中学校の時からずっと家に引きこもっている、ある女がいた。
女は毎日何をするでもなく、テレビを見たり、親の金で本を買ってそれを読んだりして
くらしていた。女はだらしのない性格で、家の中は彼女が散らかしたゴミや日用品で
荒れていた。
精神的にも未熟で、両親が彼女を叱ると、感情を抑えられなくなって、暴れたり
大声で叫んだりしていた。また生活リズムが狂っており、深夜に大音量でテレビや
音楽を聴いたり、掃除機を中途半端に使ったりした。近所からの評判も悪く、両親は
今の生活に疲れ果てていた。
そんな女ももう35歳になろうとしていた。すでに父親は今年退職する年になっていた。
女の誕生日の日、その女はいつものように昼過ぎに目を覚ました。女は両親が
誕生日を祝ってくれるだろうと思って、心躍っていた。しかし家はシンとしていて
電気がついておらず、いつもの散らかった薄暗い家内に彼女一人がたたずんでいた。
「なんで、私の誕生日なのに、何にもお祝いの用意がされてないの」
彼女の心は怒りでいっぱいになっていた。そしてすぐに母親を探した。
自分の誕生日を祝わせるためだ。
すぐに台所に行くと、机の上に白い封筒がおいてあった。彼女はそれを手に取ると、中の
手紙を読み始めた。
”お父さん、お母さんはこの何十年かの人生をずっとあなたに奪われてきました。
その代償に、今度はあなたが人生を奪われる番です。”
手紙を読んで、彼女の心は怒りに震えた。
つまんねぇ手紙書いてんじゃねーよ
その時彼女の背後から母親の声が響いた
「手紙は読んだ?じゃあ、智ちゃんこっちへいらっしゃい。」
確かに母親の声を聞いて、彼女は振り返ったのだが、彼女の目の先に母親の姿は
なかった。
彼女はその後、居間に母親を探しに行った。しかし、居間には誰も居らず、ただ日用品で
散らかっているだけだった。するとまた声が聞こえてきた。今度は父親の声だ。
「智子、智子ー、」
彼女の名前を呼ぶ声がしっかり聞こえるのだが、そこに父親の姿はなかった。
しばらく家の中を歩き回って、彼女はようやく両親を見つけることができた。
そこは両親の寝室だった。
天井から伸びる2本のひもに首をつって、静かに空中に浮いている両親の姿がそこにあった。
ひもは一切揺れることはなく静かに両親を支えていた。
いつ死んだんだ。彼女がそう思った瞬間、彼女のすぐ後ろから両親の声が聞こえた。
「智子、誕生日おめでとう」