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一人暮らしをやめ、実家に帰るきみへ。
一人暮らしのきっかけはなんだっただろう。
一人暮らしの期間はどれほどだったか。
一人暮らしをした部屋の思い出や部屋に遊びに来た友達のことを
きみはどれだけ覚えていて、記憶の中にとっておくのだろう。
実家へ帰れば、また家族との生活がはじまる。
きみが幼い頃から、親の元で親戚の元で、繰り返してきた日々。
思春期を通り過ぎてきたきみは、一人暮らしを始める前に、親や親戚を
疎ましく思っていたこともあるだろうか。
きみの時間、きみの人生の中で、一人暮らしの部屋の記憶はきみに何を
与えてくれただろう。
一人で、朝起きて、食事をし、選択も掃除もして、日々の学業や仕事に就き、
役所に届けを出したり銀行に出入金に行ったり時には近隣の人とやりとりしたり。
そして一人で床につき休んだ日々。
一人暮らしを始める前は、きみが知らないところで、親兄弟や親戚が
陰に日向にこなしてこなしていたであろう、瑣末なあれやこれや。
きみは、一人暮らしの間に、なにを感じ、何を思い、何を学んだだろう。
その中のいくつかを携えて、きみは肉親のいる実家へ、故郷へ帰る。
実家へ帰れば、また家族との生活がはじまる。
だがそれは、決して以前と同じ日々ではなく。
きみが一人暮らしで過ごした日々の分だけ、両親も親戚も歳を取り衰える。
きみは一人暮らしで身に着けたなにかをもって、きみを待ってくれている
親や親戚の元へと帰っていくことができるのだろうか?
一人暮らしの日々を過ごした部屋を去る前に、ひととき、ただじっと部屋に
佇んで巡らせくゆらせて、心を漂わせてみるのもいいと、そう思う。