世代格差と地域活性化 矢部拓也 (徳島新聞)
年末年始は久しぶりに家で過ごし、今後の日本社会に関する討論番組を片っ端から見ていた。「日本の
ジレンマ」という40代以下の若い論客による番組では、「格差」がテーマだった。フリーター、
非正規雇用の増大など若者の直面する格差社会を、新自由主義やグローバル経済の問題として議論する
のかと思っていたが、同番組では多数派を形成する年長者中心の政策が、これから新しい社会を形成し
ようとする(少数者である)若者のチャンスを奪ってしまう現制度の問題として結論づけていた。今の
国の制度は、年金問題にせよ、雇用の問題にせよ、人口の多い団塊世代とそれ以上の世代に手厚くつく
られている。政治的に変革しようにも、選挙では人数の多い方が勝つので、人数的にマイノリティーで
ある若者世代向けの政策を掲げる候補者よりも、高齢者に手厚い政策を掲げる候補者が勝利する。また、
正規雇用という制度は、現在の従業員の雇用を守るためのもので、新たに労働市場に参入しようとする
若者には「席」がなく、非正規雇用の道しかない。日本では、退職金は長期間働いたご褒美と捉える風
潮があるが、労働市場から去ることにより奪われる賃金に対する保証金とする学説もある。経済が拡大し
ていた時代は、このような世代間対立は全体のパイの広がりによって顕在化しなかった。だが、縮小社会
を迎えた現在、少ないパイの分配が問題になり、対立は表面化している。「豊かな」社会を実現するため
には、現在のボリュームだけを考えるのではなく、私利を越えて未来の社会を支えるゾーンへの積極投資
を行わなければ、社会の持続可能性は担保できない。考えてみると地域活性化も同様だ。今までは何とな
く開発を行っていればよかったが、財政が縮小する中では、必然的に対立が顕在化する。今、実施しよう
としている開発はどの世代に向けたものか。それはほかの世代にとっても魅力的なのか。未来への投資に
つながるのか−。これからの日本社会は、従来のやり方ではなく、未来志向の問題解決型モデルに変えて
いく必要があるように思う。(徳島大大学院准教授)
ttp://www.topics.or.jp/special/130516742292/2012/01/2012_132592309424.html