ポーク、殴られておっ勃ててんのかよ!
このM野郎がッ(w
ちっちゃいアキラたんの新スレハァハァハァハァハァハァ(;´Д`)
アキラたん、新スレたてたかい?君が立てたらそっちにいくyo!
955 :
MIRAI:02/06/10 02:41
アキラたんのたてるスレをずっと楽しみにしてたんだ。
アキラたんがたてたらそっちにいくから立ててごらん
ちっちゃいアキラたんまだかな?ハァハァハァハァ(;´Д`)
ちっちゃいアキラたんが新スレたてるのはヒカルたんスレ以来だなハァハァ
958 :
MIRAI:02/06/10 02:49
俺にできるのはスレ立てくらいだしな。
俺が来ると荒れるしスレ立てだけでも参加したいんだ。
またロムに戻るよ。
新手法の荒しだな(w
チチャーイアキラタンスレたて苦労してるのかい?
気長に待つぞハァハァゆっくりやってごらん(;´Д`)
みんな!ちちゃーいアキラたんのたてたスレに引っ越そうぜ!
―――――水色の傘を選んだのは、大切な思い出があるからだ。
雨の匂いに気づいたのは、検討を始めた頃だった。
対局室の中は、いやな湿気と埃混じりの生臭い匂いが幽かに充満していた。
雨そのものは、水分特有の甘い匂いがあるけれど、室内にこもっているときは余り気持ちのいいものではない。
朝、家を出るときは快晴とまでは言わないけれど、雨の気配は感じられなかった。
いつ降りだしたのだろう。
そんなことを考えながら、碁笥に石を戻す。
「ありがとうございました」と挨拶を交わし、僕は出版部に顔を出した。
外部から依頼されたインタビュー原稿のゲラチェックがあったのだ。
「失礼します」
去年の秋の人事異動で、出版部全体を統括する立場になった天野さんが「待ってたよ」と笑顔で迎えてくれた。
「今日は?」大き目の封筒と赤いボールペンを手に、天野さんが尋ねてくる。
「おかげさまで勝ちました」
「いや……」くっくっと天野さんが喉の奥で笑う。
「僕はなにもしてないんだけどね。でも、随分時間がかかったんじゃない? 相手は?」
「白石先生です」
「そりゃ、時間がかかって当たり前か……、えっと、こっちの会議室でいいかな」
僕は会議室へと案内してくれる天野さんの背中に、聞こえないようにため息を零した。
穏やかな雰囲気のせいで誤解されがちだが、白石先生は強い。
基本に忠実で堅く攻めてくるパランスの良いタイプだ。意外性には乏しいが、攻守ともに優れているから、気を抜くといつのまにか負けている。そんな相手だ。
その上、最近の白石先生は、変容の時期にあるようで、序盤に良い形がてきると、面白い手を見せる。
棋譜を整理しているとき、それに気づき僕はかなり興味を持った。
そして、気がついたのだ。白石先生が、進藤の兄弟子であることに。
前に、少し聞いたことがある。進藤が白石先生の囲碁教室にやってきたときの話を。
本当にずぶの素人で、五つのルールさえ知らない進藤に、石取りゲームを教えたそうだ。
それがいつ頃のことだったか尋ねたら、どうやら僕と初めて対局した前後らしい。
今更のように、そんな彼に負けたのかと、僕は落ち込んでしまった。
まあ、それは横においておくとして、自分が教えた後輩からも貪欲に学ぼうとする白石先生の向上心とそれを受け入れ自分を変えていく柔軟性に、僕は心から感嘆する。
白石先生は、僕や進藤のように勝つことそのものに強い執着はないかもしれない。だが、碁を愛ることにかけては人後に落ちないし、道を極めようとする天においては、凄まじい執着があるのだろう。
その執着の先に待っているのは勝利だ。
辿る道は違っていても、到達する地平は一つ。
落伍する人もいれば、停滞する人もいる。望んでも届かない人もいれば、端からあきらめている人もいる。
変容の途上にある白石先生は、やはり恐ろしい相手だと僕は思う。
それを、わかるのは同じ碁打ちでも極一握りで、天野さんもそこそこ打つとは聞いているが、やはり見ているものが違うからだろう。
無意識に、白石先生を侮るようなことを言う。
僕は、それがなぜだか悔しく思えるんだ。
今日、僕はやっとの思いで勝ちを拾った。
中央の黒が良い形で繋がったと息をついた、そのすぐあとで白石先生は温厚な仮面を脱ぎ捨て、牙を剥いてきた。
思いがけない方向から下辺を荒らされ、それに対応している間に、せっかく繋げた中央を崩された。
僕は何度も歯を食い縛った。
うまく凌ぐことができたのは、以前進藤がこれによく似た手を並べてくれたことがあったのを、思い出すことができたからだ。
父の経営する碁会所に、進藤が足繁く通ってくれたのは、去年までのことだ。
北斗杯の予選を控えた頃、代表に選ばれるまで、ここにはこないと彼は宣言した。
先月、北斗杯は終わったが、だからといって以前のように通ってきてはくれなかった。
4ヶ月の間に、進藤には新しい生活のパターンができていた。
高校に進学しなかった彼は、和谷という同門同期の棋士のアパートで、やはり若手の棋士たちと対局するのが日課となってしまったそうだ。
それに、父の碁会所は進藤にとって、あまり居心地がよいとは思えない。
僕のらいばると目されるだけに、くだらないことで口を挟んでくるギャラリーが多すぎるんだ。
先週、進藤は一度も碁会所に顔を出さなかった。
今日は久しぶりに会えるかと思っていたけれど、終わったときには彼はもう帰った後だった。
今日は7段が相手だったのに、中押しで勝ったらしい。
北斗杯をきっかけに、進藤の実力はようやく正当に評価されるようになってきた。
それは喜ばしいことだけど、少しだけ寂しく思うのは、僕の我侭なんだろう。
「アキラ君、先客がいるんだけど、かまわないかな?」
天野さんの言葉で、僕は現実に引き戻される。
「あ、勿論です」
「じゃ、すまないけど、よろしくね」
天野さんが、会議室のドアを開けた。
「すみません」
中の人物に天野さんが話しかける。
「もう一つの会議室、ふさがってるんで、相席お願いできるかな」
「あ、OKですよ」
返ってきた明るい答え。
「なんだ、塔矢じゃん」
会議室にいたのは、進藤だった。
「久しぶりだね」
「あ、ホント、なんか久しぶり」
「中押し勝ちだったんだってね」
「うん、ちょっと奇策を試したら、早々とやる気なくしちゃったみたいでさ」
「奇策を試す? 君は高段者との対局で、そんなことをしてるのか?」
「何、おっかない顔してんだよ」
「君が不真面目だから」
「不真面目? 聞き捨てならねーな。確かに試したけどさ、新しい手を思いついたんだ。試さないでどうする? そもそも何の為に新手を研究するんだよ、勝つためじゃないのか? 俺は勝つ姜さんがあった。だから思いついたばかりの手を打った。それのどこが不真面目なんだ?」
畳み掛けるように返ってきた答えに、間違った点はなかった。
僕が気になったのは、言葉の選び方にの不備にしか過ぎなかった。
不真面目? 彼がこの道を行くと宣言してから今日まで、碁盤を前にして不真面目だったことがあるだろうか。
ない。少なくとも、僕は不真面目な彼を見たことがない。
「すまなかった。僕が言いすぎた」
素直に頭を下げると、進藤は頭をかきながら、チッと舌打ちをした。
「そんなに潔く頭を下げないでくれよ、若先生。向きになった俺が馬鹿みてーじゃん」
少しだけ、ドキッとした。
悪意はないのだろうが、彼の口から若先生という言葉を聞きたくなかった。
それは、父の碁会所の常連たちが、好んで使う呼称だった。
一部の人たちは”若先生”と進藤ヒカルを常に比較する。
僕の気持ちなんてお構い無しだ。
父と比較し、進藤と比較し、応援という形で僕を息苦しくさせる。
僕は、ただ碁を打ちたいだけだ。
満足のいく碁を。
神の一手を極めるために、碁を打ちつづけていきたいだけだ。
なのに、下らない思惑や価値観で、僕を計ろうとする。
僕や進藤を計ろうとする。
仕方のないことだとわかっていても、時折滅入ることはある。
僕は………、恐る恐る尋ねていた。
「その奇策…、見てみたいな。帰り、碁会所に行かないか?」
ルーペで写真のネガをチェックしている進藤は、俯いたままで答えた。
「悪りぃ、今日は森下先生んちに寄る約束なんだ。また誘ってよ」
胸が痛んだ。
―――――また、誘ってよ。
僕が誘わなければ、彼にくる意思はないのだ。
僕は、らしくもなく拗ねてしまった。
「また誘ってもいいのか?」
「え?」
「断るのは手間だろう。それならそうと言ってくれたほうがいい」
進藤が顔を上げた、驚いたように見開いた瞳が、僕を凝視している。
その瞳に、僕は含羞を覚えた。
高校生にもなって、なぜ僕は甘えた口を聞いてしまったのだろう。
そう思うと、進藤の顔を見ていることができなかった。
視線を外す。慌てて、ゲラに目を通すふりをする。
そんな僕の耳に、進藤のため息が聞こえてきた。
「正直……、俺きついんだ」
僕は息が止まるような気がした。
「おまえんとこの碁会所、やっぱ居心地悪いんだよ。塔矢が悪いわけじゃないよ。でも、あそこに行くと余計なことに気が回って、煩わしくなる。俺はただ、塔矢と打ちたいだけなのにな」
「進藤」
顔を上げることができたのは、進藤の声が優しかったからだと思う。
「碁を打つだけなら、誰よりもおまえと打つのが勉強になる。でも、碁戦が始まって、外野に煩わされたくないからさ、自然足が遠のくのも事実なんだよな。俺、学校も行ってないし」
「学校?」思いがけない言葉に、鸚鵡返しになっていた。
「和谷のとことか行くと、若い連中で馬鹿話もできるしさ」
そう言って、進藤は満面の笑みを浮かべた。
僕は、今度こそ胸を抉られる痛みに言葉を失う。
進藤はプロになってから大人びた。いや、あの数ヶ月に渡って手合いをサボっていた時期を境に、彼は大人びた。
以前の彼を知らない大人たちは、礼儀のなっていない生意気な若者と進藤を腐す。
確かに進藤は、初めてあったときから怖いもの知らずで生意気だった。
でもそれは、囲碁の世界について詳しくない彼の無知から生じる、無邪気なものだったのだと、最近僕は理解するようになった。
秀策の棋譜なら100でも200でも空で並べることのできる彼が、一代前の碁打ちの名前すら知らない。
いや、碁戦の名前だって、全部覚えているか怪しい。
彼は無邪気な子供だった。
大人の中で育ってしまった僕が、どこかで置き忘れてしまったものを出会った頃の彼は持っていた。
だから、真剣に碁を打つ者には到底見過ごすことのできない失言を繰り返した。
それは僕を苛立たせたけれど、それでも彼を憎めなかったのは、何度か目にした彼の美しい一局のせいだったし、彼の……天真爛漫な笑顔のせいだった。
だが、復帰からこっち、そんな笑顔は数えるほどしか目にしていない。
彼は、誰よりも真剣な瞳で碁盤に臨む。
それは、同じ碁打ちとして、喜ぶべきことなのに、それとひきかえるかのように彼があの邪気のない笑顔を忘れたのだと僕は思っていた。
だが、それは思い違いだったのだ。
進藤は、昔のように笑えるのだ。
ただ、僕の前でそんな表情を見せないだけなのだ。
その事実に、僕は一人傷ついていた。
キタ━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!
ヒソーリ、コソーリ楽しませてもらいます!つづきを待ってます。
白石先生じゃなくて白川先生ダーヨ
オレはエロも好きだけど、こういうのも好きだよ。
アキラの心ん中を番外編で見ているようでいいなあ。
続き楽しみにしてますので、よろしくな!
どうせなら現行スレでやってホスィなあ。
ここ気づいた人だけの御褒美っていうのもウレシイけど。
本当にちょびっとの人しか知らないようでもったいない……。
>972
いいんじゃないか?ひっそりやりたい人もいるんだよ。
現行スレは現行スレで好きだけど、こういうのもいいよ。
それに倉庫番さんはきっと気づいてくれる。
僕たちはしばらくの間、作業に没頭した。
女性誌の興味本位のインタビュー記事を読み下し、あまりに下らない質問と、看過できない捏造に赤でチェックを入れる。
僕は恋人なんて募集していないし、学業と囲碁を両立させようなんて思っちゃいない。
なによりも優先されるべきは囲碁だ。
19路の宇宙が、僕のすべてなんだ。
それに、父が塔矢行洋だったから、僕は碁打ちになったんじゃない。
勿論、父が誘ってくれたことは否定しないし、父の影響が大きいことは否めないが、それだけを取り上げるのは塔矢アキラという個人を否定していることになぜ気づかないのだろう。
囲碁界のサラブレッド?
恵まれた環境にいることは事実だが、血統で強くなれるとでも思っているのだろうか。
それなら、なぜ進藤は強い?
進藤の身内に碁打ちが要るなんて話は聞いたことがない。
お祖父さんが碁を嗜んでらっしゃるという話は聞いたことがあるが、それもあくまで趣味の域を出ない。
だが、進藤は強い。その理由を彼らはどこに求めるのだろう。
僕は、進藤の手元を覗き込んだ。
「写真のチェック?」
僕が尋ねると、進藤はルーペを外して目頭を押さえた。
「ああ、なんとかって雑誌の密着取材。プライベートが特定できる写真は外すようにって、天野さんがアドバイスしてくれて……」
その説明だけで、どの雑誌か見当がついた。
僕にも一度オファーがきたのだ。
若い世代に焦点を当てた企画物で、参考にして欲しいと渡された既刊では、
B級グルメブームに火付け役と目される20代の飲食店オーナー、
18歳で日本代表に選ばれたサッカー選手、どこかの国のコンクールで奨学金を授与されたバレリーナの卵が、30ページに及ぶ写真とインタビュー記事で紹介されていた。
いま、僕がゲラをチェックしているものとは違い、内容のある魅力的な企画だったが、24時間を写真で見せるというのがどうしても煩わしく思えて断ったのだ。
棋院のほうでは、囲碁の宣伝になるから受けてくれるとありがたいといってきたが、いろいろ考えて断った。
「インタビューは終わったの?」
「うん、ゲラは先週。この写真をチェックしたら、無罪放免」
僕は思わず小さな笑い声を漏らしていた。
「無罪放免」の一言で、進藤もこの手の仕事を決して快く思っていないのがわかったからだ。
「なあ、塔矢」
「うん?」
「今度さ、俺の行き付けの碁会所いかねえ?」
「え…」
「道玄坂って言ってさ、おまえんとこより砕けた雰囲気でさ、
受付も市河さんみてーな綺麗な人じゃなくて、なんかおっかないおばちゃんなんだけどさ」
そこで進藤は一度言葉を切ると、思い出し笑いなんだろう、くすっと笑った。
「おまえのこと歓迎してくれる」
進藤は照れくさそうに頭をかいていた。
「歓迎しすぎて、一局打たせろって身の程知らずなおやじたちが群がってきそうだけどな」
「僕と…打ってくれるのか?」
「やっぱり……、おまえと打つのは特別なことだから……、大切なんだよな」
僕は先ほど感情任せに口にしてしまった言葉を、後悔した。
――――断るのは手間だろう。それならそうと言ってくれたほうがいい
子供のように拗ねた口を利いてしまった。
そんな僕に進藤はちゃんと答えてくれた。
僕と打つことが、特別だと、大切だと、答えてくれた。
僕は自分が恥ずかしくなる。
僕は思いやることができなかった。
極一部とはいえ、父の碁会所には、進藤の言葉尻を捉え揚げ足を取ろうとする人たちがいる。
そうだ、そういった人たちは進藤を毛嫌いし、顔を見ただけで忌々しげな舌打ちを聞かせたりする。
それでも、進藤は僕と打つために通ってきてくれた。
そんな彼の心中を推し量ることもしないで、ただ恨んでいた僕は………。
「やっぱり…世間知らずのお坊ちゃんだな」
僕がため息混じりに呟くと、進藤は一瞬驚いた表情を見せた後で、慌てて瞳を泳がせた。
僕はようやく穏やかに笑うことができた。
「知ってるよ、自分のことだからね」
そう、口の悪い連中が、僕のことを陰でなんと噂しているのかは、なんとなく知っていた。
「それが耳に入ってるなら、世間知らずじゃないんじゃないの」
進藤も笑った。
「俺、なんて言われてるか知ってる?」
進藤の問いに僕はなんて答えようか、一瞬迷った。
「おい、人の顔色伺うってことは知ってんだろ? どう思う? ヤンキーなんて言葉、もうとっくに死語だとおもわねえ?」
進藤は特徴のある前髪のせいで、ヤンキーとかひよことか呼ばれていた。
僕たちは静かに笑った。
そうやって笑い合えることが嬉しかった。
傘さんキタ━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)━━━!!
等身大的アキラタンが(・∀・)イイ!
拗ねるアキラタン(*´Д`*)ハァハァ
ぺラ二枚のゲラチェックは、程なく終わった。
僕が赤いボールペンにふたをすると、進藤もルーペとネガの入った袋を手に立ち上がった。
僕を待っていてくれたんだ。
あえて二人とも言葉にすることはしなかったが、暗黙のうちに了解していた。
忙しい天野さんに、それぞれチェックしていたものを渡すと、僕たちは出版部を後にした。
エレベータのドアが開くと、雨の匂いが噎せ返るようだった。
「凄い降りだな」
静かな雨だった。
まだ4時前だというのに、厚い雲に覆われた空は日没を思わせる。
売店には「傘売り切れ」の張り紙があった。
僕は知らず知らずのうちに重いため息をついていた。
ここからタクシーを使うのは、できれば避けたいところだが、この空模様じゃそんなこともいってられない。
進藤とまだ話したりない気分なのに………。
「塔矢 ――」
エントランスで進藤が僕を呼ぶ。
「なにしてんの?」
僕は慌てて近づいていった。
「傘、売り切れで……」
「じゃ、駅まで入ってけよ」
パンと小気味のいい音を立てて、進藤が傘を開いた。
「でも……」
「遠慮すんなよ。こんなんでもあるとなしとじゃ違うはずだぜ。濡れて行きたいってんなら止めやしないけどさ」
進藤が笑う。僕はその笑顔に誘われ、足を踏み出す。
梅雨の空は重苦しいのに、進藤の笑顔にはそれを跳ね返すような力があるようだ。
「朝は降ってなかったよね」
「ああそうか、塔矢は昼飯くわねえもんな。
昼の休憩んとき降ってきたんだ。凄かったぜ。バケツの底が抜けるってあんな感じなんだろうな」
「そんなに凄い降りだったんだ」
「うん、そこのコンビニで慌ててこれ買ったんだ」
進藤が手にした傘を軽く揺らす。
それはどこにでも売っている、青いビニール傘だった。
「だけどさ、塔矢なら折りたたみ常時携帯って感じだけどな」
「そんなことないよ、朝出るとき降る気配なかったから」
僕たちは話しながら、エントランスの庇の下から通りへと歩き出した。
タン!
ビニール傘の表面を、雨粒が叩いた。
タタタタタ……!
勢いのあるその音は、軽やかにリズムを刻む。
「塔矢」
名前を呼ばれて隣に目をやる。
そして僕は一瞬の幻に捕らわれる。
水
青い海
僕はたゆたう。
明るい海の中を。
目の前ですいと揺れるのは、金色の魚。
目を奪われる、光。
話したりないと思っていたのに、僕はJRの駅につくまで、進藤とどんな話しをしたのか覚えていない。
でも、青いビニール傘の下で見た一瞬の夢は、いまでも強い印象となって僕の中に残っている。
緒方さんが言っていたっけ。
魚が泳ぐ様を眺めているだけで、癒しの効果があるって。
その話を聞いてから、僕は疲れを感じると目を瞑るようになった。
瞼の裏に浮かび上がるのは、青い水と金色の魚。
現実にありえない、でも僕にとって大切な幻は、いつでも僕を癒してくれる。
ぼくは夢の魚を飼っている。
――――瞼の裏に、心の中に。
進藤が写真をチェックしていた雑誌は、8月の末に発売された。
彼の誕生日が9月20日だと知った僕は、僕はその日のうちに、一本の傘を買った。
色は水色。
ビニールじゃないけど、あの日、進藤の肌を青く染めた傘を彷彿とさせる。
誕生日プレゼントだとは言えなかった。
言いたくなかった。だから、その日を前に僕は進藤に傘を渡した。
「前、傘に入れたもらったお礼だよ」
さりげなく言えたか、とても不安だった。
「おいおい、あれから何ヶ月たってんだよ」
進藤は笑いながら包装紙を破り、傘を取り出した。
凉しやかな水色が、この季節には少し浮いているのが残念だった。
でも、これは僕の自己満足だから。
「塔矢……」
進藤は、音を立てて傘を開いた。
―――パン!
乾いている傘は、高い破裂音を響かせる。
進藤は室内だというのに、開いた傘をさして見せた。
「傘ってさ…、千年たっても形かわんねえのな」
進藤がキュッと唇を引き結ぶ。
それは、涙を堪えているように、僕の目に映った。
「進藤?」
訝しげな僕の呼びかけに、進藤は笑顔を返してくれた。
「明後日、俺の誕生日なんだ」
僕は初めて知ったような顔を作る。
「一緒に遊びにいかねえ?」
進藤がくるりと傘を回す。
「どこに?」
青い水が、くるりと流れる。
「水族館」
僕はいまにも溺れそうな気分で、大きく息を吸った。
「なぜ?―――」
「塔矢に見せたい魚があるんだ」
「魚?」
「熱帯魚、ルリイロスズメダイっていって綺麗な青い魚なんだ」
「なぜ、僕に……?」
「おまえに似てるから」
そういって、進藤はふっと視線を外した。
どこか遠い瞳で、傘を見上げている。
「前から一度、塔矢と行きたいと思ってたんだ」
それ以上、言葉は要らなかった。
青いビニール傘の下で、進藤も同じことを感じていたと、僕は思った。
それは確信だった。
―――――水色の傘を選んだのは、大切な思い出があるからだ。
進藤の誕生日を二日後に控えた夕暮れ、それは僕たちの大切な思い出になった。
〜終〜
主流から外れたほのぼのですみません。
エロに持ってく自信がなかったので、ここでヒソ〜リと書かせてもらいました。
エロどころか、ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅもない話になるとは……。
白石先生はなんでそんな勘違いをしたのか、自分でもわからんです。
白川先生で読んでいただけると嬉しいっす。
そんじゃ、名無しに戻ります。
傘さん、すごく良かったよ!
アキラの一人称、淡々としてるのに詩的で。
ほのぼのというより、すごく綺麗だ。
なんか心洗われた。
傘さんの中のヒカル、好きだ。それと文章がすごく好きだ。
幸せな気持ちで眠りにつけそうだよ。
現行スレでも過去スレでもいいから、また書いてください。
傘さん、乙彼ー。美しいお話でしたな〜
雨音の描写が印象的でした。鬱陶しい梅雨のシーズンに心洗われるお話をありがとう。
青い魚と金の魚、美しいイメージだ。
青い魚は静かにすうっと泳いでる感じで、金色の魚は水面で跳ねてキラッと陽に輝く感じかな。
あああ、だがしかし、今、オレの妄想の中で金色の魚が瑠璃色の鳥に食べられてしまいそうになった。
せっかく傘さんが美しくプラトニックにまとめて下さったと言うのに…
何かスゲー感動したよ。たまにはこういうのもいいな
傘たん、ありがとう(*´Д`*)
俺もなんか涙出た。恥ずいが。また書いてくれ。
綺麗な話だった。
水族館デートも良かったら書いてホスイ。
保管しますた。
Part8スレで呼びかけてくれた人ありがとう。
かちゅで巡回はしてたけど、レスが付いてるのに気が付いてなかったよ・・・
「傘」奇麗な話しでした。面白かったです。
朝から降り止まぬ雨が、日没の頃には豪雨となっていた。
「眼形を作るのは基本ですが、それと同時に全体の繋がりを常に念頭に置く事を、これからの課題になさるとよろしいのではないでしょうか」
塔矢アキラ三段の適切な助言に、男は「なるほど、なるほど」と繰り返し何度も頷いて見せる。
「大変きれいな打ち筋ですね。失礼ですが、普段はどなたに?」
アキラは碁石を片付けながら、さりげなく尋ねてみた。
今日、指導碁に呼ばれた一部上場企業の取締役だという男は、良い打ち手だった。
一手の重要性を、十分に理解した手筋に好感を覚える。
普段は高段のプロの指導を受けているのだが、そのプロが体調を悪くしたとの事で、アキラがピンチヒッターに借り出されたのだ。
「芹澤プロをご存知ですか?」
男は黒石を碁笥に戻しながら、上目遣いでた反対に尋ねてくる。
「ええ、勿論。芹澤さんなんですね、納得だな」
芹澤プロといえば、まだアキラが直接対局したのは片手でも余る程度だか、タイトル戦の最後に必ずといっていいほど絡んでくる棋士である。
「ところで塔矢先生、お時間はまだよろしいでしょうか?」
「ええ、もう一局?」
「いいえ、この雨ですからお車でお送りしたいのですが、ちょっと出ておりまして……。
小一時間ほどで戻ってまいりますので、それまでよろしければ夕食をご一緒していただけませんか?」
アキラは丁寧に辞退したのだが、最寄の駅まで徒歩で20分以上かかる。
タクシーを呼んでもらうつもりだったが、車で送ると言ってくれるのにそれを無碍にも断れない。
芹澤プロはいつもそうしていると言われては、あまり我を張ってもと、承諾した。
家人は出払っているそうで、出前とは思えない豪華な会席弁当が供される。
秘蔵の日本酒を薦められたときは、さすがに未成年ですからと手を振って断ったのだが、結局小さなぐい飲みで二杯ほど付き合わされた。
男の会社が、碁戦のスポンサーであることを忘れるわけにはいかない。
よく降る雨だと、窓の外を眺めていたのが、最後の記憶だ。
人間というものは、自身に向けられる悪意に対して、鈍感にできているものらしい。
好意には敏感だし、心のうちにある悪意は無視できないが、向けられる悪意には意識を遮断する傾向がある。
精神が健全であればあるほど、日頃善良に振舞っていればいるほど、その傾向は強い。
そして、囲碁にひたむきな情熱を捧げる塔矢アキラという人間は、間違いなく健全精神を持つ善良な人物だった。
だから、無防備であった彼を迂闊だと責める事はできない。
だが、本人は………。
重い瞼を開けたとき、アキラは自分がどこにいるのか、すぐには理解できなかった。
朦朧とかすむ目を何度となくしばたたかせるうちに、ようやく焦点が結ばれる。
白熱灯の投げかける暖色の光が、まず最初に知覚できたものだった。
(眠っていた…?)
床の間のある和室で夕食を振舞われていたことを、ぼんやりと思い出す。
いつ、自分は眠ってしまったのだろう。
そんなことを考えながら、目を擦るために右手を動かそうとして、アキラは初めて異変に気づいた。
腕が動かない。
両腕が動かない。動かないように縛られている。
驚いて上半身を起こそうとした。そして、本格的に蒼褪める。
両腕を上げた状態で、手首が一まとめに拘束されている。
―――――なぜ!?
「お目覚めですか?」
視界にゆらりと影が差した。
自分を見下ろしているのは、夕食をご一緒にと誘ってくれた男。
「これはいったいどういうことです!?」
男は答えない。ただ、アキラの全身に舐めるような視線を向けている。
その視線に促されたのだろう、アキラは恐るべき事実に気づいた。
自分が全裸であることに!
「これはいったい!?」
理不尽な仕打ちに、怒りが燃え上がる。
「何を考えているんですっ!!」
男は口の端を引き上げて、微笑して見せる。その空々しい笑みに、アキラは叫んだ。
「笑うな!」
そのときだった。男の背後にあるドアが開く。
「うるさいのは、好まないんだ」と、耳に心地の良いバリトンが告げる。
アキラは、暫しの間、言葉を失った。
薄く微笑み、自分を見下ろす整った容貌。
それは見知った顔だった。
「芹澤さん……」
彼は目を細め、優しげに笑んだ口元に、人差し指を押し当ててから声を聞かせた。
「しー―――、静かにしようね。これがなんだかわかるかな?」
そういってアキラの目の前に差し出したのは、穴のあいたピンポン球のようなものだった。
「これは、ボールギャグといってね。君から言葉を奪う拘束具だ」
芹澤は手馴れていた。
「芹澤さん、何をなそ!? …うぅっ!」
抗う間もなく、アキラは咥えた状態で、ギャグを装着されてしまう。
「この状況で、何をされるのかわからないなんて、私を失望させないでくれたまえ、塔矢くん」
「ぅ〜〜っ………」
「楽しい夜になりそうだ」
そう嘯くと、芹沢の手はアキラの乱れてしまった黒髪をゆっくりと撫で付けるのだった。
遠雷たんキタキタキタキタ━━━━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!!!!!!
すごくドラマチックになってる!
最初は住人同士の妄想から始まったからな。
すごくソソル導入だハァハァ(;´Д`)
カユイカユイアキラたんのつづきもよろしく頼む!
「ルリイロスズメダイ?」
緒方さんは鸚鵡返しで呟くと、眉間に軽くしわを寄せた。
改札を抜けると、緒方さんが例の派手な車の前で腕組みをして立っていた。
父とこれから打つらしい。その前に一服したいからと、僕を迎えにきてくれたそうだ。
緒方さんはかなりのヘビースモーカーだ。
何年か前、対局中の喫煙が禁じられたとき、相当機嫌を悪くしていたのを覚えている。
2時間が限度だと、本気で悩んでいたっけ。
そんな事情から、碁石を持つときはどんな場合もなるべく吸わないようにしていると、以前苦笑交じりに話してくれたことがある。
僕が車に乗りこむと、緒方さんはアームレストから新しいラークを取り出して、火をつけた。
ぷかりと紫煙があがり、ゆらりと崩れる。
紫の煙が揺れる様に、重ねるものがあった。
「緒方さん、ルリイロスズメダイってご存知ですか?」
いつも冷静な印象の緒方さんだが、実は表情は豊かだ。
いまも、ぽかんと口を開け、僕の顔をまじまじと見ている。
「ルリイロスズメダイ?」
「ご存知ありませんか?」
「ルリイロスズメダイねぇ……、興味あったっけ?」
「あ、…ちょっとどんな魚かなって」
緒方さんはポンと灰皿に煙草の灰を落としてから、ゆっくりと車を発信させた。
「ルリイロスズメダイって魚は正式にはないといってもいいと思うよ」
「ない?」
日の暮れた町を、赤いスポーツカーは滑らかに走っていく。
「デバスズメダイのことをルリイロスズメダイと呼ぶ人は多いね。
デバスズメダイの英名がブルーグリーン・クロミスって言ってね、
きれいなエメラルドグリーン、和名だと瑠璃色だな。きれいな青い魚なんだ。
で、クロミスがスズメダイのことだから、誰かがルリイロスズメダイって言い出したんだろうな。
でも、ルリホシスズメダイってのがいてね、これは大きさも違うし体に星のように白い斑がある。
それとの混同を避けるため、今はデバスズメダイと言うのが一般的だな」
「それじゃ……」
僕は不思議な気持ちだった。
「ルリイロスズメダイって魚はいないんですね?」
「厳密に言えばね」
進藤はこれを知っているのだろうか。
「幻の魚だな」
緒方さんの言葉に、なぜか頬が紅潮する。
――――幻の魚
僕は夢の魚を買っている………。
「その……、デバスズメダイはどんな魚なんですか?」
「さっきも言ったけどね。青い綺麗な魚だよ」
「綺麗…なんですか?」
「群れる習性があってね。ちっちゃくて可愛くて……、ダイバーの間で人気のある魚だな」
「ちっちゃい?」
「大きくてもこんなものかな?」
緒方さんは、タバコを持ったまま左手の親指を立てて見せた。
「僕、似てますか?」
「は?」
「デバスズメダイに……」
車内に沈黙が落ちた。
聞こえるのは、静かに響くエンジンの音と、カーオーディオから流れる、スイングジャズ。
僕は、自分の耳が熱くなっていることを自覚した。
「いまの!」
なにを訊いてるんだ、僕は!?
「いまの無しです。忘れてください」
「あ、あぁ………」
緒方さんが納得いかないと言いたげな声音で、相槌を打つ。
僕は、ひどく恥ずかしくなってしまった。
緒方さんの視線を避けて、窓のほうら顔を向ける。
馬鹿だ、僕は。
進藤本人から聞かなきゃ意味がないのに……。
胸がどきどきする。
走ったわけでもないのに、鼓動が早い。
進藤は、僕にどんな青い魚を見せてくれるんだろう。
その魚はどこが僕に似ているんだろう。
進藤、ルリイロスズメダイって魚は、本当はいないんだよ。
幻の魚なんだよ。
君はそれを知ってるのか?
それと、…………。
僕が夢の魚を飼っていることを、君は知っているかい?
君の中で息衝いている、幻の魚に早く会いたい。
明後日。
9月20日は、進藤の誕生日。 〜終〜
夢の魚キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━!!!!!
傘にしろ、ピュアな感じがいいな
ピュアなのに、何でかドキドキしちまったーよ(;´Д`)
また頼んます
明後日……ってことは、水族館デートの約束をした直後の話なんだな。
ヒカルたんとあひびきの後、兄貴をアッシーに使うとは。
ピュアなようにみえて、さすがはアキラたん、やるもんだ(;´Д`)ハァハァハァハァ
なんかうきうきしているアキラが可愛い。
で、自分がはしゃいでいた事に気づいて赤面するアキラたん。
恋っていいな。しばらくこういう感じ体験してない(w
是非、本番デートも書いてください。
アキラたん、結婚してくれ〜〜〜!
遠くに行ってふたりだけで暮らそう。
アキラたん、ああアキラたん、アキラたん(;´Д`)ハァハァ
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