フランツザイドラー「売春・同性愛・自己毀損-ドイツ衛生指導の諸問題1939〜45」
(西尾幹二 訳)
・(1942)独国防軍は約500の売春施設を運営していた。設立・監督・経営・維持は、
占領各地区の軍司令部が管轄した。
西欧では公娼制度が成熟していたので、これを軍専属にした。決まりは厳しく、
女主人は30歳以上でなくてはならない。女主人や従業員は、施設で性交をしては
ならない。売春婦全員の写真付チェックノートを作成し、氏名・生年月日・現住所
などを記載し、要請がありしだい軍医や司令官に提示しなければならない。司令官に
無断で新しい女を雇ってはならない。利用する独軍兵士は、必要な証明書を見せ
なければ入店できない。証明書の裏には、パートナーとなる女の名前が明記されて
いなくてはならない。開業時間は司令官の決定に従う。代償は女主人と売春婦で半分
づつとする。サドマゾ行為は禁止。避妊具は無償で配布し、必ず使用されなければ
ならない。
東欧では公娼制度が整備されていなかったので、前線の司令官は売春婦の確保から
始めなければならなかった。労働力投入で、独国行きに応じなかった若い娘は、
国防軍売春宿に勤務するしか、選択肢はなかった。強制収容所ではユダヤ娘に対し、
応募すれば後々釈放が約束されると言って募集した。
総ての売春婦たちは、駐屯地司令官の発行した身分証明書を携帯し、売春宿の中で
暮らし、監視なしでの外出は禁じられた。週2回の医療検査、美容院への外出、
週1回の散歩にも、同行者を必要とした。