シリーズ「引きこもり」するオトナたち
【第56回】引きこもりの社会復帰を阻んでいるのは誰か
「エントリーシート」と「ハローワーク」の高い壁
http://diamond.jp/articles/-/11167 >外に出るきっかけを 天変地異に求めてしまうほどの孤独
真っ暗な部屋の中で、テレビのブラウン管からは、「たったいま、飛行機が墜落した模様です」
などと、キャスターの上ずった声の映像が流れてくる。2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ
事件の第一報を伝えるニュースだ。30代の高木明雄さん(仮名)は、当時、都内のアパートで
1人暮らし。その日の夜10時過ぎ、何気なく報道番組を見ていて、突然、CNNのニュースが流れ
始めたときのシーンを鮮明に覚えている。しかし、その前後の記憶が、なぜかない。テレビでは、
当初の事故報道から、現地駐在ジャーナリストが「テロの情報が入った」と伝え、2機目がビルに
衝突。そして、ビルの崩壊へと延々と続いていく。そんな映像を、高木さんはただ茫然と眺めて
いた。「自分の関係のないところで、歴史がつくられているなあ」時代が動いている傍らで、
引きこもってテレビを見ている自分がいる。高木さんには当時、この大きな事件が、まるで映画
のように感じられた。「あの頃は、自分からはどうにも動くことができなくて。自然災害などの
外の要因をどこかで待っていました。アパートが火事になればいいのに…とか」天変地異があれ
ば、外に出られるような気がしていた。「失われた10年」が続く中で、21世紀に入り、世の中が
テロなどのぼんやりした社会不安へと向かっていく。そんな時代のどこかに展望を見いだせそう
だった一方で、それらも自分につながる話には思えなかった。その頃の高木さんは、誰とも関わ
りを持っていなかったからだ。