>>563-564 >>573 『マキアヴェッリ語録』塩野七生/著(新潮文庫)
P88
君主にとって、厳重のうえにも厳重に警戒しなければならないことは、軽蔑されたり
見くびられたりすることである。
――『君主論』――
P108
君主は、自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきではない。たとえそれを
耐え抜く自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。
なぜならほとんど常に、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思いきって立ち向かっていったほうが、
たとえ失敗に終わったとしても、はるかに良い結果を生むことになるからである。
もしも、正面衝突を回避したい一心で譲歩策をとったとしても、結局は回避などできないもの
だからだ。
なにしろ、譲歩に譲歩を重ねたところで相手は満足するわけでもなく、それどころか相手の
敵意は、あなたへの敬意を失ったことによって、より露骨になり、より多くを奪ってやろうと思う
ようになるのがオチなのだ。
また、思慮もない単なる譲歩策によって示されたあなたの弱みは、味方になり得た人々をも
失望させ、彼らを冷淡にさせてしまうだろう。
反対に、もしあなたが、相手の真意が明らかになるやただちに準備をし、たとえ力が相手に
劣ろうとも反撃に出ていたら、敵といえどもあなたに敬意を払わざるをえなくなるのである。
そして、他の国々も敬意を払うようになり、結果としてあなたは味方を獲得することになる。
――『政略論』――