日韓併合首相談話 和解と絆深める出発点に
朝鮮半島の人々の尊厳と名誉を踏みにじった日本による韓国併合から100年の節目を迎え、菅直人首相は談話で「多大の損害と苦痛に対し、痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明した。
「反日独立」の象徴だった3・1独立運動に触れた上で、「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々の意に反して行われた」として植民地支配の強制性を認め、「国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけた」と言及した。
日本の軍国主義の過ちがもたらした隣人の苦難に正面から目を向け、反省する姿勢は評価できる。
「負の歴史に誠実に向き合う」と誓った首相談話が、日韓両国民になお横たわる歴史認識のわだかまりを解き、一層の和解と、文化や経済を通した絆(きずな)を深める基盤となることを期待したい。
日本は、近代化と並行して朝鮮への介入を強めた。日清、日露の両戦争も朝鮮獲得を狙った戦争だった。日清戦争(1894〜95年)に勝利すると、日本軍は朝鮮王妃を殺害し、外交権を奪った。
韓国併合は、領土拡張の野心に満ちた「満蒙生命線論」につながり、軍国主義に塗り込められた日本の針路を誤らせた源流である。
学校で日本語だけを教えたり、名前を日本式にする創氏改名を強いた植民地支配は日本の敗戦まで続く。同化政策に強烈な屈辱感を植え付けられた人たちに、首相談話は当然のことながら配慮した。
村山富市元首相が1995年、戦前、戦中の歴史について「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明し、アジア諸国から評価された。
「村山談話」を踏まえつつ、日韓併合100年の節目に日本の指導者が両国の絆を深める未来指向のメッセージを発した意義は大きい。
今後問われるのはその実践だ。日本政府が所有する朝鮮王朝の文化財を韓国に引き渡すことはその先駆けとなる。「補償問題を蒸し返す」などとして、野党自民党や与党民主党内にも談話を批判する勢力がいるが、
見識が浅い。正当な歴史認識を踏まえた対話を重ねてこそ、隣国とのより緊密な関係が構築できる。
朝鮮半島の人々は沖縄戦にも強制的に動員された。従軍慰安婦として働かされたり、非業の死を遂げ、「平和の礎」には447人が刻銘されている。
(琉球新報社説2010年8月12日)
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