ヒキ板輪読会〜複素関数論〜

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125ヒキ数学スレの471
テキスト:田島一郎「解析入門」岩波全書
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(一応序章から)
本書は解析学の入門への入門書です。
入門の入門書というのは、従来の本が読者に岸から岸へぴょんとジャンプすることを要求していて、
渡るにはやや度胸のいる入門書だったことを憂慮したためです。
本書は、例や高校でならったことをたくさんつかって大学の数学と比較しながら見ていくことにいたします。
(* 小平先生の解析入門は実数の定義が§1で極限が§2)

さて、第一章のタイトルでもある「微積分」の根幹を成すのは極限の概念です。
(* なんで根幹なのかおれには説明できません)
まずはその根に触れるところからはじめることにして、
高校でどのように定義してきたか、二つの定義を復習したのち、
その問題点と解決策(新たな定義)を述べることを第一回としたいと思います。

(高校の定義はてきとうに読んでおk。あとで見返した方がわかりやすい)
★定義1(数列の極限)
 ある数列{x_n}のnを限りなく大きくしていくとき、それが定数aに限りなく近づくならば、それを以下の記号で表す。
     ・lim[n→∞] x_n = a
 または、・n→∞ のとき x_n→a

 ・定義1a このとき、数列{x_n}が収束するという。
 ・定義1b このとき、定数aを 数列{x_n}の極限値という。

★定義2(関数の極限)
 ある関数f(x)のxが限りなく定数aに近づくとき、それが定数bに限りなく近づくならば、それを以下の記号で表す。
     ・lim[x→a] f(x) = b
 または、・x→a のときf(x)→b

 ・定義2a このとき、f(x)が収束するという。
 ・定義2b このとき、bを x→aのときのf(x)の極限値という。
126ヒキ数学スレの471:2005/10/12(水) 09:37:51 ID:???0
高校までは以上の定義でやっていくことができました。
「限りなく」という言葉が既知の言葉で定義されてこなかったのに、それを認めていました。
たとえば「x_n→aならば{x_n}^2→a」という問題も「まあそうだなあ」と思えるから良しとできるわけです。

でも、明確な定義をしなければなりません。
というのはこれからは精密な議論をしていくので、曖昧な句をそのままにしておけないからです。
以下は一見いかめしい定義ですが、ひとつひとつ意味を追っていくとさほど難しくありません。

★★新しい定義
★定義1'  (1'はいちダッシュ、いちプライムとか呼ぶ)
 数列{x_n}において、
 任意の正の実数εに対して 適当な自然数を返す(適当な自然数を選んで返す)関数N(ε)が定まり、(↓のaは定数)
 「n>N(ε)ならば|x_n-a|<ε」が真であるとき、
 (以下定義1、1a、1bとおなじ)

★定義2'
 aの“近くで”定義された関数f(x)において、
 任意の正の実数εに対して 適当な正の実数を返すεの関数δ(ε)が定まり、
 「0<|x-a|<δ(ε)のすべてのεに対して、|f(x)-b|<εとなる」が真であるとき(aとbは定数)、
 (以下定義2、2a、2bとおなじ)

(* 本文中のmをN(ε)とした。小平先生の本を見たらεの関数というのをわかりやすくて良いと思ったのでぱくった。
 以降の輪読でmがでてくるかもしれないので、注釈です)
127ヒキ数学スレの471:2005/10/12(水) 09:38:28 ID:???0
以上のように
論理用語と定義済みの修飾句と明らかな言葉だけになって「限りなく」が排除され、
すでに明らかな有限の実数や有限の自然数のみで定義されています。
これで「限りなく」も数学用語の仲間入りを果たしました。

★解説
|x_n-a|は、x_nとaとの差です。
これが任意の正の実数εよりも小さいというのは、
小学生の言い合いみたいにε=0.001よりも小さいし、ε=0.00001よりも小さいし、
ε=1/(10^1000)よりもなによりも小さくなる差で、
日本語になおすと「差が限りなく縮む、限りなく近づく」ということになります。

収束の証明をするときに一番気のいる作業は、εの決定と関数N(ε)かδ(ε)の決定です。
うまく選ぶといっても、どのように決定すればいいのか?
その例をひとつ出して第一回を終わることにします:
 問題★(小平先生の本から。。)
  lim[n→∞]((n+1)/(n-1))=1であることを示せ
 答え★
  0に向かってほしい|((n+1)/(n-1))-1|を単純な式変形すると、|2/(n-1)|と同値である。
  任意の正の実数εを決めるとかならず0<a<εなるaも存在するので
(これはまだやってないけど有理数の稠密性から証明できる)、
  |2/(n-1)|がそのaよりも小さいなら
  単純な変形で|2/(n-1)|<a ⇔ 1+2/a<n ⇔ n>1+2/aになる。
 (絶対値を外していいのは、n→∞だからn-1<0⇔n<1なんて無視していいから)
  ここでいよいよ、N(ε)を1+2/aよりも大きい自然数を返す関数と定めてやると、
  収束の定義である「n>N(ε)ならば|((n+1)/(n-1))-1|<ε」がなりたつ。
  なんたって0<a<εだから。
  証明終わり。
128ヒキ数学スレの471:2005/10/12(水) 09:39:01 ID:???0
★演習問題
 問題★→のように定義する。{x_n} = 1/n , {y_n}=1/(n^2)
 ↓のようにするには、それぞれについてnをどの程度に大きくすればいいか。
 |x_n-0|<ε |y_n-0|<ε (←εを、たとえば0.01とかする)
 目的★二つの数列の収束の速さを調べることができる。
(?なんの意味があるのかよくわからない)
 答え★
 ε=1/(10^m)のとき、{x_n}はn=10^m、{y_n}はn=√(10^m)以上のとき収束するから、
 {y_n}は{x_n}よりも結構なはやさで収束していく。

(*小平先生のではこのあと定義1'を応用しやすく換言した定理について述べていた。
そのあとコーシーの判定法(これは田島先生のは68p))