弱視、うつ病…姉弟力を合わせ東京マラソン完走(読売新聞)
「弟と一緒に走れて心強かった」。女子視覚障害者の部で10キロを1時間5分44秒で走り、
2位となった大阪市の会社員山田敦子さん(36)は完走メダルを首から下げ、弟(34)と
一緒に伴走ロープをぐっと握りしめた。生まれつき左目が見えない。先天性の難病の治療法を
見つけようと、鳥取大大学院で生命科学を研究したが、暗室で顕微鏡を見続けて右目も悪化し、
研究者の道を断念、医薬品開発を行う企業に就職した。2年前から、白杖(はくじょう)なしで
人混みや夜を歩けなくなった。「このままでは全く見えなくなる」と、不安にさいなまれた。
そんな頃、愛知県内の弟から「うつ病になった」と電話で相談を受けた。弟は高校時代は陸上部
で、マラソン大会に参加したこともあったが、勤め先を1か月休んでいた。「体を動かせば気分
も変わるのでは」と、山田さんは弟を東京マラソンに誘った。ジムに通い、視覚障害者のランニ
ング団体に参加してトレーニングを重ねた。弟も自宅近くを走り、伴走のイメージトレーニング
を積んだ。当日は「上りだよ」「ここは踏ん張りどころ」と、弟から声を掛けられながら走った。
「後半ばてて、何回も歩きたいと思った。一人だったら、あきらめていたかもしれない」山田さ
んは照れくさそうに「頼もしくて見直した」と弟をたたえると、弟も「すっきりした」と、さわ
やかな笑顔を見せた。
ttp://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20110228-OYT8T00089.htm