牟田口廉也中将

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299牟田口廉也
先のインパール作戦により、我が皇軍は致命的とも言える大損害を被ってしまった。
奮戦虚しく、多くの命と貴重な装備が失われ、正に精も根も尽き果てんばかりであった。

だが・・・・・・見渡してみるがいい 。
この死せる大地に在っても尚、逞しく花咲かせし靖国の桜のごとく、甦りつつある我等が
寄る辺を。
傍らに立つ戦友を見るがいい。
この危局に際して尚、その眼に激しく燃え立つ気焔を。

我等を突き動かすものは何か。
満身創痍の我等が何故再び立つのか――
それは、全身全霊を捧げ絶望に立ち向かう事こそが、生ある者に課せられた責務であり、
人類の勝利に殉じた輩への礼儀であると心得ているからに他ならない 。

 大地に眠る者達の声を聞け

 海に果てた者達の声を聞け

 空に散った者達の声を聞け

 彼らの悲願に報いる刻が来た

そして今、若者達が旅立つ。
鬼籍に入った輩と、我等の悲願を一身に背負い、孤立無援の敵地に赴こうとしているのだ。
歴史が彼等に脚光を浴びせる事が無くとも我等は刻みつけよう。
名を明かす事すら許される彼等の高潔を、我等の魂に刻み付けるのだ。
旅立つ若者たちよ 。
諸君に戦う術しか教えられなかった我等を許すな。
諸君を戦場に送り出す我等の無能を許すな。
願わくば、諸君の挺身が、若者を戦場に送る事無き世の礎とならん事を。