【Yahoo!】ライブカメラ第20章〜ID

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89えっちな21禁さん
1 泳ぐ音
 
今をさかのぼること、六年前のこと。
 
情報雑誌で評判となった東京・原宿にある洋菓子店。
オープンテラスのイートインコーナーを備えた気軽な店構えで、女子高生から中年女性まで女性客が絶えなかった。
ある週末でのことだった。
「美味しいかった・・・。でも、いいんですか? ごちそうになっちゃって」
「いいの、いいの、この位」
レジで代金を支払う女子高生と、妹のような女子中学生の二人連れが会話していた。
「今度はどこ行こうか?」
「お姉さんにお任せ」
歩き出した二人は、三月の日差しの中で顔を見合わせて話に熱中した。
90えっちな21禁さん:03/06/23 18:36 ID:3dJhKIt6
「水泳の練習、きつくないですか?」
「そうね。でも好きだから・・・」
「それにあの水着。ハイレグだし、薄くて体に張り付く感じに見えるけど、恥ずかしい感じしないですか?」
「まあね。でもプールの飛び込み台に立ってこれから泳ぐって時は、水着は体の一部になるの。そう、キャップまでもね」
「へー」
「ね、それはそうと、”ですか?”なんて丁寧語なんかいいのよ・・・。タメグチでいいよ。だって姉妹じゃない」
「そうですね・・・。あ、また言ちゃった!」
思わず顔を見合わせて笑う二人だった。
「ね、次どこ行きたい?」
「おねえちゃんに、おまかせ!」
91えっちな21禁さん:03/06/23 18:37 ID:3dJhKIt6
それから三ヶ月後。
 
梅雨空から霧雨が舞い降りる六月の深夜、都内の私立T高等学校でのこと。
零時近く、構内を警備員が見回っていた。
プールの近く迄来ると、地面に何かが落ちているのを確認した。
そばに寄ってそれを拾い上げて見ると、それは水泳用のキャップだった。
「誰かの落し物か・・・? まあ警備室で拾得物として保管するより、プールサイドにでも置いておく方が、落とし主には都合がいいかな」
そう思った彼は、プールを囲う鉄柵の付け根にある隙間からプールサイドへスイミングキャップを差し入れた。
「うっ」
警備員は思わず手の甲に大きめの水滴が落ちるのを感じ取り、素早く手を引いた。
『霧雨のはずなのに・・・。たまたま大粒の雨が混じったのか?』
92えっちな21禁さん:03/06/23 18:37 ID:3dJhKIt6
それから警備員はプール周辺に異常がないことを確認し、その場を立ち去ろうとした。
そして次の瞬間。
突然、プールに誰かが飛び込むような音が響いた。
「誰かいるのか!? プールで泳いでいるのか!」
警備員は思わず叫んだ。
だが応答はもちろん、誰かが慌てて逃げる気配もなかった。
それどころか数秒間程、バシャバシャと水面を泳ぐような音が継続した。
「誰だ!! 返事をしなさい!」
その直後、辺りはシーンと静けさを取り戻した。
93えっちな21禁さん:03/06/23 18:38 ID:3dJhKIt6
不審に思った警備員はプールサイドに上がり見回したが、誰の姿もなかった。
続けて更衣室の中も点検すると、女子更衣室にて、異常事態を発見するに至った。
それは、その学校の女子生徒で、既に息絶えた遺体であった。
着ている制服に多少の乱れはあるものの、その状況からは死因の見当も付かず、それゆえ自殺か他殺かは警察の鑑定を待つしかなかった。
 
死因は青酸化合物の摂取による薬物死だった。
それが、自ら服薬したものか、他の者によって服薬させられたものか、警察の捜査は難航した。
自殺としては動機が見当たらないし、他殺にしては目撃情報も殺される理由も浮上しなかったからだ。
亡くなった女子生徒は水泳部所属で特に水泳にかける情熱は人一倍で、自殺にするには疑問が残るものの、結局は自殺として取り扱われた。
94えっちな21禁さん:03/06/23 18:39 ID:3dJhKIt6
それからというもの、誰もいない深夜のプールで、水に飛び込んで泳ぐ音を聞いたとか、近くの公団住宅の上位階からプールを見下ろすと、まるで水泳選手が潜水をしているようにスイミングキャップのようなものが水中を動いていたとか、体験談が飛び交った。
 
学校関係者は評判に影響するのを恐れて、生徒や父母に、事件のことや奇妙な現象の噂話など口外しないよう徹底した。
その一方で知名度のある僧侶を招いておはらいを実施した。
それが効を奏したのか、おはらい以降、妙な現象は途絶えた。
 
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95えっちな21禁さん:03/06/23 18:39 ID:3dJhKIt6
2 盗撮
 
それから三年後。
西島亮司(ニシジマ・リョウジ)は大学を中退してしまい、現在飲食店に勤務していた。
高校時代は暴走族に属していたが、三年の時、初日の出の大暴走を機に引退。
以後一浪して大学に進学するも二年ちょっとで辞めてしまった。
 
仕事先が日曜定休日なので、とある日曜日に大学に通っていた頃の友人、野々村悠太(ノノムラ・ユウタ)のアパートに訪れていた。
友人といっても、ストレートに大学に進学して一つ年下の悠太は弟分の扱いだった。
96えっちな21禁さん:03/06/23 18:40 ID:3dJhKIt6
大学辞めちゃって、後悔ないっスか?」
悠太は遠慮がちに問い掛けた。
「その話はもうよせ。やっぱ大学生ってガラじゃねぇんだよ。まあ入学金を無駄にしやがってと親からはさんざん言われたが、内心は真面目に働いていることを喜んでら」
「はあ・・・」
「おい、そんなことより、退屈しのぎにいいもの見に行こうぜ。そこの高校で水泳部が練習してんだよ。西側の団地の屋上なら見えそうだな」
「え? まさか?」
「いいじゃんかよ! 日曜もせっせと熱心な練習に励む水泳部のおねえちゃん達を見学して、これからのオリンピック候補を応援するんだよ。いいからカメラとズームレンズ用意しろ」
「は、はあ」
97えっちな21禁さん:03/06/23 18:41 ID:3dJhKIt6
野々村悠太はデジタルカメラではないが、従来型の一眼レフカメラを所持していた。
二人は近くにある集合住宅の屋上から、それを使って、水泳部の練習風景を盗撮することになった。
 
「おお! あのコかわいい! 撮っちゃおう〜!」
団地の屋上からカメラのファインダーを通して学校のプールを見ては、声を上げながらシャッターを押す亮司。
カメラを悠太から完全に奪い取っていた。
「プールから上がった直後の水着の張り付きが堪らんぜ! お、あいつケツへの食い込みを直してら。いいねぇ、ムラムラするぜ」
上機嫌にシャッターを数回押しては、大声で状況を口にしていた。
「くそ! ヤローは邪魔だ。とっととどきやがれ!」
そんな亮司に悠太は半ばあきれていた。
98えっちな21禁さん:03/06/23 18:42 ID:3dJhKIt6
『この人、水着フェチか?』
と思いつつも自分も肉眼でプールサイドの女子部員達に目を向けた。
指導するコーチの姿もあるが、厳しい雰囲気でもなく和気あいあいとしたものだった。
揃いの競泳水着を身にまとった女子部員達の、のびのびと練習に励んでいる姿は、和やかでセクシーだった。
体に張り付くフィット感、水に濡れて放つ独特の光沢感、やはり悠太にも刺激的だった。
 
この日、カメラのフイルムを全て使い切るまで盗撮は続けられた。
ところが翌週も亮司は悠太を盗撮に誘ってきた。
「え? またっスか? これ以上はやばいっスよ」
「これでおしまいにするからよ。もう一度だけ気に入ったコを撮りたいんだよ」
結局、もう一度同じ場所で水泳部員達を撮影したが、まずい事態に陥ってしまった。
 
99えっちな21禁さん:03/06/23 18:42 ID:3dJhKIt6
盗撮を終えて団地の敷地から出た所で、二人組みの三十歳代の男二人に呼び止められた。
「君たち、そこの屋上にいただろ!?」
彼らが学校関係者であることがすぐにわかった。
亮司は反射的に駆け出そうとしたが、体付きのいい職員に腕をつかまれてねじ上げられ、あえなく”御用”となってしまった。
結局は二人はそのまま学校の職員室へ連行され、名前や住所を聞かれ上で、厳重注意を受けた。フィルムも抜き取られて処分されてしまった。
これまでもこうしたことが何度もあり、いずれも二人が犯人かと疑われたりもした。
そして、再度盗撮を行ったらしかるべき処置をすると脅されて解放された。
100えっちな21禁さん:03/06/23 18:43 ID:3dJhKIt6
「あーあ、せっかくの楽しみがなくなっちまった」
校舎を後にして校門へ向かいながら亮司はぼやいた。悠太は苦笑いするしかなかった。
すると、校門の所で二人の女子生徒が談笑していた。
しかも亮司と悠太を見た途端、手で口元を覆いながら大笑いを始めた。
「あのコたち、何をあんなに・・・。でも二人ともかわいいっスね」
悠太が不思議そうな顔で言った。
「ああ・・・? くそ! あいつら!」
亮司の反応に、一方の女子生徒が叫んだ。
「リョウちゃーん、久し振りじゃん!? 盗撮なんてだめだぞー!」
悠太は亮司に尋ねた。
「もしかして知り合いスか?」
「まあな。左にいるのが俺の族仲間の妹で裕香(ユウカ)。右がその大の仲良しで政美(マサミ)。確か二年生のはず」