・・・そうだ、わしとしたことが、うかと、あの日のことは忘れておった。
不覚よ、今日まで見ずに過ぎていたのは。
帰国の上は、すぐにも置文をこの目で拝見せねばならぬ。
378 :
初代 ◆mkIaGhOuYM :04/01/19 00:59
「去れば又義家の御置文に云。我七代の孫に吾生まれ変わりて天下を取るべしと仰せられしは、家時の御代にあたり、
尚も時来たらざる事を知ろし召しければにや、八幡大菩薩に祈り申し給て、
我命をつづめて、三代の中にて、天下を取らしめ給へとて、御腹を切り給ひし也」
足利氏には源義家の「我7代の孫吾生かはりて、天下を取べし」と書かれた置き文が伝わっており、
足利家時の代が丁度7代目に当たるが、未だもってその時ではないことを嘆き、
八幡大菩薩に祈って「我命をつづめて、三代の中にて、天下を取らしめ給へ」と語って腹を切った。
やあ、高氏殿。
足利家も源氏の御嫡流、佐々木家も近江源氏の末裔。
申さばおなじ流れの裔、ここで会うのも何かの縁ですな。
しかし、ご遊歴とはよい御身分、羨ましいですな。
高氏殿、じつは胸をひらいて山ほどな話がしたかった。
この道誉とて鎌倉の恩をうけた一人、なにも政変を好むものではないが、
悲しいかな、北条殿の世もはや末かと見すかさるる。
北条高時公御一代と申し上げたいが、ここ数年も、こころもとない。
はははは、ご迷惑かな、かかる心をゆるした話は!
事、もれては一大事。かつは恐れ多い。高氏どの、誓って他言なきように。
高氏殿、待ってる時節が来ているとは思しめさぬか?
由来、名門足利家の御血統が北条氏より高く、北条家の門地を超えるのを恐れて、
わざとお家を不遇な地方におき、それが代々御家運の衰微となって今日にいたったとは、
おん曹司として、よも御存知なきはずはおざるまい。
>>380 さあ、なにぶんにも自分はまだ曹司の身。
源氏の頭領、八幡太郎義家殿からの正しい裔とはいえ、足利ノ庄で生まれたままの田舎もの。
世間も知らず、世も見えず。また、父と意見が割れては家中もまとまらず、
悪くすれば鎌倉へ漏れるおそれもある。
そろそろ忍び遍歴の旅を終え、わが領国へ帰ろうと思う。さらば道誉殿。
足利高氏、下馬を命ず!
-問罪ノ状-
鎌倉問注所の査問の儀、仰せ受けて、申し開き相すむまで、
国元に蟄居し、慎み在るべき事。
高氏拘禁の役目、新田小太郎義貞に命ず!
ばかげたことだ。
この身は格好な具に使われたらしい。道誉に計られたか!
おれも馬鹿だが、そんな手にのる新田も馬鹿者よ。
が、どうにでもなれ。まさか高氏の一生涯をこのままにもしておけまい。
どうせそれほど命脈のある幕府ではなし。
いまにみろ。
いまに。
-召状-
足利高氏、新田義貞、
24日までに着府の事。
母上、早々に鎌倉へ行ってまいります。
が、その前に、お願いの儀がございます。
家時公の置文をお見せ下さいませぬか。是非、高氏に披見をおゆるし下さい。
386 :
初代 ◆mkIaGhOuYM :04/01/26 03:04
<置文>
故あればこそ、ここに書きおくなれ。さあれ世には告げてよ。われ狂い死にせりと。
不肖家時、清和の嫡流に生まるといえど、悲しいかな、徳なく才とぼしく、
家祖の遺沢に応えるあたはずして、苦計むなしくやぶれ、家統も危きを見、子孫に詫びる。
そもそもこれ、家時が宿命なるか。
すでに、家の遠祖の人、置文して、後代のわれに言えり。
「七代の孫、かならず天下をとり、時の悪政を正し、大いに家名を輝かさん」と。
すなわち、家時はその七代の孫にあたれり。北条が悪政は、いよいよ民を苦しめ、朝廷を悩ましている。
ひそかに青雲を思うや多年。土倉に弓箭は満ち、山沢に健治は待つ。
然れども、その日を見ず、今はあだとなってここに積もる。むなしき弓箭、またすべて、灰となされん。
乞う、家時が亡骸もその火に入れよ。
死するにあたって、われより三代の後の子に託す。わが意を継げよ。
われに代わって、遠祖の委託を成し遂げよ。
足利高氏、新田義貞、双方に訊ねるが、両家の確執とは、そも何に基づくもつれなるか。
先ごろ、新田方より政所への早馬によれば、高氏の弟直義を先立て、足利の武士ども大勢、
兄の幽所を破らんと押し寄せ、新田の警固番を殺傷したとのことではないか!
両家の間にて、和談せよ。
よし、新田は下がれ、
が、足利高氏にはなお、ゆゆしき訴えが余人より政所へさしだされておる。
足利はそのままに。
足利に糺す、
第一に、忍び上洛の目的は何なりしか。
第二に、献上犬への無礼。
第三に、日野俊基と洛中にて密会をとげたるは、いかなる存意の下にや。
忍び上洛とのお極めつけには、高氏、不服にございまする。
都に出たるには相違ございませんが、伊勢神宮に運上したてまつる御使いにて参った帰りを、
都廻りして、立ち帰ったまでのこと。
献上犬に土足を食らわしたとは否。食いつく犬には、足を引くのが人情なれど、
執権高時の君に奉る献上のおん犬と知ったれば、引くは畏れあり、足首ぐらいは惜しからじと、
おん犬の口の中へ、われから、餌に奉ったまででおざる。
日野俊基と密会など、まったく、身の濡れ衣と申すもの。かつての旅中、日野俊基に是非合い給えと、
人の誘惑は受けたが、会うてはいない。そもそも、その手引きをしたのは、
そこに、そらうそぶいている佐々木道誉に他はなし。
察するに、事を逆さまにして、政所へ密告せしは、そこな若入道でおざったな。
はははは
聞けよ、足利。近江佐々木ノ庄の守護道誉は、執権の君より内々のおむねを受けて、
京鎌倉の往来を、不断に目付しておる者ぞ、密訴とは、ばかなうろたえごとを。
祝着 祝着。
新田の件といい、忍び上洛のことといい、お上の御不審も解け、鎌倉御家人の醜をも見せずにすんだ。
高氏殿、何を腐っておられるか、もはや晴れてどこでも歩かれい、大手を振って。
高氏殿、そろそろ妻をもちなされ。
よい縁組のお話があります。
赤橋殿の妹君、登子さまを是非高氏どのにもらって欲しいと赤橋守時様直々に、
この憲房へ、折り入ってのおはなしなので。
>>392 まかせる、伯父上に。
北条一族中でも、かがやかしい歴々のお家柄たる赤橋殿の妹君か・・・
執権の近親赤橋どのの妹婿となるのか・・・
登子 高氏がいま打明けて申すことに、もしいささかでも不安であり、不同意だったら、
いつでもこの家を去るがいいぞ。
この高氏は剣難の相があると予言されておる。戦場で倒れる宿命なのかもしれぬ。
それでもわしの妻として添うてゆけるか。
古来、弓矢の修羅道では、伯父甥にして敵とよびあい、兄弟父子の間ですら是非なく裂かれて、
敵味方の陣にわかれることもある。
さればもし、かりに北条殿に弓を引き、そなたの兄、赤橋守時殿をも、敵とせねばならぬ日があったとしたら、
そなた、その時はなんとするか。修羅の巷に迷うても、悪鬼羅刹と見えても、添うてゆけるか。
395 :
初代 ◆mkIaGhOuYM :04/02/02 15:28
太平記編 第二幕 天皇御むほん
鎌倉幕府が開かれてから百三十年、政治のひずみが至るところに噴出していた。
正中の変はその典型的な例であり、公武の亀裂はますます拡大していった。
「天皇御むほん」さえ囁かれる乱世の兆候。
当時は両統迭立の世、後醍醐天皇が英遇におわすほど、紛糾のもとになった。
この間、足利高氏が権門の一翼として台頭し、再度の反乱に敗れた日野俊基とは明暗を大きく分ける。
かねての蝶じ合わせをふくみ、護良と宗良のふたりも、一山の衆徒をひきい、
大津あたりまで出て、待ち迎えんと書中に見らるる。
だれか、つつしんで神璽、御鏡などを捧持して、早よう車のうちへ遷したてまつれ。
早よう車をだせ。
具行、
すでに秋の初めには、そこの手から、激は国々の武門へ、くまなく飛ばしてあったろうにな。
それにしては、なぜか、しかるべき武者の一人も来ないのは不審よの。
かねてより聞いておる者だが、河内の楠木正成とやらは、まだ参陣してまいらぬな。
さては、正成もまた心がわりか。
>>397赤坂の丘に築城し、天皇を守護たてまつります。
しかし、宮方の諸武士はいっこうに呼応もせず、ここに合流してくる風もありません。
それにひきかえ、領家の百姓は正成の下知に従って必死に働いてくれまする。
この者たちこそ第一の功労。
あとの味方などは、寄るも寄らぬも、正成の旗色次第、まずは関東を相手に、
一戦の上ならでは、寄り付くまいでしょう。
拝領の旗を掲げよ!
菊水紋の旗を!
天皇の御盾となる喜び、武士の本懐。
朝家のおんために、身も家も捧げ奉る所存。
鎌倉発向命令
一軍 大仏貞直
二軍 金沢貞冬
三軍 武田、江馬、渋谷、狩野、諸族連合軍
四軍 足利高氏
この二万の大軍をもって笠置の天皇軍を壊滅せよ!
よし!
笠置は陥ちた。
天皇も捕まったぞ。
赤坂城の兵士に告ぐ。降伏せよ!なんのための戦いか!
降伏せぬならば、望みのままここを墓場にしてやる。
つつけ、怯むな!
正季、さいごだ。
かねていいおいたとおり、城へも、今はいちどに火をかけろ。
正成死す、と敵を謀るにはこうせねばならぬ。
時節を待とう。
403 :
初代 ◆mkIaGhOuYM :04/02/07 23:09
元弘三年は、また正慶二年でもあった。敵味方によって年号が違うのも異常なら、
御醍醐帝が穏岐に配流という現実も、尋常の世といえない。
不死鳥の如き楠木正成は、またも天嶮の千早城に拠って、五万の軍勢を金縛りに悩ましつづけている。
一方、去就を注目される足利高氏は、一族四千騎を率いて不気味な西上を開始する。
食料もだいぶ乏しくなってきたな。
だがこれからは木の芽も食える、草も食える、虫、鳥、獣、何でも食おう。
そして、一日ここの篭城をささえれば、一日の勝ちだ。十日もてば十日の勝ちとしてよかろう。
もし、あと百日保てば、おそらく北条勢の寄せ手のうちに、大きな自壊がおこるに相違ない。
む、あれは正季だな。無断で敵へ突いて出た武者声であるまいか。
こまったものだ。ここはただ持久を計れ、堅く守って討って出るな!
穏岐のみかどが首尾よく本土脱出に成功したらしい。
確報はまだ不明だが、敵の総がかりを見てからでは間に合わぬ。
それまでに士気をたかめておく要がある。すぐ触れを廻せ!
第四次召集令、即日、出兵せよ!
足利高氏、何をグズグズしておる!
どうしたのだ、再三の使いにもかかわらず!
出陣せい!
不徳のいたすところです。
天下多端のときに、この遅れは申し訳なく思います。
さっそく台命を拝受して、武門の当然をつくし、年来の汚名をすすぎまする。
よくいった。それでこそ赤橋の婿、又太郎高氏だろう。
申し付ける。明日中にきっと出陣せい!
だが、条件があるぞ高氏。
そちの妻子は、凱旋の日まで、この高時が預かっておくであろう。
異存ないか、高氏!
まだあるぞ、わが北条氏にたいして、ちかって異心をはさみ奉らずというむねの、
誓書を出せ。
高氏どの、台命により、妹の身を受け取りに参上した。
妻を質に出さねば出陣も出来ない心情お察し申し上げる。
治承の世にも、木曾殿がそうでしたろ。
頼朝公に質子を求められ、巴御前との仲の一子を鎌倉へ送って、都入りを果たされた。
410 :
初代 ◆mkIaGhOuYM :04/02/17 19:35
足利高氏は畏敬と辛い同情を赤橋守時に禁じえない。
妹の登子を自分へ嫁がせてよこした当初から、
世評周囲のいろんなわずらわしさによく守時は耐えてくれた。
「だのに自分は」と高氏は身にせめられる。
自分はこの義兄をあざむいて、だまして立つのだ。
北条一族中でも、もっとも北条血液の濃い正しい赤橋家である。
あくまで守時は祖廟を守り抜くだろう。しょせん明日は敵味方とわかれる人だ。
高氏は、なろうならこの人だけには何もかも打明けて、謝りたいような理性の中の妄想にとり憑かれた。
台命によりただいま出発いたします。
では、ご威勢を負って行ってまいりまする。
>>411 心底、確とわかった。
これは頼朝公の後室、北条政子からわが家に伝わるものだが、出陣のはなむけに足利へとらせる。
この旗をかかげて一日も早く兇徒を退治いたせ!
また会おう。手柄して来い。妻子のことは心配すな。
この高時が預かっておれば心配すな。
兄上、上首尾でございましたな。
時も時、源家重代の白旗が授かるなどは。
源家の白旗は、ほんらい平氏の北条家にあるよりは、源氏の家につたわって来るはずのもの。
はからず、それが今日のご出陣にお手に入るとは、偶然ではござりませぬ。
足利殿、佐々木でおざる。久しゅうおざった。
まず、一言先に申しておこう。
不破の柵は今晩から閉じ申した。このほうは近江の守護、鎌倉殿の代官だ。
弓矢にかけても通るとならば、話は別だが。
鎌倉殿の使者へ夜討ちをかけ、一行皆殺しとはどういう料簡か!
御辺は鎌倉殿への謀反をば、自分でみとめるのか!
>>414 いかにも。人は知らず、そこもとには、とうからようご存知のはずだった。
隠してみても仕方がない。この高氏がむほんと聞いて、そこもとが、急に愕とするいわれはなかろう。
天下をくつがえす下拵えにかけては、そちらは高氏などよりも、一日早い先輩だった。
なあ佐々木殿、いや佐々木と呼び捨てるぞ。もうお互いに、腹の底の腹巻は脱ごうではないか。
いやならよせ、拾ってやらぬ。他日の天下の分け前も取らせてやらぬ。
聞くがの、足利。勝算はあるのか、勝算は!
大きなばくちではあるまいか。
怖いのか道誉。
賽はもう投げられたのだ。まだ、決められぬのか、お身ほどな人物でも。
関東の野から、別に叛旗をひるがえす者も現れる。そう、新田小太郎義貞も起つのだ。
新田もその遠くは足利と同祖の家。これまでの反目も水に流して、同時に起つ密約もすんでおる。
あとは、同じ源氏の名門では御当家だけだが。わかろうがの、こうまで申せば。
久方ぶりに顔出してみました。
いや、時々のぞいてたんですけどね、割り込む余地がなくって。
保守もかねてでしゃばりましたが、気にせず、続きをどうぞ。
ついに落ちたな・・・
現在日本史板の700番目だ。
420 :
日本@名無史さん:04/04/11 00:21
>>1 そろそろ復活しませんか?
別に誰かに攻撃されているわけでもないんだから!
復活させるようであれば
削除依頼出します。
また出てきました。
紀伊はなかなか出てこんよな、この時代。
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控えおろう、ここは男子禁制なるぞっ!
綱吉の母でございます。
このたびは、息子がこのような法度を出してしまい、
皆様には大変ご迷惑をおかけしております。深くお詫び申し上げます。
息子は幼い頃に父親を亡くし、そのショックで内気な子供になって
しまいました。そのせいか、大奥の中ですらいじめにあっているのです。
この年になるまで、世継ぎはおろか側近さえも出来ないようで、大変心配
しておりましたが、この2ちゃんねるというサイトを知って以来、息子も
少し明るくなったようです。「今日○○板でね、ドキュソがさあ…」
と、とても楽しそうに夕食の時に話してくれるのです。
どうぞ皆様、息子を暖かく迎えてやってくださいまし。本当は良い子なんです。
よろしくお願い申し上げます。
綱吉の母より
426 :
柳田理科雄:
莞爾エッチしよ!