相変わらず何の感情も篭っていないような声音で緒方さんはそう吐き捨てると、ボクに
背を向けた。青いシャツがよく映える広い背中。少し猫背ぎみなのは、彼の身長があまりにも
高いからだ。
「緒方さ――」
「今度」
緒方さんのシャツにボクの爪先が触れる寸前、緒方さんはピシリとボクを制した。
何度も縋ったことのある彼の背中がボクを近づけさせまいとしている。
「今度、3人でするか?」
言うなり、緒方さんはボクのはだけたパジャマの隙間から肩へと手を滑らせ、それを
床に落とした。濡れた髪が直に首筋を擽る。髪を払いのけたかったけれども、緒方さんが
ボクの両肩をきつく拘束していてそれは適わなかった。
「オレは別に構わないが。キミが進藤に挑みかかっている姿も見物だろうしな」
……そんなことを言いながらも、緒方さんはボクが見たこともない怖い顔をしている。
口許は微笑を浮かべているのに、眼鏡の奥にある彼の切れ長の目は少しも笑っていなかった。
「やめて…ください」
見慣れた緒方さんの整った顔が、白い彫像のように見える。
得体の知れない恐怖感に、ボクは首を振った。何度も、何度も。
「こんな綺麗な身体で、こんなに細い腰で……、一体、どうやって進藤を抱いたんだ?」
「おがたさん」
ひんやりとした手のひらが、ボクの身体を撫でるように行き来する。
ボクの声など聞こえていないのかもしれない。