えていたわ。」
百合子は数年前の悲劇を反芻する。
百合子「私にいつか罪を贖える日は来るのかって・・・。」
レイコ「でも百合子、あれはあなたのせいじゃない。」
百合子「ロストナンバーズの制御に失敗したのは私よ。
    そしてその処理に開発段階のレイジィスーツを着用したイヴを向わせた。」

レイコは辛そうな表情で昔の出来事を思い出す。

レイコ「・・・イヴはそこで、目にしてはならないものを見てしまったのね。」
百合子「当時イヴのオリジナルは、レイジィスーツとの不協和障害で眠りについていた。」
レイコ「研究が滞ることを畏れた会社は彼女の遺伝子を培養。クローンであることを強みに非人道的な実験も横行していたわ。」
百合子「彼女自身が研究資材のクローンと知ったイヴは、会社と学園の両方に牙を向けた。」
レイコ「それは・・・私達全員が背負っている十字架よ。」
百合子「イヴは死ぬ間際、その記憶の種を他のクローンにも転送した。」
レイコ「それでクローン検体は全て破棄せざるを得なくなったのね。」
百合子「クローンの処理は私がしたのよ!カプセルの中で生きている彼女達をこの手で・・・」

百合子は悲痛な表情で叫ぶ。
レイコは彼女にかけるべき言葉を必死で探った。

レイコ「でもね百合子、彼女、死ぬ直前に弥生さんにこう言ったそうよ。」

"束の間の生を与えてくれたあなた達にありがとう"
772ほんわか名無しさん:03/05/24 15:26
「その事件をきっかけに校長は会社との決別を告げ、学園の研究サイドを切り離し独立した。」

〜キャンパス・ステラに直通する通路。CJは走りながら一行にそう説明を告げた。

麻衣子「イヴにそんな過去が・・・。」
シオン「譜に落ちないな。なぜ校長はレイジィスーツの研究を進めたんだ?」
アイリス「たぶん、C-ウィルスと何か関係が・・・。」
麻衣子「わたしは・・・それだけじゃないと思う。」
CJ「どういうこと?」
麻衣子「校長・・・あのハゲはイヴとリリスちゃんの過去の古傷を知っていたんだよ。
    きっとあのスーツが、彼女達の心を救う贖罪の翼になるんだって・・・。」
アイリス「なっ・・・何あれ?!」

アイリスが指差した窓の向こうで、数隻もの巨大な飛行艇が、雨雲を裂いて出現した。
773ほんわか名無しさん:03/05/25 18:55
hoshu
774濡れ猫:03/05/25 19:43
いい所で止まらないでぇ〜(*´Д`)
775濡れ猫:03/05/25 20:12
例の転校生のお話。

「わたし」は気がつくと雨の中、あの展望施設のソーラーファームに佇んでいました。
雨水が鏡のようなパネルに打ちつけて、薄い水膜に夥しい波紋を形作る。
わたしはただボーッとその様子を眺めていました。
瞳に映るその波紋に心を委ねて・・・。
この肌寒さも、肌に染みとおるような水の感触も、紛れもないリアリティ。
だけどわたしは疑いはじめた。そして予感したのです。
真実が全てを奪ってしまうことに・・・。

・゚・(ノД`)・゚・ダメポ
776ほんわか名無しさん:03/05/26 08:28
>>775§(・∀・)§イイ!!
#伏線の回収を企んでますが、突飛なアイデアがリレー小説の醍醐味。
#誰か・・・w保守も兼ねてスレ汚し御免。
777ほんわか名無しさん:03/05/26 18:46
「くぅっ」
リリスの心臓の痛みはもはや耐え難いほどに強くなっていた。

リリス達を追って舞い上がろうとする麒麟を
残り少ないC-TAPPAがなんとか喰い止めている。
しかし、それも僅かな時間稼ぎでしかない事は
誰の目にも明らかである。

朦朧とする意識の中、文字通り必死で
麒麟の手が届かぬ位置まで隊員達を運んだリリスは、
そのまま何も言わず、再び麒麟に向い飛立った。
(時間が・・・)
背後で伶佳達の引きとめる声が聞えるが
もはや振り返る余裕も時間もリリスには無かった。

上空に現れた飛空挺に遮られ、
雨が途切れていたが、
その事すら、リリスは気付いていない。

取り付いた数体のC-TAPPAごと麒麟が飛翔する。

麒麟は身震い一つでC-TAPPAを振り落すと
リリスとの距離を一気に詰めた。

リリスは何世紀ぶりかに麒麟と対峙した。
778ほんわか名無しさん:03/05/27 02:45
第54章 >> illumination
779ほんわか名無しさん:03/05/27 03:14
一路キャンパスステラへ通じる硝子の回廊をひた走る麻衣子達。
「……!!」
麻衣子は険しい表情で立ち止まり、後ろを振り返る。
「どうしたのリーダー?」
「……なんでも…ない。」
「さぁ急ごう!」

(何?何か凄く嫌な予感…。リリスちゃんに何か……)

一方リリスは胸元を手で抑えながら、身の丈は何十倍もあろう怪物と対峙していた。
神獣は凄まじい妖気で空間の組成を侵食している。
飛空艇はただその場を威圧、審判でもするかのように、上空で沈黙している。

「はぁ…はぁ……降魔の刃よ…我ここに命ず…」
リリスは息も切れ切れに呪文を詠唱すると、麒麟の体長を圧倒するほどの
巨大な双頭の剣が光を纏って現れた。
リリスは柄に手を触れず、空中に固定すると、目を閉じて再び詠唱を開始する。
幾層もの輝く魔方陣が球を描き、その中で剣が高速で回転を始めた。

伶佳は残り2本になった矢をボウガンに装填し、彼女を見守る。
と、麒麟がけたたましい咆哮とともにリリスに襲いかかった。
780ほんわか名無しさん:03/05/27 12:59
リリス「教えてあげる。どうして私が悪魔の姿をしているのか。」
麒麟の爪牙を紙一重でかわすリリス。凄まじい衝撃波に巻き込まれながらも、
身体ギリギリに流れていく巨大な体躯目掛けて巨刀を振りかざした。

「・・・!」

その刹那、血飛沫がリリスの口から吐き出された。
剣は虚しく空を切る。背後からは麒麟の尾がしなりながら、
リリスに振り翳され迫っていた。
781ほんわか名無しさん:03/05/28 07:38
リリスは尾の一撃を避けようとして羽ばたこうと翼を広げる。
が、虚しく翼は尾に引き裂かれ、非情にリリスを打ちつけた。
仲間達の悲鳴が響く。しかしもう、そのさざ波が彼女の耳に届くことは無かった。

「そ…んな…。」

伶佳たちはただ茫然と、地面に横たわる無残な亡骸を傍観するしか出来なかった。
数千年に渡る罪と業を象徴する悪魔の姿のまま…。
ただ雨だけは、彼女の血を優しく注ぎ落すように、しとしとと生温く、折れた翼を流れ落ちた。
麒麟は伶佳達の方向に向き直り、凄まじい雄叫びを浴びせた。

「…来るぞ。」

怯えながら構えるレイジィバツース。
弥生は涙を雨に隠すと、ゆっくりと刀を鞘に納めた。
782ほんわか名無しさん:03/05/28 08:21
〜シュトフ・アッセンブリー飛行艇"ニエンテ"

イヴとリュシオンは、一連の出来事を船内でただ見守っていた。
「……これで良かったの?」
イヴはただ雨雫が伝う冷たい窓越しに、リリスをいたわるような仕草で呟いた。
リュシオンはまた冷たい眼光を瞳に煌かせた。
「もう彼女を助けるには遅すぎた。自ら因縁に立ち向かわせることが残された救いだったのよ。」
「残された人々は?彼女を失った痛みはどうすればいい?」
「……やっぱり、裏切りも双子の絆までは断ち切れて無かったのね。」
「知ってたくせに。」
「いいえ。未来を見ることは出来ても、その本質までは知ることは出来ない。その瞬間に至るまでは。」
「私達を試したんでしょ?数百年の時をかけて…。」

窓の外では麒麟が今にもレイジィバツースに襲いかかろうとしている。
今の彼女達では恐らく一瞬のうちに殺められてしまうだろう。
リュシオンは徐に立ち上がり時間を"操作"、瞬く間に外の雨が空中で速度を緩めはじめた。

「未来は変えられない。時の果てに至るまで、全ての事象をこの眼が捉えたわ。」
「みんなあなたの手のうちで踊らされてる。でもどうして?なんでこんな回りくどいことを…」
「……私達は転がるボールよ。量子宇宙の物理法則にしたがってたゆたうだけ。」
「もうそんな話は沢山だわ!」

イヴが涙を浮かべて取り乱す。
予測できていたとはいえ、リュシオンは切々と迫るその感情に、たじろぎを隠せなかった。
783ほんわか名無しさん:03/05/28 08:51
リュシオンは慰めるようにイヴの翼をそっと包み抱き、囁くように説く。

「でもね、考えたことあるでしょ?この世の出来事の全てが決定論なら、
 どうして"意志"が存在するかのように見えるのか。」
「どうせ幻だわ。今は一瞬で過去に、そして過去は現実じゃない。」
「考え過ぎね。いいわ。やっと真実を話すときが来た。」
「真実?」
「あなたが心と呼ぶもの、それは幻なんかじゃない。そのことを証明してあげる。」

リュシオンは飛空挺内部に巨大なスクリーンを魔力で作り、映像を投影した。
地球に向って数千もの隕石群落下、青い星は煉獄の炎の顎に落ちていた。

「…これは?!」
「これが私の見る時の果て。いいえ、かつて見ていたとでも言えばいいのか。」
「どういうこと?!未来が変わったの?」
「わからない。あなた達の運命を書きかえる能力に出会ってから、全てがゆっくりと変化しはじめたの。」
「運命を書き換える…ほんの些細な能力だったけど…。」
「きっと未来に何か起こったのね。"時の焦点"が何処かに移ろったの。」
「時の…焦点?」
「その先が見えない。そこに全ての時間が収束する。新しい時の果てよ。きっと終末のどこか手前。」
「私達の能力に何か関係が…」
「C-ウィルスの挙動が私に予測できないのもそのせいね。全てが霧に包まれ始めた。」
「C-ウィルス…。イルミナティが未来に撒いた怨念の揺り篭よ。」
784山崎渉:03/05/28 10:46
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
785ほんわか名無しさん:03/05/28 10:51
>>784
( ゚Д゚)ゴルァ!
786ほんわか名無しさん:03/05/28 11:24
麻衣子は走りながら、自分が涙を流していることに気付いた。

シオン「どうしたリーダー?」
アイリス「休んだ方が・・・スーツが無効化してるってことは走るのも辛くない?」
麻衣子は嗚咽混じりの声で精一杯に応じようとした。
言葉が上手くでない。

麻衣子「ううん。走り続けなきゃ。。今は走り続けなきゃいけないの。。」

涙を拭うと、一行は更に歩幅を早めた。
787ほんわか名無しさん:03/05/28 12:10
イヴ「彼女達はどうなる?」
リュシオン「残念だけど、それは私から話したところで何かが変わるわけじゃないわ。」
イヴ「・・・。」
リュシオン「助けてあげたい?」

イヴは無言のまま俯いた。

リュシオン「これだけ言っとく。誰かが生きた証は記憶にあるんじゃないわ。
       事実と行為、そして絆は永遠に刻まれる。それがたとえ見せ掛けの写し絵だったとしても。。」

次の瞬間、イヴは意を決して表情で天使の翼をはためかせた。
788ほんわか名無しさん:03/05/28 12:48
学園の上空には無数の大きな飛空挺が、
まるで雨を遮るように浮んでいました。
鉛色の空は折重なる飛空挺のせいで
見る事が出来ないほどでした。

一際大きく、立派な飛空挺から伸びた
金色の光が、学園の校庭辺りを照らしました。
それは、雲の隙間から伸びたような柔かい、
そしてとても暖かい光でした。

そして、少年を抱いた天使が
金色の大きな翼を広げ、
その中をゆっくりと舞い降りるのを
私は見つめていました。
789ほんわか名無しさん:03/05/29 07:34
第55章 >>Starry Eyed Reprise
790ほんわか名無しさん:03/05/29 07:56
The boy who does onanism
791ほんわか名無しさん:03/05/29 08:05
「見て!何アレ。外すっごい眩しいよ!」
アイリスが何やら興奮した調子で窓の外を指差す。
「ほんとだ…あの校舎の向こうの陰だけど、何起こってるんだろ……。」

麻衣子達は、そのままキャンパスステラに架かるブリッジを駆け抜け、
ソーラーパネルがその一面に空を捉える、広大なキャンパス・ステラに踏み出した。
「みんなッ!足元滑るわよ注意してっ…たァー(ツルッ」
「キャハハハ!CJあんた意外とドジ…ブッ!!(ビターン」

アイリスが足を滑らせ斜面側に滑走していく。

「キャッ、キャー!この高さから落ちたら死んじゃうよー!(@▽@」
「ちっ!」
紫音が武器「久遠の紐」をアイリスの足に巻きつける。
「あ、ありがとー助かったよー…。」
「シオン後ろ!」
「なっ…」

背後から半身鳥獣のような怪物が、その鉤爪でシオンをパネルに叩きつけた。

「キャーッ!落ちるぅーーーー!!(泣」
「アイリス!」
麻衣子が間一髪紐を握り締める。

「何者だあんたら……。」

気がつくと周囲は半分獣、半分人間の混血のような獣人達に包囲されていた。
鳥獣が口を開く。

「我々はアルファブリード。"新しき血統"だよ。ここに侵入する者を消せとの命令でね。」
792ほんわか名無しさん:03/05/29 11:45
校長(岩山)「敷島!どういう事だ!>>769では、生徒を助けるような事を言っていたではないか!」
敷島「おかしい。私はアルファブリード達に、あんな命令はしていない。」
激昂する岩山。訝しがる敷島。

そのころ、黒田重工褐、究開発室の改造用ベッドでは、杞憂が意識を取り戻していた。
ベッドの上で身を起こした杞憂は、身体に残る痛みに顔をしかめたが、
杞憂「ヒール」
キャスティング0の回復魔法で、素早く痛みを消した。
佐川「お〜。流石だねぇ、プリンちゃん。」
杞憂「ッ!」
突然、かけられた声の方向に振り向き、顔を引き攣らせる。
そこには、派手なグリーンのスーツに身を包んだ男…佐川がいた。
杞憂は素早く、自分の服装に乱れがないかをチェックし、リボンがない事に気付き、顔を青ざめさせた。
杞憂「…ま、まさか…気を失っている間に…」
杞憂の脳裏に、あんな事やそんな事をされている自分の姿が浮かぶ。
杞憂「…そんな…初めてだったのに…麻衣子ちゃん、私、汚されちゃったよぉ…」
793ほんわか名無しさん:03/05/29 12:11
佐川「…あ、あ〜。その、なんだ。何を想像したかは大体想像つくが、勘違いするなよ。
漏れは、そう言った趣味はないからな。リボンを一寸借りただけだから、なっ。」
顔を覆い、泣き出した杞憂に、佐川は慌てて声をかける。
佐川「それに、その、ココはピンク板じゃないし。あの、その…」
何と言って誤解を解けば良いかわからず、触れてはいけない領域に触れかけている佐川であった。

?1「ねじーヽ(´ー`)ノ佐川ちゃん。杞憂たんは、もう起きたねじーヽ(´ー`)ノ?」
?2「くくく・・・」 ?3「ほっしゅほっしゅ!」
其処へやって来たのはアレらであった。
杞憂「そんな!あなた達は死んだはず!」
佐川「あ〜。その事については、後で話すとして。まず、アレを見てくれないかい、プリンちゃん。」

佐川が指した、その巨大な水槽には6体の変死体が浮かんでいた。
杞憂「いずなさん!くるみちゃん!…と後、誰?」
佐川「あ〜。俺ぁ、面倒臭い事は苦手でねぇ。まぁ、コレでも見てくれないか。」
佐川はタトール経由で記録された映像を、水槽横のモニターに映す。
そして、そこに映し出される(>>738-740の)惨劇。しかも、モザイクなし無修正。

『ストーカー刑事惨殺派 僕は悪○魔くん。集え12使徒!事件』
の真相を知った杞憂は、吐き気を堪えつつ佐川に尋ねた。
杞憂「…これを私に見せて、どうするつもりなの…」
佐川「あ〜。ぶっちゃけ、何だ。この6人を復活させてくれないかい、プリンちゃん。」
杞憂「わ、私が!?」
794ほんわか名無しさん:03/05/29 17:18
杞憂「えっ、そんな私復活呪文なんて知りません・・・。」
佐川「何ィっ?!ザオリクとかレイズとか無いのかよ!」
杞憂「・・・。」
佐川「ば・・・ばかな・・・私の綿密な計画がここに来て・・・・」
杞憂「あのー・・・無いことは無いんですけど・・・・。」

佐川は杞憂の腰にしがみつき懇願する。
佐川「この際なんでもいい!早くあいつらを蘇生させないと!」
杞憂はなんだか情けなくなって頷くしか無かった。
杞憂「お気に入りのリボン返してくださいね。それと・・・」
不気味な微笑を浮かべる。
佐川「それと?」
杞憂「ふっふっふ・・・乙女を汚した罪は身体で払って貰うわ・・・・」
795ほんわか名無しさん:03/05/29 18:14
麒麟とレイジィバツースの間に割ってはいるように飛来したイヴ。
少年の姿をしたルシルはただ黙って、何か天球儀のようなものを怪物の前に差し出した。

伶佳「あなたが・・・イヴ?ほんとにそっくりなのね・・・。」
イヴは沈黙したままリリスの亡骸に歩みより、優しく翼で包み込んだ。
加奈「な、何してるのかしら・・・。」
弥生「・・・。」
他の隊員も息を呑んで見守っている

「・・・綺麗。」

翼の隙間から垣間見えた光景は想像を絶するほど耽美なものだった。
イヴがリリスの首筋に牙を立て、吸血の儀を行っている。
リリスの表情はどこか安らぎと恍惚に、イヴのそれは哀しみと官能の色を放っている。

弥生「ああして双子の魔力を高めることが出きるらしい。」
伶佳「そうなの?でも私にはそんな事務的な行為には思えないんだけど・・・。」
加奈「もう敵・・・じゃないのかな?」

イヴはただただ愛しそうに、リリスの全身を愛撫するかの如く抱擁した後、
そのルビーの瞳に許しと邂逅の涙を浮かべ、麒麟と対峙した。
796ほんわか名無しさん:03/05/29 19:50
スレ違いかも知れないが、先日こんなことがあった。
数日前、警備の仕事をしていたときの話だ。

俺は客用エレベーターの前で立哨していたのだが、
そのエレベーターから客だったかスタッフだったか一人の男性が降りてきた。
年齢は見たところ20代後半。スーツを着た、エリート風のナイスガイだ。

その男性が、俺の横を通り過ぎる際に財布を落とした。
辺り床一面に散乱する何枚ものカード。俺はそれらを拾うのを手伝ってやろうと手を伸ばしかけた。
が。

俺の体が一瞬固まった。一枚のカードが目に飛び込んできたからだ。トレカだろうか。
それには美少女キャラが描かれていた。

俺はためらった。
拾うのを手伝ってやるべきか、あるいは見て見ぬフリをして、そっとしておくべきか。
この男は、どちらを望んでいるのだろうか。
とにかく、やばい物を見てしまった。

俺は後者を選んだ。
ハッと別の何かに気づいたフリをして、よそ見をする俺。
気のせいだろうか。一人でカードを拾い集める彼がたいそう慌てふためいているように見えたのは。

あの時の俺の判断は、真に道徳的で正しかったと今でも信じている。
彼もきっと、この俺に最大級の感謝の念を抱いているに違いない。
もちろん、礼には及ばないが。
797ほんわか名無しさん:03/05/29 21:06
ココたん「ねじーヽ(´ー`)ノこれが最近聞いたアレな話ねじーヽ(´ー`)ノ」
ユコたん「くくく・・・」 モコたん「ほっしゅほっしゅ!」 佐川「・・・」 杞憂「・・・」
 ひゅうぅぅぅ・・・ 室内に冷蔵庫ぐらいの冷えた風が吹く。

杞憂「・・・ザオ○リクとかレイ○ズ見たいな、精神力の消費だけで復活させる呪文はないわ。」
杞憂はアレトリオを無視した。
杞憂「でも確かに、触媒・・・青石も消費して、死者を生き返らせるスキルは取ってある。」
佐川「そ、そうだよな・・・プリンちゃんは>>192でマグ○ヌスを使ってたんだから、
スキルツリー上、必須な、リザ○レクションを取っているはずだよな。」
杞憂「・・・やっぱり。あなたも、ラグ○ナーだったのね。」
佐川「あ、あ〜。誘導尋問だったのかぁ。・・・やるねぇ、プリンちゃん。」

ココたん「ねじーヽ(´ー`)ノスキルツリー?ラグ○ナー?何の事ねじーヽ(´ー`)ノ」
ユコたん「くくく・・・」 モコたん「ほっしゅほっしゅ!」
佐川「いいかい、お嬢ちゃん達。世の中には知らないほうが良い世界もあるんだよ。」

杞憂「とりあえず、アチラの世界の話は置いておきましょう。
ただ、取ってはあるものの、まだ実際に使った事はないの・・・。」
佐川「プリンちゃん。今こそ、君が習得した、君自身の力の使い時なんだ。自分を信じて。」
杞憂「・・・最初の『プリンちゃん』がなければ良さげな台詞だったのにね(苦笑)。」
杞憂は杖を召喚すると、詠唱を始めた。
798ほんわか名無しさん:03/05/30 09:48
一方、図書館の深部に落ちた劉飛と幽霊の雫は、
暗闇の中に鳥居のようなものを見つけ、非難していた。
「なぁ、大丈夫やってんか?」
「あぁ。。これくらい。それより、ここから出ないとな。」
「ウチがひとっ飛びして助け呼んでくるで!」
「待て待て、サイレンの絵本の謎を解かないと。。」
「なんでや?あんさん関係無いって言ってやろ?」
「悪ぃ、嘘付いてた。それが狙いだったんだよ!」

***

レイコは機材で合成された蛋白質のサンプルをビーカーに流しこみ、百合子に手渡した。
「はい、これが感染済みC-Virus解凍プログラムよ。これを混ぜれば活性化するわ。」
「流石、仕事は早いのね。」
「さつきって子の遺伝子データから構成したものだから、免疫が貴女に適合する保証は無いわ。」
「えぇ。でも試す義務がある。」
「本気なの?ワクチンになって転移装置に飛びこめば。。。」
「いいの。誰かを守れない命なんていらないわ。」
「……変わってないわね。頑固なんだから…。」

レイコは百合子を軽くハグすると、呆気に取られる彼女を尻目に、そのまま外へと駆け出した。
(私にも、何か出来ることをしなくちゃ!)

#>>796 スレ違いだがワロタw
#>>797 伏字になってな(ry
799ほんわか名無しさん:03/05/30 10:14
〜キャンパス・ステラ

ほとんど戦力にならない三人を庇いながら、
シオンは一人で並み居る獣人たちと決死の攻防を繰り広げていた。

「ねーねー、あの紐どーなってんの??」
「凄いわ。無数の紐を変幻自在に操って敵を翻弄してる。」

驚くCJとアイリスとは対照的に、
麻衣子は歯を食いしばって戦況を分析している。

「確かに、慧遠流ひすかしの紐術は一対多数の戦術でその真価を発揮するわ。
 紐を自在に操り八方の敵の急所を締める。死角は無い。だけど。。。」

アルファブリードは数を減らしながらも、
確実に彼女達を施設の縁へと追い詰めつつあった。

「くっ…こいつらまるで応えないわ!それに捨て身…!!」
800ほんわか名無しさん:03/05/30 19:11
麻衣子達はもう、ほとんど後がない所まで追いつめられていた。
不意に正面から猪と思われる獣人が
紫音の紐に首を締められながらも猛進してくる。
麻衣子達はとっさにその動きを見切り、左右に散った。
しかし四方に伸びた紐のせいで紫音に逃げ道はなかった。

麻衣子が自分の置かれた状況も忘れて飛び出そうとしたとき
麻衣子の左手の方から何かが飛びだし、紫音を抱え上げると
そのまま獣人の壁の後方へ軽々とジャンプした。

「なに?」そのしなやかで素早い動きは
スーツが稼動していない麻衣子には捕えきれていなかった。
よく見ると、紫音の紐が全て切断されている。

猪の獣人が地面とキスをした音を遮り女性の声が響く。
「貴方達、こんな命令は出ていないはずよ!」

獣人の壁でその姿を確認する事は出来ないが、
麻衣子はその声に聞き覚えがあった。
801ほんわか名無しさん:03/05/31 07:07
「あの人…この前学園を襲撃してた人?」
獣装によってしなやかな猫の姿に変わった三上慶子は、
部下であるはずのアルファブリードに睨みを効かせる。
リーダーらしい鳥人が口にした言葉は、彼女にとって衝撃的な事実であった。

「未来に生き残るべきなのは我々だ。非力な人間達に運命を選ぶ術は無い。」

獣人達は一斉に慶子に襲いかかった。


〜一方、伶佳の承諾を得て戦線から離脱したさくらは、
  妹の姿を探して学園中を駆け巡っていた。

「もう!何処いったのよあいつ……。」
麒麟の化身であるクローンが四方から襲いかかる。
「ちっ!封魔の太刀・"氷輪"!!」
蒼く輝く円形の刃が一瞬にして全ての魔物を貫き、煉獄の彼方に葬る。
「はぁ…はぁ…まったくキリがないわね。」

辺りが静まった瞬間、さくらの耳が微かな歌声が捉えた。
「この声……もも?」
802ほんわか名無しさん:03/05/31 07:47
ルシルは麒麟に差し出していた天球儀のようなオブジェを下げると、
グラスの如く透き通るような声で呟いた。

「操っている術師はあそこの人だね。しかも遺伝子レベルで改造されてる。」

高い建造物の頂上で劉翻が黒スーツに身を包み、威圧するように直立していた。
瞬間、麒麟がその大顎を開き次元を引き裂くような咆哮をあげると、
破壊的なエネルギーを持った衝撃波がレイジィバツースに迫った。

イヴは純白に輝く翼を一面に広げ、目を瞑り呪文を唱えた。
「ベネディクタ ヴィタブレヴィス ソルトヴォルト イルミナーレ オムニア……」
(祝福された 短き命 ゆらめく魂が すべてを照らし出す)
衝撃波が神秘的に共鳴する波動によって中和される。
イヴは両手を麒麟に振り翳し印を組むと、カッと眼を見開いた。
同時に両翼も前方に突き出す。
「オーロラ ヴェニ カム プリマ ルーチェ!!(来れ、朝よ。最初に射し込む光のように!)

それは一瞬の出来事だった。
巨大に光の半球体が麒麟もろとも辺りを包み込むと、バビロンの塔なような
煉獄の炎の柱が雨雲を吹き飛ばし、大地にそのトールの槌を突き立てた。
ホバリングしている数隻の飛空艇が衝撃に押され、互いに船体を衝突させながら、なんとか高度を維持している。

「きゃぁぁぁ!!」

レイジィバツースは凄まじい光と旋風に煽られ、地面に伏せる。
「な……なに?」

伶佳が眩む視界の中で捉えたものは、さながらラグナロクのような光景であった。
軌道衛星に集結した数十基の攻撃衛星からのレーザーが、審判の矢の如く
怪物を捕らえたエネルギー半球に降り注ぐ。周囲は結界で護られているようだった。
803ほんわか名無しさん:03/05/31 07:53
誤字だらけだぁぁヽ(`Д´)ノ ウワァァン
804ほんわか名無しさん:03/05/31 21:19
がんばれ慶子サンホシュィ`
805ほんわか名無しさん:03/06/01 03:10
イヴの連続攻撃による衝撃波と爆炎は破城槌さながらに、
麒麟を包み込む球体に向って突き刺さる。
だが、地獄のような紅い炎の輝きの中に青い光が一閃したかと思うと、
纏ったエネルギー全てを振り払うかのように、
その雄叫びとともに麒麟が姿を現した。

イヴ「あの男が結界を・・・・」

劉翻は片手を振り上げ司馬令に指示を与える。

伶佳「信じられない・・・あれほどの攻撃を耐えたの?」
弥生「空から何か来る・・・。」

次の瞬間だった。
頭上に浮いていた飛空挺の1隻が、凄まじい爆炎に呑み込まれ真っ二つに割れる。
その間を引き裂くかのように、数匹のドラゴンが飛び抜けた。

加奈「みんな逃げて!!」

落下する巨大な飛空挺の残骸を避けるレイジィバツース。
炎と煙を掻き分けるようにして垣間見えたものに、彼女達は戦慄する。
夕日を覆い隠さんばかりの竜の群れが、
麒麟の援護のために跳梁跋扈しはじめていた。
806ほんわか名無しさん:03/06/01 03:37
伶佳は落下する残骸を念じて空中に静止させると、少年を抱かかえ間一髪難を逃れた。

伶佳「大丈夫?あなたは何者なの?」
ルシル「全てを知るものの一部・・・。」
伶佳「はぁ?」
ルシル「霧崎伶佳だね。霧裂きの弓の一族の末裔・・・。君は君の運命をどう逃れる?」

伶佳はゆっくりと立ちあがり、辺りの惨状を見渡す。
夕日と炎で紅く染まった空気。飛び交う怪物。逃げ惑う仲間達。
全てがまるでスローモーションのように、混沌と死の縁をなぞっていた。

伶佳「運命?くだらないわ。」
ルシル「・・・?!」

伶佳は凛とした表情でボウガンを構え、遥か遠方に佇む劉翻に狙いを定める。

ルシル「無理だよ。僕の見た未来では・・・。」

突然、眼前に麒麟のクローンが現れ、彼女を目掛けて尾を振り下ろす。
伶佳は体を捻ってかわし、そのまま回転して怪物の背後に滑りこむと、
再び劉翻の方向に、その揺るぎ無い眼光を向けて構えた。
背後からは怪物が即座に彼女に牙を向ける。

「見てなさい。未来なんて自分で射止めてみせるわ。」
807ほんわか名無しさん:03/06/01 06:24
第56章 >> Future Loop Foundation.
808ほんわか名無しさん:03/06/01 07:26
「なっ、なんやて!学園が攻められてるってホンマなんか?!」
「あぁ、そんな大きい声出すなよ幽霊のくせに・・・。」
雫と劉飛は、図書館地下の神社のような建造物でサイレンの絵本の解読にあたっていた。
そして劉飛は父親の劉翻に派遣されたという事実を雫に打ち明けた直後であった。

「なぁリューフェイ、なんでそんなん打ち明けてくれたんや?」
「こんな状況だし、それに……父さんを止めたくてね…。」
「何かあったん?」
「イヴに借りがあるんだ…。」
雫はホッとしたように微笑むと、その青白く輝く体で優しく劉飛を包み込んだ。
「な、なんだよ!」
「ええからおとなしくしとき。」
劉飛は顔を赤らめてページを開いたままの絵本に目を落とす。
「…!?」
「どうしたん?」
「これってもしかして……。」

挿絵において沈没する船に描かれた名前に、二人は驚愕する。

"Campus Stella"
809ほんわか名無しさん:03/06/03 22:55
ホッシュ
810ほんわか名無しさん:03/06/04 17:12
打ち切り?なんてことないよね。応援してますガンガレ!
811ほんわか名無しさん:03/06/04 19:28
慶子はアルファブリードの一斉攻撃を
大方の予想を裏切り、前方にジャンプしてかわすと
獣人達の後方で様子を窺っていた鳥人の前に着地した。

鳥人は素早い動きで背中の羽を羽ばたかせ
上空へと避難しキャンパスステラを見下ろした。
しかしそこにはすでに慶子の姿はなかった。
「どこへ行った!」

その言葉が終るか終らないかのうちに
鳥人の首は背後から慶子にスイパーホールドを
決められていた。

バランスを崩しソーラーパネルに叩き付けられる
鳥人の横にしなやかな動きで着地した慶子は
横たわった鳥人の喉に軽く猫爪をたてる。
「貴方がこの騒ぎの首謀者?」
「なぜ俺達と同じ体のくせに、人に味方する!」
「黙りなさい。質問してるのは私よ。」
鳥人の首に薄く血が滲む。

突然鳥人は笑い出した。
「ははははは、私が首謀者だと!
私はあの方に選ばれ、ここを任されただけに過ぎない。」
「・・・貴方、黒田の人間じゃないわね!」
「奴等は間違いなくお前の会社が改造した獣人達さ。
もっとも、人の姿にはもう戻れんがね。」
「一体何をしたの?」
「戦闘に邪魔な物を取り除いて下さったのだよ。
司馬令様がな!」
812ほんわか名無しさん:03/06/05 00:02
キタ━ ━━━ ━ (゚∀゚)━ ━ ━━━━!
813ほんわか名無しさん:03/06/05 11:54
鳥人は慶子を見据えると、不敵な笑みを浮かべる。
鳥人「フン、会社のわけのわからない陰謀に操られるのは、もう沢山なんだよ。」
翼を横に薙ぎ払い一閃するが、慶子は猫科独特のしなやかな身のこなしでそれをかわす。

慶子「・・・これは、あなた達のためでもあったのよ。」
鳥人「あぁ、全て聞いてるさ。C-ウィルスに感染した人間がどうなるのか、ね。」
慶子「司馬令はあなた達になんて?」
鳥人は宙返りで着地しながら、鉤爪で慶子の頬を切裂いた。
慶子「くっ!」
鳥人「未来を取り戻すために、導いてくれるそうだ。」

縁で固まっている麻衣子達の中で、CJがその言葉に反応する。
CJ(未来を・・・取り戻す?まさか・・・)

鳥人「だけど、あんた達がそれを灰にしてしまうんだとよ。」
周囲のアルファブリード達が一気に殺気立つ。
慶子「誤解よ!あなた達、いいように操られているだけだって気付かないのっ?!」
鳥人「もう我々は形振りかまってられないのさ。時間が無いんでね。」

「!?」

レイジィバツースと慶子は、すぐに彼らの身体の異常に気付いた。
筋肉が怪しく律動し、その形状をモーフィングさせていく。

慶子「なに?まさかあなた達、更に改造を・・・。」
鳥人「"獣"の能力に、更に神獣の力を取りこんだ。災厄の根源であるお前達には償いをしてもらおう!」
814ほんわか名無しさん:03/06/05 12:21
巨大な鳥獣に成り果てたアルファブリードは、その爪を慶子に振り下ろす。
慶子(・・・ざまぁないわ。これが、私への罰なのね。すぐにあなたの元に逝くわ。)
三上慶子は死を覚悟し、婚約者のペンダントを握り締める。
だが、巨大化した鉤爪の大ぶりの一撃は宙を切り、辺りに旋風を巻き起こすだけだった。

鳥人「なんだと!?」
慶子「あ、あなた・・・。」
麻衣子「良かった・・・。大丈夫・・・ですか?!」

麻衣子が危機一髪、身を呈して慶子を突き飛ばしたのだった。
だが鉤爪が麻衣子の背中をかすり、大きな裂き傷から鮮血が翼のように噴き出す。
「リーダー!」仲間が悲鳴とともにかけつける。
慶子「あなた・・・なんで私なんか助けるのよ・・・。」
麻衣子「だ、だって・・・。わかるの。あなたの悲しみは、きっと私が背負わせてしまったものだから・・・)
慶子「何を・・・何をいまさら・・・。」
慶子は涙混じりに麻衣子から目を逸らした。
紫音は一人、怪訝な表情を混じらせ、麻衣子を見つめる。
(おかしい・・・リーダーのスーツは働いていないはずなのに、今の動きが見えなかった・・・)

鳥獣が地響きとともに、一同の前に立ちはだかる。
他のアルファブリードも変身を遂げ、周囲を取り囲んでいた。

慶子「もうだめだわ。どっちみち私達は・・・。」

その時、しなやかなシルエットが、レイジバツースとアルファブリードの狭間に舞い降りた。

くるみ「ちょっと待ってにゃ!この戦い、この楠くるみが預からせて頂くニャ!」
815ほんわか名無しさん:03/06/05 19:08
慶子もアルファブリードも、
まるで幽霊でも見るように驚いた表情でくるみを見つめた。
「貴女・・・」
何かを言いかけけたが、言葉に詰る慶子を他所に
くるみは、緊迫感のまるで無いアニメ声をキャンパスステラに響き渡らせる。
「司馬令なんかの言う事聞いてもぜーーーたい良い事無いにゃー
ここは素直に、御免なさいするにゃー!!」
「生きていたのか楠くるみ!」鳥人が叫ぶ
「”元祖アルファブリード”楠くるみは不死身だにゃー!
それよりさっさと御免なさいするにゃー!!」
「いまさらそんな事が出来るか!」

「よぅ、子猫ちゃん。」
いつの間にか、佐川修平が相変わらずの緑尽くめの姿で
慶子の横に立っていた。
「佐川さん!どうしてここに!!」
「ん〜、敷島博士からぁ、子猫ちゃんがまた苛められてるって
連絡が入ったからね。」
佐川は慶子ににっこり微笑むと、くるみに声をかけた。
「さーてと、”くるくる”、悪い子ちゃん達にちょっとお仕置でもしますか。」
「うにゃー!しかたないにゃー!」
「獣装(獣装にゃー)!」
くるみと佐川は息もぴったりに
”エメラルドグリンボア”と”白地に黒の虎猫”の姿に変身した。
816ほんわか名無しさん:03/06/06 16:48
黒田重工が学園都市郊外に設けた指揮本部も
劉翻の放った怪物の攻撃を受けていたが、
強力な防衛システムである最新型ガーディアンによって
鉄壁の護りを崩さずにいた。

百合子は黒田重工のキャンプに避難し、
風院さつきの軟禁されているテントに忍び込んだ。
彼女は疲れているのか、戦場の騒音にも関わらず、
安らかな寝息を立てている。

「今助けてあげるわね…。」
百合子はさつきを縛り上げている両腕から優しく
縄を解くと、そのしなやかな体を抱きとめた。
「社長に見つからないうちにここから逃れねば…。」
817ほんわか名無しさん:03/06/07 22:58
ここは・・・・
リレーになってるのか?
まぁ楽しんでる奴がいるならいいんだが。
818ほんわか名無しさん:03/06/08 02:09
漏れも書いてたけど、今は職人さん待ち。ちゃんと完結して欲しいなー。
819ほんわか名無しさん:03/06/09 03:14
シクシク...止まっちゃった....ホシュ
820ほんわか名無しさん:03/06/09 16:19
さくらは、妹の微かな歌声をたどり階段を駆け上がった。
この階段も、途中にホールを挟んでキャンパスステラへと続いているが、
麻衣子達が通ったルートとは正反対の位置にあたる。

歌声がももの居場所が近い事を知らせている。
聞えてくる歌は、さくらにはまるで聞覚えの無い歌だ。
反対にClo麒麟の数は目に見えて減っていた。
Clo麒麟の攻撃をやり過しながら階段を一気に駆け上がったさくらは
微かに開いたホールへの扉を開けた。

その光景にさくらは自分の目を疑った。
確かに”もも”の姿はあった。
しかし、その廻りにはホールに入りきれないほどの
Clo麒麟が群がっていたのだ。
「もも!!」
思わず"氷輪"を放とうとするさくらをももが制する。
「大丈夫、この子達は大丈夫だよ。」
驚くさくらにももはにっこり微笑み、
「ごめんね、私行かなくっちゃ。」
とClo麒麟達に告げた。
ももの正面にいたClo麒麟が甘えるようにももに擦寄ってくる。
「また今度ね!」
ももはClo麒麟の頭をなでると、
「さぁ皆、お姉ちゃんを通してあげて!」
再び呼びかけた。
ももを取り囲んだClo麒麟達がモーゼの十戒よろしく
左右に別れ、さくらとももの間に道を作る。
さくらはClo麒麟達の間をももの下へ駆寄った。
821ほんわか名無しさん:03/06/09 18:54
そんな様子を駅のホームから
ミカンを投げながら見つめているおっさんが一人。
822821:03/06/09 18:55
誤爆。まぁええか。
823八二零:03/06/10 20:26
保守するニャー
824ほんわか名無しさん:03/06/11 11:18
さくらはももの両肩をグッと掴み、声を荒げてももを咎めた。

さくら「何してたのよ!心配してたんだから!それに声が・・・」
もも「・・・。」
ももはそっと体を引き離すと、視線をさくらの向こうへと逸らした。
さくら「何?どうしたの?」
もも「聞こえる?」

さくらは周囲に耳を欹てると、地響くような遠くの戦場の騒音の中に
明らかに不釣合いな艶やかな声が、妹と同じ歌を奏でているのに気付いた。

さくら「彼女は?!」
もも「・・・記憶。彼女は存在しない。だけど感じられる。不思議なの。」
さくら「・・・?」
825ほんわか名無しさん:03/06/11 11:40
霧崎伶佳の放った矢は、劉翻の胸を目前にして虚しく焼け落ちる。
続くClo麒麟の攻撃をまともに後頭部にうけ、彼女は地面に突っ伏した。
傍にいた少年が天球儀を麒麟に向けると、怪物は時が止まったように動かなくなった。

伶佳「あなた一体・・・。」

イヴが眩いほどの翼を広げながら、ふわりと彼の側らに降り立った。

イヴ「戦況は明らかに不利だわ。」
ルシル「わかってるよ。それでも運命の矢は止まらない。」

頭上で巨大な麒麟が身の毛のよだつような咆哮をあげる。
天を覆い尽くさんばかりの飛空挺が、一基、また一基と陥落していく。
その時だった。
雲間を引き裂くように飛来した物体が、空中の竜の群れを引き裂くように駆け抜け、
麒麟の翼をかすめると、凄まじい閃光を放ち竜を蹴散らし始めた。
数人のレイジィバツースには見覚えのある機体であった。

イヴ「アレは・・・」
加奈「あっ!あれ!」
弥生「まさか・・・」
伶佳「・・・ミシュラ!」
826八二零:03/06/11 18:08
「なんか、向こうが騒がしいにゃー」
「ん〜?なんかどっかで見たことあるような"船"だなー」
「あの船、たしか内が宇宙海賊団「ベルーガ」様に売った船じゃない?
確か船名が・・・そう、"ミシュラMarkU"会議のときに見たわ。
ってそんなことより今はこっちを何とかしなきゃ!」

「ゴチャゴチャと五月蝿いぞ!死ねーーー」
"神獣人"達の強烈な一撃が次々と繰りだされる。
佐川達三人の獣人は、麻衣子達同様に追いこまれて行く。

「はっはっはっはっ、ただの獣人が2匹増えた所で
今の我々の力の前では、何の意味も無いわ!!」
突然、上空から巨大な爪が三人を襲う。

辛うじて攻撃を避けた佐川は、
「やっぱ、このままじゃきついな〜」
と呟くとくるみにアイコンタクトを送り
左手にはめたブレスレットに
「転送」と叫んだ。
くるみも慶子の横で頷くと同様に「転送だにゃー」
と叫ぶ。
次の瞬間、佐川とくるみの目の前にそれぞれ青と白の光の玉が出現する。
「青龍、神獣機装!!」と佐川が叫び
「白虎、神獣機装!!」とくるみが叫ぶ。

「神獣機装!!まさか完成していたの」
慶子は驚いた様子でその光景を見ていた。
827ほんわか名無しさん:03/06/12 02:00
すげ・・。
828ほんわか名無しさん:03/06/12 13:12
第57章 〜Flaming June〜
829ほんわか名無しさん:03/06/12 15:05
#インフレキタ━━━(゚∀゚)━━━!
一方、劉翻は魔方陣の上にたち、麒麟をはじめとする魑魅魍魎を思いのままに操っていた。
その周囲を、司馬令率いる数十人もの術師が取り囲み、複雑な呪文を詠唱し続けている。
そこで生成された魔力は、特殊なフィルターを通して装置で変換され、
劉翻の意志伝達による干渉を可能としている。

司馬令「クク・・・。イルミナティの失われた技術。素晴らしいものだよ・・・。」
劉翻「油断は禁物だ。特に、あの"霧裂きの弓の一族"は何をしでかすか予測できん。」
司馬令「ええ・・・。わかってますとも。」
劉翻「それにレイジーバツースはまだ必要だ。皆殺しには出来ない。」
司馬令は不気味にほくそ笑むと、その悪意と陰謀を劉翻に見抜かれぬように顔をそらした。
が、そのおかげか、彼はいち早く計器の異常に気付いた。

司馬令「・・・なんだ?!フィールドの魔力がダウンしている?!」
劉翻「どういうことだ!」
司馬令「このままでは奴らが制御不能に・・・!」
劉翻はハッと何かに気付いた様子で、校舎の一角に佇む人影を振り向いた。

劉翻「・・・どういうことだ劉飛。」
劉飛は札を四方にばら撒くと、印を空に描き周囲の妖力波を吸収し始めた。

劉飛「父さん、運命には逆らえないんだよ。無駄な殺戮はやめてくれ。」
劉翻「息子とて容赦はせんぞ・・・。」
彼は清流刀を構えると、劉飛まで一瞬で間合いを詰める。
だが、彼の息子は微動だにせず、更に強い眼差しを実父に向けた。

劉翻「運命が決まっているのなら、お前が何をしたところで何も変わらんさ・・・。」
劉飛「違うよ・・・。運命は、その刹那に自分自身に変わるんだ。
    だから・・・・せめて過去には、自分の信念を刻みたいんだ!」

次の瞬間、二つの刃が虚空に交わった。
830ほんわか名無しさん:03/06/12 15:25
〜黒田重工轄戦テント

黒田獣騎は重武装を整えると、数名の精鋭部隊と、最新型ガーディアンを伴い、
戦場に駆りだそうとしていた。それを必死で引き止めるかのように、秘書のマリアが懇願している。

マリア「どうしてあなたがわざわざ・・・。」
獣騎「奴らの狙いは同じ・・・。どうしようもない運命に翻弄され、もがいているのさ。」
マリア「ワクチンを失った今、社運をかけたあのプロジェクトも・・・。お願いです逃げてください!」
獣騎「何、百合子のことだ。きっと何か考えがあるのだろう。」
マリア「もし転移装置へのワクチン注入が叶わなかった場合は・・・。」

「世界は破綻の道を辿るしかない・・・。」

マリア「?!」
振り返ると、見覚えの有る人影を中心に、三人の戦士がテントに合流したところだった。

銀之助「俺達が先陣で道を切り開く。」
優子「"飛龍"で突っ込むから、チャンスは一瞬よ!」
黒マントの男「司馬令の命は私が頂くとしよう。」

獣騎「そしてその隙に、私がシュトフ・アッセンブリーの統領に接触を試みる。
   それから岩山から聞き出した転移装置へと直行し、アクセスコードを引き出す。」
優子「問題があるわ。アクセスコードには実体がない。
    だけどコネクタには直接データを叩きこまないといけない。」
黒マントの男「イヴを媒体にエンコードするしかない。出来るのか?お前に。」
銀之助「あぁ・・・。彼女を・・・殺せばいいんだな?」
831ほんわか名無しさん:03/06/13 19:56
キャンパスステラでの戦いをモニターしていた岩山は、驚いた表情で敷島に尋ねた。
「何だあの神獣機装って?」
「獣人用の強化装甲さ。神獣の力をナノマシーンを介して獣人装甲と融合させる。
。まだプロトタイプが5体分しか完成してないけどな。」
「・・・」
「以前、うちの会社が宇宙海賊団に宇宙船を納品した事があってな、
その時、そこのボスにうちの助手の一人が妙に気に入られてさぁ、
プレゼントされた技術やデータの中に数値化された神獣のDNA情報や
ナノマーシンの技術、物質転送の技術なんかもあった訳だ。」
「で?」
「それを使って、最初はナノマシーンの神獣を造ろうかとも思ったんだが、企画段階で却下された。」
「何の為にそんな物を?」
「技術は使ってこそだよ!技術があるのに使わないのはまさに宝の持ち腐れさ。」
「で、神獣機装を造った訳か?」
「まぁそう言う事だ。最近何かと物騒だったからな。
社員の安全をより確実な物にする為にも必要と会社も判断したようだな。」
832ほんわか名無しさん:03/06/16 08:16
ホシュ。゚゚(゚□゚。)°゚。
833ほんわか名無しさん:03/06/17 17:41
神獣機装を遂げたくるみと佐川は、正に疾風の素早さでアルファブリードを圧倒していた。
数でも体躯でも、二人を凌駕するはずの獣人達が、刻一刻と捻じ伏せられていく。
くるみ「まだまだニャっ!」
くるみは体を縦に一回転させ、爪と尻尾の波状攻撃で鳥人を翻弄する。
鳥人「ちっ、これがウワサに聴く神獣機装か。」
彼も負けずに鉤爪を繰り出すが、くるみは宙に浮いたまま体を斜めにスピンさせ、
尻尾でその腕を絡め取ると、慣性を利用してそのまま蹴りを炸裂させた。

麻衣子「凄い・・・。」

気がつくと、辺りの獣人達は一掃され、二人の神々しいシルエットが靄の中に君臨する。

佐川「さ、てと・・・。後はここでアクセスコードの出現を待てばいいわけだな。」
くるみ「怪我は無いかニャ?」
くるみが優しくレイジィバツースに声を掛け、歩み寄ってくる。
だが、突然くるみの心臓部から何者かの腕が突き上げられた。
鮮血と悲鳴が辺りを支配する。

佐川「くるみっ!!!」
なんと、背後を取っていたのはくるみの仲間であるはずのルナであった。
くるみ「ルナ・・・目を醒ますニャ・・・未来を救えるのは彼女だけなのにゃ・・・。」
くるみは力無く膝を着く。瞬間、佐川の一撃がルナを捉えようとするが、彼女は一瞬で消え、
すぐに佐川の背後から一撃を叩きこみ、彼を失神させた。
ルナの側らにエンデュミオンが降り立つ。彼らもまた、神獣機装を施されていた。
834ほんわか名無しさん:03/06/18 07:06
第58章 >> Collision Site
835ほんわか名無しさん:03/06/19 20:58
「あらら、気がつかなかったな。ルナとエンデュミオンまで操られてたのか。」
「何のんきなこと言ってんだ、また生徒が死んじゃったじゃないか!!」
敷島と岩山はモニターを食いいるように見ながら話ている。
「あぁ、くるみなら大丈夫だよ。神獣機装には修復機能があるから今ごろは
傷もふさがってるさ。まぁ、出血のダメージもあるだろうからすぐには動けないだろうがね。」
「けど、心臓貫かれたんだぞ!」
「言ったろう、神獣機装は神獣の力を獣人に与えるって。神獣の生命力は並じゃないんだぜ。
それに加えて傷口はナノマシーンがすぐに修復してしまう。ほとんど不死身だ。」
「じゃぁ、大事丈夫なんだな。」
「ああ。神獣機装を纏った獣人を殺そうと思ったら飢死を待つのが一番速いくらいだよ。」
「よかった・・・」
「ちっともよくないんだけどな。」
「へっ?」
「その神獣機装を纏った獣人が二人も操られてんだぜ。」
モニターには朱雀の神獣機装を纏ったルナと
玄武の神獣機装を纏ったエンデュミオンが麻衣子達に襲い掛かろうとしていた。
836ほんわか名無しさん:03/06/20 05:32
「くっ!あなた達は下がってて!」
三上慶子とシオンが同時に飛び出す。
が、ルナとエンデュミオンは一瞬の内にその二人を突破し、
すれ違い様に決定打を食らわせ、雨に濡れたパネルに叩きつけた。

朱雀と玄武の力が一体となって麻衣子とアイリス、CJに襲いかかる。

(殺される……)

突如麻衣子が立ちあがり、他の二人を護るように腕を広げた。
「リーダァー!」アイリスが叫ぶ。
麻衣子は心臓の律動が、重く脈打つのを感じた。
まるで時間が、逃げ道の無い螺旋の縁に捕まったかのように、その速度を緩めている。

(…どうして?どうして力を失ってしまったの?結局、わたしには何も護れないの?)

イヴが何かを感じ取ったかのように、遠方のキャンパス・ステラの方向を振り向いた。

「サイレン……。」

麻衣子の両眼がカッと見開いた瞬間だった。
彼女を中心に、透明な揺らぎを伴った波動が学園全体を一瞬で駆け巡る。

「エンデュミオン、これは予定にない出来事だわ。」
「あぁ、これがアノーマリー(特異点)だ。」

麻衣子の周囲の空間を、まるで刃物のような蜃気楼と空間の歪みが高速で軌道を描いている。
その斑の渦は、物体に触れるたびに、対象を透視するかの如く、存在を消したり現せたりさせていた
837ほんわか名無しさん:03/06/20 18:04
覚醒キタ-。携帯で記念カキコ
838ほんわか名無しさん:03/06/20 21:44
「なんやこれ!」
天井を抜け地下から一気にキャンパスステラまで浮上してきた
幽体の雫は、麻衣子が起した現象に巻き込まれていた。
「こら、たまらんわ。下手すると、うちの存在まで無くなってしまう!」
慌てて下階に避難しようとする雫を渦が捉える。
「あかん、潜れへん。なんや、この感覚は体が重い?嘘や、体が、体があるでー!!」
雫は実体化した喜びに騒ぎの事など忘れたかのように
小躍りしていたが、ふと人の気配に気付き振り返ると
体の透けた青白い顔をした一人の少女が立っていた。
「わぁっ!!お化けや〜!!」
驚いて走りだした雫は小柄な一人の少女とぶつかりそうになった。
小柄な少女は顔色一つ変えずにスーっと雫をかわすと、
何事も無かったかのように、消えかけている少女の方へと歩を進めた。
バランスを崩して倒れた雫を、小柄な少女の後に現れた
少し年上っぽい少女が助け起した。
「大丈夫?」「ああ、たいしたことあらへん。」「そう、よかった。じゃぁ先を急ぐから。」
その少女は「もも、危ないから一人で先に行かないで!」と小柄な少女に声を掛けると
小走りに走りだした。
839ほんわか名無しさん:03/06/21 11:43
レイコ「校長!大変です!!」
オペレーションルームにレイコが駆け込んでくる。
が、すぐに見慣れない男の影に気付き、彼女は警戒する素振りを見せた。

敷島「俺のことは気にしないで、続きをどーぞ。」
校長「どうしたんだねレイコ君、君らしくない・・・。」
レイコはオペレーションルームのコンソールをいじり、研究室からのデータを読み出した。
そこには、レイジィバツース各個人のモニタリングデータが映し出されている。

校長「これは?」
レイコ「麻衣子ちゃんのスーツのシステムは、先程まで機能していませんでした。」
校長「あぁ、だが今の様子は・・・。」
レイコ「ええ、想定外です。恐らくこれまでは、何らかの原因でシステムがビジー状態に・・・」

敷島が横から口を挟む。

敷島「プライマリに見られる現象だな。変換にかかる莫大な計算量の負荷が、システムをフリーズさせることがある。」
レイコ「いいえ。プライマリでは無いわ。この波長、麻衣子ちゃん自身のものと・・・何かが・・・。」
モニター上に複雑な軌道を辿る波長、スペクトルグラフが表示される。
レイコ「リリス?リリスちゃんの波長が・・・」
840ほんわか名無しさん:03/06/22 18:15
キタ━━━(゚∀゚)━━━! ホシュ
841ほんわか名無しさん:03/06/23 08:05
麻衣子の瞳は、まるで全てを見通すかのように澄んだ銀色の輝きを放っていた。
複雑な紋様が、その瞳の中で複雑に円と環を交錯させている。
ルナが冷たい表情のまま、麻衣子を見つめて呟く。
「アノーマリー……。これが運命の分岐点。」
「ルナッ!やめろ!」
麻衣子に向って飛びかかるルナを、エンデュミオンが引き止めようとする。
しかし一足遅く、彼女は麻衣子の横をスッと通り抜けると、力を失ったように倒れた。
仲間のレイジィバツースはわけがわからず、ただ彼女の変貌ぶりに驚嘆していた。

「あなたがそばに……いれば…運命も…太刀打ち出来ない…。」

麻衣子は何かを聞きとったかの如く、その虚ろな表情を遠くに向ける。
その声は他のメンバーにもハッキリと聞き取れるまで響き始めていた。

「これ……歌?」
「凄く綺麗な声…。」

麻衣子が突然、その歌声に応えるように吐息を虚空に響かせた。
「遠くの岸辺、夢の翼……。」

歌声が応える。
「すべてが手に届く場所にある……何でも見渡せる…。」

麻衣子の瞳から涙が零れ落ちる。

「私に必要だったもの。そして私にわかっていたこと。それはあなただけ。」
「閉ざされたドアの向こうにある、あなたの手の感触だけ…。」

光の環が麻衣子を中心に、凄まじい閃光と波動を迸らせた。
842ほんわか名無しさん:03/06/23 18:52
黒田獣騎を始めとする一同は、Clo麒麟を蹴散らしながら、
ルシル達の元へ急いでいた。
数名いたはずの精鋭部隊は僅か1名となっていた。
「すまぬ、お前の大切な部下を。」
獣騎は、より添うように走る小柄な男に声を掛けた。
「社長の為に死ねるのならば、彼らもきっと本望です。」
そこには、猿の姿に獣装し重火器を巧みに操る調査課課長の姿があった。
前方では、”飛龍”を発動させた優子と、未だに”飛龍"を発動させられない、
しかし、剣の腕に一層磨きのかかった銀之助が、
そして後方には黒マントの男が一定の距離を保ちながら走っていた。
黒マントの男は特別攻撃を仕掛けている風ではないのだが、
後方からClo麒麟が襲い掛かってくる事は無かった。

突如、キャンパスステラ付近で一条の光が伸びた。

「いかん、装置の発動が始ってしまう。急ぐぞ!」
銀の玉を込めたマシンガンを放ちながら、獣騎達は速度を速めた。
843ほんわか名無しさん:03/06/24 23:13
ホシュ☆彡 
|_・*)遂にクライマックス?
844ほんわか名無しさん:03/06/27 11:29
「おっと、ここから先は通すわけには行かないんだよ。」
獣騎たちの前に司馬令が立ちはだかった。
優子が瞬速で蹴りを繰り出すが、司馬令の像を虚しく揺らすだけであった。

獣騎「無駄だ。これは遠隔ホログラム・・。」
司馬令「ふん、見事なお膳立てだったよ。史上稀にみる大芝居だ。」
銀之助「芝居?」
司馬令「全員踊らされてるのさ。結果を引き出すには"過程"が必要だ。」
獣騎「貴様、何を知っている・・・。」
司馬令「あいつに聞けばいいさ。だが私は・・・その裏をかく。運命の寝首を掻っ切る時が来たのさ。」

司馬令の虚像が消え失せるのと同時に、半身神獣、半身人間の輪郭を纏った神々しい巨人が現れた。

優子「ちょっ・・・何なのアレ?!どういうことよ!?」
獣騎「開発段階だと聞いていたが・・・まさか完成していたとは。」
課長「神獣重機装兵オネファトディーヴァ・・・。」
銀之助「どうやらしばらく足止めを食らいそうだな。」
黒マントの男「いや、時間が無い。俺が食いとめるから迂回して進め。」

黒マントの男はそう言いながら、異様な紋様に彩られた左腕をマントから露わにした。

獣騎「やはりお前だったか、グリアンアイネク。」
優子「頼りにしてるわよ!」
銀之助「行くぞ!」

優子の"飛龍"によってClo麒麟の束が一掃される。
一同はその合間を一瞬ですり抜けた。
845ほんわか名無しさん:03/06/28 06:43
第59章 >>Mona Lisa Overdrive
846ほんわか名無しさん:03/06/28 15:01
小学生の頃、クラスにWさんという女子がいた。彼女は先天的な病で体がただれていて、声もうまく発声できなかった。
大人しい子でいつも本を読んでいた。                  
男子の友人はいなかったが、女子の友人は不思議と多いようだった。

修学旅行で旅館に泊まった時、友人が女子の部屋に遊びに行こうと言い出した。
俺も同意して、どうせだからこっそり行って驚かせてやろうってことになった。
そしてクラスで一番人気のあった女子のいる部屋に行く事となった。
こっそりドアを開けると(どのように鍵を開けたかは忘れた)恐ろしい光景が。

体育座りで座り込むWさんを円になって囲むようにクラスの女子全員が立っていた。
そして、Wさんに対して「豚」「焼けど野郎」などと罵声を浴びせていた。
さらにクラスで最もかわいかった子が「じゃあ、カツラはずしまーす」と笑いながら言ってWさんの頭に手を伸ばした。

次の瞬間、Wさんの髪の毛が全部その女の手にあった。Wさんは頭皮も病気で、髪の毛が生えないためカツラをしていたのだ。
男子は誰もそれを知らなかった。ショックで何が何だかわからない俺の前で女子はWさんを蹴飛ばしたりカツラをライターであぶったり。
Wさんはかすれた声でうめく。助けを呼びたくても呼べないのだ。
俺と友人は無性に怖くなって見つからないように逃げた。

次の日、Wさんもクラスの女子も何事も無かったように京都を観光していた。
それが一番怖かった。

時がたって同窓会が開かれた。Wさんはすでに亡くなっていた。
俺は思い切って女達に修学旅行でのことを聞いてみた。
すると例の一番かわいかった女の子が「あんなの別に死んだっていいじゃん」といった。

趣旨がちょっと違うかもしれないが、これが俺の経験した最も怖い話です。
847ほんわか名無しさん:03/06/30 13:15
巨装兵は身の丈に似合わないスピードで
優子達の行く手を遮ろうとした。
「来るわよ!」
オネファトディーヴァが巨大な拳を振り下ろす。
しかし、その鉄槌が彼女を捕えることは無かった。
「さぁ、行け!」
グリアンアイネクと呼ばれた男が、左手一本でその一撃を受け止めていた。
反動の衝撃を受けて土ぼこりが舞っている。
「頼んだわよ!!」
優子達はあっという間に巨装兵の股下をくぐり抜けた。
「ふっ、神に背きし偽りの創造物が…この罰をしかと受けとめよ!」
グリアンアイネクはそのまま巨装兵の左手を捻じ伏せる。
「ォォオオ……」
オネファトディーヴァはその巨体を回転させ宙に舞う。
「何?!」
背後からの強烈な一撃。
グリアンアイネクは周囲のClo麒麟をフッ飛ばしながらも、
なんとか地に踏ん張った。血が伝う唇を拭いながら、鋭い視線を投げる。
「なるほど…。これは神の意志か。」
「グォォ……。」
オネファトディーヴァの両眼が妖しく光る。
「どうしてもこの闘いに茶々を入れたいようだな。いいだろう、因縁をここで果たそうじゃないか。」
848ほんわか名無しさん:03/07/01 10:03
麻衣子の背中から、突如サイバーな幾何学模様に彩られた光の翼が羽ばたいた。
彼女の周囲には、ツールと思しき無数の光の文字や図形、数字の羅列が高速で飛び交っている。

麻衣子「システムテスト…OK。ドライヴテスト…OK。リソースの算出中…。」
アイリス「ちょ、ちょっとリーダー何を呟いてるのよ…。」
CJ「気付かない?あれはレイジースーツのオペレーティングシステムのベースプログラムを支配する言語だわ。」
アイリス「うそっ?!あんなに早い演算、どんな高性能のチップで並列処理しても無理よ!」
慶子「一つはっきりしたことがある…。」

三上慶子がルナとエンデュミオンの動きを警戒しながら続ける。

慶子「因果律へ干渉する力の由来は、スーツの魔力そのものではない。」
CJ「ええ、システム構造自体にその謎が秘められているわ。」
アイリス「ってことは、イルミナティの呪文とシステムに根本的な互換性が?時系列的にありえないわ。
     だって、イルミナティのスペルコードを元にシステムを構築したんでしょ?」
CJ「言語コードの可逆性…。それは"激しくC型"の感染テストで証明されている。」

突然、麻衣子が空中に羽ばたき、周囲を光の環で包み出した。

ルナとエンデュミオンは何やら通信の最中のようだ。
ルナ「司馬令様、アノーマリー、"予定外の事態"の生成を確認!至急…。」
その時だった、空中で燻っていた重い灰色の雨雲が、まるでグングニルの槍を突きとおしたの如く、
円状に散ると、その合間から神々しいほどの陽光と青空が拓けた。

そしてその光の差す先に、一人の少女が佇んでいた。
849ほんわか名無しさん:03/07/01 20:03
第六十章 〜Divagate Reality〜
850ほんわか名無しさん:03/07/02 01:31
第六十章 〜Divagate Reality〜
851ほんばかハンディ名無しさん:03/07/02 02:43
そしていま、みなの思いが一つとなり、愛と友情の必殺兵器が放たれる!!!
852ほんわか名無しさん:03/07/02 11:56
杞憂は別棟の屋上から麻衣子に見惚れ、憧れに瞳を潤ませてそう呟いた。
「さぁ、急ぐねじーヽ(´ー`)ノ」
後ろには三人のロストナンバーズを従えて…。

「リュシオン!!」
黒田獣騎が戦場の喧騒の中で叫ぶ。
呼ばれた少年は振返った瞬間、始めからそうであったかの如く、妖麗な美女に変貌を遂げていた。
リュシオン「遅かったわね。御覧なさい…。」

壮絶な攻防を繰り広げていたClo麒麟、竜の群れと、黒田重工、シュトフアッセンブリー空挺師団、
レイジィバツース達、そして劉翻と劉飛までもが、この広大なパノラマを蹂躙する空間の変化に注意を奪われていた。
光の波動が幾度にも渡って、体をすり抜けていく。
イヴ「これは・・・?」
リュシオン「スキャンされているわ。」
獣騎「スキャンだと?!」
銀之助「イヴ・・・、俺はお前を・・・。」
リュシオンが銀之助とイヴの合間に割って入り、手のひらで遮る。
リュシオン「もういいのよ。あなた達の動機は全て知っている。それが必要だったから。」
銀之助「どういうことだ?!」
イヴ「・・・。」

空や大地、空間の全てに渡って、光の幾何学模様が何かのモジュールの如く切り込みを入れ始めた。
奇妙な図形に囲われた空間の一部は、時として歪んだり、暗転したり、時間を早めたり交換したりを繰り返している。

リュシオン「アクセスコードを捕まえたわね。始まるわよ。」

遥か頭上、環状に拓けた雨雲の切れ間に、光のワイヤーフレーム状の天井が現れた。
そして彼方地平の果てに至るまで、さながら荘厳なカテドラルの如く光の建造物で包括した。
853ほんわか名無しさん:03/07/02 11:58
ごめんageちゃった…
854ほんわか名無しさん:03/07/04 21:10
「ホシュ」
855濡れ猫:03/07/05 23:47
アレトリオ「こっ、これは何ねじー?」
杞憂「凄い…。」
伶佳がイヴに駆けよる。
伶佳「お願い!麻衣子を助けて!!」
イヴ「助ける?何故…」
伶佳は下を俯くと、イヴの方をギュッと力強く掴んだ。
伶佳「お願い…、あなたしかいないの…。」
856ほんわか名無しさん:03/07/08 06:32
麻衣子の周囲を飛び交う光と空間の歪みが、明らかに秩序あるパターンを描き出す。
同時に、キャンパス・ステラに現れた少女がその光を取りこみ、姿を消した。
「おねえちゃん!」さくらを引き連れたももが叫ぶ。

伶佳が心配そうに麻衣子を見上げる。
「麻衣子はどうなるの?!」
リュシオンは両目を抑えて地面に蹲った。
「初期化されたわ。未来のヴィジョンが消えた。」
「装置が起動したのか?!」
獣騎がリュシオンを抱き起こしながら尋ねる。
「いいえ…。装置はキャンパス・ステラそのもの。だけど未完成なの。」

遠くで攻防を繰り広げていた劉翻が青龍刀を鞘に納め、劉飛に先を促した。
「行け。使命は果たされた。」
「…どういうことだ?」
「怪物達を引かせよう。我々の目的は、装置の起動とアノーマリーの発生だった。」
劉翻が麒麟たドラゴンを退避させるサインを取る。だが、応答は無かった。
「…?!司馬令、何事だ!!」

〜司馬令陣営に、精鋭の魔導師とアルファブリードが集結している。
「ふふふ…今こそ歴史を塗り替える時。我々は我々の未来を築くのだ!!」
魔導師が一斉に新たな呪縛を、支配化の怪物達にバイアスする。
麒麟をはじめとする無数の魑魅魍魎が、空中を舞う麻衣子に襲いかかった。
857ほんわか名無しさん:03/07/08 07:00
蒼く冷たい水の中にいるようだった。
どこまでも沈んでいく感覚。自らの呼吸が奏でる鈍い気泡の音。
水面に揺らぐ幽玄な光は遥か彼方。永遠に遠ざかる光。
彼女は堕ちながら、その瞳を水中に晒した。
闇と淡光の干渉縞が、彼女の瞳に揺らぐ影を落す。
「ここは…どこ……?」
自分の声が反響し、無限に共鳴するのを感じ取る。
水中で体勢を整えながら耳を澄ます。不意に、女性の声が彼女に問い掛けた。
「わたしの声が聞こえる?」
「えぇ、聞こえるわ。あなたは誰?」
「わたしは、あなたが"わたし"と感じているもの。」
「"アクセス・キー"なの?」
「"問い"に対する"答え"を知りたければ、あなたは一つ学ばなければならない。」
「?」
「"答え"とは、動機を生成する一過程に過ぎないということを。」
「わたしは…わたしが知りたいのは、理由や真実なんかじゃない。自分が護りたいものの為に…」
「何を為すべきか…ね?あなたは既に一番大切なものを持っている。気付かない?」
「えっ……。」
麻衣子は、自分の胸の奥に、何か暖かいものを感じ取った。
何か根拠があるわけでもない。ただ、漠然とそう感じるだけだったのに、彼女は確信した。
「リリスちゃん……。」
「一緒にいるよ。」心の内から、声が応えた。
その瞬間、麻衣子は自分の体が物凄い勢いで引き上げられる感覚に陥った。
水面に揺らいでいた光が、視界を天上の如く強烈な煌きで蹂躙する。眼前が白い光で包まれた。

「……!!」
気がつくと、彼女は護られるように真っ白な翼に包み込まれていることに気付いた。
「……イヴ?!」
「ぶ…無事か……。」
数百匹の怪物たちの攻撃から、イヴは身を呈して麻衣子を庇っていた。
858ほんわか名無しさん:03/07/08 19:06
「この事態もまた因果の輪の中なのか?」
学園内への入口を目指して走る獣騎は
より添うように走る課長の腕に抱えられた
リシュオンに声を掛ける。
「解らない。まだ新しい未来は見えない。」
「特異点の影響か?」
「特異点はきっかけに過ぎないわ。
この学園には大きな力が集りすぎている。」
リシュオンは前方を走る伶佳に目を向ける。
「霧裂きの弓の一族」
「彼女も大きな力の一つ。けどもっと大きな力が目覚めようとしてる。」
「レイジーバツースの誰かですか?」課長が尋ねる。
「もし、私の感が間違っていなければ”イルミナティーの神官”」
「ははは、全てを見通す目を持つお前が、推測で物を言うとはな。」
「...」
「で、何者なんだその神官とやらは?」
「昔イヴから聞いた事がある。イルミナティーを統べる者にして、全ての光の民に転生の術を施し者」
「ほう」
「永い間眠らされていたイヴが、昔と変らない魔力を使えるのも
一度、彼女と融合したかららしいわ。」
「彼女?女性なのか?」
「ええ。イヴは"正統なるイルミナティの末裔"と呼んでいたわ。」
859ほんわか名無しさん:03/07/09 05:51
「教えてくれ。イルミナティとは何だったんだ?」
「その起源は霧に包まれたままよ。」
「お前には過去も未来も見えていたんだろ?」
「確かにそうだけど、部分を認識するとなるとまた別の問題なの。」
「観測問題ね。」後ろを護衛する優子が語り掛けた。
「そう、何かを知ろうとするためには、何かについて盲目でなければならない。」
「……。」
「ただ一つ言えることは、彼らの輪廻の環が正に循環しているということ。」
「つまり始めも終わりも無いと?」
「そう、更に彼らの操る呪術のベースは、あるシステム言語と完全な変換性を備えている。」
「"装置"?」
「未来の収束する一点、そこに全ての答えが待っているはず。」
860ほんメカ名無しX:03/07/10 12:02
第61章 -Bevatron-
861ほんわか名無しさん:03/07/11 22:03
「戦える?」
イヴは麻衣子を庇いながら尋ねた。
麻衣子は体中に力が漲っているのを確かめると
こくんと力強く頷いた。
イヴはにっこり微笑むと、翼を羽ばたかせ上空の麒麟目掛け急上昇する。
と同時に麻衣子も飛びだした。
まるでそれまでの不調が嘘のように体が軽い。
上空から、麻衣子目掛けて龍が炎を噴出す。
一瞬、炎に飲まれたかに見えた麻衣子の姿が
龍の頭上に不意に現れる。
「天の風琴が奏で流れ落ちる その旋律凄惨にして操觚なる雷」
麻衣子の手に、いつの間にか握られていた双頭の剣が
雷を放ちながら巨大化する。
「うぉぉぉぉー」
麻衣子は龍の頭に剣を突き立て、そのまま龍の体の上を走り抜ける。
龍の体が切り裂かれた部分から粒子になって消えていく。
(リリスちゃん...私、戦うよ。皆を守る為に。そして貴女との思い出を守る為に。)
麻衣子の瞳に、もう迷いはなかった。
862ほんわか名無しさん:03/07/12 08:41
イヴは麻衣子との絶妙なコンビネーションで、怒涛に打ち寄せる怪物の群れを薙ぎ払った。
一際巨大な個体には、意識をリンクさせてある衛星レーザーをお見舞いする。
伶佳「凄いわ。もう私達の出る幕なんてないみたい・・・」
リュシオン「いや、まだ不安要素が・・・」

一方、杞憂とアレトリオン達は他の隊員と合流すべく、司馬令の本陣へと接近しつつあった。
司馬令「おや?どこへお出かけかな?お嬢さん達。」
杞憂「しまった・・・!」
司馬令と従者達が、彼女達を取り囲んだ。
司馬令「ロストナンバーズが・・・。良い実験材料になりそうだ。」


〜キャンパス・ステラ西の尖塔。

百合子はさつきを安全な場所に退避させ、「ワクチン」を握り締めながら、
尖塔に立ち、隠された操作パネルにパスワードを打ちこみ始めた・・・。
863ほんわか名無しさん:03/07/12 08:52
レイコ「百合子が装置を起動させる気だわ!」
校長「何?!まだ早い!!」

敵が一掃されたキャンパス・ステラ中心部。
さくらとももは、遠くにいるアイリス達の場所へと駆けていた。
突如、ももが立ち止まる。眼がどこか虚ろだ。

さくら「もも・・・?どうかしたの?」
もも「お姉ちゃん。。ごめんね。」
ももは涙を零しながら、さくらに微笑みかけた。

と同時に司馬令の部下であるアルファブリード達が降り立ち、二人を包囲した。

「抵抗しても無駄だ!」
さくら「くっ!氷輪!!」

さくらが攻撃を繰り出そうとした瞬間、この世のものとは思えない嬌声と共に、
背後の妹が光に包まれた。
864山崎 渉:03/07/12 12:39

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
865ほんわか名無しさん:03/07/14 16:14
     
866ほんわか名無しさん:03/07/14 21:56
ももの放つ光はさくらを優しく包んでいた。
アルファブリード達は突然の事態に動けずにいた。
「えーい!たかが小娘一人、何が在ろうと恐るるに足りんわ!かかれ!!」
どこからか司馬令の怒声が響く。その声に反応してアルファブリード達が
一斉に姉妹に飛び掛った。
アルファブリード達は確かに姉妹に向って飛び掛ったはずなのだが、
なぜか、その中心にいたのは司馬令とそれを取り囲む魔導師に他ならなかった。
数人の魔導師がアルファブリードの攻撃に倒れる。
「ぬー!」
司馬令の顔が憤怒の表情に歪む。

イヴは、光に包まれた姉妹の前に跪いていた。
やがて、光の中から、イヴ゙の翼よりも大きな翼をもった
天使がさくらを翼に抱いて現れた。

背中に3対、両手、両足にそれぞれ一対、計12枚の翼を持つ
その天使の姿は小柄なももの姿からは想像が出来ないほど
均整の取れたスタイルを持ていた。
しかし、さくらはそれが間違いなく妹である事を知っていた。
867山崎 渉:03/07/15 12:12

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
ハッキリ言ってアメリカなどの多民族国家では黒人の方がアジア人よりもずっと立場は上だよ。
貧弱で弱弱しく、アグレッシブさに欠け、醜いアジア人は黒人のストレス解消のいい的。
黒人は有名スポーツ選手、ミュージシャンを多数輩出してるし、アジア人はかなり彼らに見下されている。
(黒人は白人には頭があがらないため日系料理天などの日本人店員相手に威張り散らしてストレス解消する。
また、日本女はすぐヤラせてくれる肉便器としてとおっている。
「○ドルでどうだ?(俺を買え)」と逆売春を持ちかける黒人男性も多い。)
彼らの見ていないところでこそこそ陰口しか叩けない日本人は滑稽。
869ほんわか名無しさん:03/07/15 13:06
>>766
背中に3対、両手、両足にそれぞれ一対、計12枚 ×
背中に3対、両手に一対、右足、左足にそれぞれ一枚、計12枚 ○
870ほんわか名無しさん:03/07/16 04:36
イヴは突如現れた織天使を見上げ、両手を差し伸べる。
眩い後光を放つ織天使…先程まではももだったその人は、さくらを地面に降ろし、
イヴの額に指を当て、口を開いた。

「今が契約の時、汝から預かりし封印を解かん。」

イヴの左手に光り輝く弓が現れた。

「エルヴン・ボウ……。」
「刹那の彼方に囚われた時を射止め、見事我ら輪廻の環に楔を刻んでみせよ。」

織天使は再び光に包まれると、ももの姿に戻り、地面に落下する。
「もも!!」間一髪、さくらが抱きとめた。
同時に、リュシオン達がキャンパス・ステラに到着した。
「遅かったわね。神託は済んだみたいだわ…。」
「麻衣子は何処?!」伶佳が周囲を探る。
ソーラーパネルが小刻みに振動を強めているのを感じ取った。

「もも…もも……どうしよう、体が冷たいよ!」
さくらが涙ながらにイヴに助けを請うたが、彼女の視線は遥か彼方に向けられていた。
黄金に輝く光の弓を握り締めながら…。
871ほんわか名無しさん:03/07/16 05:01
"それ"は突如出現した。

キャンパス・ステラのパネルというパネルが傾斜角を変え、
それほど高くは無い上空にある物体を投射した。
蒼く輝く光の帯や、魔方陣が幾層にも複雑に絡み合い、高速で回転している。
ワイヤーフレーム状の巨大なアーミラリ天球儀といった様相を呈していた。

「"装置"よ。まだ未完成なのに、誰かが起動させたんだわ。」
リュシオンがももを介抱しながら説明した。

銀之助や優子、獣騎は、アイリス達や傷ついた同胞、敵であるアルファブリードを庇いながら、
こちらに勘づいた怪物達を丁寧に駆逐していた。
「何だか知らないけど急いで!数が凄くて持ちこたえられない!」
叫ぶ優子の背中にClo麒麟の毒牙が突き刺さった。
「優子!!」
銀之助の"飛龍"が発動し、周囲の怪物たちを一時的に一掃した。

イヴは球体にエルヴン・ボウを構え、何かを狙い澄ましているようだ。
と、突然、イヴは何かに気付いたかのように、ハッと地上の戦場の方を振り向いた。
「彼女が危ない……。」
麻衣子が、まさに司馬令陣営に駆け付けようとしている光景が見えた。

一瞬後、学園キャンパス一帯が、杞憂の攻撃魔法に包まれ、爆発する。
と同時に、今までの怪物のそれとは違う、何か禍禍しい生物が蠢いている気配を感じ取った。
イヴは以前にもそれを知っていた。
「ロストナンバーズ……!?」
872ほんわか名無しさん:03/07/18 13:29
第62章 - Epsilon Phase -
873ほんわか名無しさん:03/07/19 01:28
三体融合したアレトリオン…ロストナンバーズは、司馬令の部下や周囲の怪物、
兵士達を呑みこんで、触手を広げる。触手に触れたものは細胞レベルで融解した部分から、
その組織を、媒体の一部へと変貌させていった。

敷島「運命の悪戯か・・・。再び暴走したな・・・。」
レイコ「キャンパス・ステラでは既に装置が起動してるわ!」
校長「麻衣子は何処だ?!早くアノーマリーを誘導しないと・・・。」


麻衣子は触手を避けながら、その巨大な生物の陰に消えてしまった友の姿を探る。

麻衣子「杞憂ちゃん!杞憂ちゃん!!」
彼女の背後には、剣を構えた司馬令が迫っていた。
874ほんわか名無しさん:03/07/21 18:04
携帯より保守
875ほんわか名無しさん:03/07/22 18:00
空中を旋廻していた宇宙艇ミシュラは、ロストナンバーズの暴走を確認し、
上空まで猛威を振るう触手をかわしながら、麻衣子の元へと急ごうとする。
巨大化を続ける触手が、空中で退避しはじめた飛空挺群に絡みつき、引き摺り落そうとする。

さくちゃん「我々宇宙海賊の間で最も恐れられた伝説・・・。」
F村「銀河連邦も血眼で探しているという、失われた技術ですね。」
さくちゃん「"先代種族"の遺伝形質細胞らしい。我々の手に余るので、黒田重工に技術応用を委託していた。」

大きな轟きと閃光と共に、大地を覆い尽くそうとしていた触手が半分ほど焼け落ちていく。
ミシュラはその煽りを受けて大きく制御を失った。

F村「くそっ!麻衣子を見失った!!」
さくちゃん「いや、それどころじゃないぞ・・・。」

ミシュラは、拡大しつづけるロストナンバーズと狂ったように咆哮をあげる
麒麟の巨体との間に挟まれていた。
876濡れ猫:03/07/23 12:57
麻衣子は触手を薙ぎ払いながら、
ロストナンバーズの中心部へと進んでいた。
しかし、双頭の剣で切った触手の切り口から
無数の触手が再生し、麻衣子の体に絡みつく。
「きゃっ!何よコレ!」
スーツのおかげで瞬間的な融合は免れたが、
ジワジワと這い回る触手が、
彼女の体と意識をゆっくりと侵食し始めた。
877ほんわか名無しさん:03/07/24 07:46
第63章 >> Ephemral
878ほんわか名無しさん:03/07/24 19:35
「くっ」
麻衣子はとっさに触手を切払う。
スーツと融合している触手が
本体から離れてなお蠢いている。
切払われた部分から伸びた新たな触手が
再び麻衣子に迫る。
触手を避けようと体を捻った麻衣子の眼前を
振り下ろされた剣が掠める
「ちぃ、運のいい奴め!」
いまいましそうに麻衣子を睨む司馬令の背中を
ロストナンバーズの触手が襲う。
獲物を見つけた触手は一斉に
その体を取込み始める。
しかし、触手の侵食を受けている司馬令は
不適な笑みを浮べ、護符らしきものを取出すと
自らの額に貼り付け呪文を唱え始めた。

触手は程なく司馬令の体を完全に包み込む。

不意にロストナンバーズの動きが停止した。

次の瞬間、禍禍しいロストナンバーズの体表に
無数の司馬令の顔が出現した。
879ほんわか名無しさん:03/07/25 10:15
リュシオン「イセリアル・ディヴァイド!!」

半透明に蒼く輝く巨大な光の槍が、ロストナンバーズに突き刺さる。
が、緑色の物体は更に、肥大化を続けるばかりだった。

リュシオン「まずいわ。エネルギー系の攻撃は無効よ。」
イヴ「えぇ、"彼女達"はエネルギーを吸収する。」
獣騎「何か莫大な質量攻撃を加えられれば・・・。」
伶佳「待ってよ!まだ中に麻衣子が!!」
リュシオン「一刻を争うのよ。麒麟が吸収されたらそれこそ破滅だわ。」

ふいにももが目を醒まし、夕闇の深い蒼に沈み始めた天と三日月を仰いだ。

さくら「もも!!」
イヴ「神官様・・・。」
もも「オービットリング・・・。」

ももはうわ言のように呟いた。

リュシオン「オービットリング。そうか!巨大な質量といえば・・・」
イヴをはじめ、そこにいる全員が空を仰いだ。
かつてレイジーバツースによって破壊された、天空の巨城の破片が、
地球の軌道に環を描いていた。
880ほんわか名無しさん:03/07/25 10:32
ロストナンバーズの体表に浮き出した司馬令の顔が、
不気味に笑いを浮かべながら、麻衣子の逃げ道を塞いだ。

司馬令「ククク。今度こそ終わりだな小娘!」
麻衣子「あなたの狙いは何なのよ?!」
司馬令「新しい世界の構築だよ。少々予定は狂ったが、これで良しとしよう!
    私だけが唯一の絶対的な存在になるのだ!!」
麻衣子「わからないよ・・・この狂った闘いの意味は何?」
「意味などない・・。」
聞き覚えの無い声が、背後から聞こえる。
体を半分取りこまれた劉翻と、気を失った劉飛がそこにいた。
司馬令「フン、死に損ないが!すぐに融解してやるからな。」
麻衣子「あなたは・・・。」
劉翻「すまないな・・・極限状態でアノーマリーを炙り出すのが我々の狙いであるはずだった。」
麻衣子「アノーマリー?!」
劉翻「君のことだよ。全知全能、運命を司り、未来を切り開く能力者だ。我々にとってはな。」
司馬令「くだらん解釈だな。私に言わせれば、宇宙を無限地獄にループさせる災厄の種だ。」
麻衣子「ループ?どういうこと?さっぱりわからない・・・。」
劉翻「君を、"装置"へと導かねば・・・息子も浮かばれない・・・。」

右半分が癒着してしまった劉翻の頬を、涙が伝った。

劉翻「いいか?ここは君のフィールドだ。そのスーツの力で因果律を操作し、全てを思うままに出来る。」
麻衣子「わたしが・・・。でも、杞憂ちゃんは?杞憂ちゃんは何処?!」
司馬令「既に取りこまれたよ。なかなか上手い娘だった!」
881ほんわか名無しさん:03/07/26 23:03
このサイトに来ては、行ってません。
増やします?? させましょう!! 犯っちゃった?・
http://sasurai.gaiax.com/home/yuuki0860/main
882ほんわか名無しさん:03/07/27 13:31
夏ホシュ
883ほんわか名無しさん:03/07/28 11:53
「そんな…そんな、杞憂ちゃんが…」
麻衣子は絶望に狼狽を隠せない。頭がクラクラする、
冷や汗が吹き出る感覚。バランスを失った麻衣子は、
膝から地面に崩れ落ち、剣から手を離す。
吐息が自らの喉を切裂くようにヒュウヒュウと鳴った。
(戦わなきゃ…戦わなきゃ…)
必死で身体を鼓舞しようとする。
敷島から奪った杞憂のリボンを握り締めた。
「ククク…無残だなぁ。細胞レベルで融合してしまっては、
そのスーツを持ってしてもどうにもなるまい。」
麻衣子の脳裏に、杞憂の笑顔がフラッシュバックする。
が、直後に、最後に見た表情、
寂しげで涙に濡れた彼女の顔が浮かぶ。
「……会いたい。会いたいよぉ。」
最早戦闘意欲は完全に掻き消えてしまい、
ただリボンを抱きしめて泣くことしか、彼女には出来なかった。
そして麻衣子は、ロストナンバーズのおぞましい肉壁に呑まれた。
884ほんわか名無しさん:03/07/28 18:03
「ははははは!ロストナンバーズといい、アノーマリーといい、何たる精神の脆さよ。
所詮は、ただの小娘に過ぎぬということか!」
ロストナンバーズの体表に無数に浮ぶ、司馬令の一際大きな顔が勝誇ったように叫ぶ。
「さて、後は麒麟を取込めば、私はまさに神になる!さあ麒麟どもよ、我の力となれ!!」
司馬令の声に反応するように集ってきたclo麒麟を触手が次々と取込む。
「くそ!」
徐々に巨大化してゆくロストナンバーズに劉翻が清流刀を左手に掴み体ごと突っ込む。
無論、それでロストナンバーズを止める事ができると思った訳ではない。
せめて一矢報いる事ができればと取った行動だった。
しかし、清流刀がロストナンバーズを貫く前に、触手が劉翻親子の頭部を串刺しにする。
親子の体が見る間に触手と同化して行く。
「劉...飛...」
父は薄れ行く意識の中で、最後まで分り合えなかった息子の笑顔を見たような気がした。
885エヴァ:03/07/28 18:55
リュシオン以下一同は、キャンパスステラから
麒麟の巨体が、ゆっくりとロストナンバーズに沈んでいく光景を見守る。
不意にももが前方へと歩み出た。
「……先代種族の呪われた遺伝子。神の聖域より追放された者。」
「な、何?もも、あなた何言ってるのよ?」
「先代種族と我々"訪問者"の戦いは、遥か古代より続いてきたものだ。」
さくらが妹の只ならぬ気配に気付き、ももの肩を引き止める。
しかし、振りかえった妹の瞳には、何か別の魂が宿ったようだった。
リュシオンがももに膝まつき、畏敬の念を表した。
「あなたがイルミナティを統べる者、星宮の神官ですね?」
「星読みの巫女リュシオン、堕天使リュシフェルの複合体か…。」
「リュシフェル?」
イヴが怪訝そうに尋ねる。
「ええ、ルシルの本名よ…。」
「ずっとお慕い申しておりましたわ。この二千年間……。」
イヴは育ての親でもある神官に再度、ひざまつき、手のひらにキスをする。
「リリスがいたら……。」

ももは深い蒼空に浮かぶ三日月の孤に両手を翳し、何やら呪文を詠唱しはじめる。
次の瞬間、別々のフィールドにいたレイジィバツースの生き残りが
瞬時にキャンパスステラへと転送された。

「あ、あの…もしかして……。」
伶佳が不安そうにももに進言する。
「レイジィバツースと私の力を総動員し、オービットリングの破片を軌道より落下させる。」
「そんな!!麻衣子はどうなるの?!」
「わかって、神獣が取りこまれたら、もう手に負えないの。」
リュシオンが伶佳を優しくなだめるように囁きかける。
886銀蜂 ◆f6h/cQltoE :03/07/29 09:57
がしかし、
887ほんわか名無しさん:03/07/29 10:26
このスレが遂に710/710という最下位にまで落ちてしまったので、upすることにした。
888ほんわか名無しさん:03/07/29 10:27
結果、1位になったけど、不人気スレなので再び下がり続けるのは必至!!!
889ほんわか名無しさん:03/07/30 17:37
「杞憂ちゃん…ごめんね……。」
麻衣子は気がつくと、何もない真っ暗な空間に佇んでいた。
「ここは…何処?」
ふと、後ろにポゥと光が差した。
ぼんやりとした輪郭に彩られた影、杞憂が笑顔で立っている。
「杞憂ちゃん!良かった!生きてたんだね!」
麻衣子は彼女に駆け寄るが、
抱き締めようとした腕は虚しく宙を掴んだ。
「え?!」
「麻衣子ちゃん、ごめんなさい。あなたから貰ったリボン、無くしちゃった…。」
「リ、リボンならここにあるよっ、ホラ!」
杞憂はキョトンとした表情で、差し出されたリボンを見つめた。
そしてゆっくりと受け取ると、それを頬にあてて微笑む。
「……ありがとう。」
涙がツーッと頬からリボンに伝う。
「杞憂ちゃん、ここから抜け出さないと。」
「ごめんなさい、私は無理なの。」
「そんなっ、そんなことない!!」
「麻衣子ちゃんはまだ大丈夫だわ。このフィールドもあなたが創り出した空間だもの。」
「じゃぁ、これは…幻?」
「いいえ、私はここにいるよ。」
「…やだ、…やだよ……杞憂ちゃんを置いていけない…。」
「私はいるよ?ずっと、麻衣子ちゃんの中に…。」
麻衣子の瞳に涙が込み上げる。
「いやだ……。だって…こうしてお話が出来るのに…。」
「お願い、わかって。急いでここから逃げ出さなきゃダメ。」
「無理じゃない、無理じゃないよぉ!絶対、一緒に生きて帰るの!」
「……麻衣子ちゃん。」
890ほんわか名無しさん:03/07/30 18:36
キャンパスステラでは、伶佳がももにまだ食下がっている。
「お願い。麻衣子ちゃんを・・・」
「言い争っている場合ではない」
ももの声が静かに響く。
麒麟の体にはすでに無数の触手が絡み
その姿を確認する事すら困難になっている。
ももはレイジーバツースに手を繋ぎ円形に自分を囲むように指示を出す。
伶佳の近くにいた隊員が俯いたままの伶佳の手を取ろうとしたときであった、
「要は、ロストナンバーズと麒麟を融合させなければいいんでしょう」
伶佳がなにかを決意した目でももを見据える。
「そんな事が」
「やってみなけりゃ解んないわよ!!」
割って入ったイヴの言葉を遮るように伶佳は言い放つと
ロストナンバーズに左の肩を向け立つと呼吸を整え始めた。
伶佳の周りの空気が張詰めてゆく。
ロストナンバーズに顔を向け軽く足を開き再び正面に向き直ると
伶佳はまるで見えない和弓を引くかのような動作を始めた。
全身に力が込められているのが傍目にも解るほどに
筋肉が隆起している。弦が引かれる音さえ聞えてきそうである。
「はぁーーー」伶佳の口から声が漏れる。
筋肉がスーツを破らんばかりに更に膨らむ。
次の瞬間、極限まで引かれた見えない弦が、"ビュッ”という音を残し手から離れる。
「いけーー!!霧裂きの矢ぁぁぁ!!」
見えない矢が麒麟目掛けて放たれた。
891ほんわか名無しさん:03/07/31 07:24
第64章 >>Fade Sanctuary
892ほんわか名無しさん:03/08/01 14:19
伶佳「行けぇぇぇーーーーーーーーーー!!」
霧崎伶佳の放った見えない矢は、空中に旋風を描きながら麒麟の巨体へと向った。
ロストナンバーズの上方を横切る際、その触手と媒体を凄まじい衝撃で引き千切る。
その中から麻衣子が姿を現し、宙に投げ出された。
伶佳「イヴ、お願い!!」
イヴはこくんと頷くと、大きな翼を広げて麻衣子を広いに飛ぶ。
しかし、霧裂きの矢はそのまま麒麟の横を「素通り」した。
獣騎「はずしたかっ!!」
伶佳「・・・いいえ。」

矢はそのまま真っ直ぐに学園の領地を飛び越え、彼方にある磁場発電装置を直撃した。
物凄い爆風と光が遠方の森を、一瞬で覆う。
その途端だった。キャンパスステラの後方で光を放っていた"装置"の光が消える。

伶佳「一を知れば十を知る・・・霧中を制する弦弾きの極意よ。」
学園中にけたたましい警報が鳴り響く。

『サーフィスレベル4、電力供給遮断、非常電源に切り替え。シェルターシステム作動』

学園の領地内の道という道から、突如として巨大な防壁がせり上がる。
高く頑丈な壁は、ロストナンバーズの触手を引き千切り、核部分と麒麟とを切り離した。
893ほんわか名無しさん:03/08/01 14:48
もも「今よ!意識を集中させて!!」
円形に手を組んだレイジィバツース達が目を瞑ると、
軌道上に浮かんでいた無数の金属片が、摂理に反する重力に引かれ大気圏に突入を始めた。

イヴはせり上がる防壁をギリギリにかわすと、麻衣子を空中で抱き留める。
イヴ「大丈夫?!」
彼女はすぐに麻衣子の身体が、薄い光の膜で守られているのに気付いた。
イブ「これは・・・結界?!」
麻衣子「う・・・ん・・・・・杞憂ちゃん・・・・・」
司馬令「地獄に落ちろぉぉお!!」
不意にロストナンバーズの触手が下方から突き上げ、イヴの両翼を引き裂いた。
イヴ「しまっ・・・・!!」
イヴは麻衣子を抱き締めたまま、地獄のように顎を広げる
ロストナンバーズの核へと、為す術もなく落下していく。
と、突然何かの影がかなりのスピードで近づいてくる気配を感じ取った。
「掴まって!!」
イヴはその声に従って、思いっきり片手を差し出すと、何かがピシッと手首に巻きつく。
その瞬間、二人の身体はそのまま飛行物体に引き上げられた。

いずな「へっ!貸しが一つね。リーダーさん。」
さくちゃん「ミシュラへようこそ、天使さん。」
894ほんわか名無しさん:03/08/01 16:04
イヴが無事、麻衣子を回収するのを見届けた伶佳の
だらりと下げられた腕がガクガクと震えだす。
「ぐっ....」
伶佳の顔は蒼白となり、苦痛に歪む。
「やっぱりな。プライマリーが発動した状態であんな大技出すから...」
呆れ返った顔の敷島が黒岩とレイコを伴って現れた。
「どれ?」
伶佳の震える腕を敷島が触診する。
敷島の指が触れるたび伶佳の口から呻き声が漏れる。
「こりゃ思ってた以上に酷いな。
このままじゃ、もう二度と箸すら持てないだろう。」
冷酷な事をさらりと口にし、敷島は伶佳の顔を覗き込む。
伶佳は敷島の声が聞えているのかいないのか、
歯を食いしばり必死に痛みに耐えているようである。
「まっ、俺の手術を受ければ...」
その様子を隊員の輪の中で見守っていたももが
伶佳の元に歩みより、震える両腕を何も言わず軽くなでると
嘘のように震えが止り、伶佳の顔にも赤みがさしてきた。
驚いた様子で敷島が伶佳の腕に触れる。
「ちぃ、余計な事を。」
楽しみを奪われた子供のような顔で敷島は呟いた。


意識のない麻衣子を抱いてキャンパスステラに急ぐイヴの前に
燃えるような赤い神獣機装を纏ったルナが立ふさがった。
895ほんわか名無しさん:03/08/01 16:06
やっちまった!!
>>894は削除
896ほんわか名無しさん:03/08/01 16:07
>>895ん?なんとか繋がるYO!
897山崎 渉:03/08/02 01:24
(^^)
898濡れ猫:03/08/03 15:04
神獣機装の浮揚力でミシュラの前方に立ちはだかるルナ。
イヴの脳内にリュシオンの声が響く。
「破片が降り注ぐまでもう時間が無いわ!」
「そのまま突っ切って!!」
イヴはミシュラの乗員に向って叫ぶ。
ルナは微動だにしない。
「何なのよ…彼女頭おかしいんじゃない?」
いずなが不安そうにコックピットで固唾を飲んだ。
「スーッ……」
ルナは目を閉じて深呼吸をすると、突然装甲が変形しはじめる。
巨大でメカニックな装甲兵へと変化したルナは、
両腕に備えられた巨砲にエネルギーをチャージしはじめた。
「まずいぞ!旋廻しろ!!」
ミシュラはグルッと円を描いて反対方向に旋廻する。が、
その前方には防壁を砕いた麒麟が、その巨体を露わにしていた。
899ほんわか名無しさん:03/08/05 08:06
「……麻衣子ちゃん。」
麻衣子は依然、自らが創り出したフィールドの暗闇の中で、杞憂と対峙していた。
「麻衣子ちゃん、早く目を覚まして、みんなを助けてあげて。」
「あなたも助けたいの!」
麻衣子は一向に譲ろうとしない。
「ね、世の中にはどうにもならないことってあるの。」
杞憂は辛そうに視線を逸らし、麻衣子に拒絶された昨晩の出来事を思い起こした。

「このスーツの力は?!何がアノーマリーよ…。何の為の力なの…。」
「会社の人から聴いたわ。因果律に干渉し、思い描くままの現実を世界に挿入する力。」
「…わかるの。周りで何が起きているのか。これから何が起こるのか。でもそれが…怖い。」

杞憂は優しく微笑みながら、麻衣子の両肩にそっと両腕を回す。
先ほどまでは感じられなかった温もりと、囁きな吐息が感じられたような気がした。

「大事なのはね、麻衣子ちゃん…。」
「ん…。」
麻衣子は目を閉じ、彼女の存在する感覚を必死に掴み取ろうと顔を摺り寄せ、涙した。
「何かがわかることじゃない…。何かが出来ることだよ。」
「ごめんなさい…わたし…。」
「うん。麻衣子ちゃんならきっと大丈夫。さ、行って。」
「…うん。」
麻衣子は一人光の方向へ駆け出し、途中で笑いながら振りかえった。
「またね!!」
900ほんわか名無しさん:03/08/05 13:31
第65章 - Och jungfrun hon gar i ringen(乙女は輪に加わる) -
901ほんわか名無しさん:03/08/05 18:57
百合子は装置の中心部に設置されている
卵形の透明なカプセルの中でキーを叩き続けていた。
一人なら圧迫感はないだろうが、二人だと窮屈そうな大きさのそのカプセルは
床から1mほどの位置に浮び、まるで呼吸でもしているかのように
全体から薄い光を明滅させながらゆっくりと横回転をを続けている。
百合子は全裸であった。
カプセルの内側に設置されたコントロール装置と思しき物から
無数に伸びたコードが百合子の体のいたるところに貼られている。
カプセルが明滅する度にうっすらと汗をかいた
百合子の胸に深い影が浮ぶ。
カプセルの中は、外での喧騒が嘘のように静かだ。
百合子のキーを叩く音以外に音は存在していなかった。
一瞬何のカプセルの動きが止る。

『サーフィスレベル4、電力供給遮断、非常電源に切り替え。シェルターシステム作動』

そして何事もなかったように再びカプセルは動き出す。
902ほんわか名無しさん:03/08/07 17:58
百合子はこの装置が未完成であることを知っていた。
そう、あの光の陣形の中にアノーマリーを組み込んで初めて、
この装置は駆動するのだ。
カプセルを閉じ、コールドスリープモードに設定。
百合子はナビゲートシステムに意識をリンクさせた。

百合子「アノーマリー、いえ、麻衣子ちゃんはは必ずここに来る・・・。」

自らの身体が生命機能を停止するのを電子の光脈から見届けると、
凄まじい勢いでシステムのプログラムを操作する。

百合子「過去の実験では"ヴォイドメモリー"への接触は数回しか成功していない。
    だけど今回は絶対に失敗は許されないわ。未来を決定する瞬間、そこにワクチンを組み込まないと・・・。」

モニター上に突然警報が現れる。外で何か起っているようだ。

百合子「巨大質量が高速で接近中・・・?」
903ほんわか名無しさん:03/08/07 18:29
神獣機装したルナは両腕の巨砲から高エネルギー放射を放つ。
F村「だめだ!避けきれない!!」
イヴ「くっ・・・。」イヴが身を呈して飛び出そうしたその瞬間、
巨大な影がミシュラとルナの間に立ちはだかり、エネルギー放射を一手に受けた。
触手が絡まり、半分溶解を始めていたその怪物は、紛れも無い麒麟そのものであった。
もも「神獣のコントロールが途切れたようだ。どうやら司馬令という男、先代種族に呑まれたな。」
伶佳「は、破片は?!」
もも「もう我々でも止められない。」
伶佳「・・・そんな。」
伶佳は空を見上げてミシュラの帰還を祈った。
暗く蒼い空に、徐々に煌きを増していく星光の中に、
絶望的な輝きを纏った火球が幾つも現れる。

サクちゃん「だめだ!動力障害で高度が維持できない。防壁を超えられないぞ!」
いずな「早くしてよこのすかんちん!破片の巻き添えになちゃうわよっ!」
麻衣子「ん・・・。」
イヴ「目が醒めた?もう大丈夫だからね。」
絶望的な状況にも関わらず、イヴは麻衣子の頭を撫でながら安堵させようとする。
そして軌道上より飛来した、特殊金属で構成された巨大なオービット・リングの破片が、
無情にもロストナンバーズのいるセクターへと、炎の破城槌さながらに突っ込んだ。
と、突然麻衣子が起き上がり、ミシュラの外部デッキへと駆け出した。

麻衣子「ダメェェェ!!」

伶佳「いやぁっ!」
レイジバツース全員が直視に堪えられず視線を逸らす。が、爆発は起らない。
ももが不気味な笑みを漏らす。
もも「アノーマリー、未来をお前に託そう。」
そこに繰り広げられていたのは、誰もが現実を疑う光景であった。
飛来した破片群が、神々しい光を放つ麻衣子を中心に乱舞する。

麻衣子「・・・私がみんなの業を引き受けるわ。」
904ほんわか名無しさん:03/08/09 05:26
麻衣子「これが最後の戦いよ!!」
905ほんわか名無しさん:03/08/10 05:57
麻衣子の周囲を高速で周回する破片は、徐々に規則性のある軌道を描き始める。
彼女の瞳が別次元の景色を捉えると、なんとその場に居る人間達を取り巻く風景が形容し難い感覚で超高速変化した。
異星の空景、世界中の史跡、海底の映像。全てが目くるめく勢いで移ろい行く。

「こ…これは!?」
驚きを隠しきれない獣騎にリュシオンが説明する。
「時の焦点よ。彼女に他人の時間と記憶が流れこんでる。」
「まだ幻影に過ぎないが…。」
ももは感慨深けにその一部始終を見守っている。
「イルミナティを解放できるのは彼女だけだ。」
周囲の轟音が突然途切れ、元の学園の風景に戻る。
破片を形作っていた金属は何時の間にか天球儀のような建造物へと変容を遂げ、
彼女を防護するように回転していた。麻衣子はスッと銀色に輝く目を開けた。
「アレトリオン、あなた達に罪は無いわ…。」
麻衣子はロストナンバーズの蠢く触手に手を触れると、愛惜しそうに頬を当てる。
途端にその部位が温かい光彩に包まれ、小さな光の粒子となって天へとフワフワ登っていく。
ロストナンバーズの巨体はあっというまに白とピンクの輝きに包まれ、分解した。
「くっ!!」
麒麟にトドメを刺したルナは麻衣子に連続掃射するが、
エネルギー弾は全て金属製の回転するシェルターに弾かれた。
「あなたも犠牲者なのね…。」
「!!」
一瞬だった。ルナはあっという間に麻衣子の懐に抱き締められていた。
麻衣子はルナの耳元になだめるように囁きかける。

「どんなに虚偽で塗り固められようと、物事が揺らいで見えようと、真実はそこに在るわ。」
「・・・うっ。」ルナは理知の及ばない力を前にして涙ぐんだ。
「感情は幻。想いは幻想。でも心に聞けばわかるはず。あなたが何を真実と感じているのか。」
麻衣子はチラッとミシュラの外部デッキに佇むF村を見遣り、微笑んだ。
F村もその笑顔に応え、呟いた。
「…愛してる。」
906ほんわか名無しさん:03/08/10 06:27
一行はキャンパス・ステラの装置の前に集合していた。
ミシュラから降り立った麻衣子に伶佳が飛びつく。
「もう!どうしていつも心配かけんのよあんたは!」
麻衣子は困ったように伶佳の涙を指で拭う。
「ごめんね。」
「どうしてあんた達がここに?」
怪訝そうに尋ねるアイリスの頭に、サクちゃんがポンッと手を当てて答えた。
「そこの坊主に感謝しろよ。連邦の通信を傍受して、禁止事項を犯して駆け付けたんだ。」
F村がは照れくさそうに頭を掻いている。
「馬鹿だろ?」
「ええ、本当に…馬鹿なんだから。」
麻衣子は俯いたまま呟いた。

ももが麻衣子の前に歩み寄る。
「さて、本番はこれからだ。お前にはあの装置に入って貰わなければならない。」
「イルミナティの神官ね。…いいえ、あなたがあの装置そのもの。」
「ど、どういうことなの?」
レイコは思わず麻衣子に訊ねた。
「アノーマリー、特異点はきっかけに過ぎない。だけどそれは全てのはじまりだった。遥かな昔の話よ。」
リュシオンが星を読みながらレイコに答えた。

「驚いたわ。イルミナティの正体も、あの装置のことも。」
「アノーマリー、これをあなたに委ねるわ。」
両翼が折れ満身創痍のイヴは、左手に輝く弓エルヴン・ボウを呼び出し、それを麻衣子に突き出した。
「わかるわね?これは言わば強制終了プログラム。システムの然るべき文脈に放たなければ意味が無い。」
「厄介なことに、時間が経つにつれて"的"は遥か遠方まで遠ざかってしまった。それを追いかけなければ…。」
「…"未来"へ行くのね。」
907ほんわか名無しさん:03/08/11 07:08
第66章 >> Enlightenment
908ほんわか名無しさん:03/08/12 22:37
麻衣子は伶佳のそばに歩み寄ると
「伶佳ちゃん、貴女の力をほんの少しだけ私に分けてちょうだい。」
と耳元で囁いた。
どこか淫靡な雰囲気に呑まれたのか、
伶佳は顔を真赤にして訳も解らず頷いた。
「大丈夫、少しちくっとするだけだから。」
麻衣子はそう言うと伶佳の首筋に歯を立てた。
「あぁ....」
伶佳の口から思わず声が漏れる。
突然の出来事に事情の解らない者達にざわめきが起る。

伶佳がはっと我に返ると、麻衣子はイヴとリシュオン
そしてももを伴って装置の中心部へと歩を進めていた。
909ほんわか名無しさん:03/08/13 08:49
自己満足age
910ほんわか名無しさん:03/08/14 14:43
もも「機械と言うのは・・・。」
アーミラリ天球儀のような装置の中心部に陣取って、彼女達は複雑な手順で操作を始めていた。
もも「何かを可能にするものでは無い。元々可能だった行為を抽出するバイパスみたいなものだ。」
リュシオン「この装置は、我々シュトフアッセンブリーが開発を請け負っていた。」
麻衣子「もともとは未来の信号を受信する装置だったのね。」
レイコ「プログラムは"時の秘術"と呼ばれるものをコード化したものよ。言語コードの応用ね。」
リュシオン「私の能力よ。しかし開発が学園に委ねられてから奇妙な事態に見回れた。」
レイコ「ええ。発信源不明の信号が、ある図面を暗号化して送ってきたの。」
もも「未来の意志・・・。」
光の魔方陣が麻衣子の周囲を取り囲み始める。強い風が彼女を中心に流れこみ始めた。
レイコ「百合子が既にオペレーティングシステムを立ち上げたみたいね。」
リュシオン「忘れるなアノーマリー、未来は時系列上にあるものではない。」
もも「ヴォイドメモリーの防衛システムを解除すれば真実が明らかになるだろう。」
麻衣子を取り巻く光の方陣が凄まじい速度で回転を始めた。

レイコ「ケテル、コクマー、ビナー、全エンジンの稼動を確認!」
麻衣子はイヴの寂しそうな視線に気付き、微笑みを投げかけた。
イヴ「"彼女"にあったら伝えて・・・。」
麻衣子「わかってる。」
麻衣子の眼前が突然トルネード上の紋様に覆われ、凄まじい稲光が襲う。
続いて巨大な光の幾何学模様がゆっくりと動く紫光の世界へと放りこまれた。
そして尚も周囲の風景は目まぐるしく変わり続ける。と、突然周りの風景が無人のキャンパスステラへと映る。
しかし昼と夜が一瞬の内に数百回も繰り返され、太陽と月はまるでビームのように
空にグランドクロスを描き、星々は銀色の空に蒼い光の網目を創っている。
周囲が何かの近未来的なドームに覆われた途端、突如時の流れが停止した。
目と鼻の先に鋭利なブレードが突き付けられていた。
眼前にはメカニックで未来的な重装甲に身を包んだ二人の少女が立っていた。

ヘヴン「ようこそ未来へ。」
ルイン「侵入者は抹殺します。」
911山崎 渉:03/08/15 12:34
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
912ほんわか名無しさん:03/08/17 01:03
念の為、保守
913ほんわか名無しさん:03/08/18 21:58
麻衣子は二人を言葉には答えず
そっと目を閉じる。
「あら?せっかくここまで来たのに、もう諦めたの?」
「何をしても我々からは逃れられんぞ。」
余裕の笑みを浮べる二人の目の前から
一瞬のうちの麻衣子の姿が消える。

次の瞬間、二人の背後に姿を現した麻衣子は
「無駄な争いはしたくない。このまま通らせて。」
と呟くように二人に話しかける。

ヘブンとルインは突然背後に現れた麻衣子に
動ずる様子もなく
「プライマリーね。」
「ああ。少しは楽しめそうだな。」
「少しだけね。」
と楽しそうに呟く。

ヘブンとルインの手甲から伸びた
二等辺三角形の高周波ブレードが
”ブーン”と低い唸りを上げその輪郭をぼかした。
914ほんわか名無しさん:03/08/19 09:50
ヘヴンとルインが突然背後へと飛び、麻衣子の更に後ろから突撃してきた。
麻衣子「やめて!!」
麻衣子は念を込めて二人の動きを静止させようとしたが、
何故か二人の刃は、そのまま麻衣子の両腕に切り傷を負わせ、
目にも止まらぬ早さで背後に回る。

麻衣子「アノーマリーに力が使えない・・・?!」
ヘヴン「フフ・・・。教えてあげようか?」
ルイン「この周囲のドームは量子制御パネル。そして中心部のリアクター装置が"ヴォイドメモリー"だ」
ヘヴン「この空間は、あの装置によって制御され、存在しているのよ。」

広大なドームの中心部で、光の魔方陣が幾層にも輪を交差させ、輝いている。

ヘヴン「ここは時の果て。全ての時間が収束する処・・・。」
ルイン「お前にはもう未来は読めない!!」
ヘヴン「因果律を操作しようとしても・・・」
ルイン「ヴォイドメモリーが現実を修正する!!」

麻衣子は神速の二人組みの連携攻撃を見切れ切れず、
双頭の剣"アンジャベル"での応戦を余儀なくされた。

麻衣子「強い!強いけど、この感じは何処かで・・・。」
ヘヴンが視界から忽然と消え、指先という指先から光のディスクを投げつける。
ヘヴン「あら?気付いた?そう、私達二人組みは────!」

ディスクが麻衣子の体を貫き、背後で爆音を立てる。

麻衣子「イヴとリリス・・・・。彼女達のソースプログラムね!」
915ほんわか名無しさん:03/08/20 06:29
第67章 >> End Of Time.
916濡れ猫:03/08/22 15:24
「ウフフッ!あんな欠陥プログラムと一緒にしないでくれるっ!?」
麻衣子はヘヴンの横薙ぎのブレードを紙一重で避ける。
しかし、背後からルインの両肘に付けられた金属製カッター
が、彼女の背中に無慈悲な十字を描いた。
「クッ!欠陥・・・?イヴとリリスが?!」
ルインがカッターを伝う鮮血を舐め取りながら応えた。
「そうだ。くだらん感情がシステムにエラーを及ぼした。」
「そう、彼女達のおかげで更に修正と再起動を余儀無くされたのよ!」
麻衣子は力を振り絞って立ち上がった。
「なるほど・・・。読めてきたわ・・・。」
「あなたの死が近いことが?!」
「スーツの力を使っている限り、お前に勝ち目は無い!」
「ヴォイドメモリーが、スーツを通してあなたの動きと意志をモニタリングしているのよ。」
ヘヴンが錐揉み状に回転しながら、ブレードの一閃を放つ。
麻衣子はすれ違い様にそれを回避し、ルインの背後に回るが、
ルインの背中から突然突き出した無数のブレードが麻衣子の体を突き刺す。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「しぶといわね・・・。」
「プライマリーのせいだろう。」
「アノーマリーも使えない。プライマリーも通用しない。さぁ、どうするのかしら?」
ヘヴンが悪戯っぽく笑って見せながら、光のディスクをチャージする。
「そう、じゃあ、スーツの力を使わなければいいのね・・・?」
麻衣子は徐に、スーツの胸元につけられたチップを握り締め、
それを外しながら立ち上がった。そしてチップを口にし、噛み砕く。
「・・・へえ。」
「それこそ死の選択だなアノーマリー、いや、如月麻衣子。」
麻衣子は力強い眼差しで二人の瞳を射抜く。
「私は私。自分の力で未来を解き放つわ。」
917ほんわか名無しさん:03/08/26 08:33
hoshu
918久々のかきこ:03/08/27 18:14
「ははは、前言を撤回しよう、如月麻衣子。
スーツの力をもってしても、お前は勝てない。」
「ふふふ、何を勘違いしたのか解らないけど、
いくらスーツをモニターされても
もし、貴女の反応が私達を上回れば意味がない。
私達は貴女の動きについて行けるのよ。
モニターなど無くてもね。」
「ましてや、スーツの力を使わないお前の動きなど、私達には止って見える。」
「つまりは、最初から貴女に勝目はなかったてことね。」

麻衣子はリリスの片身とも言うべき"アンジャベル"手に
二人を睨みつけると呼吸を整え出した。

ゆっくりとヘヴンとルインが間合いを詰める。
「さぁ、そろそろ終りにしよう。」
「少しだけ楽しかったわ。」
「心配するな。苦しまぬように一瞬でけりをつけてやる。」
「それに誰も悲しい思いはしないわ。ここでの死はアカシックレコードからの削除。」
「つまり、過去にお前は存在しなかった事になるのだからな。」

麻衣子は一定のリズムで呼吸を繰り返していた。

ヘヴンとルインが麻衣子に飛び掛ると同時に
麻衣子は「フーーー」と一際長く息を吐き出した。
919ほんわか名無しさん:03/08/29 11:01
ヘヴンとルインが揃って凶刃を構え迫ってくる。
しかし麻衣子は呼吸を落ちつけたまま、静かに視線を軽く落としたままだった。

ルイン「遂に観念したか小娘!!」
ヘヴン「残念だったわねー。これも運命って奴・・・」

二人の視界から麻衣子が忽然と姿を消す。
ヘヴン「上?!」
ルイン「どうやったらあんなに高く飛びあがれるんだ!」

麻衣子は遥か空中で弓なりにラインを描き、耽美に宙を舞っていた。
麻衣子「わたしは・・・きっとここに何か答えを期待していたんだと思うの。」
ルイン「ちっ!武術の奥義か!!」
ヘヴン「何を世迷言を!!これでも食らいなさい!!」
ヘヴンの光の円盤が麻衣子に放たれる。

麻衣子「だけど私の未来はここじゃない。ここは私の行きつく所じゃない。」
麻衣子の姿がまた消え、ディスクは量子制御パネルに吸いこまれた。

ヘヴン「ヴォイドメモリーが存在を読み取れていない?!」
ルイン「そんなバカな!!ここはあらゆる存在の源泉、見失うはずなど・・・」
麻衣子「あなた達の敗因は」
突然二人の背後に麻衣子が現れた。「なっ!!」
麻衣子「自分の存在の認識を見誤ったことね。」

ドーム内に閃光が二つ閃き、静寂が訪れた。
920ほんわか名無しさん:03/08/29 11:51
麻衣子は一人、形容し難い光を纏うヴォイドメモリーと対峙する。
麻衣子「お願い、わたしには真実が必要なの。全てを語って、ここに存在する動機を与えて。」

ヴォイドメモリーの光の輪の一つがその輪郭を切断し、麻衣子の瞳に文字列の光芒を落す。
その瞬間、電子の洪水がサイバネティック状に彼女の視界に広がり、膨大な情報を流しこみ始めた。
そして彼女は全てを知った。周囲のドームには何時の間にか輝く罅割れが走り始めている。
ヴォイドメモリーの中心部に神官の姿をした一人の少女が現れ、パネルに蹲る麻衣子に語った。

神官「これが未来の正体だ。ヴォイドメモリー、つまり私は人工物に過ぎなかった。
   最初の開発者は、滅び行く世界をプログラム中の無限に続く時間の中に託したんだ。」
麻衣子「私達が生きていた世界は・・・・。いえ、そもそも時間が存在しなかったのね。」
神官「人工生命体は生きる道を模索する。私に必要だったのは、母なる宇宙の揺り篭、模型だった。
   イルミナティやリュシオンは、その進化を"自然に"補佐するため、人格を与えられる。」
麻衣子「激しくC型はエラーコードね。システムを監視するプログラムそのものが悪性のものに変化した。」
神官「そうだ。だが、共時的な世界では全てが決定論、必然のものとして起こる。
   エラーが起こった以上、初期作動まで遡っての修正が必要だった。問題は意志決定の干渉性だ。」
麻衣子「レイジースーツがヴォイドメモリーのシステムに干渉しはじめた。」
神官「それだけでは問題は無かった。この世界はそもそもがパラドクスや入れ子構造を上手く利用して成り立っている。」
麻衣子「エラーコードが機能不全を引き起こしたのね。」
神官「感染者はヴォイドメモリーからの信号を感受してしまう。結果、処理能力以上のパラドクスにより世界に歪が生じた。」
麻衣子「システムの生存のために、再起動を繰り返してきたのね。」
神官「そう、そして今回はその役目に、お前が選ばれた。」
921これで最後。。。:03/08/29 12:37
麻衣子「・・・断るわ。」
神官「・・・その答えは計算出来なかったな。」
麻衣子「私達が生きてきた世界を白紙に戻すことなんて出来ないよ!」
神官「そうではない。やりなおすのだ。これも因果律に定められし運命・・・。」
麻衣子「何が運命よ!!確かに宇宙は、決定論で機能しているのかもしれない!だけど・・・。」

麻衣子は拳を握り締め、エルヴン・ボウをヴォイドメモリーに構えた。

神官「それが何を意味するのかわかっているのか?それこそ私の狙いだというのに。」
麻衣子「あなたは全てをわかったつもりなんでしょうけど、私はそうは思わない。」
神官「・・・・。」
麻衣子「わたしにとっての真実とは、わたしに起こっていること、その瞬間に表出する現実そのもの。
    それを心がありのままに映し出したもの以外にありえない。用意された運命なんて無いのよ!」
神官「ではどうする?その矢を放ってシステムを停止させれば、この世界は白紙に戻るぞ。」
麻衣子「考えたことある?あなたも含めて、"意志や選択"が、決定論の前にどういう意味を持って座すのか。」
神官「残念ながら、私はシステムを取り囲む外の世界には言及出来ない。」
麻衣子「そう、じゃぁ代わりに答えてあげる。」

麻衣子はグッと弓を引く。
麻衣子「わたしたちの心は、宇宙を映し出す原初の意志の総和そのもの。そしてその選択は時として────・・・。」
エルヴン・ボウから閃光が放たれる。
麻衣子「自ら思いがけない結果を導くことがあるの!」
エルヴン・アローがヴォイドメモリーの強制終了プロトコルを立ち上げる。
と同時に、麻衣子はスーツに隠し持っていた杞憂のチップを装着し、
ヴォイドメモリーへの接触、ハッキングを試み、光の魔方陣に飛びこんだ。

視界を無限に広がる青空が広がり、何かの重力が、凄まじいスピードで彼女を引き寄せる。
が、次の瞬間、麻衣子に瓜二つの容貌をした黒いレイジィスーツを纏った何者かが、
光のブレードをクロスさせ、麻衣子を貫いた。

「我が名はジ・エンド。非共有領域は抹消する。」
922ほんわか名無しさん:03/08/30 03:54
第68章 >> Gravity Of Love
923ほんわか名無しさん:03/08/30 04:08
広末堂メダルキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
924ほんわか名無しさん:03/08/30 04:36
(※>>140参照)
麻衣子は気がつくと、長い時間の中で、取り残されたかのように佇む廃工場の中にいた。
その廃工場の中は薄暗く、地面には厚く埃が溜まっていた。
静寂と緊張に包まれ、人を寄せ付けない、まるでそこだけが異世界で
あるかのような錯覚を覚える。
その殺伐とした雰囲気から、廃工場の中へ足を踏み入れる事をためらう。
だが、麻衣子はすぅっと軽く息を吸いこみ、奥へと進んで行く。
薄暗く広い工場内に麻衣子の足音だけが響く。
しばらく進んで行くと、天井に穴でもあいているのだろうか、
柔らかな光が一筋、この暗い廃工場の中へ射していた。
その、まるでスポットライトかのような光の中に一人の少女が
コチラをジッと見つめ、立っていた。

エメラルドの輝きをその瞳に称えた少女、
紛れも無く幼年期のリリスに違いなかった。
「リリス…?」
リリスは警戒するような眼差しで麻衣子を見据え、半分泣き声混じりに言葉を絞り出した。
「……おねえちゃん、ママは?ママは何処?」
麻衣子は腰を落としリリスの視線まで顔を近づけ、優しく語り掛ける。
「お母さんに会えなくて寂しい?」
「うん。」
「そう…。」
麻衣子はギュッとリリスを抱き締めた。

「おねえちゃんと、あなたの大切な人からの伝言。」
「なぁに?」
「寂しさに負けちゃダメ。何があっても、心が折れない限り何でも叶うのよ。」
「心が…?」
「うん。何があっても……だよ。あなたはあなたの時間を生きて。」
「……ありがとう。」

少女の声とは別に、心の中から恋しい彼女の声が重なったような気がした。
925ほんわか名無しさん:03/08/30 05:01
"ワクチンの注入を確認。システムが正常に復帰します"

麻衣子の脳内に突如、けたたましい警報が鳴り響く。
彼女の周囲の景色が瞬間瞬間に千変万化する。
静寂が訪れたかと思うと、辺りは一面の暗闇。
崖下では闇にトグロを巻くおぞましい波の飛沫と潮流が木霊している。
星々は不自然な大きさで漆黒の闇に散りばめられていた。
惑星の一つが異常なまでに接近している。

麻衣子の前方には、いつのまにか黒いレイジィスーツを纏った彼女の分身"ジ・エンド"が佇んでいた。

「何者かがウィルスを無力化するワクチンを注入していたようだ。」
「ええ、それで?」
「何かがきっかけでワクチンが活性化した。ヴォイドメモリーは現在選択を迫られている。」
「再起動か、続行か…?」
「現行の世界システムを続行する場合、フロー部分を補う誰かの代替メモリーが必要となる。」
「……そっか、もう帰れないのかな…。」
「そう、ヴォイドメモリーの他に時系列メモリーを持つのは、ここでは私たちだけ。」
「あなたは何者なの?」
「あなたの鏡像。あなたの奪われ行く時間。あなたの時間へ終わりを告げる死神。」
「つまりあなたとわたしのどちらかが…。」
「過去へ還りたいか?」
「…帰りたい。みんなのところへ…わたしのいるべき所へ。」
「ならば確率に委ねよう。ここで生き残ったものが、過去へ帰ることが出来るだろう。」
「勝負の方法は簡単だ。」
エンドは遥か水平線の方向を指差した。
「彼方に見える外部コネクターにタッチしたものが過去に帰ることが出来る。」
異常接近した巨大な惑星の方向で、灯台のように回転する
太いビームのパルサーが二対、渦巻く雲を闇を裂きながら照らし出していた。
「もちろん、お互いに妨害してもいい。」
「ちょっと待って、あなたが過去に戻ったところでどうなるのよ。」
「言っただろう。私は"The End"だと。帰る時間は選ぶことができるし、ある程度の書き換えも可能だ。」
「つまりあなたの帰還は、私の死と等価ってこと?」
「あなたと私は砂時計の両対。無への帰還こそが私にとっての生なのだ。」
そう言うとエンドは、紫に輝く巨大なブレードで足場を十字に斬り、空へ飛び出した。
轟音と衝撃波が襲い、断崖が一瞬にして崩れ去っていく。
麻衣子はアノーマリーの力を使って瓦礫の時間を止めながら宙に逃れた。
(杞憂ちゃん、お願い、力を貸して・・・。)
チップを優しく握り締めた瞬間、光の幾何学模様を描く翼が背中に広がった。
「・・・そんな、信じられない。」
麻衣子が未来へ旅だった後のキャンパス・ステラ、
伶佳達もまた、ももの姿を借りたイルミナティの神官から真実を告げられていた。
アイリスが怪訝そうにももに質問を浴びせている。
「矛盾だらけじゃない!」
「そういうものなのだよ。真実とは関わる角度でどんなものにも変換される。」
「だけど、それを生成する原理はたった一つ。」
リュシオンが口を挟んだ。イヴは羽を纏って蹲り、何かを祈っている様子だった。
アイリスが再びももに食い下がろうとする。
「だいたい、オリジナルの世界はどうなったの?」
「外惑星が軌道をずらして衝突したようだ。」
「もしこの世界が完全なコピーだったら、同じ終末を辿るんじゃないの?」
「・・・そういうことになる。しかし、システムの発展進化次第では回避できる可能性もある。」
「現にレイジィスーツのテクノロジーは、この世界ならではのものだから。」
百合子はそう言いながら装置から歩き出てくるなり、レイコのキツイ抱擁を受けとめる。
「宇宙人とか銀河連邦とか、その辺の連中は何者なわけ?」
「恐らくシステム外からの第三種アクセスだ。どこかの外宇宙となんらかの仕方でリンクしているらしい。」
「先代種族っていうのは?」
「システムのベースになったプログラムの人工生命体がバグ化したものだ。」
「あらゆるプログラムにバグは偏在する。その修正、監視ツールがイルミナティだったのね。」
「・・・どんな現実がそこにあろうと、私達は私達の世界で生きていくしか無いのよ。」
伶佳がもうウンザリだといった様子で呟いた。
「麻衣子は帰って来るんですか?」
「それだけはわからない・・・。あそこには無限の時間が流れている。方法はあるだろうが・・・。」
「だったら大丈夫。麻衣子は絶対に諦めたりなんかしないもの!」
「いつも言ってたわね。心が折れない限り、絶対に願いは叶うんだって。」
「綺麗言だな。どうにもならないことだってあるだろう。」
人々が口々に言う中、伶佳はそっと両手を組し、祈るように目を瞑った。
(麻衣子・・・私の願いは・・・。)
928とりあえず保守:03/09/03 18:45
金色に輝く翼を広げた麻衣子の姿は、ゆっくりとスピードを上げ
やがて一条の光の線になる。
その横を闇の線を描いた麻衣子の影が追走する。
光と闇は絡み合い、螺旋を描きながら共に一つの点を目指す。
929ほんわか名無しさん:03/09/04 12:06
麻衣子の影であり、分身であるエンドは、横に並んだ麻衣子に容赦ない太刀を浴びせようとする。
が、麻衣子は前方に推進しながらも的確に攻撃をさばいた。
エンド「私にはあなたの時間が流れこむ。全ての動きを予測し受けとめることが可能だ。」
麻衣子「じゃぁどうしてトドメをさせないのかしらっ?」

二人は渦巻く闇雲を裂いて、外部コネクターと思しき巨大なタワー状建造物に接近した。
頂上が神々しくライトアップされている。その中央に"現実"へ帰るためのハッチが設備されていた。
エンド「それはあなたがセキュリティ・システムを突破できた答えでもある。」
麻衣子「彼女達は飛龍の動きが読めなかったわ。」

激しい攻防を繰り返しながら、複雑な機構を纏うタワーを今度は垂直に昇り始める。
二人は水平方向に突き出した整備用デッキらしきところに着地すると、
お互いに身構えながら羽を落ちつけた。
930ほんわか名無しさん:03/09/04 12:07
エンド「時間の本質に関わる問題だ。」
彼女のレイジィスーツの両翼が斜め方向に鋭く突き出し、戦闘用フォームを取り始めた。

エンド「この世界は一枚の静止した絵画であり、神の記したフォーミュラ。決して動かない。
    時を刻むという感覚は、その型枠にエネルギーが注がれる過程で生じる。
    その正体は他でもない、"存在"を支える量子的準衣であり、観察者であり、被観察物そのものだ」

麻衣子「でも、それ自体を上書きすることは可能だったわね?」
エンド「システム自身、またはシステム外からの干渉が可能であれば。そしてそれは実際に起こる。」
麻衣子「それは・・・私達の存在自体がシステム外と相互作用しあっているから・・・。」
エンド「飛龍は時間の刻み方を操作する。それは物理的にシステムと遮断されたことと同じ。」
麻衣子「決定した未来なんて存在しない。私達は常に一瞬一瞬でその真価を試されるのね。」
エンド「答えを決めたか・・・。刹那の谷間には、無限の時間が顎を広げている。
     そこをどう跨ぐかは、その瞬間に至るまでは選択できない。」

麻衣子「過去のどの瞬間も、今のこの一瞬も、全てが永遠に燃えて輝き続ける・・・。その瞬間だけの存在。」
エンド「無限の狭間に還るか、再び振り子に吐息を吹きかけるか・・・。」
エンドが飛龍の呼吸法を発動する。
麻衣子はただ黙ってその様子を見守っていた。
931ほんわか名無しさん:03/09/05 16:35
星に接近し過ぎた惑星のせいで、
電荷のバランスが崩れたのか、
雷が海面から天へと複雑な軌道を描いて駆け巡る。
闇雲と星空を貫くタワーと、その頂上で回転する
双方向のビームが斜めに傾き始めた。
重力の影響であらゆるものが宙に浮き始める。
麻衣子とエンドは崩れはじめたタワーで、微動だにせず睨み合っていた。
「ここからだと、お互いに一瞬であそこに辿り付ける。」
「勝負は一瞬ね・・・。」
だが、麻衣子は特異点も飛龍も使うつもりは無かった。
相手の手の内を読めないのなら、逆にそれを利用する手もある・・・。
タワー上部のコネクターが天上のリングのように輝き、
光と闇の双方を誘っていた。
932ほんわか名無しさん:03/09/06 07:09
エンドが鋭い視線で麻衣子の瞳を見つめた途端、突然精神に違和感を生じ始めた。
「な…なに?」
麻衣子はデッキに蹲る。
「言っただろう。私とあなたは鏡像同士……。」
麻衣子の精神がエンドの精神波と不協和音を奏で、彼女の心を闇の方向へと引き摺りこむ。
「い、いやぁぁぁぁぁ!!」
記憶と感情がズタズタに引き裂かれ、カオスの渦を巻くように彼女の精神を侵食する。
「あなたの知らないことが、わたしにとっての真実となる。一緒に無へと還ろう…」

エンドは優しく麻衣子に手をくべると、彼女は何かに操られるかのようにその手を握った。
瞳はもはや何処にも焦点を結んではいない。彼女の心は闇と無秩序に支配された。
エンドが黒いウィングを広げ、麻衣子を抱いてタワー頂上の輝くコネクターを目指して飛び立った。

(……光を見て。)

虚ろになった麻衣子の心の中で、リリスの声が囁いたような気がした。
933ほんわか名無しさん:03/09/06 07:38
第69章 >> Touch the Sky Reprise.
934ほんわか名無しさん:03/09/06 08:16
「う…ん……。」
目を覚ました麻衣子の目に、見慣れた光景が飛び込んだ。
「こ、ここは……?」
紛れも無い、彼女は寮の自分の部屋のベッドに身を包んでいた。
時計は深夜2:00を回っている。ふと、すぐ背後で誰かの安らかな吐息を耳にする。
「え、杞憂ちゃん?!」
二人は一緒のベッドに並んで横になっている。
間違い無く、あの合唱祭の前夜の時間に違いなかった。
ただ一つ違うところがあるとすれば、それは杞憂が安らかな寝息を立てていることだけだった。
「な、何が起こったんだろ…。」
麻衣子は杞憂の方へ向き直り、彼女の天使のような寝顔をじっと見つめる。
すぐに自分の身に起こったことなんてどうでも良くなった。
麻衣子の瞳から涙が横に零れ出す。何度この時間に帰りたいと思ったことだろう。

「だけどここは……。」

目と鼻の先で、彼女がパチッと目を醒ました。

「麻衣子ちゃん、泣いてるの?」
「ごめん…ごめんね。杞憂ちゃん、ごめん……。」
「どうしたの?ギュッしてあげるからね。ねぇ、どうしたの?」

麻衣子は杞憂の懐に優しく抱かれながら、嗚咽に身を震わすことしか出来なかった。
935ほんわか名無しさん:03/09/06 14:42
時計が夜中の三時を回り、秒針で2種類の音を交互に刻む。
今夜があの夜ならば、本来はリリスがこの部屋を訪れるはずだったが、
とうとう彼女が部屋の扉を開けることは無かった。
ひとしきり泣き止んだ麻衣子は、まだ杞憂の温かい胸の温もりを一身に受け止めていた。
杞憂はもう何も聞かずに麻衣子の髪を優しく撫でている。

麻衣子「・・・ね、」
杞憂「ん、なぁに?」
麻衣子「杞憂ちゃんは、大切なものを失ったことがある?」

麻衣子は切なげに顔を杞憂の方を向け、腕を手前に置いた。
杞憂はキョトンとした様子で、そんな彼女の瞳を覗きこみ、目を瞑って柔らかい笑みをこぼす。

杞憂「あるよ。」
麻衣子「・・・もしそれを取り戻す為だったら、何かを犠牲に出来る?」
杞憂「どうして?失ったものっていうのは、もう二度と戻らないものじゃない?」
麻衣子「二度と・・・。」
杞憂「そう、だから・・・」

杞憂は麻衣子の背中に手を回し、ギュッと身体に引きつけた。

杞憂「麻衣子ちゃんのこと、失いたくない。」
麻衣子「私のこと、好き?」
杞憂「うん。」

言葉と身体の行間を、時を刻む二音のリズムがただ無機質に満たす。
936ほんわか名無しさん:03/09/07 09:32
蒼い薄明かりに浮かび上がる水槽に、小さな水泡がポコポコと音を立てる。
湿った暗がりと光彩の中で、二人は何も言わずに見詰め合っていた。
麻衣子は徐に杞憂の手を取り握り締めた。杞憂も力強く握り返す。
「もう後悔したくない…。だけど……。」
「…迷ってるんだね。」
杞憂が切なそうに切り返した。麻衣子は俯いて再び声を震わす。
「だめ…。私には選べないよ。」
「心に聞いてみて。麻衣子ちゃんならきっともう答えを見つけてるはず。」
麻衣子は杞憂の顔を見上げ、何かを引きとめるように手を握る力を一層強めた。
「…わからないよ。私そんなに強くない。私だって挫けたいの!」
再び泣き伏す麻衣子を、杞憂が優しく抱きとめる。
「挫けたっていいじゃない。私達がついてるから。」
「……。」
「ずっと一緒だよ。」
「何があっても?」
「何があってもずっと。」
「ずっと一緒……もう、後悔なんてしない…。」
「愛が後悔に変わるんじゃなくて、後悔が想い出を変えるの。この瞬間はずっと変わらないよ。」
「うん。この気持ち、絶対に忘れない。」
麻衣子はおもむろに立ち上がり、窓際に立つと、カーテンを思いっきり開けた。
宝石を散らしたような満天の星空がそこに広がっていた。

「……麻衣子ちゃん?」

杞憂は不思議そうな表情をしている。麻衣子は窓を開け窓枠に身を乗り出すと、
涙に濡れた笑顔で左手を杞憂に差し出した。

「ね、一緒に行こう。」
937ほんわか名無しさん:03/09/08 19:46
|_, ,_
|´-´) ・・・ (笑)
938濡れ猫:03/09/10 17:15
杞憂は差し伸べられた手を優しく包み込み、天使のように微笑んだ。
星光が彼女の顔に蒼白い陰影を彫っている。
「何処までも一緒に・・・。」
麻衣子の背中に再び大きな、
今度は白い羽毛に覆われた翼が広がった。
杞憂を抱かかえ、星々が狂ったように乱舞する空間に飛び出す。
天球を覆い尽くすその光はまるで、
あたかもその律動が響かせる宇宙で最上の音楽を奏でるように
彼女達の永遠に続く幻想を祝福していた。

過去の全ての瞬間が、無限に続く時間に捕らわれる。
想い出はいつしか遥かな軌道に乗って
叶えられなかった可能性の一つ一つを巡って
実現されなかった世界を、その夢の彼方に映し出す。

だけど、抗えない現実こそが、時の果てにあるもの。
心の中で彼女が語り掛ける。

「目覚めよ。」と。
939ほんわか名無しさん:03/09/11 11:29
第70章 I'll meet you there.
940ほんわか名無しさん:03/09/11 12:02
あの戦いから数週間を経て、学園の運営はようやく元の軌道に納まりつつあった。
レイジィバツースや当事者を取り巻く全ての陰謀が白日の元に晒され、
事後処理はフランスの機密機関サード・アイ・ブラインドの管理下に置かれ、
厳密な証言や調査を基に、各種事実調整と断罪が行われようとしていた。
イヴや神官、イルミナティはその姿を暗まし、ももは再びその快潔な陽気を取り戻しつつある。
神官は去り際にこう語った。

「イルミナティを輪廻の環から解き放つ。」

リュシオン率いるシュトフ・アッセンブリーも差し押さえられ、
黒田重工鰍ニの癒着が疑われている七老会にも捜査のメスが入る。
社長である黒田獣騎は、自ら進んで数々の陰謀に関わる証言をするという。
一方、学園側の関係者もほとんどが調査機関の監視下にあり、
校長以下十数名の幹部達が現在も厳しい取調べを受けている。
レイジィバツースに関わるテクノロジーも全て押収され、
隊員達、とりわけ成長期の少女達は入念な検査、療養生活を強いられた。
───そして一夏が過ぎようとしていた・・・。

一人の少女が、爽やかな風が吹き抜ける海岸の小径に佇んでいる。
蒼い空と流れる雲、遥かな水平線の彼方に瞳を凝らすその少女は、
深呼吸をしながら両手を大空に掲げ、記憶の中の会話を呼び起こした。
・・・こうしてるとね。風の声が聞こえるのよ
・・・ふーん。イルミナティって不思議な力を持ってるのね。
・・・違うわ。誰にでも出来ることよ。
・・・わたしも?
・・・その気になって、心を開けばいいだけ。
・・・こう?
・・・うん。こうやって・・・

少女は口元にクスッと微笑みを浮かべ、懐かしそうに呟いた。

麻衣子「うん。聞えるよ・・・。」
941ほんわか名無しさん:03/09/12 08:50
澄み渡った空の彼方から、海風がかもめの鳴声を運んでいた。
麻衣子の瞳に反射した海と空、二つの蒼のコントラストに一点、
眩い太陽の光が差し込む。遥か遠い世界から打ち寄せるさざ波が、
彼女の耳と心に調和のとれた波紋を描いた。

「ここにいたのね……。」
伶佳が麻衣子の背後から語りかけた。

「ええ、こんなに晴れたのは久しぶりだから…。」
伶佳は彼女の透き通った声の中にどこか寂しげな翳りを聞き取ると、
なるべく優しい表情と声色を心掛けるように、麻衣子と向き合った。

「ほんと、清々しい朝ね。」
伶佳はうんと身体と腕を目一杯伸ばし一つ欠伸をしながら、麻衣子の傍に腰を降ろした。
日光と下面のタイルに反射した陽気が、ポカポカと二人を照りつけている。

「…レイジィバツースの再結成が決定したそうね。」
「うん。」
「あなたは大丈夫なの?」
「え?どうして?」
「どうしてって…。ショックを受けている仲間も多いわ。それにあなただって…。」

麻衣子はにこやかに立ちあがりながら、海に向って大声で叫んだ。
「だいじょーーーーぶーーーーーーーーーーーーー!!」
「は?」あっけにとられる伶佳。
「うん、元気だよ。私はしっかりしなくちゃ!」
麻衣子は伶佳を振り返り、眩しい笑顔を送った。
942ほんわか名無しさん:03/09/14 12:53
保守
943ほんわか名無しさん:03/09/15 06:04
「麻衣子…。」
伶佳はただ心配そうに手を組み、海へと向き直る彼女の背中を見送るしかなかった。

…私は知ってる。あなたの心がまだ闇の中にあることを。
あなたは大切な人を失い過ぎた。決して拭い去ることのできない悲しみを背負って、
何の為に戦うというの?その先には絶望しか無いというのに、彼女はどうしてあんなに…。

伶佳は思わず麻衣子を背中から抱き締めていた。

「ちょっ、伶佳ちゃん、もう!それってクセなの?」
笑って振りかえった麻衣子は、伶佳がボロボロ泣いているのに気付き言葉を失った。
「麻衣子、もううるさいこと言わないから、一つだけ約束して!」
「な、何?」
「あなたは一人じゃないって、絶対に忘れないで……。あなたは一人じゃない…。一人じゃないよ。」
「わたし…わたしは一人じゃない……。」

胸の前に組まれた伶佳の腕を優しく握る。
麻衣子の虚ろな瞳に少し暖かいものが差し込んだようだった。

…わかってる。人間は皆一人なんだって。何かに打ちひしがれたって、翼を折られたって、
その痛みや哀しみを超えるのも、それに負けるのも全て自分次第。人は自らの幻想の中に生きている。
だから心が折れない限り、諦めない限り、たとえ何が起こっても終わってしまうものなんて無いんだ。
自分が生きるこの現実は、私自身が描き出してきたもの。孤独が私の力の源だった。

……だけどわかった。理屈なんて無い。私たちはみんな、ここにある暖かいものの為に駆りたてられるんだ。

麻衣子はギュッと胸を鷲掴みにして、遥かな空に天輪を架ける太陽を仰ぎ見た。
944ほんわか名無しさん:03/09/15 14:32
〜イルミナティの海底神殿〜

冷たく蒼い空間を、輝くクリスタルの星宮が晧々と照らし出している。
海水は神秘的な力によって、その祭壇の空間を隔てる神々しい壁となっていた。
二人の女性が、祭壇の中心に置かれたクリスタルの前に立っている。

リュシオン「これがイルミナティの残した最後の遺産なのね・・・。」
イヴ「神官はシステムに回帰する前に言ったわ。運命には希望も絶望も抱く余地は無いと。」
リュシオン「だけどこれを解放することが何を意味するのかわかる?」

クリスタルは厳重に封印が施されている。
その凍てつく結晶の中に、裸の幼女が一人、冷たい寝顔を称えていた。

リュシオン「ラヴィナス・・・。幾億の希望と絶望を飲みこむ精霊・・・。」
イヴ「リリスは・・・最後に手に入れたの・・・。」
リュシオン「?」
イヴ「何千年もの時間を生きて、何かを理解して。それでもその答えは、水のように手の中をすり抜けて。」
イヴは少女が眠るクリスタルを指で愛しそうになぞると、その指先に法力を集め始めた。

イヴ「気付いたの。答えはきっと何処にも無いんだって。わからないものを追い続けるから、心は動き続ける。」
リュシオン「終末は近い・・・。人々がどう生き、何を繋ぐのか、それを試すつもりなのね。」
イヴ「終末なんて些細な問題。人が真に戦わなければならない相手とは、自分の感情以外の何者でもない。」
封印がささやかな光と音を持って解除された。

身体を煌く水滴に浸したラヴィナスが、ゆっくりとその瞼を開ける。
イヴ「目を醒まして・・・。さぁ、友達に会いに行きましょう。」
945ほんわか名無しさん:03/09/15 15:23
・・・見なれた光景。懐かしい教室。
だけどそこにはもう彼女達の姿は無い。あの頃の自分も一緒に、
まだあの場所で、あの時間で輝いてるのだろうか・・・。触れたい。手を伸ばして虚空を掴みとる。
哀しみとか、後悔とか、感情を超えた所に在る抗えない現実。
私が私で無ければならない現実。
それゆえにわたしは哀しい。

夢の中に生きていても、過去の時間を胸の中に手繰り寄せてみても、
それ以外のものでは有り得ない真実がたった一つだけ。
・・・わたしは今、此処にいる。

『ほら、これでもう大丈夫』
『い・・・今のは?!』
『おまじないよ』

麻衣子は自分の心を一瞬で奪ったリリスの口付けを思い出しながら、
二人で良く遊んでいた寮の屋上に立っていた。

九月、夏の残香を爽やかに佩びた心地良い微風が頬を撫でて、語りかけてくれる。
雲が千切れて、柔らかいお日様の光を滲ませて微笑んでくれる。

それでもわたしは寂しい。

夜には星が輝いて、私は孤独じゃないって慰めてくれる。
月はいつも傍に寄り添って、その安らかな光で抱き込んでくれる。
お気に入りのベッドは、その日の嬉しかったことや哀しかったことをみんな包み込んで、
枕は幾らだって、わたしの身勝手で我侭な涙を受けとめてくれる。

それでもわたしは哀しい。
946ほんわか名無しさん:03/09/15 15:38
終章 〜Are You There?〜
947ほんわか名無しさん:03/09/15 15:52
夕暮れの校舎、お気に入りの図書館。
何も変わらない、わたしの幸せだけがそこから抜け落ちている。

想い出の一つ一つに、わたしは「いかないで!」って叫ぶけど、
それはあの空を駆ける雲みたいにあっというまに吹き抜けて、散り散りになって、
掴み取ったと思ったって崩れてしまう。わたしはわたしの為に何が出来るの?

リリスは何処かで転生を遂げたのだろうか・・・。
もしそうだとしても、彼女はわたしの愛した彼女ではきっと無い。

そういえばあの戦い以来、あの場にいた仲間以外の人々とはもう会っていない。
でもわかる。みんながそれぞれが、自らの選択を信じて自分の時間を生きている。
大儀の為でも、生きてる証や価値を求めて生きてるわけでもなくて、
たった一瞬でも、その手に掬い取れる幸せを求めてる。

そして今また、わたしたちを巻き込んで全てが動き出そうとしていた。
948ほんわか名無しさん:03/09/17 10:49
・・・まもなく・・・
・・・まもなくだ・・・
・・・終わりの時が・・・
・・・終わりの時が来る・・・

それは、時を待ち続けていた・・・
949ほんわか名無しさん:03/09/20 13:40
その男は、まるで長い時を彷徨してきた旅人のような風情をしていた。
肩まで伸びた長髪、顔を覆う無精髭、ボロボロの布切れ同然のコート。
サングラスの向こうにその屍のような視線を称えたまま、
男は鉄橋の上をただゆっくりと歩いていた。

橋の前方に、二台のクラシックカーがけたたましいブレーキ音と共に停まった。
両車のドアから4〜5人ずつ、黒服とシルクハットの男達が銃を構えて出てくる。
その中心に立って指揮を取る長身の男。殺し屋アッシュ・ド・ピエールであった。

ピエール「撃て。」

一同は、橋を渡る旅人に一斉射撃を開始した。
だが男はただ黙ったまま、両腕を十字に広げ近づいてくる。銃弾は一発も当らない。
黒服の男達は怯えた様子を見せながら、尚も集中射撃を続ける。
だが旅人は遂に、一味の目と鼻の先にまで歩み寄った。

ピエール「・・・もういい。」

部下に射撃を止めさせると、ピエールは旅人の前に跪いた。
旅人はそっとピエールの額に手を乗せると、一言呟いた。

旅人「終わりが近い。」
ピエール「探しましたよボヤジュール・・・。葬られしアノーマリー・・・。」
旅人「もう光の民に追われる心配も無さそうだな。」
ピエール「光の民はいまや無力です。」
旅人「今こそ局在性と偏在性を繋ぐ時。時間と空間の壁が消え、夢に終わりを告げるだろう。」
ピエール「しかしその前に・・・。」
旅人「もうひとつのアノーマリーを消さねばなるまい。」
950ほんわか名無しさん:03/09/21 02:47
「はぁはぁ…遅刻しちゃうよぉ〜!」

朝。抜けるような青空の下、
その少女は息せき切って学園の西側ゲートに繋がる坂道を駆け上っていた。
眼前に見えたゲートが閉まろうとしている。

「あっ!待ってぇ!!」
少女は砂埃をあげながら、凄まじいスピードでゲートを一瞬でくぐり抜ける。
その速さはあきらかに常人離れしたものであった。
ゲートの傍に落ちついて肩で息を落ちつけているその少女に、門番が近づいた。

「き、君、学生証は?」
「はぁ…はぁ…へ?」
目を丸くする少女。
「へ?じゃなくて、ここの生徒は電子パスを腕に印字されてるんだが、君は部外者かね?」
少女はコホンと息をすると、胸を張って一枚の書類を突き出して言った。

「私は水無月 葵!後期からレイジィバツースに採用されたれっきとした生徒です!!」
「はい、水無月 葵さん、減点-1ですね。」
「あっ、あれー?!」
951ほんわか名無しさん:03/09/21 03:07
「お姉ちゃん、世界の終わりってどういうことなのかなぁ?」
「はぁ?」

午後の昼休み、さくらとももの二人は、燦燦と日が照りつけるキャンパス・ステラに
そろって敷物を布いて、寝転がっていた。弁当の空箱が隅に束ねられている。

「だって、この星はいずれ消えちゃうんでしょ?」
「う〜ん。まだ先のことだからわかんないわよ。」
「でも、もしそれが突然来たら?」
「終わりが?」
「うん。」

空を悠々と横切る雲がソーラーパネルに鏡像を落とし、二人の上と下を通り抜けて行く。

「わかんないけどさ。何かに終わりがくるんなら、それはきっと…。」
「なに?お姉ちゃん?」
「きっと、何かがはじまる前に戻ったってことなんだよ。」
「うー、わかんないよ〜。」
「あははっ!わたしも!!」

悪戯な姉の笑顔に、ももは少し気が楽になったような気がした。
さくらはすぐ横で寝息を立てはじめた妹を見ながら、ぼんやりと考えた。

はじまりも終わりもみんな一つ。この瞬間と一つ。何よりも大切な……。
952濡れ猫:03/09/22 01:02
夜。
星の瞬く空を見上げる。
私はいつからここにいたのだろう。
何か途方も無い鎖を断ち切った後みたいに、
時間と空間が私を中心に広がって、
私の中に流れ落ちる。
遠い日の記憶が、胸の中で共鳴する。
過去も未来も、いつもここにあった。
それぞれがそれぞれの時間と空間に想いを刻んで、
語られることない幻想に生きている。

「・・・懐かしい風。」

この翼を一杯に広げて、それを受けとめる。
何故私にそれが与えられたのか、理由はわからないけれど。
そう、この行き場の無い感情と同じ。きっと理由と現象は背中合わせだから。
私は何かに焦がれている。誰かを想っている。
この感情は、確かにここに在る。

私は自分の名前も思い出せないけど・・・。
あなたはそこにいてくれる?
953濡れ猫:03/09/22 01:44
「ここにいるよ・・・。」

麻衣子は寝言で何かを呟いたことに気付き、
頬を涙で濡らしながら、目を醒ました。
いつもと変わらない夜。
でも胸の中は、言い知れぬ感情に満たされたままだった。
この感情を何て言うんだろう。
いつも彼女と居たときに感じていた気持ち。
あの晩、埠頭の小屋で彼女に訊かれた言葉を思い出した。

「愛って信じる?」
「・・・愛?」
「私はそれに救われたことが無い。だから忘れようとしてきた。」
「どうして?」
「幻だから。愛なんて聞えは良いけど、言いかえれば遺伝子の器に過ぎないわ。」

あの時、私は何て答えたんだっけ・・・。

「でも、それを感じるでしょ?」
「・・・。」
「私も感じてる。あなたを愛してる。」
「ほんとうに?」
「うん。説明なんていらないよ。私がこう感じていることが真実だから。」
「忘れない?」
「忘れない。」
954ほんわか名無しさん:03/09/23 06:17
あげ
955ほんわか名無しさん:03/09/23 07:42
「本当にあきらめちまうのか?」

衛星軌道連邦ステーションセクターIX"セナタフ"53番埠頭。
ミシュラを格納したドックから、F村とサクちゃんが地球を見下ろしていた。
「ええ、いいんです。麻衣子のことはもう…。」
「そうか…。なんだかあっけない引き際だな。」
サクちゃんはF村にドリンクを差し出し、肩を叩く。
「もう彼女の世界には、俺はいないから…。」
F村はおもむろに麻衣子の写真を取り出し、それを力強く握り締めた。
「きっと、どちらか片方が想いを残したままじゃいけないんです。」
F村は意を決したように、麻衣子の写真をエアシャフトの向こうの宇宙空間へと放り投げた。
肩を少し震わせながら、大気圏で燃え尽きるであろう写真を見送る。
「…お世話になりました。」
「待った!ほら!!」
背を向けるF村に、サクちゃんが何かを投げつけた。
「…これは?」
「今までのお前の働き分の稼ぎだ。借金返済の足しにしろ。」
「はい。ありがとうございます!」
F村は後ろに向き直ると、真っ直ぐに地球への定期便へ乗り継ぐために駆け出した。
サクちゃんは黙ってその背中を見送る。

「散りぬれば いとど愛でしき 君の影かな されど水面の花は摘むなかれ。」

サクちゃんは苦笑いと共に深いため息を一つついた。
「ったく、宇宙海賊ベルーガの頭領ともあろう俺が…。」
956ほんわか名無しさん:03/09/23 18:19
CJ「・・・お世話になりました!」

CJは一連の事件に関する研究データを扱う為に、ロンドンの王立学院へ戻ることになり、
アイリス以下少数の隊員とレイコ、校長他数名の研究者が空港で見送っていた。

アイリス「あーぁ、せっかく話の合う友達が見つかったと思ったのになァ。」
CJはフフッと笑うと、ロビーでじゃれあっている加奈と麻衣子を見遣った。
CJ「ほんと、楽しかったわ。辛いことや何よりも尊い犠牲もあったけど・・・。」
レイコ「そうね。犠牲のことは忘れちゃいけない。彼らのためにも何かを繋いでいかなくちゃ。」
CJ「きっとその人達の想いを世界に反映できるような仕事をしてきます!」
アイリス「あんた性格変わったわね。」
CJ「そぉ?」

アイリスは三つ編みのリボンを後ろで解くと、それをCJに差し出し、手首に結んだ。

CJ「?」
アイリス「学園の言い伝え。こうすると持ち主と同じ想いが叶うんだって。」
CJ「へぇー。でもちょっと邪魔だから解くね。」
アイリス「ギャー!解くんじゃねー!」
CJ「何よう!だってきっついんだもん!」

レイコと校長は揉める二人を暖かく見守る。

レイコ「まったく・・・。でも彼女達ならきっと何かを繋いでくれる。そんな気がしませんか?」
校長「あぁ。遠い日に、旅路の果てに、寝坊な小鳥達の囀りの如く、その時を告げる日が来るだろう。」
レイコ「レイジィバツース。調律中の小鳥達・・・といったところですわね。」
敷島「プ。」

ロビーの影に隠れていた敷島を、二つの雷の如き蹴りが貫いた。
957ほんわか名無しさん:03/09/23 18:43
〜学園校舎・PM5:23〜
夕暮れの紅彩に包まれ始めた校舎の裏手、ひっそりとした高みにある森の中に
学園の守り神を祭った神社が佇んでいた。
神薙 いずなが、新入隊員である水無月 葵を案内しながら学園を巡っている。

いずな「ここがここの守り神が奉納されている神社ですわ。」
葵「守り神?って何なんですか?。」
いずな「亀よ。」
葵「・・・・亀。」
神社の手前に一人の女子生徒が蹲っている。アノーマリーの力によって実体化した雨音 雫であった。

いずな「ちょっと、どうしたの?大丈夫?」
雫「しっ!この中に誰かおるんや!!」
雫は神社の引き戸にぴったりと耳を押し付けて、中の物音を聞き取ろうとしている。
いずな「ちょっと覗かせなさいよ!」
葵「あ、先輩あたしにもー!」
雫「うわっ!押したらあかんって!キャー><」

バタン!!
神社の戸ごと三人は中に雪崩れこむ。薄い埃の奥には、
百合子と銀之助が違いに覆い被さりながら、冷や水をかけられたような表情でこちら覗っていた。

いずな「ゆ、百合子せんせー・・・。」
いずなは目を真ん丸くして赤面する顔を両手で覆う。
百合子「こっ、これは違うのよ!あれよ。ご神体を掃除してあげようと、それで。」
雫「ご神体なら今ので首ポッキリやで。」
百合子「キャー!」
銀之助「・・・。」
葵「せんせー!だめですバレバレですよ!もっと偽造っぽく、色気のある嘘をですね・・・。」
百合子「ぎ、偽造っぽくしてどーすんのよもう!自然にでしょ!疚しいことなんかないわよ!(ポカッ!)」
葵「あーんせんせーに殴られたー。」
958ほんわか名無しさん:03/09/26 05:09
空からの光源をステンドグラスがプリズムとなって広大な空間に鮮やかな彩りを通している。
その大聖堂は迷宮性と堅固な建築から、戦争中はシェルターとして使われていた程であった。
現在では巨大な教会組織の隠れ本山として用いられ、レイジィバツースと並ぶ"平和の使い"の基地でもあった。

「お迎えも無いのかしら?」

霧崎伶佳、如月麻衣子、無明道弥生、優子の四人は学園の密使として
この人気を寄せつけない教会へと遣わされていた。足音を響かせながら、大聖堂の中心を進む四人。
ミサに使われる教壇の真上には、圧倒するほど絢爛なゴシック装飾を施されたパイプオルガンが
彼女らを威圧するかの如く構えていた。

「間違い無いわ。」伶佳が優子に応える。
「ここに来るように伝えたのは彼らだし。」

優子はリストガードの帯を口で締めながら後ろを確認する。

「平和の使者"アルカナの戦士"。あまり信用しないことね。彼らの遣り方には非難も多いわ。」
「麻衣子、アノーマリーで何か感じない?」
「…うん。凄く近くにいるけど…何か不思議な気配…。」

ふと、一枚のカードが四人の前に舞い降り、弥生が刀で眼前に突き刺した。
「タロットカード?」
「アルカナの戦士の武器よ。カードの秘術を用いて戦うの。」
「22人の大アルカナと56人のマイナーアルカナ。総合戦力ではレイジィバツースを軽く凌ぐわ。」
「杞憂ちゃんも昔ここに……。」
「このカードは?」弥生が質問を口にする。
カードには、三匹の獣が車輪を廻す絵柄があしらわれていた。

「…The Wheel Of Fortune。"運命の輪"」

その時、大聖堂が地響きと共に揺れ出した。
「じ、地震!?」
959ほんわか名無しさん:03/09/26 05:48
「なっ!罠!?」
四人の間を一陣の旋風が吹き抜け、大聖堂の床に亀裂が走る。それぞれの足元に四枚のカードが突き刺さった。
"塔"、"悪魔"、"審判"、そして…
「"死神"。ようこそ死の縁へ。」
「そ、その声…。」麻衣子はハッと声の主を見上げる。
「杞憂ちゃん?!」
そこに立っていた4人のアルカナの戦士の一人は、紛れも無く杞憂と瓜二つの容貌をしていた。
「あぁ、双子の姉のことか。」
「そんな…これはどういうこと?」
「終末が近いのだ。説明する必要も無い。我々は終焉を迎えるべく、因果を断ち切らねばならない。」
「…因果?」
「レイジィバツースの名。そしてその存在を消し去らねばならぬ!」
周囲には70余名のアルカナの戦士達が、四人を囲んで戦闘配置についていた。
「お願い。考え直して。私達、共通の目的を持っているはずなのに。」
「運命が導いたのだ。アノーマリーの力ゆえに世界は破局を迎える。」
「…破局?終焉とは違うの?」
「この物語が終わりを結ぶ前に、世界が破綻することだ。」
「そんな!わたし、そんなことしない!」
「アノーマリーの力は、関係性のインフレを起こす。他者になり、別世界を繋ぎ、物語を破綻させかねない。」
「"運命の輪"は、汝にふさわしい敵を外部から呼び寄せるだろう。」塔の主が呟いた。
光を風が大聖堂を再び吹き抜け、ステンドグラスを割ってそこに天使の姿を描いた。
「あ…あれは?!」
麻衣子は驚きの表情で教壇に駆け寄るが、"死神"が目の前に立ちはだかった。
「彼女が予言したのだ。あなた達を殺さねばならないと。」
「そんな!嘘でしょ!?嘘だと言って!リリス!!」
リリスはただ冷たい表情を浮かべて、叫ぶ麻衣子の顔を見下ろしていた。
960ほんわか名無しさん:03/09/27 03:43
「ちぃっ!やるしか無いわね!飛龍!!」
一斉に襲いかかるアルカナの戦士達を一瞬で薙ぎ払う優子。
だが、手応えは無い。
「何?こいつら…。」
「幻だ!!気をつけろ!!」
アルカナの戦士達の幻影は、こちらからは触れることも出来ないのに
タロットの魔法攻撃は容赦なくレイジィバツースに襲いかかった。
「どうして?リリス、応えて……。」
麻衣子はアノーマリーの力で仲間への魔法攻撃を全て無効化する。
「味方を庇ってる暇は無いぞ!!」
杞憂の妹は死神のカードを振り払い、影の大鎌で麻衣子の体を切り刻む。
「きゃあっ!」
「くっ!何処かに幻を作り出している術師がいるはずだ…。我が心眼よ捉えろ!!」
弥生は両眼を瞑って意識を集中させる。
「いた!あのバルコニーの上!!」
教会の吹き抜けの三階部分に、ローブを纏った術師が"The Moon"のカードを構えている。
「了解!!食らえっ!!」
伶佳の矢がカードを貫き、アルカナの戦士達は一瞬で露と消えた。
その瞬間、"審判"の主の刃が弥生の背中を斬りつけ、血飛沫が舞う。
「まず一人……。」審判の主はそのまま姿を暗ます。
「弥生!!!」
動揺した優子の眉間を、"塔"の主の雷が貫いた。
「え?!」
「逃げて伶佳ちゃん!」
"悪魔"の主がレイピアを伶佳に構え、呪術を詠唱する。
「やめてぇ!!」
麻衣子の懇願も虚しく、鋭い短剣が伶佳の背中に突き刺さった。
全てはほんの一刻の出来事。そして静寂…。
大聖堂には麻衣子と"死神"の主、そして"運命の輪"が引き寄せたリリスだけが残っていた。
961ほんわか名無しさん:03/09/27 04:10
仲間の亡骸を振り返り、麻衣子は声も無く俯いた。
「……これが終わりへの伏線だって言うの?」
「そうだ。我々はカードが導く運命に従って、その役目を果たせればそれでいい。」
"死神"はゆっくりと麻衣子に近づき、顎をクイッと自らの顔を引き寄せた。
「運命の前に涙は無力だ。」
「…傲慢だわそんなの。私達には自らを導く力がある!誰にも強要されはしない!」
「!?」
周囲を暖かい光が覆いつくし、死神を消し去った。
そして死んだはずの仲間が目を醒ます。
「こ、これは…?」
「みんな……。」
歓喜の表情を浮かべる麻衣子に、リリスの哀しそうな声が響いた。
「やっぱり…アノーマリーは消さなきゃならないのね。」
「えっ?」
「あなたがした今の行為。それがあなたが居てはならない理由。」
「ど、どういうことか説明しなさいよ!」
伶佳が喧嘩腰にリリスに食ってかかった。
「願うこと全てを可能にする力。だけどそれが凶位についたら?」
リリスは一枚のタロットカードを逆さに構える。絵柄は「愚者」。
「タロットカードには、一枚一枚に意味が込められているでしょ?だけどどれも解釈次第…。」
リリスは四人の目の前に音も無く舞い降りると、天使の翼を翻し、背中に畳んだ。
「カードも人間も自然も同じ。たった一つの光源がプリズムを通るように森羅万象を描き出すの。」
「だから何?麻衣子を殺していい理由になるわけ?」
「彼女はプリズムなのよ。あってはならないもう一つの…。」
リリスの翼が悪魔の黒い羽へと変化を遂げ、巨大な鎖鎌が手中に収められる。
「リリス…本気で私を…。」
「ごめんね。あなたが誰だか思い出したわ。だけど、こうするしか無いの。」
962ほんわか名無しさん:03/09/27 04:31
「…百年前、ある一族の謀略によってイルミナティは滅ぼされた。」リリスは淡々と続ける。
「その理由は、私達が運命を書き換え過ぎるからだった。イルミナティの繁殖はシステムを破綻させかねなかった。」
「イルミナティを葬ったのは、リュシオンだけじゃなかったの?」
「我々の力を無効にする一族がいる。あのF村とかいう奴と同じ輩のように。」
「F村くん…。」
麻衣子は表情を強張らせて、その記憶を頭から追い遣ろうとする。
「アノーマリーとて同じ、現実を自由に書き換え全てを可能に出来ても、その業は還ってくる。」
 そしてシステムが生存を選んだ以上、アノーマリーはもはや爆弾でしか無い。」
リリスは辛そうな表情で麻衣子に飛びかかり、大鎌を振り翳す。
「キャッ!!」
そのスピードには麻衣子でしかついていけず、他の三人は見守ることしか出来なかった。
「リリス!思い出して!わたしたち、自分たちの時間を生きるって決めたじゃない!あなたは使命から解放されたの!」
「使命?違う。これは信念よ!!」
リリスは大鎌で麻衣子の防御を乱し、回転しながら翼の衝撃波を見舞わせた。
麻衣子は大聖堂の天井部から吹き飛ばされ、大理石の巨大な柱を数本圧し折りながら着地する。
「くはっ!…あ、アノーマリーはつかっちゃいけないの…?。でも殺されちゃう…。」
「や、やめて!!」
麻衣子を庇うように立ちはだかった伶佳は、リリスの顔に信じられないものを認める。
(…泣いてる?)
「あ、あなたそうまでして……。」
麻衣子が伶佳の肩をポンと叩いて、再びリリスの前に歩み出た。
「わたし、わたしが死ねばそれでいいんだよね?」
彼女は信じられないような笑顔をリリスに向けながら、彼女に抱き付いた。
「会えて嬉しかった。それだけは言わせて!!」
963ほんわか名無しさん:03/09/27 17:33
リリスも麻衣子の後頭部に手を回し、お互いにきつく抱き締めあった。
麻衣子「リリス・・・愛してる。」
リリス「あなたと愛し合ったのは前世の私・・・。私じゃない・・・。だけど・・・。」
そういいながら麻衣子の背中に大鎌の先端をあてがう。
リリス「記憶と感情が応えてくれる。わたしもあなたを・・・。」
彼女の唇がそっと麻衣子のそれに重ねられた。
麻衣子はきつく目を閉じ、身の蕩けるような感覚に息を切らせた。

───雨。

大聖堂の天井の抜けた部分から、冷たい水の雫が流れ落ちる。
無慈悲な陽光に照らされたその部分に、もう身動きしなくなった
一人の少女を抱かかえる影があった。

伶佳「麻衣子・・・。」

仲間の呼びかけにも、彼女は応じなかった。
ただ後ろを向いたまま、リリスの亡骸を抱き続けた。
リリスの大鎌が麻衣子の心臓を貫くより一瞬前に、
麻衣子の剣が彼女を斬りつけたのだった。
彼女が仲間の命を摘み取ろうとしていることに気付いたのだった。
964ほんわか名無しさん:03/09/27 18:24
弥生が幻術師の持っていた"月"のカードを麻衣子に差し出した。
麻衣子「・・・?」
彼女の虚ろな瞳がその絵柄に焦点を結ぶのは、少し時間が必要だった。
弥生「アノーマリーで現実を書き換えることが可能なら・・・。」
弥生は月のカードを翻し、麻衣子に差し出した。しかし彼女は黙ってそれを遮った。

麻衣子「現実は移ろうもの・・・。だけどどんな幻想に生きようと、人は自らの業から逃れることは出来ない。」
リリスの前髪を優しく撫でながら、彼女はその場に座り込む。
麻衣子「彼女の信念・・・。」
麻衣子「しばらく二人でいさせてくれる?」

掠れた声が三人の胸を締め付ける。
凍ったような静寂だけが、空間をただ悪戯に長く繋ぎとめていた。
伶佳「これから・・・どうするのかはあなたの自由よ。」
伶佳が麻衣子とリリスの亡骸に背を向けると、他の二人もそれに続いて大聖堂を後にした。

(・・・絶望?これがそうなのかな?)
すっかり涙も枯れ果てた麻衣子が大聖堂の天井の抜け穴を見上げると、
そこには眩いばかりの満天の星が犇めき合っていた。

体の芯がしびれ、あらゆる感覚が鈍くなる。
どんな考え事も、どんな綺麗なものも、何も意味を為さない。
まるで全てが偽りだったような・・・。なんで私は生きてるんだろう・・・?
目の前の現実は平べったい一枚の絵のように、ただのっぺりと広がっているだけ。
もう一度その唇に口を重ねてみる。さっきとは違う冷たい感触。
この一瞬一瞬が崩れ落ちていく砂山のように遠ざかっていく。
私に彼女の温もりを繋ぎとめる術は無い。想いを引きとめるのは・・・。

麻衣子"遠くに見える夢を想う それが今日こそ叶う事を願って・・・"

いつだったか二人で口ずさんだ歌が、聖堂内を慈しむかの如く響き渡る。
965海王星 ◆m9g/KftE.w :03/09/29 03:00
・・・・ここで物語が終わるの?
絶望の鏡が映し出したこの世界は私を透明にして
煩わしい重力を解き放ち、合わせ鏡の彼方に、無限の空間へと放り込む。
この空想の旅路で、私は私であり、他者であった。
だけど鏡の向こうにはスクリーンがある。

人はそれぞれが特異点。
心という事象の地平線を境に、皆それぞれの時間を生きている。
だけど思い出して 私達は一つ。
限られた言葉 感情 選択
それぞれの音色を探して 天球を動かす旋律を奏でる。
そして命が尽きるとき 物語が終わりを告げるとき
時を超えて輝く幾億の星々を仰いで
遥かな未来へと繋ぐ光の徴を

物語を繋ぐのは想い
私を取り巻く関係性のバランス
幽玄の風に吹かれた たった一つの量子が描いた軌道
時空の感覚。
希望のしるしを求めて もう一度あの太陽を追いかけて
引力が入り乱れるあの現実の中へ 私を引き上げる重力を探して
愛の重力を

全ての色に光りあれ
全ての石にクリスタルの眠りを
シャーマンは言った。
「人間はイルカの見る夢の中に生きている。」と
966ほんわか名無しさん:03/09/29 04:06
〜epilogue〜 "Equilibrium."
967ほんわか名無しさん:03/09/29 05:13
閑静な洋館の一部屋。
夥しいほどの時代もののアンティークが暗がりの中を艶やかに、しかし眠るように彩っている。
バロック調の装飾が施された鏡に、透き通った蒼い瞳を称えた少女が一人向き合っていた。
「ラヴィナス、鏡に何を話しかけているの?」
リュシオンは、ただ鏡を見つめ続けるラヴィナスに語りかけた。
「…痛がってるの。」
「誰が?」
「アノーマリー…。」
少女は憂いの表情を浮かべ、鏡から視線を逸らしリュシオンを見た。
「絶望ってなに?わたしにはわからない。だけどここが共鳴してる…。」
ラヴィナスは胸を押さえる。リュシオンは椅子の後ろに回り、
彼女の顔を愛でるようにクイッと鏡のへ向けた。
「何が見える?」
「わたしとあなた。」
「そうね。でもここに映っているものの全てじゃない」
「…時間のずれた光しか見えない。」
「いいえ。知らなくてもいい真実。行間の狭間に隠された、語られないものがここに在る。」
「……わからない。わからないことがいっぱい…。」
「わからないことがあるから、私たちでいられるのよ。」
ラヴィナスはそっと手のひらで鏡を押してみる。
「見えるのに、手が届かない…。お星様みたい。」

イヴは教会の屋根に羽をたたんで、月光を浴びて哀しそうに夜空を見上げていた。

避けることが出来なかった事態。運命や悲劇とは呼びたくない。でもありふれた話。
月に手を翳す。雲を指でなぞる。虚空を掴みとる。愛の記憶に手を伸ばす。
鳴動する世界。決して触れられないけど、感じるもの。感じられないもの。
純粋な現実。わたしはただ寂しさを感じている。あなたがいないから。

イヴはそっと翼の中に蹲り、哀しみを抱かかえるように眠りについた。
968ほんわか名無しさん:03/09/29 05:48
「そうね。一つの物語を結ぶとしたら…。」
リュシオンは自分の髪飾りを少女の髪に結わえながら続けていた。
「動機を全て放り投げるわ。それは何よりも死に似ていて、そして始まりに繋がるから。」
「それでそのお話はおしまい?」
「そう。でも語られないところで生きているかも知れない。」
「そんなのもう物語じゃないわ。」
「そうね。ほら、出来た。」
ラヴィナスは自分のあまりの変貌ぶりに驚き、嬉しそうに表情を緩めた。
「…ありがとう。」
「どういたしまして。さぁ、そろそろ寝ましょう。」
しかし彼女はなかなか鏡の前から離れようとしない。
「…この気持ちを彼女に分けてあげたい。」
「伝わるわよ。あなたはそういう精霊だから。」
「わたしの役目はなに?」
「役目なんてまだ決まって無いわよ。自分で選びなさい。来るべき終末に何が出来るのか。」
「終末…。時の果て?世界の崩壊?」
「"円満な結び"、であることを願いたいわね。電気消すわよ。」
部屋が暗闇に包まれる。
「終わりの果てにも現実は続くわ。絶望を抱く理由なんて無い。」
「希望もね。人は失うことが怖いのよ。生きることとは変化すること。変化は喪失よ。終わりに希望を抱くことも出来るのに。」
ラヴィナスは眠たそうにベッドに滑りこみ、また一つ呟いた。
「もう一つのアノーマリーがいる。とっても邪悪な…。だけど現実を塗り替えられない。彼女がいるから…。」
リュシオンは黙ったままだったが、彼女の一言一言を大事に咀嚼している。
「リリスの選択は失敗に終わったけど、結果的に信念を叶えることが出来たの。彼女はもう決して現実を悪戯に操作しない。」
「……均衡ね。だけど時は刻まれて逝く…。」
そんなやりとりをしながら、いつしか二人は気付かないまま眠りに落ちていた。
969ほんわか名無しさん:03/09/29 06:14
「あなたがもし魔法使いで、想うこと全てを現実に出来るとしたらどうする?」
「そうですねえ、まずアイスクリームを一年分出して、それからかっこよくて金持ちの彼氏に、あと宇宙旅行!」
「…。」
伶佳が新入隊員である葵にそんな質問を投げかけたのは、寮の同部屋に指定された夜であった。
昼間からこのせっかちな新入生に振りまわされたおかげで、麻衣子への気の患いが少し軽くなったのも事実だった。
彼女は帰ってきてからまだ誰にも顔を見せていない。
「あのねぇ…。もっと大胆な願いを期待した私がバカだったわ…。」
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
「じゃあ、それらの願いが全て現実になったとして、それで壊れた関係性はどうなる?」
「え?え?」
「…はぁ。アイスクリームを一年分出したとして、それを全部食べられる?」
「た、食べれません!どうしよう?!」
「…。願いを叶えるっていうのは、それだけの業を背負うことなのよ。それは普通に生きていても同じ。」
「はぁ。」
「アノーマリーは厄介な力だわ。他人になることも出来るし、どんな世界にだって生きることが出来る。」
「だけど、それもみんな同じじゃないですか?」
「同じ?」
「比べられないけど、結局、自分は自分の現実としか戦えないし。」
「そうね…。」

麻衣子は一人ベッドに蹲っていた。少し暖かいものが心の中に萌すのを感じる。
そしてまた生に駆りたてられた。理由はわからない。底の見えない絶望の中で、彼女はとりあえず生きていた。
「生きてる…。あなたを殺して、わたしが……。」
リリスと二人で映っている写真をボンヤリと視界に捉えながら、思索は虚しい行為だということに気付いた。
970ほんわか名無しさん:03/09/30 17:42
・・・そして時は動く。

各国首脳の会議において、黒田重工鰍フ開発したC-TAPPAが各種戦線への投入、
人道支援などにあてられる方向に決定する。クローンであることから、生命倫理の問題に
一石を投じた形ともなった。関連技術も世界中の企業に提供され、更なる応用研究・改良型の
開発が促進される運びとなる。

一方で、レイジィスーツ・テクノロジーはその魔術性ゆえに汎用は危険とされ、
学園と黒田重工鰍筆頭とする少数機関への委託研究に留まり、設計はトップシークレット、
また追随するほどの技術を持った研究機関も無かった。

そして"レイジィバツース"と同様の特務機関が試験的に各国に設けられることになり、
現在は隊員の確保と施設配備の準備段階に入ったところである。

その他、闇に葬られた様々な軍事技術については、世界中のブレインが収集され、
国家主導の地下組織において開発が続けられているというウワサもあった。

一連のモジュールには幾つか明かされない部位があったが、
そのほとんどは「如月麻衣子」という少女に発現した"アノーマリー"という能力についてであった。
様々な実験が行われたが、既存の理論や物理原則を全く介さない驚異的な力は事実上「取り扱い不可」
という形で書類上からは一切の姿を消すことになった。

学園長の配慮により、表向きはスーツのプログラム改変で解決されたことになっていたが、
如何なる場合も「アノーマリ」は発動する。また、それが作戦遂行上重要な点であったことから、
麻衣子の能力については隠されたまま、任務への続投が命じられていた。

世界は見えざる脅威に突き動かされるまま、かつての均衡を取り戻しつつあった。
見かけ上は────・・・。
971ほんわか名無しさん
世界は螺旋状に動き続ける。

あなたがいなくても。

あなたの軌跡や記憶は、少しずつ世界から消えて往くけど、

わたし達は、魂のかけらが宇宙の暗闇に散り消えるまで、

あなたの顔、あなたの言葉、あなたのぬくもりを、忘れはしない。