★★日本生命事案に見る、掲示板の削除義務★★

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232もしもの為の名無しさん

 また、1995年のストラットン・オークモント社対プロディジー社事件(Stratton Oakmont@` Inc. v. Prodigy Service Co.(1995))があり、事実関係と裁判所の判断は以下のようである。
大手のオンラインサービスプロバイダーであるプロディジー社はマネーラインというファイナンス情報のBBSを提供し、そのプロモーション等についてエプスタインというボードリーダーと契約していた。そのマネーラインに投資銀行であるストラットン・オークモント社(以下、「ストラットン社」)らが証券発行について犯罪や詐欺的行為をしているという記載がされたので、ストラットン社がプロディジー社を訴えた。
 裁判所は、@プロディジー社が、利用者に対して、内容についてのガイドラインを発表し、そこでは、侮辱的な内容をアップロードしてはいけないことなどが書かれていること、不快な言葉を自動的にスクリーニングするソフトウェアを使用していること、BBSをモニタリングし、ガイドラインを実行するためボードリーダーを使用していること、ボドリーダーが緊急削除機能によりメッセージを削除できることから、プロディジー社をパブリッシャーに該当するとした。
 なお、裁判所は、キュビー社対コンピューサーブ社事件との違いとして、プロディジー社がファミリー向けのコンピューター・ネットワークとして、BBSに掲示されるメッセージの内容をコントロールすることを宣伝し、それによって他のオンラインサービスプロバイダーと差別化を図っていること、内容をスクリーニングするソフトウェアを使用していること、ボードリーダーにガイドラインを遵守させるよう義務づけているから、コンピューサーブ社の場合と異なり、BBSの内容にコントロールを及ぼしているとした。
 興味深いのは、プロディジー社が言わば良心的に編集的なコントロールを及ぼせば、そのようなコントロールをしていないオンラインサービスプロバイダーよりもかえって重い責任を負うことになるという点について、裁判所が、編集的なコントロールを及ぼすことによってより多くの利用者を獲得できるのであるから、不利益は市場で償われるとしたことである。
 また、裁判所は、プロディジー社の代位責任についても、プロディジー社はボードリーダーに指示及びコントロールを及ぼしていたとした。プロディジー社は、ボードリーダーとの契約で、ボードリーダーがすべての責任を負い、プロディジー社は免責されるという条項があると主張したが、契約の文言ではなく両者の実質的関係を見るべきであるして、排斥された。
 この事件はその後和解が成立し、その和解に基づき、プロディジー社は判決の再審理を求めたが、裁判所はこの判決を無効としないと決定したようである。
 このように、プロバイダーとしては、言わば、「前門の虎、後門の狼」で、内容のコントロールをすると、パブリッシャーとしての責任を負う可能性が高くなり、内容のコントロールをしないとしても、故意・過失を問わない著作権侵害の危険が高くなるという結果になりそうである。
 しかし、これら2つの事例はパソコン通信のフォーラムに関する事件であり、コントロールが予定されていないインターネット上の情報流通に形式にあてはめることはできないであろう。
プロバイダーの法的地位の問題http://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/comp/int_c_pro.html